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特許7363755ねじ部材締緩装置、及びねじ部材締緩方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ねじ部材締緩装置、及びねじ部材締緩方法
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20231011BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20231011BHJP
   B25B 23/14 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B23P19/06 D
B23P19/06 M
B25J13/00 Z
B25B23/14 640L
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020207663
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094657
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】森本 博久
(72)【発明者】
【氏名】大本 弘喜
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-84636(JP,A)
【文献】特開平8-57719(JP,A)
【文献】特開2015-93352(JP,A)
【文献】特開平10-80828(JP,A)
【文献】特開2008-296291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/06
B25J 13/00
B25B 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ部材の被嵌合部に嵌合する嵌合部を備え、当該嵌合部の軸心周りに回転自在に支持された回転体と、
前記回転体を回転させる回転駆動部と、
前記回転体を移動させる移動部と、
前記回転駆動部及び前記移動部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記回転駆動部による前記回転体の回転方向の一方側を回転方向第1側とし、他方側を回転方向第2側として、
前記制御部は、
前記被嵌合部と前記嵌合部との軸心同士が合うように、前記移動部を制御する第1制御と、
前記被嵌合部と前記嵌合部との軸心同士を合わせた状態を維持しつつ、前記被嵌合部に対して前記嵌合部を押し付けるように、前記移動部を制御する第2制御と、
前記被嵌合部に対して前記嵌合部を押し付けた状態を維持しつつ、前記回転体を前記回転方向第1側に第1規定角度回転させるように、前記回転駆動部を制御する第3制御と、
前記第3制御の後、前記被嵌合部に対して前記嵌合部を押し付けた状態を維持しつつ、前記回転体を前記回転方向第2側に、前記第1規定角度よりも小さい第2規定角度回転させるように、前記回転駆動部を制御する第4制御と、を行い、
前記嵌合部は、前記回転方向に沿って規定形状が規定角度毎に繰り返し現れるように形成され、
前記第1規定角度は、前記規定角度に対応する角度に設定されている、ねじ部材締緩装置。
【請求項2】
前記回転体の状態を検出する第1検出部を更に備え、
前記嵌合部と前記被嵌合部とは、前記規定角度毎に繰り返される前記嵌合部の前記規定形状の位相が、前記被嵌合部の対応する形状の位相と合致した場合に、嵌合するように構成されており、
前記制御部は、前記第3制御において、前記第1検出部により検出された前記回転体の状態に基づいて、前記被嵌合部と前記嵌合部との位相のずれが前記第2規定角度以下に設定された角度閾値以下になったと判定した場合に、前記第4制御へ移行する、請求項1に記載のねじ部材締緩装置。
【請求項3】
前記嵌合部の軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向における前記被嵌合部に対して前記嵌合部が接近する側を軸方向第1側として、
前記第1検出部は、前記回転体の回転トルク、及び前記回転体の前記軸方向の移動量の少なくとも一方を検出するように構成され、
前記制御部は、前記第3制御において、前記回転体の回転トルクが第1閾値よりも大きくなった場合、又は、前記回転体の前記軸方向第1側への移動量が第2閾値よりも大きくなった場合に、前記被嵌合部と前記嵌合部との位相のずれが前記角度閾値以下になったと判定する、請求項2に記載のねじ部材締緩装置。
【請求項4】
前記嵌合部の軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向における前記被嵌合部に対して前記嵌合部が接近する側を軸方向第1側として、
前記嵌合部は、当該嵌合部の軸心を囲む複数の側面を有する角筒状に形成され、
複数の前記側面のうちの隣接する前記側面の境界部における前記軸方向第1側の端部に、前記軸方向に対して傾斜した面取り部が形成され、
前記第2規定角度は、前記面取り部によって前記嵌合部が前記被嵌合部に嵌合するように前記回転方向に案内される前記回転方向の角度範囲に対応する値に設定されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のねじ部材締緩装置。
【請求項5】
前記嵌合部の軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向における前記被嵌合部に対して前記嵌合部が接近する側を軸方向第1側とし、前記軸方向における前記被嵌合部に対して前記嵌合部が離間する側を軸方向第2側とし、前記回転方向における前記ねじ部材を螺合対象物から緩める側を緩め側として、
前記制御部は、
前記第4制御の後、前記移動部により前記回転体に前記軸方向第1側への力を作用させた状態を維持しつつ、前記ねじ部材が前記回転体を介して前記緩め側に回転するように、前記回転駆動部を制御する第5制御と、
前記第5制御において、前記回転体の前記軸方向第2側への移動量が、前記第5制御開始時の前記ねじ部材の前記螺合対象物に対する螺合長さに相当する量になった場合に、前記回転体を前記軸方向第2側へ移動させるように、前記移動部を制御する第6制御と、を行う、請求項1から4のいずれか一項に記載のねじ部材締緩装置。
【請求項6】
前記ねじ部材を保持する保持部と、
前記保持部によって前記ねじ部材が保持されているか否かを検出する第2検出部と、を更に備え、
前記制御部は、
前記ねじ部材が螺合対象物から取り外された後、当該ねじ部材を前記保持部に保持させるように、前記移動部を制御する第7制御を行い、
前記第7制御において、前記ねじ部材が前記保持部によって保持されていることを前記第2検出部が検出した場合に、前記ねじ部材の前記螺合対象物からの取り外しが完了したと判定する、請求項1から5のいずれか一項に記載のねじ部材締緩装置。
【請求項7】
ねじ部材の被嵌合部に嵌合する嵌合部を備え、当該嵌合部の軸心周りに回転自在に支持された回転体を用いて、前記ねじ部材を締め又は緩めるねじ部材締緩方法であって、
前記嵌合部は、前記回転体の回転方向に沿って規定形状が規定角度毎に繰り返し現れるように形成され、
前記回転方向の一方側を回転方向第1側とし、他方側を回転方向第2側として、
前記被嵌合部と前記嵌合部との軸心同士が合うように、前記回転体を移動させる第1工程と、
前記被嵌合部と前記嵌合部との軸心同士を合わせた状態を維持しつつ、前記被嵌合部に対して前記嵌合部を押し付けるように、前記回転体を移動させる第2工程と、
前記被嵌合部に対して前記嵌合部を押し付けた状態を維持しつつ、前記回転体を前記回転方向第1側に、前記規定角度に対応する角度に設定された第1規定角度回転させる第3工程と、
前記第3工程の後、前記被嵌合部に対して前記嵌合部を押し付けた状態を維持しつつ、前記回転体を前記回転方向第2側に、前記第1規定角度よりも小さい第2規定角度回転させる第4工程と、を備えた、ねじ部材締緩方法。
【請求項8】
前記嵌合部と前記被嵌合部とは、前記規定角度毎に繰り返される前記嵌合部の前記規定形状の位相が、前記被嵌合部の対応する形状の位相と合致した場合に、嵌合するように構成されており、
前記第3工程は、前記回転体の状態を検出する第1検出工程を含み、
前記第3工程において、前記第1検出工程にて検出した前記回転体の状態に基づいて、前記被嵌合部と前記嵌合部との位相のずれが、前記第2規定角度以下に設定された角度閾値以下になったと判定した場合に、前記第4工程へ移行する、請求項7に記載のねじ部材締緩方法。
【請求項9】
前記嵌合部の軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向における前記被嵌合部に対して前記嵌合部が接近する側を軸方向第1側として、
前記第1検出工程において、前記回転体の回転トルク、及び前記回転体の前記軸方向の移動量の少なくとも一方を検出し、
前記第3工程において、前記回転体の回転トルクが第1閾値よりも大きくなった場合、又は、前記回転体の前記軸方向第1側への移動量が第2閾値よりも大きくなった場合に、前記被嵌合部と前記嵌合部との位相のずれが前記角度閾値以下になったと判定する、請求項8に記載のねじ部材締緩方法。
【請求項10】
前記嵌合部の軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向における前記被嵌合部に対して前記嵌合部が接近する側を軸方向第1側とし、前記軸方向における前記被嵌合部に対して前記嵌合部が離間する側を軸方向第2側とし、前記回転方向における前記ねじ部材を螺合対象物から緩める側を緩め側として、
前記第4工程の後、前記回転体に前記軸方向第1側への力を作用させた状態を維持しつつ、前記ねじ部材が前記緩め側に回転するように前記回転体を回転させる第5工程と、
前記第5工程において、前記回転体の前記軸方向第2側への移動量が、前記第5工程開始時の前記ねじ部材の前記螺合対象物に対する螺合長さに相当する量になった場合に、前記回転体を前記軸方向第2側へ移動させる第6工程と、を更に備えた、請求項7から9のいずれか一項に記載のねじ部材締緩方法。
【請求項11】
前記ねじ部材が螺合対象物から取り外された後、当該ねじ部材を保持部に保持させるように前記回転体を移動させる第7工程を更に備え、
前記第7工程は、前記保持部によって前記ねじ部材が保持されているか否かを検出する第2検出工程を含み、
前記第7工程において、前記ねじ部材が前記保持部によって保持されていることを前記第2検出工程にて検出した場合に、前記ねじ部材の前記螺合対象物からの取り外しが完了したと判定する、請求項7から10のいずれか一項に記載のねじ部材締緩方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ部材の被嵌合部に嵌合する嵌合部を備えた回転体と、当該回転体を回転させる回転駆動部と、回転体を移動させる移動部と、を備えたねじ部材締緩装置、及びねじ部材締緩方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような技術の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、「背景技術」及び「発明が解決しようとする課題」の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1には、ロボットアーム(30)の先端に取り付けられたナットランナ(40)を備えている。ナットランナ(40)は、ねじ部材(11)の被嵌合部(11d)に嵌合する嵌合部(40d)が設けられた回転体(40c)を備えたねじ部材締緩装置が開示されている。このように構成されたねじ部材締緩装置では、ナットランナ(40)における回転体(40c)の嵌合部(40d)を、ねじ部材(11)の被嵌合部(11d)に嵌合させた後、回転体(40c)を回転させることで、螺合対象(10)に対してねじ部材(11)を締め、又は緩めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-237444号公報(図6,7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のねじ部材締緩装置では、ナットランナ(40)における回転体(40c)の嵌合部(40d)を、ねじ部材(11)の被嵌合部(11d)に嵌合させる場合の制御として、まず、ねじ部材(11)の被嵌合部(11d)と回転体(40c)の嵌合部(40d)との軸心同士が合うように、ロボットアーム(30)によりナットランナ(40)を移動させる。次に、被嵌合部(11d)に対して嵌合部(40d)を押し付けるように、ロボットアーム(30)によりナットランナ(40)にねじ部材(11)に向けた力を作用させる。そして、この状態を維持しつつ、ナットランナ(40)の回転体(40c)を低速で回転させることにより、当該回転体の嵌合部(40d)をねじ部材(11)の被嵌合部(11d)に嵌合させる(特許文献1の段落0028参照)。
【0006】
しかし、上記のような制御では、回転体(40c)の回転に伴って、被嵌合部(11d)と嵌合部(40d)との嵌合面同士が高い圧力で接する状態となり、回転体(40c)をねじ部材(11)に向けて移動させることができなくなる場合があった。その結果、回転体(40c)の嵌合部(40d)とねじ部材(11)の被嵌合部(11d)とを、適切に嵌合させることができない場合が生じ得るという問題があった。
【0007】
そこで、回転体の嵌合部とねじ部材の被嵌合部とを適切に嵌合することができる技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記に鑑みた、ねじ部材締緩装置の特徴構成は、
ねじ部材の被嵌合部に嵌合する嵌合部を備え、当該嵌合部の軸心周りに回転自在に支持された回転体と、
前記回転体を回転させる回転駆動部と、
前記回転体を移動させる移動部と、
前記回転駆動部及び前記移動部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記回転駆動部による前記回転体の回転方向の一方側を回転方向第1側とし、他方側を回転方向第2側として、
前記制御部は、
前記被嵌合部と前記嵌合部との軸心同士が合うように、前記移動部を制御する第1制御と、
前記被嵌合部と前記嵌合部との軸心同士を合わせた状態を維持しつつ、前記被嵌合部に対して前記嵌合部を押し付けるように、前記移動部を制御する第2制御と、
前記被嵌合部に対して前記嵌合部を押し付けた状態を維持しつつ、前記回転体を前記回転方向第1側に第1規定角度回転させるように、前記回転駆動部を制御する第3制御と、
前記第3制御の後、前記被嵌合部に対して前記嵌合部を押し付けた状態を維持しつつ、前記回転体を前記回転方向第2側に、前記第1規定角度よりも小さい第2規定角度回転させるように、前記回転駆動部を制御する第4制御と、を行い、
前記嵌合部は、前記回転方向に沿って規定形状が規定角度毎に繰り返し現れるように形成され、
前記第1規定角度は、前記規定角度に対応する角度に設定されている点にある。
【0009】
この特徴構成によれば、ねじ部材の被嵌合部と回転体の嵌合部との軸心同士が合うように移動部を制御する第1制御、被嵌合部に対して嵌合部を押し付けるように移動部を制御する第2制御、及び回転体を回転方向第1側に第1規定角度回転させるように回転駆動部を制御する第3制御の後に、被嵌合部に対して嵌合部を押し付けた状態を維持しつつ、回転体を回転方向第2側に第2規定角度回転させるように回転駆動部を制御する第4制御を行う。これにより、第3制御中に、ねじ部材の被嵌合部と回転体の嵌合部との嵌合面同士が高い圧力で接する状態となった場合であっても、第4制御によってそれらの嵌合面同士が離間するように回転体を回転させて、回転体をねじ部材に向けて移動させることができる。その結果、回転体の嵌合部とねじ部材の被嵌合部とを適切に嵌合することができる。
【0010】
また、上記に鑑みた、ねじ部材締緩方法の特徴構成は、
ねじ部材の被嵌合部に嵌合する嵌合部を備え、当該嵌合部の軸心周りに回転自在に支持された回転体を用いて、前記ねじ部材を締め又は緩めるねじ部材締緩方法であって、
前記嵌合部は、前記回転体の回転方向に沿って規定形状が規定角度毎に繰り返し現れるように形成され、
前記回転方向の一方側を回転方向第1側とし、他方側を回転方向第2側として、
前記被嵌合部と前記嵌合部との軸心同士が合うように、前記回転体を移動させる第1工程と、
前記被嵌合部と前記嵌合部との軸心同士を合わせた状態を維持しつつ、前記被嵌合部に対して前記嵌合部を押し付けるように、前記回転体を移動させる第2工程と、
前記被嵌合部に対して前記嵌合部を押し付けた状態を維持しつつ、前記回転体を前記回転方向第1側に、前記規定角度に対応する角度に設定された第1規定角度回転させる第3工程と、
前記第3工程の後、前記被嵌合部に対して前記嵌合部を押し付けた状態を維持しつつ、前記回転体を前記回転方向第2側に、前記第1規定角度よりも小さい第2規定角度回転させる第4工程と、を備えている点にある。
【0011】
この特徴構成によれば、ねじ部材の被嵌合部と回転体の嵌合部との軸心同士が合うように回転体を移動させる第1工程、被嵌合部に対して嵌合部を押し付けるように回転体を移動させる第2工程、及び回転体を回転方向第1側に第1規定角度回転させる第3工程の後に、被嵌合部に対して嵌合部を押し付けた状態を維持しつつ、回転体を回転方向第2側に第2規定角度回転させる第4工程を行う。これにより、第3工程中に、ねじ部材の被嵌合部と回転体の嵌合部との嵌合面同士が高い圧力で接する状態となった場合であっても、第4工程によってそれらの嵌合面同士が離間するように回転体を回転させて、回転体をねじ部材に向けて移動させることができる。その結果、回転体の嵌合部とねじ部材の被嵌合部とを適切に嵌合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るねじ部材締緩装置が用いられた設備の平面図
図2】実施形態に係るねじ部材締緩装置及び治具が、ロボットアームに取り付けられたフローティングユニットに支持された様子を示す斜視図
図3】実施形態に係るねじ部材締緩装置、及び螺合対象物を支持する治具を示す、回転体の嵌合部の軸心に沿う方向から見た図
図4】嵌合部の軸心に沿う方向から見た回転体を示す図、及び回転体の軸心に沿う断面図
図5】実施形態に係るねじ部材締緩装置の制御ブロック図
図6】第1制御及び第2制御の一例を示す図
図7】第3制御及び第4制御の一例を示す図
図8】第5制御及び第6制御の一例を示す図
図9】螺合対象物からねじ部材を取り外す場合における制御の一例を示すフローチャート
図10】螺合対象物からねじ部材を取り外す場合における制御の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、実施形態に係るねじ部材締緩装置100について、図面を参照して説明する。ねじ部材締緩装置100は、螺合対象物Wに対して、ねじ部材Sを締め、又は緩める装置である。図1及び図2に示すように、本実施形態では、ねじ部材締緩装置100は、ロボットアームAの先端部に取り付けられたフローティングユニットFに支持されている。フローティングユニットFには、螺合対象物Wを支持するための治具Jも支持されている。本実施形態では、ねじ部材締緩装置100は、治具Jに支持された状態の螺合対象物Wから、ねじ部材S(図3参照)を取り外す作業を行う。
【0014】
図1に示すように、本実施形態では、螺合対象物Wは、搬送装置Cによって搬送方向Dに搬送される車体Vのドアユニットである。図示の例では、ロボットアームAは、車体Vの搬送経路における両側方のそれぞれに配置されている。
【0015】
治具Jは、螺合対象物Wの種類に対応した複数種類が存在しており、作業の対象となる螺合対象物Wの種類に応じて取り替えられる。図2に示すように、治具Jは、枠状に形成されたフレームJaと、当該フレームJaに支持された複数の固定部Jbを備えている。複数の固定部Jbは、フレームJaに螺合対象物Wを当接させた状態で、当該螺合対象物Wを固定するように構成されている。複数の固定部Jbのそれぞれは、治具Jを固定する固定状態、及び治具Jの固定を解除する固定解除状態のいずれかに切り替え可能に構成されている。固定部Jbは、螺合対象物Wの種類に応じて治具Jごとに、数及び位置等が異なっている。
【0016】
フローティングユニットFは、当該フローティングユニットFに対して、ねじ部材締緩装置100及び治具Jを一体的に相対移動可能かつ相対回転可能に支持するように構成されている。そのため、ねじ部材締緩装置100及び治具JがフローティングユニットFに支持された状態では、ねじ部材締緩装置100と治具Jとの相対位置は常に一定である。
【0017】
以下の説明では、フローティングユニットFに支持されたねじ部材締緩装置100及び治具Jにおいて、互いに直交する3方向を、それぞれ「第1方向X」、「第2方向Y」、及び「第3方向Z」とする。本実施形態では、第2方向Yは、治具Jによって支持された螺合対象物Wに螺合しているねじ部材Sの軸心方向、つまり、ねじ部材Sの螺合対象物Wに対する螺合方向に一致する。
【0018】
図2に示すように、本実施形態では、治具Jは、フローティングユニットFに対して、第1方向Xの一方側に配置されている。そして、図3に示すように、治具Jは、螺合対象物Wに対して第1方向Xに当接した状態で、螺合対象物Wを支持する。本実施形態では、螺合対象物Wが治具Jによって支持された状態で、螺合対象物Wにおける第2方向Yの一方側の端部に、一対のねじ部材Sが蝶番Hを介して螺合している。図3に示す例では、螺合対象物Wにおける第3方向Zに並ぶ2箇所のそれぞれに、一対のねじ部材Sが第3方向Zに並んだ状態で螺合している。
【0019】
図2及び図3に示すように、本実施形態では、ねじ部材締緩装置100は、フローティングユニットFに対して、第2方向Yにおける螺合対象物Wに螺合するねじ部材Sが位置する側に配置されている。本実施形態では、ねじ部材締緩装置100は、一対のナットランナ10と、一対の第1移動機構20と、一対の第2移動機構30と、一対の第3移動機構40と、を備えている。
【0020】
本実施形態では、一方のナットランナ10、一方の第1移動機構20、一方の第2移動機構30、及び一方の第3移動機構40と、他方のナットランナ10、他方の第1移動機構20、他方の第2移動機構30、及び他方の第3移動機構40とは、第3方向Zに並んで配置されている。なお、一方のナットランナ10、一方の第1移動機構20、一方の第2移動機構30、及び一方の第3移動機構40と、他方のナットランナ10、他方の第1移動機構20、他方の第2移動機構30、及び他方の第3移動機構40とは、同様に構成されているため、特に記載する場合を除いて、他方のナットランナ10、他方の第1移動機構20、他方の第2移動機構30、及び他方の第3移動機構40の説明を省略する。
【0021】
ナットランナ10は、回転体1と、回転駆動部2(図5参照)と、を備えている。図3に示すように、回転体1は、ねじ部材Sの被嵌合部Saに嵌合する嵌合部1aを備えている。そして、回転体1は、嵌合部1aの軸心周りに回転自在に支持されている。回転駆動部2は、回転体1を回転させるように構成されている。回転駆動部2は、例えば、モータと、当該モータの回転を回転体1に伝達する伝達機構と、を含む。本実施形態では、回転駆動部2は、ケース11に収容されている。また、回転体1は、ケース11によって回転自在に支持されている。
【0022】
本実施形態では、螺合対象物Wが治具Jによって支持された状態で、嵌合部1aの軸心が第2方向Yに沿うように回転体1が配置されている。つまり、本実施形態では、第2方向Yが、嵌合部1aの軸心に沿う方向である「軸方向」に相当する。
【0023】
以下の説明では、螺合対象物Wが治具Jによって支持された状態で、第2方向Yにおけるねじ部材Sの被嵌合部Saに対して回転体1の嵌合部1aが接近する側を「軸方向第1側Y1」とし、第2方向Yにおけるねじ部材Sの被嵌合部Saに対して回転体1の嵌合部1aが離間する側を「軸方向第2側Y2」とする。また、回転体1の回転方向を「回転方向R」とする。
【0024】
図2及び図3に示すように、第1移動機構20は、ナットランナ10を支持する第1支持部21と、当該第1支持部21を第1方向Xに案内する第1案内部22と、第1支持部21を第1方向Xに移動させる第1駆動部23(図5参照)と、を備えている。
【0025】
本実施形態では、第1支持部21は、ナットランナ10のケース11を支持している。本実施形態では、ケース11は、第1方向Xに沿う軸心を有する筒状に形成されている。そして、ケース11の第1方向Xの一方側の端部に、回転体1が配置されている。
【0026】
第1案内部22は、第1支持部21を第1方向Xに移動可能に支持している。第1案内部22としては、例えば、第1方向Xに沿って延在するレールと、当該レールに沿って移動する移動体とを備えた直動機構を用いることができる。また、第1駆動部23としては、例えば、モータと、当該モータの回転運動を第1方向Xに沿う直線運動に変換する変換機構とを備えた電動シリンダを用いることができる。なお、第1駆動部23として、流体圧シリンダを用いても良い。流体圧シリンダとしては、例えば、空気圧シリンダや油圧シリンダ等を用いることができる。
【0027】
第2移動機構30は、第1案内部22を支持する第2支持部31と、当該第2支持部31を第2方向Yに案内する第2案内部32と、第2支持部31を第2方向Yに移動させる第2駆動部33(図5参照)と、を備えている。
【0028】
本実施形態では、第2支持部31は、第1方向X及び第3方向Zに沿う板状に形成されている。そして、第2支持部31は、第1案内部22を軸方向第1側Y1から支持している。第2案内部32は、第2支持部31を第2方向Yに移動可能に支持している。本実施形態では、第2方向Yに沿って延在する一対の第2案内部32が、第1方向Xに並んで配置されている。第2案内部32としては、例えば、第2方向Yに沿って延在する軸部材と、当該軸部材に沿って移動する移動体を備えた直動機構を用いることができる。また、第2駆動部33としては、例えば、第2支持部31に連結された可動部を有する流体圧シリンダを用いることができる。流体圧シリンダとしては、例えば、空気圧シリンダや油圧シリンダ等を用いることができる。なお、第2駆動部33として、電動シリンダを用いても良い。
【0029】
第3移動機構40は、第2案内部32を支持する第3支持部41と、当該第3支持部41を第3方向Zに案内する第3案内部42と、第3支持部41を第3方向Zに移動させる第3駆動部43(図5参照)と、を備えている。
【0030】
本実施形態では、第3支持部41は、第1方向X及び第3方向Zに沿う板状に形成されている。そして、第3支持部41は、第2支持部31に対して軸方向第1側Y1から対向するように配置されている。第3案内部42は、第3支持部41を第3方向Zに移動可能に支持している。第3案内部42としては、例えば、第3方向Zに沿って延在するレールと、当該レールに沿って移動する移動体とを備えた直動機構を用いることができる。また、第3駆動部43としては、例えば、モータと、当該モータの回転運動を第3方向Zに沿う直線運動に変換する変換機構とを備えた電動シリンダを用いることができる。なお、第3駆動部43として、流体圧シリンダを用いても良い。流体圧シリンダとしては、例えば、空気圧シリンダや油圧シリンダ等を用いることができる。
【0031】
このように、本実施形態のねじ部材締緩装置100では、ナットランナ10が、第1移動機構20によって第1方向Xに移動され、第2移動機構30によって第2方向Yに移動され、第3移動機構40によって第3方向Zに移動される。つまり、本実施形態では、第1移動機構20、第2移動機構30、及び第3移動機構40が、回転体1を移動させる「移動部3」として機能する。以上のように、ねじ部材締緩装置100は、回転体1と、回転駆動部2と、移動部3と、を備えている。
【0032】
図2及び図3に示すように、本実施形態では、ねじ部材締緩装置100は、ねじ部材Sを保持する保持部4を備えている。本実施形態では、保持部4は、ねじ部材Sの軸心が第2方向Yに沿うように、ねじ部材Sを保持する。また、本実施形態では、治具Jの軸方向第2側Y2を向く側面における第3方向Zに並ぶ2箇所のそれぞれに、一対の保持部4が第3方向Zに並んだ状態で配置されている。
【0033】
図3に示すように、本実施形態では、ねじ部材Sは、六角柱状の頭部を有する六角ボルトである。そのため、本実施形態では、ねじ部材Sの被嵌合部Saは、六角柱状の頭部である。これに伴い、図4に示すように、本実施形態では、回転体1は、嵌合部1aとして六角柱状の凹部が軸方向第1側Y1に向けて開口するように形成されたソケットである。そのため、嵌合部1aは、当該嵌合部1aの軸心を囲む複数(ここでは、6個)の側面1bを有する角筒状に形成されている。
【0034】
このように、本実施形態では、ねじ部材Sの被嵌合部Saは、ねじ部材Sの回転方向に沿って規定形状が規定角度毎に繰り返し現れるように形成されている。そして、回転体1の嵌合部1aは、被嵌合部Saの形状に対応するように、回転体1の回転方向Rに沿って規定形状が規定角度毎に繰り返し現れるように形成されている。こうして、本実施形態では、嵌合部1aと被嵌合部Saとは、規定角度毎に繰り返される嵌合部1aの規定形状の位相が、被嵌合部Saの対応する形状の位相と合致した場合に、嵌合するように構成されている。
【0035】
また、本実施形態では、複数の側面1bのうちの隣接する側面1bの境界部1cにおける軸方向第1側Y1の端部に、第2方向Yに対して傾斜した面取り部1dが形成されている。本例では、面取り部1dは、嵌合部1aの軸方向第1側Y1の端部における回転方向Rの全域に、連続的に形成されている。また、本例では、面取り部1dは、嵌合部1aの径方向の外側から軸心に向かうに従って、次第に軸方向第2側Y2に位置するように傾斜している。
【0036】
図5に示すように、ねじ部材締緩装置100は、回転駆動部2及び移動部3の動作を制御する制御部5を備えている。本実施形態では、制御部5は、第1移動機構20の第1駆動部23、第2移動機構30の第2駆動部33、及び第3移動機構40の第3駆動部43を制御する。
【0037】
本実施形態では、ねじ部材締緩装置100は、回転体1の状態を検出する第1検出部6と、保持部4によってねじ部材Sが保持されているか否かを検出する第2検出部7と、を備えている。制御部5は、第1検出部6の検出信号、及び第2検出部7の検出信号を取得する。
【0038】
本実施形態では、第1検出部6は、回転体1の回転トルクT、及び回転体1の第2方向Yの移動量Mの少なくとも一方を検出するように構成されている。本例では、第1検出部6は、回転体1の回転トルクTを検出するトルクセンサ等の第1センサと、回転体1の第2方向Yの移動量Mを検出するエンコーダ等の第2センサとの双方を含む。つまり、本例では、第1検出部6は、回転体1の回転トルクT、及び回転体1の第2方向Yの移動量Mの双方を検出するように構成されている。
【0039】
制御部5は、第1制御、第2制御、第3制御、及び第4制御を、当該記載の順に行う。
【0040】
図6における左側の図に示すように、第1制御では、制御部5は、ねじ部材Sの被嵌合部Saと回転体1の嵌合部1aとの軸心同士が合うように、移動部3を制御する。ここで、上述したように、本実施形態では、フローティングユニットFは、当該フローティングユニットFに対して、ねじ部材締緩装置100及び治具Jを一体的に相対移動可能かつ相対回転可能に支持している。つまり、第1移動機構20、第2移動機構30、及び第3移動機構40を含むねじ部材締緩装置100と治具Jとの相対位置関係は常に一定である。そのため、螺合対象物Wが治具Jに支持された状態では、ねじ部材締緩装置100と螺合対象物Wとの相対位置関係も常に一定である。したがって、回転体1に対する螺合対象物Wに螺合しているねじ部材Sの相対位置は予め算出することができる。
【0041】
図6における右側の図に示すように、第2制御では、制御部5は、ねじ部材Sの被嵌合部Saと回転体1の嵌合部1aとの軸心同士を合わせた状態を維持しつつ、被嵌合部Saに対して嵌合部1aを押し付けるように、移動部3を制御する。ここでは、第2制御において、嵌合部1aと被嵌合部Saとの位相が互いに一致しなかったものとする。そのため、本実施形態では、第2制御において、ねじ部材Sの被嵌合部Saが有する複数(ここでは、6個)の角部Sbが、回転体1に形成された面取り部1dに対して軸方向第1側Y1から当接し、回転体1の軸方向第1側Y1への移動が規制される。
【0042】
図7における(a)~(c)の図に示すように、第3制御では、制御部5は、ねじ部材Sの被嵌合部Saに対して回転体1の嵌合部1aを押し付けた状態を維持しつつ、回転体1を回転方向第1側R1に第1規定角度θ1回転させるように、回転駆動部2を制御する。ここで、第1規定角度θ1は、回転体1の嵌合部1aにおいて回転方向Rに沿って規定形状が繰り返し現れる角度間隔である規定角度に対応する角度に設定されている。本実施形態のように、嵌合部1aが六角柱状に形成されている場合には、規定形状が繰り返し現れる角度間隔は60°である。そこで、第1規定角度θ1は、例えば60°に設定することができる。ここで、回転方向第1側R1は、回転駆動部2による回転体1の回転方向Rの一方側である。なお、図示の例とは異なり、嵌合部1aが2個の六角柱状を重ね合わせたような形状の12角ソケットである場合、規定形状が繰り返し現れる角度間隔は30°である。その場合、第1規定角度θ1は、例えば30°に設定することができる。
【0043】
図7における(d)の図に示すように、第4制御では、制御部5は、ねじ部材Sの被嵌合部Saに対して回転体1の嵌合部1aを押し付けた状態を維持しつつ、回転体1を回転方向第2側R2に、第1規定角度θ1よりも小さい第2規定角度θ2回転させるように、回転駆動部2を制御する。本実施形態では、第2規定角度θ2は、回転体1の面取り部1dによって嵌合部1aが被嵌合部Saに嵌合するように回転方向Rに案内される回転方向Rの角度範囲に対応する値に設定されている。この角度範囲は、回転体1の面取り部1dの第2方向Yに対する傾斜角度に応じて異なる範囲となる。また、この角度範囲は、第2方向Y(軸方向)における面取り部1dが形成された範囲の大きさや面取り部1d自体の形状によっても異なる範囲となる。第2規定角度θ2は、例えば5°に設定することができる。なお、回転方向第2側R2は、回転駆動部2による回転体1の回転方向の他方側である。つまり、回転方向第2側R2は、回転駆動部2による回転体1の回転方向における、回転方向第1側R1とは反対側である。
【0044】
本実施形態では、制御部5は、第3制御において、第1検出部6により検出された回転体1の状態に基づいて、被嵌合部Saと嵌合部1aとの位相のずれが第2規定角度θ2以下に設定された角度閾値TH以下になったと判定した場合に、第4制御へ移行する。本例では、制御部5は、第3制御において、回転体1の回転トルクTが第1閾値TH1よりも大きくなった場合、又は、回転体1の軸方向第1側Y1への移動量Mが第2閾値TH2よりも大きくなった場合に、被嵌合部Saと嵌合部1aとの位相のずれが角度閾値TH以下になったと判定する。
【0045】
図7に示す例では、第3制御を開始してから、回転体1が回転方向第1側R1に回転するのに伴い、ねじ部材Sの角部Sbが回転体1の面取り部1dに沿って相対的に移動するように、回転体1が軸方向第1側Y1に僅かに移動する(図7における(a)及び(b)の図参照)。そして、更に回転体1が回転方向第1側R1に回転すると、回転体1における嵌合部1aの側面1bが、ねじ部材Sにおける被嵌合部Saの側面に対して回転方向第2側R2から当接する(図7における(c)の図参照)。その結果、ねじ部材Sの被嵌合部Saと回転体1の嵌合部1aとの嵌合面(嵌合部1aの側面1b及び被嵌合部Saの側面)同士が高い圧力で接する状態となり、回転体1の軸方向第1側Y1への移動が阻害される。更に、回転体1の回転方向第1側R1への回転が阻害されることになり、回転体1の回転トルクTが上昇する。そして、回転体1の回転トルクTが第1閾値TH1よりも大きくなった場合には、ねじ部材Sの被嵌合部Saと回転体1の嵌合部1aとの嵌合面同士が回転方向Rに離間するように、回転体1を回転方向第2側R2に回転させる。その結果、回転体1が軸方向第1側Y1へ移動し、ねじ部材Sの被嵌合部Saと回転体1の嵌合部1aとが嵌合する(図7における(d)の図参照)。
【0046】
本実施形態では、制御部5は、第4制御の後、第5制御、第6制御、及び第7制御を、当該記載の順に行う。
【0047】
図8における(a)及び(b)の図に示すように、第5制御では、制御部5は、移動部3により回転体1に軸方向第1側Y1への力を作用させた状態を維持しつつ、ねじ部材Sが回転体1を介して緩め側Raに回転するように、回転駆動部2を制御する。ここで、緩め側Raは、回転体1の回転方向におけるねじ部材Sを螺合対象物Wから緩める側である。なお、回転方向第1側R1及び回転方向第2側R2のいずれが緩め側Raであっても良い。
【0048】
図8における(c)及び(d)の図に示すように、第6制御では、制御部5は、回転体1を軸方向第2側Y2へ移動させるように、移動部3を制御する。第6制御は、第5制御において、回転体1の軸方向第2側Y2への移動量Mが、第5制御開始時のねじ部材Sの螺合対象物Wに対する螺合長さLに相当する量になった場合に行われる。
【0049】
第7制御では、制御部5は、ねじ部材Sが螺合対象物Wから取り外された後、当該ねじ部材Sを保持部4に保持させるように、移動部3を制御する(図3における上側のナットランナ10参照)。制御部5は、第7制御において、ねじ部材Sが保持部4によって保持されていることを第2検出部7が検出した場合に、ねじ部材Sの螺合対象物Wからの取り外しが完了したと判定する。
【0050】
以下では、図9及び図10を参照して、螺合対象物Wからねじ部材Sを取り外す場合における制御部5の制御について説明する。図9及び図10は、螺合対象物Wからねじ部材Sを取り外す場合における制御部5の制御の一例を示すフローチャートである。なお、図9及び図10に示す制御部5の制御は、螺合対象物Wが治具Jに支持された状態で開始されているものとする。
【0051】
まず、図9に示すように、制御部5は、第1制御として、ねじ部材Sの被嵌合部Saと回転体1の嵌合部1aとの軸心同士が合うように、移動部3を制御する(ステップ#01)。ステップ#01は、「第1工程」に相当する。
【0052】
次に、制御部5は、第2制御として、ねじ部材Sの被嵌合部Saと回転体1の嵌合部1aとの軸心同士を合わせた状態を維持しつつ、被嵌合部Saに対して嵌合部1aを押し付けるように、移動部3を制御する(ステップ#02)。ステップ#02は、「第2工程」に相当する。
【0053】
続いて、制御部5は、第3制御として、ねじ部材Sの被嵌合部Saに対して回転体1の嵌合部1aを押し付けた状態を維持しつつ、回転体1を回転方向第1側R1に回転させるように、回転駆動部2を制御する(ステップ#03)。そして、制御部5は、第3制御において回転体1が回転を開始してから第1規定角度θ1回転したか否かを判断する(ステップ#04)。
【0054】
制御部5は、回転体1が第1規定角度θ1回転していないと判断した場合(ステップ#04:No)、回転体1の回転トルクTが第1閾値TH1よりも大きくなったこと、又は、回転体1の軸方向第1側Y1への移動量Mが第2閾値TH2よりも大きくなったことを満たすか否かを判断する(ステップ#05)。
【0055】
制御部5は、回転体1の回転トルクTが第1閾値TH1よりも大きくなった、又は、第3制御において回転体1が回転を開始してからの回転体1の軸方向第1側Y1への移動量Mが第2閾値TH2よりも大きくなったと判断した場合(ステップ#05:Yes)、第4制御として、ねじ部材Sの被嵌合部Saに対して回転体1の嵌合部1aを押し付けた状態を維持しつつ、回転体1を回転方向第2側R2に回転させるように、回転駆動部2を制御する(ステップ#06)。一方、制御部5は、回転体1の回転トルクTが第1閾値TH1以下、かつ、第3制御において回転体1が回転を開始してからの回転体1の軸方向第1側Y1への移動量Mが第2閾値TH2以下であると判断した場合(ステップ#05:No)、上記のステップ#03に戻る。
【0056】
また、制御部5は、上記のステップ#04において、回転体1が第1規定角度θ1回転したと判断した場合(ステップ#04:Yes)、上記のステップ#06を行う。
【0057】
上記のステップ#03,#04,#05は、「第3工程」に相当する。また、上記のステップ#05は、「第1検出工程」に相当する。
【0058】
上記のステップ#06の後、制御部5は、第4制御において回転体1が回転を開始してから第2規定角度θ2回転したか否かを判断する(ステップ#07)。
【0059】
制御部5は、回転体1が第2規定角度θ2回転していないと判断した場合(ステップ#07:No)、回転体1の軸方向第1側Y1への移動量Mが第3閾値TH3よりも大きくなったか否かを判断する(ステップ#08)。
【0060】
制御部5は、第4制御において回転体1が回転を開始してからの回転体1の軸方向第1側Y1への移動量Mが第3閾値TH3以下であると判断した場合(ステップ#08:No)、上記のステップ#06に戻る。
【0061】
一方、制御部5は、第4制御において回転体1が回転を開始してからの回転体1の軸方向第1側Y1への移動量Mが第3閾値TH3よりも大きくなったと判断した場合(ステップ#08:Yes)、ねじ部材Sの被嵌合部Saと回転体1の嵌合部1aとが嵌合したと判断する。そして、図10に示すように、制御部5は、第5制御として、移動部3により回転体1に軸方向第1側Y1への力を作用させた状態を維持しつつ、ねじ部材Sが回転体1を介して緩め側Raに回転するように、回転駆動部2を制御する(ステップ#09)。
【0062】
また、制御部5は、上記のステップ#07において、回転体1が第2規定角度θ2回転したと判断した場合(ステップ#07:Yes)、上記のステップ#09を行う。
【0063】
上記のステップ#06,#07,#08は、「第4工程」に相当する。また、上記のステップ#09は、「第5工程」に相当する。
【0064】
上記のステップ#09の後、制御部5は、回転体1の軸方向第2側Y2への移動量Mが、第5制御開始時のねじ部材Sの螺合対象物Wに対する螺合長さLに相当する量になったか否かを判断する(ステップ#10)。
【0065】
制御部5は、回転体1の軸方向第2側Y2への移動量Mが、第5制御開始時のねじ部材Sの螺合対象物Wに対する螺合長さLに相当する量になっていないと判断した場合(ステップ#10:No)、上記のステップ#09に戻る。
【0066】
一方、制御部5は、回転体1の軸方向第2側Y2への移動量Mが、第5制御開始時のねじ部材Sの螺合対象物Wに対する螺合長さLに相当する量になったと判断した場合(ステップ#10:Yes)、第6制御として、回転体1を軸方向第2側Y2へ移動させるように、移動部3を制御する(ステップ#11)。
【0067】
上記のステップ#10,#11は、「第6工程」に相当する。
【0068】
その後、制御部5は、第7制御として、螺合対象物Wから取り外されたねじ部材Sを保持部4に保持させるように、移動部3を制御する(ステップ#12)。そして、制御部5は、ねじ部材Sが保持部4によって保持されていることを第2検出部7が検出したか否かを判断する(ステップ#13)。
【0069】
制御部5は、ねじ部材Sが保持部4によって保持されてていることを第2検出部7が検出したと判断した場合(ステップ#13:Yes)、ねじ部材Sの螺合対象物Wからの取り外しが完了したと判定し(ステップ#14)、制御を終了する。
【0070】
一方、制御部5は、ねじ部材Sが保持部4によって保持されてていることを第2検出部7が検出していないと判断した場合(ステップ#13:No)、異常判定を行い(ステップ#15)、例えばねじ部材締緩装置100の稼働を停止する。
【0071】
上記のステップ#12,#13,#14,#15は、「第7工程」に相当する。また、上記のステップ#13は、「第2検出工程」に相当する。
【0072】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、ねじ部材Sが被嵌合部Saとして六角柱状の頭部を有する六角ボルトであり、回転体1が嵌合部1aとして六角柱状の凹部を有するソケットである構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、ねじ部材Sが被嵌合部Saとして六角柱状の凹部を有する六角穴付きボルトであり、回転体1が嵌合部1aとして六角柱状のビットである構成としても良い。
【0073】
(2)上記の実施形態では、制御部5は、第3制御において、回転体1の回転トルクTが第1閾値TH1よりも大きくなった場合、又は、回転体1の軸方向第1側Y1への移動量Mが第2閾値TH2よりも大きくなった場合に、被嵌合部Saと嵌合部1aとの位相のずれが角度閾値TH以下になったと判定して、第4制御へ移行する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第3制御において被嵌合部Saと嵌合部1aとの位相のずれを判定せず、回転体1を回転方向第1側R1に第1規定角度θ1回転させてから、第4制御へ移行する構成としても良い。
【0074】
(3)上記の実施形態では、制御部5は、第4制御において回転体1が回転を開始してからの回転体1の軸方向第1側Y1への移動量Mが第3閾値TH3よりも大きくなったと判断した場合に、ねじ部材Sの被嵌合部Saと回転体1の嵌合部1aとが嵌合したと判断する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第4制御において回転体1の軸方向第1側Y1への移動量Mを検出せず、回転体1を回転方向第2側R2に第2規定角度θ2回転させた場合に、ねじ部材Sの被嵌合部Saと回転体1の嵌合部1aとが嵌合したと判断する構成としても良い。
【0075】
(4)上記の実施形態では、嵌合部1aが、当該嵌合部1aの軸心を囲む複数の側面1bを有する角筒状に形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、嵌合部1aが、当該嵌合部1aの軸心に沿う方向視で曲線で構成された筒状の側面1bを有する構成としても良い。
【0076】
(5)上記の実施形態における具体例では、嵌合部1aの軸方向第1側Y1の端部における回転方向Rの全域に、面取り部1dが連続的に形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成には限定されることなく、例えば、嵌合部1aの軸方向第1側Y1の端部における、複数の側面1bのうちの隣接する側面1bの境界部1cのみに、第2方向Yに対して傾斜した面取り部1dが形成されていても良い。また、回転体1に面取り部1dが形成されていない構成としても良い。また、図4等に示した例では、面取り部1dの第2方向Y(軸方向)に沿う断面の形状が、嵌合部1aの軸心に向かって突出した円弧状となるように形成された構成としたが、そのような構成には限定されない。例えば、面取り部1dの第2方向Y(軸方向)に沿う断面の形状が直線状となり、或いは、回転体1の径方向の外側へ向かって窪んだ円弧状となるように形成された構成であっても良い。
【0077】
(6)上記の実施形態では、制御部5は、第5制御において、回転体1の軸方向第2側Y2への移動量Mが、第5制御開始時のねじ部材Sの螺合対象物Wに対する螺合長さLに相当する量になった場合に、回転体1を軸方向第2側Y2へ移動させるように移動部3を制御する第6制御を行う構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第5制御において、回転体1の軸方向第2側Y2への移動量Mが、第5制御開始時のねじ部材Sの螺合対象物Wに対する螺合長さLよりも大きくなった場合に、第6制御を行う構成としても良い。
【0078】
(7)上記の実施形態では、回転体1の状態を検出する第1検出部6、及び保持部4によってねじ部材Sが保持されているか否かを検出する第2検出部7を備えた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1検出部6及び第2検出部7の少なくとも一方を備えていない構成としても良い。
【0079】
(8)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0080】
〔上記実施形態の概要〕
以下では、上記において説明したねじ部材締緩装置の概要について説明する。
【0081】
ねじ部材締緩装置は、
ねじ部材の被嵌合部に嵌合する嵌合部を備え、当該嵌合部の軸心周りに回転自在に支持された回転体と、
前記回転体を回転させる回転駆動部と、
前記回転体を移動させる移動部と、
前記回転駆動部及び前記移動部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記回転駆動部による前記回転体の回転方向の一方側を回転方向第1側とし、他方側を回転方向第2側として、
前記制御部は、
前記被嵌合部と前記嵌合部との軸心同士が合うように、前記移動部を制御する第1制御と、
前記被嵌合部と前記嵌合部との軸心同士を合わせた状態を維持しつつ、前記被嵌合部に対して前記嵌合部を押し付けるように、前記移動部を制御する第2制御と、
前記被嵌合部に対して前記嵌合部を押し付けた状態を維持しつつ、前記回転体を前記回転方向第1側に第1規定角度回転させるように、前記回転駆動部を制御する第3制御と、
前記第3制御の後、前記被嵌合部に対して前記嵌合部を押し付けた状態を維持しつつ、前記回転体を前記回転方向第2側に、前記第1規定角度よりも小さい第2規定角度回転させるように、前記回転駆動部を制御する第4制御と、を行い、
前記嵌合部は、前記回転方向に沿って規定形状が規定角度毎に繰り返し現れるように形成され、
前記第1規定角度は、前記規定角度に対応する角度に設定されている。
【0082】
この構成によれば、ねじ部材の被嵌合部と回転体の嵌合部との軸心同士が合うように移動部を制御する第1制御、被嵌合部に対して嵌合部を押し付けるように移動部を制御する第2制御、及び回転体を回転方向第1側に第1規定角度回転させるように回転駆動部を制御する第3制御の後に、被嵌合部に対して嵌合部を押し付けた状態を維持しつつ、回転体を回転方向第2側に第2規定角度回転させるように回転駆動部を制御する第4制御を行う。これにより、第3制御中に、ねじ部材の被嵌合部と回転体の嵌合部との嵌合面同士が高い圧力で接する状態となった場合であっても、第4制御によってそれらの嵌合面同士が離間するように回転体を回転させて、回転体をねじ部材に向けて移動させることができる。その結果、回転体の嵌合部とねじ部材の被嵌合部とを適切に嵌合することができる。
【0083】
ここで、前記回転体の状態を検出する第1検出部を更に備え、
前記嵌合部と前記被嵌合部とは、前記規定角度毎に繰り返される前記嵌合部の前記規定形状の位相が、前記被嵌合部の対応する形状の位相と合致した場合に、嵌合するように構成されており、
前記制御部は、前記第3制御において、前記第1検出部により検出された前記回転体の状態に基づいて、前記被嵌合部と前記嵌合部との位相のずれが前記第2規定角度以下に設定された角度閾値以下になったと判定した場合に、前記第4制御へ移行すると好適である。
【0084】
この構成によれば、第3制御において、第1検出部により検出された回転体の状態に基づいて、被嵌合部と嵌合部との位相のずれが小さくなったと判定した場合に、第4制御を開始する。これにより、第4制御を適切なタイミングで開始することができる。したがって、回転体の嵌合部とねじ部材の被嵌合部とを更に適切に嵌合することができる。
【0085】
前記第1検出部を備えた構成において、
前記嵌合部の軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向における前記被嵌合部に対して前記嵌合部が接近する側を軸方向第1側として、
前記第1検出部は、前記回転体の回転トルク、及び前記回転体の前記軸方向の移動量の少なくとも一方を検出するように構成され、
前記制御部は、前記第3制御において、前記回転体の回転トルクが第1閾値よりも大きくなった場合、又は、前記回転体の前記軸方向第1側への移動量が第2閾値よりも大きくなった場合に、前記被嵌合部と前記嵌合部との位相のずれが前記角度閾値以下になったと判定すると好適である。
【0086】
この構成によれば、第3制御において、ねじ部材の被嵌合部と回転体の嵌合部との嵌合面同士が高い圧力で接して、回転体の回転トルクが第1閾値よりも大きくなった場合に、被嵌合部と嵌合部との位相のずれが小さくなったと判定して、第4制御を開始する。或いは、第3制御において、回転体がねじ部材に向けて移動を開始し、回転体の移動量が第2閾値よりも大きくなった場合に、被嵌合部と嵌合部との位相のずれが小さくなったと判定して、第4制御を開始する。これにより、第4制御をより適切なタイミングで開始することができる。したがって、回転体の嵌合部とねじ部材の被嵌合部とを更に適切に嵌合することができる。
【0087】
また、前記嵌合部の軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向における前記被嵌合部に対して前記嵌合部が接近する側を軸方向第1側として、
前記嵌合部は、当該嵌合部の軸心を囲む複数の側面を有する角筒状に形成され、
複数の前記側面のうちの隣接する前記側面の境界部における前記軸方向第1側の端部に、前記軸方向に対して傾斜した面取り部が形成され、
前記第2規定角度は、前記面取り部によって前記嵌合部が前記被嵌合部に嵌合するように前記回転方向に案内される前記回転方向の角度範囲に対応する値に設定されていると好適である。
【0088】
この構成によれば、第3制御及び第4制御において、被嵌合部と嵌合部との位相のずれが小さくなるように、嵌合部に形成された面取り部により被嵌合部を案内することができる。
また、第2規定角度は、面取り部によって嵌合部が被嵌合部に嵌合するように回転方向に案内される回転方向の角度範囲に対応する値に設定されている。これにより、第4制御において、嵌合部の面取り部により被嵌合部が案内される範囲内で、回転体を回転方向第2側に回転させることができる。したがって、回転体の嵌合部とねじ部材の被嵌合部とを嵌合させることが容易となる。
【0089】
また、前記嵌合部の軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向における前記被嵌合部に対して前記嵌合部が接近する側を軸方向第1側とし、前記軸方向における前記被嵌合部に対して前記嵌合部が離間する側を軸方向第2側とし、前記回転方向における前記ねじ部材を螺合対象物から緩める側を緩め側として、
前記制御部は、
前記第4制御の後、前記移動部により前記回転体に前記軸方向第1側への力を作用させた状態を維持しつつ、前記ねじ部材が前記回転体を介して前記緩め側に回転するように、前記回転駆動部を制御する第5制御と、
前記第5制御において、前記回転体の前記軸方向第2側への移動量が、前記第5制御開始時の前記ねじ部材の前記螺合対象物に対する螺合長さに相当する量になった場合に、前記回転体を前記軸方向第2側へ移動させるように、前記移動部を制御する第6制御と、を行うと好適である。
【0090】
この構成によれば、回転体に軸方向第1側への力を作用させた状態を維持しつつ、ねじ部材を緩め側に回転させる第5制御において、ねじ部材の螺合対象物への螺合が解除された時点で、回転体を軸方向第2側へ移動させる第6制御を開始する。これにより、ねじ部材の螺合対象物への螺合が解除された後に、ねじ部材が螺合対象物に押し付けられた状態が継続することを回避できる。
【0091】
また、前記ねじ部材を保持する保持部と、
前記保持部によって前記ねじ部材が保持されているか否かを検出する第2検出部と、を更に備え、
前記制御部は、
前記ねじ部材が螺合対象物から取り外された後、当該ねじ部材を前記保持部に保持させるように、前記移動部を制御する第7制御を行い、
前記第7制御において、前記ねじ部材が前記保持部によって保持されていることを前記第2検出部が検出した場合に、前記ねじ部材の前記螺合対象物からの取り外しが完了したと判定すると好適である。
【0092】
この構成によれば、ねじ部材が螺合対象物から取り外された後に、当該ねじ部材が保持部により保持されるため、ねじ部材を回収することが容易となる。
また、本構成によれば、ねじ部材が保持部によって保持されていることを第2検出部が検出した場合に、ねじ部材の螺合対象物からの取り外しが完了したと判定する。これにより、ねじ部材が保持部によって保持されていないと判定された場合に、例えば、ねじ部材締緩装置の稼働を停止する処理等を行うことができるため、不測の事態を回避することができる。
【0093】
ねじ部材締緩方法は、
ねじ部材の被嵌合部に嵌合する嵌合部を備え、当該嵌合部の軸心周りに回転自在に支持された回転体を用いて、前記ねじ部材を締め又は緩めるねじ部材締緩方法であって、
前記嵌合部は、前記回転体の回転方向に沿って規定形状が規定角度毎に繰り返し現れるように形成され、
前記回転方向の一方側を回転方向第1側とし、他方側を回転方向第2側として、
前記被嵌合部と前記嵌合部との軸心同士が合うように、前記回転体を移動させる第1工程と、
前記被嵌合部と前記嵌合部との軸心同士を合わせた状態を維持しつつ、前記被嵌合部に対して前記嵌合部を押し付けるように、前記回転体を移動させる第2工程と、
前記被嵌合部に対して前記嵌合部を押し付けた状態を維持しつつ、前記回転体を前記回転方向第1側に、前記規定角度に対応する角度に設定された第1規定角度回転させる第3工程と、
前記第3工程の後、前記被嵌合部に対して前記嵌合部を押し付けた状態を維持しつつ、前記回転体を前記回転方向第2側に、前記第1規定角度よりも小さい第2規定角度回転させる第4工程と、を備えている。
【0094】
この構成によれば、ねじ部材の被嵌合部と回転体の嵌合部との軸心同士が合うように回転体を移動させる第1工程、被嵌合部に対して嵌合部を押し付けるように回転体を移動させる第2工程、及び回転体を回転方向第1側に第1規定角度回転させる第3工程の後に、被嵌合部に対して嵌合部を押し付けた状態を維持しつつ、回転体を回転方向第2側に第2規定角度回転させる第4工程を行う。これにより、第3工程中に、ねじ部材の被嵌合部と回転体の嵌合部との嵌合面同士が高い圧力で接する状態となった場合であっても、第4工程によってそれらの嵌合面同士が離間するように回転体を回転させて、回転体をねじ部材に向けて移動させることができる。その結果、回転体の嵌合部とねじ部材の被嵌合部とを適切に嵌合することができる。
【0095】
ここで、前記嵌合部と前記被嵌合部とは、前記規定角度毎に繰り返される前記嵌合部の前記規定形状の位相が、前記被嵌合部の対応する形状の位相と合致した場合に、嵌合するように構成されており、
前記第3工程は、前記回転体の状態を検出する第1検出工程を含み、
前記第3工程において、前記第1検出工程にて検出した前記回転体の状態に基づいて、前記被嵌合部と前記嵌合部との位相のずれが、前記第2規定角度以下に設定された角度閾値以下になったと判定した場合に、前記第4工程へ移行すると好適である。
【0096】
この構成によれば、第3工程において、第1検出工程にて検出した回転体の状態に基づいて、被嵌合部と嵌合部との位相のずれが小さくなったと判定した場合に、第4工程を開始する。これにより、第4工程を適切なタイミングで開始することができる。したがって、回転体の嵌合部とねじ部材の被嵌合部とを更に適切に嵌合することができる。
【0097】
また、前記嵌合部の軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向における前記被嵌合部に対して前記嵌合部が接近する側を軸方向第1側として、
前記第1検出工程において、前記回転体の回転トルク、及び前記回転体の前記軸方向の移動量の少なくとも一方を検出し、
前記第3工程において、前記回転体の回転トルクが第1閾値よりも大きくなった場合、又は、前記回転体の前記軸方向第1側への移動量が第2閾値よりも大きくなった場合に、前記被嵌合部と前記嵌合部との位相のずれが前記角度閾値以下になったと判定すると好適である。
【0098】
この構成によれば、第3工程において、ねじ部材の被嵌合部と回転体の嵌合部との嵌合面同士が高い圧力で接して、回転体の回転トルクが第1閾値よりも大きくなった場合に、被嵌合部と嵌合部との位相のずれが小さくなったと判定して、第4工程を開始する。或いは、第3工程において、回転体がねじ部材に向けて移動を開始し、回転体の移動量が第2閾値よりも大きくなった場合に、被嵌合部と嵌合部との位相のずれが小さくなったと判定して、第4工程を開始する。これにより、第4工程をより適切なタイミングで開始することができる。したがって、回転体の嵌合部とねじ部材の被嵌合部とを更に適切に嵌合することができる。
【0099】
また、前記嵌合部の軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向における前記被嵌合部に対して前記嵌合部が接近する側を軸方向第1側とし、前記軸方向における前記被嵌合部に対して前記嵌合部が離間する側を軸方向第2側とし、前記回転方向における前記ねじ部材を螺合対象物から緩める側を緩め側として、
前記第4工程の後、前記回転体に前記軸方向第1側への力を作用させた状態を維持しつつ、前記ねじ部材が前記緩め側に回転するように前記回転体を回転させる第5工程と、
前記第5工程において、前記回転体の前記軸方向第2側への移動量が、前記第5工程開始時の前記ねじ部材の前記螺合対象物に対する螺合長さに相当する量になった場合に、前記回転体を前記軸方向第2側へ移動させる第6工程と、を更に備えていると好適である。
【0100】
この構成によれば、回転体に軸方向第1側への力を作用させた状態を維持しつつ、ねじ部材を緩め側に回転させる第5工程において、ねじ部材の螺合対象物への螺合が解除された時点で、回転体を軸方向第2側へ移動させる第6工程を開始する。これにより、ねじ部材の螺合対象物への螺合が解除された後に、ねじ部材が螺合対象物に押し付けられた状態が継続することを回避できる。
【0101】
また、前記ねじ部材が螺合対象物から取り外された後、当該ねじ部材を保持部に保持させるように前記回転体を移動させる第7工程を更に備え、
前記第7工程は、前記保持部によって前記ねじ部材が保持されているか否かを検出する第2検出工程を含み、
前記第7工程において、前記ねじ部材が前記保持部によって保持されていることを前記第2検出工程にて検出した場合に、前記ねじ部材の前記螺合対象物からの取り外しが完了したと判定すると好適である。
【0102】
この構成によれば、ねじ部材が螺合対象物から取り外された後に、当該ねじ部材が保持部により保持されるため、ねじ部材を回収することが容易となる。
また、本構成によれば、ねじ部材が保持部によって保持されていることを第2検工程にて検出した場合に、ねじ部材の螺合対象物からの取り外しが完了したと判定する。これにより、ねじ部材が保持部によって保持されていないと判定された場合に、例えば、ねじ部材締緩装置の稼働を停止する処理等を行うことができるため、不測の事態を回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本開示に係る技術は、ねじ部材の被嵌合部に嵌合する嵌合部を備えた回転体と、当該回転体を回転させる回転駆動部と、回転体を移動させる移動部と、を備えたねじ部材締緩装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0104】
100 :ねじ部材締緩装置
1 :回転体
1a :嵌合部
2 :回転駆動部
3 :移動部
5 :制御部
S :ねじ部材
Sa :被嵌合部
θ1 :第1規定角度
θ2 :第2規定角度
R :回転方向
R1 :回転方向第1側
R2 :回転方向第2側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10