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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】乗用芝刈機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/64 20060101AFI20231011BHJP
   A01D 34/74 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
A01D34/64 H
A01D34/74
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020217026
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102345
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-12-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】戸田 大尊
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-080547(JP,A)
【文献】実開昭55-147113(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0150359(US,A1)
【文献】特表2021-503946(JP,A)
【文献】特開2006-094773(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0274708(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/00-34/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体と、
前記走行車体に設けられるモアユニットと、を備え、
前記モアユニットは、
草を刈る草刈機構が設けられるデッキ部と、
前記デッキ部の前方に設けられ、草刈作業時に接地する前輪部と、
前端側で前記前輪部と連結し、前記デッキ部に揺動可能に設けられる前輪アーム部と、
前記前輪アーム部とリンク機構を介して連結し、前記前輪部の下端と前記デッキ部の下端との位置関係を変更する刈高さシリンダと、
前記デッキ部の後部を吊り下げ支持し、刈高さシリンダの作動時に姿勢が変化する前記前輪アーム部と連動して回動して前記デッキ部の姿勢を略水平に維持する後アーム部と、
前記後アーム部に運転者の乗降時に足を置いて乗降を補助するステップ部を備えること特徴とする、乗用芝刈機。
【請求項2】
前記後アーム部のステップ部は前部ステップ部と後部ステップ部を有し、後部ステップ部は前部ステップ部に対して角度をつけて設けられ、前方から後方にかけて高くなるように構成された請求項1記載の乗用芝刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
走行車体の前部に運転者が乗り込むフロアを有し、フロアの下方に芝刈り装置を備え、芝刈り装置は昇降アームを介して昇降シリンダに連結された乗用芝刈機が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-24437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのような従来の構成の乗用芝刈機はフロアの下方にモアデッキを上昇させるためのクリアランスが必要であるため、運転者が乗り込むフロアをある程度高い位置に設計しなければならなかった。
【0005】
このため、運転者は乗り降り時にモアデッキをステップの代わりとして踏み、乗り込んでいたが、足を置く位置として乗り降りしやすい場所にはモアデッキの部品等があり、乗り降りし難いことがあった。
【0006】
本発明では、適切な場所にステップ設けることで容易に乗降可能な乗用芝刈機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明は、
走行車体と、
前記走行車体に設けられるモアユニットと、を備え、
前記モアユニットは、
草を刈る草刈機構が設けられるデッキ部と、
前記デッキ部の前方に設けられ、草刈作業時に接地する前輪部と、
前端側で前記前輪部と連結し、前記デッキ部に揺動可能に設けられる前輪アーム部と、
前記前輪アーム部とリンク機構を介して連結し、前記前輪部の下端と前記デッキ部の下端との位置関係を変更する刈高さシリンダと、
前記デッキ部の後部を吊り下げ支持し、刈高さシリンダの作動時に姿勢が変化する前記前輪アーム部と連動して回動して前記デッキ部の姿勢を略水平に維持する後アーム部と、
前記後アーム部に運転者の乗降時に足を置いて乗降を補助するステップ部を備えること特徴とする、乗用芝刈機である。
【0008】
第2の本発明は、
前記後アーム部のステップ部は前部ステップ部と後部ステップ部を有し、後部ステップ部は前部ステップ部に対して角度をつけて設けられ、前方から後方にかけて高くなるように構成された、第1の本発明の乗用芝刈機である。
【発明の効果】
【0009】
第1の本発明により、運転者が乗降する際にちょうど良い場所と高さの位置に乗降を補助するステップを設けることができる。また、刈高さ変更時に水平を維持する機能を有するフレームをステップとして共用するため、部品点数およびスペースの占有率を削減できる。
【0010】
第2の本発明により、回動して角度が変化する後アーム部にステップを設けても、前部ステップ部または後部ステップ部のいずれかが踏みやすい角度となるため、運転者の乗降が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明における実施の形態にかかる乗用芝刈機の側面図
図2】同乗用芝刈機のモアユニットの斜視図
図3】同モアユニットの平面図
図4】同モアユニットの外側前方から後方を見た斜視図
図5】同乗用芝刈機のモアユニットの側面図
図6】同モアユニットの高さ調節をする際のデッキ部の水平状態を示す略示側面図その1
図7】同モアユニットの高さ調節をする際のデッキ部の水平状態を示す略示側面図その2
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる乗用芝刈機の一例である。以下では、乗用芝刈機の進行方向を基準として、前後、左右、上下とする。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態に係る乗用芝刈機は、走行車体2の前方の下方側にモアユニット1を備える。3は運転席、4、5はそれぞれ前輪、後輪である。また後方に刈り取った芝草を一時的に収容するコレクター6を備える。Gは地面である。運転時に運転席3に座る運転者の足場となるフロア7はモアユニット1を上昇させるための空間を確保できる高さに設計される。後述する後アーム部14は地面Gとフロア7の間の高さで、左右両側寄りにそれぞれ位置するため、これを乗降ステップとして利用すると、フロア7への乗り降りが容易になる。
【0014】
図2以下にモアユニット1の構造などについて詳述する。
【0015】
すなわち、図2は、本実施の形態におけるモアユニット1の斜視図である。図2に示すように、モアユニット1は、デッキ部10と、草刈機構11と、前輪部12,12と、前輪アーム部13,13と、後アーム部14、14と、昇降アーム15、15とを備える。
【0016】
デッキ部10は、天面の下方側には草刈機構11の刈刃が収容され、天面の上方側には草刈機構11の動力部や、前輪アーム部13、後アーム部14、昇降アーム15等が外部に露出した状態で配置される。
【0017】
草刈機構11は、上記した走行車体2から供給される動力源から伝達される動力により、刈刃が回転動作し、草を刈る。
【0018】
前輪部12は、デッキ部10の前方側に設けられ、草刈時に補助輪12aが地面Gに接することで、前輪アーム部13を支持する。また、前輪部12は、上下方向に沿う回動軸が回動自在に設けられる回動機構12bを備える。回動機構12bは、補助輪12aに連結され、走行車体2の進行方向への走行に従動して回動することで、補助輪12aの向きを進行方向へ向ける。
【0019】
前輪アーム部13は、デッキ部10の上方に設けられ、前方側の一端(前端側)が前輪部12と連結され、後方側の他端(後端側)が後アーム部14と連結される。また、前輪アーム部13は、走行車体2の左右方向に沿う揺動軸を有する第1連結支点18によってデッキ部10に対して揺動するようになっている。
【0020】
具体的には、第1連結支点18は、前輪部12および後アーム部14の間の後ろ寄りに寄せて配置される。
【0021】
後アーム部14は、前輪アーム部13の前後方向における後方延長線上に配置される。具体的には、後アーム部13は、回動連結部19において、前端側が前輪アーム部13の後端側と連結する。
【0022】
また、後アーム部14は、前端側より後方の第2連結支点20でデッキ部10と揺動可能に連結する。また、後アーム部14は、後端側が左右方向を回動軸として回動可能に昇降アーム15に連結される。これにより、後アーム部14は、前輪アーム部13の揺動に連動して揺動する。後アーム部14は運転者が乗降時に足を置きやすくなるように上面に滑り止め加工が施されているステップ部14sを有する。
【0023】
一方、昇降アーム15は、走行車体2に連結され、走行車体2から供給される動力によってデッキ部10を昇降する。具体的には、昇降アーム15は、前端部22がデッキ部10と回動可能に連結され、後方側の水平機構21を介して後アーム部14に対して回動可能に連結される。これにより、昇降アーム15の昇降に伴ってデッキ部10が昇降する。
【0024】
次に、刈高さの変更の機構について説明する。すなわち前輪アーム部13,13には、それぞれリンク機構16,16を介して、前記前輪部12,12の下端と前記デッキ部10の下端との位置関係を変更する刈高さシリンダ17が連結されている。刈高さシリンダ17はデッキ部10の前部に設けられている。
【0025】
図3乃至図5はそれぞれ、モアユニット1を示す図面であって、図3および図4はその右側における右のシリンダカバー24を除いている図面、図8はその右側における右のシリンダカバー24を装着させた図である。ちなみに、23は左側に位置する左のシリンダカバーである。
【0026】
図3は平面図、図4は外側前方から後方を見た斜視図である。
【0027】
これら図において、リンク機構16について主に図4に基づいて説明する。リンク機構16はデッキ部10の前方左右それぞれに同じ構造のものが設けられており、それぞれ、第1連結具16a、連結軸16c、ブラケット16b、第1連結金具16d、第1連結ボルト16e、第2連結金具16f、第2連結ボルト16g、第3連結金具16hで構成されている。
【0028】
すなわち、刈高さシリンダ17側に、断面「9」の字型(上部は箱型、下部は板部)の第1連結具16aが設けられている。その下部の板部には連結軸16cが貫通している。この連結軸16cはデッキ部10の前部に左右に渡って装着され、左右のリンク機構16、16で共有されている。
【0029】
連結軸16cの左右両端は、デッキ部10の左右それぞれにおいて、ブラケット16b、16bによって回動自在に軸支されている。
【0030】
連結軸16cの両端寄り位置には、それぞれ、第1連結金具16dが固定されている。さらに、第1連結金具16dには第1連結ボルト16eを介して、第2連結金具16fが回動可能に連結され、さらに、第2連結金具16fには第2連結ボルト16gを介して第3連結金具16hが回動可能に連結されている。
【0031】
この第3連結金具16hは、前輪アーム部13に固定されている。他方、前記第1連結具16aは刈高さシリンダ17のロッド17aの先端が回動可能に連結されている。すなわち、断面9の字型の上部の箱型の部分にロッド17aの先端が挿入され、箱型の部分の軸16a1に回動可能に連結されている。
【0032】
なお、171は刈高さシリンダ17を駆動するDCモータ、172はオイルタンクである。
【0033】
ここで、刈高さシリンダ17を用いて、デッキ部10の地面Gに対する高さを調節する仕組みについて説明する。
【0034】
刈高さ調整スイッチ27(図1参照)によって、モータ171を所定量駆動すると、刈高さシリンダ17のロッド17aが所定位置まで伸縮する。その結果、ロッド17aの先端に連結されている箱型の部分の軸16a1が移動し、第1連結具16aが所定位置に回動して来る。この第1連結具16aは連結軸16cに固定されているので、連結軸16cは所定量回動する。その結果、連結軸16cの両端に固定されている第1連結金具16dが回動する。その回動によって、第1連結ボルト16eを介して、第2連結金具16fが回動する。その回動によって、第2連結ボルト16gを介して、第3連結金具16hが回動して所定の位置に移動する。その第3連結金具16hの回動移動によって、前輪アーム部13が移動する。
【0035】
例えば、刈高さシリンダ17のロッド17aが伸長すると、第1連結具16aが矢印Aに示すように回動する。その回動によって固定されている連結軸16cが矢印Bの方向に回動する。その回動によって、第1連結金具16が下方に回動し、それにつれて第2連結金具16fが下方に引き下ろされ、第3連結金具16hも下方へ移動する。その結果、前輪アーム部13は矢印Cのように下方に移動する。その結果、前輪12、12も下方に移動することになる。
【0036】
ここで、連結軸16cはブラケット16bによってデッキ部10に軸支されており、上記各部材の回動によって、前輪12が下方に移動するということは、前輪12側を基準にすると、デッキ部10側が上昇移動するということになる。すなわち、前輪12の下端が地面Gに接地しているとすると、デッキ部10の下端が地面Gに対して、高い位置をとることになって、刈り高さが高くなるということになる。
【0037】
逆に刈高さシリンダ17のロッド17aが縮小すると、逆回動によって、前輪アーム部13は上方へ移動することになり、地面Gに対して低い位置をとることになる。
【0038】
図6はその低い位置を示す略示側面図であり、その各部の骨格が太い線で略示されている。図7は高い位置をとった場合を示す略示側面図である。図6図7に示すように、刈り高さをシリンダ17によって変更しても、昇降アーム15、その前端部22、水平機構21、後アーム部14、第2連結支点20、回動連結部19、第1連結支点18、前輪アーム部13などの各部材の回動、移動によって、デッキ部10の水平状態は維持される。
【0039】
すなわち、前記前輪部12の下端と前記デッキ部10の下端との位置関係、具体的には、前記デッキ部10の下端の高さは、刈り高さの変更調節をした場合にも一意的に決まる。
【0040】
このように、刈り高さを調節するとシリンダ17の動作に連動して後アーム部14は第2連結支点20周りに回動するため、運転手乗降時のステップとしては足で踏む場所の角度が変わってしまい違和感が生じてしまう。しかし、ステップ14は前部ステップ部14fと後部ステップ部14rが異なる角度に構成されているため、後アーム部14の角度が変化しても前部ステップ部14fまたは後部ステップ部14rの少なくとも一方は踏みやすい角度になるため、運転手は踏みやすい方を踏んで乗降することで、容易に乗降できる。
【0041】
具体的には、後部ステップ部14rが前方から後方にかけて高くなるように構成されているおり、図6に示すように刈高さを低く設定している状態では後アーム部14の後ろ下がり傾斜が小さいため、前部ステップ部14fまたは後部ステップ部14rのいずれを踏んでも違和感なく昇降できる。一方で図7に示すように刈高さを高く設定している状態では、後アーム部14の後ろ下がり傾斜が大きいため、前部ステップ部14fは踏みにくい角度になるが、後部ステップ部14rは水平に近い角度となり、違和感なく踏んでフロア7との間で乗降することができる。
【0042】
また、図5に示すように、右シリンダカバー24と、左シリンダカバー23の上面の傾斜を前方から後方にかけて、斜めに下るようにすることが望ましい。これによって、作業中にカバー23,24の上に草が乗った場合、その草が走行車体2の後方へ滑り落とすことが出来る。
【0043】
また、図5に示すように、目盛り板26は上方に向かった凸の円弧上になっている。これによって、草が目盛り板26の上に乗っても滑り落ちることが期待できる。
【0044】
また、運転者の乗り降り時の補助となるステップ部14sを刈高さ調整における水平維持機能を有する後アーム部14に設けることで、部品の共用と多機能化を実現して、部品点数を削減できる、
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、モアデッキの構成を利用して容易に乗降できる乗用芝刈機を提供できるので、乗用芝刈機に最適である。
【符号の説明】
【0046】
1 モアユニット1
2 走行車体
3 運転席
4、5 前輪、後輪
6 コレクター
7 フロア
G 地面
10 デッキ部
11 草刈機構
12 前輪部
13 前輪アーム部
14 後アーム部
14sステップ部
14f前部ステップ部
14r後部ステップ部
15 昇降アーム
16 リンク機構
17 刈高さシリンダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7