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  • 特許-多層体および多層容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】多層体および多層容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20231011BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20231011BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231011BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20231011BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B32B27/34
B32B27/36
B32B27/00 H
B65D1/00 110
B65D1/02 110
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020516343
(86)(22)【出願日】2019-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2019017035
(87)【国際公開番号】W WO2019208500
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2018082856
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】宮部 高徳
(72)【発明者】
【氏名】小田 尚史
(72)【発明者】
【氏名】中村 仁
(72)【発明者】
【氏名】山中 政貴
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-035286(JP,A)
【文献】特開昭60-232952(JP,A)
【文献】国際公開第2017/115685(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/002075(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/146803(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 1/00
B65D 1/02
B29C 49/06
B29C 49/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂を主成分として含む層と、ポリアミド樹脂を主成分として含む層を有し、
前記ポリアミド樹脂を主成分とする層に含まれるポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂(A)10~90質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)90~10質量部を含み、
前記ポリアミド樹脂(A)は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の90モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の90モル%超がアジピン酸に由来し、
前記ポリアミド樹脂(B)は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の90モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の、30~65モル%アジピン酸に由来し、70~35モル%がイソフタル酸に由来する(但し、合計が100モル%を超えることはない)、多層体。
【請求項2】
前記ポリアミド樹脂を主成分として含む層に含まれるポリアミド樹脂は、前記ポリアミド樹脂(A)20~80質量部に対し、前記ポリアミド樹脂(B)80~20質量部を含、請求項1に記載の多層体。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂(B)におけるジカルボン酸由来の構成単位の、30~59モル%がアジピン酸に由来し、70~41モル%がイソフタル酸に由来する、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項4】
前記ポリアミド樹脂(B)が非晶性ポリアミド樹脂である、請求項1~のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項5】
さらに、第2のポリエステル樹脂を主成分として含む層を含み、かつ、
前記多層体は、前記ポリエステル樹脂を主成分として含む層、前記ポリアミド樹脂を主成分として含む層、前記第2のポリエステル樹脂を主成分として含む層の順に位置する、請求項1~のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項6】
延伸されている、請求項1~のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の多層体を含む多層容器。
【請求項8】
前記多層容器がボトルである、請求項に記載の多層容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層体および多層容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外層と内層を構成する樹脂として、ポリエステル樹脂を用い、前記外層と内層の間に、ポリアミド樹脂から形成されるバリア層を有する多層体や多層容器が検討されている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-169027号公報
【文献】特開昭60-232952号公報
【文献】特開2006-111718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が検討したところ、ポリエステル樹脂から形成される外層および内層と、ポリアミド樹脂から形成されるバリア層(中間層)を有する多層体や多層容器では、ポリアミド樹脂の種類によっては、酸素バリア性が劣ってしまうことが分かった。
一方、ポリアミド樹脂として、メタキシリレンジアミンとアジピン酸から構成されるポリアミド樹脂を用いた場合、酸素バリア性に優れた多層体や多層容器が得られるが、ポリエステル樹脂から形成される外層や内層と、バリア層が外部からの衝撃等により、層間剥離してしまう場合があることが分かった。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、優れた酸素バリア性を維持しつつ、耐層間剥離性に優れた多層体および多層容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、バリア層に、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の90モル%超がアジピン酸に由来するポリアミド樹脂と、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の、30~65モル%が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、70~35モル%がイソフタル酸に由来するポリアミド樹脂を併用することにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、下記手段<1>により、好ましくは<2>~<11>により、上記課題は解決された。
<1>ポリエステル樹脂を主成分として含む層と、ポリアミド樹脂を主成分として含む層を有し、
前記ポリアミド樹脂を主成分とする層に含まれるポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂(A)10~90質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)90~10質量部を含み、前記ポリアミド樹脂(A)は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の90モル%超がアジピン酸に由来し、前記ポリアミド樹脂(B)は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の、30~65モル%が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、70~35モル%がイソフタル酸に由来する(但し、合計が100モル%を超えることはない)、多層体。
<2>前記ポリアミド樹脂(A)におけるジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来する、<1>に記載の多層体。
<3>前記ポリアミド樹脂(B)におけるジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来する、<1>または<2>に記載の多層体。
<4>前記ポリアミド樹脂(B)におけるジカルボン酸由来の構成単位の30~65モル%がアジピン酸に由来する、<1>~<3>のいずれか1つに記載の多層体。
<5>前記ポリアミド樹脂を主成分として含む層に含まれるポリアミド樹脂は、前記ポリアミド樹脂(A)20~80質量部に対し、前記ポリアミド樹脂(B)80~20質量部を含み、前記ポリアミド樹脂(A)におけるジアミン由来の構成単位の90モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ポリアミド樹脂(B)におけるジアミン由来の構成単位の90モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ポリアミド樹脂(B)におけるジカルボン酸由来の構成単位の、30~65モル%がアジピン酸に由来し、70~35モル%がイソフタル酸に由来する、<1>に記載の多層体。
<6>前記ポリアミド樹脂(B)におけるジカルボン酸由来の構成単位の、30~59モル%がアジピン酸に由来し、70~41モル%がイソフタル酸に由来する、<1>~<5>のいずれか1つに記載の多層体。
<7>前記ポリアミド樹脂(B)が非晶性ポリアミド樹脂である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の多層体。
<8>さらに、第2のポリエステル樹脂を主成分として含む層を含み、かつ、前記多層体は、前記ポリエステル樹脂を主成分として含む層、前記ポリアミド樹脂を主成分として含む層、前記第2のポリエステル樹脂を主成分として含む層の順に位置する、<1>~<7>のいずれか1つに記載の多層体。
<9>延伸されている、<1>~<8>のいずれか1つに記載の多層体。
<10><1>~<9>のいずれか1つに記載の多層体を含む多層容器。
<11>前記容器がボトルである、<10>に記載の多層容器。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、優れた酸素バリア性を維持しつつ、耐層間剥離性に優れた多層体および多層容器を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】コールドパリソン成形で多層容器を製造する方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本発明における、非晶性樹脂とは、明確な融点を持たない樹脂を意味し、具体的には、樹脂の結晶融解エンタルピーΔHmが5J/g未満であることをいい、3J/g以下が好ましく、1J/g以下がより好ましい。結晶融解エンタルピーは後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0009】
本発明の多層体は、ポリエステル樹脂を主成分として含む層(以下、「ポリエステル樹脂層」ということがある)と、ポリアミド樹脂を主成分として含む層(以下、「バリア層」ということがある)を有し、ポリアミド樹脂を主成分とする層に含まれるポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂(A)10~90質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)90~10質量部を含み、ポリアミド樹脂(A)は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の90モル%超がアジピン酸に由来し、ポリアミド樹脂(B)は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の、30~65モル%が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、70~35モル%がイソフタル酸に由来する(但し、合計が100モル%を超えることはない)ことを特徴とする。このような構成とすることにより、優れた酸素バリア性を維持しつつ、耐層間剥離性に優れた多層体および多層容器を提供可能になる。すなわち、上記ポリアミド樹脂(A)から形成される層は、酸素バリア性に優れることは知られているが、ポリエステル樹脂層との剥離を起こす場合があり、耐層間剥離性が十分とは言えなかった。耐層間剥離性の改善には、バリア層に、ポリアミド樹脂(A)に加え、ポリアミド6I/6Tなどを配合することも考えられる。しかしながら、ポリアミド樹脂(A)に加え、ポリアミド6I/6Tを配合したバリア層は、酸素バリア性が劣ってしまう。そこで、種々検討した結果、ポリアミド樹脂(A)に、上記ポリアミド樹脂(B)を配合することによって、優れた酸素バリア性を維持しつつ、耐層間剥離性に優れる多層体の提供に成功したものである。
さらに、本発明の多層体は、外観も優れたものとすることができる。
また、本発明の多層体が多層容器である場合、上記性能を維持しつつ、60℃以上の比較的高温の内容物を充填したときにも、多層容器の外観変化や満注容量の変化なども抑制することが可能になる。
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0010】
<ポリエステル樹脂を主成分として含む層(ポリエステル樹脂層)>
ポリエステル樹脂層は、ポリエステル樹脂を主成分として含む層である。ここで主成分とは、ポリエステル樹脂がポリエステル樹脂層に含まれる成分の内、含有量が最も多い成分であることをいい、80質量%以上がポリエステル樹脂であることが好ましく、90質量%以上がポリエステル樹脂であることがより好ましく、95質量%以上がポリエステル樹脂であることがさらに好ましく、98質量%以上がポリエステル樹脂であることが一層好ましい。
ポリエステル樹脂の固有粘度は、0.50~0.90dL/gであることが好ましい。
ポリエステル樹脂は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
例えば、後述する第一の実施形態および第二の実施形態の両方を含むポリエステル樹脂なども本発明の実施形態の一例として挙げられる。
【0011】
ポリエステル樹脂層に含まれるポリエステル樹脂の第一の実施形態は、融点を有するポリエステル樹脂である。
第一の実施形態におけるポリエステル樹脂におけるポリエステル樹脂の融点は、100~300℃であることが好ましく、200~300℃であることがより好ましく、220~295℃であることがさらに好ましい。融点は後述する実施例に記載の方法に従って測定される。以下、融点について、同様である。
第一の実施形態のポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が、90℃未満であることが好ましく、85℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることがさらに好ましい。また、前記ガラス転移温度の下限値は60℃以上であることが好ましく、65℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましい。このようなポリエステル樹脂を用いることにより、成形加工性により優れる傾向にある。ガラス転移温度は後述する実施例に記載の方法に従って測定される。以下で説明するガラス転移温度についても同様である。
このようなポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸由来の構成単位と、ジオール由来の構成単位とから構成され、ジカルボン酸由来の構成単位の80モル%以上(好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上)がテレフタル酸およびそのエステルから選択される少なくとも1種に由来し、ジオール由来の構成単位の80モル%以上(好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上)がエチレングリコールに由来するポリエステル樹脂である。ここで、第一の実施形態におけるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸由来の構成単位とジオール由来の構成単位とから構成されるが、ジカルボン酸由来の構成単位とジオール由来の構成単位以外の構成単位や末端基等の他の部位を含みうる。本発明で用いるポリエステル樹脂は、通常、95質量%以上、好ましくは98質量%以上が、ジカルボン酸由来の構成単位とジオール由来の構成単位で構成される。他のポリエステル樹脂についても同様である。
第一の実施形態で用いうるポリエステル樹脂としては、特開2016-169027号公報の段落0064~0080の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0012】
ポリエステル樹脂層に含まれるポリエステル樹脂の第二の実施形態は、非晶性ポリエステル樹脂である。非晶性樹脂を用いることにより、透明性により優れた多層体が得られる。
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。前記ガラス転移温度の上限値は155℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。このようなポリエステル樹脂を用いることにより、より耐熱性に優れた多層体が得られる。
非晶性ポリエステル樹脂の一例としては、ジカルボン酸由来の構成単位と、ジオール由来の構成単位とから構成され、前記ジカルボン酸由来の構成単位の80モル%以上(好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上)がテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびそれらのエステルから選択される少なくとも1種に由来し、前記ジオール由来の構成単位の5~60モル%(好ましくは15~60モル%)がスピログリコールに由来し、95~40モル%(好ましくは85~40モル%)がエチレングリコールに由来するポリエステル樹脂が挙げられる。
非晶性ポリエステル樹脂の他の一例としては、ジカルボン酸由来の構成単位と、ジオール由来の構成単位とから構成され、前記ジカルボン酸由来の構成単位の80モル%以上(好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上)がテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびそのエステルから選択される少なくとも1種に由来し、前記ジオール由来の構成単位の90~10モル%(好ましくは85~40モル%)が1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来し、10~90モル%(好ましくは15~60モル%)がエチレングリコールに由来するポリエステル樹脂が挙げられる。
第二の実施形態で用いるポリエステル樹脂としては、特開2006-111718号公報の段落0010~0021に記載のポリエステル樹脂、特開2017-105873号公報に記載のポリエステル樹脂、WO2013/168804号パンフレットに記載のポリエステル樹脂を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0013】
本発明のポリエステル樹脂層には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。具体的には、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、増量剤、艶消し剤、乾燥調節剤、帯電防止剤、沈降防止剤、界面活性剤、流れ改良剤、乾燥油、ワックス類、着色剤、補強剤、表面平滑剤、レベリング剤、硬化反応促進剤、増粘剤などの各種添加剤を添加することもできる。その他の成分としては、特開2006-111718号公報の段落0026の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0014】
<ポリアミド樹脂を主成分として含む層(バリア層)>
ポリアミド樹脂を主成分とする層に含まれるポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂(A)10~90質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)90~10質量部を含み、ポリアミド樹脂(A)20~80質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)80~20質量部を含むことが好ましく、ポリアミド樹脂(A)25~75質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)75~25質量部を含むことがより好ましい。但し、合計が100質量部を超えることはない。
ここで主成分とは、ポリアミド樹脂がバリア層に含まれる成分の内、含有量が最も多い成分であることをいい、80質量%以上がポリアミド樹脂であることが好ましく、90質量%以上がポリアミド樹脂であることがより好ましく、95質量%以上がポリアミド樹脂であることがさらに好ましく、98質量%以上がポリアミド樹脂であることが一層好ましい。
ポリアミド樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)は、それぞれ、1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、バリア層が2種以上のポリアミド樹脂(A)および/またはポリアミド樹脂(B)を含む場合、後述するガラス転移温度等の特性は、最も含有量が多いポリアミド樹脂(A)および/またはポリアミド樹脂(B)が少なくとも前記特性を満たしていればよく、90質量%以上のポリアミド樹脂(A)および/またはポリアミド樹脂(B)が前記特性を満たしていることが好ましい。
尚、ポリアミド樹脂を主成分とする層に含まれるポリアミド樹脂は、上記ポリアミド樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)以外のポリアミド樹脂を、ポリアミド樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)の合計の5質量%以下の割合で含んでいてもよいが、0~3質量%であることが好ましく、0~1質量%であることがさらに好ましい。
【0015】
<<ポリアミド樹脂(A)>>
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の90モル%超がアジピン酸に由来する。このような構成とすることにより、よりガスバリア性に優れた多層体が得られる。
【0016】
ポリアミド樹脂(A)は、ジアミン由来の構成単位の好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上が、一層好ましくは99モル%以上がキシリレンジアミンに由来する。キシリレンジアミンは、メタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンが好ましく、メタキシリレンジアミンがより好ましい。本発明におけるポリアミド樹脂(A)の好ましい実施形態の一例は、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂である。
【0017】
ポリアミド樹脂(A)の原料ジアミン成分として用いることができるキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
ジアミン成分として、キシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合は、ジアミン由来の構成単位の30モル%以下であり、より好ましくは1~25モル%、特に好ましくは5~20モル%の割合で用いる。
【0018】
ポリアミド樹脂(A)は、ジカルボン酸由来の構成単位の好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上がアジピン酸に由来する。
ポリアミド樹脂(A)の原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましいアジピン酸以外のジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
ジカルボン酸成分として、アジピン酸以外のジカルボン酸を用いる場合は、ジカルボン酸由来の構成単位の10モル%未満であり、より好ましくは1~8モル%、特に好ましくは1~5モル%の割合で用いる。
【0019】
なお、ポリアミド樹脂(A)は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を主成分として構成されるが、これら以外の構成単位を完全に排除するものではなく、ε-カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類由来の構成単位を含んでいてもよいことは言うまでもない。ここで主成分とは、ポリアミド樹脂(A)を構成する構成単位のうち、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計が全構成単位のうち最も多いことをいう。本発明では、ポリアミド樹脂(A)における、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計は、全構成単位の90%以上を占めることが好ましく、95%以上を占めることがより好ましく、98%以上を占めることがさらに好ましい。
【0020】
ポリアミド樹脂(A)の数平均分子量(Mn)は、10,000以上であることが好ましく、15,000以上であることがより好ましい。上記ポリアミド樹脂(A)の数平均分子量の上限値は特に定めるものではないが、例えば、100,000以下であり、さらには50,000以下、40,000以下であってもよい。本発明における数平均分子量は、WO2017/090556号公報の段落0016に記載の方法に従って測定され、この内容は本明細書に組み込まれる。
ポリアミド樹脂(A)は、通常、結晶性樹脂であり、その融点は、190~300℃であることが好ましく、200~270℃であることがより好ましく、210~250℃であることがさらに好ましい。
ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度は、75℃~95℃であることが好ましい。
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、リン原子を3~300質量ppmの割合で含むことが好ましく、4~250質量ppmの割合で含むことがより好ましく、5~200質量ppmの割合で含むことがさらに好ましい。このような構成とすることにより、より成形加工性に優れる傾向にある。
【0021】
<<ポリアミド樹脂(B)>>
ポリアミド樹脂(B)は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の、30~65モル%が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、70~35モル%がイソフタル酸に由来する(但し、合計が100モル%を超えることはない)。このようなポリアミド樹脂を配合することにより、透明性および酸素バリア性をより向上させることができる。本発明で用いるポリアミド樹脂(B)は、通常、非晶性ポリアミド樹脂である。非晶性ポリアミド樹脂を用いることにより、多層体の透明性をより向上させることができる。
【0022】
ポリアミド樹脂(B)は、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上が、好ましくは80モル%以上が、より好ましくは90モル%以上が、さらに好ましくは95モル%以上が、一層好ましくは99モル%以上がキシリレンジアミンに由来する。キシリレンジアミンは、メタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンが好ましく、メタキシリレンジアミンがより好ましい。
本発明におけるポリアミド樹脂(B)の好ましい実施形態の一例は、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂である。
【0023】
キシリレンジアミン以外のジアミンとしては、パラフェニレンジアミン等の芳香族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンが例示される。これらの他のジアミンは、1種のみでも2種以上であってもよい。
ジアミン成分として、キシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合は、ジアミン由来の構成単位の30モル%以下であり、より好ましくは1~25モル%、特に好ましくは5~20モル%の割合で用いる。
【0024】
本発明では、上述の通り、ポリアミド樹脂(B)におけるジカルボン酸由来の構成単位の、30~65モル%が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸(好ましくは炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸、より好ましくはアジピン酸)に由来し、70~35モル%がイソフタル酸に由来する。
ポリアミド樹脂(B)におけるジカルボン酸由来の構成単位を構成する全ジカルボン酸のうち、イソフタル酸の割合の下限値は、35モル%以上であり、40モル%以上が好ましく、41モル%以上がより好ましい。前記イソフタル酸の割合の上限値は、70モル%以下であり、67モル%以下が好ましく、65モル%以下がより好ましく、62モル%以下がさらに好ましく、60モル%以下が一層好ましく、58モル%以下であってもよい。このような範囲とすることにより、本発明の多層体の酸素バリア性がより向上する傾向にある。
【0025】
ポリアミド樹脂(B)におけるジカルボン酸由来の構成単位を構成する全ジカルボン酸のうち、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸(好ましくは炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸、より好ましくはアジピン酸)の割合の下限値は、30モル%以上であり、33モル%以上が好ましく、35モル%以上がより好ましく、38モル%以上がさらに好ましく、40モル%以上が一層好ましく、42モル%以上であってもよい。前記炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸の割合の上限値は、65モル%以下であり、60モル%以下が好ましく、59モル%以下であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の多層体の酸素バリア性がより向上する傾向にある。
【0026】
炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸は、上述のとおり、炭素数4~8のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。
ポリアミド樹脂の原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましい炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種または2種以上を混合して使用できるが、これらの中でもポリアミド樹脂の融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、アジピン酸が好ましい。
【0027】
ポリアミド樹脂(B)における、ジカルボン酸由来の構成単位を構成する全ジカルボン酸のうち、イソフタル酸と炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸の合計の割合は、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、98モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であってもよい。このような割合とすることにより、本発明の多層体の透明性がより向上する傾向にある。
【0028】
イソフタル酸と炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸といった異性体等のナフタレンジカルボン酸等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
ポリアミド樹脂(B)はテレフタル酸由来の構成単位を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、ポリアミド樹脂(B)に含まれるイソフタル酸のモル量の5モル%以下であり、3モル%以下が好ましく、1モル%以下がさらに好ましい。このような構成とすることにより、適度な成形加工性が維持され、ガスバリア性が湿度によってより変化しにくくなる。
【0029】
なお、本発明で用いるポリアミド樹脂(B)は、ジカルボン酸由来の構成単位とジアミン由来の構成単位から構成されるが、ジカルボン酸由来の構成単位およびジアミン由来の構成単位以外の構成単位や、末端基等の他の部位を含みうる。他の構成単位としては、ε-カプロラクタム、バレロラクタム、ラウロラクタム、ウンデカラクタム等のラクタム、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸等由来の構成単位が例示できるが、これらに限定されるものではない。さらに、本発明で用いるポリアミド樹脂(B)は、合成に用いた添加剤等の微量成分が含まれる。本発明で用いるポリアミド樹脂(B)は、通常、95質量%以上、好ましくは98質量%以上が、ジカルボン酸由来の構成単位またはジアミン由来の構成単位である。
【0030】
ポリアミド樹脂(B)の数平均分子量(Mn)は、8,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましい。上記ポリアミド樹脂(B)の数平均分子量の上限値は特に定めるものではないが、例えば、50,000以下であり、さらには30,000以下、20,000以下であってもよい。本発明の実施形態の一例として、ポリアミド樹脂(B)のMnがポリアミド樹脂(A)のMnよりも小さい形態が挙げられる。より好ましくは、ポリアミド樹脂(B)のMnがポリアミド樹脂(A)のMnよりも、5,000以上小さいことであり、さらに好ましくは、8,000以上小さいことであり、一層好ましくは、10,000以上小さいことである。前記ポリアミド樹脂(B)のMnとポリアミド樹脂(A)のMnの差の上限は、25,000以下であることが例示される。このような構成とすることにより、ポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)の分散性、相溶性が良好となり、透明性とガスバリア性がより優れる傾向にある。
【0031】
ポリアミド樹脂(B)のガラス転移温度は、90℃を超え150℃以下であることが好ましく、95~145℃であることがより好ましく、101~140℃であることがさらに好ましく、120~135℃であることが一層好ましい。このような構成とすることにより、多層容器の耐層間剥離性がより向上する傾向にある。
【0032】
本発明で用いるポリアミド樹脂(B)は、リン原子を3~300質量ppmの割合で含むことが好ましく、4~250質量ppmの割合で含むことがより好ましく、5~200質量ppmの割合で含むことがさらに好ましく、20~100質量ppmの割合で含むことが一層好ましく、20~50質量ppmの割合で含むことがより一層好ましい。
【0033】
<<他の成分>>
本発明におけるバリア層は、本発明の目的を損なわない範囲で、ガラス繊維、炭素繊維などの無機充填剤;ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、モンモリロナイト、有機化クレイなどの板状無機充填剤;各種エラストマー類などの耐衝撃性改質材;結晶核剤;脂肪酸アミド系、脂肪酸アマイド系化合物等の滑剤;銅化合物、有機もしくは無機ハロゲン系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系、硫黄系化合物、リン系化合物等の酸化防止剤;着色防止剤;ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤;離型剤、可塑剤、着色剤、難燃剤等の添加剤;酸化反応促進剤、ベンゾキノン類、アントラキノン類、ナフトキノン類を含む化合部等の添加剤を含んでいてもよい。
【0034】
<<<酸化反応促進剤>>>
本発明におけるバリア層(バリア性樹脂組成物)は酸化反応促進剤を含んでいてもよい。酸化反応促進剤を含むことで、多層体のガスバリア性をさらに高めることができる。
酸化反応促進剤は、酸化反応促進効果を奏するものであればよいが、ポリアミド樹脂の酸化反応を促進する観点から、遷移金属元素を含む化合物が好ましい。遷移金属元素としては、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅および亜鉛から選ばれる少なくとも1種が好ましく、酸素吸収能を効果的に発現させる観点から、コバルト、鉄、マンガン、およびニッケルから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、コバルトがさらに好ましい。
このような酸化反応促進剤としては、上記金属単体の他、上述の金属を含む低価数の酸化物、無機酸塩、有機酸塩または錯塩の形で使用される。無機酸塩としては、塩化物や臭化物等のハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。一方、有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩等が挙げられる。また、β-ジケトンまたはβ-ケト酸エステル等との遷移金属錯体も利用することができる。
特に本発明では酸素吸収能が良好に発現することから、上記金属原子を含むカルボン酸塩、炭酸塩、アセチルアセトネート錯体、酸化物およびハロゲン化物から選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましく、オクタン酸塩、ネオデカン酸塩、ナフテン酸塩、ステアリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩およびアセチルアセトネート錯体から選ばれる少なくとも1種を使用することがより好ましく、オクタン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、酢酸コバルト、ステアリン酸コバルト等のコバルトカルボキシレート類を使用することがさらに好ましい。
【0035】
上述した酸化反応促進剤は、ポリアミド樹脂の酸化反応促進だけではなく、不飽和炭素結合を有する有機化合物や、分子内に2級もしくは3級水素を有する化合物の酸化反応の触媒としても機能する。そのため、本発明におけるバリア層には、酸素吸収能をより高めるために、上述した酸化反応促進剤に加えて、ポリブタジエンやポリイソプレン等の不飽和炭化水素類の重合物ないしそれらのオリゴマー、キシリレンジアミンを骨格として有する化合物、あるいは前記化合物とポリエステルの相溶性を高めるための官能基を付加した化合物等に例示される、各種化合物を配合することもできる。
酸化反応促進剤の例としては、WO2012/090797号公報の段落0063~0066に記載の遷移金属化合物、段落0067~0072に記載の酸化性有機化合物を挙げることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0036】
酸化反応促進剤が遷移金属元素を含むものである場合、その含有量は、ポリアミド樹脂の酸化反応を促進して成形品の酸素吸収能を高める観点から、バリア層中の遷移金属濃度として、好ましくは10~1,000質量ppm、より好ましくは20~500質量ppm、さらに好ましくは40~300質量ppmである。
多層体中の遷移金属濃度は、公知の方法、例えばICP発光分光分析、ICP質量分析、蛍光X線分析等を用いて測定することができる。
上記酸化反応促進剤は、1種を単独で、および2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上併用する場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0037】
<多層体の実施形態>
本発明の多層体の好ましい実施形態は、バリア層が、ポリアミド樹脂(A)20~80質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)80~20質量部を含み、ポリアミド樹脂(A)におけるジアミン由来の構成単位の90モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、ポリアミド樹脂(B)におけるジアミン由来の構成単位の90モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、ポリアミド樹脂(B)におけるジカルボン酸由来の構成単位の、30~65モル%(好ましくは30~59モル%、より好ましくは40~59モル%)がアジピン酸に由来し、70~35モル%(好ましくは70~41モル%、より好ましくは60~41モル%)がイソフタル酸に由来する態様である。
このような構成とすることにより、耐層間剥離性がより向上する傾向にある。
【0038】
<層構成>
本発明の多層体は、ポリエステル樹脂を主成分として含む層(ポリエステル樹脂層)とポリアミド樹脂を主成分として含む層(バリア層)をそれぞれ、少なくとも、1層ずつ有する多層体である。ポリエステル樹脂層とバリア層は、通常、接している。
多層体を構成する層の数は、少なくとも3層からなることが好ましい。本発明では、少なくとも2層のポリエステル樹脂層と、少なくとも、1層のバリア層を含む形態が例示される。本発明の多層体の好ましい実施形態として、多層体が、さらに、第2のポリエステル樹脂を主成分として含む層を含み、かつ、ポリエステル樹脂を主成分として含む層、ポリアミド樹脂を主成分として含む層、第2のポリエステル樹脂を主成分として含む層の順に位置する多層体が挙げられる。
多層体を構成する層の数は、より具体的には、3~10層がより好ましく、3~5層がさらに好ましい。
多層容器における、ポリエステル樹脂層の数は、1~5層が好ましく、2層~4層がより好ましい。多層容器における、バリア層の数は、1層~3層が好ましく、1層または2層がより好ましい。
例えば、多層容器が、1層のポリエステル樹脂層および1層のバリア層からなるポリエステル樹脂層/バリア層構成(ポリエステル樹脂層が内層である)またはバリア層/ポリエステル樹脂層構成(バリア層が内層である)であってもよく、2層のポリエステル樹脂層および1層のバリア層からなるポリエステル樹脂層/バリア層/ポリエステル樹脂層の3層構成であってもよく、ポリエステル樹脂層/バリア層/ポリエステル樹脂層/バリア層/ポリエステル樹脂層の5層構成であってもよい。
【0039】
より優れた耐層間剥離性の観点から、バリア層は中心配置もしくは内側配置が好ましく、内側配置がより好ましい。「バリア層が中心配置である」とは、多層体の厚さ方向の断面において、バリア層が厚さ方向の中央付近に存在することをいう。「バリア層が内側配置である」とは、多層体の厚さ方向の断面において、バリア層が厚さ方向の内表面側に近い位置に存在することをいう。本発明のバリア層の位置として、例えば、特開平02-229023号公報における中間層がバリア層である態様が例示され、同公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0040】
本発明の多層容器は、前記ポリエステル樹脂層およびバリア層に加えて、所望する性能等に応じて任意の層を含んでいてもよい。
【0041】
<延伸>
本発明の多層体は、延伸されていることが好ましい。延伸としては、ボトルなどの容器を成形する際に行う二軸延伸ブロー成形が挙げられる。
本発明の延伸の好ましい実施形態として、本発明の多層体を含むプリフォーム(パリソンと呼ばれることもある)を、二軸延伸ブロー成形することが好ましい。特に、ストレッチロッドと高圧エアーによる延伸工程を有することが好ましい。二軸延伸ブロー成形の詳細は後述する。
【0042】
<多層容器>
本発明では、本発明の多層体を含む多層容器が例示される。多層容器の形状は特に限定されず、例えば、ボトル、カップ、チューブ、トレイ、タッパウェア等の成形容器であってもよく、また、パウチ、スタンディングパウチ、ジッパー式保存袋等の袋状容器であってもよい。本発明では、ボトルが好ましい。
また、ボトルの全ての部分に本発明の多層体、特に、バリア層が含まれている必要はない。例えば、ボトルの胴部にバリア層が含まれており、開口部(口栓部)付近にはバリア層が含まれていない態様などが例示される。但し、バリア層がボトルの開口部付近まで存在している方がバリア性能はさらに高くなるため好ましい。
【0043】
本発明の多層容器の容量は、内容物の保存性から0.1~2.0Lであることが好ましく、0.2~1.5Lであることが好ましく、0.3~1.0Lであることがさらに好ましい。本発明の多層容器は、内層(ポリエステル樹脂層)の厚みが、好ましく0.01mm以上、より好ましくは0.03mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上であり、また、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下である。
また、外層(ポリエステル樹脂層)の厚みは、好ましく0.01mm以上、より好ましくは0.05mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上であり、また、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下である。
また、バリア層の厚みは、好ましく0.005mm以上、より好ましくは0.01mm以上、さらに好ましくは0.02mm以上であり、また、好ましくは0.2mm以下、より好ましくは0.15mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下である。バリア層を二層以上有している場合、各バリア層の厚みの合計が上記の厚みを有していることが好ましい。
また、バリア層を二層以上有しており、バリア層とバリア層の間に中間層を有している場合、前記中間層の厚みは、好ましく0.01mm以上、より好ましくは0.03mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上であり、また、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下である。
【0044】
本発明の多層容器(特に、ボトル)においてバリア層の質量は、多層容器の総質量に対して1~20質量%とすることが好ましく、より好ましくは2~15質量%、特に好ましくは3~10質量%である。バリア層の質量を上記範囲とすることにより、ガスバリア性が良好な多層容器が得られるとともに、多層容器の前駆体であるパリソンから多層容器への成形も容易となる。
【0045】
本発明の多層容器に保存される対象は、特に制限されるものではなく、食品、化粧品、医薬品、トイレタリー、機械・電気・電子部品、オイル、樹脂類などが挙げられるが、特に食品を保存するための容器として好適に使用できる。
例えば、水産加工品、畜産加工品、飯類、液体食品が挙げられる。特に、酸素の影響を受けやすい食品の保存に適している。これらの詳細は、特開2011-37199号公報の段落0032~0035の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
充填される食品は、特に制限されるものではないが、具体例を示すならば、例えば、野菜汁、果汁、お茶類、コーヒー・コーヒー飲料類、乳・乳飲料類、ミネラルウォーター、イオン性飲料、酒類、乳酸菌飲料、豆乳等の飲料;豆腐類、卵豆腐類、ゼリー類、プリン、水羊羹、ムース、ヨーグルト類、杏仁豆腐などのゲル状食品;ソース、醤油、ケチャップ、麺つゆ、たれ、食酢、味醂、ドレッシング、ジャム、マヨネーズ、味噌、漬物の素、すり下ろし香辛料等の調味料;サラミ、ハム、ソーセージ、焼鳥、ミートボール、ハンバーグ、焼豚、ビーフジャーキー等の食肉加工品;蒲鉾、貝水煮、煮魚、竹輪等の水産加工品;粥、炊飯米、五目飯、赤飯等の米加工品;ミートソース、マーボーソース、パスタソース、カレー、シチュー、ハヤシソース等のソース類;チーズ、バター、クリーム、コンデンスミルク等の乳加工品;ゆで卵、温泉卵等の卵加工品;煮野菜・煮豆;揚げ物、蒸し物、炒め物、煮物、焼き物等の惣菜類;漬物;うどん、そば、スパゲッティ等の麺類・パスタ類;果物シラップ漬け等が挙げられる。
保存対象によっては、多層容器を、紫外線や電子線、γ線、X線等を用いて殺菌あるいは滅菌したりしてもよい。
【0046】
<多層体の製造方法>
本発明の多層体の製造方法は特に定めるものではなく、公知の多層体の製造方法を採用できる。
多層体の製造に際し、ポリエステル樹脂層を構成するポリエステル樹脂組成物およびバリア層を構成するバリア性樹脂組成物(以下、これらをまとめて「樹脂組成物」という)を準備することが好ましい。バリア性樹脂組成物は、少なくとも、ポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)の2種のポリアミド樹脂を用いるが、ポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)のブレンド方法に特に制限は無く、ボトルのプリフォーム作製時にドライブレンドして供給してもよく、プリフォーム作製に先立ち単軸押出機や、二軸押出機などによってメルトブレンドしてもよく、一部の樹脂をメルトブレンドによってマスターバッチを作製して使用してもよい。ポリエステル樹脂組成物が2種以上の樹脂を含む場合も同様である。
また、バリア層に、酸化反応促進剤を配合する場合、ポリアミド樹脂と共にドライブレンドしてもよいし、ポリアミド樹脂の一部でマスターバッチ化してから、配合してもよいし、メルトブレンドしてもよい。
【0047】
多層体の製造方法は、多層体を含む成形品の構造等を考慮して適切な製造方法が選択される。
例えば、フィルムやシートの成形については、Tダイ、サーキュラーダイ等を通して溶融させた樹脂組成物を押出機から押し出して製造することができる。得られたフィルムを延伸することにより延伸フィルムに加工することもできる。
また、ボトル形状の包装容器については、射出成形機から金型中に溶融した樹脂組成物を射出してプリフォームを製造後、ブロー延伸することにより得ることができる(インジェクションブロー成形、インジェクションストレッチブロー成形)。または、押出成形機から金型中に溶融した樹脂組成物を押し出すことで得られるパリソンを金型内でブローすることにより得ることができる(ダイレクトブロー成形)。
トレイやカップ等の容器は射出成形機から金型中に溶融した樹脂組成物を射出して製造する方法や、シートを真空成形や圧空成形等の成形法によって成形して得ることができる。
【0048】
本発明の多層容器は、プリフォームを二軸延伸ブロー成形することによって製造することが好ましい。本発明の多層容器は、コールドパリソン成形であっても、ホットパリソン成形であってもよい。
コールドパリソン(2ステージ成形)成形は、射出成形後のプリフォームを室温まで冷やして、保管されたのちに、別の装置で再加熱し、ブロー成形に供給される成形方法である。ホットパリソン成形(1ステージ成形)は、パリソンを室温まで完全に冷却することなく、射出成形時の予熱とブロー前の温調をすることで、ブロー成形する方法である。ホットパリソン成形では、多くの場合は、同一成形機ユニット内に、射出成形機、温調ゾーンおよびブロー成形機を備え、プリフォーム射出成形とブロー成形が行われる。
【0049】
本発明の多層容器の製造方法の第一の実施形態は、コールドパリソン成形によって成形する形態である。以下、図1に従って説明する。しかしながら、第一の実施形態が図1に記載の構成に限定されるものではないことは言うまでもない。図1では、まず、プリフォーム1が加熱される(図1(1))。加熱は、赤外線ヒータ2等で行われる。
【0050】
次いで、加熱されたプリフォームは、二軸延伸ブロー成形がなされる。すなわち、金型3に設置され(図1の(2))、延伸ロッド4によって延伸されながら、ブロー成形される(図1の(3)および(4))。延伸は、例えば、プリフォームの表面を加熱した後にコアロッドインサートで押すといった機械的手段により軸方向に延伸し、次いで、通常2~4MPaの高圧空気をブローして横方向に延伸させブロー成形する方法がある。また、容器の耐熱性を向上させるために、結晶化度を高めたり、残留歪みを軽減するブロー成形方法を組み合わせてもよい。例えば、多層プリフォームの表面を加熱した後にガラス転移点以上の温度の金型内でブロー成形する方法(シングルブロー成形)がある。さらに、プリフォームを最終形状より大きく二軸延伸ブロー成形する一次ブロー成形工程と、この一次ブロー成形品を加熱して熱収縮させて二次中間成形品に成形する工程と、最後にこの二次中間成形品を最終容器形状にブロー成形する二次ブロー成形工程とからなる所謂ダブルブロー成形であってもよい。
ブロー成形された後、金型3が外され、多層容器5が得られる(図1の(5))。
【0051】
本発明の多層容器の製造方法の第二の実施形態は、ホットパリソン成形によって成形する形態である。ホットパリソン成形では、パリソンを室温まで完全に冷却することなく、1ステージで、射出成形時の予熱とブロー前の温調をすることで、ブロー成形する方法であり、上記図1(1)の工程を経ずに成形される。
【0052】
コールドパリソン成形およびホットパリソン成形において、ブロー成形前のパリソン温度は、ポリエステル樹脂層を構成するポリエステル樹脂およびバリア層を構成するポリアミド樹脂のガラス転移温度(Tg)を考慮して決定される。ブロー成形前とは、例えば、予熱ゾーンを通過した後、ブローされる直前のことをいう。パリソン温度は、本発明の多層体を構成するポリエステル樹脂およびポリアミド樹脂の中で最もガラス転移温度が高い樹脂のガラス転移温度(Tgmax)を超える温度が好ましく、Tgmax+0.1℃~50℃の温度範囲がより好ましい。また、上記ポリエステル樹脂および上記ポリアミド樹脂の中で最もガラス転移温度が低い樹脂のガラス転移温度(Tgmin)と前記Tgmaxの差は、40℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、ブロー成形性がより向上する傾向にある。
さらに、上記ポリエステル樹脂と上記ポリアミド樹脂の少なくとも1種が結晶性樹脂の場合、前記結晶性樹脂の結晶化温度(Tc)の内、最も低い温度(Tcmin)と最も低い温度(Tgmax)の差が大きい方が好ましい。具体的には、Tcmin-Tgmaxは、5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましい。Tcmin-Tgmaxの上限値としては、100℃以下が実際的である。このような範囲とすることにより、ブロー成形性がより向上する傾向にある。
【0053】
その他、本発明の多層容器の製造方法は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特開2016-198912号公報の段落0070~0074、特開2016-169027号公報の段落0085~0119および特開昭60-232952号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0054】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0055】
原材料
<MXD6(ポリアミド(A1))の合成>
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下槽および窒素ガス導入管を備えたジャケット付きの50L反応缶に、アジピン酸15kg、次亜リン酸ナトリウム一水和物13.1gおよび酢酸ナトリウム6.9gを仕込み、十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下にて180℃に昇温し、アジピン酸を均一に溶融させた後、系内を撹拌しつつ、これにメタキシリレンジアミン13.9kgを、170分を要して滴下した。この間、内温は連続的に245℃まで上昇させた。なお重縮合により生成する水は、分縮器および冷却器を通して系外に除いた。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温をさらに260℃まで昇温し、1時間反応を継続した後、ポリマーを反応缶下部のノズルからストランドとして取り出し、水冷後ペレット化してポリマーを得た。
次に、上記の操作にて得たポリマーを加熱ジャケット、窒素ガス導入管、真空ラインを備えた50L回転式タンブラーに入れ、回転させつつ系内を減圧にした後、純度99容量%以上の窒素で常圧にする操作を3回行った。その後、窒素流通下にて系内を140℃まで昇温させた。次に系内を減圧にし、さらに190℃まで連続的に昇温し、190℃で30分保持した後、窒素を導入して系内を常圧に戻した後、冷却してポリアミド樹脂(A1)(MXD6)を得た。
得られたポリアミド樹脂(A1)の融点は、237℃、数平均分子量は26,000、ガラス転移温度は85℃であった。
【0056】
<MXD6I(IPA6モル%)(ポリアミド(A2))の合成>
撹拌機、分縮器、冷却器、滴下槽、および窒素ガス導入管を備えたジャケット付きの3L反応缶にアジピン酸(AA)4.70molとイソフタル酸(IPA)0.30molとを秤量して仕込み、十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下に160℃で撹拌混合しながら溶融させスラリー状とした。これに、メタキシリレンジアミン(MXDA)4.97molを撹拌下に160分を要して滴下した。この間、内温は連続的に250℃まで上昇させた。メタキシリレンジアミンの滴下と共に留出する水は、分縮器および冷却器を通して系外に除いた。メタキシリレンジアミン滴下終了後、内温を260℃まで昇温し、1時間反応を継続した。得られたポリマーを反応缶下部のノズルからストランドとして取り出し、水冷した後ペレット形状に切断し、アジピン酸とイソフタル酸のモル比が94:6となるポリアミド樹脂ペレットを得た。
次に、このペレットをステンレス製の回転ドラム式の加熱装置に仕込み、5rpmで回転させた。十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下にて反応系内を室温から140℃まで昇温した。反応系内温度が140℃に達した時点で1torr(133.322Pa)以下まで減圧を行い、さらに系内温度を130分間で190℃まで昇温した。系内温度が190℃に達した時点から、同温度にて30分間、固相重合反応を継続した。
反応終了後、減圧を終了し窒素気流下にて系内温度を下げ、60℃に達した時点でペレットを取り出し、ポリアミド樹脂(A2)(MXD6I(IPA6モル%))を得た。ポリアミド樹脂(A2)(MXD6I(IPA6モル%))の相対粘度は2.68であった。また、ガラス転移温度は92℃、融点は229℃であった。相対粘度は、WO2017/141969号公報の段落0037の記載に従って測定した。
【0057】
<MXD6I(IPA50モル%)(ポリアミド(B1))の合成>
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、精秤したアジピン酸6,001g(41.06mol)、イソフタル酸6,821g(41.06mol)、次亜リン酸カルシウム(Ca(H2PO2)2)1.73g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として30質量ppm)、酢酸ナトリウム1.11gを入れ、十分に窒素置換した後、窒素を内圧0.4MPaまで充填し、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら190℃まで加熱した。酢酸ナトリウム/次亜リン酸カルシウムのモル比は1.33とした。
これにメタキシリレンジアミン11,185g(82.12mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を上昇させ、265℃に達した時点で反応容器内を減圧にし、さらに内温を上昇させて270℃で10分間、溶融重縮合反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、得られた重合物をストランドダイから取り出して、これをペレット化し、約21kgのポリアミド樹脂ペレット(MXD6I(IPA50モル%))を得た。得られたポリアミド樹脂(B1)(MXD6I(IPA50モル%))は、115℃、24時間の条件で真空乾燥した。
樹脂(MXD6I(IPA50モル%))は、昇温過程における結晶融解エンタルピーΔHmがほぼ0J/gであり、非晶性であることが分かった。数平均分子量は13,500であった。Tgは、127℃であった。
【0058】
<その他の原材料>
PA6I/6T:EMS-CHEMIE社製、Grivory G21、イソフタル酸とテレフタル酸のモル比率は2:1である。非晶性、ガラス転移温度:125℃
PET-1:三菱ケミカル社製、ユニペットBK2180、融点248℃、ガラス転移温度75℃、固有粘度=0.83dL/g。使用に際しては、除湿乾燥機にて、150℃、8時間乾燥したものを用いた。固有粘度は、ポリエステル樹脂を、フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒に溶解し、25℃に保持して、ウベローデ型粘度計を使用して測定した。
PET-2:三菱ガス化学社製、アルテスタSN4500、非晶性、ガラス転移温度125℃、固有粘度=0.68dL/g、スピログリコール(SPG)45モル%、ナフタレンジカルボン酸(NDCA)50モル%。使用に際しては、除湿乾燥機にて、110℃、24時間乾燥したものを用いた。
【0059】
<ガラス転移温度、融点の測定および結晶融解エンタルピー>
示差走査熱量の測定はJIS K7121およびK7122に準じて行った。示差走査熱量計を用い、樹脂ペレットを砕いて示差走査熱量計の測定パンに仕込み、窒素雰囲気下にて昇温速度10℃/分で300℃まで昇温し、急冷する前処理を行った後に測定を行った。測定条件は、昇温速度10℃/分で、300℃で5分保持した後、降温速度-5℃/分で100℃まで測定を行い、ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)および結晶融解エンタルピー(ΔHm)を求めた。
示差走査熱量計としては、島津製作所社(SHIMADZU CORPORATION)製「DSC-60」を用いた。
【0060】
実施例1~4、比較例1~5 多層ボトルの製造(コールドパリソン成形)
<プリフォームの製造(酸化反応促進剤を含まない場合)>
2本の射出シリンダーを有する射出成形機(住友重機械工業製、型式SE130DU-CI)および2個取りの多層ホットランナー金型(Kortec社製)を使用して、以下に示した条件で(Y)/(X)/(Y)からなる3層構造を一部に有するプリフォームを製造した。
具体的には、まず、層(Y)を構成する材料として、表1に示すポリエステル樹脂(PET-1またはPET-2)を射出シリンダーから射出し、層(Y)の射出状態を維持しながら、バリア層となる層(X)を構成する材料として、ポリアミド樹脂(A1、A2、B1、PA6I6T)をドライブレンドした樹脂混合物を別の射出シリンダーから、層(Y)を構成するポリエステル樹脂(表1に記載のもの)と共に射出し、最後に層(Y)を構成するポリエステル樹脂(表1に記載のもの)を必要量射出してキャビティーを満たすことにより、(Y)/(X)/(Y)の3層構造を一部に有するプリフォーム(25g)を得た(図1において符号1で示す形状のプリフォーム)。プリフォームの大きさは、全長92mm、外径22mm、肉厚3.9mmであった。
スキン側射出シリンダー温度: 285℃
コア側射出シリンダー温度: 265℃
金型内樹脂流路温度 : 290℃
金型冷却水温度: 15℃
サイクルタイム: 33s
プリフォーム中のバリア層を構成する樹脂混合物の割合:5質量%
<プリフォームの製造(酸化反応促進剤を含む場合)>
バリア層となる層(X)を構成する材料として、ポリアミド樹脂に加え、酸化反応促進剤として、ステアリン酸コバルト(II)(関東化学社製)を、酸化反応促進剤の濃度が200質量ppmとなるようにドライブレンドした樹脂混合物(表1に記載のもの)を用いたこと以外は、酸化反応促進剤を添加していないプリフォームの製造方法と同じ方法にてプリフォームを得た。
【0061】
<多層ボトルの製造>
酸化反応促進剤を添加していないプリフォームおよび酸化反応促進剤を添加したプリフォームを用いて、それぞれボトルを成形した。
具体的には、得られたプリフォームを、二軸延伸ブロー成形装置(フロンティア製、型式EFB1000ET)により二軸延伸ブロー成形してペタロイド型ボトルを得た。ボトルの全長は223mm、外径は65mm、内容積は500mL(表面積:0.04m2、胴部平均厚み:0.33mm)であり、底部はペタロイド形状である。胴部にディンプルは設けなかった。二軸延伸ブロー成形条件は以下に示したとおりである。得られたボトルの総質量に対する層(X)の割合は5質量%であった。
プリフォーム加熱温度: 110℃
一次ブロー圧力: 0.9MPa
二次ブロー圧力: 2.5MPa
一次ブロー遅延時間: 0.30sec
一次ブロー時間: 0.30sec
二次ブロー時間: 2.0sec
ブロー排気時間: 0.6sec
金型温度: 30℃
【0062】
<ボトル成形直後の評価>
得られた多層ボトルについて、以下の評価を行った。特に述べない限り、酸化反応促進剤を添加していないプリフォームを用いて成形した多層ボトルについて評価した。
<<ボトル外観(透明性)>>
得られた3層ボトルについて、目視で観察し、以下の通り外観を評価した。
A:ボトルの全体に白濁が全く観察されず、優れた透明性・透過性を有していた。
B:ボトルの一部にわずかな白濁が観察された。
C:ボトルの全体にわずかな白濁が観察された。
D:ボトルの一部に顕著な白濁と、その他の部分全体にわずかな白濁が観察された。
E:ボトルの全体に顕著な白濁が観察された。
【0063】
<<酸素バリア性(酸化反応促進剤なしの場合、酸化反応促進剤有の場合)>>
酸素透過率測定装置(MOCON社製、商品名「OX-TRAN 2/61」)を使用した。
実施例および比較例で作製したボトルに、水を100mL充填し、酸素分圧0.21atmの条件下で、ボトル内部湿度100%RH(相対湿度)、外湿度50%RH、温度23℃の条件にて、ボトル内部に1atmの窒素を20mL/分で流通させ、200時間後のクーロメトリックセンサーにてボトル内部を流通後の窒素中に含まれる酸素量を検出することで、酸素透過率を測定した。
酸化反応促進剤を添加していないプリフォームを用いて得られた多層ボトルおよび酸化反応促進剤を添加したプリフォームを用いて得られた多層ボトルの両方について、以下の通り評価した。
S:0.008cc/(bottle・day・0.21atm)以下
A:0.008cc/(bottle・day・0.21atm)超え0.015cc/(bottle・day・0.21atm)以下
B:0.015cc/(bottle・day・0.21atm)超え0.020cc/(bottle・day・0.21atm)以下
C:0.020cc/(bottle・day・0.21atm)超え0.040cc/(bottle・day・0.21atm)以下
D:0.040cc/(bottle・day・0.21atm)超え
【0064】
<<耐層間剥離性>>
得られた多層ボトルについて、以下のとおり、耐層間剥離性を評価した。
まず、各実施例および比較例で得られたボトルを500mLの着色炭酸水(4.2ガスボリューム)で満たし、キャップをした後、23℃で48時間静置した。その後、ボトルを胴部が床に接触するように高さ1mから水平落下させた。層間剥離した箇所は白濁様になり目視で区別することができるため、ボトルの層間剥離の有無を目視で判定した。なお、一部でも層間剥離したボトルは層間剥離が起こったものとした。テストボトル数は5本とし、層間剥離が起きた回数を平均した値を採用した。
A:落下回数100回以上であった。
B:落下回数50回以上99回以下であった。
C:落下回数20回以上49回以下であった。
D:落下回数19回以下であった。
【0065】
<熱水保存性の評価>
<<多層ボトルの外観および満注容量の変化>>
得られたボトルに、60℃の水を500mL充填し、23℃、相対湿度50%の環境下に24時間置いた後、その外観変化および満注容量(充填可能な内容量)の変化を以下の通り目視で評価した。また、水を85℃に代えて同様に行った。
<<<外観>>>
A:ボトルの全体に白濁が全く観察されず、優れた透明性・透過性を有していた。
B:ボトルの一部にわずかな白濁が観察された。
C:ボトルの全体にわずかな白濁が観察された。
D:ボトルの一部に顕著な白濁と、その他の部分全体にわずかな白濁が観察された。
E:ボトルの全体に顕著な白濁が観察された。
<<<満注容量の変化>>>
A:満注容量の変化率が、1%未満であった。
B:満注容量の変化率が、1%以上3%未満であった。
C:満注容量の変化率が、3%以上5%未満であった。
D:満注容量の変化率が、5%以上10%未満であった。
E:満注容量の変化率が、10%以上であった。
【0066】
<保存後のプリフォームを用いた多層ボトルの製造(コールドパリソン成形)>
上記で得られたプリフォーム(PF)を、23℃、相対湿度50%環境の環境下に4週間、および、40℃相対湿度80%の環境下に4週間、それぞれ、保存した。保存後のプリフォームを用いて、上記と同様にコールドパリソン成形によって、多層ボトルを製造した。
【0067】
<プリフォーム保存性の評価>
<<保存後のプリフォームの外観>>
保存後のプリフォームについて、以下の通り目視にて外観評価を行い、上記保存前のプリフォーム(初期プリフォーム)の外観評価と共に示した。
A:プリフォームの全体に白濁が全く観察されず、優れた透明性・透過性を有していた。
B:プリフォームの一部にわずかな白濁が観察された。
C:プリフォームの全体にわずかな白濁が観察された。
D:プリフォームの一部に顕著な白濁と、その他の部分全体にわずかな白濁が観察された。
E:プリフォームの全体に顕著な白濁が観察された。
【0068】
<<保存後のプリフォームを用いたブロー成形性>>
保存後のプリフォームについて、以下の通りブロー成形性の評価を行い、上記保存前のプリフォーム(初期プリフォーム)のブロー成形性評価と共に示した。
A:ボトルの全体に白濁が全く観察されず、優れた透明性・透過性を有していた。
B:ボトルの一部にわずかな白濁が観察される、加熱温度の変更で良品となった。
C:ボトルの全体にわずかな白濁が観察され、加熱温度の変更でも良品とならなかった。
D:ボトルの一部に顕著な白濁と、その他の部分全体にわずかな白濁が観察された。
E:ボトルの全体に顕著な白濁が観察される、バーストが観察された。
【0069】
<<保存後のプリフォームを用いたボトル外観(透明性)>>
保存後のプリフォームを用いて得られたボトルについて、ボトル外観を上記と同様に評価した。上記保存前のプリフォーム(初期プリフォーム)の外観評価と共に示した。
【0070】
<<酸素バリア性>>
保存後のプリフォームを用いて得られたボトルについて、酸素バリア性を上記と同様に評価した。上記保存前のプリフォーム(初期プリフォーム)の酸素バリア性の評価と共に示した。
【0071】
結果を下記表1に示す。

【表1】
【0072】
上記結果から明らかなとおり、本発明のボトルは、透明性、酸素バリア性および耐層間剥離性に優れていた(実施例1~4)。特に、本発明のボトルは4週間保存後のプリフォームを用いても、プリフォームの外観が悪化せず保管性に優れ、ブロー成形性が低下せず、外観に優れたボトルが得られ、かつ、酸素バリア性にも優れていた。さらに、本発明のボトルは比較的高温の液体の保存性に優れており、60℃の水を保存しても外観の悪化が少なく、ボトルの変形も少なかった。
これに対し、バリア層にMXD6のみを用いた場合、透明性および酸素バリア性には優れていたが耐層間剥離性が十分ではなかった(比較例1)。さらに、比較例1のボトルは60℃程度の比較的高温の液体の保存性が劣っていた。
一方、MXD6に、PA6I6Tを配合すると、耐層間剥離性の多少の向上が認められたが、透明性や酸素バリア性(酸化反応促進剤なし)が劣ってしまった(比較例2、3および5)。また、プリフォーム保存性についても劣る傾向にあった。
一方、バリア層にMXD6Iを用いても、イソフタル酸の割合がジカルボン酸由来の構成単位の35モル%未満の場合、耐層間剥離性の多少の向上が認められたが、4週間保存後のプリフォームの外観が劣り、4週間保存後のプリフォームを用いたブロー成形性も劣る傾向にあった(比較例4)。
【0073】
実施例5~8、比較例6~11 多層ボトルの製造(ホットパリソン成形)
<多層ボトルの製造(酸化反応促進剤なし)>
2本の射出シリンダーを有する射出成形機及び2個取りの多層ホットランナー金型を使用して、以下に示した条件で(Y)/(X)/(Y)からなる3層構造を一部に有するプリフォームを製造した。まず、層(Y)を構成する材料として、ポリエステル樹脂(PET-1またはPET-2)を射出シリンダーから射出し、層(Y)の射出状態を維持しながら、バリア層となる層(X)を構成する材料として、ポリアミド樹脂(A1、A2、B1、PA6I6T)をドライブレンドした樹脂混合物を別の射出シリンダーから、層(Y)を構成するポリエステル樹脂(表2に記載のもの)と共に射出し、最後に層(Y)を構成するポリエステル樹脂(表2に記載のもの)を必要量射出してキャビティーを満たすことにより、(Y)/(X)/(Y)の3層構造を一部に有するプリフォームを得た。得られたプリフォームを所定の温度まで温調後、二次加工として、ブロー金型へ移行しブロー成形を行うことでボトル(容量500mL)を製造した。射出シリンダーと射出金型を有するプリフォーム射出成形ゾーンと、温調ユニットとブロー金型を有するブロー成形ゾーンからなる射出ブロー一体型成形機を使用した。
【0074】
容器の成形条件
スキン側射出シリンダー温度: 270℃
コア側射出シリンダー温度: 270℃
射出金型内樹脂流路温度 : 275℃
射出金型冷却水温度: 50℃
ブロー前パリソン温度 :140℃
ブロー金型冷却水温度 : 35℃
サイクルタイム: 26s
プリフォーム中のバリア層を構成する樹脂混合物の割合:5質量%
【0075】
<多層ボトルの製造(酸化反応促進剤あり)>
バリア層となる層(X)を構成する材料として、ポリアミド樹脂に加え、酸化反応促進剤として、ステアリン酸コバルト(II)(関東化学社製)を、酸化反応促進剤の濃度が200質量ppmとなるようにドライブレンドした樹脂混合物(表2に記載のもの)を用いたこと以外は、酸化反応促進剤を添加していないプリフォームの製造方法と同じ方法にてプリフォームを得た。
【0076】
<ボトル成形直後の評価>
得られた多層ボトルについて、以下の評価を行った。特に述べない限り、酸化反応促進剤を添加していないプリフォームを用いて成形した多層ボトルについて評価した。
【0077】
<<ボトル外観(透明性)>>
上記ホットパリソン成形で得られた多層ボトルについて、上記コールドパリソン成形で得られた多層ボトルと同様に、ボトル外観を評価した。
【0078】
<<酸素バリア性(酸化反応促進剤なしの場合、酸化反応促進剤有の場合)>>
上記ホットパリソン成形で得られた多層ボトルについて、上記コールドパリソン成形で得られた多層ボトルと同様に、酸素バリア性を評価した。酸化反応促進剤を添加していないプリフォームを用いて得られた多層ボトルおよび酸化反応促進剤を添加したプリフォームを用いて得られた多層ボトルの両方について、評価した。
【0079】
<<ボトルの耐層間剥離性>>
上記ホットパリソン成形で得られた多層ボトルについて、上記コールドパリソン成形で得られた多層ボトルと同様に、耐層間剥離性を評価した。
【0080】
<<ボトルの外観変化および満注容量の変化>>
得られたボトルに、60℃の水を320mL充填し、23℃、相対湿度50%の環境下に24時間置いた後、その外観および満注容量(充填可能な内容量)の変化を以下の通り目視で評価した。また、水を85℃のものに代えて同様に行った。上記コールドパリソン成形で得られた多層ボトルと同様の評価区分で評価した。
【0081】
結果を下記表2に示す。

【表2】
【0082】
上記結果から明らかなとおり、本発明のボトルは、透明性、酸素バリア性および耐層間剥離性に優れていた(実施例5~8)。さらに、本発明のボトルは60℃の比較的高温の水を充填した後も外観が優れていた。
これに対し、バリア層を用いない場合、バリア性が劣っていた(比較例6、9)。
また、バリア層にMXD6のみを用いた場合、透明性および酸素バリア性には優れていたが耐層間剥離性が十分ではなかった(比較例7、10)。
さらに、バリア層にPA6I6Tを用いた場合、酸素バリア性が劣っていた(比較例8、11)。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の多層体は、酸素バリア性が高く、耐層間剥離性が高いため、各多層容器などに広く用いることができる。さらに、外観にも優れたものとすることができる。
さらに、本発明の多層容器は、内容物を充填しても、多層容器の外観変化や満注容量の変化を抑制することができるため、各種の内容物を保存することができる。特に、60℃程度の内容物を保存しても、多層容器の外観変化や満注容量の変化を効果的に抑制できる点で利用価値が高い。
【符号の説明】
【0084】
1 プリフォーム
2 ヒータ
3 金型
4 延伸ロッド
5 多層容器
図1