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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/50 20210101AFI20231011BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20231011BHJP
   H01M 50/284 20210101ALI20231011BHJP
   H01M 50/298 20210101ALI20231011BHJP
   H01M 50/503 20210101ALI20231011BHJP
   H01M 50/507 20210101ALI20231011BHJP
   H01M 50/519 20210101ALI20231011BHJP
   H01M 50/55 20210101ALI20231011BHJP
   H01M 50/569 20210101ALI20231011BHJP
【FI】
H01M50/50 101
H01M50/209
H01M50/284
H01M50/298
H01M50/503
H01M50/507
H01M50/519
H01M50/55 101
H01M50/569
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020518246
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2019017390
(87)【国際公開番号】W WO2019216218
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2018090914
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018090915
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】▲つる▼田 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】殿西 雅光
(72)【発明者】
【氏名】和田 彬
(72)【発明者】
【氏名】中畑 拓也
【審査官】村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/147821(WO,A1)
【文献】特開2014-120417(JP,A)
【文献】特開2016-115442(JP,A)
【文献】特開2015-138604(JP,A)
【文献】特開2011-228217(JP,A)
【文献】国際公開第2011/052699(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子を有する蓄電素子と、
前記端子に接続されたバスバーと、
前記バスバーに電気的に接続された回路基板と
を備え、
前記バスバーは、
前記端子に固定されたバスバー本体と、
前記バスバー本体から突出した突出部と、
前記突出部から突出し、前記回路基板に固定された基板接続部と
を備え、
前記基板接続部の突出方向に直交する横方向における前記基板接続部の横幅は、前記横方向における前記突出部の横幅よりも狭く、
前記突出部側に位置する前記基板接続部の基端には、前記突出部から前記基板接続部の先端に向けて横幅を次第に狭くした座部が形成されており、
さらに、前記回路基板と前記基板接続部を固定した半田部を備え、
前記半田部は、前記基板接続部が貫通された前記回路基板の接続孔を通して、前記回路基板の一面から他面にかけて設けられ、前記座部の少なくとも一部を覆っている、蓄電装置。
【請求項2】
前記突出部は、前記バスバー本体側に位置する第1部分と、前記基板接続部側に位置する第2部分と、前記第1部分の面に対して前記第2部分を交差する向きに突出させる湾曲部とを備え、
前記第1部分と前記バスバー本体は同一平面状に形成され、前記第2部分と前記基板接続部は同一平面状に形成されている、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記蓄電素子の前記端子が位置する端子面側に配置された中蓋を備え、
前記突出部の前記第1部分は、前記中蓋に固定された固定部を含む、請求項に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記蓄電素子は、対向した一対の長側面と、これら長側面と交差する方向に延び、対向した一対の短側面とを有する角形の容器を備え、
前記基板接続部と前記長側面は平行に配置されている、請求項2又は3に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記蓄電素子は、前記端子が同一平面上に位置するように複数配列されており、
さらに、複数の前記蓄電素子の前記端子が位置する面側に配置された中蓋を備え、
前記バスバーは、前記複数の前記蓄電素子の前記端子にそれぞれに接続されるように複数配置されており、
前記回路基板は、前記複数の前記バスバーのうちの少なくとも1つに電気的に接続されており、
前記少なくとも1つの前記バスバーは、
前記バスバー本体に連続し、弾性的な変形が可能な可撓部と、
前記可撓部に連続し、前記中蓋に固定された固定部と、を有し、
前記基板接続部は、前記固定部に連続し、前記回路基板に固定されるとともに電気的に接続されている、
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記バスバー本体、前記可撓部、前記固定部、及び前記基板接続部は、同一材料によって形成された一体構造であり、
前記バスバー本体、前記可撓部、及び前記固定部は、同一平面状に形成されている、請求項に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記可撓部と前記固定部は、前記バスバー本体に対して前記蓄電素子の配列方向と交差する向きに隣接し、前記配列方向に並べて設けられており、
前記可撓部と前記固定部の間には、前記バスバー本体から離れる向きへ延びるスリットが形成されている、請求項に記載の蓄電装置。
【請求項8】
前記基板接続部は、前記固定部の面に対して交差する向きに突出している、請求項からのいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項9】
前記固定部には、係止孔が設けられ、
前記中蓋には、前記係止孔に係止された係止突起が設けられている、請求項からのいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項10】
前記蓄電素子は、一面に前記端子が配置された角形の容器を有し、
前記容器の前記一面にはガス排出弁が設けられており、
前記可撓部は、前記バスバー本体に対して前記ガス排出弁から離れる向きに突出している、請求項からのいずれか1項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蓄電素子の電圧を監視する監視回路を含む回路基板を備える蓄電装置が開示されている。蓄電素子と監視回路とは、複数の蓄電素子を電気的に接続するバスバーによって、電気的に接続されている。バスバーは、溶接によって蓄電素子の端子に接合されたバスバー本体と、半田付けによって回路基板の監視回路に接続された基板接続部とを備える。基板接続部は、バスバー本体から突出する突出部の先端に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5284053号公報
【文献】国際公開第2011/52699号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の蓄電装置では、振動及び衝撃が加わった際に基板接続部の基端側に応力が集中する。基板接続部は、突出部と比べて細く、剛性が低いため、応力集中によって破断することがある。基板接続部と回路基板を接続した半田部は、応力集中によって破損(クラック)が生じることがある。これらの場合、蓄電素子と回路基板の電気的な導通に不具合が生じる。
【0005】
本発明は、振動及び衝撃が加わることによる基板接続部の破断及び半田部の破損を効果的に抑制できる蓄電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、端子を有する蓄電素子と、前記端子に接続されたバスバーと、前記バスバーに電気的に接続された回路基板とを備え、前記バスバーは、前記端子に固定されたバスバー本体と、前記バスバー本体から突出した突出部と、前記突出部から突出し、前記回路基板に固定された基板接続部とを備え、前記基板接続部の突出方向に直交する横方向における前記基板接続部の横幅は、前記横方向における前記突出部の横幅よりも狭く、前記突出部側に位置する前記基板接続部の基端には、前記突出部から前記基板接続部の先端に向けて横幅を次第に狭くした座部が形成されている、蓄電装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の蓄電装置では、突出部側から先端側に向けて横幅を次第に狭くした座部が基板接続部に形成されているため、基板接続部が破断すること、または、半田部が破損すること等を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る蓄電装置の分解斜視図である。
図2図2は、バスバーと回路基板の構成を示す斜視図である。
図3図3は、蓄電素子、中蓋、及び回路基板の組付状態を示す斜視図である。
図4図4は、中蓋とバスバーを示す斜視図である。
図5図5は、第1のバスバーの斜視図である。
図6図6は、図3の半田付け部分を示す断面図である。
図7図7は、第2のバスバーの斜視図である。
図8図8は、第3のバスバーの斜視図である。
図9図9は、実施の形態の変形例1に係る基板接続部及び半田部を示す断面図である。
図10図10は、実施の形態の変形例2に係る基板接続部及び半田部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様は、端子を有する蓄電素子と、前記端子に接続されたバスバーと、前記バスバーに電気的に接続された回路基板とを備え、前記バスバーは、前記端子に固定されたバスバー本体と、前記バスバー本体から突出した突出部と、前記突出部から突出し、前記回路基板に固定された基板接続部とを備え、前記基板接続部の突出方向に直交する横方向における前記基板接続部の横幅は、前記横方向における前記突出部の横幅よりも狭く、前記突出部側に位置する前記基板接続部の基端には、前記突出部から前記基板接続部の先端に向けて横幅を次第に狭くした座部が形成されている、蓄電装置を提供する。
【0010】
この蓄電装置によれば、基板接続部の横幅は突出部の横幅よりも狭いため、半田付け時には基板接続部での熱伝導性を向上しつつ、使用時には突出部での導電性を確保できる。基板接続部には先端に向けて横幅を次第に狭くした座部が形成されているため、基板接続部の基端の剛性を高めることができる。よって、基板接続部の基端部分への応力集中によって、基板接続部が破断すること、または、半田部が破損すること等を抑制できる。製造時には、座部によって、回路基板への基板接続部の過度の差し込みを抑制できるうえ、溶融した半田の流れ落ちを抑制できる。
【0011】
溶融した半田の流れ落ち抑制について詳しく説明する。基板接続部の表面での半田の流動性は、半田の種類に応じて定められた温度よりも高い場合には良いが、定められた温度よりも低い場合には悪い。基板接続部を回路基板に半田付けする際、基板接続部は、先端側が加熱されるため、先端から基端に向けて温度が次第に低くなる。しかも、基板接続部の座部では、突出部に向けて横幅が次第に広くなるため、温度の下降勾配は急になる。つまり、基板接続部の座部では、先端側の温度は定められた温度よりも高くなり易いが、突出部側の温度は定められた温度よりも高くなり難い。突出部の横幅は座部よりも更に広くなるため、定められた温度よりも高くなることはない。よって、溶融した半田が突出部まで流動することを抑制できる。その結果、半田の無駄な流れ落ちを防止できるとともに、基板接続部と回路基板を適量の半田によって適切に接合できる。
【0012】
前記回路基板と前記基板接続部を固定した半田部を備え、前記半田部は、前記基板接続部が貫通された前記回路基板の接続孔を通して、前記回路基板の一面から他面にかけて設けられ、前記座部の少なくとも一部を覆っている。この態様によれば、半田部によって基板接続部の座部を補強できるため、座部での破断を効果的に抑制できる。
【0013】
前記突出部は、前記バスバー本体側に位置する第1部分と、前記基板接続部側に位置する第2部分と、前記第1部分の面に対して前記第2部分を交差する向きに突出させる湾曲部とを備え、前記第1部分と前記バスバー本体は同一平面状に形成され、前記第2部分と前記基板接続部は同一平面状に形成されている。突出部の第1部分とバスバー本体が同一平面状に形成されるとは、蓄電素子の端子へのバスバー本体の溶接によって、バスバー本体と突出部に多少の歪み(湾曲)が生じた状態も含まれる。この態様によれば、突出部による電気的な抵抗を最小限に抑えることができる。蓄電装置の全高が高くなることを抑えることができる。
【0014】
前記蓄電素子の前記端子が位置する端子面側に配置された中蓋を備え、前記突出部の前記第1部分は、前記中蓋に固定された固定部を含む。この態様によれば、固定部から基板接続部側への振動の伝達を抑制できる。よって、基板接続部の破断及び半田部の破損を効果的に抑制できる。
【0015】
前記蓄電素子は、対向した一対の長側面と、これら長側面と交差する方向に延び、対向した一対の短側面とを有する角形の容器を備え、前記基板接続部と前記長側面は平行に配置されている。この態様によれば、意図しない不具合によって蓄電素子が膨張しても、バスバー本体の変位を湾曲部によって吸収できるため、基板接続部に加わる負荷を抑制できる。
【0016】
従来、複数の蓄電素子と、蓄電素子の端子にそれぞれ接続された複数のバスバーと、バスバーに電気的に接続され、バスバーを介して蓄電素子の電圧を検出する回路基板とを備える蓄電装置が知られている。この蓄電装置では、蓄電素子からバスバーに振動が伝わり、バスバーの基板接続部と回路基板の半田付け部分が破損すると、蓄電素子と回路基板の導通に不具合が生じる。
【0017】
上記の特許文献2には、バスバーを保持する樹脂ケースに、バスバーの基板接続部を挿入する溝を設けた蓄電装置が開示されている。
【0018】
特許文献2の蓄電装置では、樹脂ケースの溝にバスバーの基板接続部を挿入するだけであるため、樹脂ケースに対するバスバーの移動を十分に抑制できない。よって、特許文献1の蓄電装置では、振動によるバスバーの基板接続部と回路基板の半田付け部分の破損抑制について、改善の余地がある。
【0019】
本発明は、バスバーの基板接続部と回路基板の半田付け部分の破損を効果的に抑制できる蓄電装置を提供することを第2の課題とする。
【0020】
本発明の一態様に係る蓄電装置において、前記蓄電素子は、前記端子が同一平面上に位置するように複数配列されており、さらに、前記複数の前記蓄電素子の前記端子が位置する面側に配置された中蓋を備え、前記バスバーは、前記複数の前記蓄電素子の前記端子にそれぞれに接続されるように複数配置されており、前記回路基板は、前記複数の前記バスバーのうちの少なくとも1つに電気的に接続されており、前記少なくとも1つの前記バスバーは、前記バスバー本体に連続し、弾性的な変形が可能な可撓部と、前記可撓部に連続し、前記中蓋に固定された固定部と、を有し、前記基板接続部は、前記固定部に連続し、前記回路基板に固定されるとともに電気的に接続されている。
【0021】
この蓄電装置によれば、バスバー本体と基板接続部の間に可撓部と固定部が設けられているため、蓄電素子からバスバーに伝わる振動を可撓部で吸収でき、固定部から基板接続部に伝わることを抑制できる。よって、基板接続部と回路基板の半田付け部分の破損を効果的に抑制できる。可撓部の変形によって、バスバー本体と蓄電素子の端子との接続部分の破損も効果的に抑制できる。その結果、蓄電素子と回路基板の電気的な接続と、蓄電素子同士の電気的な接続に、不具合が生じることを効果的に抑制できる。
【0022】
前記バスバー本体、前記可撓部、前記固定部、及び前記基板接続部は、同一材料によって形成された一体構造であり、前記バスバー本体、前記可撓部、及び前記固定部は、同一平面状に形成されている。ここで、同一平面状に形成されるとは、蓄電素子の端子へのバスバー本体の溶接と、中蓋への固定部の固定とによって、バスバー本体、可撓部、及び固定部に多少の歪み(湾曲)が生じた状態も含まれる。この態様によれば、可撓部によって効果的に振動を吸収できるうえ、可撓部の電気的な抵抗を最小限に抑えることができる。蓄電装置の全高が高くなることを抑えることができる。
【0023】
前記可撓部と前記固定部は、前記バスバー本体に対して前記蓄電素子の配列方向と交差する向きに隣接し、前記配列方向に並べて設けられており、前記可撓部と前記固定部の間には、前記バスバー本体から離れる向きへ延びるスリットが形成されている。この態様によれば、固定部に隣接する可撓部に対して、弾性を効果的に付与できる。バスバー自体の大型化を防ぎつつ、蓄電素子と回路基板の電気的な接続を確保できる。
【0024】
前記基板接続部は、前記固定部の面に対して交差する向きに突出している。この態様によれば、基板接続部と回路基板の半田付け部分への負荷を最小限に抑えることができるため、半田付け部分の破損を効果的に抑制できる。
【0025】
前記固定部には、係止孔が設けられ、前記中蓋には、前記係止孔に係止された係止突起が設けられている。この態様によれば、中蓋に対して固定部を組み付ける作業性を向上できるとともに、中蓋に対して固定部を効果的に固定できる。
【0026】
前記蓄電素子は、一面に前記端子が配置された角形の容器を有し、前記容器の前記一面にはガス排出弁が設けられており、前記可撓部は、前記バスバー本体に対して前記ガス排出弁から離れる向きに突出している。この態様によれば、意図しない異常によって容器のガス排出弁から高温のベントガスが噴出した場合に、ベントガスによる可撓部、固定部、及び基板接続部への影響を抑制できる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0028】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る蓄電装置10を示す。この蓄電装置10は、外装体12の内部に、複数(本実施形態では4個)の電池セル(蓄電素子)21、バスバーユニット31、及び回路基板78を収容した構成である。図3を参照すると、バスバーユニット31のバスバー33A~33Cは、半田付け(半田部84)によって回路基板78に機械的かつ電気的に接続されている。本実施形態では、この半田付け部分の破損を効果的に抑制する。
【0029】
以下の説明では、電池セル21の配列方向である電池セル21の短手方向をX方向ということがある。電池セル21の長手方向をY方向といい、電池セル21の高さ方向をZ方向ということがある。それぞれの方向において、矢印の原点側を「一方側」といい、矢印の先端側を「他方側」ということがある。本実施形態の蓄電装置10は、X方向の寸法がY方向の寸法よりも短い直方体状であるが、これらの寸法は、収容する電池セル21の形状及び数によって変わる。
【0030】
(蓄電装置の概要)
図1に示すように、外装体12は樹脂製であり、1つの面(Z方向の上面)を開口した本体13と、本体13の開口を塞ぐ蓋体17とを備える。本体13と蓋体17は、接着剤又は溶着等によって気密かつ液密に固着される。
【0031】
本体13は、概ね長方形状の底壁14を備える。底壁14のX方向両端には、電池セル21の配列方向の外側に位置する一対の端壁15がそれぞれ立設されている。底壁14のY方向両側には、電池セル21の配列方向と交差する方向の外側に位置する一対の側壁16がそれぞれ立設されている。
【0032】
蓋体17には、Y方向の一方側に正極外部端子18が設けられ、Y方向の他方側に負極外部端子19が設けられている。本実施形態では、外部端子18,19は、X方向とY方向におけるそれぞれの端部側である蓋体17の角部に配置されている。これらの外部端子18,19は、蓋体17の上面(XY平面)に沿って延びる第1接続部18a,19aと、蓋体17の端面(YZ平面)に沿って延びる第2接続部18b,19bとを備える。外部端子18,19は、その一部が部分的に蓋体17の内部にインサート成形されており、インサート成形されていない部分が蓋体17の表面に露出している。外部端子18,19が蓋体17にインサート成形されている部分は、蓄電装置10の内部において回路基板78またはバスバー33に電気的に接続されている。
【0033】
図1から図3に示すように、複数の電池セル21は、端子27,28が同一平面上に位置し、長側面23が対向するように、X方向に配列され、外装体12内に収容されている。隣接した電池セル21間の電気的な絶縁は、個々の電池セル21の外周に配置した絶縁部材によって行われている。
【0034】
電池セル21としては、リチウムイオン電池等の非水電解質二次電池が用いられている。但し、リチウムイオン電池以外にも、キャパシタを含む種々の電池セル21も適用できる。個々の電池セル21は金属製の容器22を備え、この容器22の内部に、セパレータを介して正極と負極の電極シートを積層した電極体、正極と負極の集電体、及び電解液が収容されている。
【0035】
図3に最も明瞭に示すように、容器22は角形であり、YZ平面に沿って延び、対向する一対の長側面23と、XZ平面に沿って延び、対向する一対の短側面24とを備える。X方向における短側面24の寸法は、Y方向における長側面23の寸法よりも短い。容器22は、XY平面に沿って延び、対向する底面25と端子面(蓋)26を備える。図1に示すX方向一方側に位置する電池セル21を参照すると、Z方向の上側に位置する端子面26には、Y方向の一方側に正極端子27が配置され、Y方向の他方側に負極端子28が配置されている。端子27,28の間に位置するように、端子面26には、安全弁としてのガス排出弁29が設けられている。
【0036】
本実施形態における複数の電池セル21は、X方向一方側に位置する電池セル21の正極端子27と、その電池セル21に隣接するX方向他方側の電池セル21の負極端子28とが、X方向に隣接するように交互に配置を変えてX方向に配列されている。このような電池セル21の配列とすることで、後述するように全ての電池セル21を電気的に直列接続することができる。本実施形態では全ての電池セル21を直列に接続するためにこのような配置としたが、全ての電池セル21を並列に接続することも可能であって、その場合は、隣接する電池セル21のX方向に正負で同極の端子を配列すればよい。全ての電池セル21を直列と並列の両方を用いて接続することも可能であって、その場合は、並列に接続する電池セル21のX方向に正負で同極の端子を配列し、直列に接続する電池セル21のX方向に正負で異極の端子を配列すればよい。
【0037】
バスバーユニット31は、複数(本実施形態では5枚)のバスバー33A~33Cと、これらを保持する樹脂製のバスバーフレーム60とを備え、電池セル21の端子面26上に配置されている。つまり、複数のバスバー33A~33Cは、バスバーフレーム60に概ね同一平面上に配置され、一体化された状態で電池セル21群に配置されている。
【0038】
バスバー33A~33Cは、電池セル21の電力を供給する給電回路を構成する。バスバー33A~33Cは、所定の電池セル21の端子27,28に、溶接によって電気的に接続されるとともに固定されている。第1のバスバー33Aは、X方向に隣接した正極端子27と負極端子28を電気的に接続される部材であり、本実施形態では3枚用意されている。電池セル21を並列に接続する場合には、第1のバスバー33Aは、正極端子27同士、又は負極端子28同士に電気的に接続される。第2のバスバー33Bは、電流が流れる方向の一端に位置する電池セル21の正極端子27に電気的に接続される部材であり、本実施形態では1枚用意されている。第3のバスバー33Cは、電流が流れる方向の他端に位置する電池セル21の負極端子28に電気的に接続される部材であり、本実施形態では1枚用意されている。
【0039】
直列接続の場合、1枚のバスバー33Aによって、定められた電池セル21の正極端子27と、他の定められた電池セル21の負極端子28が電気的に接続される。並列接続の場合、1枚のバスバー33Aによって、定められた2以上の電池セル21の正極端子27同士が電気的に接続されるとともに、他の定められた2以上の電池セル21の負極端子28同士が電気的に接続され、これらの正極端子27群と負極端子28群が電気的に接続される。本実施形態では、4個の電池セル21を直列接続する場合を示している。
【0040】
バスバー33Bには軸部34が設けられ、この軸部34に、蓋体17の中にインサート成形されている正極外部端子18の一部が締結される。バスバー33Cには軸部35が設けられ、この軸部35に回路基板78が締結され、この回路基板78に、蓋体17の中にインサート成形されている負極外部端子19の一部が接続される。これにより複数の電池セル21は、外部端子18,19を外部の機器(例えば自動二輪車など)に接続することで、電気の充電と放電が可能になる。
【0041】
バスバーフレーム60は、外装体12の内部を仕切る中蓋として機能する。図4を参照すると、バスバーフレーム60には、バスバー33A~33Cを取り付ける複数の取付部62A~62Cが設けられている。本実施形態では、Y方向の一方側の領域において、X方向の一方側にバスバー33Bを取り付ける取付部62Bが設けられ、X方向の他方側にバスバー33Cを取り付ける取付部62Cが設けられ、これらの間にバスバー33Aを取り付ける1個の取付部62Aが設けられている。Y方向の他方側の領域において、バスバー33Aを取り付ける2個の取付部62Aが、X方向に並べて設けられている。
【0042】
図1から図3に示すように、回路基板78は、バスバーユニット31上にXY平面に延びる平板として配置されている。バスバーフレーム60の支柱61に回路基板78の取付孔79を嵌め、貫通した支柱61の先端を塑性変形(熱溶融又は熱加締め)させることで、バスバーフレーム60に回路基板78が固定される。図1図2及び図4に示す分解図では、バスバーフレーム60から回路基板78を取り外した状態を示すが、図面の便宜上、支柱61の先端は塑性変形された後の形状を示している。実際の製造工程は、変形する前の支柱61の先端を取付孔79に挿通した後に、支柱61の先端を塑性変形している。これによって、図3に示すように支柱61の先端はドーム状に丸まり、ドーム状の部分のZ方向下側が取付孔79の周囲と当接する。回路基板78には、バスバー33Cの軸部35を接続する接続孔80が設けられるとともに、蓋体17の中にインサート成形されている負極外部端子19の一部を締結するための軸部81が配置されている。
【0043】
回路基板78には、複数の素子82によって、電池セル21の出力電圧(電位差)を監視する監視回路(バッテリモニタリングユニット)が形成されている。この監視回路に個々の電池セル21を電気的に接続するために、回路基板78には複数の接続孔83が設けられ、これらの接続孔83にバスバー33A,33Bの基板接続部49がそれぞれ接続される。監視回路とバスバー33Cの接続には軸部35が兼用され、この軸部35を接続する接続孔80の周囲に形成された導電部に監視回路が分岐接続されている。
【0044】
回路基板78は、Z方向の上側からみたXY平面において、Y方向を上辺とする略T字形に形成されており、回路基板78のX方向の一方側の領域において、Y方向の一方側と他方側の角部が切り欠かれている。具体的には、回路基板78のY方向一方側は、Y方向に沿う辺が2段階で切り欠かれている。回路基板78のY方向の一方側の端部には、Z方向の上側に正極外部端子18が位置し、かつ、正極外部端子18の一部が蓋体17の内部にインサートされている。そのため、その範囲を避けるために回路基板78のY方向の一方側の端部は切り欠かれている。2段階で切り欠かれている回路基板78のY方向一方側のうち、Y方向の一方側の端部よりもY方向で中央寄りの領域は、バスバー33Bの軸部34を、蓋体17の内部にインサートされている正極外部端子18の一部と接続するため、その範囲を避けるために切り欠かれている。言い換えれば、正極外部端子18とバスバー33Bとは回路基板78に接続されておらず、かつ、正極外部端子18とバスバー33Bとの接続経路は回路基板78を迂回している。回路基板78のY方向の他方側の端部には、Z方向の上側に負極外部端子19が位置し、かつ、負極外部端子19の一部が蓋体17の内部にインサートされている。そのため、その範囲を避けるために回路基板78のY方向の他方側の端部は切り欠かれている。
【0045】
以下、バスバー33A~33C、取付部62A~62C、及び回路基板78の構成について、より詳細に説明する。
【0046】
(第1のバスバーの詳細)
図4及び図5に示すように、第1のバスバー(特定のバスバー)33Aは、バスバー本体36、可撓部40、固定部42、連続部45、及び基板接続部49を備え、これらを同一の金属材料(1枚の金属板)によって形成した一体構造である。そのうち、可撓部40、固定部42、及び連続部45は、電池セル21のガス排出弁29から離れるように、バスバー本体36からY方向(配列方向と交差する向き)の外側(他方側)へ突出する突出部39を構成する。
【0047】
連続部45は、固定部42に連続する基部46と、基板接続部49に連続する先端部47とを備える。可撓部40、固定部42、及び連続部45の基部46は、バスバー本体36に連続した突出部39の第1部分である。連続部45の先端部47は、基板接続部49に連続した突出部39の第2部分である。連続部45の基部46(第1部分)と先端部47(第2部分)の間には、基部46の面(XY平面)に対して先端部47を直交する向きに突出させるための湾曲部48が形成されている。これにより、突出部39の第1部分とバスバー本体36とは同一平面状に位置し、突出部39の第2部分と基板接続部49とは同一平面状に位置する。同一平面状に位置するとは、電池セル21の端子27,28へのバスバー本体36の溶接、バスバーフレーム60への固定部42の固定、及び回路基板78への基板接続部49の半田付けによって、多少の歪み(湾曲)が生じた状態も含まれる。
【0048】
図2を併せて参照すると、バスバー本体36は、一対の接合部37a,37bを備える。接合部37a,37bは、X方向に隣接した端子27,28に対して、溶接によって固定されるとともに電気的に接続される。接合部37a,37bは、電池セル21の端子27,28のうち突出している部分を挿通可能な円形状の貫通孔38を有する。本実施形態では、負極側の端子28の軸部が突出しているため、貫通孔38はこの軸部を挿通することが可能である。図5中の符号59は、接合部37a,37bの溶接部(溶接軌道)であり、貫通孔38の周囲に円弧状に形成されている。この溶接部59は、端子27,28への接合前には形成されていないが、説明の便宜上、全ての図に現している。貫通孔38及び溶接部59は、第1のバスバー(特定のバスバー)33Aに限られず、第2のバスバー33Bと第3のバスバー33Cでも共通の構成である。接合部37a,37bの間には、概ね半円環状に湾曲した湾曲部37cが設けられている。湾曲部37cは、電池セル21に意図しない異常が発生して容器22が膨張した際、X方向に隣接した端子27,28間の距離の変化を許容し、電池セル21の電気的な接続を維持するために設けられている。
【0049】
可撓部40は、接合部37aに連続しており、バスバー本体36から基板接続部49までの沿面距離を延ばすとともに、固定部42とバスバー本体36の間の変位を許容するために設けられている。可撓部40は、バスバー本体36から離れる向き(Y方向外向き)に延びるスリット41によって、固定部42と区画されている。このスリット41によって可撓部40は、X方向の横幅が固定部42よりも狭く形成され、バスバー本体36及び固定部42に対して弾性的に変形できるように構成されている。
【0050】
固定部42は、電池セル21の移動による基板接続部49の移動を抑制するために設けられている。固定部42は、可撓部40のY方向の外端に連続し、可撓部40に対して接合部37bが位置する向き(電池セル21の配列方向)に並べて設けられている。固定部42には、正方形状に打ち抜いた係止孔43が設けられている。可撓部40とバスバー本体36に対向する固定部42の角には、面取りによる切欠部44が設けられている。
【0051】
連続部45は、前述のように基部46、先端部47、及び湾曲部48を備える。連続部45は、固定部42に対して可撓部40とはX方向の反対側に突出するように設けられている。Y方向における連続部45の横幅は、Y方向における固定部42の横幅よりも狭い。連続部45の基部46におけるバスバー本体36と対向する辺は、バスバー本体36と対向する固定部42の辺に対して凹凸がない直線上に位置している。
【0052】
基板接続部49は、半田付けによって、回路基板78の接続孔83に固定され、監視回路に電気的に接続されている。基板接続部49は、連続部45を介して固定部42に連続しており、固定部42の面(XY平面)に対して直交するYZ平面に沿って突出する板状である。つまり、基板接続部49は、YZ平面に沿って延びる容器22の長側面23に対して平行に配置されている。言い換えれば、基板接続部49は、電池セル21の容器が膨張し易い方向であるX方向に対して直交するYZ平面に沿って突出する板状である。
【0053】
図6を参照すると、基板接続部49は、連続部45(突出部39)側に位置する基端に座部50を備える。Y方向(横方向)における座部50の横幅は、連続部45から基板接続部49の先端51に向けて、次第に狭くなっている(W2→W1)。座部50の傾斜した斜辺50aは、本実施形態では所定曲率の曲線状(R面)としているが、直線状(C面)としてもよく、その形状は必要に応じて変更が可能である。座部50よりも先端51側の基板接続部49の横幅W1は、一様であり、Y方向における連続部45の横幅W3よりも狭い。座部50を除く基板接続部49の横幅W1は、回路基板78の接続孔83のY方向の横幅W4よりも狭い。座部50の最も広い部分の横幅W2は、回路基板78の接続孔83の横幅W4よりも広い。基板接続部49についての各種の変形例は、図9及び図10を用いて後述する。
【0054】
(第1の取付部の詳細)
図2及び図4に示すように、第1の取付部62Aは、Z方向に貫通した取付孔63を備える。取付孔63には、上方にバスバー本体36が配置され、下方から内部に電池セル21の端子27,28が配置される。X方向における取付孔63の中央には、Y方向に延びるように、湾曲部37cを保持する保持部64が設けられている。取付孔63には、Y方向における突出部39の反対側、かつ保持部64上に位置するように、湾曲部37c(バスバー本体36)の上面に係止する係止片65が設けられている。
【0055】
取付部62Aには、取付孔63のY方向外側に、固定部42を固定する固定受部66が設けられている。固定受部66は、係止孔43の周囲に係止される一対の係止突起67を備える。係止突起67は、弾性片68のZ方向の先端に設けられている。弾性片68は、Y方向に沿った弾性的な変形が可能であり、係止孔43内を貫通している。固定受部66の取付孔63側には、固定部42の切欠部44に当接する段部69が、Z方向上向きに突設されている。
【0056】
取付部62Aには、固定受部66とX方向に隣接する位置に、連続部45を支持する枠部70が設けられている。枠部70は、連続部45のY方向外側の縁と先端部47の外面を支持するように、平面視L字形状に形成されている。
【0057】
取付部62Aにバスバー33Aを取り付ける場合、保持部64と係止片65の間に湾曲部37cを挿入して、バスバー本体36を取付孔63に配置する。その後、固定部42を固定受部66に向けてZ方向の下側に押し込み、係止孔43に係止突起67を貫通させる。これにより、係止突起67が係止孔43の縁に係止するとともに、切欠部44が段部69によって支持される。枠部70によって連続部45が支持される。
【0058】
このように、固定部42には係止孔43が設けられ、バスバーフレーム60には係止突起67が設けられている。そして、固定部42を固定受部66に押し込むだけで、係止孔43に係止突起67を係止できる。そのため、バスバーフレーム60に対するバスバー33Aの組付作業性を向上できるとともに、バスバーフレーム60に対して固定部42を効果的に固定できる。
【0059】
(回路基板の詳細)
図2及び図6に示すように、回路基板78の接続孔83は、座部50を除く基板接続部49の断面形状よりも大きいスルーホールである。基板接続部49と回路基板78を接続する半田部84は、接続孔83を通して、回路基板78の一面78aから他面78bにかけて設けられている(バックフィレット)。半田部84は、基板接続部49の座部50の一部を覆っている。
【0060】
基板接続部49の横幅W1は連続部45(突出部39)の横幅W3よりも狭いため、半田付け時には基板接続部49での熱伝導性を向上できる一方、使用時には突出部39での導電性を確保できる。座部50によって、回路基板78への基板接続部49の過度の差し込みを抑制できるうえ、半田付け時には溶融した半田の流れ落ちを抑制できる。
【0061】
具体的には、基板接続部49の表面での半田の流動性は、半田の種類に応じて定められた温度よりも高い場合には良いが、定められた温度よりも低い場合には悪い。基板接続部49を回路基板78に半田付けする際、基板接続部49は、先端51側が加熱されるため、先端51から座部50に向けて温度が次第に低くなる。しかも、座部50では、連続部45に向けて横幅W1からW2へ次第に広くなるため、温度の下降勾配は急になる。つまり、座部50では、先端51側の温度は定められた温度よりも高くなり易いが、連続部45側の温度は定められた温度よりも高くなり難い。連続部45の横幅W3は座部50の横幅W2よりも更に広くなるため、定められた温度よりも高くなることはない。よって、溶融した半田が連続部45まで流動することを抑制できる。その結果、半田の無駄な流れ落ちを防止できるとともに、基板接続部49と回路基板78を適量の半田によって適切に接合できる。
【0062】
このようにバスバー33A、バスバーフレーム60、及び回路基板78が構成されているため、蓄電装置10の使用時には以下の効果を得ることができる。
【0063】
バスバー33Aは、バスバー本体36と基板接続部49の間に、可撓部40と固定部42を備えている。そのため、電池セル21からバスバー33Aに伝わる振動を可撓部40で吸収でき、固定部42から基板接続部49に伝わることを抑制できる。よって、基板接続部49と回路基板78の半田部84の破損を効果的に抑制できる。可撓部40の変形によって、バスバー本体36と電池セル21の端子27,28との接合部分の破損も効果的に抑制できる。その結果、電池セル21と回路基板78の電気的な接続と、電池セル21同士の電気的な接続に、不具合が生じることを効果的に抑制できる。
【0064】
バスバー本体36、可撓部40、及び固定部42は、同一平面状に形成されている。そのため、可撓部40によって効果的に振動を吸収できるうえ、可撓部40の電気的な抵抗を最小限に抑えることができる。Z方向におけるバスバー33Aの寸法を抑えることができるため、蓄電装置10の全高が高くなることを抑えることができる。
【0065】
可撓部40と固定部42の間にはスリット41が形成されている。よって、固定部42に隣接する可撓部40に対して、弾性を効果的に付与できる。可撓部40と固定部42を設けることによるバスバー33Aの大型化を防ぎつつ、電池セル21と回路基板78の電気的な接続を確保できる。
【0066】
基板接続部49は、固定部42の面に対して交差する向きに突出している。よって、基板接続部49と回路基板78を接続した半田部84への負荷を最小限に抑えることができるため、半田部84の破損を効果的に抑制できる。基板接続部49を含む突出部39は、電池セル21のガス排出弁29から離れる向きに突出している。よって、意図しない異常によってガス排出弁29から高温のベントガスが噴出した場合に、ベントガスによる可撓部40、固定部42、及び基板接続部49の影響を抑制できる。
【0067】
基板接続部49には、連続部45から先端51に向けて横幅を次第に狭くした座部50が形成されている。そのため、基板接続部49の基端の剛性を高めることができる。よって、基板接続部49の基端部分(座部50)への応力集中によって、基板接続部49が破断すること、または、半田部84が破損すること等を抑制できる。しかも、半田部84は、座部50の一部を覆うように形成されている。よって、半田部84によって基板接続部49の座部50を補強できるため、座部50での破断を効果的に抑制できる。
【0068】
(第2のバスバーの詳細)
図4及び図7に示すように、第2のバスバー33Bは、バスバー本体36、外部端子接続部53、連続部45、及び基板接続部49を備え、これらを同一の金属材料によって形成した一体構造である。第2のバスバー33Bでは、外部端子接続部53と連続部45とが、バスバー本体36からY方向(配列方向と交差する向き)の内側に突出する突出部39を構成する。外部端子接続部53は、バスバー33Aの固定部42と同様の機能を有する。つまり、第2のバスバー33Bは、可撓部40が無い点でバスバー33Aと異なる。
【0069】
バスバー本体36は、1つの接合部37を備え、バスバー33Aの湾曲部37cに相当する構成は備えていない。接合部37は、X方向を短手方向とし、Y方向を長手方向として、Y方向に沿って長尺な形状を有している。接合部37のY方向の外端には、同一平面状に突出する突片52が設けられている。突片52は、接合部37を基準として、外部端子接続部53、連続部45、及び基板接続部49とはY方向の反対側に設けられている。
【0070】
外部端子接続部53は、バスバー本体36に対してZ方向に間隔をあけて位置しており、軸部34を取り付けるために設けられている。外部端子接続部53は、XZ平面に沿って延びるように屈曲された段部54を備え、この段部54がバスバー本体36のY方向の内端に連続している。外部端子接続部53の中央には、軸部34を突出させる貫通孔55が設けられている。軸部34は、軸方向から見て四角形状の頭部34aを備え、この頭部34aが外部端子接続部53の下方に突出している。
【0071】
連続部45は、段部56、基部46、及び先端部47を備える。段部56は、X方向における外部端子接続部53の一端に連続し、Z方向の下向きに屈曲され、YZ平面に沿って延びている。段部56に基部46が連続し、基部46に湾曲部48を介して先端部47が連続している。Y方向における連続部45の横幅は、第1のバスバー33Aの連続部45の横幅と同一寸法で形成されている。
【0072】
基板接続部49は、第1のバスバー33Aと同様に、座部50を備え、連続部45に連続するように形成されている。この基板接続部49が電気的に接続される回路基板78の接続孔83も、第1のバスバー33Aの基板接続部49を接続する接続孔83と同様に形成されている。
【0073】
(第2の取付部の詳細)
図4に示すように、第2の取付部62Bは、Z方向に貫通した取付孔63を備える。取付孔63には、第1の取付部62Aの保持部64と係止片65は設けられていない。取付孔63のY方向の外側には、突片52を載置する載置部71が設けられている。載置部71には、弾性的に変形可能で、突片52の上面に係止する弾性係止部72が設けられている。
【0074】
取付部62Bには、外部端子接続部53と対応する位置に、四角形状の窪みからなり、軸部34の頭部34aを配置する凹部73が設けられている。凹部73とX方向に隣接する位置には、連続部45を支持する枠部70が設けられている。枠部70には、弾性的に変形可能で、基部46の上面に係止する弾性係止部74が設けられている。
【0075】
取付部62Bにバスバー33Bを取り付ける場合、載置部71上に突片52を配置し、凹部73上に軸部34を配置し、枠部70上に連続部45を配置する。その後、バスバー33B全体を取付部62Bに向けてZ方向の下側に押し込むことで、突片52に弾性係止部72を係止させ、凹部73に軸部34の頭部34aを配置し、基部46に弾性係止部74を係止させる。
【0076】
Z方向における載置部71と弾性係止部72との間は、突片52のZ方向の厚みに相当する所定の間隔を設けている。これにより、突片52を載置部71上に配置する際には、突片52をY方向に沿ってスライドすることで、載置部71と弾性係止部72との隙間に突片52を差し込んで配置することができる。
【0077】
このようにしたバスバー33Bと取付部62Bでは、バスバー33Aと取付部62Aの場合と同様に、組付作業性を向上できるとともに効果的に固定できる。バスバー33Bは、バスバー33Aの可撓部40に関連する効果は得られないが、その他(特に基板接続部49の半田付け部分)の効果は同様に得ることができる。
【0078】
(第3のバスバーの詳細)
図4及び図8に示すように、第3のバスバー33Cは、バスバー本体36、外部端子接続部53、及び係止片57を備え、これらを同一の金属材料によって形成した一体構造である。つまり、第3のバスバー33Cは、連続部45の代わりに係止片57を設け、基板接続部49を設けていない点で第2のバスバー33Bと異なる。
【0079】
バスバー本体36は1つの接合部37と突片52とを備え、外部端子接続部53は段部54と貫通孔55とを備える。接合部37は、X方向を短手方向とし、Y方向を長手方向として、Y方向に沿って長尺な形状を有している。突片52は、接合部37を基準として、外部端子接続部53、係止片57とはY方向の反対側に設けられている。係止片57は、外部端子接続部53と平行に位置するように、外部端子接続部53からX方向の他方側(外側)に向かって突出し、その板面がXY平面に沿っている。係止片57はYZ平面に沿うように屈曲した段部58を備え、この段部58がX方向における外部端子接続部53の一端に連続している。
【0080】
(第3の取付部の詳細)
図4に示すように、第3の取付部62Cは、第2の取付部62Bと同様に、載置部71と弾性係止部72とを含む取付孔63、及び凹部73を備える。凹部73とX方向に隣接する位置には、枠部70の代わりに係止受部75が設けられている。係止受部75には、弾性的に変形可能で、係止片57の上面に係止する弾性係止部76が設けられている。
【0081】
取付部62Cにバスバー33Cを取り付ける場合、載置部71上に突片52を配置し、凹部73上に軸部35を配置し、係止受部75上に係止片57を配置する。その後、バスバー33Cを取付部62Cに向けてZ方向の下側に押し込むことで、突片52に弾性係止部72を係止させ、凹部73に軸部35の頭部35aを配置し、係止片57に弾性係止部76を係止させる。
【0082】
Z方向における載置部71と弾性係止部72との間は、突片52のZ方向の厚みに相当する所定の間隔を設けている態様は、バスバー33Bと同様の構成である。係止受部75と弾性係止部76についても同様であり、Z方向における係止受部75と弾性係止部76との間は、突片52のZ方向の厚みに相当する所定の間隔を設けている。これにより、突片52を係止受部75上に配置する際には、突片52をX方向に沿ってスライドすることで、係止受部75と弾性係止部76との隙間に突片52を差し込んで配置することができる。
【0083】
このようにしたバスバー33Cと取付部62Cでは、バスバー33Aと取付部62Aの場合と同様に、組付作業性を向上できるとともに効果的に固定できる。
【0084】
次に、上記実施の形態に係る基板接続部49に関する変形例を、上記実施の形態との差分を中心に説明する。
【0085】
(変形例1)
図9は、実施の形態の変形例1に係る基板接続部49a及び半田部84を示す断面図である。基板接続部49aについては、断面ではなくX方向から見た場合の側面が図示されている。
【0086】
図9に示す基板接続部49aの座部50は、直線状の斜辺50aを有しており、斜辺50aの少なくとも一部は、回路基板78の接続孔83の内部に配置されている。つまり、座部50の一部は、回路基板78の接続孔83に挿入されている。この場合において、基座部50の上端は、回路基板78の厚さ範囲(Z方向の幅の範囲)の途中に至るよう形成されてもよいし、太線の点線で示すように、回路基板78の接続孔83を貫通するよう形成されてもよい。
【0087】
上記いずれの場合であっても、基板接続部49aの先端51から連続部45までの間において、基板接続部49aと接続孔83の内面との隙間が徐々に狭くなる部分が存在する。従って、回路基板78の一面78a側から当該隙間に進入する半田は、毛細管現象によって、回路基板78の他面78b側に行き渡り易くなる。その結果、基板接続部49aと回路基板78との電気的及び機械的な接合の信頼性がさらに向上する。さらに、本変形例に係る基板接続部49aでは、半田部84によって固定される座部50の幅(Z方向及びY方向の幅)が比較的に大きい。そのため、例えば振動または衝撃による基板接続部49aまたは連続部45の破損が効果的に抑制される。
【0088】
図9に示す座部50において斜辺50aが直線状であることは必須ではない。斜辺50aは、内側または外側に湾曲した形状であってもよい。斜辺50aは、複数の直線部分を有する折れ線状の形状であってもよい。
【0089】
(変形例2)
図10は、実施の形態の変形例2に係る基板接続部49b及び半田部84を示す断面図である。基板接続部49bについては、断面ではなくX方向から見た場合の側面が図示されている。
【0090】
図10に示す基板接続部49bは、実施の形態に係る基板接続部49よりも、横幅W1が大きい。具体的には、本変形例において、基板接続部49bの横幅W1と、接続孔83のY方向の横幅W4とは、“W4-W1<W1”という関係を満たす。つまり、基板接続部49bの横幅W1は、接続孔83のY方向の横幅W4の半分よりも大きい。
【0091】
さらに、本変形例に係る座部50は、実施の形態に係る座部50(図6参照)と比較すると、基板78により近い位置に配置されている。本変形例では、図10に示すように、回路基板78の厚さをW5とし、座部50の下端と回路基板78の他面78bとの隙間の幅をW6とした場合、“W6<W5”という条件を満たす。W6は、さらに、“W6<(W4-W1)/2”という条件を満たしてもよい。つまり、W6は、基板接続部49bと接続孔83との隙間の幅((W4-W1)/2)より小さくてもよい。
【0092】
このように、本変形例に係る基板接続部49bは、基板接続部49bと、回路基板78との間のY軸方向およびZ軸方向の隙間が、より小さくなるように形成されている。これにより、回路基板78の一面78a側から板接続部49bと接続孔83との隙間に進入する半田は、毛細管現象によって、回路基板78の他面78b側により行き渡り易くなる。その結果、上記変形例1と同じく、基板接続部49bと回路基板78との電気的及び機械的な接合の信頼性がさらに向上し、振動または衝撃による基板接続部49bまたは連続部45の破損が効果的に抑制される。
【0093】
図10に示す座部50において斜辺50aが湾曲形状であることは必須ではない。斜辺50aは、少なくとも一部に直線部分を有する形状であってもよい。
【0094】
(他の実施の形態)
本発明の蓄電装置10は、前記実施形態及び変形例の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0095】
例えば、第3のバスバー33Cにも専用の基板接続部49を設けてもよい。第1から第3のバスバー33A~33Cのうち、つまり5枚のバスバーのうち、1枚だけに基板接続部49を設けてもよい。
【0096】
バスバー33Aは、バスバー本体36、可撓部40、固定部42、及び基板接続部49の所定部位を別体で設け、接合等によって一体化した構成としてもよい。バスバー本体36、可撓部40、及び固定部42には、必要に応じて段部を形成してもよい。
【0097】
可撓部40は、固定部42に対してスリット41によってと区画し、X方向に並べて形成したが、Y方向に並べて設けてもよく、その形状は必要に応じて変更が可能である。固定部42の固定構造も、必要に応じて変更が可能である。
【0098】
基板接続部49は、固定部42に対して同一平面状(平行)に突設してもよい。基板接続部49は、電池セル21の長側面23に対して交差する向きに突出していてもよい。半田部84は、基板接続部49の座部50の一部を覆わない構成であってもよい。
【0099】
蓄電素子を構成する電池セル21は、帯状の電極シートとセパレータを巻回した巻回式であってもよいし、矩形状とした複数枚の電極シートとセパレータを積層した積層式であってもよい。電池セル21は、電極体を容器22内に収容した角形電池に限られず、積層式の電極体をラミネートフィルムによって封止したラミネート型電池であってもよい。
【0100】
本発明の蓄電装置10は、内燃機関のみを搭載したガソリン車又はディーゼル車、及び内燃機関と電動機を搭載したハイブリッド車の始動用として用いることができる。本発明の蓄電装置10は、ハイブリッド車、及び電動機のみを搭載した電気自動車の駆動用としても用いることもできる。
【符号の説明】
【0101】
10…蓄電装置
12…外装体
13…本体
14…底壁
15…端壁
16…側壁
17…蓋体
18…正極外部端子
18a,19a…第1接続部
18b,19b…第2接続部
19…負極外部端子
21…電池セル(蓄電素子)
22…容器
23…長側面
24…短側面
25…底面
26…端子面
27…正極端子
28…負極端子
29…ガス排出弁
31…バスバーユニット
33A~33C…バスバー
34,35,81…軸部
34a,35a…頭部
36…バスバー本体
37,37a,37b…接合部
37c,48…湾曲部
38,55…貫通孔
39…突出部
40…可撓部
41…スリット
42…固定部
43…係止孔
44…切欠部
45…連続部
46…基部
47…先端部
49,49a,49b…基板接続部
50…座部
50a…斜辺
51…先端
52…突片
53…外部端子接続部
54,56,58,69…段部
57,65…係止片
59…溶接部
60…バスバーフレーム(中蓋)
61…支柱
62A~62C…取付部
63,79…取付孔
64…保持部
66…固定受部
67…係止突起
68…弾性片
70…枠部
71…載置部
72,74.76…弾性係止部
73…凹部
75…係止受部
78…回路基板
78a…一面
78b…他面
80,83…接続孔
82…素子
84…半田部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10