(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60L 58/33 20190101AFI20231011BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231011BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20231011BHJP
B60L 50/75 20190101ALI20231011BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20231011BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20231011BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20231011BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20231011BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231011BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20231011BHJP
【FI】
B60L58/33
H02J7/00 303E
H02J7/00 P
H02J7/34 D
B60L50/75
H01M8/00 A
H01M8/00 Z
H01M8/04858
H01M8/04 Z
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2021050799
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 貴士
(72)【発明者】
【氏名】河井 孝吉
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-053051(JP,A)
【文献】特開2010-277816(JP,A)
【文献】特開2008-091257(JP,A)
【文献】特開2013-057309(JP,A)
【文献】特開2013-099982(JP,A)
【文献】特開2002-280046(JP,A)
【文献】特開2019-149260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
H01M 8/00 - 8/2495
H01M 10/42 - 10/48
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置と、
前記蓄電装置から電力の供給を受けて車両を駆動させるための駆動力を発生させる
力行動作と前記蓄電装置に蓄電される電力を発生させる回生動作とが可能な回転電機と、
前記蓄電装置に供給する電力を発生させる発電ユニットと、
前記回転電機及び前記発電ユニットからの排熱を放熱する放熱部と、
を備えた車両であって、
前記回転電機及び前記発電ユニットによる発電量は、前記放熱部により放熱することが可能な放熱可能量から算出される許容発電電力以下であり、
前記車両の駆動による車両要求パワーと前記発電ユニットによる発電量との関係を前記回転電機の力行側と回生側とで示すマップを用いて、前記回転電機の力行時には、前記力行側の前記マップにおいて前記車両要求パワーが前記発電ユニットによる発電量のピークとなる所定値よりも正側に大きくなるほど、前記発電ユニットによる発電量が小さくなるように、前記発電ユニットによる発電を制御し、前記回転電機の回生時には、前記回生側の前記マップにおいて前記車両要求パワーが負側に絶対値で大きくなる前記回転電機の回生による発電量が大きくなるほど、前記発電ユニットによる発電量が小さくなるように、前記発電ユニットによる発電を制御する制御装置を備えることを特徴とする車両。
【請求項2】
前記放熱部は、前記車両に設けられた補機からの排熱も放熱し、
前記車両要求パワーには、前記補機を駆動するために消費する補機消費電力を含むことを特徴とする請求項
1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御装置は、前記車両が目的地に到着するまでに必要な電力を予測して、前記発電ユニットによる発電を制御することを特徴とする請求項1
または2に記載の車両。
【請求項4】
前記制御装置は、前記蓄電装置の残容量が所定容量よりも小さい場合に、前記回転電機の駆動を制御させて、前記発電ユニットによる発電を行うことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の車両。
【請求項5】
前記車両は高真空環境下で走行可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハイブリッド車両において、必要要求負荷の指標であるアクセル開度の増加に応じて、発電機による発電量を増加させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、必要要求負荷(アクセル開度)が大きくなるほど、発電機による発電量を増加させることによって、発電機などからの排熱を放熱する放熱部の放熱能力限界に到達するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、放熱部からの放熱量が制限される中でも蓄電装置の残容量を確保して、航続可能距離を延ばすことが可能な車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る車両は、蓄電装置と、前記蓄電装置から電力の供給を受けて車両を駆動させるための駆動力を発生させる力行動作と前記蓄電装置に蓄電される電力を発生させる回生動作とが可能な回転電機と、前記蓄電装置に供給する電力を発生させる発電ユニットと、前記回転電機及び前記発電ユニットからの排熱を放熱する放熱部と、を備えた車両であって、前記回転電機及び前記発電ユニットによる発電量は、前記放熱部により放熱することが可能な放熱可能量から算出される許容発電電力以下であり、前記車両の駆動による車両要求パワーと前記発電ユニットによる発電量との関係を前記回転電機の力行側と回生側とで示すマップを用いて、前記回転電機の力行時には、前記力行側の前記マップにおいて前記車両要求パワーが前記発電ユニットによる発電量のピークとなる所定値よりも正側に大きくなるほど、前記発電ユニットによる発電量が小さくなるように、前記発電ユニットによる発電を制御し、前記回転電機の回生時には、前記回生側の前記マップにおいて前記車両要求パワーが負側に絶対値で大きくなる前記回転電機の回生による発電量が大きくなるほど、前記発電ユニットによる発電量が小さくなるように、前記発電ユニットによる発電を制御する制御装置を備えることを特徴とするものである。
【0007】
これにより、放熱部の放熱量が制限される中でも蓄電装置の残容量を確保して、航続可能距離を延ばすことが可能となる。
【0010】
また、上記において、前記放熱部は、前記車両に設けられた補機からの排熱も放熱し、前記車両要求パワーには、前記補機を駆動するために消費する補機消費電力を含むようにしてもよい。
【0011】
これにより、補機消費電力に応じた補機からの排熱も考慮して発電ユニットによる発電を行うことが可能となる。
【0012】
また、上記において、前記制御装置は、前記車両が目的地に到着するまでに必要な電力を予測して、前記発電ユニットによる発電を制御するようにしてもよい。
【0013】
これにより、発電ユニットによる過剰な発電を抑制し、放熱部から放熱する発電ユニットからの排熱が、無駄に増加することを抑制することができる。
【0014】
また、上記において、前記制御装置は、前記蓄電装置の残容量が所定容量よりも小さい場合に、前記回転電機の駆動を制御させて、前記発電ユニットによる発電を行うようにしてもよい。
【0015】
これにより、蓄電装置の残容量を確保することができる。
【0016】
また、上記において、前記車両は高真空環境下で走行可能に構成されていてもよい。
【0017】
これにより、高地や宇宙環境下などの高真空環境下で放熱部の排熱量が制限される中でも蓄電装置の残容量を確保して、航続可能距離を延ばすことが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る車両は、放熱部の放熱量が制限される中でも蓄電装置の残容量を確保して、航続可能距離を延ばすことが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る車両の構成の概略を示す構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る車両に設けられた各冷却回路の構成の一例を示した図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係るメインECUがFC発電の制御に用いるFC発電マップの一例を示した図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る車両における車両要求パワーと排熱量との関係の一例を示した図である。
【
図5】
図5は、実施形態2に係るメインECUがFC発電の制御に用いるFC発電マップの一例を示した図である。
【
図6】
図6は、実施形態2に係る車両における車両要求パワーと排熱量との関係の一例を示した図である。
【
図7】
図7は、実施形態3に係る車両に設けられた各冷却回路の構成の一例を示した図である。
【
図8】
図8は、実施形態3に係る車両における車両要求パワーと排熱量との関係の一例を示した図である。
【
図9】
図9は、実施形態3に係るメインECUがFC発電の制御に用いるFC発電マップの一例を示した図である。
【
図10】
図10は、実施形態3に係るメインECUがFC発電の制御に用いる複数のFC発電マップの一例を示した図である。
【
図11】
図11は、メインECUが実施するFC発電の制御の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態1)
以下に、本発明に係る車両の実施形態1について説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0021】
図1は、実施形態1に係る車両1の構成の概略を示す構成図である。実施形態1に係る車両1は、例えば、高地や宇宙環境下などの高真空環境下で走行可能に構成された、シリーズHVまたはPHVなどのハイブリッド車両である。実施形態1に係る車両1は、回転電機であるモータ32と、インバータ34と、モータ用電子制御装置であるモータECU35と、蓄電装置であるバッテリ36と、バッテリ用電子制御装置であるバッテリECU37と、システムメインリレー38と、バッテリ用昇圧コンバータ40と、FC用昇圧コンバータ48と、燃料電池50と、冷却装置60と、メイン用電子制御装置であるメインECU80とを備えている。
【0022】
モータ32は、同期発電電動機として構成されており、永久磁石が埋め込まれた回転子と、三相コイルが巻回された固定子とを備える。このモータ32の回転子は、駆動輪22a,22bにデファレンシャルギヤ24を介して連結された駆動軸26に接続されている。インバータ34は、モータ32に接続されると共に高電圧側電力ライン42に接続されている。モータ32は、モータECU35によってインバータ34のトランジスタがスイッチング制御されることにより回転駆動する。モータ32は、車両1の駆動輪22を駆動する駆動源であり、車両1を駆動する力行運転を実行する力行モードと、制動時に発電機として動作して回生電力を発生すると共に車両の制動力を生じさせる回生モードと、において動作可能である。
【0023】
モータECU35は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポート、及び、通信ポートなどを備える。モータECU35には、例えば、モータ32の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ32aからの回転位置などが、入力ポートを介して入力される。また、モータECU35からは、インバータ34のトランジスタへのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力される。モータECU35は、回転位置検出センサ32aからのモータ32の回転子の回転位置に基づいて、モータ32の回転数を演算する。
【0024】
バッテリ36は、例えば、リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、低電圧側電力ライン44に接続されている。バッテリ36は、バッテリECU37によって管理されている。バッテリ36は、燃料電池50が発電した電力や、車両1の制動時にモータ32で発生した回生電力を蓄電可能であり、モータ32や、空調装置や電装装置などの各種の補機などを含む負荷に電力供給する電源として機能する。
【0025】
バッテリECU37は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポート、及び、通信ポートなどを備える。バッテリECU37には、バッテリ36の端子間に取り付けられた電圧センサ36aからの電圧、バッテリ36の出力端子に取り付けられた電流センサ36bからの電流、及び、バッテリ36に取り付けられた温度センサ36cからの電池温度などが入力ポートを介して入力されている。バッテリECU37は、電流センサ36bからの電流の積算値に基づいて、蓄電割合SOCを演算している。蓄電割合SOCは、バッテリ36の全容量に対するバッテリ36から放電可能な電力の容量の割合である。また、バッテリECU37は、蓄電割合SOCや温度センサ36cからの電池温度に基づいて、バッテリ36から充放電してもよい最大許容電力であるバッテリ入力制限及びバッテリ出力制限Wも演算している。さらに、バッテリECU37は、蓄電割合SOCに基づいて、バッテリ36が要求する充放電要求パワー(放電側が正)も設定している。
【0026】
バッテリ用昇圧コンバータ40は、高電圧側電力ライン42と低電圧側電力ライン44とに接続されている。高電圧側電力ライン42の正極母線と負極母線とには、平滑用のコンデンサ46が接続されている。また、低電圧側電力ライン44には、システムメインリレー38が取り付けられている。FC用昇圧コンバータ48は、燃料電池50の出力端子と高電圧側電力ライン42とに接続されている。
【0027】
燃料電池50は、電解質膜と、この電解質膜を挟持するアノード電極及びカソード電極とからなる単セルを、セル間の隔壁をなすセパレータと共に複数積層してなる固体高分子型燃料電池スタックとして構成されている。この燃料電池50は、水素タンク52から水素バルブ54を介してアノード電極に供給される水素と、酸素タンク56から酸素バルブ58を介してカソード電極に供給される酸素との電気化学反応によって発電する。なお、本実施形態においては、燃料電池50による発電をFC(Fuel Cell)発電ともいう。また、燃料電池50のカソード電極には、空気中の酸素をブロワからカソード電極に供給するように構成してもよい。実施形態1に係る車両1においては、燃料電池50、水素タンク52、水素バルブ54、酸素タンク56、及び、酸素バルブ58などによって、発電ユニットが構成されている。
【0028】
図2は、実施形態1に係る車両1に設けられた各冷却回路の構成の一例を示した図である。燃料電池50は、冷却装置60により冷媒との熱交換によって冷却されるようになっている。冷却装置60は、ラジエータ64と燃料電池50とを接続する循環流路62、及び、循環流路62内の冷媒を循環させる循環ポンプ66を備えた冷却回路によって構成されている。また、実施形態1に係る車両1では、
図2に示すように、モータ32、インバータ34、及び、バッテリ36などのパワートレーンを構成する各コンポーネントの排熱を、それぞれに対応させて設けられた各冷却回路110,120,130から、冷却装置60の循環流路62を流れる冷媒に移動させて、ラジエータ64から放熱させている。
【0029】
モータ32に対応させて設けられた冷却回路110は、モータ32と熱交換器140とを接続する循環流路112、及び、循環流路112内の冷媒を循環させる循環ポンプ114を備えている。インバータ34に対応させて設けられた冷却回路120は、インバータ34と熱交換器140と熱交換器142とを接続する循環流路122、及び、循環流路122内の冷媒を循環させる循環ポンプ124を備えている。バッテリ36に対応させて設けられた冷却回路130は、バッテリ36と熱交換器144とを接続する循環流路132、及び、循環流路132内の冷媒を循環させる循環ポンプ134を備えている。モータ32の排熱は、冷却回路110の循環流路112を流れる冷媒から熱交換器140を介して、冷却回路120の循環流路122を流れる冷媒に移動する。そして、冷却回路120において、循環流路122を流れる冷媒に移動されたモータ32の排熱とともに、インバータ34の排熱は、循環流路122を流れる冷媒から熱交換器142を介して、冷却装置60の循環流路62を流れる冷媒に移動する。また、バッテリ36の排熱は、冷却回路130の循環流路132を流れる冷媒から熱交換機144介して、冷却装置60の循環流路62を流れる冷媒に移動する。このようにして、モータ32とインバータ34とバッテリ36のそれぞれの排熱は、各冷却回路110,120,130から、冷却装置60の循環流路62を流れる冷媒に移動して、ラジエータ64から放熱される。
【0030】
メインECU80は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポート、及び、通信ポートなどを備える。
【0031】
メインECU80には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。メインECU80に入力される信号としては、例えば、ラジエータ64に冷媒が流入するラジエータ入口付近に取り付けられた温度センサ62aからのラジエータ入口の冷媒温度や、ラジエータ64から冷媒が流出するラジエータ出口付近に取り付けられた温度センサ62bからのラジエータ出口の冷媒温度を挙げることができる。また、メインECU80は、車両の駆動制御装置としても機能するため、走行制御に必要な情報も入力されている。これらの情報としては、例えば、イグニッションスイッチ90からのイグニッション信号、シフトレバー91の操作位置を検出するシフトポジションセンサ92からのシフトポジション、アクセルペダル93の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ94からのアクセル開度、ブレーキペダル95の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ96からのブレーキペダルポジション、及び、車速センサ98からの車速などを挙げることができる。
【0032】
メインECU80からは、各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。メインECU80から出力される信号としては、例えば、システムメインリレー38への駆動制御信号やバッテリ用昇圧コンバータ40のトランジスタへのスイッチング制御信号や、FC用昇圧コンバータ48のトランジスタへのスイッチング制御信号を挙げることができる。また、循環ポンプ66を駆動するポンプモータへの駆動信号、水素バルブ54を駆動する水素バルブ駆動用モータへの駆動信号、及び、酸素バルブ58を駆動する酸素バルブ駆動用モータへの駆動信号なども挙げることができる。
【0033】
メインECU80は、モータECU35及びバッテリECU37と通信可能に接続されており、モータECU35及びバッテリECU37と各種情報や信号のやり取りを行なう。メインECU80は、イグニッションスイッチ90がオンされると、システムメインリレー38をオンすると共に燃料電池50を起動して車両を走行可能な状態(レディオン状態)とする。メインECU80は、燃料電池50の起動を伴ってレディオン状態となると、燃料電池50の発電電力やバッテリ36の充放電電力を用いてアクセル開度に応じた要求トルクが駆動軸26に出力されるように、燃料電池50を運転制御すると共に、モータ32を駆動制御する。また、メインECU80は、燃料電池50が起動すると、燃料電池50の温度が適温に保持されるように冷却装置60を制御する。
【0034】
実施形態1に係る車両1において、モータ32及び発電ユニットによる発電量は、ラジエータ64から放熱することが可能な放熱可能量から算出される許容発電電力以下である。そして、実施形態1に係る車両1では、車両1の駆動による車両要求パワーが所定より小さいとき、前記所定より大きい場合と比較してFC発電量を大きくするように、発電ユニットによる発電を制御する。
【0035】
図3は、実施形態1に係るメインECU80がFC発電の制御に用いるFC発電マップの一例を示した図である。
図4は、実施形態1に係る車両1における車両要求パワーと排熱量との関係の一例を示した図である。
【0036】
実施形態1に係る車両1においては、
図3に示すような、車両要求パワーに対してFC発電量がおおよそ反比例するFC発電マップ、具体的には、車両要求パワーが大きくなるほどFC発電量を小さくするFC発電マップを有している。なお、本実施形態において車両要求パワーは、車両1が走行するための走行要求パワーと、補機類などによって消費される車両消費電力との合計である。
【0037】
図4に示すように、車両要求パワーが大きくなるほどパワートレーン排熱は大きくなり、ラジエータ放熱能力限界からパワートレーン排熱を差し引いたラジエータ64の放熱余力は、車両要求パワーが大きくなるほど小さくなる。ここで、ラジエータ64の放熱余力は、例えば、所定の車両要求パワーにおけるパワートレーン排熱に対して上乗せ可能なFC発電による発熱量の範囲を表している。
【0038】
そのため、実施形態1に係る車両1においては、ラジエータ64の放熱余力の範囲内でFC発電によって生じる排熱量がおさまるように、例えば、メインECU80が、
図3に示したFC発電マップを用いて、車両要求パワーが大きくなるほどFC発電量が小さくなるようにFC発電の制御を行う。これにより、実施形態1に係る車両1では、ラジエータ放熱能力限界を超えないようにFC発電によって生じる排熱量が制限される中でも、FC発電を行ってバッテリ36の残容量を確保して、車両1の航続可能距離を延ばすことが可能となる。
【0039】
また、実施形態1に係る車両1においては、車両要求パワーが小さいほどFC発電量が大きくなるようにFC発電を行うことによって、例えば、車両要求パワーが大きいときのFC発電量で車両要求パワーが小さいときにもFC発電を行う場合よりも、確実にバッテリ36の残容量を確保することが可能となる。
【0040】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る車両1について説明する。なお、実施形態2の説明では、実施形態1と同様の構成については参照符号を引用し、適宜説明を省略する。実施形態2に係る車両1においてFC発電量は、ラジエータ64から放熱(排熱)することが可能な放熱可能量(排熱可能量)から算出される許容発電電力以下である。そして、実施形態2に係る車両1では、モータ32の力行時及び回生時において、車両要求パワーが所定値よりも絶対値で大きくなるほどFC発電量を小さくする。
【0041】
図5は、実施形態2に係るメインECU80がFC発電の制御に用いるFC発電マップの一例を示した図である。
図6は、実施形態2に係る車両1における車両要求パワーと排熱量との関係の一例を示した図である。
【0042】
また、実施形態2に係る車両1においては、
図5に示すような、モータ32における力行側及び回生側のそれぞれに対して、車両要求パワーにFC発電量がおおよそ反比例するFC発電マップを有している。なお、
図5に示したFC発電マップでは、FC発電量のピークが、車両要求パワーが0のときよりも、例えば、車両要求パワーの正側(走行要求パワーが0で車両消費電力分の車両要求パワー)に位置しているが、車両要求パワーが0のときにFC発電量がピークなるようにしてもよい。
【0043】
図5に示した力行側のFC発電マップでは、車両要求パワーが正側に大きくなるほどFC発電量が小さくなるように設定されている。また、
図5に示した回生側のFC発電マップでは、車両要求パワーが負側に大きくなるほど、言い換えれば、モータ32の回生による発電量が大きくなるほどFC発電量が小さくなるように設定されている。なお、力行側のFC発電マップと回生側のFC発電マップとは、各コンポーネント(モータ32やバッテリ36など)やシステム設計などによって変化するため、対称性を有することに限定されない。
【0044】
ここで、
図6に示すように、車両要求パワーが0のときを基準にして、車両要求パワーが正側に大きくなるほどパワートレーン排熱が大きくなり、車両要求パワーが負側に大きくなるほどパワートレーン排熱が大きくなる。そのため、ラジエータ放熱能力限界からパワートレーン排熱を差し引いたラジエータ64の放熱余力は、車両要求パワーが0のときを基準して、車両要求パワーが正側に大きくなるほど小さくなり、車両要求パワーが負側に大きくなるほど小さくなる。
【0045】
実施形態2に係る車両1では、ラジエータ64の放熱余力の範囲内でFC発電によって生じる排熱量がおさまるように、例えば、メインECU80が、
図5に示したFC発電マップを用いてFC発電の制御を行う。すなわち、メインECU80は、モータ32の力行時に、力行側のFC発電マップにおいて、車両要求パワーがFC発電量のピークとなる所定値よりも正側に大きくなるほど、FC発電量が小さくなるようにFC発電の制御を行う。また、メインECU80は、モータ32の回生時に、回生側のFC発電マップにおいて、車両要求パワーが負側に大きくなるほど、FC発電量が小さくなるようにFC発電の制御を行う。これにより、実施形態2に係る車両1では、モータ32の力行時及び回生時において、ラジエータ放熱能力限界を超えないようにFC発電によって生じる排熱量が制限される中でも、FC発電を行ってバッテリ36の残容量を確保して、車両1の航続可能距離を延ばすことが可能となる。
【0046】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係る車両1について説明する。なお、実施形態3の説明では、実施形態1と同様の構成については参照符号を引用し、適宜説明を省略する。
【0047】
実施形態3に係る車両1において、モータ32及び発電ユニットによる発電量は、ラジエータ64から放熱することが可能な放熱可能量から算出される許容発電電力以下である。そして、実施形態3に係る車両1では、車両要求パワーが所定値よりも絶対値で大きくなるほどFC発電量を小さくする。
【0048】
図7は、実施形態3に係る車両1に設けられた各冷却回路の構成の一例を示した図である。実施形態3に係る車両1においては、ラジエータ64をパワートレーン排熱だけではなく、補機などのパワートレーン以外の排熱(以下、その他の排熱という)も放熱処理するように構成されている。実施形態3に係る車両1では、例えば、
図7に示すように、補機100の排熱を、補機100に対応させて設けられた冷却回路150から冷却装置60の循環流路62を流れる冷媒に移動させて、ラジエータ64から放熱させている。補機100に対応させて設けられた冷却回路150は、補機100と熱交換器146とを接続する循環流路152、及び、循環流路152内の冷媒を循環させる循環ポンプ154を備えている。補機100の排熱は、冷却回路150の循環流路152を流れる冷媒から熱交換器146を介して、冷却回路120の循環流路122を流れる冷媒に移動する。このようにして、実施形態3に係る車両1においては、モータ32とインバータ34とバッテリ36と補機100のそれぞれの排熱が、各冷却回路110,120,130,150から、冷却装置60の循環流路62を流れる冷媒に移動して、ラジエータ64から放熱される。なお、その他の排熱には、例えば、高地や宇宙環境下などの高真空環境下での搭乗者の生命維持装置や運転支援装置などからの排熱も含まれ、それらに対応させて設けられた冷却回路から冷却装置60の循環流路62を流れる冷媒に移動させて、ラジエータ64から放熱させる。
【0049】
図8は、実施形態3に係る車両1における車両要求パワーと排熱量との関係の一例を示した図である。
図9は、実施形態3に係るメインECU80がFC発電の制御に用いるFC発電マップの一例を示した図である。
【0050】
実施形態3に係る車両1では、
図8に示すように、ラジエータ放熱能力限界からパワートレーン排熱とパワートレーン以外の排熱との合計(パワートレーン排熱+パワートレーン以外の排熱)を差し引いたラジエータ64の放熱余力の範囲内で、FC発電によって生じる排熱量がおさまるようにFC発電の制御を行う。
【0051】
なお、実施形態3に係る車両1では、
図8に示すように、ラジエータ放熱能力限界からパワートレーン排熱とその他の排熱との合計(パワートレーン排熱+その他の排熱)を差し引いたラジエータ64の放熱余力が、同じ大きさの車両要求パワーに対して、ラジエータ放熱能力限界からパワートレーン排熱を差し引いたラジエータ64の放熱余力よりも小さくなっている。そのため、実施形態3に係る車両1では、パワートレーン排熱とその他の排熱との合計でのラジエータ64の放熱余力を考慮して、例えば、
図9に示すように、パワートレーン排熱のみでのラジエータ64の放熱余力を考慮した実施形態2で
図5に示したFC発電マップに対して、FC発電量が小さくなるようにFC発電量の0の位置を設定したFC発電マップを用いる。
【0052】
実施形態3に係る車両1では、ラジエータ64の放熱余力の範囲内でFC発電によって生じる排熱量がおさまるように、例えば、メインECU80が、
図9に示したFC発電マップを用いてFC発電の制御を行う。すなわち、メインECU80は、モータ32の力行時に、力行側のFC発電マップにおいて、車両要求パワーがFC発電量のピークとなる所定値よりも正側に大きくなるほど、FC発電量が小さくなるようにFC発電の制御を行う。また、メインECU80は、モータ32の回生時に、回生側のFC発電マップにおいて、車両要求パワーが負側に大きくなるほど、FC発電量が小さくなるようにFC発電の制御を行う。これにより、実施形態3に係る車両1では、モータ32の力行時及び回生時において、ラジエータ64が放熱処理する排熱が、パワートレーン排熱とその他の排熱との合計である場合に、ラジエータ放熱能力限界を超えないようにFC発電によって生じる排熱量が制限される中でも、FC発電を行ってバッテリ36の残容量を確保して、車両1の航続可能距離を延ばすことが可能となる。
【0053】
図10は、実施形態3に係るメインECU80がFC発電の制御に用いる複数のFC発電マップの一例を示した図である。なお、
図10中、(1)~(4)はラジエータ64の放熱余力の大きさに応じた複数のFC発電マップであり、(5)はラジエータ放熱能力限界となるFC発電マップである。また、FC発電マップ(1)、FC発電マップ(2)、FC発電マップ(3)、FC発電マップ(4)、の順で、ラジエータ64の放熱余力が小さいためFC発電量が小さくなっている。FC発電マップ(1)~(4)は、例えば、実験などによって予め準備される。
【0054】
実施形態3に係る車両1では、例えば、ラジエータ64の向きと日光照射の相対向きなどの外部環境の変化や、補機消費電力の変化や、パワートレーンの排熱の処理状況などによって、ラジエータ64の放熱性能は刻々と変化する。そのため、実施形態3に係る車両1においては、ラジエータ64の放熱性能の変化に応じて、FC発電の制御に用いるFC発電マップをその都度補正する。
【0055】
例えば、
図10に示すように、ラジエータ64の放熱余力の大きさに応じた複数のFC発電マップ(1)~(4)を用意しておく。そして、メインECU80は、ラジエータ64の放熱余力が大きいほどFC発電量を増加させたFC発電マップを用い、ラジエータ64の放熱余力が小さいほどFC発電量を減少させたFC発電マップを用いる。例えば、メインECU80は、複数のFC発電マップ(1)~(4)のうち、ラジエータ64の放熱余力が最も大きい場合にFC発電マップ(1)を選択し、FC発電マップ(4)はラジエータ64の放熱余力が最も小さい場合にFC発電マップ(4)を選択する。なお、FC発電マップの補正は、複数のFC発電マップを用いて行うことに限定されず、例えば、補正用のリファレンスデータなどに基づいて、メインECU80がFC発電マップを連続可変させて行ってもよい。
【0056】
また、実施形態3に係る車両1では、航法誘導(車両1の走行経路の先読み)によって、FC発電マップを補正するようにしてもよい。例えば、車両1の到着地点(目的地)が予め分かっている場合に、バッテリ36の残容量で到着地点(目的地)まで車両1が走行可能である場合には、過剰なFC発電を抑える。これにより、ラジエータ64から放熱する排熱が、無駄に増加することを抑制することができる。そして、例えば、車両1に太陽光発電装置を設けておき、車両1の走行中と、車両1が到着地点(目的地)に到着した後との少なくとも一方で、太陽光発電によってバッテリ36を充電するようにしてもよい。また、例えば、車両1にバッテリ36を外部充電可能な充電装置を設けておき、車両1が到着地点(目的地)に到着した後、到着地点(目的地)に設置された外部充電設備を用いてバッテリ36を充電するようにしてもよい。また、実施形態3に係る車両1においては、バッテリ36の残容量が所定容量よりも小さい場合に、モータ32の駆動を停止させて、FC発電を行い、バッテリ36の残容量を確保するようにしてもよい。
【0057】
図11は、メインECU80が実施するFC発電の制御の一例を示したフローチャートである。
【0058】
まず、メインECU80は、ステップS1において、現在の車両要求パワーを取得する。次に、メインECU80は、ステップS2において、現在の補機消費電力を取得する。次に、メインECU80は、ステップS3において、現在の各コンポーネント(モータ32やバッテリ36など)の冷媒温度を、各コンポーネントに対応する冷却回路に設けられた温度センサなどを用いて取得する。次に、メインECU80は、ステップS4において、現在のラジエータ64で放熱処理を行う車両排熱量(パワートレーン排熱+その他の排熱)を算出する。
【0059】
次に、メインECU80は、ステップS5において、ラジエータ放熱能力限界から車両排熱量(パワートレーン排熱+その他の排熱)を差し引いた、現在の車両要求パワーにおけるラジエータ64の放熱余力を算出する。次に、メインECU80は、ステップS6において、FC発電によって生じる排熱量がラジエータ64の放熱余力の範囲におさまるように、FC発電マップを用いて車両要求パワーに対するFC発電量を決定する。次に、メインECU80は、ステップS7において、FC発電量の補正用のリファレンスデータとして、ラジエータ出口での冷媒温度の予測値を算出する。なお、冷媒温度の予測値は、所定の範囲に属する温度を指す。次に、メインECU80は、ステップS8において、ラジエータ出口での冷媒温度の実測値(実冷媒温度)を温度センサ62bから取得する。
【0060】
次に、メインECU80は、ステップS9において、ラジエータ出口での冷媒温度が、実冷媒温度<予測値の関係を満たすか否かを判断する。メインECU80は、ラジエータ出口での冷媒温度が、実冷媒温度<予測値の関係を満たすと判断した場合(ステップS9にてYes)、ステップS10において、FC発電量を増加させるようにFC発電を制御する。その後、メインECU80は、一連の制御をリターンする。
【0061】
一方、メインECU80は、ラジエータ出口での冷媒温度が、実冷媒温度<予測値の関係を満たさないと判断した場合(ステップS9にてNo)、ステップS11において、ラジエータ出口の冷媒温度が、実冷媒温度>予測値の関係を満たすか否かを判断する。メインECU80は、ラジエータ出口の冷媒温度が、実冷媒温度>予測値の関係を満たすと判断した場合(ステップS11にてYes)、ステップS12において、FC発電量を減少させるようにFC発電を制御する。その後、メインECU80は、一連の制御を終了する。一方、メインECU80は、ラジエータ出口の冷媒温度が、実冷媒温度>予測値の関係を満たさないと判断した場合(ステップS11にてNo)、ステップS13において、FC発電量を維持するようにFC発電を制御する。その後、メインECU80は、一連の制御をリターンする。
【0062】
実施形態3に係る車両1においては、ラジエータ出口における実冷媒温度が冷媒温度の予測値よりも低く、ラジエータ64の放熱能力に余力がある場合に、FC発電量を増加させて、車両1の航続可能距離を延ばすためにバッテリ36の残容量を確保することができる。また、実施形態3に係る車両1においては、ラジエータ出口における実冷媒温度が冷媒温度の予測値よりも高く、ラジエータ64の放熱能力に余力がない場合に、FC発電量を減少させてFC発電によって生じる排熱量を小さくし、ラジエータ64の放熱能力を確保することができる。よって、実施形態3に係る車両1は、ラジエータ放熱能力限界を超えないようにFC発電によって生じる排熱量が制限される中でも、FC発電を行ってバッテリ36の残容量を確保して、車両1の航続可能距離を延ばすことが可能となる。
【0063】
また、実施形態1、2及び3に係る車両1において、メインECU80が行うFC発電の制御は、高真空環境下だけではなく、例えば、トンネル走行や市街地走行をする際、ラジエータ64に放熱制約がある場合においても好適である。
【0064】
また、実施形態1、2及び3においては、燃料電池50などによってFC発電を行う発電ユニットを備えた車両1を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、発電ユニットとして内燃機関などで構成された発電機を備える車両1であってもよい。一方で、FC発電を行う発電ユニットを備えた場合には、重量エネルギー密度の高いFC発電を好適に使用するロジックにより、内燃機関などで構成された発電機を用いる場合よりも、バッテリ容量を最小化できるため、車両1の軽量化を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0065】
1 車両
22a,22b 駆動輪
24 デファレンシャルギヤ
26 駆動軸
32 モータ
32a 回転位置検出センサ
34 インバータ
35 モータECU
36 バッテリ
36a 電圧センサ
36b 電流センサ
36c 温度センサ
37 バッテリECU
38 システムメインリレー
40 バッテリ用昇圧コンバータ
42 高電圧側電力ライン
44 低電圧側電力ライン
48 FC用昇圧コンバータ
50 燃料電池
52 水素タンク
54 水素バルブ
56 酸素タンク
58 酸素バルブ
60 冷却装置
62,112,122,132,152 循環流路
62a,62b 温度センサ
64 ラジエータ
66,114,124,134,154 循環ポンプ
80 メインECU
90 イグニッションスイッチ
91 シフトレバー
92 シフトポジションセンサ
93 アクセルペダル
94 アクセルペダルポジションセンサ
95 ブレーキペダル
96 ブレーキペダルポジションセンサ
98 車速センサ
100 補機
110,120,130,150 冷却回路
140,142,144,146 熱交換器