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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 26/04 20060101AFI20231011BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20231011BHJP
   G05G 1/30 20080401ALI20231011BHJP
   G05G 1/44 20080401ALI20231011BHJP
   G05G 5/03 20080401ALI20231011BHJP
【FI】
B60K26/04
F02D9/02 351B
G05G1/30 E
G05G1/44
G05G5/03 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021073115
(22)【出願日】2021-04-23
(65)【公開番号】P2022167364
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】水上 樹
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 国憲
(72)【発明者】
【氏名】山中 聡
(72)【発明者】
【氏名】星屋 一美
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-209791(JP,A)
【文献】特開2016-217292(JP,A)
【文献】特開2006-132463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 26/04
F02D 9/02
G05G 1/30
G05G 1/44
G05G 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者による踏み込み操作の操作量に対応するアクセル開度が大きいほど、前記踏み込み操作時の踏力に対抗する反力が増大するアクセルペダルを備え、前記アクセル開度に応じた目標駆動力を規定する駆動力特性を設定するとともに、運転席に着座した前記運転者の体勢から、前記踏み込み操作時に前記運転者の足首および脚部に掛かる足首負荷を推定し、推定した前記足首負荷が、予め定めた補正判定閾値よりも小さい場合に、標準的な前記駆動力特性である第1駆動力特性を設定し、推定した前記足首負荷が、前記補正判定閾値以上である場合に、前記足首負荷を軽減し得る前記駆動力特性であって、少なくとも、全閉から全開までの前記アクセル開度の全開度領域の中で常用的に使用される一部の領域として定めた常用アクセル開度領域で、前記第1駆動力特性よりも前記目標駆動力が小さい第2駆動力特性を設定し、設定した前記第1駆動力特性または前記第2駆動力特性および前記アクセル開度に基づいて前記目標駆動力を算出し、算出した前記目標駆動力に基づいて前記車両の駆動力を制御する車両の制御装置において、
前記足首負荷を推定し、前記第1駆動力特性または前記第2駆動力特性を設定するとともに、前記目標駆動力を算出し、前記車両の駆動力を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、前記第1駆動力特性を設定した場合に前記アクセル開度に応じて算出される前記目標駆動力と比較して、前記第2駆動力特性を設定した場合に前記アクセル開度に応じて算出される前記目標駆動力を小さくするとともに、前記第1駆動力特性を設定した場合の前記踏力に対応して発生する前記車両の加速度の前記踏力に対する比率と、前記第2駆動力特性を設定した場合の前記踏力に対応して発生する前記加速度の前記踏力に対する比率との差異を低減する加速フィール保持手段を有している
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制御装置において、
前記加速フィール保持手段は、前記常用アクセル開度領域で、前記第1駆動力特性における前記アクセル開度の増加量に対する前記目標駆動力の増加量の比率よりも、前記第2駆動力特性における前記アクセル開度の増加量に対する前記目標駆動力の増加量の比率を大きくすることにより、前記差異を低減する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の制御装置において、
前記加速フィール保持手段は、推定された前記足首負荷の大きさに基づいて、前記第2駆動力特性における前記アクセル開度の増加量に対する前記目標駆動力の増加量の比率を設定する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両の制御装置において、
前記車両は、前記アクセルペダルの前記反力を変更して制御可能な反力アクチュエータを有し、
前記加速フィール保持手段は、前記反力アクチュエータを制御して前記反力を低下させることにより、前記差異を低減する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両の制御装置において、
前記加速フィール保持手段は、推定された前記足首負荷の大きさに基づいて、前記反力アクチュエータによる前記反力の低下量を設定する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、運転者によるアクセルペダルの踏み込み操作に対応する目標駆動力を設定し、設定された目標駆動力に基づいて車両の駆動力を制御する車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両構造を複雑化することなく、アクセルペダル操作時の運転者の負担を軽減することを目的とした車両のパワートレイン制御装置が記載されている。この特許文献1に記載された車両のパワートレイン制御装置は、アクセル開度(アクセルペダルの操作量)に応じた目標駆動力を示す駆動力特性に基づいて走行時の駆動力を制御する。更に、特許文献1に記載された車両のパワートレイン制御装置は、運転者の運転姿勢を検出するセンサを備えており、そのセンサの検出結果に基づいて、運転者のアクセルペダル操作時の足首負担の大きさを推定する。そして、運転者の足首負担が比較的小さいと推定された場合は、駆動力特性を“標準特性”に設定する。運転者の足首負担が比較的大きいと推定された場合には、駆動力特性を、“標準特性”よりも目標駆動力が小さくなる“補正特性”に変更する。
【0003】
なお、特許文献2には、アクセルペダルの初期角度や遊び角度を容易に調整することを目的とした自動車のペダル装置が記載されている。この特許文献2に記載された自動車のペダル装置は、アクセルペダルが初期位置にあるときのフロアに対する初期角度を調整する電動アクチュエータを備えている。その電動アクチュエータによってアクセルペダルの初期角度や遊び角度の調整を行うことにより、アクセルペダルの踏み込み角度と反力との関係を、運転者の好みに応じて任意に設定することが可能なように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-209791号公報
【文献】特開2005-301441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1に記載された車両のパワートレイン制御装置では、アクセルペダル操作時の運転者の足首負担の大きさが推定される。一般に、運転者が足のかかとを床に付けてアクセルペダルを操作する場合、低アクセル開度(アクセルペダルの踏み込み量が少ない)領域では、運転者の足裏と足のすねとによってなされる角度(足首角度)が小さくなる。この足首角度が小さい状態は、足首角度が大きい状態と比較して、足首および脚部の筋肉に対する負荷が大きくなる。すなわち、足首負担が大きくなる。これに対して、特許文献1に記載された車両のパワートレイン制御装置では、運転者の足首負担が比較的大きいと推定された場合に、アクセル開度に応じた目標駆動力を規定する車両の駆動力特性が、“標準特性”から“補正特性”に変更される。“補正特性”では、アクセル開度領域に応じた目標駆動力が“標準特性”よりも小さくなる。“補正特性”で目標駆動力が小さくなると、運転者は、駆動力を得るためにアクセルペダルを踏み込み操作する際に、“標準特性”で操作する場合よりも、アクセルペダルをより多く踏み込むことになる。その結果、足首負担が大きい低アクセル開度領域でアクセルペダルを操作する機会や頻度が減少する。したがって、上記のような“標準特性”から“補正特性”へ駆動力特性を変更することにより、アクセルペダル操作時の運転者の負担が軽減される。
【0006】
ところで、特許文献1に記載された車両のパワートレイン制御装置では、図1に示すように、アクセル開度が第1開度閾値(APO01)から第2開度閾値(APO02)までの常用アクセル開度領域における“補正特性”の特性変化速度(駆動力特性線図の傾きB)が、“標準特性”における特性変化速度(駆動力特性線図の傾きA)と等しくなるように設定されている。それにより、“標準特性”と“補正特性”との差異を最小限に抑えている。また、“補正特性”に基づいて目標駆動力を設定する場合であっても、常用アクセル開度領域で使えるアクセルペダルストロークをできるだけ長くすることができる、とされている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された車両のパワートレイン制御装置では、車両の駆動力特性を“標準特性”から“補正特性”へ変更した場合に、運転者に駆動力の不足感を与えてしまい、その結果、車両のドライバビリティを低下させてしまう可能性がある。上記のように、特許文献1に記載された車両のパワートレイン制御装置は、“標準特性”から“補正特性”へ駆動力特性を変更する場合、特性変化速度を変えずに、目標駆動力が小さくなる“補正特性”に変更する。その結果、常用アクセル開度領域が、図2に右向きの矢印で示すように、アクセル開度が高くなる方向(図2の右方向)へシフトする。したがって、運転者は、“補正特性”の下では、“標準特性”と比較して、図2に上向きの矢印で示すように、アクセルペダルのペダル荷重(踏力)がより大きい領域でアクセルペダルの操作を行うことになる。すなわち、駆動力特性が“標準特性”から“補正特性”へ変更されると、運転者は、所定の駆動力を得るために、より大きいアクセル開度で、かつ、より大きい踏力で、アクセルペダル操作を行うことになる。その結果、アクセル開度に対応する特性変化速度は変わらないまま、アクセルペダル操作に要する操作量および踏力が増大するので、運転者は、あたかも、車両の駆動力が不足しているように感じてしまう。
【0008】
この発明は上記の技術的課題に着目して考え出されたものであり、車両のドライバビリティを低下させることなく、アクセルペダル操作時の運転者の負担を軽減することが可能な車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明は、車両の運転者による踏み込み操作の操作量に対応するアクセル開度が大きいほど、前記踏み込み操作時の踏力に対抗する反力(ペダル荷重)が増大するアクセルペダルを備え、前記アクセル開度に応じた目標駆動力を規定する駆動力特性を設定するとともに、運転席に着座した前記運転者の体勢(例えば、運転姿勢、体格、着座位置、シートポジション、足の大きさ、等)から、前記踏み込み操作時に前記運転者の足首および脚部に掛かる足首負荷を推定し、推定した前記足首負荷が、予め定めた補正判定閾値よりも小さい場合(標準的な足首負荷である場合)に、標準的な(基準となる)前記駆動力特性である第1駆動力特性を設定し、推定した前記足首負荷が、前記補正判定閾値以上である場合に、前記足首負荷を軽減し得る前記駆動力特性であって、少なくとも、全閉から全開までの前記アクセル開度の全開度領域の中で常用的に使用される一部の領域として定めた常用アクセル開度領域で、前記第1駆動力特性よりも前記目標駆動力が小さい第2駆動力特性を設定し、設定した前記第1駆動力特性または前記第2駆動力特性および前記アクセル開度に基づいて前記目標駆動力を算出し、算出した前記目標駆動力に基づいて前記車両の駆動力を制御する車両の制御装置において、前記足首負荷を推定し、前記第1駆動力特性または前記第2駆動力特性を設定するとともに、前記目標駆動力を算出し、前記車両の駆動力を制御するコントローラを備え、前記コントローラは、前記第1駆動力特性を設定した場合に前記アクセル開度に応じて算出される前記目標駆動力と比較して、前記第2駆動力特性を設定した場合に前記アクセル開度に応じて算出される前記目標駆動力を小さくするとともに、前記第1駆動力特性を設定した場合の前記踏力に対応して発生する前記車両の加速度(前後加速度)の前記踏力に対する比率と、前記第2駆動力特性を設定した場合の前記踏力に対応して発生する前記加速度(前後加速度)の前記踏力に対する比率との差異を低減する加速フィール保持手段を有していることを特徴とするものである。
【0010】
また、この発明における前記加速フィール保持手段は、前記常用アクセル開度領域で、前記第1駆動力特性における前記アクセル開度の増加量に対する前記目標駆動力の増加量の比率(アクセル開度-目標駆動力のグラフ上における傾き)よりも、前記第2駆動力特性における前記アクセル開度の増加量に対する前記目標駆動力の増加量の比率を大きくすることにより、前記差異を低減するように構成されていてもよい。
【0011】
また、この発明における前記加速フィール保持手段は、推定された前記足首負荷の大きさに基づいて、前記第2駆動力特性における前記アクセル開度の増加量に対する前記目標駆動力の増加量の比率を設定するように構成されていてもよい。
【0012】
また、この発明における前記車両は、前記車両は、前記アクセルペダルの前記反力を変更して制御可能な反力アクチュエータを有していてもよく、前記加速フィール保持手段は、前記反力アクチュエータを制御して前記反力を低下させることにより、前記差異を低減するように構成されていてもよい。
【0013】
そして、この発明における前記加速フィール保持手段は、推定された前記足首負荷の大きさに基づいて、前記反力アクチュエータによる前記反力の低下量を設定するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
この発明の車両の制御装置では、アクセルペダル操作時の運転者の負担を軽減するため、特に、運転者の足首および脚部の筋肉に対する負荷を軽減するために、アクセルペダル操作時の運転者の足首負荷が推定され、その推定された足首負荷の大きさに応じて、車両の駆動力特性が設定される。推定された足首負荷の大きさが補正判定閾値よりも小さい、標準的な足首負荷である場合は、標準的な目標駆動力を規定する第1駆動力特性が設定される。推定された足首負荷の大きさが補正判定閾値以上となる場合は、第1駆動力特性よりも小さい目標駆動力を規定する第2駆動力特性が設定される。すなわち、補正判定閾値以上の大きな足首負荷が掛かると推定される場合は、規定する目標駆動力が小さくなるように駆動力特性が補正される。目標駆動力が小さくなる第2駆動力特性が設定されることにより、運転者は、駆動力を得るためにアクセルペダルを踏み込み操作する際に、第1駆動力特性で操作する場合よりも、アクセルペダルをより多く踏み込むことになる。その結果、足首角度が小さいことにより、足首負荷が大きくなってしまう低アクセル開度(アクセルペダルの踏み込み量が少ない)領域で、アクセルペダルを操作する機会や頻度が減少する。したがって、アクセルペダル操作時の運転者の負担が軽減される。
【0015】
上記のように、運転者の足首負荷が大きいと推定される場合に第2駆動力特性を設定して、通常よりも目標駆動力を小さくすることにより、運転者の足首負荷を軽減できる。但し、第2駆動力特性で目標駆動力だけが小さくなると、運転者に駆動力の不足感、あるいは、加速フィールに対する違和感などを与えてしまい、車両のドライバビリティを低下させてしまう可能性があった。そこで、この発明の車両の制御装置では、第2駆動力特性を設定する場合、すなわち、規定する目標駆動力が小さくなるように駆動力特性を補正する場合には、第1駆動力特性で運転者によるアクセルペダル操作時の踏力に対応して発生する車両の加速度(具体的には、前後加速度)の踏力に対する比率と、第2駆動力特性で運転者によるアクセルペダル操作時の踏力に対応して発生する車両の加速度(具体的には、前後加速度)の踏力に対する比率との差異が低減される。すなわち、上記のような車両の加速度の踏力に対する比率が、第1駆動力特性を設定した場合と第2駆動力特性を設定した場合とで大きく相違しないように制御される。例えば、第1駆動力特性におけるアクセル開度の増加量に対する目標駆動力の増加量の比率(具体的には、アクセル開度-目標駆動力のグラフ上における傾き)よりも、第2駆動力特性におけるアクセル開度の増加量に対する目標駆動力の増加量の比率を大きくすることにより、上記のような差異が低減される。あるいは、反力アクチュエータを設け、反力アクチュエータを制御して運転者の踏力に対する反力を低下させることにより、上記のような差異が低減される。その結果、運転者の足首負荷を軽減するために第2駆動力特性を設定する場合には、通常よりも目標駆動力を小さくしつつ、この発明の車両の制御装置による制御を適用しなかった場合と比較して、運転者の踏力に対応して発生する車両の駆動力(または、加速度)の比率が大きくなる。すなわち、第1駆動力特性を設定した場合の運転者の踏力に対する車両の加速度の比率と、第2駆動力特性を設定した場合の運転者の踏力に対する車両の加速度の比率との差異が小さくなる。そのため、上記のような第2駆動力特性を設定する場合であっても、駆動力の不足感や、加速フィールに対する違和感などを運転者に与えてしまうことを防ぐことができる。したがって、この発明の車両の制御装置によれば、車両のドライバビリティを低下させることなく、アクセルペダル操作時の運転者の負担を適切に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来技術の制御内容および課題を説明するための図であって、標準特性(この発明における第1駆動力特性に相当)を設定した場合の車両の駆動力特性(アクセル開度と目標駆動力との関係)、および、補正特性(この発明における第2駆動力特性に相当)を設定した場合の車両の駆動力特性、ならびに、常用アクセル開度領域等を示す図である。
図2】従来技術の制御内容および課題を説明するための図であって、標準特性から補正特性に変更された場合の、常用アクセル開度領域の変化、および、運転者が操作するアクセルペダルの反力(ペダル荷重)の変化を示す図である。
図3】この発明の車両の制御装置で制御の対象にする車両の構成および制御系統の一例を示す図である。
図4】この発明の車両の制御装置で制御の対象とする車両におけるアクセルペダルおよび反力アクチュエータの構成を説明するための図であって、オルガン式のアクセルペダル本体およびセンサ部と、反力アクチュエータの反力発生部とが別個に形成された別体型の反力アクチュエータを示す図である。
図5】この発明の車両の制御装置で制御の対象とする車両におけるアクセルペダルおよび反力アクチュエータの構成を説明するための図であって、オルガン式のアクセルペダルのセンサ部と、反力アクチュエータの反力発生部とが一体に形成され、オルガン式のアクセルペダル本体と、反力アクチュエータの反力発生部とが別個に形成された別体型の反力アクチュエータを示す図である。
図6】この発明の車両の制御装置で制御の対象とする車両におけるアクセルペダルおよび反力アクチュエータの構成を説明するための図であって、オルガン式のアクセルペダル本体およびセンサ部と、反力アクチュエータの反力発生部とが一体に形成され、アクセルペダルのロッドと反力アクチュエータのロッドとを兼用した一体型の反力アクチュエータを示す図である。
図7】この発明の車両の制御装置で制御の対象とする車両におけるアクセルペダルおよび反力アクチュエータの構成を説明するための図であって、オルガン式のアクセルペダル本体およびセンサ部と、反力アクチュエータの反力発生部とが一体に形成され、アクセルペダルのロッドおよび反力アクチュエータのロッドを個別に設けた一体型の反力アクチュエータを示す図である。
図8】この発明の車両の制御装置で制御の対象とする車両におけるアクセルペダルおよび反力アクチュエータの構成を説明するための図であって、吊り下げ式(ペンダント式)のアクセルペダルのセンサ部と、反力アクチュエータの反力発生部とが一体に形成された一体型の反力アクチュエータを示す図である。
図9】この発明の車両の制御装置によって実行される制御の一例(第2駆動力特性でアクセル開度の増加量に対する目標駆動力の増加量の比率を大きくすることにより、第1駆動力特性を設定した場合の車両加速度の踏力に対する比率と、第2駆動力特性を設定した場合の車両加速度の踏力に対する比率との差異を低減する例)を説明するためのフローチャートである。
図10図9のフローチャートで示す制御を実行する場合に、車両の駆動力特性(アクセル開度と目標駆動力との関係)に対する補正(駆動力特性補正制御)を説明するための図である。
図11図9のフローチャートで示す制御を実行した場合の、常用アクセル開度領域の変化、アクセルペダルの荷重変化量、ならびに、常用アクセル開度領域における車両加速度、および、車両加速度の変化勾配(ジャーク)等を説明するためのタイムチャートである。
図12】運転者によるアクセルペダルの踏み込み操作の操作速度に対応する車両加速度、および、車両加速度の変化勾配(ジャーク)、ならびに、車両加速度の変化勾配とアクセルペダルの反力(ペダル荷重)との関係を説明するためのタイムチャートである。
図13】体格(足の大きさ)の違いによる、運転者が体感するアクセルペダルの反力(ペダル荷重)の変化を説明するための図である。
図14】反力アクチュエータを用いてアクセルペダルの反力(ペダル荷重)を変化させるイメージを示す図である。
図15】この発明の車両の制御装置によって実行される制御の他の例(“反力アクチュエータ”を用いてアクセルペダルの反力を低下させることにより、“第1駆動力特性”を設定した場合の車両加速度の踏力に対する比率と、“第2駆動力特性”を設定した場合の車両加速度の踏力に対する比率との差異を低減する例)を説明するためのフローチャートである。
図16図15のフローチャートで示す制御を実行した場合の、車両の駆動力特性(アクセル開度と目標駆動力との関係)に対する補正を説明するための図である。
図17図15のフローチャートで示す制御を実行した場合の、常用アクセル開度領域における車両加速度、および、車両加速度の変化勾配(ジャーク)を説明するためのタイムチャートである。
図18】比較例として、この発明の駆動力特性補正制御を実行しない場合(従来技術における制御内容の制御を実行した場合)の、常用アクセル開度領域における車両加速度、および、車両加速度の変化勾配(ジャーク)等を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、この発明を具体化した場合の一例に過ぎず、この発明を限定するものではない。
【0018】
図3に、この発明の実施形態で制御対象とする車両Veの駆動系統および制御系統の一例を示してある。図3に示す車両Veは、代表的に、駆動力源(PWR)1、駆動輪2、アクセルペダル3、シート(SEAT)4、検出部5、および、コントローラ(ECU)6を備えている。
【0019】
駆動力源1は、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関であり、出力の調整、ならびに、始動および停止などの作動状態が電気的に制御されるように構成されている。駆動力源1がガソリンエンジンであれば、スロットルバルブの開度、燃料の供給量または噴射量、点火の実行および停止、ならびに、点火時期などが電気的に制御される。また、駆動力源1がディーゼルエンジンであれば、燃料の噴射量、燃料の噴射時期、または、例えばEGRシステムにおけるスロットルバルブの開度などが電気的に制御される。あるいは、この発明の実施形態における駆動力源1は、例えば、永久磁石式の同期モータ、もしくは、誘導モータなどの電気モータであってもよい。その場合の電気モータは、例えば、電力が供給されることにより駆動されてモータトルクを出力する原動機としての機能と、外部からのトルクを受けて駆動されることにより電気を発生する発電機としての機能とを兼ね備えた、いわゆるモータ・ジェネレータであってもよい。モータ・ジェネレータであれば、回転数やトルク、あるいは原動機としての機能と発電機としての機能との切り替えなどが電気的に制御される。
【0020】
駆動輪2は、駆動力源1が出力する駆動トルクが伝達されることにより、車両Veの駆動力を発生する。図3に示す実施形態では、駆動輪2は、トランスミッション7、デファレンシャルギヤ8、および、ドライブシャフト9を介して、駆動力源1に連結されている。なお、この発明の実施形態における車両Veは、図3に示す実施形態のように、駆動トルクを前輪に伝達し、前輪で駆動力を発生させる前輪駆動車であってもよい。あるいは、車両Veは、駆動トルクを、例えばプロペラシャフト(図示せず)等を介して後輪に伝達し、後輪で駆動力を発生させる後輪駆動車であってもよい。あるいは、車両Veは、トランスファ機構(図示せず)を設けて、駆動トルクを前輪および後輪の両方に伝達し、前輪および後輪の両方で駆動力を発生させる四輪駆動車であってもよい。
【0021】
この発明の実施形態で制御対象とする車両Veは、従来一般的な構成であって、運転者が駆動力を調整して車両Veの加速操作を行うためのアクセルペダル3を備えている。アクセルペダル3が踏み込まれることにより、そのアクセルペダル3の操作量(踏み込み量、もしくは、アクセル開度またはアクセルポジション)に対応してスロットルポジション(例えば、ガソリンエンジンのスロットルバルブの開度、あるいは、ディーゼルエンジンの燃料噴射量)が増大する。その結果、駆動トルクが増大し、車両Veの駆動力が増大する。反対に、アクセルペダル3の踏み込みが戻される(操作量が低減される、もしくは、アクセル開度またはアクセルポジションが低下する)ことにより、そのアクセルペダル3の操作量に対応してスロットルポジションが低下する。その結果、駆動トルクが減少し、車両Veの駆動力が減少する。また、駆動力が減少することに伴い、車両Veの制動力が増大する。すなわち、アクセルペダル3の踏み込みが戻されることにより、いわゆるエンジンブレーキが作用し、車両Veの制動力が増大する。例えば、内燃機関のフリクショントルクやポンピングロスが駆動トルクに対抗する抵抗力(制動トルク)となり、車両Veに制動力が発生する。あるいは、駆動力源1として電気モータを搭載している場合は、電気モータが回生ブレーキとして機能し、車両Veに回生制動力が発生する。
【0022】
上記のように、アクセルペダル3は、運転者の操作によって車両Veの駆動力および制動力を調整する。後述するように、このアクセルペダル3には、運転者によるアクセルペダル3の踏み込み操作における操作量や操作速度を検出するためのアクセルポジションセンサ5aが設けられている。アクセルポジションセンサ5aにより、アクセルペダル3の操作量または踏み込み量(すなわち、アクセル開度、アクセルポジション)を検出することができる。また、アクセルポジションセンサ5aによって検出したアクセルペダル3の操作量からアクセルペダル3の操作速度を検出することにより、運転者によるアクセルペダル3の操作状態および操作方向を判断することができる。すなわち、運転者によってアクセルペダル3が踏み込まれている状態であるか、あるいは、運転者によってアクセルペダル3の踏み込みが戻されている状態であるかを判断することができる。また、この発明の実施形態におけるアクセルペダル3は、後述するように、踏力センサ5bや面圧センサ5gなどを設けてもよい。
【0023】
更に、この発明の実施形態で制御対象にする車両Veは、アクセルペダル3に対して、反力アクチュエータ10を設けてもよい。反力アクチュエータ10は、アクセルペダル3の反力を変更して制御するための装置である。この場合のアクセルペダル3の反力は、運転者がアクセルペダル3を踏み込む際の踏力に対抗するペダル荷重である。例えば、図4に示すように、反力アクチュエータ10は、反力発生部10a、および、ロッド10bを有している。反力発生部10aは、ダッシュパネル11に取り付けられている。反力発生部10aは、例えば、電動アクチュエータ(図示せず)、あるいは、油圧アクチュエータ(図示せず)などによって構成されており、ロッド10bを介して、アクセルペダル3に反力(ペダル荷重)を伝達する。この図4に示すアクセルペダル3は、いわゆるオルガン式のアクセルペダル3であり、フロアパネル12に取り付けられている。アクセルペダル3は、ペダル本体3a、センサ部3b、および、ロッド3cを有している。センサ部3bには、例えば、上述したアクセルポジションセンサ5aや、踏力センサ5bが設けられている。また、センサ部3bには、アクセルペダル3の反力を発生するリターンスプリング(図示せず)などが設けられている。例えば、リターンスプリングの付勢力が、アクセルペダル3の反力として、ロッド3cを介して、ペダル本体3aに伝達されるように構成されている。そして、この図4に示す反力アクチュエータ10は、アクセルペダル3のペダル本体3aおよびセンサ部3bと、反力アクチュエータ10の反力発生部10aとが別個に形成された、別体型の反力アクチュエータ10となっている。
【0024】
なお、反力アクチュエータ10は、上記の図4に示すような構成に限定されない。例えば、図5に示すように、オルガン式のアクセルペダル3のセンサ部3bと、反力アクチュエータ10の反力発生部10aとが一体に形成され、もしくは、一体的にケース(図示せず)に収容され、アクセルペダル3のペダル本体3aと、反力アクチュエータ10の反力発生部10aとが別個に形成された、別体型の反力アクチュエータ10でもよい。この図5に示す実施形態では、アクセルペダル3のロッド3cと反力アクチュエータ10のロッド10bとが兼用されている。
【0025】
また、例えば、図6に示すように、オルガン式のアクセルペダル3のペダル本体3aおよびセンサ部3bと、反力アクチュエータ10の反力発生部10aとが一体に形成され、もしくは、一体的にケース(図示せず)に収容され、アクセルペダル3のロッド3cと反力アクチュエータ10のロッド10bとが兼用された、一体型の反力アクチュエータ10でもよい。この図6に示す実施形態では、反力アクチュエータ10は、フロアパネル12に取り付けられている。
【0026】
また、例えば、図7に示すように、オルガン式のアクセルペダル3のペダル本体3aおよびセンサ部3bと、反力アクチュエータ10の反力発生部10aとが一体に形成され、もしくは、一体的にケース(図示せず)に収容され、アクセルペダル3のロッド3cおよび反力アクチュエータ10のロッド10bが個別に設けられた、一体型の反力アクチュエータ10でもよい。この図7に示す実施形態では、反力アクチュエータ10は、フロアパネル12に取り付けられている。
【0027】
そして、例えば、図8に示すように、いわゆる吊り下げ式(あるいは、ペンダント式)のアクセルペダル3のセンサ部3bと、反力アクチュエータ10の反力発生部10aとが一体に形成された、もしくは、一体的にケース(図示せず)に収容された、一体型の反力アクチュエータ10でもよい。この図8に示す実施形態では、反力アクチュエータ10は、アクセルペダル3のセンサ部3bと共に、フロアパネル12に取り付けられている。このように、この発明の実施形態における車両の制御装置では、反力アクチュエータ10が設けられ、アクセルペダル3の反力(ペダル荷重)が制御可能な構成であれば、アクセルペダル3の形式は問わない。すなわち、いわゆるオルガン式のアクセルペダル3、および、いわゆる吊り下げ式(ペンダント式)のアクセルペダル3のいずれもであっても、この発明の実施形態における車両の制御装置の制御対象にすることができる。
【0028】
シート4は、運転者が着座する運転席であり、ステアリングホイール(図示せず)およびアクセルペダル3の真後ろに配置されている。後述するように、この発明の実施形態における車両の制御装置では、運転席、すなわち、シート4に着座した運転者の体勢から、運転者の足首および脚部に掛かる足首負荷を推定する。そのため、シート4には、後述するように、シートポジションセンサ5c、および、着座センサ5dが設けられている。
【0029】
検出部5は、車両Veを制御する際に必要な各種のデータや情報を取得するための機器あるいは装置であり、例えば、電源部、マイクロコンピュータ、センサ、および、入出力インターフェース等を含む。特に、検出部5は、アクセルペダル3の操作量(すなわち、アクセルポジション、または、アクセル開度)を検出するアクセルポジションセンサ5a、および、運転者によるアクセルペダル3の踏力(踏み込み荷重)を検出する踏力センサ5bを有している。また、検出部5は、運転席(シート4)における可動部分の位置および状態(すなわち、シートポジション)を検出するシートポジションセンサ5c、および、運転席(シート4)における運転者の有無や、運転者の着座位置あるいは着座状態を検出する着座センサ5dを有している。その他に、検出部5は、例えば、各車輪の回転速度をそれぞれ検出する車輪速センサ5e、および、車両Veの加速度(特に、前後加速度)を検出する加速度センサ5fを有している。また、上記の踏力センサ5bと共に、運転者のアクセルペダル3の踏み込み状態や、足の大きさ、あるいは、足のサイズ等を推定するための面圧センサ5g、あるいは、上記のシートポジションセンサ5cや着座センサ5dと共に、運転席上の運転者の体格、および、運転姿勢等を推定するための画像認識カメラ5hを有していてもよい。更に、赤外線、可視光線、もしくは、超音波などを利用した人感センサ(図示せず)や、サーモグラフィーカメラ(図示せず)などを有していてもよい。そして、検出部5は、後述するコントローラ6と電気的に接続されており、上記のような各種センサや機器・装置等の検出値または算出値に応じた電気信号を検出データとしてコントローラ6に出力する。
【0030】
コントローラ6は、例えば、マイクロコンピュータを主体にして構成される電子制御装置であり、例えば、この発明の実施形態におけるコントローラ6は、主に、駆動力源1、および、トランスミッション7の動作をそれぞれ制御する。また、上記のような反力アクチュエータ10を設けている場合は、コントローラ6は、反力アクチュエータ10の動作を制御する。コントローラ6には、上記の検出部5で検出または算出された各種データが入力される。コントローラ6は、入力された各種データおよび予め記憶させられているデータや計算式等を使用して演算を行う。それとともに、コントローラ6は、その演算結果を制御指令信号として出力し、上記のような、駆動力源1、および、トランスミッション7、ならびに、反力アクチュエータ10などの動作をそれぞれ制御するように構成されている。
【0031】
例えば、コントローラ6は、アクセルポジションセンサ5aで検出したアクセルペダル3の操作量、および、車輪速センサ5eの検出値から算出した車速に基づいて、駆動力源1の目標駆動力(または、目標駆動トルク)を算出する。そして、その目標駆動力に基づいて、駆動力源1の出力を制御する。また、コントローラ6は、トランスミッション7で設定する変速比(もしくは、変速段)を制御する。更に、コントローラ6は、例えば、踏力センサ5bやシートポジションセンサ5cなどの検出値あるいは検出結果に基づいて、運転席上の運転者の体勢あるいは姿勢を推定し、その運転者の体勢あるいは姿勢から、運転者の足首負荷を推定する。そして、コントローラ6は、推定した運転者の足首負荷に基づいて、後述するように、車両Veの目標駆動力を規定する駆動力特性として、第1駆動力特性と、第2駆動力特性とを選択的に設定する。なお、図3では一つのコントローラ6が設けられた例を示しているが、コントローラ6は、例えば、制御する装置や機器毎に、あるいは、制御内容毎に、複数設けられていてもよい。
【0032】
前述したように、この発明の実施形態における車両の制御装置は、車両Veのドライバビリティを低下させることなく、アクセルペダル3の踏み込み操作における運転者の負担を軽減することを目的としている。そのような目的を実現するためにコントローラ6で実行する制御の一例を、図9のフローチャートに示してある。
【0033】
図9のフローチャートに示す制御内容は、この発明の実施形態における“加速フィール保持手段”によって実行される制御の一例であって、第2駆動力特性でアクセル開度の増加量に対する目標駆動力の増加量の比率を大きくすることにより、第1駆動力特性を設定した場合の車両加速度の踏力に対する比率と、第2駆動力特性を設定した場合の車両加速度の踏力に対する比率との差異を低減する制御例を示してある。
【0034】
図9のフローチャートにおいて、先ず、ステップS1では、運転席、すなわち、シート4に着座した運転者の体勢(ドライバ運転姿勢)が検出される。例えば、運転者の運転姿勢、体格、着座位置、シートポジション、足の大きさなどが、検出または検知される。
【0035】
ステップS2では、運転者の足首負荷の大きさが推定される。足首負荷は、運転者がアクセルペダル3の踏み込み操作を行う際に、運転者の足首および脚部に掛かる負荷である。より具体的には、この発明の実施形態では、足首負荷を、運転者の足首および脚部の筋肉に対する負荷と定義する。前述したように、通常、運転者は、アクセルペダル3を操作する場合、足のかかとを床に付けて、足裏をアクセルペダル3に載せた状態で、アクセルペダル3を踏み込む。その際に、運転者の足裏と足のすねとの間の足首角度が小さい状態は、足首角度が大きい状態と比較して、足首および脚部の筋肉に対する負荷が大きくなる。そのため、この発明の実施形態における車両の制御装置では、例えば、ステップS1で検出する運転者の体格、足の大きさ、運転姿勢などから、上記のような運転者の足首角度が算出される。そして、その足首角度の大きさに基づいて、足首負荷の大きさが推定される。例えば、算出された足首角度の大きさに応じて、足首負荷の大きさが定量的に評定される。足首角度が大きいほど、足首負荷は大きいと推定される。
【0036】
ステップS3では、駆動力補正要否判定が行われる。具体的には、ステップS2で推定された足首負荷が、補正判定閾値以上であるか否かが判断される。補正判定閾値は、アクセルペダル3の操作量(以下、アクセル開度)に応じた目標駆動力を規定する駆動力特性に対する補正(駆動力特性補正制御)の要否を判断するための閾値として、予め設定されている。また、この発明の実施形態における車両の制御装置では、車両Veの駆動力特性として、標準的な、あるいは、基準となる駆動力特性である第1駆動力特性と、その第1駆動力特性よりも、規定する目標駆動力が小さい第2駆動力特性とが選択的に設定される。通常は、または、制御の開始当初は、車両Veの駆動力特性として、標準的な第1駆動力特性が選択されて設定される。その標準的な第1駆動力特性に対して補正を行うことにより、第2駆動力特性が選択されて設定されることになる。したがって、推定された足首負荷が、補正判定閾値よりも小さい場合は、足首負荷は標準的な大きさであり、駆動力特性を補正する必要はないと判断される。すなわち、第1駆動力特性が車両Veの駆動力特性として設定される。推定された足首負荷が、補正判定閾値以上となった場合は、駆動力特性を補正する必要があると判断される。すなわち、車両Veの駆動力特性として、第1駆動力特性から第2駆動力特性に変更する必要があると判断される。
【0037】
上記の第1駆動力特性が標準的な駆動力特性として設定されるのに対して、第2駆動力特性は、運転者の足首負荷を軽減し得る駆動力特性となるように設定される。また、第2駆動力特性は、常用アクセル開度領域において設定される。常用アクセル開度領域は、図10に示すように、少なくとも、全閉(0)から全開までのアクセル開度の全開度領域の中で、常用的に使用される一部の領域として定められている。図10に示す実施形態では、アクセル開度APO1から、そのアクセル開度APO1よりも大きいアクセル開度APO2までの一部のアクセル開度の領域が、常用アクセル開度領域として設定されている。なお、図10において、特性線DC1(一点鎖線)で示す駆動力特性が、第1駆動力特性であり、特性線DC2(実線)で示す駆動力特性が、第2駆動力特性である。特性線DC0(破線)は、この発明の実施形態における駆動力特性補正制御を実行しない場合(従来技術)の駆動力特性を示している。
【0038】
推定された“足首負荷”が、補正判定閾値よりも小さいことにより、このステップS3で否定的に判断された場合、すなわち、駆動力特性の補正は必要ないと判断された場合は、以降の制御を実行することなく、この図9のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。それに対して、推定された“足首負荷”が、補正判定閾値以上であることにより、ステップS3で肯定的に判断された場合、すなわち、駆動力特性の補正が必要であると判断された場合には、ステップS4へ進む。
【0039】
ステップS4では、アクセル開度APO1における目標駆動力が算出される。図10に示すように、アクセル開度APO1は、常用アクセル開度領域の起点(あるいは、下限)となるアクセル開度である。すなわち、アクセル開度APO1における目標駆動力は、第2駆動力特性で規定される目標駆動力であって、運転者の足首負荷を軽減し得る最小の目標駆動力である。したがって、この場合のアクセル開度APO1における目標駆動力は、第1駆動力特性を設定した場合にアクセル開度APO1に対応して算出される目標駆動力よりも小さくなる。そのような運転者の足首負荷を軽減し得る最小の目標駆動力は、例えば、従来と同様の手法で求めることができる。あるいは、実車により走行実験の結果や、シミュレーションによる解析結果などに基づいて、予め設定されていてもよい。後述するように、この発明の実施形態における駆動力特性補正制御では、このアクセル開度APO1における目標駆動力を起点として、第2駆動力特性を設定する。
【0040】
ステップS5では、アクセルペダル3の荷重変化量が算出される。この場合のアクセルペダル3の荷重変化量は、車両Veの駆動力特性が第1駆動力特性から第2駆動力特性に変更されることに伴い、運転者が体感するアクセルペダル3の反力(以下、ペダル荷重)の変化量である。具体的には、図11のタイムチャートに示すように、ペダル荷重は、時刻t1で増大を開始し、時刻t2以降、引き続き、アクセル開度が全開となる時刻t5にかけて増大する。また、車両Veの駆動力特性が第1駆動力特性から第2駆動力特性に変更されることにより、アクセル開度APO1からアクセル開度APO2までの範囲のアクセル開度が、常用アクセル開度領域として設定される。すなわち、車両Veの駆動力特性として第2駆動力特性が設定されると、図11に上向きの点線の矢印で示すように、常用的なアクセル開度の領域が、アクセル開度が大きくなる方向に変化する。それに伴い、図11に上向きの実線の矢印で示すように、所定の常用的なアクセル開度に対応するペダル荷重が、増大する方向に変化する。その増大前のペダル荷重と、増大後のアクセル開度APO1に対応するペダル荷重との差分が、このステップS5で算出するアクセルペダル3の荷重変化量である。したがって、このアクセルペダル3の荷重変化量は、所定の常用的なアクセル開度となる時刻t2から、アクセル開度APO1となる時刻t3までの期間において、ペダル荷重の増加分を算出することによって求めることができる。
【0041】
そして、ステップS6では、常用アクセル開度領域における駆動力補正量が算出され、車両Veの駆動力特性が補正される。すなわち、駆動力特性補正制御が実行され、車両Veの駆動力特性が第1駆動力特性から第2駆動力特性に変更される。具体的には、前述したように、第1駆動力特性を設定した場合にアクセル開度に応じて算出される目標駆動力と比較して、第2駆動力特性を設定した場合にアクセル開度に応じて算出される目標駆動力が低下させられる。それとともに、第1駆動力特性を設定した場合の運転者の踏力に対応して発生する車両加速度の踏力に対する比率と、第2駆動力特性を設定した場合の運転者の踏力に対応して発生する車両加速度の踏力に対する比率との差異が低減するように、第2駆動力特性が設定される。すなわち、常用アクセル開度領域における駆動力補正量が算出される。
【0042】
より具体的には、常用アクセル開度領域において、第1駆動力特性におけるアクセル開度の増加量に対する目標駆動力の増加量の比率(すなわち、図10に示す特性線DC1の傾きC)よりも、第2駆動力特性におけるアクセル開度の増加量に対する目標駆動力の増加量の比率(すなわち、図10に示す特性線DC1の傾きD)が大きくなるように、第2駆動力特性が設定される。
【0043】
上記の常用アクセル開度領域における駆動力補正量は、例えば、運転者のアクセルペダル3の踏み込み操作に対応して変化する車両加速度(車両Veの前後加速度)の変化勾配、すなわち、車両Veのジャークを活用して算出される。運転者がアクセルペダル3を踏み込み操作する場合、その踏み込み操作に応じて車両加速度が変化する。また、踏み込み操作の操作速度に対応した車両Veのジャークが発生する。運転者が違和感を覚えることなく、自然と感じる車両Veのジャークは、運転者が体感するペダル荷重によって変化する。例えば、運転者が体感するペダル荷重が標準的な(中程度の)大きさである場合に運転者が自然と感じる車両Veのジャークは、図12のタイムチャートで、車両加速度の変化を示す加速度線AL1(実線)の時刻t11から時刻t12までの期間における傾きとして表される。これに対して、運転者が体感するペダル荷重が標準的なペダル荷重よりも大きい場合に運転者が自然と感じる車両Veのジャークは、図12のタイムチャートで、車両加速度の変化を示す加速度線AL2(一点鎖線)の時刻t11から時刻t12までの期間における傾きとして表される。また、運転者が体感するペダル荷重が標準的なペダル荷重よりも小さい場合に運転者が自然と感じる車両Veのジャークは、図12のタイムチャートで、車両加速度の変化を示す加速度線AL3(二点鎖線)の時刻t11から時刻t12までの期間における傾きとして表される。運転者が体感するペダル荷重が大きいほど、運転者が自然と感じる車両Veのジャークは大きくなる。そのため、運転者が体感するペダル荷重が標準よりも大きい場合は、標準よりも大きなジャークとなるように、車両Veの駆動力特性(または、加速度特性)設定することにより、運転者に違和感を与えることなく、自然な加速フィールを体感させることができる。また、運転者が体感するペダル荷重が標準よりも小さい場合は、標準よりも小さなジャークとなるように、車両Veの駆動力特性(または、加速度特性)設定することにより、運転者に違和感を与えることなく、自然な加速フィールを体感させることができる。
【0044】
したがって、ステップS6では、運転者が体感するペダル荷重が考慮されて、運転者が自然と感じる車両Veのジャークとなるように、常用アクセル開度領域における駆動力補正量が算出される。また、運転者が体感するペダル荷重は、運転者の体格や足のサイズによって変化する。例えば、図13に一点鎖線で示すように、運転者の体格が小さく、足のサイズも小さい場合は、アクセル開度、すなわち、運転者がアクセルペダルを操作する際の操作量に対応して運転者が体感するペダル荷重が大きくなる。運転者の体格が小さく、足のサイズが標準的なサイズよりも小さい場合は、運転者がかかとを支点にして足裏でアクセルペダル3を踏み込む際に、踏力の作用点が標準的なサイズよりもかかと側の支点に近くなる。そのため、踏力の作用点と支点との間の距離が短くなり、その分、運転者が体感するペダル荷重が大きくなる。したがって、この発明の実施形態における駆動力特性補正制御では、運転者の体格や足のサイズに応じて変化するペダル荷重も加味して、運転者が自然と感じる車両Veのジャークとなるように、常用アクセル開度領域における駆動力補正量を算出する。
【0045】
上記のように常用アクセル開度領域における駆動力補正量を算出し、車両Veの駆動力特性として第2駆動力特性を設定することにより、常用アクセル開度領域において発生する車両Veのジャークが変化する。図11のタイムチャートに示すように、時刻t3から時刻t4までの期間でアクセル開度が増大する常用アクセル開度領域において、一点鎖線で示す車両加速度の傾きEが、駆動力特性として第1駆動力特性を設定した場合の車両Veのジャークを表している。それに対して、実線で示す車両加速度の傾きFが、駆動力特性として第2駆動力特性を設定した場合の車両Veのジャークを表している。この図11のタイムチャートにおいて、車両加速度の傾きFは、車両加速度の傾きEよりも大きくなっている。すなわち、第2駆動力特性を設定した場合の車両Veのジャークは、第1駆動力特性を設定した場合の車両Veのジャークよりも大きくなる。
【0046】
なお、図11のタイムチャートにおける時刻t3は、アクセル開度が、常用アクセル開度領域の起点であるアクセル開度APO1になるポイントである。前述したように、第2駆動力特性を設定した場合にアクセル開度APO1に対応して算出される目標駆動力は、第1駆動力特性を設定した場合にアクセル開度APO1に対応して算出される目標駆動力よりも低下させられている。そのため、図11のタイムチャートに示すように、時刻t3における、第2駆動力特性を設定した場合の車両加速度が、第1駆動力特性を設定した場合の車両加速度よりも小さくなっている。すなわち、常用アクセル開度領域では、第1駆動力特性よりも目標駆動力が小さくなる第2駆動力特性が設定される。常用アクセル開度領域でそのような第2駆動力特性が設定されることにより、運転者は、駆動力を得るために、第1駆動力特性で操作する場合よりも、大きく、また、強く、アクセルペダル3を踏み込むことになる。その結果、足首角度が小さい状態でアクセルペダル3を操作する機会や頻度が減少する。したがって、運転者がアクセルペダル3を踏み込み操作する際の、運転者の足首負荷が軽減される。
【0047】
また、図11のタイムチャートに示すように、第2駆動力特性では、アクセル開度がアクセル開度APO1となる時刻t3で、第1駆動力特性よりも目標駆動力が小さいことにより、発生する車両加速度も小さくなる。その後、第1駆動力特性よりもジャークが大きいことにより、常用アクセル開度領域の時刻t3から時刻t4までの期間で、第2駆動力特性を設定した場合の車両加速度と、第1駆動力特性を設定した場合の車両加速度との差が、徐々に小さくなる。そして、常用アクセル開度領域が終了する時刻t4からアクセル開度が全開、または、アクセル開度APO2よりも大きい所定のアクセル開度となる時刻t5で、第2駆動力特性を設定した場合の車両加速度と、第1駆動力特性を設定した場合の車両加速度とが一致する。したがって、第2駆動力特性を設定した場合は、時刻t5の前後でジャークの大きさが変化するものの、例えば従来技術のように第1駆動力特性と第2駆動力特性とでジャークの大きさが変わらない場合と比較して、その時刻t5の前後におけるジャークの差は小さくなる。そのため、アクセル開度が常用アクセル開度領域から外れる際に、ジャークの変化が大きいことに起因して、車両Veの駆動力や加速度の変化が大きいことによって運転者に違和感を与えてしまうことが抑制される。
【0048】
ステップS6で、常用アクセル開度領域における駆動力補正量が算出され、その駆動力補正量に基づいて車両Veの駆動力特性が補正される、すなわち、車両Veの駆動力特性として第2駆動力特性が設定されると、その後、図9のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0049】
図14から図17に、この発明の実施形態における車両の制御装置によって実行される駆動力特性補正制御の別の実施形態を示してある。前述したように、この発明の実施形態で制御対象にする車両Veは、アクセルペダル3に対して、ペダル荷重を変更して制御することが可能な反力アクチュエータ10を有していてもよい。図14に示すように、反力アクチュエータ10を用いることにより、運転者がアクセルペダル3を操作する際のペダル荷重、すなわち、アクセルペダル3の反力を、任意に変化させることができる。
【0050】
図15のフローチャートに、この発明の実施形態における“加速フィール保持手段”によって実行される制御の他の例であって、反力アクチュエータ10を用いてアクセルペダル3のペダル荷重を低下させることにより、第1駆動力特性を設定した場合の車両加速度の踏力に対する比率と、第2駆動力特性を設定した場合の車両加速度の踏力に対する比率との差異を低減する制御例を示してある。なお、図15のフローチャートにおけるステップS11からステップS15は、前述の図9のフローチャートにおけるステップS1からステップS5と同一の制御内容である。
【0051】
図15のフローチャートにおいて、前述の図9のフローチャートで示した実施形態と同様に、ステップS11からステップS15の制御が実行されると、ステップS16では、反力アクチュエータ10を制御することにより、アクセルペダル3のペダル荷重が変更される。具体的には、第1駆動力特性を設定した場合にアクセル開度に応じて算出される目標駆動力と比較して、第2駆動力特性を設定した場合にアクセル開度に応じて算出される目標駆動力が低下させられる。それとともに、第1駆動力特性を設定した場合の運転者の踏力に対応して発生する車両加速度の踏力に対する比率と、第2駆動力特性を設定した場合の運転者の踏力に対応して発生する車両加速度の踏力に対する比率との差異が低減するように、アクセルペダル3のペダル荷重が低下させられる。
【0052】
より具体的には、常用アクセル開度領域において、アクセル開度に応じて算出される目標駆動力を低下させた第2駆動力特性が設定される。この場合は、先ず、アクセル開度APO1における目標駆動力が算出される。前述の図9のフローチャートで示した実施形態と同様に、アクセル開度APO1における目標駆動力は、第2駆動力特性で規定される目標駆動力であって、運転者の足首負荷を軽減し得る最小の目標駆動力である。したがって、アクセル開度APO1における目標駆動力は、第1駆動力特性を設定した場合にアクセル開度APO1に対応して算出される目標駆動力よりも小さい。前述したように、運転者の足首負荷を軽減し得る最小の目標駆動力は、例えば、従来と同様の手法で求めることができる。あるいは、実車により走行実験の結果や、シミュレーションによる解析結果などに基づいて、予め設定されていてもよい。そして、図16に示すように、アクセル開度APO1における目標駆動力を起点として、第1駆動力特性と特性線の傾きが等しい第2駆動力特性が設定される。図16において、特性線DC11(一点鎖線)で示す駆動力特性が、第1駆動力特性であり、特性線DC12(実線)で示す駆動力特性が、第2駆動力特性である。
【0053】
上記の反力アクチュエータ10によるペダル荷重の低下量は、例えば、ステップS15で算出するアクセルペダル3の荷重変化量に基づいて設定される。図17のタイムチャートに示すように、運転者がアクセルペダル3を踏み込み操作する際のペダル荷重は、時刻t11で増大を開始し、時刻t12以降、引き続き、アクセル開度が全開、または、アクセル開度APO2よりも大きい所定のアクセル開度となる時刻t15にかけて増大する。また、車両Veの駆動力特性が第1駆動力特性から第2駆動力特性に変更されることにより、アクセル開度APO1からアクセル開度APO2までの範囲のアクセル開度が、常用アクセル開度領域として設定される。すなわち、車両Veの駆動力特性として第2駆動力特性が設定されると、図17に上向きの点線の矢印で示すように、常用的なアクセル開度の領域が、アクセル開度が大きくなる方向に変化する。それに伴い、図17に上向きの実線の矢印で示すように、所定の常用的なアクセル開度に対応するペダル荷重が、増大する方向に変化する。その増大前のペダル荷重と、増大後のアクセル開度APO1に対応するペダル荷重との差分が、ステップS15で算出されるアクセルペダル3の荷重変化量である。この図17のタイムチャートに示す実施形態では、アクセルペダル3の荷重変化量、すなわち、車両Veの駆動力特性が第1駆動力特性から第2駆動力特性に変更されることによって増大するペダル荷重の変化量と同等の変化量となるように、反力アクチュエータ10によるペダル荷重の低下量が設定されている。
【0054】
また、反力アクチュエータ10によるペダル荷重の低下量は、推定された運転者の足首負荷の大きさに基づいて、適宜、設定されてもよい。例えば、ステップS12で推定される運転者の足首負荷の大きさが大きいほど、反力アクチュエータ10によるペダル荷重の低下量を多くする。前述したように、運転者が体感するペダル荷重は、運転者の体格や足のサイズによって変化する。したがって、運転者がアクセルペダル3を操作する際の運転者の足首負荷も、運転者の体格や足のサイズによって変化する。そのため、ステップS12で推定される運転者の足首負荷の大きさに基づいて反力アクチュエータ10によるペダル荷重の低下量を設定することにより、運転者の体格や足のサイズが考慮された、適切な、反力アクチュエータ10の制御を実行できる。
【0055】
上記のように、反力アクチュエータ10によるペダル荷重を低下させて、車両Veの駆動力特性として第2駆動力特性を設定した場合に、常用アクセル開度領域において発生する車両Veのジャークは、車両Veの駆動力特性として第1駆動力特性を設定した場合に発生する車両Veのジャークに対して変化しない。すなわち、図17のタイムチャートに示すように、時刻t13から時刻t14までの期間でアクセル開度が増大する常用アクセル開度領域において、一点鎖線で示す車両加速度の傾きGが、駆動力特性として第1駆動力特性を設定した場合の車両Veのジャークを表している。それに対して、実線で示す車両加速度の傾きHが、駆動力特性として第2駆動力特性を設定した場合の車両Veのジャークを表している。この図17のタイムチャートにおいて、車両加速度の傾きGと、車両加速度の傾きHとは、互いに等しい。すなわち、第2駆動力特性を設定した場合の車両Veのジャークは、第1駆動力特性を設定した場合の車両Veのジャークと等しい。
【0056】
なお、図17のタイムチャートにおける時刻t13は、アクセル開度が、常用アクセル開度領域の起点であるアクセル開度APO1になるポイントである。前述したように、第2駆動力特性を設定した場合にアクセル開度APO1に対応して算出される目標駆動力は、第1駆動力特性を設定した場合にアクセル開度APO1に対応して算出される目標駆動力よりも低下させられている。そのため、図17のタイムチャートに示すように、時刻t13における、第2駆動力特性を設定した場合の車両加速度が、第1駆動力特性を設定した場合の車両加速度よりも小さくなっている。
【0057】
ステップS16で、車両Veの駆動力特性として、第1駆動力特性よりも規定する目標駆動力を低下させた第2駆動力特性が設定され、それとともに、アクセルペダル3のペダル荷重が低下されると、その後、この図15のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0058】
以上のように、この発明の実施形態における車両の制御装置では、運転者がアクセルペダル3を踏み込み操作する際に、運転者に掛かる負担を軽減するため、特に、運転者の足首および脚部の筋肉に対する負荷を軽減するために、アクセルペダル操作時の運転者の足首負荷が推定される。そして、その推定された足首負荷の大きさに応じて、車両Veの駆動力特性が設定される。推定された足首負荷の大きさが補正判定閾値よりも小さい、標準的な足首負荷である場合は、標準的な目標駆動力を規定する第1駆動力特性が設定される。推定された足首負荷の大きさが補正判定閾値以上となる場合は、第1駆動力特性よりも小さい目標駆動力を規定する第2駆動力特性が設定される。すなわち、補正判定閾値以上の大きな足首負荷が掛かると推定される場合は、規定する目標駆動力が小さくなるように駆動力特性が補正される。上述したこの発明の実施形態では、少なくとも、常用アクセル開度領域の起点となるアクセル開度APO1に対応する目標駆動力が、第2駆動力特性が設定されることによって通常よりも低下する。そのように目標駆動力が小さくなる第2駆動力特性が設定されることにより、運転者は、駆動力を得るためにアクセルペダル3を踏み込み操作する際に、第1駆動力特性で操作する場合よりも、アクセルペダル3をより多く踏み込むことになる。その結果、足首角度が小さいことに起因して足首負荷が大きくなってしまうアクセル開度の領域(アクセルペダル3の踏み込み量が少ない領域)で、アクセルペダル3を操作する機会や頻度が減少する。したがって、この発明の実施形態における車両の制御装置によれば、運転者がアクセルペダル3を踏み込み操作する際の、運転者の足首負荷を軽減することができる。
【0059】
なお、図18のタイムチャートに、比較例として、この発明の実施形態における駆動力特性補正制御を実行しない場合(例えば、前述した特許文献1に記載されているような従来技術の制御を実行した場合)の、常用アクセル開度領域における車両加速度、および、車両加速度の変化勾配(ジャーク)等を示してある。この発明の実施形態における駆動力特性補正制御を実行しない従来技術では、図18のタイムチャートにおいて、時刻t23から時刻t24までの期間で、一点鎖線で示す車両加速度の傾きIが、標準の駆動力特性(この発明の実施形態における第1駆動力特性、あるいは、従来技術における標準特性)を設定した場合の車両Veのジャークを表している。それに対して、実線で示す車両加速度の傾きJが、運転者の足首負荷を軽減するために駆動力特性を補正した場合の車両Veのジャークを表している。この発明の実施形態における駆動力特性補正制御を実行しない場合には、図18のタイムチャートに示すように、車両加速度の傾きJは、車両加速度の傾きIと等しい。すなわち、駆動力特性を補正した場合であっても、車両Veのジャークは、補正前の標準的な駆動力特性を設定した場合の車両Veのジャークに対して変化しない。そのため、この発明の実施形態における駆動力特性補正制御を実行しない場合は、駆動力特性を補正して目標駆動力を小さくすることにより、運転者の足首負荷を軽減できるものの、運転者に、駆動力の不足感や、加速フィールに対する違和感などを与えてしまうおそれがある。すなわち、前述したように、アクセル開度に対応する車両Veのジャーク(すなわち、駆動力特性の変化速度、あるいは、加速度特性の変化速度)が変わらないまま、アクセルペダル3の踏み込み操作に要する操作量および踏力が増大するので、運転者に駆動力の不足感や違和感を与えてしまう可能性がある。
【0060】
それに対して、この発明の実施形態における車両の制御装置では、第2駆動力特性を設定する場合、すなわち、規定する目標駆動力が小さくなるように駆動力特性を補正する場合には、第1駆動力特性で運転者がアクセルペダル3を操作する際の踏力に対応して発生する車両加速度(具体的には、車両Veの前後加速度)の踏力に対する比率と、第2駆動力特性で運転者がアクセルペダル3を操作する際の踏力に対応して発生する車両加速度の踏力に対する比率との差異が低減される。すなわち、上記のような車両加速度の踏力に対する比率が、第1駆動力特性を設定した場合と第2駆動力特性を設定した場合とで大きく相違しないように制御される。例えば、図9のフローチャートで示した実施形態のように、第1駆動力特性におけるアクセル開度の増加量に対する目標駆動力の増加量の比率(すなわち、前述の図10で示した特性線DC1の傾きC)よりも、第2駆動力特性におけるアクセル開度の増加量に対する目標駆動力の増加量の比率(すなわち、前述の図10で示した特性線DC2の傾きD)を大きくすることにより、上記のような差異が低減される。あるいは、図15のフローチャートで示した実施形態のように、アクセルペダル3に対して反力アクチュエータ10を設け、その反力アクチュエータ10を制御して運転者の踏力に対する反力を低下させることにより、上記のような差異が低減される。
【0061】
そのため、運転者の足首負荷を軽減するために第2駆動力特性を設定する場合には、通常よりも目標駆動力を小さくしつつ、この発明の実施形態における駆動力特性補正制御を実行しない場合と比較して、運転者の踏力に対応して発生する車両Veの駆動力(または、加速度)の比率が大きくなる。すなわち、第1駆動力特性を設定した場合の運転者の踏力に対する車両加速度の比率と、第2駆動力特性を設定した場合の運転者の踏力に対する車両加速度の比率との差異が小さくなる。そのため、上記のような第2駆動力特性を設定する場合であっても、駆動力の不足感や、加速フィールに対する違和感などを運転者に与えてしまうことを防ぐことができる。したがって、この発明の実施形態における車両の制御装置によれば、車両Veのドライバビリティを低下させることなく、アクセルペダル3を操作する際の運転者の負担を適切に軽減することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 駆動力源(PWR)
2 駆動輪
3 アクセルペダル
3a(アクセルペダルの)ペダル本体
3b(アクセルペダルの)センサ部
3c(アクセルペダルの)ロッド
4 運転席(SEAT)
5 検出部
5a(検出部の)アクセルポジションセンサ
5b(検出部の)踏力センサ
5c(検出部の)シートポジションセンサ
5d(検出部の)着座センサ
5e(検出部の)車輪速センサ
5f(検出部の)加速度センサ
5g(検出部の)面圧センサ
5h(検出部の)画像認識カメラ
6 コントローラ(ECU)
7 トランスミッション
8 デファレンシャルギヤ
9 ドライブシャフト
10 反力アクチュエータ
10a(反力アクチュエータの)反力発生部
10b(反力アクチュエータの)ロッド
11 ダッシュパネル
12 フロアパネル
Ve 車両
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