(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】感熱記録ライナーレスラベル
(51)【国際特許分類】
B41M 5/333 20060101AFI20231011BHJP
B41M 5/40 20060101ALI20231011BHJP
B41M 5/42 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B41M5/333 220
B41M5/40 210
B41M5/40 220
B41M5/42 220
(21)【出願番号】P 2021502382
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2020008160
(87)【国際公開番号】W WO2020175649
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2019036351
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋元 真也
(72)【発明者】
【氏名】梅本 卓史
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-177351(JP,A)
【文献】特開2009-137220(JP,A)
【文献】特開2016-032886(JP,A)
【文献】特開2006-264255(JP,A)
【文献】特開2019-001141(JP,A)
【文献】特開2018-094915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/28-5/48
G09F 3/00-3/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、前記支持体の一方の面に支持体に近い側から染料前駆体及び顕色剤を含有する感熱記録層、接着剤を含有する保護層、並びに剥離層を有し、前記支持体の他方の面に粘着剤層を有する感熱記録ライナーレスラベルであって、顕色剤として下記一般式(1)で表されるジフェニルスルホン誘導体の少なくとも1種を含有し、さらに顕色剤として下記一般式(2)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物及び下記一般式(3)で表されるウレアウレタン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有
し、前記ジフェニルスルホン誘導体が4-ヒドロキシ-4’-n-プロポキシジフェニルスルホンであることを特徴とする感熱記録ライナーレスラベル。
【化1】
【化2】
【化3】
【請求項2】
前記ジフェニルスルホン誘導体1質量部に対し、前記ジフェニルスルホン架橋型化合物が0.05~4質量部含有される、請求項
1に記載の感熱記録ライナーレスラベル。
【請求項3】
前記ジフェニルスルホン誘導体1質量部に対し、前記ウレアウレタン化合物が0.05~4質量部含有される、請求項1
または2に記載の感熱記録ライナーレスラベル。
【請求項4】
前記ジフェニルスルホン誘導体1質量部に対し、前記ジフェニルスルホン架橋型化合物及び前記ウレアウレタン化合物が合計で0.1~4質量部含有される、請求項1~
3のいずれか1項に記載の感熱記録ライナーレスラベル。
【請求項5】
前記ジフェニルスルホン架橋型化合物1質量部に対し、前記ウレアウレタン化合物が0.2~3質量部含有される、請求項1~
4のいずれか1項に記載の感熱記録ライナーレスラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子供与性化合物と電子受容性化合物との発色反応を利用し、特に熱エネルギーによる発色反応により記録像が得られる感熱記録ライナーレスラベルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱エネルギーにより電子供与性化合物と電子受容性化合物とを接触させて記録像を得るようにした感熱記録体はよく知られている。このような感熱記録体は、比較的安価であり、記録機器がコンパクトで、その保守も容易なため、ファクシミリ、各種計算機等の記録媒体に使用されている。
【0003】
特に近年は、ガス、水道、電気料金等の領収書、金融機関のATMの利用明細書、各種レシート等、財務関係の記録用紙(いわゆるハンディターミナル用)、POSシステム用の感熱記録ラベルあるいは感熱記録タグ等に、種々のバーコードを感熱記録印字して用いられる機会が増加しており、バーコード印字適性を有する感熱記録体が求められており、感熱記録体の高速印字化、高保存性などの品質要求が求められている。
【0004】
従来のラベル用途の感熱記録体は、感熱記録層の裏面に粘着剤層を設けた上に剥離層を有する剥離紙が貼り合わされ、巻取りの状態で記録機器に装填されている。このような感熱記録用粘着シートの紙厚は粘着層、剥離紙の構成により厚くなるため、記録機器に装填できる感熱記録用粘着シートの長さも制限され、記録後貼り合せ時に発生する剥離紙の処理も省資源の観点から問題である。
【0005】
剥離紙を用いない感熱記録用粘着シート、すなわち感熱記録ライナーレスラベルは、種々提案されており、感熱記録体上にシリコーン樹脂等の剥離剤を含む剥離層、裏面に粘着剤層を設けた巻取りの状態で使用されている(特許文献1~4参照)。しかしながら、剥離層と粘着剤層とが感熱記録層と重ね合わされることによって問題が種々発生する。
【0006】
一般に感熱記録ライナーレスラベルは、支持体の一方の面に感熱記録層を有し、感熱記録層上に保護層を有し、保護層上に剥離層を有する。更に感熱記録層と保護層との間に必要により中間層を有する等、塗工層の数が多くなり感熱記録層の感度が低くなるため、感熱記録層の高感度化と耐熱地肌カブリ性とを両立させることが、剥離紙を用いる従来の感熱記録ラベルより強く求められている。
【0007】
また、感熱記録ライナーレスラベルでは、粘着剤及び剥離剤に由来する糊減感等の印字障害について十分に解決されておらず、剥離紙を用いた従来のラベルに比べて遥かに厳しい品質が要求されている。特に流通管理において過酷な条件下で使用される用途には、高温高湿環境下で長期間保管されても発色能力が低下することのない、いわゆる白紙保存性に優れた感熱記録ライナーレスラベルが強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭60-54842号公報
【文献】特開平5-8541号公報
【文献】特開平6-222717号公報
【文献】特開2013-195889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、耐熱地肌カブリ性及び白紙保存性に優れた感熱記録ライナーレスラベルを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、感熱記録層に特定の顕色剤を含有させることにより、前記問題点を解決するに至った。即ち、本発明は、下記の感熱記録ライナーレスラベルに係る。
【0011】
項1:支持体、前記支持体の一方の面に支持体に近い側から染料前駆体及び顕色剤を含有する感熱記録層、接着剤を含有する保護層、並びに剥離層を有し、前記支持体の他方の面に粘着剤層を有する感熱記録ライナーレスラベルであって、顕色剤として下記一般式(1)で表されるジフェニルスルホン誘導体の少なくとも1種を含有し、さらに顕色剤として下記一般式(2)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物及び下記一般式(3)で表されるウレアウレタン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする感熱記録ライナーレスラベル。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
項2:前記ジフェニルスルホン誘導体が4-ヒドロキシ-4’-n-プロポキシジフェニルスルホンである、項1に記載の感熱記録ライナーレスラベル。
【0016】
項3:前記ジフェニルスルホン誘導体1質量部に対し、前記ジフェニルスルホン架橋型化合物が0.05~4質量部含有される、項1または2に記載の感熱記録ライナーレスラベル。
【0017】
項4:前記ジフェニルスルホン誘導体1質量部に対し、前記ウレアウレタン化合物が0.05~4質量部含有される、項1~3のいずれか1項に記載の感熱記録ライナーレスラベル。
【0018】
項5:前記ジフェニルスルホン誘導体1質量部に対し、前記ジフェニルスルホン架橋型化合物及び前記ウレアウレタン化合物が合計で0.1~4質量部含有される、項1~4のいずれか1項に記載の感熱記録ライナーレスラベル。
【0019】
項6:前記ジフェニルスルホン架橋型化合物1質量部に対し、前記ウレアウレタン化合物が0.2~3質量部含有される、項1~5のいずれか1項に記載の感熱記録ライナーレスラベル。
【発明の効果】
【0020】
本発明の感熱記録ライナーレスラベルは、耐熱地肌カブリ性及び白紙保存性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の感熱記録ライナーレスラベルは、支持体の一方の面に支持体に近い側から染料前駆体と顕色剤とを含有する感熱記録層、接着剤を含有する保護層、並びに剥離層を有し、支持体の他方の面に粘着剤層を有している。一般に剥離紙を用いる従来の感熱記録ラベルは、保護層が最上層となる。一方、感熱記録ライナーレスラベルは、剥離層の分だけ厚みが増し、保護層と剥離層とを合わせた塗工層の厚み変動分が感熱記録層の感度低下を引き起こす虞がある。通常、支持体上に感熱記録層と保護層とを設ける感熱記録体の製造ラインでは、後工程となる剥離層と粘着剤層とを設けるラベル加工とラインが異なるため、感度低下の予測が困難である。これに対して、本発明における感熱記録層は、塗工層の厚み変動分を十分に補完するだけの発色能力を有しており、所望の記録濃度を得ることができる。また、従来の感熱記録ラベルでは、剥離紙が断熱材の役割を果たすと同時に、剥離紙の厚みの分だけプリンターのサーマルヘッドとプラテンロールとの間を通過して記録される際に、サーマルヘッドが記録面に押し付けられ密着し、サーマルヘッドからの熱が有効利用されて感熱記録層の感度を高めている。これに対して、本発明では剥離紙を用いないことから、この熱が有効利用されずにサーマルヘッドからプラテンロールへ抜け易く、密着性も低下し易いが、感熱記録層の感度低下を十分に補完するだけの発色能力を得ることができる。
【0022】
本発明における剥離層は、剥離性を発揮するものであれば特に限定されないが、例えば剥離用シリコーンを含むことができる。剥離用シリコーンとして、形態別では溶剤系、無溶剤系、エマルジョン系に、また硬化様式の違いからは熱硬化型、紫外線または電子線硬化型に大別されるが、環境問題及び感熱記録層が発色しないことが求められるため、紫外線または電子線硬化性シリコーン化合物を主成分とする剥離層用塗液の使用が好ましい。
【0023】
これらのシリコーン化合物の具体例としては、メルカプト基含有オルガノシロキサンとビニル基含有オルガノポリシロキサンとの混合組成物、アクリル基、メタクリル基またはシンナモイル基含有オルガノポリシロキサン組成物、マレイミド基またはフェノルマレイミド基含有アルガノポリシロキサン組成物、アジド基含有オルガノポリシロキサンとビニル基含有オルガノポリシロキサンとの混合組成物、チオアクリル基、チオメタクリル基またはチオシンナモイル基含有オルガノポリシロキサン組成物、アクリルアミド基、メタクリルアミド基またはシンナモイルアミド基含有オルガノポリシロキサン組成物等が挙げられ、また紫外線開始型カチオン重合を利用したエポキシ基含有オルガノポリシロキサンと光分解型開始剤のジアゾニウムルイス酸塩との混合組成物も利用することができる。
【0024】
紫外線硬化の場合は、光重合開始剤が必要であるが、具体例としては、ベンゾイルアルキルエーテル及びその誘導体、アセトフェノン及びその誘導体、チオキサントン及びその誘導体、硼素系カチオン誘導体等が挙げられる。
【0025】
かかる剥離用シリコーンには、シリコーン成分以外に溶剤、分散剤、界面活性剤など種々の薬品が含まれるため、保護層には優れたバリア性が求められる。バリア性を高める観点から保護層は、樹脂層であることが好ましく、顔料を含有することもできる。保護層に含有される接着剤(バインダー)としては、成膜性を有する接着剤が好ましく用いられる。かかる接着剤としては、特に限定されないが、バリア性を高める観点から水溶性または水分散性の水性接着剤が好ましい。特に、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、及び珪素変性ポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種の水溶性接着剤を含有することが好ましい。
【0026】
アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、及び珪素変性ポリビニルアルコールは、それぞれアセトアセチル基、ジアセトン基、カルボキシル基、及びシリル基を持つ単量体とビニルエステルとを共重合して得た樹脂を鹸化することにより製造される。
【0027】
鹸化度については、特に限定されないが、85モル%から完全鹸化の100モル%程度が好ましく、90~100モル%程度がより好ましい。平均重合度については、300~3000程度が好ましく、400~2000程度がより好ましい。変性度は、耐水性を高める観点から0.5~10モル%程度が好ましく、1~9モル%程度がより好ましい。重合度、鹸化度が高いほど耐水性が良好になるが、塗料濃度、粘度、塗工性または乾燥性から状況に応じて選択する必要がある。
【0028】
保護層中に使用されるアセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、及び珪素変性ポリビニルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の含有割合としては、特に限定されないが、保護層の全固形量中、好ましくは10~90質量%、より好ましくは15~50質量%程度である。
【0029】
本発明の効果を損なわない範囲において、その他の接着剤を併用することもできる。かかる接着剤としては、例えば完全鹸化ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリビニルアルコール、酸化澱粉等の澱粉及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、アラビアガム、ジイソブチレン-無水マレイン酸共重合体塩、スチレン-無水マレイン酸共重合体塩、エチレン-アクリル酸共重合体塩、スチレン-アクリル酸共重合体塩等の水溶性接着剤、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリル樹脂系ラテックス、ウレタン樹脂系ラテックス等の水分散性接着剤が挙げられる。
【0030】
本発明における保護層は、顔料を含有していてもよい。顔料としては、例えば炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、焼成カオリン等の無機顔料が挙げられる。これらの中でも、カオリン、水酸化アルミニウムは可塑剤、油等の薬品に対するバリア性の低下が少なく、しかも記録濃度の低下も小さいため、特に好ましく用いられる。
【0031】
保護層に含有させることができる助剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス、カルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックス等の滑剤、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、スルホン変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム等の界面活性剤、ジアルデヒド澱粉、メチロール尿素、グリオキシル酸塩、エポキシ系化合物、ヒドラジン系化合物等の耐水化剤、及び紫外線吸収剤、蛍光染料、着色染料、離型剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0032】
保護層は、例えば水を分散媒体として、接着剤、必要により顔料、助剤等を混合撹拌することにより調製された保護層用塗液を、塗布量が乾燥重量で好ましくは0.1~8g/m2程度、より好ましくは0.5~5g/m2程度、更に好ましくは1~4g/m2程度となるように、感熱記録層上に塗布及び乾燥して形成される。
【0033】
本発明における感熱記録層は、支持体の一方の面に形成された層であり、電子供与性化合物として染料前駆体と、電子受容性化合物として顕色剤とを含有している。染料前駆体としては、顕色剤と組合せて発色性に優れることから、ロイコ染料を用いることが好ましい。
【0034】
ロイコ染料の具体例としては、例えば3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-3-(4-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(N-エチル-N-p-トリル)アミノ-7-N-メチルアニリノフルオラン、3-シクロヘキシルアミノ-6-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-(N-エチル-N-イソアミル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ(n-ブチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ(n-ペンチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ(n-ブチル)アミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3,3-ビス〔1-(4-メトキシフェニル)-1-(4-ジメチルアミノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3-p-(p-ジメチルアミノアニリノ)アニリノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-p-(p-クロロアニリノ)アニリノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレン-9-スピロ-3’-(6’-ジメチルアミノ)フタリド等が挙げられる。
【0035】
勿論、これらに限定されるものではなく、また2種以上を併用することもできる。また、ロイコ染料の含有割合は、使用する顕色剤により適宜調整すればよく、特に限定されないが、感熱記録層の全固形量中、3~50質量%程度が好ましく、5~40質量%程度がより好ましい。
【0036】
本発明では、顕色剤として前記一般式(1)で表されるジフェニルスルホン誘導体(以下、単にジフェニルスルホン誘導体ともいう。)の少なくとも1種を含有し、さらに顕色剤として前記一般式(2)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物(以下、単にジフェニルスルホン架橋型化合物ともいう。)及び前記一般式(3)で表されるウレアウレタン化合物(以下、単にウレアウレタン化合物ともいう。)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する。これにより、耐熱地肌カブリ性及び白紙保存性に優れる。前記ジフェニルスルホン誘導体のなかでも、4-ヒドロキシ-4’-n-プロポキシジフェニルスルホンが好ましい。前記ジフェニルスルホン誘導体の含有割合は、特に限定されず、感熱記録層の全固形量中、5~40質量%程度が好ましく、10~35質量%程度がより好ましい。
【0037】
前記一般式(1)中のR1は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、またはアリール基を表す。アルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素数が1~6のアルキル基、より好ましくは炭素数が1~3のアルキル基である。ここでのアルキル基には、アラルキル基のアルキル部分も含まれる。アルケニル基は、直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素数が2~6のアルケニル基、より好ましくは炭素数が2~3のアルケニル基である。アリール基は、5又は6員の芳香族炭化水素環からなる単環又は多環系の基を意味する。ここでのアリール基には、アラルキル基のアリール部分も含まれる。アラルキル基とはアリールアルキル基を意味する。
【0038】
前記ジフェニルスルホン架橋型化合物は、1種単独で使用してもよく、式中のnが1~6の整数を表す化合物の混合物として使用してもよい。前記ジフェニルスルホン架橋型化合物の含有割合は、特に限定されないが、前記ジフェニルスルホン誘導体1質量部に対し、0.05~4質量部含有されることが好ましく、0.1~1.5質量部含有されることがより好ましい。これにより、耐油性及び耐可塑剤性を高めることができる。
【0039】
前記ウレアウレタン化合物の具体例としては、例えば、4,4’-ビス〔(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン、4,4’-ビス〔(2-メチル-5-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン、4-(2-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド-4’-(4-メチル-5-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイドジフェニルスルホン等が挙げられる。これらのウレアウレタン化合物は、1種単独または2種類以上組合せて使用することができる。前記ウレアウレタン化合物の含有割合は、特に限定されないが、前記ジフェニルスルホン誘導体1質量部に対し、0.05~4質量部含有されることが好ましく、0.1~1.5質量部含有されることがより好ましい。これにより、記録濃度、耐熱地肌カブリ性及び耐可塑剤性を高めることができる。
【0040】
前記ジフェニルスルホン誘導体1質量部に対し、前記ジフェニルスルホン架橋型化合物及び前記ウレアウレタン化合物が合計で0.1~4質量部含有されることが好ましく、0.2~2.5質量部含有されることがより好ましい。これにより、優れた白紙保存性を保持したまま、記録濃度、耐熱地肌カブリ性及び耐可塑剤性を同時に高めることができる。
【0041】
前記ジフェニルスルホン架橋型化合物1質量部に対し、前記ウレアウレタン化合物が0.2~3質量部含有されることが好ましく、0.5~3質量部含有されることがより好ましい。これにより耐熱地肌カブリ性をより一層向上することができる。
【0042】
その他の顕色剤は、本発明の効果を損なわない限り、含有させることができる。他の顕色剤としては、例えば4,4’-イソプロピリデンジフェノール、4,4’-シクロヘキシリデンジフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン、3,3’-ジアリル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2’-ビス〔4-(4-ヒドロキシフェニル)フェノキシ〕ジエチルエーテル、N-p-トルエンスルホニル-N’-3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレア、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、N,N’-ジ-m-クロロフェニルチオ尿素、N-p-トリルスルホニル-N’-フェニルウレア、4,4’-ビス(p-トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、4-〔2-(p-メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸亜鉛、4-{3-(p-トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸亜鉛、5-〔p-(2-p-メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸亜鉛等が挙げられる。これらは、本発明の品質を阻害しない程度の量を添加してもよい。その含有量は特に限定されないが、通常、本発明における特定の顕色剤の合計量に対して50質量%未満であることが好ましい。
【0043】
感熱記録層には保存性改良剤を含有させてもよい。これにより、記録部の保存安定性を高めることができる。かかる保存性改良剤の具体例としては、例えば2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン等のヒンダードフェノール化合物、4,4’-ジグリシジルオキシジフェニルスルホン、4-ベンジルオキシ-4’-(2-メチルグリシジルオキシ)ジフェニルスルホン、テレフタル酸ジグリシジル、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、ビス(4-エチレンイミノカルボニルアミノフェニル)メタン等が挙げられる。保存性改良剤の含有割合は、特に限定されないが、感熱記録層の全固形量中1~30質量%程度が好ましく、5~20質量%程度がより好ましい。
【0044】
感熱記録層には増感剤を含有させてもよい。これにより、記録感度を高めることができる。かかる増感剤の具体例としては、例えばステアリン酸アミド、メトキシカルボニル-N-ステアリン酸ベンズアミルド、N-ベンゾイルステアリン酸アミド、N-エイコサン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、N-メチロールステアリン酸アミド、テレフタル酸ジベンジル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジオクチル、ジフェニルスルホン、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸フェニル、2-ナフチルベンジルエーテル、m-ターフェニル、p-ベンジルビフェニル、シュウ酸ジ-p-クロロベンジルエステル、シュウ酸ジ-p-メチルベンジルエステル、シュウ酸ジベンジルエステル、p-トリルビフェニルエーテル、ジ(p-メトキシフェノキシエチル)エーテル、1,2-ジ(3-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ジ(4-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ジ(4-メトキシフェノキシ)エタン、1,2-ジ(4-クロロフェノキシ)エタン、1,2-ジフェノキシエタン、1-(4-メトキシフェノキシ)-2-(3-メチルフェノキシ)エタン、p-メチルチオフェニルベンジルエーテル、1,4-ジ(フェニルチオ)ブタン、p-アセトトルイジド、p-アセトフェネチジド、N-アセトアセチル-p-トルイジン、1,2-ジフェノキシメチルベンゼン、ジ(β-ビフェニルエトキシ)ベンゼン、p-ジ(ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、1-イソプロピルフェニル-2-フェニルエタン、アジピン酸ジ-o-クロルベンジル、1,2-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタン、1,3-ビス(2-ナフトキシ)プロパン、ジフェニル、ベンゾフェノン等が挙げられる。これらは支障のない範囲で併用できる。増感剤の含有割合は、増感のために有効な量とすればよく、通常は、感熱記録層の全固形量中、2~40質量%程度が好ましく、5~25質量%程度がより好ましい。
【0045】
更に、感熱記録層中には必要に応じて各種の助剤を含有させることもできる。助剤としては、例えばカオリン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、焼成カオリン、酸化チタン、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、無定形シリカ、尿素・ホルマリン樹脂フィラー等の顔料、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、脂肪酸金属塩等の分散剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス、カルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックス等のワックス類、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジン系化合物、グリオキザール、硼酸、ジアルデヒドデンプン、メチロール尿素、グリオキシル酸塩、エポキシ系化合物等の耐水化剤、消泡剤、着色染料及び蛍光染料等が挙げられる。
【0046】
感熱記録層は、水を分散媒体とし、染料前駆体、顕色剤、必要により保存性改良剤、増感剤等を共に、あるいは別々にボールミル、アトライター、サンドミル等の撹拌・粉砕機により平均粒子径が2μm以下となるように微分散した後、水性接着剤、助剤等を添加して調製された感熱記録層用塗液を支持体の一方の面に塗布及び乾燥して形成される。感熱記録層の塗布量は、乾燥重量で好ましくは2~12g/m2程度、より好ましくは2~6g/m2程度となるように、支持体上に塗布及び乾燥して形成される。
【0047】
感熱記録層に使用される接着剤としては、例えば、水溶性接着剤及び水分散性接着剤のいずれの水性接着剤を使用できる。水溶性接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、澱粉及びその誘導体、メトキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ジイソブチレン-無水マレイン酸共重合体塩、スチレン-アクリル酸共重合体塩、スチレン-無水マレイン酸共重合体塩、エチレン-無水マレイン酸共重合体塩、アクリル酸アミド-アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド-アクリル酸エステル-メタクリル酸共重合体、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン、アラビアガム等が挙げられる。水分散性接着剤としては、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、シリル化ウレタン、アクリル-シリコン複合体、及びアクリル-シリコン-ウレタン複合体、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂、ポリウレタン樹脂等の水不溶性重合体のラテックス等が挙げられる。これらは、1種単独又は2種以上を併用して使用することができる。これらの少なくとも1種を、感熱記録層の全固形量中、好ましくは5~50質量%程度、より好ましくは5~30質量%程度の範囲で配合される。
【0048】
本発明における粘着剤層に使用される粘着剤は、ラベルとして被着体に貼り付けられるものであれば種類及び形態は、特に限定されず、各種公知のものの中から適宜選択して使用できるが、ほとんどは、乳化重合で得られる水系粘着剤か、あるいは乳化剤をほとんど含まないホットメルトタイプかである。ホットメルトタイプは、ベースポリマーを加熱、溶融した状態で基材に塗工する方式で、乾燥工程が不要で設備収容のスペースは縮小することができるが、原料が特殊ポリマーであるため粘着剤の価格が高くなること、溶融、塗工工程への窒素ガスの導入が必要であること、また架橋による変性が容易でない等の問題がある。乳化重合で得られる水系粘着剤は、乾燥工程が必要であるが当初から水系専用に設計される設備であれば、経済的有利さもあり日本国内での使用が増加している。しかし、本質的に粘着剤は、乳化重合で製造されるため、界面活性剤を含んでおり、例えば軟質ポリ塩化ビニル等のフィルムに接触するとフィルムに含まれる可塑剤が粘着剤に移行する問題があり、粘着性能に影響することがある。感熱記録ライナーレスラベルの場合、感熱記録層に含まれる一般的な顕色剤、増感剤等は軟質ポリ塩化ビニル等のフィルムの可塑剤に接触すると、粘着剤層に移行する問題があり、特に、高温高湿環境下では移行する傾向が強くなる。本発明では、特定の顕色剤を含有させることにより、発色能力を維持することができる。
【0049】
乳化重合で得られる水系粘着剤の具体例としては、アクリル系粘着剤が主に使用されており、アクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル等のアクリルモノマーを中心に、他のビニルポリマー、官能基モノマーを組み合わせ、一般的にはガラス転移点が-30℃以下になるように設計し、共重合させている。一般に界面活性剤としてアルキルフェノール型ノニオンを主として用い、アニオン型を少量併用する場合が多い。また、重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム等の水溶性過酸化物触媒を用いるが、重合中の乳化安定性を良くするため、比較的低温で重合することが好ましく、酸性亜硫酸ソーダのような還元剤を併用するレドックス重合法が多く用いられている。これらは、エマルジョンの形態で用いられる。
【0050】
本発明の感熱記録体に用いられる支持体としては、特に限定しないが、例えば、上質紙等の中性紙または酸性紙等の紙支持体、合成紙、透明または半透明のプラスチックフィルム、白色のプラスチックフィルム等が挙げられる。なお、支持体の厚みは特に限定しないが、通常、20~200μm程度である。
【0051】
本発明では、必要により、支持体と感熱記録層との間に下塗り層を設けることもできる。これにより、記録感度及び記録走行性をより高めることができる。下塗り層は、吸油量が70ml/100g以上、特に80~150ml/100g程度の吸油性顔料及び/または有機中空粒子及び/または熱膨張性粒子、並びに接着剤を主成分とする下塗り層用塗液を支持体上に塗布及び乾燥して形成される。ここで、上記吸油量はJIS K 5101の方法に従い、求められる値である。
【0052】
上記吸油性顔料としては、各種のものが使用できるが、具体例としては、焼成カオリン、無定形シリカ、軽質炭酸カルシウム、タルク等の無機顔料が挙げられる。これら吸油性顔料の一次粒子の平均粒子径は0.01~5μm程度が好ましく、0.02~3μm程度がより好ましい。吸油性顔料の使用量は、広い範囲から選択できるが、一般に下塗り層の全固形量中2~95質量%程度が好ましく、5~90質量%程度がより好ましい。
【0053】
本発明では、必要に応じて支持体の感熱記録層とは反対側の面に顔料とバインダーとを主成分とする裏面層を設けることができる。これにより、保存性を一層高めたり、カール適性及びプリンター走行性を高めたりすることができる。
【0054】
支持体上に各層を形成する方法としては、例えばエアナイフ法、ブレード法、グラビア法、ロールコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、カーテン法、スロットダイ法、スライドダイ法、エクストルージョン法等の既知の塗布方法、または印刷機による方法のいずれを利用してもよい。
【0055】
各層を形成し終えた後、また全ての層を形成し終えた後の任意の過程でスーパーカレンダー等による平滑化処理を施すこともできる。感熱記録体の製造分野における各種の公知技術が必要に応じて付加し得るものである。
【実施例】
【0056】
本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、特に断わらない限り、「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0057】
実施例1
・下塗り層用塗液の調製
焼成カオリン(商品名:アンシレックス93、BASF社製)60部を水80部に分散して得られた分散物に、微小中空粒子(商品名:ローペイクSN-1055、ダウケミカル社製、固形分濃度26.5%)75部、スチレン-ブタジエン系共重合体ラテックス(商品名:L-1571、旭化成ケミカルズ社製、固形分濃度48%)31部と、カルボキシメチルセルロース(商品名:セロゲン7A、第一工業製薬社製)2.5部、同じくカルボキシメチルセルロース(商品名:セロゲンAGガム、第一工業製薬社製)1部、及び水95.5部を混合撹拌して、下塗り層用塗液を得た。
【0058】
・ロイコ染料分散液の調製
3-ジ-(n-ブチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が0.5μmになるまで粉砕してロイコ染料分散液を得た。得られたロイコ染料分散液を、以下、A液ともいう。
【0059】
・顕色剤分散液の調製I
4-ヒドロキシ-4’-n-プロポキシジフェニルスルホン(商品名:トミラックKN、三菱ケミカル社製)40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が1.0μmになるまで粉砕して顕色剤分散液(B液)を得た。得られた顕色剤分散液を、以下、B液ともいう。
【0060】
・顕色剤分散液の調製II
前記一般式(2)で表される化合物(2,2-[4-(4-ヒドロキシフェニルスルホン)フェノキシ]ジエチルエーテルを主成分とする混合物、商品名:D90、日本曹達社製)40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が1.0μmになるまで粉砕して顕色剤分散液を得た。得られた顕色剤分散液を、以下C液ともいう。
【0061】
・顕色剤分散液の調製III
4,4'-ビス[(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン(商品名:UU、旭化成社製)40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が1.0μmになるまで粉砕して顕色剤分散液を得た。得られた顕色剤分散液を、以下、D液ともいう。
【0062】
・増感剤分散液の調製
シュウ酸ジ-p-メチルベンジルエステル(商品名:HS-3520、DIC社製)40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が1.0μmになるまで粉砕して増感剤分散液を得た。得られた増感剤分散液を、以下、E液ともいう。
【0063】
・感熱記録層用塗液の調製
A液29.5部、B液65.0部、C液25.0部、D液20.0部、E液45.5部、完全鹸化ポリビニルアルコール(商品名:PVA110、鹸化度:99モル%、平均重合度:1000、クラレ社製)の10%水溶液12.9部、スチレン-ブタジエン系共重合体ラテックス(商品名:L-1571、旭化成社製、固形分濃度48%)22.5部、軽質炭酸カルシウム(商品名:Brilliant-15、白石工業社製)17.1部、パラフィンワックス(商品名:ハイドリンL-700、中京油脂社製、固形分濃度30%)6.7部、アジピン酸ジヒドラジド(大塚化学社製)4.0部、及び水100部を混合撹拌して感熱記録層用塗液を得た。
【0064】
・保護層用塗液の調製
アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセネックスZ-200、鹸化度:99.4モル%、平均重合度:1000、変性度:5モル%、日本合成化学工業社製)の12%水溶液300部、架橋スチレン粒子(商品名:ケミスノーKSR-3A、綜研化学社製、粒子径3.0μm)3部、カオリン(商品名:HYDRAGLOSS90、KaMin LLC社製)16部、水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH-42M、昭和電工社製)35部、無定形シリカ(商品名:ミズカシルP-527、水澤化学社製)4部、ポリエチレンワックス(商品名:ケミパールW-400、三井化学社製、固形分濃度40%)2.5部、及び水114.5部からなる組成物を混合撹拌して保護層用塗液を得た。
【0065】
・感熱記録体の作製
支持体として坪量60g/m2の上質紙の一方の面に、下塗り層用塗液、感熱記録層用塗液及び保護層用塗液を乾燥後の塗布量がそれぞれ6.0g/m2、4.0g/m2及び2.5g/m2となるように塗布及び乾燥して、下塗り層、感熱記録層及び保護層を順次形成した後、スーパーカレンダーで表面を平滑化して感熱記録体を得た。
【0066】
・剥離層の形成
得られた感熱記録体の保護層上に、無溶剤型紫外線硬化性シリコーン化合物(商品名:UV-271、荒川化学社製)100部、及び光重合開始剤(商品名:CATA211、硼素系カチオン硬化触媒、荒川化学社製)5部を混合撹拌した剥離層用塗液を印刷機で乾燥後の塗布量が0.35g/m2となるよう塗布した後、紫外線を照射して剥離層を形成した。
【0067】
・粘着剤層の形成
更に剥離層を形成した感熱記録体の支持体の他方の面に、粘着剤層用塗液として水系粘着剤のアクリル系エマルジョン粘着剤(商品名:L-145、日本カーバイト工業社製)を乾燥後の塗布量が25g/m2となるようにロールコーター法で塗布及び乾燥して粘着剤層を形成した後、巻取り状の感熱記録ライナーレスラベルを得た。
【0068】
実施例2
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、C液の量を25.0部に代えて45.0部とし、D液の量を20.0部に代えて0部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録ライナーレスラベルを得た。
【0069】
実施例3
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、C液の量を25.0部に代えて0部とし、D液の量を20.0部に代えて45.0部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録ライナーレスラベルを得た。
【0070】
実施例4
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、B液の量を65.0部に代えて32.5部とし、C液の量を25.0部に代えて40.0部とし、D液の量を20.0部に代えて37.5部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録ライナーレスラベルを得た。
【0071】
実施例5
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、B液の量を65.0部に代えて87.5部とし、C液の量を25.0部に代えて10.0部とし、D液の量を20.0部に代えて10.0部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録ライナーレスラベルを得た。
【0072】
実施例6
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、C液の量を25.0部に代えて12.5部とし、D液の量を20.0部に代えて32.5部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録ライナーレスラベルを得た。
【0073】
実施例7
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、B液の量を65.0部に代えて100.0部とし、C液の量を25.0部に代えて5.0部とし、D液の量を20.0部に代えて5.0部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録ライナーレスラベルを得た。
【0074】
実施例8
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、B液の量を65.0部に代えて25.0部とし、C液の量を25.0部に代えて42.5部とし、D液の量を20.0部に代えて42.5部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録ライナーレスラベルを得た。
【0075】
実施例9
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、B液の量を65.0部に代えて25.0部とし、C液の量を25.0部に代えて85.0部とし、D液の量を20.0部に代えて0部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録ライナーレスラベルを得た。
【0076】
実施例10
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、B液の量を65.0部に代えて25.0部とし、C液の量を25.0部に代えて0部とし、D液の量を20.0に代えて85.0部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録ライナーレスラベルを得た。
【0077】
比較例1
実施例1のB液の調製において、4-ヒドロキシ-4’-n-プロポキシジフェニルスルホンに代えて、N-p-トリルスルホニル-N’-3(p-トリルスルホニルオキシ)フェニルウレア(商品名:PF-201、BASF社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録ライナーレスラベルを得た。
【0078】
比較例2
実施例1のB液の調製において、4-ヒドロキシ-4’-n-プロポキシジフェニルスルホンに代えて、3,3'-ジアリル-4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン(商品名:TGSH、日本化薬社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録ライナーレスラベルを得た。
【0079】
かくして得られた感熱記録ライナーレスラベルを40℃で50%RHの条件下で24時間放置後、以下の評価を行った。その結果は、表1に示す通りであった。
【0080】
・記録濃度
感熱記録評価機(商品名:TH-PMD、大倉電機社製)を用い、印加エネルギー:0.24mJ/dotにて各感熱記録ライナーレスラベルを記録し、得られた印字部の反射濃度をマクベス濃度計(RD-914、マクベス社製)のビジュアルモードで測定した。測定値は、大きいほど、印字の濃度が濃いことを示しており良好である。記録濃度については、実用上、1.30以上であることが好ましい。白紙部の濃度についても測定した。
【0081】
・白紙保存性
各感熱記録ライナーレスラベルを、40℃で90%RHの条件下で7日間保管した後、上記の記録濃度の条件で記録し、印字部の反射濃度を前記マクベス濃度計で測定した。測定値は、大きいほど、感熱記録層の劣化(発色能力の低下)がないことを示しており良好である。記録濃度については、1.20以上であることが好ましい。保存率は、白紙保存性の評価で得られた濃度を、上記の記録濃度の評価で得られた記録濃度で除したものである。
【0082】
・耐熱地肌カブリ性
各感熱記録ライナーレスラベルを、90℃の条件で1時間放置し、白紙部の反射濃度を前記マクベス濃度計で測定した。測定値は、0.20以下であれば使用上問題なく、0.10以下であればより好ましい。
【0083】
・耐可塑剤性
ポリカーボネイトパイプ(40mm径)の上にラップフィルム(商品名:ハイラップKMA-W、三井化学社製)を3重に巻きつけ、その上に上記の記録濃度の評価において記録した感熱記録ライナーレスラベルを置き、更にその上にラップフィルムを3重に巻きつけた。これを40℃の条件で24時間放置する処理を行った。その後、印字部の濃度を前記マクベス濃度計のビジュアルモードで測定した。保存率は、処理後の記録濃度を処理前の記録濃度(上記記録濃度の評価で得られた記録濃度)で除したものであり、85%以上であれば使用上問題なく、95%以上であればより好ましい。
【0084】