(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20231011BHJP
【FI】
G06Q10/04
(21)【出願番号】P 2021572150
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2020001837
(87)【国際公開番号】W WO2021149133
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕文
(72)【発明者】
【氏名】冨永 慎
(72)【発明者】
【氏名】篠田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】仙田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】関根 繁
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-224651(JP,A)
【文献】特開2007-025817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定エリアへ入るための複数のゲートそれぞれについて、前記ゲートを利用するための待ち時間の長さを表す待ち時間指標値を算出する指標値算出部と、
複数の前記ゲートの中から、前記待ち時間指標値の関係が第1基準を満たす第1の前記ゲートと第2の前記ゲートを検出し、第1の前記ゲートと対応付けられている端末に、優先的に第2の前記ゲートを利用可能にする優先利用情報を出力させる出力制御部と、を有し、
第1の前記ゲートの前記待ち時間指標値は、第2の前記ゲートの前記待ち時間指標値よりも大き
く、
前記出力制御部が前記端末に、前記優先利用情報を出力させることは、
第1の前記ゲートに対応付けられている前記端末のディスプレイ装置に、前記優先利用情報を読み取るためのコードを表示させることか、
第1の前記ゲートに対応付けられている前記端末のプリンタに、前記優先利用情報が印刷された媒体を出力させることか、又は、
第1の前記ゲートに対応付けられている前記端末としての通信端末に、当該通信端末に接近した携帯端末へ前記優先利用情報を送信させることである制御装置。
【請求項2】
前記待ち時間指標値は、前記ゲートの待ち時間か、又は前記ゲートの待ち行列に含まれる人の数である、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第1基準には、前記待ち時間指標値の差分が閾値以上であることが含まれる、請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第1基準には、さらに、第1の前記ゲートから第2の前記ゲートまでの移動時間が閾値以下であることが含まれる、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
コンピュータによって実行される制御方法であって、
特定エリアへ入るための複数のゲートそれぞれについて、前記ゲートを利用するための待ち時間の長さを表す待ち時間指標値を算出する指標値算出ステップと、
複数の前記ゲートの中から、前記待ち時間指標値の関係が第1基準を満たす第1の前記ゲートと第2の前記ゲートを検出し、第1の前記ゲートと対応付けられている端末に、優先的に第2の前記ゲートを利用可能にする優先利用情報を出力させる出力制御ステップと、を有し、
第1の前記ゲートの前記待ち時間指標値は、第2の前記ゲートの前記待ち時間指標値よりも大き
く、
前記出力制御ステップにおいて、前記端末に、前記優先利用情報を出力させることは、
第1の前記ゲートに対応付けられている前記端末のディスプレイ装置に、前記優先利用情報を読み取るためのコードを表示させることか、
第1の前記ゲートに対応付けられている前記端末のプリンタに、前記優先利用情報が印刷された媒体を出力させることか、又は、
第1の前記ゲートに対応付けられている前記端末としての通信端末に、当該通信端末に接近した携帯端末へ前記優先利用情報を送信させることである、制御方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の制御方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は待ち行列の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
空港のセキュリティエリアなどのように、利用者が順に所定の入り口(ゲート)を通過してその中に入るように制御されているエリアが存在する。このようなエリアでは、ゲートの前に利用者の待ち行列ができており、エリアに入りたい利用者は待ち行列に並んで待つこととなる。
【0003】
利用者の待ち行列を管理する方法を開示する先行技術文献として、特許文献1がある。特許文献1では、アトラクションの待ち行列として、予約をしていない利用者が並ぶ第1の待ち行列と、予約をした利用者が並ぶ第2の待ち行列とが設けられており、第2の待ち行列に並ぶ利用者(すなわち、予約をした利用者)が優先的にアトラクションを利用できるようになっている。また、現在時刻から第1の待ち行列に並んだ場合の待ち時間と、これから予約をした場合にアトラクションを利用可能な時間とがそれぞれ利用者に提示される。このような情報を提示することにより、利用者は、すぐに第1の待ち行列に並んでこのアトラクションを利用するのか、このアトラクションについてはこれから予約をして(このアトラクションを後回しにして)他のアトラクションへ移動するのかを選択できる。このようにすることで、アトラクション間で待ち行列の平準化が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、待ち行列ができるエリア(アトラクション)への入り口が1つであることを前提として、複数のエリア間で待ち行列の平準化を図っている。そのため、1つのエリアに複数の入り口が設けられているケースについては言及していない。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、1つのエリアに設けられている複数の入り口それぞれにできる待ち行列の間でその長さの差異を小さくする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の制御装置は、1)特定エリアへ入るための複数のゲートそれぞれについて、ゲートを利用するための待ち時間の長さを表す待ち時間指標値を算出する指標値算出部と、2)複数のゲートの中から、待ち時間指標値の関係が第1基準を満たす第1のゲートと第2のゲートを検出し、第1のゲートと対応付けられている端末に、優先的に第2のゲートを利用可能にする優先利用情報を出力させる出力制御部と、を有する。第1のゲートの待ち時間指標値は、第2のゲートの待ち時間指標値よりも大きい。
【0008】
本発明の制御方法はコンピュータによって実行される。当該制御方法は、1)特定エリアへ入るための複数のゲートそれぞれについて、ゲートを利用するための待ち時間の長さを表す待ち時間指標値を算出する指標値算出ステップと、2)複数のゲートの中から、待ち時間指標値の関係が第1基準を満たす第1のゲートと第2のゲートを検出し、第1のゲートと対応付けられている端末に、優先的に第2のゲートを利用可能にする優先利用情報を出力させる出力制御ステップと、を有する。第1のゲートの待ち時間指標値は、第2のゲートの待ち時間指標値よりも大きい。
【0009】
本発明のプログラムは、本発明の制御方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1つのエリアに設けられている複数の入り口それぞれにできる待ち行列の間でその長さの差異を小さくする技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1に係る制御装置の動作を概念的に例示する図である。
【
図2】制御装置の機能構成を例示するブロック図である。
【
図3】制御装置を実現するための計算機を例示する図である。
【
図4】実施形態1の制御装置によって実行される処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、特に説明する場合を除き、各ブロック図において、各ブロックは、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位の構成を表している。以下の説明において、特に説明しない限り、各種所定の値(閾値など)は、その値を利用する機能構成部からアクセス可能な記憶装置に予め記憶させておく。
【0013】
[実施形態1]
<概要>
図1は、実施形態1に係る制御装置2000の動作を概念的に例示する図である。ここで、
図1を用いて説明する制御装置2000の動作は、制御装置2000の理解を容易にするための例示であり、制御装置2000の動作を限定するものではない。制御装置2000の動作の詳細やバリエーションについては後述する。
【0014】
制御装置2000は、エリア10において、ゲート20の待ち行列の長さの制御に利用される。ゲート20はエリア10へ入るための入り口である。エリア10には、複数のゲート20が用意されている。エリア10の利用者は、いずれか1つのゲート20を通過して、エリア10の中に入る。
【0015】
例えばエリア10は、空港の中に設けられているセキュリティエリアなどである。ただし、エリア10は、ゲート20が複数存在するエリアであればよく、空港のセキュリティエリアに限定されない。
【0016】
複数のゲート20にはそれぞれ、そのゲート20を通ってエリア10に入る利用者の待ち行列22ができる。この際、待ち行列22の長さ(すなわち、待ち時間の長さ)がゲート20ごとに大きく異なってしまう可能性がある。その結果、長い待ち行列22に並んだ利用者から不満が生じるなどといった問題が生じうる。そのため、待ち行列22の間でその長さを平準化できることが好ましい。
【0017】
そこで制御装置2000は、待ち行列22の長さの差異を小さくするために、以下の処理を行う。制御装置2000は、各ゲート20について、そのゲート20の待ち行列22における待ち時間の長さを表す指標値(以下、待ち時間指標値)を算出する。例えば待ち行列指標値は、待ち時間の長さ(待ち行列22の最後尾に加わってからゲート20を利用するまでに要する時間の長さ)の予測値を示す。その他にも例えば、待ち行列指標値は、待ち行列22に含まれる利用者の数を表してもよい。
【0018】
制御装置2000は、待ち行列指標値の関係が所定の第1基準を満たす第1のゲート20と第2のゲート20を検出する。例えば第1基準は、「待ち行列指標値の差分が所定値以上である」という基準である。待ち行列指標値が大きい方のゲート20を第1のゲート20と呼び、待ち行列指標値が小さい方のゲート20を第2のゲート20と呼ぶ。
図1には、ゲート20-1及びゲート20-2がそれぞれ、第1のゲート20及び第2のゲート20として検出されたケースが例示されている。
【0019】
第1のゲート20の方が第2のゲート20よりも待ち行列指標値が大きいため、第1のゲート20を利用しようとしている人の少なくとも一部を、第1のゲート20ではなく第2のゲート20を利用するように誘導できれば、第1のゲート20と第2のゲート20との間で、待ち行列の長さの違いを小さくすることができる。そこで制御装置2000は、第1のゲート20と対応付けられている端末30(
図1では端末30-1)に、優先的に第2のゲート20が利用可能となる情報(以下、優先利用情報)を出力させる。ゲート20には、そのゲート20の付近に設けられている端末30が予め対応付けられている。優先利用情報を取得した利用者は、第2のゲート20でこの優先利用情報を利用することにより、第2のゲート20の待ち行列22の最後尾に並んで待つ場合よりも早く、第2のゲート20を利用することができる。このようにすることで、第1のゲート20を利用しようとした人に対し、第1のゲート20ではなく第2のゲート20を利用するインセンティブを与える。その結果、第1のゲート20を利用しようとした人の少なくとも一部を、第2のゲート20に誘導できると考えられるため、第1のゲート20の待ち行列と第2のゲート20の待ち行列との間で、待ち行列の長さの差を小さくすることができる。
【0020】
以下、制御装置2000についてより詳細に説明する。
【0021】
<機能構成の例>
図2は、制御装置2000の機能構成を例示するブロック図である。制御装置2000は、指標値算出部2020及び出力部2040を有する。指標値算出部2020は、エリア10へ入るための複数のゲート20それぞれについて、そのゲート20における待ち行列22の待ち時間の長さを表す待ち行列指標値を算出する。出力部2040は、待ち時間指標値の関係が第1基準を満たす第1のゲート20と第2のゲート20を検出する。さらに、出力部2040は、第1のゲート20と対応付けられている端末30に、優先的に第2のゲート20を利用可能にする情報である優先利用情報を出力させる。
【0022】
<制御装置2000のハードウエア構成の例>
制御装置2000の各機能構成部は、各機能構成部を実現するハードウエア(例:ハードワイヤードされた電子回路など)で実現されてもよいし、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせ(例:電子回路とそれを制御するプログラムの組み合わせなど)で実現されてもよい。以下、制御装置2000の各機能構成部がハードウエアとソフトウエアとの組み合わせで実現される場合について、さらに説明する。
【0023】
図3は、制御装置2000を実現するための計算機1000を例示する図である。計算機1000は、任意の計算機である。例えば計算機1000は、PC(Personal Computer)やサーバマシンなどといった、据え置き型の計算機である。その他にも例えば、計算機1000は、スマートフォンやタブレット端末などといった可搬型の計算機である。
【0024】
計算機1000は、制御装置2000を実現するために設計された専用の計算機であってもよいし、汎用の計算機であってもよい。後者の場合、例えば、計算機1000に対して所定のアプリケーションをインストールすることにより、計算機1000で、制御装置2000の各機能が実現される。上記アプリケーションは、制御装置2000の機能構成部を実現するためのプログラムで構成される。
【0025】
計算機1000は、バス1020、プロセッサ1040、メモリ1060、ストレージデバイス1080、入出力インタフェース1100、及びネットワークインタフェース1120を有する。バス1020は、プロセッサ1040、メモリ1060、ストレージデバイス1080、入出力インタフェース1100、及びネットワークインタフェース1120が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ1040などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0026】
プロセッサ1040は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの種々のプロセッサである。メモリ1060は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現される主記憶装置である。ストレージデバイス1080は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、又は ROM(Read Only Memory)などを用いて実現される補助記憶装置である。
【0027】
入出力インタフェース1100は、計算機1000と入出力デバイスとを接続するためのインタフェースである。例えば入出力インタフェース1100には、キーボードなどの入力装置や、ディスプレイ装置などの出力装置が接続される。
【0028】
ネットワークインタフェース1120は、計算機1000を通信網に接続するためのインタフェースである。この通信網は、例えば LAN(Local Area Network)や WAN(Wide Area Network)である。例えば計算機1000は、ネットワークインタフェース1120を介して、各端末30と接続されている。
【0029】
ストレージデバイス1080は、制御装置2000の各機能構成部を実現するプログラム(前述したアプリケーションを実現するプログラム)を記憶している。プロセッサ1040は、このプログラムをメモリ1060に読み出して実行することで、制御装置2000の各機能構成部を実現する。
【0030】
<処理の流れ>
図4は、実施形態1の制御装置2000によって実行される処理の流れを例示するフローチャートである。指標値算出部2020は、各ゲート20について待ち時間指標値を算出する(S102)。出力部2040は、複数のゲート20の中から、待ち時間指標値の関係が第1基準を満たす第1のゲート20と第2のゲート20を検出する(S104)。出力部2040は、第1のゲート20と対応付けられている端末30に、優先的に第2のゲート20を利用可能にする優先利用情報を出力させる(S106)。
【0031】
<待ち時間指標値の算出:S102>
指標値算出部2020は、各ゲート20について、そのゲート20の待ち行列22についての待ち時間指標値を算出する(S102)。例えば待ち行列22の待ち時間指標値は、待ち行列22の待ち時間の予測値である。ここで、待ち行列の待ち時間の予測値を算出する具体的な技術には、既存の技術を利用することができる。例えば、過去の実績データからゲート20のスループット(単位時間あたりにゲート20を通過する人の数)を予め算出しておく。そして、現在待ち行列22に含まれる利用者の人数と、ゲート20のスループットとに基づいて、現在待ち行列22に含まれる利用者の全てがゲート20を通過するまでにかかる時間を算出し、この時間を待ち行列22の待ち時間の予測値とする。
【0032】
その他にも例えば、待ち行列22の待ち時間指標値は、待ち行列22に含まれる利用者の人数である。待ち行列22に含まれる利用者の人数は、実測値であってもよいし、予測値であってもよい。ここで、待ち行列に含まれる人の数の実測値や予測値を算出する技術には、既存の技術を利用することができる。実測値については、例えば、待ち行列22をカメラで撮像することで生成された画像から、待ち行列22に含まれる人をそれぞれ検出し、検出された人の数をカウントすることによって算出することができる。予測値については、例えば、待ち行列22を撮像することで得られた画像を解析することで待ち行列22の先頭から最後尾までの距離を算出し、その距離に基づいて(例えば、予め定めておいた単位距離当たりの人数に、算出した距離を掛けることにより)算出することができる。
【0033】
待ち時間指標値の算出に利用する情報を指標値算出部2020が取得する方法は任意である。待ち行列22が撮像された画像を利用する場合、例えば指標値算出部2020は、待ち行列22を撮像したカメラから送信される画像を受信したり、そのカメラにアクセスすることでそのカメラ内の記憶装置に格納されている画像を取得したりする。また、カメラが画像を外部の記憶装置に格納する場合、指標値算出部2020は、当該外部の記憶装置にアクセスして、画像を取得する。
【0034】
<第1のゲート20と第2のゲート20の検出:S104>
出力部2040は、複数のゲート20の中から、待ち時間指標値の関係が第1基準を満たす第1のゲート20と第2のゲート20を検出する(S104)。例えば出力部2040は、複数のゲート20から抽出しうる任意の2つのゲート20のペアそれぞれについて、当該ペアを構成する2つのゲート20それぞれについて算出された待ち時間指標値を比較することで、これらの関係が第1基準を満たすか否かを判定する。これにより、第1基準を満たすペアが検出される。検出されたペアを構成する2つのゲート20のうち、待ち時間指標値が大きい方が第1のゲート20として扱われ、待ち時間指標値が小さい方が第2のゲート20として扱われる。なお、複数のゲート20の中に、既に第1のゲート20又は第2のゲート20として扱われているものがある場合(制御装置2000による前回の処理で既に第1のゲート20や第2のゲート20として検出されたものがある場合)、それらは検出対象から除外することが好適である。
【0035】
第1基準は、例えば前述したように、「待ち時間指標値の差分が第1閾値以上であること」を含む。このような第1基準を利用することにより、待ち時間の大きさにある程度以上の差異がある2つのゲート20を対象として、待ち行列の長さの平準化が行われる。よって、制御装置2000による待ち行列の長さの平準化の効果を高くすることができる。
【0036】
さらに、第1基準には、「ゲート20間の移動に要する時間が第2閾値以下であること」を含んでもよい。こうすることで、移動に要する利用者の負担が大きくなることを防いだり、「第1のゲート20から第2のゲート20への移動に長い時間を要したため、第1のゲート20に並んで待っていた方が早くエリア10へ入ることができた」という、利用者にとって好ましくない結果となってしまったりすることを防ぐことができる。
【0037】
第2閾値は、予め固定で定められていてもよいし、対比する2つの待ち時間指標値の差分に基づいて動的に決定されてもよい。後者の場合、例えば、対比する2つの待ち時間指標値の差分を、第2閾値として設定する。
【0038】
ここで、待ち時間指標値が第1基準を満たすゲート20を検出する方法は、前述したように、任意の2つのゲート20のペアそれぞれについて待ち時間指標値を対比する方法に限定されない。例えば出力部2040は、複数のゲート20のうち、待ち時間指標値が最大のものから順に、第1のゲート20の候補として選んでいく。さらに出力部2040は、第1のゲート20の候補として選ばれているゲート20との間で第1基準を満たすゲート20を、待ち時間指標値が最小のものから順に探索していく。探索の結果、第1のゲート20の候補として選ばれているゲート20との間で第1基準を満たすゲート20が検出されたら、出力部2040は、「第1のゲート20の候補として選ばれているゲート20、検出されたゲート20」のペアを、第1のゲート20と第2のゲート20のペアとして扱う。第1のゲート20と第2のゲート20のペアを2つ以上検出する場合、出力部2040は、検出されたゲート20を除いた残りのゲート20について、同様の処理を繰り返し行う。
【0039】
ここで、或るゲート20との間で第1基準を満たす他のゲート20が複数存在することが考えられる。例えば、待ち時間指標値が最大であるゲート20との間で、「待ち時間指標値の差分が第1閾値以上であること」という第1基準を満たすゲート20が複数検出される(待ち時間指標値が最小であるゲート20、待ち時間指標値が2番目に小さいゲート20、・・・)ことが考えられる。言い換えれば、この場合、第1のゲート20に対し、第2のゲート20の候補が複数存在することとなる。このような場合、指標値算出部2020は、所定のルールに基づいて、第2のゲート20の複数の候補の中から、第2のゲート20として扱うゲート20を1つ選択する。
【0040】
所定のルールとしては、様々なものを採用できる。例えば所定のルールとして、「待ち時間指標値の差分が最大である」という条件を採用する。この場合、第2のゲート20の複数の候補のうち、待ち時間指標値が最小であるゲート20が、第2のゲート20として選択される。その他にも例えば、所定のルールとして、「ゲート20間の移動時間が最小である」という条件を採用する。その他にも例えば、所定のルールとして、「ゲート20間の移動時間と、利用したゲート20から目的地までの移動時間との和が最小である」という条件を採用する。例えばエリア10が空港のセキュリティエリアである場合、目的地は搭乗ゲートとすることができる。
【0041】
その他にも例えば、2つのゲート20に関する情報(位置や待ち時間指標値など)が入力されたことに応じ、それら2つを第1のゲート20と第2のゲート20のペアとして扱うことの推奨度を推定する推定モデルを定めておいてもよい。この場合、「推定モデルによって出力される推奨度が最大である」という所定のルールを用いることができる。なお、推定モデルは、教師データを用いて予め学習させておく。
【0042】
なお、第2のゲート20に対し、第1のゲート20の候補が複数存在することも考えられる。この場合、出力部2040は、第1のゲート20として扱うゲート20を1つ選択する。その方法は、前述した所定のルールを利用する方法と同様である。
【0043】
<優先利用情報について>
優先利用情報は、特定のゲート20(第2のゲート20)を優先的に利用できるようにする情報である。例えば、優先利用情報が印字された紙媒体を、対象のゲート20で係員に見せることにより、そのゲート20の待ち行列22に並ぶことなく、そのゲート20を利用できるようにするといったことが考えられる。その他の利用方法については後述する。
【0044】
例えば優先利用情報には、利用可能なゲート20(第2のゲート20)の識別情報が含まれる。ゲート20の識別情報は、例えば、ゲート番号である。その他にも例えば、優先利用情報には、発行時刻、発行元のゲート(第1のゲート20)の識別情報、及び有効期限などが含まれていてもよい。優先利用情報に有効期限が含まれる場合、有効期限を過ぎた優先利用情報は利用できないようにする。
【0045】
<優先利用情報の出力:S106>
出力部2040が優先利用情報を出力する方法は様々である。例えば出力部2040は、優先利用情報を符号化したコードを、第1のゲート20と対応付けられている端末30のディスプレイ装置32に表示させる。利用者は、自身の携帯端末等でこのコードを読み取ることにより、優先利用情報を取得する。
【0046】
その他にも例えば、出力部2040は、第1のゲート20と対応付けられている端末30のプリンタ34に、優先利用情報を可搬媒体(紙のカードなど)に印刷させることにより、その可搬媒体をプリンタ34から出力させる。利用者は、この可搬媒体を取得することにより、優先利用情報を取得する。
【0047】
その他にも例えば、出力部2040は、第1のゲート20と対応付けられている端末30と、利用者の携帯端末との間で無線通信を行わせることにより、その端末30から利用者の携帯端末へ優先利用情報を送信してもよい。同様に、端末30と、利用者が持つ IC チップ(例えば、カード媒体に埋め込まれている IC チップ)との間で無線通信を行わせることにより、その IC チップの記憶装置に優先利用情報が格納されるようにしてもよい。
【0048】
ゲート20と端末30との対応付けを示す情報は、予め出力部2040からアクセス可能な記憶装置に格納しておく。出力部2040は、この情報を利用して、第1のゲート20と予め対応付けられている端末30を特定し、その端末30に優先利用情報を出力させる。
【0049】
<優先利用情報が出力される期間>
前述した処理によって第1のゲート20と第2のゲート20のペアが検出された場合、第1のゲート20と対応付けられている端末30は、第2基準が満たされる間、優先利用情報を出力し続けるか、又は、優先利用情報の出力が可能な状態(出力を待機する状態)を継続するようにする。優先利用情報を出力し続ける状態とは、例えば、優先利用情報を表すコードがディスプレイ装置32に表示され続けている状態である。また、優先利用情報の出力が可能な状態とは、例えば、「端末30に設けられているボタンが押されたら、優先利用情報が印字された可搬媒体を出力する状態」や、「利用者の携帯端末が端末30に接近したら、端末30からその携帯端末に対して優先利用情報を送信する状態」などである。
【0050】
第2基準には、例えば、「待ち時間指標値の差分が第3閾値未満である」というものを採用できる。第3閾値は、前述した第1閾値と同じであってもよいし、異なっていてもよい。前者の場合、第2基準を満たすことは、第1基準を満たさないことと同義となる。すなわち、待ち時間指標値の関係が第1基準を満たす2つのゲート20が検出されたら、それらについて、第1基準が満たされているか否かが定期的に判定され、第1基準が満たされなくなったら、優先利用情報が出力されなくなる。
【0051】
<優先利用情報の利用方法>
優先利用情報を取得した利用者は、その優先利用情報を利用して、第2のゲート20を利用する。例えば利用者は、第2のゲート20付近にいる係員等に優先利用情報を見せることで、第2のゲート20を優先的に利用できる。その他にも例えば、第2のゲート20の付近に優先利用情報を読み取る端末(以下、読取り端末)を設けておき、利用者がこの読取り端末に優先利用情報を読み取らせることで、第2のゲート20を優先的に利用できるようにしてもよい。より具体的には、ゲート20に、優先利用情報を読取り端末に読み取らせることで開く仕切りなどを設けておく。利用者は、優先利用情報を読取り端末に読み取らせることで仕切りを開き、ゲート20を通過する。
【0052】
なお、優先利用情報を取得した利用者は、待ち行列22とは別の専用の列に並ぶようにしてもよいし、待ち行列22に並ぶようにしてもよい。後者の場合、例えば利用者は、待ち行列22に並ぶ際、係員に優先利用情報を提示する。それに応じ、係員は、待ち行列22の所定の位置へ利用者を案内する。
【0053】
<第2のゲート20を利用者に把握させる方法>
優先利用情報を取得した利用者は、優先利用情報を利用して利用可能なゲート20(すなわち、第2のゲート20)を容易に把握できることが好適である。例えば、優先利用情報が印字された可搬媒体に、第2のゲート20の識別情報が表示されるようにする。同様に、優先利用情報を取得した利用者の携帯端末のディスプレイ装置には、第2のゲート20の識別情報が表示されるようにする。また、優先利用情報を出力した端末30にディスプレイ装置32が設けられている場合、そのディスプレイ装置32に、第2のゲート20の識別情報が表示されるようにする。
【0054】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
1. 特定エリアへ入るための複数のゲートそれぞれについて、前記ゲートを利用するための待ち時間の長さを表す待ち時間指標値を算出する指標値算出部と、
複数の前記ゲートの中から、前記待ち時間指標値の関係が第1基準を満たす第1の前記ゲートと第2の前記ゲートを検出し、第1の前記ゲートと対応付けられている端末に、優先的に第2の前記ゲートを利用可能にする優先利用情報を出力させる出力制御部と、を有し、
第1の前記ゲートの前記待ち時間指標値は、第2の前記ゲートの前記待ち時間指標値よりも大きい、制御装置。
2. 前記待ち時間指標値は、前記ゲートの待ち時間か、又は前記ゲートの待ち行列に含まれる人の数である、1.に記載の制御装置。
3. 前記第1基準には、前記待ち時間指標値の差分が閾値以上であることが含まれる、1.又は2.に記載の制御装置。
4. 前記第1基準には、さらに、第1の前記ゲートから第2の前記ゲートまでの移動時間が閾値以下であることが含まれる、3.に記載の制御装置。
5. 前記出力制御部は、
第1の前記ゲートに対応付けられているディスプレイ装置に、前記優先利用情報を読み取るためのコードを表示させるか、
第1の前記ゲートに対応付けられているプリンタに、前記優先利用情報が印刷された媒体を出力させるか、又は、
第1の前記ゲートに対応付けられている通信端末に、利用者の携帯端末へ前記優先利用情報を送信させる、1.から4いずれか一つに記載の制御装置。
6. コンピュータによって実行される制御方法であって、
特定エリアへ入るための複数のゲートそれぞれについて、前記ゲートを利用するための待ち時間の長さを表す待ち時間指標値を算出する指標値算出ステップと、
複数の前記ゲートの中から、前記待ち時間指標値の関係が第1基準を満たす第1の前記ゲートと第2の前記ゲートを検出し、第1の前記ゲートと対応付けられている端末に、優先的に第2の前記ゲートを利用可能にする優先利用情報を出力させる出力制御ステップと、を有し、
第1の前記ゲートの前記待ち時間指標値は、第2の前記ゲートの前記待ち時間指標値よりも大きい、制御方法。
7. 前記待ち時間指標値は、前記ゲートの待ち時間か、又は前記ゲートの待ち行列に含まれる人の数である、6.に記載の制御方法。
8. 前記第1基準には、前記待ち時間指標値の差分が閾値以上であることが含まれる、6.又は7.に記載の制御方法。
9. 前記第1基準には、さらに、第1の前記ゲートから第2の前記ゲートまでの移動時間が閾値以下であることが含まれる、8.に記載の制御方法。
10. 前記出力制御ステップにおいて、
第1の前記ゲートに対応付けられているディスプレイ装置に、前記優先利用情報を読み取るためのコードを表示させるか、
第1の前記ゲートに対応付けられているプリンタに、前記優先利用情報が印刷された媒体を出力させるか、又は、
第1の前記ゲートに対応付けられている通信端末に、利用者の携帯端末へ前記優先利用情報を送信させる、6.から9いずれか一つに記載の制御方法。
11. 6.から10いずれか一つに記載の制御方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0055】
10 エリア
20 ゲート
22 待ち行列
30 端末
32 ディスプレイ装置
34 プリンタ
1000 計算機
1020 バス
1040 プロセッサ
1060 メモリ
1080 ストレージデバイス
1100 入出力インタフェース
1120 ネットワークインタフェース
2000 制御装置
2020 指標値算出部
2040 出力部