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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】濾過システム及び濾過処理設備
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/00 20060101AFI20231011BHJP
   B01D 63/08 20060101ALI20231011BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20231011BHJP
【FI】
B01D63/00
B01D63/08
C02F1/44 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022046658
(22)【出願日】2022-03-23
(65)【公開番号】P2023140690
(43)【公開日】2023-10-05
【審査請求日】2023-03-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】野口 寛
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 輝武
(72)【発明者】
【氏名】中川 彰利
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-063382(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0209972(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0198278(US,A1)
【文献】特開2012-148229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22、
61/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延びて複数の濾過膜ユニットの長手方向における一方側の端部のそれぞれを保持する第1保持部と、前記第1の方向に延びてそれら複数の濾過膜ユニットの長手方向における他方側の端部のそれぞれを保持する第2保持部とを有し、前記第1保持部および前記第2保持部により、それら複数の濾過膜ユニットをそれぞれの濾過膜の厚み方向に所定間隔をあけて並べて保持する濾過システムであって、
前記濾過システムは、前記第1の方向および前記濾過膜ユニットの長手方向と直交する第2の方向に複数積層して配置可能であり、
前記第1保持部は、前記第1の方向に延びるとともに、各々の前記濾過膜ユニットの一方側の端部を覆うように配置され、前記濾過膜ユニットの濾過液を集水する集水カセットを有し、
前記第1保持部の前記第1の方向および前記第2の方向のなす平面上で前記集水カセットからずれた位置に、前記濾過膜ユニットの長手方向に沿って前記第1保持部を貫通する貫通開口が形成されている
濾過システム。
【請求項2】
請求項に記載の濾過システムであって、
いに隣り合う2つの前記濾過膜ユニットにおいて、互いの長手方向における一方側の端部同士の間隙が、互いの長手方向における中央部同士の間隙よりも小さい
過システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の濾過システムであって、
前記第2保持部は、前記第1の方向に延びるとともに、各々の前記濾過膜ユニットの一方側の端部を覆うように配置されたブラインドカセットを有し、
前記第2保持部の前記第1の方向および前記第2の方向のなす平面上で前記ブラインドカセットからずれた位置に、前記濾過膜ユニットの長手方向に沿って前記第2保持部を貫通する貫通開口が形成されている
濾過システム。
【請求項4】
請求項3に記載の濾過システムであって、
いに隣り合う2つの前記濾過膜ユニットにおいて、互いの長手方向における他方側の端部同士の間隙が、互いの長手方向における中央部同士の間隙よりも小さい
過システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の濾過システムを複数備え、
複数の前記濾過システムが前記第2の方向に積層して配置されている
濾過処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の濾過膜ユニットを保持する保持体と、複数の濾過膜ユニット及び保持体を備える濾過システムと、複数の濾過システムを備える濾過処理設備とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の濾過膜ユニットの長手方向における一方側の端部のそれぞれを保持する第1保持部と、それら複数の濾過膜ユニットの長手方向における他方側の端部のそれぞれを保持する第2保持部とを備える保持体が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の濾過処理設備としての膜分離装置は、複数の膜モジュールを備える。濾過システムとしての膜モジュールは、2つの集水ケースと、2つのカバー部材とからなる保持体を備える。この保持体は、2つの集水ケースを互いに対向させ、且つ2つのカバー部材を互いに対向させる態様で枠状に組まれた構造になっている。保持体の枠の内部には、濾過膜ユニットとして膜エレメントが複数配設される。保持体の2つの集水ケースのうち、一方は、保持体の枠内に配設された複数の膜エレメントの長手方向における一方側の端部のそれぞれを保持する(第1保持部として機能する)。他方の集水ケースは、保持体の枠内に配置された複数の膜エレメントの長手方向における他方側の端部のそれぞれを保持する(第2保持部として機能する)。このようにして保持体の枠内に保持される複数の膜エレメントのそれぞれは、互いに膜の厚み方向に沿って並ぶ態様で配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-148230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の膜分離装置は、複数の膜モジュールを多段に積み重ねた状態で使用する。このような膜分離装置においては、装置内の複数の膜エレメントが、多段に積み重なった複数の膜モジュールにおけるそれぞれの枠内に隠れてしまう。このため、膜エレメントの目視点検をすることができず、保守点検に手間を要してしまうという課題がある
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、膜エレメントなどの濾過膜ユニットの保守点検の手間を軽減することができる濾過システム及び濾過処理設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の一態様は、第1の方向に延びて複数の濾過膜ユニットの長手方向における一方側の端部のそれぞれを保持する第1保持部と、第1の方向に延びてそれら複数の濾過膜ユニットの長手方向における他方側の端部のそれぞれを保持する第2保持部とを有し、第1保持部および第2保持部により、それら複数の濾過膜ユニットをそれぞれの濾過膜の厚み方向に所定間隔をあけて並べて保持する濾過システムである。濾過システムは、第1の方向および濾過膜ユニットの長手方向と直交する第2の方向に複数積層して配置可能である。第1保持部は、第1の方向に延びるとともに、各々の濾過膜ユニットの一方側の端部を覆うように配置され、前記濾過膜ユニットの濾過液を集水する集水カセットを有する。第1保持部の第1の方向および第2の方向のなす平面上で集水カセットからずれた位置に、濾過膜ユニットの長手方向に沿って第1保持部を貫通する貫通開口が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、濾過膜ユニットの保守点検の手間を軽減することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る濾過システムを備える水処理施設の概略構成を示す図である。
図2】実施形態に係る濾過膜ユニットを示す斜視図である。
図3】同濾過膜ユニットの吸引側ソケットの縦断面を示す断面図である。
図4】同濾過膜ユニットを側方から示す側面図である。
図5】実施形態に係る濾過システムを示す斜視図である。
図6】同濾過システムを示す分解斜視図である。
図7】実施形態に係る保持体の集水カセットを示す斜視図である。
図8】同集水カセットを第2長尺側板の側から示す図である。
図9】ブラインドカセットを保持体の枠外から対向方向に沿って眺めた図である。
図10】実施形態に係る濾過処理設備において互いに上下に積み重ねられる3つの濾過システムを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各図を用いて、本発明を適用した濾過処理設備の一実施形態について説明する。実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、各図において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、各図に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0011】
図1は、実施形態に係る濾過処理設備を備える水処理施設の概略構成を示す図である。この水処理施設は、原水タンク1、濾過処理水槽2、処理水タンク3、制御装置4、原水ポンプ5、第1水位センサー6、原水移送管7、処理水移送管8、吸引ポンプ9、第2水位センサー11、第3水位センサー12等を備える。また、水処理施設は、ブロワー13、空気供給管14、架台15、濾過処理設備20、気泡発生装置90等を備える。
【0012】
原水タンク1内には、液体としての原水(処理前水)Wが貯留される。原水タンク1に設置された超音波センサー等からなる第1水位センサーは、原水タンク1内の原水Wの水位(水面の高さ)を検知して、検知結果を水位信号として制御装置4に送信する。原水タンク1内に設置された原水ポンプ5は、原水タンク1内の原水Wを吸引、吐出して、原水移送管7を通じて濾過処理水槽2に送る。原水ポンプ5として、水中ポンプからなるものを例示したが、陸上ポンプからなるものを用いてもよい。
【0013】
濾過処理水槽2は、鉄筋コンクリート製の水槽である。濾過処理水槽2内には、濾過処理設備20と、気泡発生装置90とが設置される。濾過処理設備20及び気泡発生装置90は、架台15によって支持される。架台15は、気泡発生装置90を濾過処理設備20の直下に位置させる態様で支持する。濾過処理設備20及び気泡発生装置90のそれぞれは、濾過処理水槽2内の原水Wに浸かっている。
【0014】
ブロワー13は、吸引口から吸引した気体としての空気を、吐出口を通じて空気供給管14に吐出する。空気供給管14に吐出された空気は、気泡発生装置90に供給される。気泡発生装置90は、空気供給管14から供給される空気を、気泡として上方に向けて放出する。放出された気泡は、濾過処理設備20に搭載される複数の濾過膜に接触しながら原水W中を上昇する。このとき、気泡は、濾過膜の表面に付着している固形物を濾過膜の表面から離脱させる。この離脱により、濾過膜の目詰まりが抑えられる。
【0015】
濾過処理水槽2に設置された第3水位センサー12は、濾過処理水槽2内の原水Wの水位を検知して、検知結果を水位信号として制御装置4に送信する。
【0016】
吸引ポンプ9は、処理水移送管8と、濾過処理設備20内に搭載された後述の複数の濾過膜とを介して、濾過処理水槽2内の原水Wを吸引する。吸引された原水Wは、濾過膜によって濾過されて処理済水Wとなった後、処理水移送管8を通じて処理水タンク3に送られる。処理水タンク3に設定された第2水位センサー11は、処理水タンク3内の処理済水W2の水位を検知して、検知結果を水位信号として制御装置4に送信する。
【0017】
なお、吸引ポンプ9の代わりに、水頭圧を利用して吸引力を発生させるポンプを使用してもよい。吸引の手段は、特に限定されない。
【0018】
処理水タンク3の水位が上限に達しておらず、且つ所定の運転実行条件が成立している場合、制御装置4は、吸引ポンプ9とブロワー13とを作動させて、原水Wの濾過処理を実行する。但し、運転実行条件が成立していても、原水タンク1内の原水Wの水位が下限以下になっている場合、及び濾過処理水槽2内の原水Wの水位が下限以下になっている場合には、制御装置4は、濾過処理の実行を中止する。
【0019】
濾過処理設備20は、実施形態に係る濾過システム(後に詳述される)を複数備える。それぞれの濾過システムは、実施形態に係る濾過膜ユニット(後に詳述される)を複数備える。
【0020】
図2は、実施形態に係る濾過膜ユニット21を示す斜視図である。濾過膜ユニット21は、平板状の濾過膜22を備える。濾過膜22の材質としては、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVC(ポリ塩化ビニル)等の有機材が挙げられる。また、濾過膜22の材質として、アルミナ、炭化ケイ素などを主成分とするセラミックを用いてもよい。実施形態に係る濾過膜ユニット21の濾過膜22は、セラミック膜からなる。
【0021】
上述の吸引ポンプ(図1の9)が作動すると、濾過膜22に対して濾過膜22の長手方向に沿った吸引力が付与される。実施形態に係る濾過システムにおいては、濾過膜22に対して濾過膜22の長手方向の一方側(後述の図4における左右方向の右側)から吸引力が付与される。即ち、濾過膜22の長手方向の一方側は、吸引力が付与される吸引側である。濾過膜22の長手方向の他方側(後述の図4における左右方向の左側)は、濾過膜22に付与される吸引力を遮蔽する遮蔽側である。
【0022】
濾過膜ユニット21は、上述の濾過膜22に加えて、吸引側ソケット23と、遮蔽側ソケット24とを備える。本発明におけるソケットとしての吸引側ソケット23は、濾過膜22を長手方向の一方側(吸引側)で保持するために濾過膜22おける長手方向の一方側の端部に固定される。遮蔽側ソケット24は、濾過膜22を長手方向の他方側(遮蔽側)で保持するために濾過膜22における長手方向の他方側の端部に固定される。吸引側ソケット23及び遮蔽側ソケット24のそれぞれは、濾過膜22に固定された状態で濾過膜22の短手方向(実施形態では重力方向に沿った上下方向)に延在する。
【0023】
図3は、吸引側ソケット23の縦断面を示す断面図である。吸引側ソケット23は、ソケット本体23aを備える。ソケット本体23aは、濾過膜(図2の22)の長手方向の一方側の端部を挿入される凹部23dと、凹部23dに連通しつつソケット本体23aの延在方向に延びる流路23eとを備える。
【0024】
ソケット本体23aは、凹部23dの内周面により、濾過膜(図2の22)の長手方向の一方側の端部におけるおもて面、裏面、及び2つの側面から構成される周面を全周に渡って覆う。凹部23dの内周面が、濾過膜(22)の長手方向の一方側の端部における周面を全域に渡って覆うことで、凹部23d内における前記端部のガタツキが防止される。
【0025】
吸引側ソケット23は、上述のソケット本体23aに加えて、第1突出体23b及び第2突出体23cを備える。第1突出体23b及び第2突出体23cのそれぞれは、濾過膜(図2の22)の長手方向(図3における左右方向)においてソケット本体23aよりも外側(図3における右側)に位置しつつ、ソケット本体23aの延在方向(図3における上下方向)に沿って並ぶ。
【0026】
第1突出体23b及び第2突出体23cのそれぞれは、濾過膜(22)の長手方向(図3における左右方向)において、ソケット本体23aにおける一方側(図3における右側)の端面から一方側に向けて突出する。
【0027】
かかる構成において、第1突出体23b及び第2突出体23cのそれぞれが、不図示の保持体に設けられた挿入孔に挿入されると、濾過膜ユニット(21)の長手方向の一端部が、保持体に対して位置決めされるとともに、保持体に保持される。第1突出体23bの外周面の面積は、ソケット本体23aの外周面の面積に比べて非常に小さな値になる。また、第2突出体23cの外周面の面積も、ソケット本体23aの外周面の面積に比べて非常に小さな値になる。このため、第1突出体23bの外周と前述の挿入孔の内周とのクリアランス、及び第2突出体23cの外周と前述の挿入孔の内周とのクリアランスを、それぞれほぼ無くしても、それらの突出体(23b、23c)のそれぞれを、個別の挿入孔に容易に挿入することが可能である。このようにクリアランスが設定されると、濾過膜ユニット(21)の長手方向における一方側の端部のガタツキが防止される。よって、実施形態に係る濾過膜ユニット(21)によれば、濾過膜ユニットの長手方向における一方側の端部のガタツキに起因する濾過膜(22)の破損の発生を抑えることができる。
【0028】
第1突出体23b及び第2突出体23cのそれぞれの構造は、中空(23b-1、23c-1)を有する管状構造である。第1突出体23b及び第2突出体23cにおけるそれぞれの中空(23b-1、23c-1)は、ソケット本体23aの流路23eに連通する。また、第1突出体23b及び第2突出体23cにおけるそれぞれの中空(23b-1、23c-1)は、突出体(23b、23c)の延在方向(図3の左右方向)の両端のそれぞれが開口している。第1突出体23bの中空23b-1における2つの開口のうち、第1突出体23bの延在方向(図3の左右方向)の一方側(図3における右側)の開口は、流路23e内の処理済水(図1のW)を排出するための排出口としての第1出口23b-2である。また、第2突出体23cの中空23c-1における2つの開口のうち、第2突出体23cの延在方向(図3の左右方向)の一方側(図3における右側)の開口は、流路23e内の処理済水を排出するための排出口としての第2出口23c-2である。
【0029】
第1突出体23bの中空23b-1は、自己の2つの開口のうち、第1突出体23bの延在方向(図3の左右方向)の他方側(図3における左側)の開口23b-3を通じて流路23eと連通する。また、第2突出体23cの中空23c-1は、自己の2つの開口のうち、第2突出体23cの延在方向(図3の左右方向)の他方側(図3における左側)の開口23c-3を通じて流路23eと連通する。
【0030】
吸引ポンプ(図1の9)が作動すると、第1突出体23bの中空23b-1、及び第2突出体23cの中空23c-1のそれぞれに負圧による吸引力が発生する。この吸引力により、ソケット本体23aの流路23e内の処理済水が、第1突出体23bの中空23b-1、及び第2突出体23cの中空23c-1の内部に向けて吸引される。
【0031】
図4は、濾過膜ユニット21を側方から示す側面図である。濾過膜ユニット21の遮蔽側ソケット24は、ソケット本体24aと、2つの突出体24bとを備える。ソケット本体24aは、濾過膜22の長手方向(図4の左右方向)の他方側(図4の左側)の端部を挿入される凹部(不図示)を備える。なお、ソケット本体24aは、前述の凹部に連通する流路を備えていない。濾過膜22に付与される吸引力は、遮蔽側ソケット24により、濾過膜22の長手方向の他方側で遮蔽される。
【0032】
遮蔽側ソケット24における2つの突出体24bのそれぞれは、濾過膜22の長手方向(図4における左右方向)においてソケット本体24aよりも外側(図4における左側)に位置しつつ、ソケット本体24aの延在方向(図4における上下方向)に沿って並ぶ。
【0033】
以下、第1突出体23bに設けられる第1出口(図3の23b-2)と、第2突出体23cに設けられる(図3の第2出口23c-2)とを、まとめて「吸引側ソケット23の2つの排出口」と言う。排出口の口径を所定値に設定し、且つ濾過膜(22、122)による単位時間あたりの濾過液量を所定値に設定する場合、排出口に通す処理済水の単位時間あたりの流量の条件として、次のような条件を採用する必要がある。即ち、第1比較例に係る濾過膜ユニット121の排出口に対する処理済水の流入量を、実施形態に係る「吸引側ソケット23の2つの排出口」のそれぞれに対する処理済水の流入量の約2倍に設定するという条件である。かかる条件では、排出口(濾液出口)を1つしか備えていない特許文献1に記載の構成に比べて、濾過膜ユニット21における処理済水の流路抵抗を第1比較例に比べて小さくするので、吸引ポンプ(図1の9)などの吸引動力機の動力をより小さくして、省エネルギー化を図ることができる。
【0034】
第1出口(図3の23b-2)及び第2出口(図3の23c-2)のそれぞれについては、図3に示される態様とは異なり、突出体(23b、23c)の周面における所定位置に配置してもよい(以下、この配置を周面配置と言う)。但し、図3に示されるように、突出体(23b、23c)の先端面に、第1出口23b-2及び第2出口23c-2のそれぞれを配置(以下、この配置を先端面配置と言う)することがより望ましい。これは、次に説明する理由による。即ち、周面配置では、突出体(23b-2、23c-2)の中空(23b-1、23c-1)内における処理済水の流れを、排出口(第1出口23b-2、第2出口23c-2)に至る直前で約90〔°〕の角度で方向転換させる必要がある。これにより、濾過膜ユニット21の流路抵抗を高めてしまう。これに対し、先端面配置では、突出体(23b-2、23c-2)の中空(23b-1、23c-1)内における処理済水の流れ方向と、排出口(第1出口23b-2、第2出口23c-2)を通るときの処理済水の流れ方向とを同方向にする。このため、周面配置とは異なり、中空(23b-1、23c-1)内で処理済水の流れを大きく方向転換させることがなくなるので、周面配置に比べて、流路抵抗を小さくすることができる。
【0035】
図5は、実施形態に係る濾過システム31を示す斜視図である。濾過システム31は、複数の濾過膜ユニット21と、複数の濾過膜ユニット21を保持する保持体40とを備える。保持体40の形状は枠状であり、保持体40は枠内に複数の濾過膜ユニット21を保持する。また、保持体40は、集水カセット41と、ブラインドカセット60と、第1サイドカバー65と、第2サイドカバー66とを備える。
【0036】
図6は、実施形態に係る濾過システム31を示す分解斜視図である。保持体(図5の40)は、扁平直方体状の集水カセット41と、平板状の第1サイドカバー65と、扁平直方体状のブラインドカセット60と、平板状の第2サイドカバー66とが枠状に組み合わさって形成されたものである。同図に示される状態とは異なり、複数の濾過膜ユニット21が存在しない状態では、集水カセット41とブラインドカセット60とが相対向する。加えて、前記状態では、第1サイドカバー65と第2サイドカバー66とが、集水カセット41とブラインドカセット60との対向方向と直交する方向に相対向する。
【0037】
集水カセット41及びブラインドカセット60のそれぞれは、自己の長手方向を、第1サイドカバー65と第2サイドカバー66との対向方向に沿わせる態様で配置される。一方、第1サイドカバー65及び第2サイドカバー66のそれぞれは、自己の長手方向を、集水カセット41とブラインドカセット60との対向方向に沿わせる態様で配置される。
【0038】
第1保持部としての集水カセット41は、複数の濾過膜ユニット21の長手方向における一方側の端部のそれぞれを保持する。また、第2保持部としてのブラインドカセット60は、それら複数の濾過膜ユニット21の長手方向における他方側の端部のそれぞれを保持する。このような保持により、複数の濾過膜ユニット21は、それぞれの濾過膜22の厚み方向に並ぶ態様で配置される。
【0039】
図7は、保持体(図5の40)の集水カセット41を示す斜視図である。集水カセット41は、天板42と、底板45と、第1長尺側板43と、第2長尺側板44と、長尺側板(43、44)よりも短尺の第1短尺側板46及び第2短尺側板47とが、扁平直方体状に組み合わさって形成されたものである。天板42と底板45とは、相対向する。水処理施設においては、同図に示されるように、天板42と底板45とを重力方向に沿った上下方向に並べる態様で、集水カセット41が配置される。
【0040】
第1長尺側板43及び第2長尺側板44のそれぞれは、自己の長手方向を、第1短尺側板46及び第2短尺側板47のそれぞれにおける短手方向に沿わせる態様で配置される。一方、第1短尺側板46及び第2短尺側板47のそれぞれは、自己の長手方向を、天板42と底板45との対向方向に沿わせる態様で配置される。
【0041】
図6に示されるように、第1保持部たる集水カセット41と、これに保持される複数の濾過膜ユニット21との対向方向は、集水カセット41とブラインドカセット60との対面方向に沿っている。そして、集水カセット41とブラインドカセット60とが図示のように対面している状態では、集水カセット41の長手方向が前述の対向方向に直交する。その長手方向に沿って集水カセット41を破断して得られる断面の外縁は、図7における天板42のおもて面と、第1短尺側板46のおもて面と、底板45のおもて面と、第2短尺側板47のおもて面とを繋ぐ線によって描かれる。この外縁に囲まれる領域は、図5図6に示されるように、集水カセット41に保持される全ての濾過膜ユニット21に対向する。よって、集水カセット41を構成する全ての部品が透明部材からなると仮定した場合、枠状の保持体(40)の枠外から、透明な集水カセット41を介して枠内の濾過膜ユニット21を覗き込むと、透明な集水カセット41を通して全ての濾過膜ユニット21を視認することができる。
【0042】
集水カセット41においては、前述の外縁に囲まれる領域のうち、前述の対向方向に沿って複数の濾過膜ユニット21対向する領域に、集水カセット41を前述の対向方向に沿って貫通する複数の貫通開口が配置される。
【0043】
図8は、集水カセット41を第2長尺側板44の側から示す図である。同図においては、便宜上、集水カセット41に配置された貫通開口の開口に一点鎖線からなる×印を付している。集水カセット41は、前述の貫通開口として、第1から第12までの12個の貫通開口(101~112)を備える。作業者は、それら12個の貫通開口を通じて、枠状の保持体(40)の枠内に配設される多くの濾過膜ユニット21を目視確認することが可能である。これにより、実施形態に係る保持体(40)によれば、濾過膜ユニット21の保守点検の手間を軽減することができる。
【0044】
図6に示されるように、第2保持部たるブラインドカセット60と、これに保持される複数の濾過膜ユニット21との対向方向は、集水カセット41とブラインドカセット60との対面方向に沿っている。そして、集水カセット41とブラインドカセット60とが図示のように対面している状態では、ブラインドカセット60の長手方向が、前述の対向方向に直交する。その長手方向に沿ってブラインドカセット60を破断して得られる断面の外縁に囲まれる領域は、図5図6に示されるように、ブラインドカセット60に保持される全ての濾過膜ユニット21に対向する。よって、ブラインドカセット60を構成する全ての部品が透明部材からなると仮定した場合、枠状の保持体(40)の枠外から透明なブラインドカセット60を介して枠内の濾過膜ユニット21を覗き込むと、透明なブラインドカセット60を通して全ての濾過膜ユニット21を視認することができる。
【0045】
ブラインドカセット60においては、前述の外縁によって囲まれる領域のうち、前述の対向方向に沿って複数の濾過膜ユニット21対向する領域に、ブラインドカセット60を前述の対向方向に沿って貫通する複数の貫通開口が配置される。
【0046】
図9は、ブラインドカセット60を保持体(4)の枠外から対向方向に沿って眺めた図である。同図においては、便宜上、貫通開口の開口に一点鎖線からなる×印を付している。ブラインドカセット60は、複数の貫通開口として、第1~第6までの6つの貫通開口(201~206)を備える。作業者は、それら6つの貫通開口(201~206を通じて、枠状の保持体(40)の枠内に配設される濾過膜ユニット21を目視確認することが可能である。貫通開口の数は、集水カセット(41)に比べて半分になっているが、開口面積の合計は、集水カセット(41)よりも広くなっており、6つの貫通開口(201~206)を通じて、保持体(40)の枠内に配設されるほぼ全ての濾過膜ユニット(21)を目視確認することができる。これにより、実施形態に係る保持体(40)によれば、濾過膜ユニット(21)の保守点検の手間をより良好に軽減することができる。
【0047】
図6に示されるように、複数の濾過膜ユニット21のそれぞれは、長手方向の一方側の端部に、吸引側ソケット23を備える。この吸引側ソケット23は、濾過膜22よりも幅広な形状である。このため、互いに隣り合う2つの濾過膜ユニット21においては、互いの長手方向における一方側の端部同士の間隙G1が、互いの長手方向における中央部(互いの濾過膜22同士を対向させる部分)同士の間隙G2よりも小さくなる。
【0048】
気泡発生装置(90)から放出されて保持体(40)の枠内に受け入れられた気泡が、集水カセット41に設けられた複数の貫通開口(101~112)を通じて枠外に逃げてしまうと、気泡によって濾過膜22に振動を与えることによる濾過膜22からの異物の離脱効率が低下してしまう。但し、気泡が集水カセット41の貫通開口(101~112)に到達するためには、前述の間隙G2内から間隙G1内に進入する必要がある。間隙G1は間隙G2よりも小さいことから、気泡に対しては、間隙G2から間隙G1に進入しようとする方向の応力よりも、間隙G2内を真っすぐに上昇しようとする方向の応力が強く作用する。これにより、集水カセット41の複数の貫通開口(101~112)を通じた気泡の外部流失が防止される。よって、実施形態に係る濾過システム31によれば、集水カセット41の貫通開口(101~112)を通じた気泡の外部流失に起因する濾過膜22の目詰まり抑制効率の低下が防止される。
【0049】
複数の濾過膜ユニット21のそれぞれは、長手方向の他方側の端部に、遮蔽側ソケット24を備える。この遮蔽側ソケット24は、濾過膜22よりも幅広な形状であるため、互いに隣り合う2つの濾過膜ユニット21においては、互いの長手方向における他方側の端部同士の間隙G3が、互いの長手方向における中央部同士の間隙G2よりも小さくなる。
【0050】
濾過システム31の内部に送り込まれた気泡がブラインドカセット60の貫通開口(201~206)に到達するためには、前述の間隙G2内から間隙G3内に進入する必要がある。間隙G3は間隙G2よりも小さいことから、気泡に対しては、間隙G2から間隙G3に進入しようとする方向の応力よりも、間隙G3内を真っすぐに上昇しようとする方向の応力が強く作用する。これにより、ブラインドカセット60の複数の貫通開口(201~206)を通じた気泡の外部流失が防止される。よって、実施形態に係る濾過システム31によれば、ブラインドカセット60の貫通開口(201~206)を通じた気泡の外部流失に起因する濾過膜22の目詰まり抑制効率の低下を防止することができる。
【0051】
図7において、第1短尺側板46のおもて面には、前記おもて面から突出する第1固定部48が設けられる。また、第2短尺側板47のおもて面には、前記おもて面から突出する第2固定部49が設けられる。
【0052】
以下、枠状の保持体(図5の40)の枠構造を、単に「枠」と言う。第1長尺側板43は、第2長尺側板44よりも「枠」の内側に位置する。第1長尺側板43は、第1突出体(図3の23b)及び第2突出体(図3の23c)のうち、何れか一方を挿入される挿入孔と、第1突出体及び第2突出体のうち、前記挿入孔に挿入されない方を挿入される挿入孔とからなる孔対を複数備える。複数の孔対のそれぞれにおいて、2つの挿入孔の距離は、互いに同じである。
【0053】
図6に示されるように、孔対の2つの挿入孔のそれぞれは、第1長尺側板43の短手方向(図6の上下方向)に沿って並ぶ。第1突出体23b及び第2突出体23cのうち、何れか一方は、孔対の2つの挿入孔の何れか一方に挿入され、他方の突出体は、他方の挿入孔に挿入される。
【0054】
図2に示されるように、遮蔽側ソケット24の2つの突出体24bのそれぞれの形状は、正方体状又は直方体状である。2つの突出体24bは、濾過膜ユニット(図6の21)の長手方向の他端部をブラインドカセット(図6の60)に位置決めしつつ、前記他端部をブラインドカセットに保持させるためのものである。
【0055】
吸引側ソケット23において、ソケット本体23aと一体形成される2つの突出体(23b、23c)のそれぞれの形状は、管状である。
以下、各部材において、平板状の濾過膜22の厚み方向に沿った方向の長さを幅と言う。濾過膜22の濾過性能を効率よく引き出すためには、吸引側ソケット23の2つの突出体(23b、23c)の内径を、濾過膜22の幅と同じにすることが望ましい。すると、図2に示されるように、2つの突出体(23b23c)のそれぞれの管周壁が、ソケット本体23aから幅方向に出っ張る。即ち、2つの突出体(23b、23c)の外径が、ソケット本体23aの幅よりも大きくなる。
【0056】
かかる構成では、濾過システム(図5の31)の小型化が困難になる。具体的には、濾過システムの小型化を図るためには、複数の濾過膜ユニット(図6の21)の並び方向における配設ピッチを、できるだけ小さくすることが望ましい。そして、前述の配設ピッチの狭小化は、吸引側ソケット23の2つの突出体(23b、23c)のそれぞれの外径によって制約を受ける。
【0057】
前述の配設ピッチの狭小化が、突出体(23b、23c)の外径によって制約を受ける理由は、次の通りである。即ち、第1長尺側板(図7の43)に複数設けられる孔対のそれぞれは、2つの挿入孔のうち、第1長尺側板(43)の短手方向の一方側に位置する挿入孔を、第1長尺側板(43)の長手方向に沿って並べる。加えて、複数の孔対のそれぞれは、2つの挿入孔のうち、第1長尺側板(43)の短手方向の他方側に位置する挿入孔も、第1長尺側板(43)の長手方向に沿って並べる。以下、前記長手方向に沿って互いに隣り合う2つの挿入孔を、「2つの隣設挿入孔」と言う。濾過システム(図5の31)の小型化により、複数の濾過膜ユニット(図6の21)の配設ピッチ(第1長尺側板43の長手方向に沿った配設ピッチ)が小さくなるにつれて、「2つの隣設挿入孔」の距離が短くなる。この距離が過剰に短くなると、第1長尺側板(43)の孔間部分(「2つの隣設挿入孔」の間の部分)の孔間長さが過剰に小さくなって、孔間部分において必要な強度が得られなくなる。第1長尺側板(43)の前述の孔間部分において、最低限の強度が得られる孔間長さ(狭小限界値)は、第1長尺側板(43)の材質及び厚みが同じであれば一定である。一方で、複数の濾過膜ユニット21の配設ピッチが同じであっても、突出体(23b、23c)の外径が異なれば、前述の孔間長さが異なる。突出体(23b、23c)の外径が大きくなるほど、孔間長さが小さくなる(孔間部分の強度が低くなる)。よって、挿入孔の配設ピッチの狭小化が、突出体(23b、23c)の外径によって制約を受けることになる。
【0058】
そこで、実施形態に係る濾過膜ユニット21の吸引側ソケット(23)においては、2つの突出体(23b、23c)のそれぞれが、図3に示される態様で配置される。具体的には、ソケット本体23aの延在方向の中心(一点鎖線L1によって示される位置)から第1突出体23bまでの距離αと、前記中心から第2突出体23cまでの距離βとを互いに異ならせる(α<β)態様である。かかる構成では、第1長尺側板(43)の孔間部分の孔間長さを狭小限界値まで狭小化しつつ、距離αと距離βとを互いに同じにする場合に比べて、複数の濾過膜ユニット(21)の配設ピッチを小さくするという効果を奏することができる。
【0059】
前述の効果を奏することができる理由は、以下に説明する通りである。即ち、図7に示される第1長尺側板43に設けられる複数の孔対は、2つの種類のものが存在する。複数の孔対のうち第1種類に分類されるのが第1種孔対43cであり、第2種類に分類されるのが第2種孔対43fである。第1種孔対43cと、第2種孔対43fとは、第1長尺側板43の長手方向(図7では上下方向)に沿って交互に配置される。第1種孔対43cにおける2つの挿入孔(43a、43b)の距離と、第2種孔対43fにおける2つの挿入孔(43d、43e)の距離とは、互いに同じである。第1種孔対43cの2つの挿入孔(43a、43b)のうち、第1長尺側板43の短手方向の一方側(図7では上側)に位置する挿入孔43aは、第1長尺側板43の面内において第1長尺側板43の短手方向に沿った所定の第1位置に配置される。この第1位置は、図7において一点鎖線L2によって示される。第2種孔対43fの2つの挿入孔(43d、43e)のうち、第1長尺側板43の短手方向の一方側(図7では上側)に位置する挿入孔43dは、第1長尺側板43の面内において第1長尺側板43の短手方向に沿った所定の第2位置に配置される。この第2位置は、図7において一点鎖線L3で示される。第1長尺側板43の短手方向において、前述の第1位置と第2位置とは、互いに異なる。
【0060】
第1種孔対43cに対しては、所定の第1姿勢をとる濾過膜ユニット(21)の2つの突出体(23b、23c)が挿入される。これに対し、第2種孔対43fに対しては、所定の第2姿勢をとる濾過膜ユニット(21)の2つの突出体(23b、23c)が挿入される。第1姿勢をとる濾過膜ユニット(21)と、第2姿勢をとる濾過膜ユニット(21)とは、吸引側ソケット(23)の延在方向の中心と、遮蔽側ソケット(24)の延在方向の中心とを通る軸線(図2の一点鎖線L4)を基準にした点対称の位置(180°回転した位置)にある。
【0061】
以下、各部材において、第1長尺側板43の短手方向に沿った位置ずれを、単に位置ずれと言う。第1種孔対43cの2つの挿入孔(43a、43b)のうち、上述の第1位置(一点鎖線l2)に配置される挿入孔43aと、第2種孔対43fの2つの挿入孔(43d、43e)のうち、上述の第2位置(一点鎖線L2)に配置される挿入孔43eとは、互いに位置ずれしている。互いに隣り合う2つの濾過膜ユニット(21)の一方は、吸引側ソケット(23)の2つの突出体(23b、23c)を第1種孔対43cの2つの挿入孔(43a、43b)に挿入している。他方の濾過膜ユニット(21)は、吸引側ソケット(23)の2つの突出体(23b、23c)を第2種孔対の2つの挿入孔(43d、43e)に挿入している。
【0062】
かかる構成では、第1長尺側板43の長手方向において、「2つの隣設挿入孔」のうち、一方側に位置する隣設挿入孔の他方側の端を、他方側に位置する隣設挿入孔の一方側の端よりも他方側に位置させつつ、第1長尺側板43の孔間部分を確保することが可能である。より詳しくは、図7においては、第1長尺側板43の長手方向が、図7の左右方向に概ね沿っている(厳密には、前記長手方向は図7の左右方向から僅かに傾いている)ので、以下、第1長尺側板43の長手方向を、図7の左右方向として説明する。例えば、第1長尺側板43に設けられる複数の孔対のうち、図中の左右方向の最も左側に位置する第1種孔対43cの挿入孔43aと、これに対して左右方向の右側で隣り合っている第2種孔対43fの挿入孔43dとを「2つの隣設挿入孔」として着目してみる。第1種孔対43cの挿入孔43aは、第2種孔対43fの挿入孔43dよりも図中の左右方向の左側に位置する。つまり、第1種孔対43cの挿入孔43aを、「2つの隣設挿入孔」のうち、第1長尺側板43の長手方向の他方側に位置する隣設挿入孔とし、第2種孔対43fの挿入孔43dを、前記長手方向の一方側に位置する隣設挿入孔とする例について着目している。この例では、第2種孔対43fの挿入孔43dの左側(他方側)の端を、第1種孔対43cの挿入孔43aの右側(一方側)の端よりも左側に位置させている。このような位置関係を保ちつつ、第1長尺側板43においては、挿入孔43aと挿入孔43dとの間の孔間部分が確保されている。挿入孔43aと挿入孔43dとの位置ずれ量が大きくなるほど、前述の孔間部分の孔間長さが大きくなる。このため、吸引側ソケット(23)の2つの突出体(23b、23c)を大径化させたり、複数の濾過膜ユニット(21)の配設ピッチを狭小化させたりしても、前述の位置ずれ量をより大きくすることで、孔間長さを狭小限界値と同等以上にすることが可能である。
【0063】
よって、濾過システム31によれば、複数の濾過膜ユニット21の位置ずれ(第1長尺側板43の短手方向に沿った位置ずれ)を引き起こすことなく、複数の濾過膜ユニット21の配設ピッチを狭小化させて、濾過システム31の小型化を図ることができる。加えて、濾過システム31によれば、吸引側ソケット(23)の2つの突出体(23b、23c)を大径化させて、濾過膜22の濾過性能を向上させることもできる。
【0064】
図6に示されるブラインドカセット60は、複数の濾過膜ユニット21との対向面に、複数の遮蔽側挿入孔(不図示)を備える。それらの遮蔽側挿入孔は、濾過膜ユニット21の遮蔽側ソケット24の突出体24bを挿入するための挿入孔である。遮蔽側ソケット24の2つの突出体24bのそれぞれが、前記対向面に設けられた遮蔽側挿入孔に挿入されることで、濾過膜ユニット21の長手方向における他方側の端部がブラインドカセット60に対して位置決めされる。加えて、濾過膜ユニット21の長手方向における他方側の端部が、ブラインドカセット60に保持される。
【0065】
なお、ブラインドカセット60における複数の濾過膜ユニット21との対向面に複数の遮蔽側挿入孔を配置し、濾過膜ユニット21の遮蔽側ソケット24に2つの突出体24bを設けた例について説明したが、遮蔽側挿入孔、及び突出体24bの付設を省略してもよい。この場合、例えば、次のようなゴム製部材を用いることで、複数の濾過膜ユニット21のそれぞれにおける長手方向の他方側(遮蔽側)の端部を保持することが可能である。即ち、ブラインドカセット60の長手方向に沿って延びるベース板と、ベース板の表面から突出しつつ、ブラインドカセット60の長手方向に沿って所定の配設ピッチで並ぶ複数の仕切板とを備えるゴム製部材である。このゴム製部材における互いに隣り合う2つの仕切板に、濾過膜ユニット21の遮蔽側ソケット24を挟み込ませればよい。
【0066】
また、濾過膜22の形状が平板状である例について説明したが、濾過膜22の形状は平板状に限られず、例えば波板状などでもよい。
【0067】
濾過膜ユニット21に対しては、濾過膜ユニット21の周囲に存在する原水(W)の流れ、気泡発生装置90から放出される気泡などにより、応力が加えられる。この応力により、濾過膜ユニット21には、濾過膜22の短手方向を、集水カセット41及びブラインドカセット60のそれぞれの短手方向(図6では上下方向)から傾けようとする力(スキュー力)が加えられる。このスキュー力により、濾過膜22の全域のうち、吸引側ソケット23の第1突出体23bに近い領域、吸引側ソケットの第2突出体23cに近い領域、及び遮蔽側ソケット24の2つの突出体24bに近い領域には、大きな力が加わる。以下、前述の4つの領域をまとめて突出体近傍領域という。
【0068】
図3に示されるように、吸引側ソケット23の第1突出体23bは、濾過膜(22)の短手方向(図3における上下方向)において、第2突出体23cよりも一方側(同図の上側)にずれた位置に配置される(以下、このずれの量を「第1ずれ量」と言う)。更に、第1突出体23bは、前記短手方向において、ソケット本体23aの一方側(図3における上側)の端よりも、ソケット本体23aの中心の側にずれた位置に配置される(以下、このずれの量を「第2ずれ量」と言う)。
【0069】
以下、遮蔽側ソケット24に設けられる2つの突出体24bのうち、濾過膜(22)の短手方向(同図の上下方向)において一方側(同図の上側)に位置する方を、「一方側の突出体24b」と言う。また、2つの突出体24bのうち、前記短手方向において他方側(同図の下側)に位置する方を、「他方側の突出体24b」と言う。「一方側の突出体24b」は、ソケット本体(24a)の延在方向における一方側の端(同図における上端)よりも他方側(同図における下側)にずれた位置に存在する(以下、このずれの量を「第3ずれ量」と言う)。また、「他方側の突出体24b」は、ソケット本体(24a)の延在方向における他方側の端(同図における下端)よりも一方側(同図における上側)にずれた位置に存在する(以下、このずれの量を「第4ずれ量」と言う。
【0070】
図3に示される例とは異なる比較例を、図3に示される例との比較対象として検討を行う。比較例においては、吸引側ソケット23の第1突出体23bが、濾過膜(22)の短手方向における一方側の端(同図における上端)に位置する。また、吸引側ソケット23の第2突出体23cは、濾過膜(22)の短手方向における他方側の端(同図における下端)に位置する。
【0071】
比較例の遮蔽側ソケット24においては、「一方側の突出体24b」が、濾過膜(22)の短手方向における一方側の端(同図における上端)に位置する。また、「他方側の突出体24b」が、濾過膜(22)の短手方向における他方側の端(同図における下端)に位置する。
【0072】
つまり、比較例においては、「第1ずれ量」、「第2ずれ量」、「第3ずれ量」、及び「第4ずれ量」が何れも、ゼロになっている。かかる構成の比較例においては、吸引側ソケット23の第1突出体24bと第2突出体24cとの距離が、実施形態に係る濾過膜ユニット21における同距離よりも長くなる。加えて、比較例においては、遮蔽側ソケット24の「一方側の突出体24b」と「他方側の突出体24b」との距離が、実施形態に係る濾過膜ユニット21における同距離よりも長くなる。このため、比較例においては、テコの原理により、濾過膜22の突出体近傍領域に加わる力が、実施形態に係る濾過膜ユニット21よりも大きくなることから、濾過膜22の破損が発生し易くなる。換言すれば、実施形態に係る濾過膜ユニット21は、濾過膜22の短手方向において、各突出体をソケットの端に配置しないことにより、スキュー力に起因する濾過膜22の破損を抑えることができる。
【0073】
実施形態に係る濾過膜ユニット21において、濾過膜22の破損を効率よく抑えるためには、「第1ずれ量」、「第2ずれ量」、「第3ずれ量」、及び「第4ずれ量」をできる限り大きくすることが望ましい。但し、吸引側ソケット23において、「第1ずれ量」や「第2ずれ量」を過剰に大きくすると、第1突出体23bからの集水量と、第2突出体23cからの集水量との均一化を図ることが困難になる。前述の均一化を図るためには、「第1ずれ量」、及び「第2ずれ量」のそれぞれを、吸引側ソケット23のソケット本体23aの延在方向の長さの1/10以下にすることが望ましい。より望ましくは、吸引側ソケット23のソケット本体23aの延在方向の長さの1/4から1/3の範囲を採用するのがよい。遮蔽側ソケット24における「第3ずれ量」、及び「第4ずれ量」も同様である。
【0074】
濾過膜(22)の短手方向において、第1突出体23bは、ソケット本体23aの中心よりも一方側(図3では上側)にずれた位置に配置され、第2突出体23cは、前記中心よりも他方側(図3では下側)にずれた位置に配置される。かかる構成では、第1突出体23b及び第2突出体23cの両方が、前記中心よりも一方側及び他方側のうちの何れかにずれた位置に配置されることによる濾過膜ユニット(21)の突出体非配置側の振れが防止される。よって、実施形態に係る濾過膜ユニット(21)によれば、前述の振れに起因する濾過膜(22)の破損の発生を防止することができる。
【0075】
濾過膜22の長手方向の両側のうち、片側だけを吸引側とするいわゆる片引き方式を採用した濾過システム(31)について説明したが、両側のそれぞれを吸引側とするいわゆる両引き方式を採用してもよい。この場合、両側のそれぞれのソケットとして、同様の構成の吸引側ソケット23を設ければよい。
【0076】
図10は、実施形態に係る濾過処理設備において互いに上下に積み重ねられる3つの濾過システム31を示す斜視図である。濾過システム31は、図示のように、上下方向に多段に積み重ねて配置される。
【0077】
本発明は上述の実施形態、及び実施例に限られず、本発明の構成を適用し得る範囲内で、実施形態及び実施例とは異なる構成を採用することもできる。本発明は、以下に説明する態様毎に特有の作用効果を奏する。
【0078】
〔第1態様〕
第1態様は、複数の濾過膜ユニット(例えば濾過膜ユニット21)の長手方向における一方側の端部のそれぞれを保持する第1保持部(例えば集水カセット41)と、それら複数の濾過膜ユニットの長手方向における他方側の端部のそれぞれを保持する第2保持部(例えばブラインドカセット60)とにより、それら複数の濾過膜ユニットをそれぞれの濾過膜(例えば濾過膜22)の厚み方向に並べる態様で保持する保持体(例えば保持体40)であって、前記第1保持部と、前記第1保持部に保持される複数の前記濾過膜ユニットとの対向方向に直交する方向に沿った前記第1保持部の断面の外縁によって囲まれる領域のうち、前記対向方向に沿って複数の前記濾過膜ユニットに対向する領域に、前記第1保持部を前記対向方向に沿って貫通する複数の貫通開口(例えば貫通開口101~112)が配置されることを特徴とするものである。
【0079】
かかる構成によれば、第1保持部に配置された複数の貫通開口を通じて、保持体の枠内に配設されている多くの濾過膜ユニットを目視確認することを可能にして、濾過膜ユニットの保守点検の手間を軽減することができる。
【0080】
〔第2態様〕
第2態様は、第1態様の構成を備える保持体であって、前記第2保持部と、前記第2保持部に保持される複数の前記濾過膜ユニットとの対向方向に直交する方向に沿った前記第2保持部の断面の外縁によって囲まれる領域のうち、前記対向方向に沿って複数の前記濾過膜ユニットに対向する領域に、前記第2保持部を前記対向方向に沿って貫通する複数の貫通開口(例えば貫通開口201~206)が配置されることを特徴とするものである。
【0081】
かかる構成によれば、第2保持部に配置された複数の貫通開口を通じて、保持体の枠内に配設されている多くの濾過膜ユニットを目視確認することを可能にして、濾過膜ユニットの保守点検の手間を更に軽減することができる。
【0082】
〔第3態様〕
第3態様は、複数の濾過膜ユニットと、それら濾過膜ユニットを保持する保持体とを備える濾過システム(例えば濾過システム31)であって、前記保持体が、第1態様又は第2態様の保持体であることを特徴とするものである。
【0083】
かかる構成によれば、濾過システムの内部に配設される複数の濾過膜ユニットを、第1保持部に配置された複数の貫通開口を通じて目視点検することを可能にして、濾過膜ユニットの保守点検の手間を軽減することができる。
【0084】
〔第4態様〕
第4態様は、第3態様の構成を備える濾過システムであって、互いに隣り合う2つの前記濾過膜ユニットにおいて、互いの長手方向における一方側の端部同士の間隙が、互いの長手方向における中央部同士の間隙よりも小さいことを特徴とするものである。
【0085】
かかる構成によれば、第1保持部の貫通開口を通じた気泡の外部流失に起因する濾過膜の目詰まり抑制効率の低下を防止することができる。
【0086】
〔第5態様〕
第5態様は、第3態様又は第4態様の構成を備える濾過システムであって、前記保持体が、第2態様の保持体であり、互いに隣り合う2つの前記濾過膜ユニットにおいて、互いの長手方向における他方側の端部同士の間隙が、互いの長手方向における中央部同士の間隙よりも小さいことを特徴とするものである。
【0087】
かかる構成によれば、第2保持部の貫通開口を通じた機能の外部流失に起因する濾過膜22の目詰まり抑制効率の低下を防止することができる。
【0088】
〔第6態様〕
第6態様は、濾過システムを備える濾過処理設備(例えば濾過処理設備20)であって、前記濾過システムが、第4態様又は第5態様の構成を備える濾過システムであることを特徴とするものである。
【0089】
かかる構成によれば、濾過処理設備において、濾過システム内に配設されている多くの濾過膜ユニットを目視確認することを可能にして、濾過膜ユニットの保守点検の手間を軽減することができる。
【0090】
20・・・濾過処理設備、 21・・・濾過膜ユニット、 22・・・濾過膜、 23・・・吸引側ソケット(ソケット)、 23a・・・ソケット本体、 23b・・・第1突出体、 23b-1・・・中空、 23b-2・・・第1出口、 23c・・・第2突出体、 23c-1・・・中空、 23c-2・・・第2出口、 23d・・・凹部、 23e・・・流路、 31・・・濾過システム

図1
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図10