(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】バッテリーケース
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20231011BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20231011BHJP
H01M 50/271 20210101ALI20231011BHJP
H01M 50/24 20210101ALI20231011BHJP
H01M 50/251 20210101ALI20231011BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H01M50/204 101
H01M50/209
H01M50/271 B
H01M50/271 S
H01M50/24
H01M50/251
H05K5/02 L
(21)【出願番号】P 2022210631
(22)【出願日】2022-12-27
【審査請求日】2023-04-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】森田 秀世
(72)【発明者】
【氏名】上原 雄司
(72)【発明者】
【氏名】劉 長学
(72)【発明者】
【氏名】筧 真一朗
【審査官】山下 裕久
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-077466(JP,A)
【文献】国際公開第2020/217912(WO,A1)
【文献】特開2021-125400(JP,A)
【文献】特開2021-118043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/202-298
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーモジュールを収容する第1収容空間を画成するとともに、側面開口を有する第1ボックス部と、
前記第1ボックス部の前記側面開口の縁と接合される枠部を有し、前記側面開口を塞ぐ側蓋部と、
前記側面開口の縁と前記側蓋部の前記枠部との接合箇所を上側から覆う庇部と
を備え
、
前記第1ボックス部上に設けられ、前記バッテリーモジュールに接続されるとともに前記バッテリーモジュールを制御する制御部を収容する第2収容空間を画成する第2ボックス部をさらに備え、
前記庇部が前記第2ボックス部と一体的に設けられている、バッテリーケース。
【請求項2】
前記側蓋部における前記枠部より内側において前記第1ボックス部と前記側蓋部との間に介在し、前記側面開口を封止するパッキンをさらに備える、請求項1に記載のバッテリーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭用を中心に、据え置きタイプの蓄電池の普及が進んでいる。たとえば、下記特許文献1には、縦長の筒状筐体の内部に電池モジュールが収容され、その筒状筐体が上蓋によって封じられた構成を有する蓄電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、筐体の側面に開口を設けて電池モジュールに対して側方からアクセス可能とすることで、修理やメンテナンス等の作業性が向上するとの知見を得た。ただし、筐体の側面の開口を蓋で覆う場合には、水分が筐体と蓋との接合箇所から内部に浸入しやすい。
【0005】
本発明の一側面は、防水性の向上が図られたバッテリーケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るバッテリーケースは、バッテリーモジュールを収容する第1収容空間を画成するとともに、側面開口を有する第1ボックス部と、第1ボックス部の側面開口の縁と接合される枠部を有し、側面開口を塞ぐ側蓋部と、側蓋部における枠部より内側において第1ボックス部と側蓋部との間に介在し、側面開口を封止するパッキンと、側面開口の縁と側蓋部の枠部との接合箇所を上側から覆う庇部とを備える。
【0007】
上記バッテリーケースにおいては、庇部により、側面開口の縁と側蓋部の枠部との接合箇所が覆われるため、水分が第1ボックス部と側蓋部との接合箇所から第1収容空間内に浸入しにくくなっている。
【0008】
他の側面に係るバッテリーケースでは、側蓋部における枠部より内側において第1ボックス部と側蓋部との間に介在し、側面開口を封止するパッキンをさらに備える。
【0009】
他の側面に係るバッテリーケースでは、第1ボックス部上に設けられ、バッテリーモジュールに接続されるとともにバッテリーモジュールを制御する制御部を収容する第2収容空間を画成する第2ボックス部をさらに備え、庇部が第2ボックス部と一体的に設けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の種々の側面によれば、防水性の向上が図られたバッテリーケースが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る蓄電池システムを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示したバッテリーケースを示す分解斜視図である。
【
図3】
図1、2に示したバッテリーケースに収容されるバッテリーモジュールを示す概略斜視図である。
【
図4】
図1に示したバッテリーケースのIV-IV線断面図である。
【
図5】
図4に示したバッテリーケースの要部拡大図である。
【
図6】バッテリーケースにおける浸水の様子を示した図である。
【
図7】異なる態様のバッテリーケースを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための形態を説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0013】
一実施形態に係る蓄電池システム1について、
図1~3を参照しつつ説明する。
【0014】
蓄電池システム1は、バッテリーケース10と、バッテリーケース10の内部に収容されたバッテリーモジュール40および制御部50とを備えて構成されている。蓄電池システム1は、その使用時には、パワーコンディショナー等の外部機器2に取り付けられ、外部機器2との間で電力および信号の送受をおこなう。蓄電池システム1と外部機器2との間の電力および信号の送受には、配線管3の内部を通された配線が用いられる。本実施形態では、配線管3の一方端3aが蓄電池システム1に取り付けられ、他方端3bが外部機器2に取り付けられている。配線管3は、たとえば可撓性を有する樹脂で構成することができ、たとえば難燃性や耐候性を備えたPF管を採用することができる。
【0015】
バッテリーケース10は、第1ケース部20と第2ケース部30とを備えて構成されている。
図1に示すように、第1ケース部20および第2ケース部30は、上方から見たときに略同じ寸法(平面寸法)を有し、本実施形態においてはいずれも直方体形状の外形を有している。第2ケース部30は、第1ケース部20上に積み重ねられるように配置されている。
【0016】
第1ケース部20は、ボックス部21(第1ボックス部)と蓋部22(側蓋部)とを備えて構成されている。
【0017】
ボックス部21は、その内部に、バッテリーモジュール40を収容する収容空間S1(第1収容空間)を画成している。ボックス部21は、たとえば金属板(一例として先塗装鋼板等の鋼板)によって構成することができる。ボックス部21を鋼板で構成することにより、バッテリーモジュール40をケース外部の紫外線や湿度から守ることができ、十分な耐候性を備える。本実施形態に係る収容空間S1は、略直方体状の形状を有する。収容空間S1には、
図3に示すバッテリーモジュール40が収容されている。バッテリーモジュール40は、収容空間S1の寸法より小さい寸法の直方体形状の外形を有する。バッテリーモジュール40は、複数段に積み重ねられたバッテリーセル41を含む。複数のバッテリーセル41はいずれも実質的に同じ形状および寸法を有する。各バッテリーセル41は、略ボックス状の外形を有し、具体的には長方形板状の外形を有する。
【0018】
図2に示すように、ボックス部21は側面開口23を有する。本実施形態に係る側面開口23は矩形状を有し、水平方向に延びる上縁23aおよび下縁23bを有する。
【0019】
蓋部22は、ボックス部21の側面開口23を塞ぐように設けられている。蓋部22は、側面開口23の全縁と接合される矩形状の枠部24と、枠部24より側面開口23から離れた矩形板状の本体部25とを有する。
図5に示すように、側面開口23の縁(
図5では上縁23a)と蓋部22の枠部24とは直接的に接している。一方、蓋部22の本体部25は、側面開口23の縁から所定距離だけ離間しており、本体部25と側面開口23の縁との間にはパッキン28が配置されている。パッキン28は、蓋部22における枠部24より内側においてボックス部21の側面開口23の縁と蓋部22との間に介在し、側面開口23の全縁にわたって設けられる環状の形状を有し、本実施形態においては矩形環状を呈する。パッキン28により、側面開口23が封止されるとともに、側面開口23周りにおいてボックス部21の収容空間S1が封止される。
【0020】
第2ケース部30は、ボックス部31(第2ボックス部)と蓋部32とを備えて構成されている。
【0021】
ボックス部31は、その内部に、制御部50を収容する収容空間S2(第2収容空間)を画成している。ボックス部31は、ボックス部21同様、たとえば金属板(一例として先塗装鋼板等の鋼板)によって構成することができる。ボックス部31を鋼板で構成することにより、制御部50をケース外部の紫外線や湿度から守ることができ、十分な耐候性を備える。
【0022】
制御部50は、バッテリーモジュール40の充電および放電(または、充電および放電のいずれか一方)を制御する。制御部50は、バッテリーモジュール40の各バッテリーセル41と電気的に接続されており、物理的には図示しない配線を介して接続されている。配線は、
図6に示すように第1ケース部20と第2ケース部30とを上下方向において連通する連通管60を介して、バッテリーモジュール40を収容する第1ケース部20から第2ケース部30に引き込まれ得る。
【0023】
ボックス部31の底部には、ボックス部21の側面開口23の上縁23aと蓋部22の枠部24との接合箇所を上側から覆う庇部33が設けられている。本実施形態に係る庇部33は、ボックス部31と一体的に設けられている。庇部33は、ボックス部21の側面開口23が設けられた面に対応するボックス部31の面に設けられている。
図5に示すように、庇部33は、断面において、ボックス部31の底面に沿って水平方向に延びる第1部分33aと、第1部分33aの先端から鉛直方向に下垂する第2部分33bとを有する。第1部分33aの長さは、たとえば蓋部22の厚さと同程度であってもよく、蓋部22の厚さより長くてもよい。第1部分33aと第2部分33bとは直角でなくてもよく、鈍角や鋭角であってもよい。また、第1部分33aと第2部分33bとは、角が形成されないように、連続的に湾曲するようにつながっていてもよい。
【0024】
ここで、発明者らは、ボックス部21の側面開口23を蓋部22で覆った場合であっても、
図6のように微視的に見た場合には、ボックス部21の側面開口23の上縁23aと蓋部22の枠部24との接合箇所にはわずかに隙間が生じ得るとの知見を得た。この場合、その隙間に水分29が入り込み、たとえば収容空間S1が外部に対して負圧になったとき等に、その水分29が収容空間S1内に浸入することが考えられる。
【0025】
上述したバッテリーケース10においては、庇部33により、ボックス部21の側面開口23の上縁23aと蓋部22の枠部24との接合箇所が覆われるため、水分29がボックス部21と蓋部22との接合箇所の隙間に入り込みにくくなっており、それにより収容空間S1内に浸入しにくくなっている。
【0026】
バッテリーケース10は、第1ケース部20と第2ケース部30との2段構成に限らず、3段以上の構成であってもよい。
図7に、3段構成のバッテリーケース10Aを示す。バッテリーケース10Aは、第1ケース部20と第2ケース部30との間に第3ケース部70が介在しており、第3ケース部70は、第1ケース部20上に積み重ねられるように配置されている。この場合、第3ケース部70に上述した庇部を設けることができる。第3ケース部70は、上述した第1ケース部20と同一または同様の構成を有し、第1ケース部20のボックス部21および蓋部22と同一または同様のボックス部71および蓋部72を有する。すなわち、ボックス部71の側面開口73が蓋部72によって塞がれており、側面開口73の縁と蓋部72の枠部74が直接的に接している。一方、蓋部72の本体部75は、側面開口73の縁から所定距離だけ離間しており、本体部75と側面開口73の縁との間にはパッキン28が配置されている。
【0027】
第3ケース部70のボックス部71の底部には、ボックス部21の側面開口23の上縁23aと蓋部22の枠部24との接合箇所を上側から覆う庇部76が設けられている。本実施形態に係る庇部76は、上述した第2ケース部30の庇部33と同一または同様の構成を有する。
【0028】
そのため、バッテリーケース10Aにおいても、バッテリーケース10同様、第3ケース部70の庇部76により、ボックス部21の側面開口23の上縁23aと蓋部22の枠部24との接合箇所が覆われるため、水分29がボックス部21と蓋部22との接合箇所の隙間に入り込みにくくなっており、それにより収容空間S1内に浸入しにくくなっている。加えて、第2ケース部30の庇部33により、第3ケース部70のボックス部71の側面開口73の上縁と蓋部72の枠部との接合箇所が覆われるため、水分29がボックス部71と蓋部72との接合箇所の隙間に入り込みにくくなっており、それにより、第3ケース部70によって画成された収容空間内に浸入しにくくなっている。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。たとえば、庇部は、第2ケース部や第3ケース部のボックス部と一体的に設けられていてもよく、別体で(すなわち別部材として)設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…蓄電池システム、10、10A…バッテリーケース、20…第1ケース部、21、71…ボックス部、22、72…蓋部、23、73…側面開口、30…第2ケース部、31…ボックス部、33、76…庇部、70…第3ケース部。
【要約】
【課題】防水性の向上が図られたバッテリーケースを提供する。
【解決手段】 バッテリーケース10においては、庇部33により、ボックス部21の側面開口23の上縁23aと蓋部22の枠部24との接合箇所が覆われるため、水分29がボックス部21と蓋部22との接合箇所の隙間に入り込みにくくなっており、それにより収容空間S1内に浸入しにくくなっている。
【選択図】
図5