(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】電池パックおよび電動工具
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20231011BHJP
H01M 50/107 20210101ALI20231011BHJP
H01M 50/213 20210101ALI20231011BHJP
H01M 50/247 20210101ALI20231011BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20231011BHJP
H01M 50/503 20210101ALI20231011BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20231011BHJP
H01M 50/548 20210101ALI20231011BHJP
H01M 50/559 20210101ALI20231011BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20231011BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20231011BHJP
【FI】
H01M50/204 101
H01M50/107
H01M50/213
H01M50/247
H01M50/342 101
H01M50/503
H01M50/505
H01M50/548 201
H01M50/559
H01M50/588
H01M50/591
H01M50/591 101
(21)【出願番号】P 2022509930
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2021010132
(87)【国際公開番号】W WO2021193153
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2020052357
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】坂内 喜幸
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/175487(WO,A1)
【文献】特開2013-073864(JP,A)
【文献】特開2010-015906(JP,A)
【文献】特開2008-091182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/204 - 216
H01M 50/584 - 591
H01M 50/107
H01M 50/247
H01M 50/502 - 526
H01M 50/548
H01M 50/559
H01M 50/342
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装ケースと、
一端部に正極端子部、他端部に負極端子部を有する円筒形の電池セルと、
前記正極端子部または前記負極端子部に接続される金属板を有し、
前記電池セルは、前記正極端子部または前記負極端子部の周囲に周縁凸部を有し、
前記金属板は、前記周縁凸部に向かい合う凸部を有し、
前記凸部は、前記周縁凸部の全周に対して第1の絶縁部を介して密着した状態で配置されている
電池パック。
【請求項2】
前記電池セルの側面と前記周縁凸部が、前記第1の絶縁部で覆われている
請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記凸部の外側周囲の一部にスリットが設けられている
請求項1または2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記凸部と前記第1の絶縁部の間に、第2の絶縁部がさらに設けられている
請求項1から3のいずれかに記載の電池パック。
【請求項5】
前記第2の絶縁部は、前記凸部上の少なくとも一部に塗装または印刷により形成された絶縁層である
請求項4に記載の電池パック。
【請求項6】
前記金属板の前記凸部の内側に肉薄部が設けられる
請求項1から5のいずれかに記載の電池パック。
【請求項7】
前記肉薄部は前記凸部に沿って形成されている
請求項6に記載の電池パック。
【請求項8】
前記肉薄部は十字形状である
請求項6に記載の電池パック。
【請求項9】
前記周縁凸部の突出端よりも外側で、前記凸部と前記周縁凸部とが接触している
請求項1から8のいずれかに記載の電池パック。
【請求項10】
前記凸部は、前記金属板が前記正極端子部に向き合う領域から外側に向かって形成された傾斜面を有する
請求項1から9のいずれかに記載の電池パック。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の電池パックを備えた、電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックおよび電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池セル等の電池セルを複数個電気的に接続した電池セル群を外装ケースに収納した電池パックは、電動車両や電動工具などに広く利用される。電池パックの内部に水分が侵入すると、電池セルの破損の原因となる。そこで、電池パックには防水性の向上が要請される。
【0003】
下記特許文献1では、電池パックの電極面周囲を覆う両面テープが貼り付けられ、その両面テープ上に金属板(リード板あるいはタブ板)が貼り付けられ、その金属板上に電池電極面及びその周囲領域を覆う防水樹脂層が設けられる構造が提案されている。
【0004】
下記特許文献2では、電池正極部と電池ホルダ(外装ケース)開口部との間に開口を有する弾性体が配され、弾性体の所定の部分が電池正極部付近の端面とホルダ内面とにより挟み込まれるとともに電池ホルダの開口から露出する弾性体のある部分が電池正極部とリード板とによって挟み込まれる構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-45121号公報
【文献】特開2013-73864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に提案された技術では、新たな部品や構成が必要となることから、部品点数の追加を規制する観点で改良の余地がある。また、新たな部品が欠品である場合や新たな部品の設置位置がずれた場合における防水性の低下を避ける観点で、特許文献1、2に提案された技術には改良の余地がある。
【0007】
本発明は、新たな部材や構成を追加することなく電池パックの防水性を向上させることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
外装ケースと、
一端部に正極端子部、他端部に負極端子部を有する円筒形の電池セルと、
前記正極端子部または前記負極端子部に接続される金属板を有し、
前記電池セルは、前記正極端子部または前記負極端子部の周囲に周縁凸部を有し、
前記金属板は、前記周縁凸部に向かい合う凸部を有し、
前記凸部は、前記周縁凸部の全周に対して第1の絶縁部を介して密着した状態で配置されている
電池パックである。
また、本発明の電池パックは、電動工具に備えられてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新たな部材や構成を追加することなく電池パックの防水性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る電池パックを説明するための分解斜視図である。
【
図2】
図2は、電池パックの外装ケースを説明するための斜視図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る電池ホルダの構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図5Aは、電池セルと金属板との配置の一例を示す概略断面図である。
図5Bは、
図5Aの破線で囲まれた領域Sの部分を拡大した状態を示す断面拡大図である。
【
図6】
図6は、金属板と電池セルとを接合した状態の一例を示す概略断面図である。
【
図7】
図7Aおよび
図7Bは、金属板に肉薄部を形成した場合の一例を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、電池セルと
図7Aに示す金属板との配置例を示す概略断面図である。
【
図9】
図9Aは、金属板に第2の絶縁部を設ける場合の一例を示す斜視図である。
図9Bは、電池セルと
図9Aに示す金属板との配置の一例を示す概略断面図である。
【
図10】
図10は、電池セルの構造例を示す概略断面図である。
【
図11】
図11は、電池パックの応用例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態に係る電池パック
2.第2の実施形態に係る電池パック
3.応用例
4.変形例
なお、本発明は、以下に説明する実施形態等に限定されない。以下の説明において、説明の便宜を考慮して前後、左右、上下等の方向を示すが、本発明の内容はこれらの方向に限定されるものではない。
【0012】
[1.第1の実施形態に係る電池パック]
図1から
図10を参照しつつ、第1の実施形態に係る電池パック(電池パック1)の具体例および好ましい例について説明する。
図1は、電池パック1の構成例を説明するための分解斜視図である。
図2は、電池パック1の外観を説明するための斜視図である。第1の実施形態に係る電池パック1は、例えば、
図1、
図2等に示すように、外装ケース2と、回路基板3と、電池セル4と、金属板5を備え、外装ケース2内に回路基板3、電池セル4、金属板5が収納されている。
【0013】
(外装ケース)
外装ケース2は、
図1、
図2に示すように、上ケース2aおよび下ケース2bを有する。上ケース2aと下ケース2bとが係合して一体化することにより、外装ケース2が形成される。
図1、
図2に示す例では、上ケース2aは、略矩形状の上面板6を有する。上面板6の外縁全周囲からは、側面板7が下方(
図1において-Z方向)に向かって立設されている。上面板6の四辺それぞれから側面板7が立設されている。上ケース2aの深さは、特に限定されるものではないが、
図1、
図2の例では、下ケース2bの深さよりも浅く形成されている。
【0014】
下ケース2bは、略矩形状の底面板8を有する。底面板8の外縁全周囲から、側面板9が上方(
図1において+Z方向)に向かって立設されている。底面板8の四辺それぞれから側面板9が立設されている。所定の側面板9には、外部接続端子30が設けられている。
【0015】
上ケース2aおよび下ケース2bのそれぞれには、ネジ締め用の孔部10が形成されている。上ケース2aの孔部10に対向する位置に下ケース2bの孔部10が形成される。
図1の例では、上ケース2aおよび下ケース2bの四隅に孔部10が形成されており、外装ケース2としても四隅に孔部10が形成されている。それぞれの孔部10には、それぞれネジ11が挿入されて回転される。ネジ11は上ケース2aの孔部10を貫通して、下ケース2bの孔部10に達する。さらに、それぞれのネジ11が回転されることでネジ締めがなされ、上ケース2aと下ケース2bとが固定される。
【0016】
(電池ホルダ)
外装ケース2の内部空間には、電池ホルダ12が収納される。電池ホルダ12には、
図3に示すように、複数の電池セル収納部13が形成されている。電池セル収納部13は、例えば、筒型形状に形成されている。電池セル収納部13の軸線方向は、外装ケース2に電池ホルダ12を収容した状態で左右方向(Y方向)となっている。電池セル収納部13の軸線方向に沿って向かい合う端部は、例えば、略円形状に開口している。
【0017】
また、電池ホルダ12では、各電池セル収納部13は、上下方向(Z方向)および前後方向(X方向)に並んで形成されている。
図1、
図2に示す例では電池セル収納部13は、前後方向に4列、上下方向に2列並んでおり、それぞれに電池セル4が収納される。なお、これは一例であり、電池セル収納部13について前後方向の列数と上下方向の列数は、
図1等に示す例に限定されない。また、1つの電池セル収納部13に対して収納される電池セルの数も1つに限定されない。
【0018】
電池ホルダ12の材料としては、例えば、絶縁材料が好適に用いられ、具体的にプラスチック等の樹脂が用いられる。
【0019】
(電池セル)
電池セル4は、円筒形状を有する電池であり、例えば、後述するような円筒形状のリチウムイオン二次電池を採用することができる。電池セル4は、リチウムイオンポリマー二次電池などの他の二次電池であってもよい。
【0020】
電池セル4の両端面のそれぞれには電極端子部が形成されている。電池セル4の一方の端面には電極端子部として正極端子部15が形成され、電池セル4の他方の端面には電極端子部として負極端子部16が形成されている。電池セル4は、電池セル収納部13に収納された状態で電池セル収納部13の端部に形成された開口から電池セル4の正極端子部15または負極端子部16が露出する。
【0021】
電池ホルダ12の電池セル収納部13に収納される複数の電池セル4の配置については、
図3等に示すように、上下方向(Z方向)に隣接する電池セル4は、互いに、電池ホルダ12の同一面側に露出する電極端子部の極性を揃えて配置される。例えば、上側に配置される電池セル4の正極端子部15と下側に配置される電池セル4の正極端子部15とが同一方向を向くように配置される。前後方向(X方向)に隣接する電池セル4は、電池ホルダ12の同一面側に露出する電極端子部の極性を違えて配置される。例えば、電池セル4の一方端面側から他方端面側に向かう方向(Y方向)を視線方向として、電池ホルダ12に収納される複数の電池セル4の組合せを見た場合に、正極端子部15と負極端子部16が交互に並んでいるように、電池セル4が配置される。なお、上記で説明した電池セル4の配置は一例であり、
図3等で例示した配置に限られない。
【0022】
(周縁凸部)
電池セル4は、
図10等を用いて後述するように一方を開口した電池缶の開口側に電池蓋を配置した形状に形成されており、電池蓋の中央部側に突出した部分が形成され、この部分が正極端子部15を形成する。
図10、
図5A、
図5Bの例に示すように、正極端子部15の外側周端部で電池缶のかしめ構造が形成されており、このかしめ構造を形成する部分が、周縁凸部21をなす。周縁凸部21は、正極端子部15の突出方向と同方向に突出した突出端32を有し、突出端32から内側外側両方向に湾曲傾斜した傾斜部を形成している。
図5A、
図5B中、符号33は、突出端32から外側方向に湾曲傾斜した外側傾斜部を示す。なお、
図5A、
図5Bにおいては、説明の便宜上、金属板5を電池セル4に向い合せて配置した状態で金属板5と電池セル4が非接合である場合の図が示されている。このことは、
図8、
図9Bについても同様である。
【0023】
(第1の絶縁部)
電池セル4は、
図10等を用いて後述する電池缶の外周面が絶縁チューブ等の第1の絶縁部23で被覆されており、
図5A、
図5Bに示すように電池セル4の外周露出面を第1の絶縁部23で形成した状態が形成される。また、第1の絶縁部23は、少なくとも周縁凸部21を覆うように設けられる。
図10、
図5A、
図5Bの例では、第1の絶縁部23は、電池セル4の外周露出面を形成し、電池セル4の外周面からさらに周縁凸部21を覆って電池セル4の端面側まで回り込み、周縁凸部21の突出端32から正極端子部15に向かって延設されている。第1の絶縁部23の延設端は、正極端子部15と周縁凸部21との間の位置となっている。
【0024】
電池パック1においては、このように第1の絶縁部23が設けられていることで、金属板5の凸部22と周縁凸部21との間の絶縁状態が維持される。
【0025】
(ワッシャー)
電池セル4には、ワッシャー31がさらに設けられていてもよい。ワッシャー31は、円環状に形成された絶縁性を有する部材であり、正極端子部15の外側周囲に配置される。
図5Bに示すように、ワッシャー31の外周端縁は、周縁凸部21の形成部分に位置しており、ワッシャー31の内周端縁は、正極端子部15と周縁凸部21との間に位置し、第1の絶縁部23の延設端よりも正極端子部15側に位置している。
【0026】
電池パック1においては、ワッシャー31がさらに設けられていることで、金属板5の凸部22と周縁凸部21との間の絶縁状態がより強く維持される。
【0027】
(金属板)
電池ホルダ12の各電池セル収納部13の開口から露出する電極端子部(正極端子部15および負極端子部16)は金属板に接合される。
【0028】
図1、
図2の例では、電池ホルダ12の一方の面で、金属板5と金属板50に接合されており、電池ホルダ12の他方の面で金属板5に接合されている。金属板5は、正極端子部15に接合されて端子接触部19を形成する正極接合型の金属板である。金属板5としては、正極端子部15のみ接合する正極限定接合型の金属板と負極端子部16も接合する両極接合型の金属板の2種類があげられる。金属板5について、正極限定接合型の金属板は、第1の金属板5aと呼び、両極接合型の金属板は、第2の金属板5bと呼ぶことがある。金属板50は、負極端子部16のみ接合する負極限定接合型の金属板である。
【0029】
第1の金属板5aは、電池ホルダ12の一方面(
図1において+Y方向側の面)で、前端側(前後方向に見て外部接続端子30に近づく方向(
図1において+X方向))で上下方向に隣り合う各電池セル収納部13の開口から露出する正極端子部15、15に接合される。
【0030】
金属板50は、電池ホルダ12における第1の金属板5aの設置面と同面側に取り付けられており、後端側(前後方向に見て外部接続端子30から遠ざかる方向(
図1において-X方向))で上下方向に隣り合う各電池セル収納部13の開口から露出する負極端子部16、16に接合される。
【0031】
また、電池ホルダ12における金属板50の設置面と同面側には、第1の金属板5aと金属板50との間に位置する第2の金属板5bが取り付けられている。この第2の金属板5bは、前後方向(X方向)と上下方向(Z方向)に隣り合う4つの各電池セル収納部13の開口から露出する負極端子部16、16と正極端子部15、15とに接合される。
【0032】
電池ホルダ12の他方面(電池ホルダ12における金属板50の設置面と逆面側(
図1において-Y方向側の面))においては、電池セル収納部13の開口から露出する負極端子部16及び正極端子部15が隣り合う2つの第2の金属板5bで接合されている。
【0033】
第2の金属板5bの一方は、上下方向に隣り合う2つの電池セル収納部13の組のうち後端側2組の電池セル収納部13の開口から露出する負極端子部16、16と正極端子部15、15とに接合される。
【0034】
第2の金属板5bの他方は、上下方向に隣り合う2つの電池セル収納部13の組のうち前端側2組の電池セル収納部13の開口から露出する負極端子部16、16と正極端子部15、15に接合される。
【0035】
第1の金属板5aと金属板50の上端側は、電池ホルダ12の上面上で電池ホルダ12の中央側に向かって延設されており、その延設部分が基板接続端子18、18となっている。第1の金属板5aと金属板50のそれぞれの基板接続端子18、18が、電池ホルダ12上面に載置される回路基板3に電気的に接続される。
【0036】
金属板5、50の組み合わせ及び配置、個々の金属板5、50の形状等は、負極端子部16および正極端子部15の配置などに応じて適宜設定可能である。
【0037】
金属板5、50は、銅合金またはそれに類する材料によって構成されることが好ましい。これにより、低抵抗で配電することが可能となる。金属板5、50は、例えば、ニッケルまたはニッケル合金で構成される。これにより、金属板5、50に形成される端子接触部と、正極端子部または負極端子部との溶接性が良好になる。金属板5、50の表面が錫またはニッケルでメッキされていてもよい。これにより、金属板5、50の表面が酸化して錆びが発生することを防止できる。
【0038】
電池ホルダ12に収納された電池セル4は、金属板5,50によって電気的に互いに接続される。
図1、
図2の例では金属板5、50によって、上下に並ぶ2個の電池セル4が並列配置の状態で接続され、並列配置の状態の2個の1組の電池セル4の4組が、直列配置の状態で電気的に接続されることになる。
【0039】
(金属板の形状)
金属板50は、例えば、平板状であり、電池セル4に接合された状態で、負極端子部16に接触する部分が上下方向に2箇所形成され、その箇所の中央又はその近傍に小孔20が形成されている。
【0040】
図4は、金属板5が第2の金属板5bである場合における金属板5の外観形状を説明するための図である。金属板5は、
図4に示すように、端子接触部19の周囲に、周縁凸部21に対応する凸部22を有している。
図1、
図2の例では、金属板5としての第1の金属板5aと第2の金属板5bについて、凸部22が設けられている。
【0041】
第1の金属板5aには、電池セル4の正極端子部15に接合された状態で端子接触部19となる部分が上下方向に2個形成されている。また、第2の金属板5bは、それぞれの端子接触部19となる部分の外周囲に凸部22を有している。凸部22は、後述する周縁凸部21に対応した形状に形成される。
【0042】
第2の金属板5bは、例えば
図4に示すように、電池セル4の正極端子部に接合された状態で端子接触部19となる部分が上下方向に2個(一組)形成される。また、第2の金属板5bは、第1の金属板5aと同様に、端子接触部19となる部分の外周囲に、周縁凸部21に対応する凸部22を有している。
【0043】
また、第2の金属板5bでは、負極端子部16に接触する部分が上下方向に2箇所形成され、その箇所の中央又はその近傍に小孔20が形成されている。
【0044】
(凸部)
金属板5には、正極端子部15に対して向かい合う方の面側で端子接触部19となる部分の外周囲に、凸部22が形成されている。凸部22は、周縁凸部21に対応する位置及び形状に形成されている。なお、
図1、
図2の例では、金属板5の主面のうち、正極端子部15に対して非対向となる方の面において、凸部22に対応する部分が凹部51となっている。
【0045】
電池パック1においては、
図5A、
図5Bに示すように、周縁凸部21の突出端32よりも外側で、凸部22と周縁凸部21とが接触することが好ましい。この場合、電池パック1においては凸部22と周縁凸部21を向い合せることで、電池セル4に対する金属板5の位置決め時の位置ずれを抑制することが容易となり、また、凸部22と周縁凸部21とが接触した状態をより容易に形成することができる。
【0046】
凸部22の形状は、周縁凸部21に密着できる形状であれば特に限定されるものではないが、
図5A、
図5B等に示すように、内側斜面部25の傾き(
図5B中、傾斜角度P1)の方が外側斜面部24の傾き(
図5B中、傾斜角度P2)よりもなだらかとなっている(P1<P2)山形状に形成されていることが好ましい。内側斜面部25とは、金属板5の面に沿って正極端子部15に向き合う領域から外側(離れる方向)に向かって凸部22の頂部26の位置まで形成された傾斜面部を示す。外側斜面部24とは、凸部22の頂部26から金属板5の外側(正極端子部15に向き合う領域から離れる方向)に向かって形成された傾斜面部を示す。
【0047】
金属板5がP1<P2となるように凸部22を形成していると、凸部22の頂部26が周縁凸部21の突出端32よりも外側に位置して、内側斜面部25を周縁凸部21の外側傾斜部33に接触させた状態を形成しやすくなり、電池セル4に対する金属板5の位置決めの際に、金属板5の位置ずれが生じにくくなる。さらに、仮に金属板5の位置ずれが少し生じたとしても、内側斜面部25におけるいずれかの位置と周縁凸部21の外側傾斜部33とが接触した状態が維持されやすくなる。したがって金属板5を電池セル4に接合した際に凸部22の内側斜面部25と周縁凸部21とが密着した状態を形成しやすくなる。電池セル4に対する金属板5の位置決めの際とは、
図5A、
図5B等に示すように、電池セル4に対して金属板5が互いに非接合の状態で配置される場合(電池セル4と金属板5との接合状態の形成前の状態)を示す。
【0048】
図5Bに示すように、電池セル4に対する金属板5の位置決めの際に、金属板5の主面のうち正極端子部15に対面するほうの面と、電池セル4の正極端子部15との間に隙間が形成されていることが好ましい。すなわち、電池セル4に対する金属板5の位置決めの際に、金属板5の主面を基準とした凸部22の頂部26の位置までの高低差N1と、正極端子部15の表面位置を基準とした凸部22の頂部26の位置までの高低差N2とを対比した場合に、N1>N2となることが好ましい。こうした隙間が形成されるように凸部22の形状や大きさや形成位置が定められることで、電池セル4と金属板5とを接合させる場合に、金属板5を電池セル4の正極端子部15側に押し当てて端子接触部19が形成されるため、周縁凸部21と凸部22との接触位置に押圧力が働き、周縁凸部21と凸部22とをより強く密着させることができるようになる。また、このとき、
図6に示すように、金属板5に、端子接触部19を中心として金属板面に沿って外側に向かってわずかに反りを形成させるようにすることができ、より強固に周縁凸部21と凸部22とを密着させることができる。金属板5と電池セル4の正極端子部15とが接合されることにともなって周縁凸部21と凸部22とが密着し、防水機能が発現される。
【0049】
(金属板と電池セルとの接合方法)
金属板5と電池セル4の正極端子部15との接合方法は、特に限定されるものではないが、抵抗溶接やレーザー溶接などを挙げることができる。
【0050】
(第2の絶縁部)
電池パック1においては、
図9A、
図9Bに示すように、凸部22と第1の絶縁部23の間に第2の絶縁部27がさらに設けられていることが好ましい。電池パック1にさらに第2の絶縁部27が設けられていることで、第1の絶縁部23が破損した場合においても、金属板5と電池セル4の周縁凸部21との間に絶縁性を有する部材が介在する状態を維持することができる。
【0051】
第2の絶縁部27は、特に限定されるものではないが、
図9Aに示すように、第2の絶縁部27は、凸部22上の少なくとも一部に塗装または印刷により形成された絶縁層である。第2の絶縁部27が、金属板5の凸部22の少なくとも一部上に形成された絶縁層であることで、部品点数の増加を抑制することができる。絶縁層を構成する材料は、特に限定されるものではないが、例えば、絶縁性を有する紫外線硬化性樹脂などを用いることができる。なお、
図9Aでは、第2の絶縁部27を形成した領域は、斜線を付した領域として示されている。
【0052】
(スリット)
電池パック1においては、
図4に示すように、金属板5の凸部22の外側周囲の一部にスリット28が設けられていることが好ましい。凸部22の外側周囲にスリット28が設けられていることで、金属板5を電池セル4に接合した場合に端子接触部19を中心として金属板面に沿って外側に向かって反りが生じた場合に(
図6参照)、金属板5の一部に歪みが生じても、スリット28が歪みを緩衝して金属板5全体に歪みが波及することを抑制できる。例えば、
図4の例では、スリット28が設けられていることで、金属板5を電池セル4に接合した場合に端子接触部19を中心として歪みを生じても、スリット28でその歪みを緩衝することで、端子接触部19を中心とした歪みが金属板5全体に波及してしまうことを規制することができる。
【0053】
スリット28は、金属板5における凸部22の外側周囲の一部に設けられていれば、その大きさ、位置等を特に限定されるものではないが、金属板5の歪みを緩衝できる程度の大きさ、位置等とされている。スリット28の形成数は、特に限定されるものでなく、
図4の例では、1か所の凸部22の外側周囲に対して3か所に設けられている。
【0054】
(肉薄部)
金属板5には、
図7A、
図7B、
図8に示すように、凸部22の内側に肉薄部29が設けられることが好ましい。
図7A、
図8の例では、肉薄部29は、凸部22に沿って形成された断面V字の溝で形成されている。また、この例では、溝は、金属板5の主面のうち電池セル4との向き合い面に形成されている。なお、
図8に示す肉薄部29を形成する溝の形状は一例であり、これに溝の形状はこれに限定されるものではない。
【0055】
電池パック1に肉薄部29が設けられていることで、万が一、電池セル4に異常が生じて電池セル4からガスが噴出しても、ガスの押圧力により金属板5が肉薄部29で開裂されることでガスを容易に外部に逃がすことができ、電池パック1の安全性を向上させることができる。
【0056】
肉薄部29の形状は、
図7Aでは円形状に形成されているが、肉薄部29の形状は、これに限定されず、例えば、
図7Bに示すように十字形状に形成されてもよい。
【0057】
(回路基板)
回路基板3は、電池パック1の外部接続端子30に対して電気的に接続されている。
図1の例では、配線(図示せず)を介して回路基板3と外部接続端子30とが電気的に接続されている。回路基板3は、金属板5の基板接続端子18と電気的に接続されており、電気回路を搭載している。電気回路は、電池セル4からの電力を外部接続端子30から外部に向けて供給することができるように形成されている。
【0058】
(電池セルの例)
ここで、電池パック1に収納される電池セル4の具体例についてさらに説明する。電池セル4の例について、電池セル4が円筒型のリチウムイオン電池である場合を例にして説明する。
【0059】
図10は、電池セル4としてのリチウムイオン電池40の概略断面図である。
図10に例示する電池セル4は、電池缶111の内部に電極巻回体120が収納されている円筒型のリチウムイオン電池40である。
【0060】
リチウムイオン電池40は、円筒状の電池缶111の内部に、一対の絶縁体112,113と、電極巻回体120とを備えている。リチウムイオン電池40は、さらに、電池缶111の内部に、熱感抵抗(PTC)素子及び補強部材などのうちのいずれか1種類又は2種類以上を備えていてもよい。
【0061】
(電池缶)
電池缶111は、主に、電極巻回体120を収納する部材である。この電池缶111は、一端部が開放されると共に他端部が閉塞された円筒状の容器である。すなわち、電池缶111は、開放された一端部(開放端部111N)を有している。この電池缶111は、鉄、アルミニウム及びそれらの合金などの金属材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。ただし、電池缶111の表面において、ニッケルなどの金属材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上がめっき処理されていてもよい。
【0062】
(絶縁体)
絶縁体112,113は、電極巻回体120の巻回軸方向(
図10の鉛直方向)に対して略垂直な面を有するシート状の部材である。絶縁体112,113は、互いに電極巻回体120を挟むように配置されている。絶縁体112,113の材質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ベークライトなどが用いられる。ベークライトには、フェノール樹脂を紙又は布に塗布した後に加熱して作製される、紙ベークライトや布ベークライトがある。
【0063】
(かしめ構造)
電池缶111の開放端部111Nには、電池蓋114及び安全弁機構130がガスケット115を介して、かしめられており、かしめ構造111R(クリンプ構造)が形成されている。これにより、電池缶111の内部に電極巻回体120などが収納された状態において、その電池缶111は密閉されている。
【0064】
電池缶111のかしめ構造111Rの形成により、電池缶111に電池蓋114が取り付けられた状態で電池蓋114の外周を取り巻くように折り曲げ部111Pが電池蓋面位置から突出した状態で形成される。この折り曲げ部111Pが、上述した周縁凸部21をなしている。周縁凸部21としての折り曲げ部111Pは、湾曲面状に形成されており、
図10の例では、断面U字型に形成されている。
【0065】
(電池蓋)
電池蓋114は、電池缶111の内部に電極巻回体120などが収納された状態において、その電池缶111の開放端部111Nを閉塞する部材であり、鉄にニッケルをめっき処理したもので構成されている。この電池蓋114は、電池缶111の形成材料と同様の材料を含んでいる。電池蓋114のうち中央領域には、
図10の鉛直方向に突出した突出部が形成されている。
【0066】
(外装チューブ)
リチウムイオン電池40においては、上述した第1の絶縁部23として、電池缶111の外周面に絶縁性の外装チューブ153が設けられている。外装チューブ153は、電池缶111の外周面及び周縁凸部21としての折り曲げ部111Pを覆い、さらに折り曲げ部111Pから電池蓋114の突出部に向かって延設されている。外装チューブ153の延設端は、電池蓋114の突出部とかしめ構造111Rとの間の位置となっている。
【0067】
外装チューブ153の電池缶111への取り付け方法としては特に限定されないが、例えば、電池缶111の外側に外装チューブ153を配置した状態で加熱し、外装チューブ153自体を収縮させることで、電池缶111の外周に密着させることができる。
【0068】
(ワッシャー)
リチウムイオン電池40には、前述したようにワッシャーがさらに設けられていてもよい(
図10には図示せず)。ワッシャーは、電池蓋114の突出部の外側周囲に配置される。
【0069】
(ガスケット)
ガスケット115は、主に、電池缶111の折り曲げ部111P(クリンプ部とも称される。)と電池蓋114との間に介在することにより、その折り曲げ部111Pと電池蓋114との間の隙間を封止する部材である。ガスケット115の表面には、例えば、アスファルトなどが塗布されていてもよい。
【0070】
ガスケット115は、絶縁性材料を含んでいる。絶縁性材料の種類は特に限定されないが、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリプロピレン(PP)などの高分子材料である。電池缶111と電池蓋114とを互いに電気的に分離しながら、周縁凸部21をなす折り曲げ部111Pと電池蓋114との間の隙間が十分に封止されるからである。
【0071】
(安全弁機構)
安全弁機構130は、主に、電池缶111の内部の圧力(内圧)が上昇した際に、必要に応じて電池缶111の密閉状態を解除することにより、その内圧を開放する。電池缶111の内圧が上昇する原因は、充放電時において電解液の分解反応に起因して発生するガスなどである。
【0072】
安全弁機構130のうち、セーフティーカバー131は略円形の板状部材であり、弁体とも呼ばれる。セーフティーカバー131は、例えばアルミニウム製である。
図1に示すように、セーフティーカバー131の中央部には電極巻回体120の方向に向かって突出した突部を有していてもよい。
【0073】
(電極巻回体)
円筒型リチウムイオン電池では、帯状の正極121と帯状の負極122がセパレータ123を挟んで渦巻き状に巻回されて、電解液に含浸された状態で、電池缶111に収納されている。図示しないが、正極121、負極122はそれぞれ、正極集電体、負極集電体の片面又は両面に正極活物質層、負極活物質層を形成したものである。正極集電体の材料は、アルミニウムやアルミニウム合金を含む金属箔である。負極集電体の材料は、ニッケル、ニッケル合金、銅や銅合金を含む金属箔である。セパレータ123は多孔質で絶縁性のあるフィルムであり、正極121と負極122とを電気的に絶縁しながら、リチウムイオンの移動を可能にしている。
【0074】
電極巻回体120の中心には、
図10に示すように、正極121、負極122及びセパレータ123を巻回させる際に生じた空間(中心空間120C)が設けられており、中心空間120Cには、センターピン124が挿入されている。ただし、センターピン124は省略可能である。
【0075】
正極121には、正極リード125が接続されていると共に、負極122には、負極リード126が接続されている(
図10参照)。正極リード125は、アルミニウムなどの導電性材料を含んでいる。正極リード125は、安全弁機構130を介して電池蓋114と電気的に接続されている。負極リード126は、ニッケルなどの導電性材料を含んでいる。負極リード126は、電池缶111と電気的に接続されている。正極121、負極122、セパレータ123及び電解液のそれぞれの詳細な構成、材質に関しては、後述する。
【0076】
(正極)
正極活物質層は、リチウムを吸蔵及び放出することが可能である正極材料(正極活物質)を少なくとも含み、さらに、正極結着剤及び正極導電剤などを含んでいてもよい。正極材料は、リチウム含有複合酸化物又はリチウム含有リン酸化合物が好ましい。リチウム含有複合酸化物は、例えば、層状岩塩型又はスピネル型の結晶構造を有している。リチウム含有リン酸化合物は、例えば、オリビン型の結晶構造を有している。
【0077】
正極結着剤は、合成ゴム又は高分子化合物を含んでいる。合成ゴムは、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴム及びエチレンプロピレンジエンなどである。高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)及びポリイミドなどである。
【0078】
正極導電剤は、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック又はケッチェンブラックなどの炭素材料である。ただし、正極導電剤は、金属材料及び導電性高分子でもよい。
【0079】
(負極)
負極集電体の表面は、負極活物質層との密着性向上のために粗面化されていることが好ましい。負極活物質層は、リチウムを吸蔵及び放出することが可能である負極材料(負極活物質)を少なくとも含み、さらに、負極結着剤及び負極導電剤などを含んでいてもよい。
【0080】
負極材料は、例えば、炭素材料を含む。炭素材料は、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、黒鉛、低結晶性炭素、又は非晶質炭素である。炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状又は鱗片状を有している。
【0081】
また、負極材料は、例えば金属系材料を含む。金属系材料の例としては、Li(リチウム)、Si(ケイ素)、Sn(スズ)、Al(アルミニウム)、Zr(亜鉛)、Ti(チタン)が挙げられる。金属系元素は、他の元素と化合物、混合物又は合金を形成しており、その例としては、酸化ケイ素(SiOx(0<x≦2))、炭化ケイ素(SiC)又は炭素とケイ素の合金、チタン酸リチウム(LTO)が挙げられる。
【0082】
(セパレータ)
セパレータ123は、樹脂を含む多孔質膜であり、2種類以上の多孔質膜の積層膜でもよい。樹脂は、ポリプロピレン及びポリエチレンなどである。セパレータ123は、多孔質膜を基材層として、その片面又は両面に樹脂層を含んでいてもよい。正極121及び負極122のそれぞれに対するセパレータ123の密着性が向上するため、電極巻回体120の歪みが抑制されるからである。
【0083】
樹脂層は、PVdFなどの樹脂を含んでいる。この樹脂層を形成する場合には、有機溶剤に樹脂が溶解された溶液を基材層に塗布したのち、その基材層を乾燥させる。なお、溶液中に基材層を浸漬させたのち、その基材層を乾燥させてもよい。樹脂層には、無機粒子又は有機粒子を含んでいることが、耐熱性、電池の安全性向上の観点で好ましい。無機粒子の種類は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、タルク、シリカ、雲母などである。また、樹脂層に代えて、スパッタ法、ALD(原子層堆積)法などで形成された、無機粒子を主成分とする表面層を用いてもよい。
【0084】
(電解液)
電解液は、溶媒及び電解質塩を含み、必要に応じてさらに添加剤などを含んでいてもよい。溶媒は、有機溶媒などの非水溶媒、又は水である。非水溶媒を含む電解液を非水電解液という。非水溶媒は、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、ラクトン、鎖状カルボン酸エステル又はニトリル(モノニトリル)などである。
【0085】
電解質塩の代表例はリチウム塩であるが、リチウム塩以外の塩を含んでいてもよい。リチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3SO3)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2SF6)などである。これらの塩を混合して用いることもでき、中でも、LiPF6、LiBF4を混合して用いることが、電池特性向上の観点で好ましい。
【0086】
(本実施形態により得られる効果)
以上説明した本実施形態によれば、例えば、以下の効果を得ることができる。
図10の例で示したような円筒形電池では、電池蓋114の中心領域が正極で、かしめ構造111R部分が負極であり正極と負極が近接している。このかしめ構造部分から電池蓋の中心までの部分(近接部と呼ぶ)をまたぐように負極から正極にかけて水滴が付着した場合、電蝕が発生する恐れがある。このため、円筒形電池を収納した電池パックの防水機能について、この近接部への水分侵入を防ぐことが特に要請されてきた。
本実施形態では、かしめ構造111Rの折り曲げ部(電池の周縁凸部)に金属板5の凸部22が向かい合うように配置される。そのため、近接部への水分侵入を防ぐことができ、電池パックの防水機能を実現することができる。
そして、本実施形態によれば、電池の周縁凸部と金属板の凸部とを向かい合うように配置することにより、クッション材やパッキン等の防水部品を用いることなく、電池パックの防水機能を実現することができる。
また、防水部品を用いないので、各部品の組み込みを簡易化することができ、組み込みの不良による機能不全が生じてしまうことを防止することができる。さらに、防水部品を用いないので、部品コストを低減することができる。
金属板の凸部の位置決めを治具により行い、更に正極側を先に溶接することで、金属板の位置ずれが発生してしまうことを抑制することができる。
【0087】
[2.第2の実施形態に係る電池パック]
第1の実施形態の電池パック1の例では、電池セル4の一方端面の中央から突出した形状に正極端子部15が形成され、電池セル4の他方端面側に負極端子部16が平面状に形成されていた。電池パック1に収納される電池セル4は、この例に限定されず、電池セルの一方端面の中央から突出した形状に負極端子部が形成され、電池セルの他方端面側に正極端子部が平面状に形成されていてもよい。第2の実施形態に係る電池パックにおいては、金属板5に対応する金属板は、電池セルの負極端子に接続され、その金属板は、負極端子の周縁凸部に対応する凸部を有することとなる。
【0088】
[3.応用例]
応用例では、上述の電池パックを備える電動工具について説明する。
【0089】
図11を参照して、本発明が適用可能な電動工具として電動ドライバの例について概略的に説明する。電動ドライバ431には、シャフト434に回転動力を伝達するモータ433と、ユーザが操作するトリガースイッチ432が設けられている。電動ドライバ431の把手の下部筐体内に、電池パック430及びモータ制御部435が収納されている。電池パック430は、電動ドライバ431に対して内蔵されているか、又は着脱自在とされている。電池パック430として本発明に係る電池パックを用いることができる。
【0090】
電池パック430及びモータ制御部435のそれぞれには、マイクロコンピュータ(図示せず)が備えられており、電池パック430の充放電情報が相互に通信できるようにしてもよい。モータ制御部435は、モータ433の動作を制御すると共に、過放電などの異常時にモータ433への電源供給を遮断することができる。
【0091】
屋外で使用される電動工具は風雨に曝されるなど過酷な状況で用いられる。電池パックがこのような過酷な状況下に置かれても、金属板の凸部と電池の周縁凸部との密着状態が保たれることにより、電池パックの防水性が高められる。
【0092】
[4.変形例]
以上、本発明の実施形態および応用例について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態および応用例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0093】
例えば、上述の実施形態および応用例において挙げた構成、方法、工程、形状および材料等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状および材料等を用いてもよい。また、上述の実施形態および実施例の構成、方法、工程、形状および材料等は、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 電池パック
2 外装ケース
2a 上ケース
2b 下ケース
4 電池セル
5、50 金属板
15 正極端子部
16 負極端子部
18 基板接続端子
23 第1の絶縁部
24 外側斜面部
25 内側斜面部
26 凸部の頂部
27 第2の絶縁部
28 スリット
29 肉薄部
31 ワッシャー
430 電池パック
431 電動ドライバ