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7364046異常検知システム、異常検知装置、及び異常検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】異常検知システム、異常検知装置、及び異常検知方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 13/04 20060101AFI20231011BHJP
   G01H 9/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B60L13/04 L
G01H9/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022512161
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021013108
(87)【国際公開番号】W WO2021200747
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2020060394
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小林 亜由美
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-203605(JP,A)
【文献】特開2011-211833(JP,A)
【文献】特表2018-504603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 13/04
G01H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気浮上式鉄道の車両とガイドウェイとの間に生じた磁力の影響を受ける金属部材の状態を検知する光ファイバと、
前記光ファイバから、前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報を含む光信号を受信する受信部と、
前記光信号に含まれる、前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報に基づいて、前記車両及び前記ガイドウェイの異常を検知する検知部と、
を備え
前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報は、前記磁力によって生じた、前記金属部材の振動、発熱温度、又は音の少なくとも1つを含む、
異常検知システム。
【請求項2】
前記検知部は、
前記車両又は前記ガイドウェイに異常が発生したと判断した場合、前記光信号に基づいて、前記異常が前記車両又は前記ガイドウェイのどちらで発生したかを判断する、
請求項に記載の異常検知システム。
【請求項3】
磁気浮上式鉄道の車両とガイドウェイとの間に生じた磁力の影響を受ける金属部材の状態を検知する光ファイバから受信した光信号に含まれる、前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報を取得する取得部と、
前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報に基づいて、前記車両及び前記ガイドウェイの異常を検知する検知部と、
を備え
前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報は、前記磁力によって生じた、前記金属部材の振動、発熱温度、又は音の少なくとも1つを含む、
異常検知装置。
【請求項4】
前記検知部は、
前記車両又は前記ガイドウェイに異常が発生したと判断した場合、前記光信号に基づいて、前記異常が前記車両又は前記ガイドウェイのどちらで発生したかを判断する、
請求項に記載の異常検知装置。
【請求項5】
前記検知部は、
前記車両又は前記ガイドウェイに異常が発生したと判断した場合、前記光信号と、前記異常が発生したときの前記車両の位置と、に基づいて、前記異常が発生した発生場所を特定する、
請求項に記載の異常検知装置。
【請求項6】
前記検知部が前記車両又は前記ガイドウェイに異常が発生したと判断した場合、前記異常が発生した旨を報知する報知部をさらに備える、
請求項又はに記載の異常検知装置。
【請求項7】
前記報知部は、
前記異常が前記車両又は前記ガイドウェイのどちらで発生したかに応じて、異なる報知先に前記異常が発生した旨を報知する、
請求項に記載の異常検知装置。
【請求項8】
異常検知システムによる異常検知方法であって、
磁気浮上式鉄道の車両とガイドウェイとの間に生じた磁力の影響を受ける金属部材の状態を検知する光ファイバから、前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報を含む光信号を受信する受信ステップと、
前記光信号に含まれる、前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報に基づいて、前記車両及び前記ガイドウェイの異常を検知する検知ステップと、
を含み、
前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報は、前記磁力によって生じた、前記金属部材の振動、発熱温度、又は音の少なくとも1つを含む、
異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、異常検知システム、異常検知装置、及び異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気浮上式鉄道は、磁力による反発力や吸引力を利用して、車体を軌道から浮上・推進させることで走行する鉄道である。磁気浮上式鉄道の代表例としては、磁気浮上式鉄道の車両側に設置された超電導磁石と、ガイドウェイ側に設置されたコイルと、が吸引・反発する作用を利用するリニア新幹線が挙げられる。
【0003】
近年、リニア新幹線の実用化(商用化)が進んでおり、それに伴い、磁気浮上式鉄道の車両やガイドウェイの保守等の安全対策の検討が進められている。
例えば、特許文献1には、磁気浮上式鉄道の車両を安全に運行させる技術が開示されている。詳細には、特許文献1においては、車両が走行する軌道を含む側壁パネルに沿って光ファイバを敷設し、光ファイバを歪みセンサとして用いて、地震等によって発生した軌道の歪みを測定する。光ファイバの測定結果に基づいて、異常が発生したと判断した場合には、車両の減速や停止等を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-211833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術によれば、地震等の災害が発生したときに、磁気浮上式鉄道の車両を安全に運行させることができる。しかし、特許文献1には、磁気浮上式鉄道の車両やガイドウェイに発生した異常を検知することは開示されていない。
【0006】
そこで本開示の目的は、上述した課題を解決し、磁気浮上式鉄道の車両やガイドウェイに発生した異常を検知することができる異常検知システム、異常検知装置、及び異常検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様による異常検知システムは、
磁気浮上式鉄道の車両とガイドウェイとの間に生じた磁力の影響を受ける金属部材の状態を検知する光ファイバと、
前記光ファイバから、前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報を含む光信号を受信する受信部と、
前記光信号に含まれる、前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報に基づいて、前記車両又は前記ガイドウェイの異常を検知する検知部と、
を備える。
【0008】
一態様による異常検知装置は、
磁気浮上式鉄道の車両とガイドウェイとの間に生じた磁力の影響を受ける金属部材の状態を検知する光ファイバから受信した光信号に含まれる、前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報を取得する取得部と、
前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報に基づいて、前記車両又は前記ガイドウェイの異常を検知する検知部と、
を備える。
【0009】
一態様による異常検知方法は、
異常検知システムによる異常検知方法であって、
磁気浮上式鉄道の車両とガイドウェイとの間に生じた磁力の影響を受ける金属部材の状態を検知する光ファイバから、前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報を含む光信号を受信する受信ステップと、
前記光信号に含まれる、前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報に基づいて、前記車両又は前記ガイドウェイの異常を検知する検知ステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0010】
上述の態様によれば、磁気浮上式鉄道の車両やガイドウェイに発生した異常を検知することができる異常検知システム、異常検知装置、及び異常検知方法を提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】磁気浮上式鉄道の原理を示す図である。
図2】磁気浮上式鉄道の原理を示す図である。
図3】実施の形態1に係る異常検知システムの構成例を示す図である。
図4】実施の形態1に係る光ファイバ及び金属線をガイドウェイ側に設置する態様の例を示す図である。
図5】実施の形態1に係る光ファイバ及び金属線をガイドウェイ側に設置する態様の例を示す図である。
図6】実施の形態1に係る光ファイバ及び金属線を車両側に設置する態様の例を示す図である。
図7】実施の形態1に係る光ファイバ及び金属線を車両側に設置する態様の例を示す図である。
図8】実施の形態1に係る異常検知システムの変形構成例を示す図である。
図9】実施の形態1に係る異常検知システムの動作の流れの例を示すフロー図である。
図10】実施の形態2に係る検知部が、光ファイバ及び金属線がガイドウェイ側に設置される場合に、異常が車両又はガイドウェイのどちらで発生したかを判断する方法の例を示す図である。
図11】実施の形態2に係る検知部が、光ファイバ及び金属線が車両側に設置される場合に、異常が車両又はガイドウェイのどちらで発生したかを判断する方法の例を示す図である。
図12】実施の形態2に係る異常検知システムの動作の流れの例を示すフロー図である。
図13】実施の形態3に係る異常検知システムの構成例を示す図である。
図14】実施の形態3に係る異常検知システムの動作の流れの例を示すフロー図である。
図15】他の実施の形態に係る異常検知システムの構成例を示す図である。
図16】実施の形態に係る異常検知装置を実現するコンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。なお、以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、以下の各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0013】
<実施の形態1>
本実施の形態1の説明をする前に、まず、図1及び図2を参照して、磁気浮上式鉄道の原理について簡単に説明する。図1は、磁気浮上式鉄道の車両60(以下、適宜「車両60」と称す)及びガイドウェイ50を上面図により示し、図2は、車両60及びガイドウェイ50を正面図により示している。
図1及び図2に示されるように、ガイドウェイ50は、車両60の走行路であり、車両60は、ガイドウェイ50内を走行する。
【0014】
図1に示されるように、車両60の左右両側(y方向の両側)の内部の側面には、ガイドウェイ50の延伸方向(x方向)に沿って、超電導磁石61のN極とS極とが交互に設置されている。超電導磁石61に電流を流すことで磁場が発生する。
【0015】
ガイドウェイ50の左右両側(y方向の両側)の側壁51には、ガイドウェイ50の延伸方向(x方向)に沿って、推進コイル52が設置されている。車両60の移動に合わせて、推進コイル52に電流を流して磁場を発生させ、推進コイル52の磁極を切り替える。これにより、超電導磁石61と推進コイル52との間で、押し出す力(反発力)と引きつける力(吸引力)とが発生する。その結果、車両60が前進する。
【0016】
また、図2に示されるように、ガイドウェイ50の左右両側(y方向の両側)の側壁51には、推進コイル52よりも車両60側(y方向プラス側又はマイナス側)に、ガイドウェイ50の延伸方向(x方向)に沿って、浮上・案内コイル53も設置されている。車両60の超電導磁石61が近づくと、浮上・案内コイル53には誘導電流が流れ、浮上・案内コイル53が電磁石となる。これにより、超電導磁石61と浮上・案内コイル53との間で、車両60を下から押し上げる力(反発力)と車両60を上に引き上げる力(吸引力)とが発生する。その結果、車両60が浮上する。
【0017】
また、車両60が、ガイドウェイ50の一方の側壁51側(y方向プラス側又はマイナス側)にずれると、一方の側壁51側では、超電導磁石61と浮上・案内コイル53との間で反発力が働き、他方の側壁51側では、超電導磁石61と浮上・案内コイル53との間で吸引力が働く。その結果、車両60は、ガイドウェイ50の左右の中央付近(y方向の中央付近)に戻される。
【0018】
本実施の形態1に係る異常検知システムは、上述した車両60又はガイドウェイ50の異常を検知するシステムである。
続いて、図3を参照して、本実施の形態1に係る異常検知システムの構成例について説明する。図3は、車両60及びガイドウェイ50を上面図により示している。また、図3は、図面の簡素化のために、車両60に設置された超電導磁石61と、ガイドウェイ50に設置された推進コイル52及び浮上・案内コイル53と、は、図示を省略している(以下の図4図7及び図13において同じ)。
【0019】
図3に示されるように、本実施の形態1に係る異常検知システムは、光ファイバ10、受信部30、及び、異常検知装置40を備えている。また、異常検知装置40は、取得部41及び特定部32を備えている。なお、異常検知装置40は、受信部30から離れた位置に配置することができ、例えば、クラウド上に配置することができる。
【0020】
光ファイバ10は、車両60とガイドウェイ50の左右両側(y方向の両側)の側壁51との間に、ガイドウェイ50の延伸方向(x方向)に沿って、金属線20と共に、金属線20に密着する態様で設置される。
【0021】
金属線20は、磁力に反応する鉄、ニッケル、コバルト等の磁性材料で構成され、上述のように、光ファイバ10に密着させられる。ただし、光ファイバ10を密着させる金属の形状は線状には限定されない。そのため、金属線20の代わりに、他形状の金属部材を設置しても良い。
【0022】
光ファイバ10及び金属線20の設置態様としては、大別して、ガイドウェイ50側に設置する態様及び車両60側に設置する態様の2つが考えられる。
そこで、まず、図4及び図5を参照して、光ファイバ10及び金属線20をガイドウェイ50側に設置する態様の例について説明する。図4は、車両60及びガイドウェイ50を側面図により示し、図5は、車両60及びガイドウェイ50を正面図により示している。なお、図5において、受信部30及び異常検知装置40は、図示を省略している(以下の図7において同じ)。
【0023】
図4及び図5に示されるように、光ファイバ10及び金属線20は、ガイドウェイ50の左右両側(y方向の両側)の側壁51に、ガイドウェイ50の延伸方向(x方向)に沿って、設置される。ここで、金属線20は、後述のように、車両60に設置された超電導磁石61と、ガイドウェイ50の左右両側の側壁51に設置された推進コイル52及び浮上・案内コイル53と、の間に発生した磁力を作用させる目的で設置される。そのため、詳細には、光ファイバ10及び金属線20は、超電導磁石61と、推進コイル52及び浮上・案内コイル53と、の間に設置することが好適である。なお、光ファイバ10及び金属線20をガイドウェイ50側に設置する態様の場合、受信部30は、車両60の外部に配置される。
【0024】
続いて、図6及び図7を参照して、光ファイバ10及び金属線20を車両60側に設置する態様の例について説明する。図6は、車両60及びガイドウェイ50を側面図により示し、図7は、車両60及びガイドウェイ50を正面図により示している。
【0025】
図6及び図7に示されるように、光ファイバ10及び金属線20は、車両60の左右両側(y方向の両側)の外部の側面に、ガイドウェイ50の延伸方向(x方向)に沿って、設置される。本例でも、図4及び図5と同様に、光ファイバ10及び金属線20は、超電導磁石61と、推進コイル52及び浮上・案内コイル53と、の間に設置することが好適である。なお、光ファイバ10及び金属線20を車両60側に設置する態様の場合、受信部30は、車両60の内部に配置される。
【0026】
なお、図4図7においては、光ファイバ10は、金属線20よりもガイドウェイ50の側壁51側(y方向プラス側又はマイナス側)に配置されているが、これには限定されない。光ファイバ10は、金属線20よりも車両60側(y方向マイナス側又はプラス側)に配置されても良い。また、光ファイバ10は、金属線20の上端又は下端に配置されても良い。
【0027】
また、図3図7においては、車両60の左右両側(y方向の両側)に、2本の光ファイバ10をそれぞれ設置しているが、これには限定されない。車両60の左右の片側(y方向プラス側又はマイナス側)でのみ、車両60又はガイドウェイ50の異常を検知すれば良い場合は、1本の光ファイバ10を車両60の左右の片側にのみ設置すれば良い。また、図8に示されるように、車両60及び車両60の周囲を取り囲むように1本の光ファイバ10を設置しても良い。この場合、1本の光ファイバ10によって、車両60の左右両側(y方向の両側)で車両60又はガイドウェイ50の異常を検知することが可能となる。
【0028】
また、光ファイバ10は、センシング専用の光ファイバでも良いし、通信及びセンシング兼用の光ファイバでも良い。光ファイバ10が通信及びセンシング兼用の光ファイバである場合には、受信部30の前段で不図示のフィルタによりセンシング用の光信号を分波し、センシング用の光信号のみを受信部30で受信できるようにする。
【0029】
受信部30は、光ファイバ10から光信号(センシング用の光信号。以下、同じ)を受信する。例えば、受信部30は、光ファイバ10にパルス光を入射し、そのパルス光が光ファイバ10を伝送されることに伴い発生した後方散乱光を、光信号として受信する。
【0030】
ここで、上述したように、車両60の走行中は、車両60とガイドウェイ50の側壁51との間には、超電導磁石61と推進コイル52及び浮上・案内コイル53との磁気反応により磁力が発生している。
【0031】
また、車両60とガイドウェイ50の側壁51との間には、磁力に反応する鉄、ニッケル、コバルト等の磁性材料で構成される金属線20を設置している。これにより、金属線20は、車両60の走行中、上述した磁力の影響を受けて、振動を発生したり、発熱したり、音を発生したりする。
【0032】
また、磁力の影響を受けて、金属線20に発生した振動、発熱温度、及び音は、金属線20に密着する光ファイバ10に伝達される。その結果、光ファイバ10へ入射されたパルス光が、光ファイバ10を伝送されることに伴い発生する後方散乱光が変化し、よって受信部30が受信する光信号の特性が変化する。
【0033】
そのため、光ファイバ10は、金属線20が受けた磁力の影響を検知することが可能であり、受信部30が受信した光信号は、光ファイバ10が検知した、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報を含むことになる。なお、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報は、振動、発熱温度、及び音のうちの少なくとも1つを示す情報であれば良い。
【0034】
ここで、車両60及びガイドウェイ50には、超電導磁石61や推進コイル52に電流を流すタイミングや、推進コイル52の磁極の切り替え等の動作の異常が発生することがある。また、超電導磁石61、推進コイル52、浮上・案内コイル53の劣化、ガイドウェイ50への不審物の設置等の異常も発生することがある。このような異常が発生すると、車両60とガイドウェイ50の側壁51との間に発生する磁力が変化し、その結果、金属線20が受ける磁力の影響も変化する。
【0035】
そのため、検知部42は、受信部30が受信した光信号に含まれる、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報を分析することにより、車両60又はガイドウェイ50の異常を検知することが可能となる。
【0036】
そこで、取得部41は、受信部30が受信した光信号に含まれる、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報を取得する。そして、検知部42は、取得部41が取得した、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報に基づいて、車両60又はガイドウェイ50の異常を検知する。
【0037】
なお、車両60の長さや速度等に応じて、車両60がガイドウェイ50を通過する時間、すなわち異常を検出できる時間が変わってくる。そのため、一定の診断精度を確保するためには、車両60の編成数や走行速度等に応じて、パルス光の発信(入射)周期を変えても良い。
【0038】
以下、検知部42において、車両60又はガイドウェイ50の異常を検知する方法の例について、詳細に説明する。
光ファイバ10が検知した、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報には、磁力の影響を受けて金属線20で発生した振動の振動パターン、発熱温度の温度パターン、及び音の音響パターンが含まれており、これら振動パターン、温度パターン、及び音響パターンは、動的に変動する変動パターンとなる。また、車両60又はガイドウェイ50で異常が発生した場合には、これら振動パターン、温度パターン、及び音響パターンは、発生した異常の種別に応じた固有の変動パターンとなる。このうち、例えば、振動パターンは、発生した異常の種別に応じて、振動の強弱、振動位置、振動数の変動推移等が異なる固有の変動パターンとなる。
【0039】
すなわち、車両60又はガイドウェイ50で異常が発生した場合には、光ファイバ10が検知した、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報には、発生した異常の種別に応じて動的に変動する固有の振動パターン、温度パターン、及び音響パターンが含まれることになる。このことを利用して、検知部42は、以下に示す方法で、車両60又はガイドウェイ50の異常を検知する。なお、以下では、一例として、振動パターンを用いて、車両60又はガイドウェイ50の異常を検知する例について説明する。
【0040】
(A)方法A
検知部42は、検知対象とする異常の種別毎に、その異常が発生したときに実際に金属線20に発生し検知部42が検知した振動の振動パターンを、マッチング用パターンとして不図示のメモリ等に予め記憶させておく。
【0041】
まず、取得部41は、受信部30が受信した光信号に含まれる、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報を取得する。
続いて、検知部42は、取得部41が取得した情報に含まれる振動パターンを、マッチング用パターンと比較する。マッチング用パターンの中に、振動パターンとの適合率が閾値以上となったマッチング用パターンがある場合、検知部42は、そのマッチング用パターンに対応する異常が発生したと判断する。
【0042】
(B)方法B
検知部42は、検知対象とする異常の種別毎に、その異常を示す教師データと、その異常が発生したときに実際に金属線20に発生し検知部42が検知した振動の振動パターンと、の組を準備し、準備した各組を入力して、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)による学習モデルを予め構築し、不図示のメモリ等に予め記憶させておく。
【0043】
まず、取得部41は、受信部30が受信した光信号に含まれる、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報を取得する。
続いて、検知部42は、取得部41が取得した情報に含まれる振動パターンを、学習モデルに入力する。これにより、車両60又はガイドウェイ50で検知対象とする異常が発生した場合には、検知部42は、学習モデルの出力結果として、車両60又はガイドウェイ50で発生した異常の情報を得る。
【0044】
このように、上述した方法A及び方法Bによれば、検知部42は、車両60又はガイドウェイ50に異常が発生したことを判断できるだけでなく、発生した異常の種別を特定することもできる。
【0045】
続いて、図9を参照して、本実施の形態1に係る異常検知システムの動作の流れの例について説明する。
図9に示されるように、受信部30は、車両60とガイドウェイ50との間に生じた磁力の影響を受ける金属線20の状態を検知する光ファイバ10から、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報を含む光信号を受信する(ステップS11)。
【0046】
続いて、取得部41は、受信部30が受信した光信号に含まれる、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報を取得し、検知部42は、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報に基づいて、車両60又はガイドウェイ50の異常を検知する(ステップS12)。このステップS12は、例えば、上述した方法A,Bのいずれかを用いて行えば良い。
【0047】
上述したように本実施の形態1によれば、受信部30は、磁気浮上式鉄道の車両60とガイドウェイ50との間に生じた磁力の影響を受ける金属線20の状態を検知する光ファイバ10から、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報を含む光信号を受信する。検知部42は、光信号に含まれる、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報に基づいて、車両60又はガイドウェイ50の異常を検知する。
これにより、磁気浮上式鉄道の車両60又はガイドウェイ50の異常を検知することができる。
また、異常検知装置40は、受信部30から離れた位置に配置できるため、磁気浮上式鉄道の車両60又はガイドウェイ50の異常を、リモートからリアルタイムで検知することができる。
【0048】
<実施の形態2>
本実施の形態2に係る異常検知システムは、構成自体は上述した実施の形態1の構成と同様であるが、検知部42の機能を拡張している。
【0049】
上述した実施の形態1においては、検知部42は、車両60又はガイドウェイ50に異常が発生したと判断することはできるものの、異常が車両60又はガイドウェイ50のどちらで発生したかを判断することはできなかった。
【0050】
そこで、本実施の形態2においては、検知部42は、車両60又はガイドウェイ50に異常が発生したと判断した場合、異常が車両60又はガイドウェイ50のどちらで発生したかを判断する機能を追加で備える。さらに、検知部42は、異常が発生した発生場所を特定する機能も追加で備える。
【0051】
以下、検知部42において、異常が車両60又はガイドウェイ50のどちらで発生したかを判断する方法の例と、異常が発生した発生場所を特定する方法の例と、について、詳細に説明する。なお、これらの方法は、光ファイバ10及び金属線20がガイドウェイ50側又は車両60側のどちらに設置されているかに応じて異なる。そのため、以下では、これらの方法について、光ファイバ10及び金属線20の設置態様毎に説明する。
【0052】
(a)光ファイバ10及び金属線20がガイドウェイ50側に設置される場合
まず、図10を参照して、光ファイバ10及び金属線20がガイドウェイ50側に設置される場合における、上述した方法の例について説明する。なお、図10は、複数の車両60が連結された複数両編成の磁気浮上式鉄道が、光ファイバ10に沿って、受信部30から遠ざかる方向に走行している例である。
【0053】
検知部42は、以下の方法で、光信号が発生した位置(受信部30からの光ファイバ10の距離)を特定することが可能である。例えば、検知部42は、受信部30が光ファイバ10にパルス光を入射した時刻と、受信部30が光ファイバ10から光信号を受信した時刻と、の時間差に基づいて、その光信号が発生した位置を特定することが可能である。又は、検知部42は、受信部30が受信した光信号の受信強度に基づいて、その光信号が発生した位置を特定することが可能である。例えば、検知部42は、光信号の受信強度が小さいほど、その光信号が発生した位置は、受信部30から遠い位置と特定する。なお、光信号の発生場所の特定は、検知部42が行うことには限定されない。例えば、受信部30が、光信号の発生場所を特定し、取得部41が、受信部30から、光信号の発生場所の情報を取得しても良い。
【0054】
検知部42は、上述した方法で、光信号が発生した位置(受信部30からの光ファイバ10の距離)を特定することが可能である。そのため、検知部42は、任意の位置で発生した光信号を特定することが可能である。
【0055】
本例では、ガイドウェイ50側に設置された光ファイバ10上に所定の間隔で複数点のセンシングポイントを設定する。そして、検知部42は、複数点のセンシングポイント毎に、そのセンシングポイントで発生した光信号を特定し、特定した光信号に含まれる、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報に基づいて、車両60又はガイドウェイ50の異常を検知する。
【0056】
ガイドウェイ50側に設置された光ファイバ10上のセンシングポイントで異常を検知した場合に、そのセンシングポイントの位置(受信部30からの光ファイバ10の距離)及びそのセンシングポイントで異常を検知した時刻を特定し、特定した位置及び時刻をグラフにプロットしたとする。すると、例えば、図10のような特性のグラフが得られる。
【0057】
図10の上図の例では、ガイドウェイ50側に設置された光ファイバ10上の1点のセンシングポイントにおいて、継続して複数回異常を検知している。この場合、検知部42は、ガイドウェイ50側で異常が発生したと判断する。また、検知部42は、異常を検知したセンシングポイントの位置を、異常の発生場所として特定する。なお、図10の上図の例では、検知部42は、光ファイバ10上の1点のセンシングポイントでのみ異常を検知した場合に、ガイドウェイ50側で異常が発生したと判断しているが、これには限定されない。例えば、検知部42は、光ファイバ10上の所定数以下のセンシングポイントでのみ異常を検知した場合に、ガイドウェイ50側で異常が発生したと判断しても良い。
【0058】
一方、図10の下図の例では、ガイドウェイ50側に設置された光ファイバ10上の複数点のセンシングポイントにおいて、時間的に連続して異常を検知している。この場合、検知部42は、車両60側で異常が発生したと判断する。また、検知部42は、異常を検知した複数点のセンシングポイントのうち任意のセンシングポイントで異常を検知した時刻の車両60の位置情報を、磁気浮上式鉄道を管理する管理センター等から取得する。そして、検知部42は、ガイドウェイ50側の任意のセンシングポイントを、異常を検知した時刻に通過したのが、車両60のどの箇所(x方向の箇所)であるか特定し、特定した車両60の箇所を、異常の発生場所として特定する。
【0059】
(b)光ファイバ10及び金属線20が車両60側に設置される場合
続いて、図11を参照して、光ファイバ10及び金属線20が車両60側に設置される場合における、上述した方法について説明する。なお、図11は、複数の車両60が連結された複数両編成の磁気浮上式鉄道が、光ファイバ10に沿って、受信部30から遠ざかる方向に走行している例である。
【0060】
本例でも、図10と同様に、車両60側に設置された光ファイバ10上に所定の間隔で複数点のセンシングポイントを設定する。そして、検知部42は、複数点のセンシングポイント毎に、そのセンシングポイントで発生した光信号を特定し、特定した光信号に含まれる、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報に基づいて、車両60又はガイドウェイ50の異常を検知する。
【0061】
そして、図10と同様に、車両60側に設置された光ファイバ10上のセンシングポイントで異常を検知した場合に、そのセンシングポイントの位置(受信部30からの光ファイバ10の距離)及びそのセンシングポイントで異常を検知した時刻を特定し、特定した位置及び時刻をグラフにプロットしたとする。すると、例えば、図11のような特性のグラフが得られる。
【0062】
図11の上図の例では、車両60側に設置された光ファイバ10上の1点のセンシングポイントにおいて、継続して複数回異常を検知している。この場合、検知部42は、車両60側で異常が発生したと判断する。また、検知部42は、異常を検知したセンシングポイントの位置を、異常の発生場所として特定する。なお、図11の上図の例では、検知部42は、光ファイバ10上の1点のセンシングポイントでのみ異常を検知した場合に、車両60側で異常が発生したと判断しているが、これには限定されない。例えば、検知部42は、光ファイバ10上の所定数以下のセンシングポイントでのみ異常を検知した場合に、車両60側で異常が発生したと判断しても良い。
【0063】
一方、図11の下図の例では、車両60側に設置された光ファイバ10上の複数点のセンシングポイントにおいて、時間的に連続して異常を検知している。この場合、検知部42は、ガイドウェイ50側で異常が発生したと判断する。また、検知部42は、異常を検知した複数点のセンシングポイントのうち任意のセンシングポイントで異常を検知した時刻の車両60の位置情報を、管理センター等から取得する。そして、検知部42は、車両60側の任意のセンシングポイントが、異常を検知した時刻に、ガイドウェイ50のどの箇所(x方向の箇所)を通過したか特定し、特定したガイドウェイ50の箇所を、異常の発生場所として特定する。
【0064】
続いて、図12を参照して、本実施の形態2に係る異常検知システムの動作の流れの例について説明する。
図12に示されるように、受信部30は、車両60とガイドウェイ50との間に生じた磁力の影響を受ける金属線20の状態を検知する光ファイバ10から、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報を含む光信号を受信する(ステップS21)。
【0065】
続いて、取得部41は、受信部30が受信した光信号に含まれる、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報を取得し、検知部42は、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報に基づいて、車両60又はガイドウェイ50の異常を検知する(ステップS22)。このステップS22は、例えば、上述した方法A,Bのいずれかを用いて行えば良い。
【0066】
ステップS22において、検知部42は、車両60又はガイドウェイ50に異常が発生したと判断した場合(ステップS22のYes)、続いて、受信部30が受信した光信号に基づいて、異常が車両60又はガイドウェイ50のどちらで発生したかを判断する(ステップS23)。さらに、検知部42は、受信部30が受信した光信号と、異常が発生したときの車両60の位置と、に基づいて、異常が発生した発生場所を特定する(ステップS24)。このステップS23,S24は、例えば、図10又は図11を用いて説明した方法のいずれかを用いて行えば良い。
【0067】
上述したように本実施の形態2によれば、検知部42は、磁気浮上式鉄道の車両60又はガイドウェイ50に異常が発生したと判断した場合、受信部30が受信した光信号に基づいて、異常が車両60又はガイドウェイ50のどちらで発生したかを判断する。さらに、検知部42は、受信部30が受信した光信号と、異常が発生したときの車両60の位置と、に基づいて、異常が発生した発生場所を特定する。
これにより、磁気浮上式鉄道の車両60又はガイドウェイ50のどちらで異常が発生したかを判断できると共に、異常の発生場所も特定できる。
その他の効果は、上述した実施の形態1と同様である。
【0068】
<実施の形態3>
続いて、図13を参照して、本実施の形態3に係る異常検知システムの構成例について説明する。
図13に示されるように、本実施の形態3に係る異常検知システムは、上述した実施の形態1,2の構成と比較して、異常検知装置40の内部に報知部43が追加されている点が異なる。なお、図13においては、車両60の左右両側(y方向の両側)に、2本の光ファイバ10をそれぞれ設置しているが、図8に示したように、車両60及び車両60の周囲を取り囲むように1本の光ファイバ10を設置しても良い。この場合、1本の光ファイバ10によって、車両60の左右両側(y方向の両側)で車両60又はガイドウェイ50の異常を検知することが可能となる。
【0069】
検知部42が、車両60又はガイドウェイ50に異常が発生したと判断した場合、報知部43は、異常が発生した旨を報知先の端末(不図示)に報知する。報知先の端末は、例えば、磁気浮上式鉄道を管理する管理センター、駅、車両60の運転室等に設置された端末、磁気浮上式鉄道を運転する運転士が携帯する端末等である。報知方法は、例えば、報知先の端末のディスプレイやモニター等にGUI(Graphical User Interface)画面を表示する方法でも良いし、報知先の端末のスピーカからメッセージを音声出力する方法でも良い。
【0070】
また、検知部42が、上述した実施の形態2のように、異常が車両60又はガイドウェイ50のどちらで発生したかを判断する機能と、異常が発生した発生場所を特定する機能と、を備える場合、報知部43は、上述した報知と共に、異常が車両60又はガイドウェイ50のどちらで発生したかを通知したり、異常の発生場所を通知したりしても良い。
【0071】
また、検知部42が、上述した実施の形態2のように、異常が車両60又はガイドウェイ50のどちらで発生したかを判断する機能を備える場合、報知部43は、異常が車両60又はガイドウェイ50のどちらで発生したかに応じて、異なる報知先の端末に異常が発生した旨を報知しても良い。例えば、報知部43は、車両60に異常が発生した場合には、運転室に設置された端末や、運転士が携帯する端末に報知を行い、ガイドウェイ50に異常が発生した場合には、管理センターや駅に設置された端末に報知を行うことが考えられる。
【0072】
続いて、図14を参照して、本実施の形態3に係る異常検知システムの動作の流れの例について説明する。
図14に示されるように、受信部30は、車両60とガイドウェイ50との間に生じた磁力の影響を受ける金属線20の状態を検知する光ファイバ10から、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報を含む光信号を受信する(ステップS31)。
【0073】
続いて、取得部41は、受信部30が受信した光信号に含まれる、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報を取得し、検知部42は、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報に基づいて、車両60又はガイドウェイ50の異常を検知する(ステップS32)。このステップS32は、例えば、上述した方法A,Bのいずれかを用いて行えば良い。
【0074】
ステップS32において、検知部42が、車両60又はガイドウェイ50に異常が発生したと判断した場合(ステップS32のYes)、続いて、報知部43は、異常が発生した旨を報知先の端末に報知する(ステップS33)。このとき、検知部42が、上述した実施の形態2の機能を備える場合、報知部43は、上述した報知と共に、異常が車両60又はガイドウェイ50のどちらで発生したかを通知したり、異常の発生場所を通知したりしても良い。また、報知部43は、異常が車両60又はガイドウェイ50のどちらで発生したかに応じて、異なる報知先の端末に異常が発生した旨を報知しても良い。
【0075】
上述したように本実施の形態3によれば、検知部42が、磁気浮上式鉄道の車両60又はガイドウェイ50に異常が発生したと判断した場合、報知部43は、異常が発生した旨を報知先の端末に報知する。
これにより、磁気浮上式鉄道の車両60又はガイドウェイ50に異常が発生したことを、報知先の端末に知らせることができる。
その他の効果は、上述した実施の形態1と同様である。
【0076】
<他の実施の形態>
上述した実施の形態においては、光ファイバ10及び金属線20を車両60側に設置する場合、車両60の側面に光ファイバ10及び金属線20を設置したが、これには限定されない。光ファイバ10及び金属線20は、車両60とガイドウェイ50の側壁51との間に発生した磁力の影響を金属線20が受ける位置に設置すれば良い。そのため、光ファイバ10及び金属線20は、車両60の上部又は下部において、金属線20が磁力の影響を受ける位置に設置しても良い。また、光ファイバ10及び金属線20は、車両60の外部に設置することには限定されず、車両60の内部において、金属線20が磁力の影響を受ける位置に設置しても良い。
【0077】
また、上述した実施の形態においては、報知部43は、車両60又はガイドウェイ50に異常が発生した場合、異常が発生した旨を報知先の端末に報知したが、これには限定されない。車両60又はガイドウェイ50に異常が発生した場合、車両60を制御して、車両60の減速や停止等を行っても良い。このような車両60の制御は、不図示の制御部が行っても良いし、報知部43が行っても良い。
【0078】
また、上述した実施の形態において、検知部42は、車両60又はガイドウェイ50の異常の検知を、定期的に行っても良い。このとき、検知部42は、金属線20が受けた磁力の影響を示す情報に基づいて、異常の発生はないと判断しても、車両60又はガイドウェイ50の状態を特定し、特定した状態を保持しておいても良い。そして、検知部42は、状態の経時的な状態変化に基づいて、車両60又はガイドウェイ50の異常の予兆を検知しても良い。
【0079】
また、上述した実施の形態においては、検知部42は、金属線20が受けた磁力の影響に基づいて、車両60又はガイドウェイ50の異常を検知したが、これには限定されない。例えば、光ファイバ10がガイドウェイ50側に設置される場合、光ファイバ10は、車両60の通過、土砂崩れ、動物や人間の侵入、地震等に起因する振動、ガイドウェイ50自体の温度、周辺での異音等を検知でき、光ファイバ10が検知したこれらの情報も光信号に含まれる。そのため、検知部42は、これらの情報に基づいて、車両60の通過、土砂崩れ等を検知しても良い。また、光ファイバ10が車両60側に設置される場合、光ファイバ10は、車両60自体の振動、温度、走行中や停車中の音等を検知でき、光ファイバ10が検知したこれらの情報も光信号に含まれる。そのため、検知部42は、これらの情報に基づいて、車両60の状態を検知しても良い。
【0080】
また、上述した実施の形態においては、受信部30と異常検知装置40とを分離しているが、これには限定されない。受信部30と異常検知装置40とを一体化し、異常検知装置40の内部に受信部30を設けても良い。図15に、異常検知装置40の内部に受信部30を設けた異常検知システムの構成例を示す。図15の例では、受信部30及び検知部42は、同じ異常検知装置40の内部に設けられているため、取得部41が除去されている。なお、図15に示される異常検知システムは、上述した実施の形態3のように、異常検知装置40の内部に報知部43を追加しても良い。
【0081】
また、上述した実施の形態においては、車両60の左右両側(y方向の両側)に設置した2本の光ファイバ10に対して、又は、車両60及び車両60の周囲を取り囲むように設置した1本の光ファイバ10に対して、受信部30及び異常検知装置40をそれぞれ1つずつ設けているが、これには限定されない。例えば、複数本の光ファイバ10を設ける場合、複数本の光ファイバ10にそれぞれ対応して、複数の受信部30及び複数の異常検知装置40を設けても良い。
【0082】
<実施の形態に係る異常検知装置のハードウェア構成>
続いて以下では、図16を参照して、上述した実施の形態に係る異常検知装置40を実現するコンピュータ70のハードウェア構成について説明する。
【0083】
図16に示されるように、コンピュータ70は、プロセッサ701、メモリ702、ストレージ703、入出力インタフェース(入出力I/F)704、及び通信インタフェース(通信I/F)705等を備える。プロセッサ701、メモリ702、ストレージ703、入出力インタフェース704、及び通信インタフェース705は、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路で接続されている。
【0084】
プロセッサ701は、例えばCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置である。メモリ702は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリである。ストレージ703は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、またはメモリカード等の記憶装置である。また、ストレージ703は、RAMやROM等のメモリであっても良い。
【0085】
ストレージ703は、異常検知装置40が備える構成要素の機能を実現するプログラムを記憶している。プロセッサ701は、これら各プログラムを実行することで、異常検知装置40が備える構成要素の機能をそれぞれ実現する。ここで、プロセッサ701は、上記各プログラムを実行する際、これらのプログラムをメモリ702上に読み出してから実行しても良いし、メモリ702上に読み出さずに実行しても良い。また、メモリ702やストレージ703は、異常検知装置40が備える構成要素が保持する情報やデータを記憶する役割も果たす。
【0086】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータ(コンピュータ70を含む)に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Compact Disc-ROM)、CD-R(CD-Recordable)、CD-R/W(CD-ReWritable)、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAMを含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されても良い。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0087】
入出力インタフェース704は、表示装置7041、入力装置7042、音出力装置7043等と接続される。表示装置7041は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、モニターのような、プロセッサ701により処理された描画データに対応する画面を表示する装置である。入力装置7042は、オペレータの操作入力を受け付ける装置であり、例えば、キーボード、マウス、及びタッチセンサ等である。表示装置7041及び入力装置7042は一体化され、タッチパネルとして実現されていても良い。音出力装置7043は、スピーカのような、プロセッサ701により処理された音響データに対応する音を音響出力する装置である。
【0088】
通信インタフェース705は、外部の装置との間でデータを送受信する。例えば、通信インタフェース705は、有線通信路または無線通信路を介して外部装置と通信する。
【0089】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上述した実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
例えば、上述した実施の形態は、一部又は全部を相互に組み合わせて用いても良い。
【0090】
また、上記の実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
磁気浮上式鉄道の車両とガイドウェイとの間に生じた磁力の影響を受ける金属部材の状態を検知する光ファイバと、
前記光ファイバから、前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報を含む光信号を受信する受信部と、
前記光信号に含まれる、前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報に基づいて、前記車両又は前記ガイドウェイの異常を検知する検知部と、
を備える、異常検知システム。
(付記2)
前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報は、前記磁力によって生じた、前記金属部材の振動、発熱温度、又は音の少なくとも1つを含む、
付記1に記載の異常検知システム。
(付記3)
前記検知部は、
前記車両又は前記ガイドウェイに異常が発生したと判断した場合、前記光信号に基づいて、前記異常が前記車両又は前記ガイドウェイのどちらで発生したかを判断する、
付記1又は2に記載の異常検知システム。
(付記4)
前記検知部は、
前記車両又は前記ガイドウェイに異常が発生したと判断した場合、前記光信号と、前記異常が発生したときの前記車両の位置と、に基づいて、前記異常が発生した発生場所を特定する、
付記3に記載の異常検知システム。
(付記5)
前記検知部が前記車両又は前記ガイドウェイに異常が発生したと判断した場合、前記異常が発生した旨を報知する報知部をさらに備える、
付記3又は4に記載の異常検知システム。
(付記6)
前記報知部は、
前記異常が前記車両又は前記ガイドウェイのどちらで発生したかに応じて、異なる報知先に前記異常が発生した旨を報知する、
付記5に記載の異常検知システム。
(付記7)
磁気浮上式鉄道の車両とガイドウェイとの間に生じた磁力の影響を受ける金属部材の状態を検知する光ファイバから受信した光信号に含まれる、前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報を取得する取得部と、
前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報に基づいて、前記車両又は前記ガイドウェイの異常を検知する検知部と、
を備える、異常検知装置。
(付記8)
前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報は、前記磁力によって生じた、前記金属部材の振動、発熱温度、又は音の少なくとも1つを含む、
付記7に記載の異常検知装置。
(付記9)
前記検知部は、
前記車両又は前記ガイドウェイに異常が発生したと判断した場合、前記光信号に基づいて、前記異常が前記車両又は前記ガイドウェイのどちらで発生したかを判断する、
付記7又は8に記載の異常検知装置。
(付記10)
前記検知部は、
前記車両又は前記ガイドウェイに異常が発生したと判断した場合、前記光信号と、前記異常が発生したときの前記車両の位置と、に基づいて、前記異常が発生した発生場所を特定する、
付記9に記載の異常検知装置。
(付記11)
前記検知部が前記車両又は前記ガイドウェイに異常が発生したと判断した場合、前記異常が発生した旨を報知する報知部をさらに備える、
付記9又は10に記載の異常検知装置。
(付記12)
前記報知部は、
前記異常が前記車両又は前記ガイドウェイのどちらで発生したかに応じて、異なる報知先に前記異常が発生した旨を報知する、
付記11に記載の異常検知装置。
(付記13)
異常検知システムによる異常検知方法であって、
磁気浮上式鉄道の車両とガイドウェイとの間に生じた磁力の影響を受ける金属部材の状態を検知する光ファイバから、前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報を含む光信号を受信する受信ステップと、
前記光信号に含まれる、前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報に基づいて、前記車両又は前記ガイドウェイの異常を検知する検知ステップと、
を含む、異常検知方法。
(付記14)
前記金属部材が受けた磁力の影響を示す情報は、前記磁力によって生じた、前記金属部材の振動、発熱温度、又は音の少なくとも1つを含む、
付記13に記載の異常検知方法。
(付記15)
前記検知ステップでは、
前記車両又は前記ガイドウェイに異常が発生したと判断した場合、前記光信号に基づいて、前記異常が前記車両又は前記ガイドウェイのどちらで発生したかを判断する、
付記13又は14に記載の異常検知方法。
(付記16)
前記検知ステップでは、
前記車両又は前記ガイドウェイに異常が発生したと判断した場合、前記光信号と、前記異常が発生したときの前記車両の位置と、に基づいて、前記異常が発生した発生場所を特定する、
付記15に記載の異常検知方法。
(付記17)
前記検知ステップで前記車両又は前記ガイドウェイに異常が発生したと判断した場合、前記異常が発生した旨を報知する報知ステップをさらに含む、
付記15又は16に記載の異常検知方法。
(付記18)
前記報知ステップでは、
前記異常が前記車両又は前記ガイドウェイのどちらで発生したかに応じて、異なる報知先に前記異常が発生した旨を報知する、
付記17に記載の異常検知方法。
【0091】
この出願は、2020年3月30日に出願された日本出願特願2020-060394を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0092】
10 光ファイバ
20 金属線
30 受信部
40 異常検知装置
41 取得部
42 検知部
43 報知部
50 ガイドウェイ
51 側壁
52 推進コイル
53 浮上・案内コイル
60 車両
61 超電導磁石
70 コンピュータ
701 プロセッサ
702 メモリ
703 ストレージ
704 入出力インタフェース
7041 表示装置
7042 入力装置
7043 音出力装置
705 通信インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16