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特許7364085熱収縮性ポリエステル系フィルム、熱収縮性ラベル、及び包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】熱収縮性ポリエステル系フィルム、熱収縮性ラベル、及び包装体
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20231011BHJP
   B29C 61/06 20060101ALI20231011BHJP
   G09F 3/04 20060101ALI20231011BHJP
   B65D 23/00 20060101ALI20231011BHJP
   B65D 25/36 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B29C61/06
G09F3/04 C
B65D23/00 H
B65D25/36
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022540254
(86)(22)【出願日】2021-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2021027385
(87)【国際公開番号】W WO2022024936
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2020128547
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】春田 雅幸
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/018345(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/147249(WO,A1)
【文献】特開2020-097745(JP,A)
【文献】特開2020-073637(JP,A)
【文献】特開2019-178263(JP,A)
【文献】特開2019-123252(JP,A)
【文献】特開2009-114422(JP,A)
【文献】特開2003-145619(JP,A)
【文献】特開2019-177930(JP,A)
【文献】特開2019-178235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02、5/12-5/22
B29C 55/00-55/30、61/00-61/10
B65D 23/00-25/56
G09F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項6】
請求項5に記載の熱収縮性ラベルで、包装対象物の少なくとも外周の一部を被覆して熱収縮させて形成されることを特徴とする包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性ポリエステル系フィルムに関し、詳しくはフィルムの突き刺し強度、およびPETボトル飲料のラベルにした時の突き刺し強度が高く、落袋性に優れた熱収縮性ポリエステル系フィルム、熱収縮性ラベル、及び包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス瓶やPETボトル等の保護と商品の表示を兼ねたラベル包装、キャップシール、集積包装等の用途に、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等からなる延伸フィルム(所謂、熱収縮性フィルム)が広範に使用されるようになってきている。そのような熱収縮性フィルムの内、ポリ塩化ビニル系フィルムは、耐熱性が低い上に、焼却時に塩化水素ガスを発生し、ダイオキシンの原因となる等の問題がある。また、ポリスチレン系フィルムは、耐溶剤性に劣り、印刷の際に特殊な組成のインキを使用しなければならない上、高温で焼却する必要があり、焼却時に異臭を伴って多量の黒煙が発生するという不具合を生じる。それゆえ、耐熱性が高く、焼却が容易であり、耐溶剤性に優れたポリエステル系の熱収縮性フィルムが、収縮ラベルとして広汎に利用されるようになってきており、PET容器の流通量の増大に伴って、使用量が増加している傾向にある。
【0003】
通常の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、幅方向に大きく収縮するものが広く利用されている。そのフィルムはテンター延伸法等によって延伸され、広幅のマスターロールを作製し、その後マスターロールを任意の幅でスリットしながら任意の巻長のロール状に巻取りフィルムロール製品とする。そのフィルムに意匠性を持たせ、商品の表示の目的で、ロール形態で印刷工程に掛けられる。印刷後は、必要な幅に再度スリットしロール状に巻き取られた後、溶剤接着によるセンターシール工程を経てチューブ状に製袋され、ロール状に巻き取られる(ラベルのロールになる)。
【0004】
チューブ状に製袋され巻き取られたラベルは、ロールから巻き出しながら必要な長さにカットされ、環状にラベルになる。環状ラベルは手かぶせ等の方法で、被包装物に装着され、スチームトンネルもしくは熱風トンネル等を通過して収縮させてラベルとなる。
【0005】
近年、ゴミの減量化を目的に、PETボトル容器の重量が低下し、PETボトル容器の厚みも薄くなっている。PETボトル容器の厚みが薄くなると、落下時にPETボトル容器が変形しラベルが破れてしまうといった問題が生じる。また熱収縮フィルムを用いたラベルも減容化として厚みが薄いラベルが求められている。フィルムの厚みも45~60μmから近年は20~40μmの厚みが増加している。しかしフィルム厚みを減少させる事でラベルの落袋性は悪くなる。従ってフィルムの落袋性を改善する事は重要である。
また厚みが薄くなると腰感が低下し、フィルムを印刷してラベルにした後に PETボトルへ装着する工程で、ラベルが屈曲し装着不良になる懸念がある。
【0006】
フィルムの落下時の耐破袋性を改善する方法が、特許文献1に記載されている。それによるとフィルム特性として耐破袋性には突き刺し強度が重要な要因となっている。しかし特許文献1に記載されているのは、ポリエステルとポリブチレンテレフタレートを混合した組成物を用いた非熱収縮フィルムを袋にした時の耐破袋性の評価であり、熱収縮フィルムや熱収縮フィルムを用いたラベルに関して記載されていない。
【0007】
また、PETボトルへ装着する工程でラベルが屈曲して装着不良になる事を改善する方法が、特許文献2に記載されている。それによると フィルムを非収縮方向と収縮方向の二軸に延伸する事で、ラベル装着時の高さ方向(非収縮方向)のフィルム強度を上げる事が記されている。しかしこの方法では、フィルム幅方向だけでなく長手方向にも延伸する二軸延伸の工程があるので、必然的に設備が長大となり好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2020-12086号公報
【文献】特開2014-24253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、主収縮方向に高い熱収縮率を有した上で、フィルム突き刺し強度が高くボトル落下時の耐破袋性を有し、かつフィルムの密度が高いため、腰感に優れた熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決してなる本発明は、以下の構成よりなる。
1.エチレンテレフタレートユニットを全エステルユニット100モル%中、60モル%以上95モル%以下含有し、ジエチレングリコールを多価アルコール成分100モル%中、
5モル%以上40モル%以下含有するとともに、全ポリエステル樹脂成分中において非晶質成分となりうるモノマー成分由来の構成ユニットを0モル%以上5モル%以下含有する熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、下記要件(1)~(5)を満たす事を特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
(1)90℃の温水にフィルムを10秒間浸漬したときの温湯熱収縮率が、フィルム幅方向で40%以上80%以下
(2)90℃の温水にフィルムを10秒間浸漬したときの温湯熱収縮率が、フィルム長手方向で-5%以上15%以下
(3)フィルムの突き刺し強度が0.2N/μm以上0.6N/μm以下
(4)フィルムの密度が1.330g/cm以上1.385g/cm以下
(5)フィルム長手方向の屈折率が1.575以下
2.フィルムの厚みが15μm以上であることを特徴とする、1.に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
3.フィルム厚み20μmでのヘイズが2%以上10%以下であることを特徴とする、1.又は2.に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
4.フィルムを幅方向へ10%収縮させた後の突刺し強度が0.1N/μm以上0.5N/μm以下であることを特徴とする、1.~3.のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
5.前記1.~4.のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いた熱収縮性ラベル。
6.前記5.に記載の熱収縮性ラベルで、包装対象物の少なくとも外周の一部を被覆して熱収縮させて形成されることを特徴とする包装体。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、高い収縮率を有するだけでなく、10%収縮後の突き刺し強度が高いので、PETボトルに装着した後のラベルが落下しても破袋し難い。また密度が高いので、PETボトルへの装着時への不良が低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムについて詳しく説明する。なお、熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法は、後に詳述するが、熱収縮性フィルムは通常、ロール等を用いて搬送し、延伸することにより得られる。このとき、フィルムの搬送方向(製膜方向)を長手方向と称し、前記長手方向に直交する方向をフィルム幅方向と称する。従って、以下で示す熱収縮性ポリエステル系フィルムの幅方向とは、ロール巻き出し方向に対し垂直な方向であり、フィルム長手方向とは、ロールの巻き出し方向に平行な方向をいう。
【0013】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、エチレンテレフタレートユニットを全エステルユニット100モル%中、60モル%以上95モル%以下含有し、ジエチレングリコールを多価アルコール成分100モル%中、5モル%以上40モル%以下含有するとともに、全ポリエステル樹脂成分中において非晶質成分となりうるモノマー成分由来の構成ユニットを0モル%以上5モル%以下含有する熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、下記要件(1)~(5)を満たす事を特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルムである。
(1)90℃の温水にフィルムを10秒間浸漬したときの温湯熱収縮率が、フィルム幅方向で40%以上80%以下
(2)90℃の温水にフィルムを10秒間浸漬したときの温湯熱収縮率が、フィルム長手方向で-5%以上15%以下
(3)フィルムの突き刺し強度が0.2N/μm以上0.6N/μm以下
(4)フィルムの密度が1.33g/cm以上1.385g/cm以下
(5)フィルム長手方向の屈折率が1.575以下
【0014】
熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいて、高い収縮性を得るために例えばエチレンテレフタレートからなるホモポリマー(PET)に、他の多価カルボン酸成分や他の多価アルコール成分を共重合して使用することが広く行われている。該共重合する成分として使用する多価アルコール成分として、例えばネオペンチルグリコールや1,4-シクロヘキサンジタノールが考えられ広く使用されている。これらの成分を共重合したフィルムの場合、ジエチレングリコールフィルムに比較し、ケミカルコストが高い。また、ジエチレングリコールを共重合した原料レジンを得る場合、ジエチレングリコールは常温で液体であるためネオペンチルグリコールなどの粉体原料で必須の溶融工程が不要となる。さらに、ネオペンチルグリコール比べて、重合活性が高い上に、生産性の低下に繋がる重合時の発泡が少ないというメリットもある。
またジエチレングリコールに比較し、ネオペンチルグリコールや1,4-シクロヘキサンジタノールを共重合したポリエステル原料は密度が低いので、それで製膜されたフィルムは密度が低くなり、腰感が劣る。
【0015】
本発明のフィルムは、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするものである。ここで主たる構成成分とは、フィルムを構成する全ポリマー構成成分のうち60モル%以上がエチレンテレフタレートであることを意味している。エチレンテレフタレートを65モル%以上含有することがより好ましい。エチレンテレフタレートを主たる構成成分として用いることにより、高い密度および優れた機械的強度と透明性を有することができる。
【0016】
ポリエチレンテレフタレート(以下、単にPETということがある)の重合法としては、テレフタル酸とエチレングリコール、および必要に応じて他のジカルボン酸成分およびジオール成分を直接反応させる直接重合法、およびテレフタル酸のジメチルエステル(必要に応じて他のジカルボン酸のメチルエステルを含む)とエチレングリコール(必要に応じて他のジオール成分を含む)とをエステル交換反応させるエステル交換法等の任意の製造方法が利用され得る。
【0017】
本発明のフィルムで使用するポリエステルを構成するテレフタル酸以外のジカルボン酸成分としてはイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。
【0018】
脂肪族ジカルボン酸(例えばアジピン酸、セバシン酸、デカジカルボン酸等)を含有させる場合、含有率は3モル%未満であることが好ましい。これらの脂肪族ジカルボン酸を3モル%以上含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、高速装着時のフィルム腰が不十分である。
【0019】
また、3価以上の多価カルボン酸(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物等)を含有させないことが好ましい。これらの多価カルボン酸を含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは必要な収縮性を達成しにくくなる。
【0020】
本発明のフィルムで使用するポリエステルを構成する多価アルコール成分100モル%の
うちジエチレングリコールが、5モル%以上40モル%以下であることが必要である。前記範囲内の量でジエチレングリコールを含有することにより、高い熱収縮性を付与することができる。ジエチレングリコールが5モル%未満であると、90℃の温湯収縮率が70%以上といった高い収縮率のフィルムを得ることが難しくなり好ましくない。ジエチレングリコールは 6モル%以上であるとより好ましく、8モル%以上であると特に好ましい。ジエチレングリコールの上限は高くても問題無いが、あまりに高いと重合時の活性化の低下や発泡、またフィルムにする際の溶融押出し工程での異物が懸念されるので、本発明では上限を40モル%とした。
【0021】
本発明で使用するポリエステルを構成するエチレングリコール及びジエチレングリコール以外の多価アルコール成分としては、1-3プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジ-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、1-4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、ビスフェノールA等の芳香族系ジオール等が挙げられる。
【0022】
炭素数8個以上のジオール(例えばオクタンジオール等)、又は3価以上の多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、トリメリトールエタン、グリセリン、ジグリセリン等)は含有させないことが好ましい。これらのジオール、又は多価アルコールを含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な高収縮を達成しにくくなる。
【0023】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中には、必要に応じて各種の添加剤、例えば、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0024】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中には、フィルムの作業性(滑り性)を良好にする滑剤としての微粒子を添加することが好ましい。微粒子としては、任意のものを選択することができるが、例えば、無機系微粒子としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等、有機系微粒子としては、例えば、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子等を挙げることができる。微粒子の平均粒径は、0.05~3.0μmの範囲内(コールターカウンタで測定した場合)で、必要に応じて適宜選択することができる。
【0025】
熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中に上記粒子を配合する方法としては、例えば、ポリエステル系樹脂を製造する任意の段階において添加することができるが、エステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めるのが好ましい。また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールまたは水等に分散させた粒子のスラリーとポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法、または混練押出し機を用いて、乾燥させた粒子とポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法等によって行うのも好ましい。
【0026】
なお前述のモノマー成分のうち、非晶質成分となり得るモノマーとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6--ナフタレンジカルボン酸、2,2-ジエチル-
1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,
2-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジ-n-ブチル-1,3-プロパ
ンジオール、ヘキサンジオールを挙げることもできる。共重合ポリエステル中の該非晶質成分となり得るモノマーの含有量は0モル%以上5モル%以下の量であることが好ましく、含有しないこと(すなわち0モル%)がより好ましい。
【0027】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、90℃の温水中で無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、下式1により算出したフィルムの主収縮方向の熱収縮率(すなわち、90℃の温湯熱収縮率)が、40%以上80%以下であることが好ましい。
熱収縮率={(収縮前の長さ-収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%)・・式1
【0028】
90℃における主収縮方向の温湯熱収縮率が40%未満であると、飲料ラベル用途や弁当包装のフィルムとして使用する場合に、収縮量が小さいために、熱収縮した後のラベルシワやタルミが生じてしまうので好ましくない。90℃の温湯収縮率は43%以上であるとより好ましく、46%以上であると特に好ましく、50%以上であると最も好ましい。
90℃における主収縮方向の温湯熱収縮率が80%より高くても問題無いが、本発明では90℃の温湯熱収縮率が80%より高いフィルムを得る事ができなかったので、上限を80%とした。
【0029】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、90℃における主収縮方向と直交する長手方向の温湯熱収縮率が-5%以上15%以下であることが好ましい。長手方向の90℃の温湯収縮率がー5%未満であると、飲料ラベル用途で使用する場合に、ラベルが伸びてPETボトルでのラベル高さが長くなり好ましくない。長手方向の90℃の温湯収縮率は-4%以上であるとより好ましく、-3%以上であると特に好ましい。
長手方向の90℃の温湯収縮率が15%より大きいと、飲料ラベル用途で使用する場合に、ラベルが縮みPETボトルでのラベル高さが短くなり好ましくない。また収縮後のラベル歪みの原因ともなる。長手方向の90℃の温湯収縮率は13%以下であるとより好ましく、11%以下であるとさらに好ましく、8%以下であると特に好ましく、5%以下であると最も好ましい。
【0030】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、突き刺し強度が0.2N/μm以上0.6N/μm以下であることが好ましい。なお、突き刺し強度の測定は実施例に記載の方法で行うものとする。0.2N/μm以下であると、厚みが薄い熱収縮フィルムを使用した飲料用PETボトルラベルでは、自動販売機で購入する際に落下すると、ラベルが破袋するので好ましくない。突き刺し強度は0.25N/μm以上であるとより好ましく、0.3N/μm以上であると特に好ましい。突き刺し強度が0.6N/15mmより高くても問題無いが、本発明では突き刺し強度が0.6N/μmより高いフィルムを得る事ができなかったので、上限を0.6N/μmとした。
【0031】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、フィルムを幅方向へ10%収縮させた後の突き刺し強度が0.1N/μm以上0.5N/μm以下であることが好ましい。熱収縮性ポリエステル系フィルムは一般的に熱収縮させて使用するので、10%収縮は収縮後のフィルムは収縮後のラベルを想定したフィルムである。突き刺し強度が0.1N/μm以下であると、厚みが薄い熱収縮フィルムを使用した飲料用PETボトルラベルでは、自動販売機で購入する際に落下すると、ラベルが破袋するので好ましくない。10%収縮後のフィルムの突き刺し強度は0.15N/μm以上であるとより好ましく、0.2N/μm以上であると特に好ましい。10%収縮後のフィルムの突き刺し強度が0.5N/15mmより高くても問題無いが、本発明では10%収縮後のフィルムの突き刺し強度が0.5N/μmより高いフィルムを得る事ができなかったので、上限を0.5N/μmとした。
【0032】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、フィルム長手方向の屈折率が1.575以下であることが好ましい。なお、屈折率の測定は実施例に記載の方法で行うものとする。
フィルムは一般的に屈折率が高いとフィルムの引張破断強度は高くなるが、フィルム引張破断伸度は低下する。フィルム引張破断伸度が低下する、つまりフィルムが伸び難い(脆くなる)ので、厚みが薄い熱収縮フィルムを使用した飲料用PETボトルラベルでは、自動販売機で購入する際に落下すると、ラベルが破袋するので好ましくない。特にフィルム長手方向は非収縮方向となるので、ラベルを開放しやすいようにミシン目やノッチが入ることが多いので、フィルム長手方向の屈折率は重要となる。フィルム長手方向の屈折率は1.572以下であるとより好ましく、1.569以下であると特に好ましい。フィルム長手方向の屈折率の下限は規定していないが、未延伸フィルムでも長手方向の屈折率は1.55~1.56程度あるので、1.55を下回ることは無い。
【0033】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、密度が1.33g/cm以上であることが好ましい。1.330g/cm未満であると、厚みが薄い熱収縮フィルムを使用したラベルで、飲料用PETボトルへ装着する工程で腰が不足し、ラベルが折れる または
ラベルが定まった位置で固定されなくなり好ましくない。フィルムの密度は1.340g/cm以上であるとより好ましく、1.350g/cm以上であると特に好ましい。フィルムの密度は高い方が腰には好ましいが、1.385g/cm以下であることが好ましい。1.385g/cmより高いと、フィルムが結晶化して上記したような90℃幅方向の収縮率を得られないためである。熱収縮性ポリエステル系フィルムの密度は1.384g/cm以下であるとより好ましく、1.383g/cm以下であると特に好ましい。
【0034】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、ラベル用途や弁当包装用途の熱収縮性フィルムとして15~50μmが好ましい。フィルム厚みが15μm未満であるとフィルムのコシ感が著しく低下するためロールにシワが入りやすくなり好ましくない。一方、フィルム厚みは厚くてもフィルムロールとして問題はないが、コストの観点から薄肉化することが好ましい。フィルムの厚みは17~45μmがより好ましく、20μm~40μmが特に好ましい。
【0035】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、厚み20μmでのヘイズ値が2%以上10%以下であると好ましい。熱収縮フィルムは意匠性を出すフィルムであるので、ヘイズ値が10%より高いと、PETボトルのラベルとなったさいに内容物がきれいに見えなくなり、意匠性が低下するので好ましくない。フィルム厚み20μmでのヘイズは8%以下であるとより好ましく、6%以下であると特に好ましい。
フィルム厚み20μmでのヘイズは2%未満でも問題無いが、本発明ではヘイズ値が2%未満になると、フィルムの滑り性が悪化したので、下限を2%とした。
【0036】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記したポリエステル原料を押出機で溶融押し出しして未延伸フィルムを形成し、その未延伸フィルムを幅方向に延伸して得ることができる。なお、ポリエステルは、前記した好適なジカルボン酸成分とジオール成分を公知の方法で重縮合させることで得ることができる。また、通常は、チップ状のポリエステルをフィルムの原料として使用する。
【0037】
原料樹脂を溶融押し出しする際には、ポリエステル原料をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエステル原料を乾燥させた後に、押出機を利用して、230~270℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
【0038】
そして、押し出し後のシート状の溶融樹脂を急冷することによって未延伸フィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金から回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。
【0039】
さらに、得られた未延伸フィルムを、後述するように、所定の条件で幅方向に延伸し本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得ることが可能となる。以下、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るための好ましい延伸について説明する。
【0040】
通常の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、収縮させたい方向に未延伸フィルムを延伸することによって製造される。あるいは、縦延伸をした後に横延伸を行う二軸延伸する製造方法があるが、二軸延伸の場合大掛かりな設備が必要となる。本発明では主収縮方向である幅方向に一軸延伸する。なお幅(横)方向の一軸延伸による製造手段は、長手方向の延伸設備を使用しないので簡易な設備で製造できる利点を有する。
【0041】
幅方向の延伸は、未延伸フィルムをフィルムの両端をクリップで把持して加熱することができるテンター装置に導き、熱風によりフィルムを所定の温度まで加熱した後、長手方向に搬送しながらクリップ間の距離を広げることで延伸する。
未延伸フィルムの予熱温度は フィルムのTg+30℃以上+80℃以下の温度で予熱することが好ましい。より好ましくは、Tg+20℃以上+60℃以下である。Tg+30℃未満では、予熱温度不足で延伸力が高くなり破断が生じやすくなり好ましくない。またTg+80℃より高い温度で加熱すると、未延伸シートの幅方向への延伸力が低下し、幅方向の厚み精度(偏肉)が悪くなり好ましくない。より好ましくはTg+40以上+70℃以下である。
【0042】
幅方向延伸時のフィルム温度は、フィルムTg℃以上Tg+30℃以下であることが好ましい。フィルム温度がTg未満であると、延伸力が高くなりすぎて、フィルムの破断が生じやすくなり好ましくない。フィルム温度がTg+30℃を超えると、延伸力が低すぎるために、上記したように90℃で測定した幅方向の熱収縮率が低くなり好ましくない。より好ましくはTg+3℃以上+25℃以下、さらに好ましくはTg+5℃以上+25℃以下である。
【0043】
幅方向への延伸倍率は3.5倍以上6倍以下が好ましい。延伸倍率が3.5倍未満であると、延伸力が不十分で、フィルム幅方向の厚み精度(所謂 偏肉)が悪くなる。また延伸倍率が6倍を超えると、製膜時に破断するリスクが高くなる上に、設備が長大になるため好ましくない。より好ましくは3.7倍以上5.5倍以下である。また特に限定しないが、幅方向の延伸後に、収縮率の調整のため熱処理を行ってもよい。熱固定(熱処理)時のフィルム温度は、幅方向のフィルム延伸温度以上Tg+50℃以下であることが好ましい。フィルム温度が幅方向のフィルム延伸温度未満であると、幅方向の分子緩和が不十分となり、熱固定の効果が無いので好ましくない。フィルム温度がTg+50℃を超えると、フィルムが結晶化し収縮率が低くなり好ましくない。より好ましくは幅方向のフィルム延伸温度+1℃以上、Tg+45℃以下、さらに好ましくは幅方向のフィルム延伸温度+2℃以上、Tg+40℃以下である。
【0044】
幅方向へ延伸するさいに、長手方向へ弛緩(リラックス)をすることが好ましい。長手方向の熱収縮率は 幅方向への延伸するさいに生じる延伸方向と直交する方向への応力(所謂ネッキング力)の残留応力によって生じる。従って、幅方向へ延伸する際に 長手方向へリラックスをすることにより、長手方向への残留応力を緩和し、長手方向の熱収縮率を小さくできる。長手方向へのリラックスは クリップ間の距離を縮めながら行った。長手方向へのリラックス率は0%以上4%以下が好ましい。長手方向へのリラックス率が0%でも長手方向の熱収縮率が目標通りなら問題無い。長手方向のリラックス率が4%より高いと、フィルムが縮む量よりもリラックスする量が高くなり、リラックス不足が生じて平面性が悪くなるので好ましくない。より好ましくは1%以上3%以下である。この範囲内のリラックス率とすれば、特に幅方向に高い熱収縮率を有し長手方向に低い熱収縮率を有するフィルムを得ることができる。
【実施例
【0045】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。
【0046】
また、フィルムの評価方法は下記の通りである。
【0047】
[極限粘度 (IV)]
ポリエステル0.2gをフェノール/1,1,2,2-テトラクロルエタン(60/40(重量比))の
混合溶媒50ml中に溶解し、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。単位はdl/g。
【0048】
[熱収縮率(温湯熱収縮率)]
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、所定温度±0.5℃の温水中に無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に10秒間浸漬し、水中から引き出してフィルムの縦および横方向の寸法を測定し、下記式(1)にしたがって、それぞれ熱収縮率を求めた。熱収縮率の大きい方向を主収縮方向とした。
熱収縮率={(収縮前の長さ-収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%) 式1
【0049】
[フィルムの突き刺し強度]
JIS-Z1707に準拠した試験法で測定した値を下式(2)により1μm換算で算出した。
突き刺し強度=突き刺し強度実測値/フィルムの厚み(N/μm) 式2
【0050】
[10%収縮後のフィルムの突き刺し強度]
隙間が200mmの長方形の枠(枠の間の隙間の長さは幅200mm、高さ250mm)を用意した。フィルム主収縮方向(幅方向)が23mm弛むように(枠の間のフィルム長さは223mm)フィルムを枠へ貼り付けた。この時 長手方向は固定せずに、長さ200mmで行った。枠に張り付けたフィルムを80℃±0.5℃へ加熱した温水中へ入れ、フィルムの弛みが無くなった直後にすぐ取り出し、25℃±0.5℃の水中に10秒間浸漬し、水中から引き出して、タオルで水をふき取った後に、上記した方法でフィルムの突き刺し強度を測定した。上式(2)より求めて、10%収縮後の突き刺し強度とした。
【0051】
[フィルムの厚み]
JIS K7130-1999 A法に準拠し、ダイアルゲージを用いて測定した。
【0052】
[フィルムの密度]
JIS-K-7112の密度勾配管法により、硝酸カルシウム水溶液を用いて約3mm四方のサンプルの密度を測定した。
【0053】
[長手方向の屈折率]
JIS K 7142-1996 A法により、ナトリウムD線を光源として接触液としてジヨードメタンを用いてアッべ屈折率計によりフィルム長手方向の屈折率を測定した。
【0054】
[フィルムのヘイズ]
JIS K7361-1に準拠し、フィルムを1辺10cmの正方形状に切り出し、日本電飾(株)製ヘイズメーターNDH2000を用い、ヘイズ測定を行った。3か所で実施し、その平均値をヘイズ実測値とし、下式(3)により20μm換算のヘイズを算出した。
ヘイズ=ヘイズ実測値×20/フィルムの厚み(%/20μm) 式3
【0055】
[Tg(ガラス転移点)]
セイコー電子工業株式会社社製の示差走査熱量計(型式:DSC220)を用いて、JIS-K7121-1987に従ってTgを求めた。詳細には未延伸フィルム10mgを、-40℃から120℃まで、昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱曲線を測定した。得られた吸熱曲線の変曲点の前後に接線を引き、その交点をガラス転移点(Tg;℃)とした
【0056】
[収縮仕上り性]
熱収縮性フィルムの端部をインパルスシーラー(富士インパルス社製)で溶着し、幅方向を周方向とした円筒状ラベルを得た。また0.5mmサイズの孔をフィルム長手方向に3mmピッチで入れた。またフィルム幅方向に10mmの間隔をあけて、同様にフィルム長手方向に0.5mmサイズの孔を3mmピッチで入れた(所謂 ラベルを剥がしやすくするミシン目)。ラベルの収縮方向の直径は68mmであった。このラベルを、市販の500mlのPETボトル(内容物入り; 胴直径 62mm、ネック部の最小直径25mm
)に被せて、90℃に調整したFuji Astec Inc 製スチームトンネル(型式;SH-15
00-L)を用いスチームに通して熱収縮させた(トンネル通過時間5秒)。ラベルの収縮仕上がり性を、以下の基準に従って目視で評価を行った。以下の基準に従って目視で5段階評価した。以下に記載の欠点とは、飛び上がり、シワ、収縮不足、ラベル端部折れ込み、収縮白化等を意味する。3以上を合格とした。
5:仕上がり性最良(欠点なし)
4:仕上がり性良(欠点1箇所あり)
3:欠点2箇所あり
2:欠点3~5箇所あり
1:欠点多数あり(6箇所以上)
【0057】
[落袋時の落袋評価]
上記した500mlのPETボトルにラベルを横にし、ミシン目が下を向くようにして1.2mの高さからコンクリートへ落下した。落下後のラベルを以下の基準に従って目視で評価した。
〇 : 10本の落袋評価でラベルの破袋が1本以下
× : 10本の落袋評価でラベルの破袋が2本以上
[落袋時の孔空き評価]
上記と同様に500mlのPETボトルにラベルを横にし、ミシン目が下を向くようにして1.2mの高さからコンクリートへ落下した。落下後のラベルを以下の基準に従って目視で評価した。
〇 : 10本の落袋評価で孔空きしたラベルが1本以下
× : 10本の落袋評価で孔空きしたラベルが2本以上
【0058】
<ポリエステル原料の調製>
[合成例1]
撹拌機、温度計および部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、ジカルボン酸成分としてジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、多価アルコール成分としてエチレングリコール(EG)100モル%とを、エチレングリコールがモル比でジメチルテレフタレートの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル%(酸成分に対して)、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.225モル%(酸成分に対して)を添加し、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、280℃で26.7Paの減圧条件のもとで重縮合反応を行い、極限粘度0.70dl/gのポリエステルAを得た。組成を表1に示す。
【0059】
[合成例2~4]
合成例1と同様の方法により、表1に示すポリエステルB~Dを得た。ポリエステルBの製造の際には、滑剤としてSiO2(富士シリシア社製サイリシア266;平均粒径1
.5μm)をポリエステルに対して20000ppmの割合で添加した。なおポリエステルの極限粘度は、全て0.70dl/gであった。
なお、各ポリエステルは、適宜チップ状にした。各ポリエステルの組成は表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
[実施例1]
上記したポリエステルA、ポリエステルB、およびポリエステルCを質量比 17:3:
80で混合して押出機に投入した。しかる後、その混合樹脂を270℃で4軸のスクリューを用いて溶融させて、260℃へ冷却しながらTダイから押出し、表面温度20℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さが99μmの未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムのTgは50℃であった。当該未延伸フィルムをテンターに導き、フィルム両端部をクリップで把持した状態で、フィルム温度が90℃(Tg+40℃)になるまで予熱し、その後、フィルム温度が55℃(Tg+5℃)で横方向に5倍延伸した。この時、長手方向のクリップ間の距離を縮めて長手方向へ1%弛緩(リラックス)を行った。幅方向へ延伸後のフィルムを57℃(Tg+7℃)で熱固定した。該当延伸後のフィルムの両縁部は裁断除去することで、約20μmの一軸延伸フィルムを所定の長さに亘って連続的に製膜して熱収縮性ポリエステル系フィルムからなるフィルムロールを得た。そして、得られたフィルムの特性を上記の方法により評価した。製膜条件を表2に、評価結果を表3に示す。
収縮仕上り性、落袋評価共に実用上問題無いフィルムであった。
【0062】
[実施例2]
ポリエステルA、ポリエステルB、およびポリエステルCを質量比 7:3:90で混合
して押出機に投入し、実施例1と同様に厚さが99μmの未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムのTgは48℃であった。当該未延伸フィルムをテンターに導き、フィルム両端部をクリップで把持した状態で、フィルム温度が88℃(Tg+40℃)になるまで予熱し、その後、フィルム温度が53℃(Tg+5℃)で横方向に5倍延伸した。この時、長手方向のクリップ間の距離を縮めて長手方向へ1%弛緩(リラックス)を行った。幅方向へ延伸後のフィルムを55℃(Tg+7℃)で熱固定した。該当延伸後のフィルムの両縁部は裁断除去することで、約20μmの一軸延伸フィルムを所定の長さに亘って連続的に製膜して熱収縮性ポリエステル系フィルムからなるフィルムロールを得た。そして、得られたフィルムの特性を上記の方法により評価した。製膜条件を表2に、評価結果を表3に示す。
収縮仕上り性、落袋評価共に実用上問題無いフィルムであった。
【0063】
[実施例3]
ポリエステルA、ポリエステルB、およびポリエステルCを質量比 57:3:40で混
合して押出機に投入し、実施例1と同様に厚さが99μmの未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムのTgは63℃であった。当該未延伸フィルムをテンターに導き、フィルム両端部をクリップで把持した状態で、フィルム温度が103℃(Tg+40℃)になるまで予熱し、その後、フィルム温度が68℃(Tg+5℃)で横方向に5倍延伸した。この時、長手方向のクリップ間の距離を縮めて長手方向へ1%弛緩(リラックス)を行った。幅方向へ延伸後のフィルムを70℃(Tg+7℃)で熱固定した。該当延伸後のフィルムの両縁部は裁断除去することで、約20μmの一軸延伸フィルムを所定の長さに亘って連続的に製膜して熱収縮性ポリエステル系フィルムからなるフィルムロールを得た。そして、得られたフィルムの特性を上記の方法により評価した。製膜条件を表2に、評価結果を表3に示す。
収縮仕上り性、落袋評価共に実用上問題無いフィルムであった。
【0064】
[実施例4]
ポリエステルA、ポリエステルB、およびポリエステルCを質量比 77:3:20で混
合して押出機に投入し、実施例1と同様に厚さが79μmの未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムのTgは70℃であった。当該未延伸フィルムをテンターに導き、フィルム両端部をクリップで把持した状態で、フィルム温度が115℃(Tg+45℃)になるまで予熱し、その後、フィルム温度が75℃(Tg+5℃)で横方向に4倍延伸した。この時、長手方向のクリップ間の距離を縮めて長手方向へ2%弛緩(リラックス)を行った。幅方向へ延伸後のフィルムを77℃(Tg+7℃)で熱固定した。該当延伸後のフィルムの両縁部は裁断除去することで、約20μmの一軸延伸フィルムを所定の長さに亘って連続的に製膜して熱収縮性ポリエステル系フィルムからなるフィルムロールを得た。そして、得られたフィルムの特性を上記の方法により評価した。製膜条件を表2に、評価結果を表3に示す。
収縮仕上り性、落袋評価共に実用上問題無いフィルムであった。
【0065】
[実施例5]
ポリエステルA、ポリエステルB、およびポリエステルCを質量比 57:3:40で混
合して押出機に投入し、実施例1と同様に厚さが118μmの未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムのTgは63℃であった。当該未延伸フィルムをテンターに導き、フィルム両端部をクリップで把持した状態で、フィルム温度が103℃(Tg+40℃)になるまで予熱し、その後、フィルム温度が68℃(Tg+5℃)で横方向に6倍延伸した。この時、長手方向のクリップ間の距離を縮めて長手方向へ2%弛緩(リラックス)を行った。幅方向へ延伸後のフィルムを70℃(Tg+7℃)で熱固定した。該当延伸後のフィルムの両縁部は裁断除去することで、約20μmの一軸延伸フィルムを所定の長さに亘って連続的に製膜して熱収縮性ポリエステル系フィルムからなるフィルムロールを得た。そして、得られたフィルムの特性を上記の方法により評価した。製膜条件を表2に、評価結果を表3に示す。
収縮仕上り性、落袋評価共に実用上問題無いフィルムであった。
【0066】
[実施例6]
ポリエステルA、ポリエステルB、およびポリエステルCを質量比 57:3:40で混
合して押出機に投入し、実施例1と同様に厚さが79μmの未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムのTgは63℃であった。当該未延伸フィルムをテンターに導き、フィルム両端部をクリップで把持した状態で、フィルム温度が103℃(Tg+40℃)になるまで予熱し、その後、フィルム温度が68℃(Tg+5℃)で横方向に4倍延伸した。この時、長手方向のクリップ間の距離を縮めて長手方向へ1%弛緩(リラックス)を行った。幅方向へ延伸後のフィルムを70℃(Tg+7℃)で熱固定した。該当延伸後のフィルムの両縁部は裁断除去することで、約20μmの一軸延伸フィルムを所定の長さに亘って連続的に製膜して熱収縮性ポリエステル系フィルムからなるフィルムロールを得た。そして、得られたフィルムの特性を上記の方法により評価した。製膜条件を表2に、評価結果を表3に示す。
収縮仕上り性、落袋評価共に実用上問題無いフィルムであった。
【0067】
[実施例7]
押出し機の吐出を下げて溶融樹脂を回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さを74μmに変更した以外は実施例1と同様の方法で厚さ15μmのフィルムロールを得た。そして、得られたフィルムの特性を上記の方法により評価した。製膜条件を表2に、評価結果を表3に示す。
収縮仕上り性、落袋評価共に実用上問題無いフィルムであった。
【0068】
[実施例8]
押出し機の吐出を下げて溶融樹脂を回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さを198μmに変更した以外は実施例1と同様の方法で厚さ40μmのフィルムロールを得た。そして、得られたフィルムの特性を上記の方法により評価した。製膜条件を表2に、評価結果を表3に示す。
収縮仕上り性、落袋評価共に実用上問題無いフィルムであった。
【0069】
[比較例1]
上記したポリエステルA、ポリエステルB、およびポリエステルCを質量比 42:3:
55で混合して押出機に投入した。しかる後、その混合樹脂を270℃で4軸のスクリューを用いて溶融させて、260℃へ冷却しながらTダイから押出し、表面温度20℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さが130μmの未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムのTgは57℃であった。当該未延伸フィルムをテンターに導き、フィルム両端部をクリップで把持した状態で、フィルム温度が97℃(Tg+40℃)になるまで予熱し、その後、フィルム温度が62℃(Tg+5℃)で横方向に6.5倍延伸した。幅方向へ延伸後のフィルムを64℃(Tg+7℃)で熱固定した。該当延伸後のフィルムの両縁部は裁断除去することで、約20μmの一軸延伸フィルムを所定の長さに亘って連続的に製膜して熱収縮性ポリエステル系フィルムからなるフィルムロールを得た。そして、得られたフィルムの特性を上記の方法により評価した。製膜条件を表2に、評価結果を表3に示す。
長手方向への屈折率が高く、落袋評価で破袋が発生する不良があった。
【0070】
[比較例2]
ポリエステルA、ポリエステルB、およびポリエステルCを質量比 77:3:20で混
合して押出機に投入し、実施例1と同様に厚さが80μmの未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムのTgは70℃であった。当該未延伸フィルムをテンターに導き、フィルム両端部をクリップで把持した状態で、フィルム温度が75℃(Tg+5℃)になるまで予熱し、その後、フィルム温度が75℃(Tg+5℃)で横方向に4倍延伸した。幅方向へ延伸後のフィルムを77℃(Tg+7℃)で熱固定した。該当延伸後のフィルムの両縁部は裁断除去することで、約20μmの一軸延伸フィルムを所定の長さに亘って連続的に製膜して熱収縮性ポリエステル系フィルムからなるフィルムロールを得た。そして、得られたフィルムの特性を上記の方法により評価した。製膜条件を表2に、評価結果を表3に示す。
突き刺し強度が低く、長手方向への屈折率が高く、落袋評価で破袋や孔が発生する不良があった。
【0071】
[比較例3]
ポリエステルA、ポリエステルB、およびポリエステルDを質量比 17:3:80で混
合して押出機に投入し、実施例1と同様に厚さが80μmの未延伸フィルムを得ようとしたが、Tgが38℃と低かったので冷却ロールに粘着し、連続的に未延伸フィルムを得ることができず製膜評価できなかった。
【0072】
[比較例4]
ポリエステルA、ポリエステルB、およびポリエステルCを質量比 92:3:5で混合
して押出機に投入し、実施例1と同様に厚さが99μmの未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムのTgは75℃であった。当該未延伸フィルムをテンターに導き、フィルム両端部をクリップで把持した状態で、フィルム温度が115℃(Tg+40℃)になるまで予熱し、その後、フィルム温度が80℃(Tg+5℃)で横方向に5倍延伸した。この時、長手方向のクリップ間の距離を縮めて長手方向へ1%弛緩(リラックス)を行った。幅方向へ延伸後のフィルムを82℃(Tg+7℃)で熱固定した。該当延伸後のフィルムの両縁部は裁断除去することで、約20μmの一軸延伸フィルムを所定の長さに亘って連続的に製膜して熱収縮性ポリエステル系フィルムからなるフィルムロールを得た。そして、得られたフィルムの特性を上記の方法により評価した。製膜条件を表2に、評価結果を表3に示す。
90℃10秒で測定した幅方向の温湯収縮率が低く、収縮仕上り評価で収縮不足となり、収縮仕上り性や落袋評価ができなかった。
【0073】
[比較例5]
ポリエステルA、ポリエステルB、およびポリエステルCを質量比 17:3:80で混
合して押出機に投入し、実施例1と同様に厚さが101μmの未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムのTgは50℃であった。当該未延伸フィルムをテンターに導き、フィルム両端部をクリップで把持した状態で、フィルム温度が90℃(Tg+40℃)になるまで予熱し、その後、フィルム温度が55℃(Tg+5℃)で横方向に5倍延伸した。この時、長手方向のクリップ間の距離を広げて、長手方向へ2%延伸を行った。幅方向へ5倍延伸、長手方向へ1.02倍延伸後のフィルムを57℃(Tg+7℃)で熱固定した。該当延伸後のフィルムの両縁部は裁断除去することで、約20μmの一軸延伸フィルムを所定の長さに亘って連続的に製膜して熱収縮性ポリエステル系フィルムからなるフィルムロールを得た。そして、得られたフィルムの特性を上記の方法により評価した。製膜条件を表2に、評価結果を表3に示す。
長手方向への屈折率が高く、落袋評価で破袋が発生する不良があった。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、高い熱収縮率を有しているにも関わらず、優れた落袋性を有しているので、容器等のラベル用途に好適に用いることができる。本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムがラベルとして用いられて得られた容器等の包装体は美麗な外観を有し、落袋等の耐久性に優れているものである。