(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】位置調整装置及び構真柱の位置調整方法
(51)【国際特許分類】
E02D 29/05 20060101AFI20231011BHJP
E04G 21/18 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
E02D29/05 Z
E04G21/18 C
(21)【出願番号】P 2023036234
(22)【出願日】2023-03-09
(62)【分割の表示】P 2019076194の分割
【原出願日】2019-04-12
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤生 直人
(72)【発明者】
【氏名】長野 義邦
(72)【発明者】
【氏名】堀川 智哉
(72)【発明者】
【氏名】黒田 陽史
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-003825(JP,A)
【文献】特開2014-111868(JP,A)
【文献】特開平08-049235(JP,A)
【文献】特開昭62-133255(JP,A)
【文献】特公昭47-044687(JP,B1)
【文献】特開2003-166256(JP,A)
【文献】特開平04-085419(JP,A)
【文献】特開平08-120673(JP,A)
【文献】特開昭60-195268(JP,A)
【文献】特開2014-080836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/05
E04G 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中孔に挿入された、矩形断面を有する構真柱の建込み位置を調整する位置調整装置であって、
前記構真柱と前記地中孔の孔壁との間であって前記構真柱の出隅部に位置し、該孔壁を押圧する押圧装置と、
前記構真柱に設置され、該押圧装置を支持する押圧装置支持部材と、
前記構真柱に設置され、表面側が前記押圧装置に当接し、裏面側が前記構真柱に当接する反力受け部材と、を備え 、
前記構真柱の柱部分が、プレキャスト鉄筋コンクリート造よりなり、前記反力受け部材と前記押圧装置支持部材の当接位置に、インサートナットが埋設されており、
前記反力受け部材と前記押圧装置支持部材がそれぞれ、インサートナットを介してボルト締結されていることを特徴とする位置調整装置。
【請求項2】
地中孔に挿入された、矩形断面を有する構真柱の建込み位置を調整する位置調整装置であって、
前記構真柱と前記地中孔の孔壁との間に位置し、該孔壁を押圧する押圧装置と、
該押圧装置を支持する押圧装置支持部材と、
表面側が前記押圧装置に当接し、裏面側が前記構真柱に当接する反力受け部材と、を備え 、
前記構真柱は、柱部分がプレキャスト鉄筋コンクリート造よりなるとともに、基礎杭に埋設される埋設部分が鉄骨造のクロスH鋼材よりなり、
前記押圧装置支持部材と前記反力受け部材は、前記クロスH鋼材の隣り合うフランジ各々の対向する側端部に溶接固定されていることを特徴とする位置調整装置。
【請求項3】
請求項1に記載の位置調整装置において、
前記反力受け部材が、前記押圧装置に表面側が当接する押圧装置当接プレートと、該押圧装置当接プレートの裏面側に配置された構真柱当接部材と、を備え、
該構真柱当接部材が、前記構真柱の出隅部に当接する断面視をくの字に形成された板材よりなり、
前記押圧装置当接プレートが、前記構真柱の矩形断面における対角線に直交して配置されることを特徴とする位置調整装置。
【請求項4】
地中孔に挿入された、矩形断面を有する構真柱の建込み位置を、請求項1から3のいずれか1項に記載の位置調整装置を用いて調整する構真柱の位置調整方法であって、
前記位置調整装置が外表面の下端側に装着された前記構真柱を、前記地中孔の所定深さまで吊り下ろし、
前記構真柱の下端側に、前記位置調整装置に備えた前記押圧装置を介して側方から外力を作用させ、該構真柱の位置調整を行うことを特徴とする構真柱の位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、のちに杭が構築される地中孔に挿入された、構真柱の建込み位置を調整する際に用いる位置調整装置、及び位置調整装置を用いた構真柱の位置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地下空間の大規模化が進む中、工期短縮及び周辺環境への配慮等から、構造物の施工に逆打ち工法を採用する場合が多い。逆打ち工法とは、建築物本体の床梁を切梁支保工として使用しながら、地盤の掘削と躯体の構築を順次繰り返して、地下躯体を上階から下階へ構築していく工法であり、地盤の掘削を開始する前に、床梁を支持する構真柱を地中に埋設する。
【0003】
構真柱として、一般には鉄骨柱が採用されるが、鉄筋コンクリート構造物を構築する場合には、構真柱を本設の地下柱としてそのまま利用できるよう、鉄骨柱に代えて平面視矩形形状のプレキャスト鉄筋コンクリート造の構真柱が、採用されつつある。
【0004】
例えば、非特許文献1では、断面視矩形形状のプレキャスト鉄筋コンクリート構真柱(以下、HSPC構真柱という)を、超高層建物に適用する事例とともに、HSPC構真柱の位置調整方法が開示されている。
【0005】
具体的には、地中孔にHSPC構真柱を吊り込んだ後、地表上に据え付けた架台に設置されているXY通り調整用ガイドローラーを、HSPC構真柱の上端近傍側面に当接させる。また、地中孔の上半に設けた孔壁を保護するケーシングを利用して、パンタグラフを複数吊り下ろして適宜伸縮し、これらパンタグラフをHSPC構真柱の中間高さ位置の側面に当接させる。
【0006】
そのうえで、XY通り調整用ガイドローラーを用いてHSPC構真柱の平面視位置を調整するとともに、複数のパンタグラフの伸縮量を調整して、HSPC構真柱における鉛直度の調整を行っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】「超高強度プレキャスト鉄筋コンクリート構真柱の開発と超高層建物への適用」、大成建設技術センター報 第42号、2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の建込み工法において、パンタグラフの配置位置は平面視で、矩形断面に形成されたHSPC構真柱の側面であって、平面部に当接させることの可能な位置であることが一般的である。このとき、構真柱の建込み位置を先決めしたのち、コンクリートを後打ちするべく、HSPC構真柱と地中孔との間の隙間にトレミー管を配置しようとすると、その位置は、パンタグラフが存在しないHSPC構真柱の出隅部近傍とせざるを得ない。
【0009】
HSPC構真柱と地中孔の孔壁との間に十分な隙間が存在する場合には、トレミー管をHSPC構真柱の出隅部近傍に、容易に挿入配置できる。しかし、近年では、超高層の鉄筋コンクリート建物に対するニーズが高まっており、大きな軸力を支持する地下柱にプレキャストコンクリート柱を採用しようとすると、部材断面をより大型化する必要が生じる。
【0010】
すると、地中孔の孔壁と構真柱の出隅部近傍との間に、トレミー管を挿入配置できる空間を確保することが困難となりやすく、構真柱の建込み位置を先決めしたのち、コンクリートを後打ちする方法を採用できない等、施工方法に制約が生じる結果となっていた。
【0011】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、既往の断面径を有する地中孔を利用しつつ構真柱を大断面化する際に用いることの可能な、構真柱の建込み位置を調整する位置調整装置及び構真柱の位置調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するため本発明の位置調整装置は、地中孔に挿入された、矩形断面を有する構真柱の建込み位置を調整する位置調整装置であって、前記構真柱と前記地中孔の孔壁との間であって前記構真柱の出隅部に位置し、該孔壁を押圧する押圧装置と、前記構真柱に設置され、該押圧装置を支持する押圧装置支持部材と、前記構真柱に設置され、表面側が前記押圧装置に当接し、裏面側が前記構真柱に当接する反力受け部材と、を備え 、前記構真柱の柱部分が、プレキャスト鉄筋コンクリート造よりなり、前記反力受け部材と前記押圧装置支持部材の当接位置に、インサートナットが埋設されており、前記反力受け部材と前記押圧装置支持部材がそれぞれ、インサートナットを介してボルト締結されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の位置調整装置は、地中孔に挿入された、矩形断面を有する構真柱の建込み位置を調整する位置調整装置であって、前記構真柱と前記地中孔の孔壁との間に位置し、該孔壁を押圧する押圧装置と、該押圧装置を支持する押圧装置支持部材と、表面側が前記押圧装置に当接し、裏面側が前記構真柱に当接する反力受け部材と、を備え 、前記構真柱は、柱部分がプレキャスト鉄筋コンクリート造よりなるとともに、基礎杭に埋設される埋設部分が鉄骨造のクロスH鋼材よりなり、前記押圧装置支持部材と前記反力受け部材は、前記クロスH鋼材の隣り合うフランジ各々の対向する側端部に溶接固定されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の位置調整装置は、前記反力受け部材が、前記押圧装置に当接する押圧装置当接プレートと、該押圧装置当接プレートの裏面側に配置された構真柱当接部材と、を備え、該構真柱当接部材が、前記構真柱の出隅部に当接する断面視をくの字に形成された板材よりなり、前記押圧装置当接プレートが、前記構真柱の矩形断面における対角線に直交して配置されることを特徴とする。
【0015】
本発明の構真柱の位置調整方法は、地中孔に挿入された、矩形断面を有する構真柱の建込み位置を、本発明の位置調整装置を用いて調整する構真柱の位置調整方法であって、前記位置調整装置が外表面の下端側に装着された前記構真柱を、前記地中孔の所定深さまで吊り下ろし、前記構真柱の下端側に、前記位置調整装置に備えた前記押圧装置を介して側方から外力を作用させ、該構真柱の位置調整を行うことを特徴とする。
【0016】
上述する本発明の位置調整装置及び構真柱の位置調整方法によれば、構真柱にプレキャスト鉄筋コンクリート造等の矩形断面を有する芯材を採用した際、押圧装置を構真柱の出隅部に配置することができる。
【0017】
これにより、地中孔の孔壁と構真柱の外表面に位置する平面部との間に形成される最も間隔の広い位置に高さ方向に連続する隙間を設け、この隙間にトレミー管を配置することができる。したがって、構真柱の断面が大型化することに伴い、のちに杭が構築される既往の断面径を有する地中孔に対して平面視で構真柱の占める割合が大きくなった場合にも、押圧装置とトレミー管との干渉を回避して、構真柱の建込み位置を先決めしたのち、地中孔にコンクリートを後打ちすることが可能となる。
【0018】
また、押圧装置支持部材が構真柱に設置されることから、押圧装置を含む位置調整装置が構真柱に支持されることとなる。これにより、従来技術のような地中孔の孔壁を保護するケーシングを利用してパンタグラフを吊り下ろし、ケーシングの高さ範囲にパンタグラフ配置する場合と比較して、位置調整装置の設置高さを構真柱の下端側に設置することができる。このため、構真柱の位置調整を行う際、構真柱の上端側の所定位置に設定する支点との距離を大きく確保して、構真柱の建込み精度を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、地中孔に挿入された、矩形断面を有する構真柱の建込み位置を調整する際、構真柱の出隅部に位置調整装置を配置して、孔壁と構真柱の外表面に位置する平面部との間に形成される最も間隔の広い位置に高さ方向に連続する隙間を形成するから、この隙間を利用してトレミー管の配置し、地中孔にコンクリートを打設することができるため、のちに杭が構築される既往の断面径を有する地中孔を利用しつつ、構真柱の大断面化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態における逆打ち工法における構真柱の建込み工程を示す図である(その1)。
【
図2】本発明の実施の形態における逆打ち工法における構真柱の建込み工程を示す図である(その2)。
【
図3】本発明の実施の形態における逆打ち工法により構築した地下躯体を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態における構真柱の柱部分に位置調整装置を装着した様子を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態における構真柱の建込み位置を調整している様子を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態における水平位置調整装置を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態における押圧装置を示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態における反力受け部材及び押圧装置支持部材を示す図である。
【
図9】本発明の実施の形態における押圧装置で地中孔の孔壁を押圧する様子を示す図である(位置調整装置を柱部分に装着した場合)。
【
図10】本発明の実施の形態における構真柱の埋設部分に位置調整装置を装着する様子を示す図である。
【
図11】本発明の実施の形態における押圧装置で地中孔の孔壁を押圧する様子を示す図である(位置調整装置を埋設部分に装着した場合)。
【
図12】本発明の実施の形態における押圧装置の他の事例を示す図である(取付け耳を装着した場合)。
【
図13】本発明の実施の形態における押圧装置と反力受け部材を一体にした場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、建物の地下躯体や地下構造物を構築する方法の一つである逆打ち工法において、構真柱を地中孔の建込み位置に先決めしたのち、コンクリートを打設する際に用いる装置であり、特に、構真柱の断面形状が、矩形断面に形成されている等地中孔と相似する形状を有しておらず、かつ、既往の断面径(最大3000mm)を有する地中孔に挿入した際に、孔壁との間に十分な隙間を確保できない程度に大きい場合に好適な、位置調整装置及び構真柱の位置調整方法である。
【0022】
以下に、位置調整装置と位置調整装置を用いた構真柱の位置調整方法の詳細を説明するが、これに先立ち、逆打ち工法の作業手順の概略を説明する。
【0023】
建物の構築予定位置を取り囲んで造成された山留め壁(図示せず)の内方であって基礎杭の構築予定位置に、
図1(a)で示すように、安定液Wを供給しつつ孔口をケーシングPで保護しながら地中孔Hを削孔した後、
図1(b)(c)で示すように、地中孔Hに鉄筋籠Sを吊り下ろし、所定深さに鉄筋籠Sを建込む。
【0024】
次に、
図2(a)で示すように、地中孔Hに構真柱1を所定深さまで吊り下ろし、位置決め装置3を用いて構真柱1を建込む。この後、
図2(b)で示すように、構真柱1と地中孔Hとの隙間にトレミー管Tを配置して、鉄筋籠Sを埋設するようにして所定の高さ位置までコンクリートCを打設し養生する。
【0025】
コンクリートCを所定時間養生したのち、地中孔Hと構真柱1との隙間を埋戻したうえで、地表面から掘削を行いつつ地下階を下方に向かって順次構築し、
図3で示すような、基礎杭21上に立設する構真柱1を本設柱とする建物の地下躯体22を構築する。また、施工中の建物が地上階を有する場合には、地下躯体22の構築作業と並行して地上階の同時施工を行う。
【0026】
上記の位置決め装置3により建込まれる構真柱1は、断面形状が正方形や長方形等の多角形状に形成されたプレキャスト鉄筋コンクリート造あるいは鋼材等で加工された鉄骨鋼管の構真柱や、H形鋼を十字に組合せた断面十字形の鋼材(以下、クロスH鋼材と称す)等、軸線と平行な平面部を外表面に複数備える芯材であれば、いずれを採用することも可能であるが、本実施の形態では、正方形断面に形成された、超高強度プレキャスト鉄筋コンクリート造の構真柱1を採用している。
【0027】
なお、超高強度プレキャスト鉄筋コンクリート造の構真柱1は、
図3で示すように、地下躯体22の本設柱として機能する超高強度プレキャスト鉄筋コンクリート造の柱部分11と、鉄筋コンクリート造の基礎杭21に埋設される鉄骨造の埋設部分12とを備える。
【0028】
柱部分11は、
図4(a)で示すように、高さ方向に複数積層した矩形断面に形成された超高強度プレキャスト部材111を、緊張材(図示せず)を用いて緊張力を付与しつつ連結することにより構成したものである。また、埋設部分12は、
図4(c)で示すような、クロスH鋼材を採用している。
【0029】
<位置決め装置>
上記の構真柱1を地中孔Hに建込む際に用いる位置決め装置3は、
図5で示すような、ヤットコ13を介して構真柱1の上端近傍に側方から外力を作用させる水平位置調整装置8と、水平位置調整装置8から高さ方向に間隔を設けて配置され、構真柱1の下端側に側方から外力を作用させる位置調整装置4とを備えている。
【0030】
<水平位置調整装置>
水平位置調整装置8は、一般に構真柱1の建込み作業時に地中孔Hの孔口に設置され、構真柱1の平面視位置を調整する際に用いられる装置であれば、いずれを採用してもよい。本実施の形態では、
図5で示すように、地中孔Hの孔口に据え付けられた架台2の上部に設置されるレベル調整架台9と、このレベル調整架台9に設置される複数のガイドローラー装置10とを備えている。
【0031】
ガイドローラー装置10は、
図6で示すように平面視で、構真柱1の平面部における出隅部近傍に各々2体ずつ位置するよう、合計8体備えられており、長手方向に伸縮自在なアーム101と、アーム101の先端に設置されたローラー102とを備えている。また、アーム101は、基端がレベル調整架台9に設置され、先端が平面視でレベル調整架台9の内空に向けて突出可能なように配置されている。
【0032】
これにより、アーム101の長さを伸縮させることで、アーム101の先端に設置したローラー102を、地中孔Hに挿入された構真柱1の頭部に装着するヤットコ13の側面に当接させることができる。なお、ローラー102は、鉛直方向に回転自在な状態で、ヤットコ13の側面に当接される。
【0033】
また、レベル調整架台9は、地中孔Hを取り囲む鋼製筒形状の架台であり、その内方にジャーナルジャッキ(図示せず)が装備されている。これにより、レベル調整架台9は、
図5で示すように、地表面上に据え付けられた架台2上に載置された状態でジャーナルジャッキを適宜調整することにより、8体のガイドローラー装置10が設置されている設置部の高さレベルを水平に合わせることができる。
【0034】
<位置調整装置>
構真柱1の下端側に装着される位置調整装置4は、
図4及び
図10で示すように、構真柱1の柱部分11および埋設部分12のいずれにも装着することができ、押圧装置5と、反力受け部材6と、押圧装置支持部材7との組み合わせを4組備え、構真柱1の出隅部もしくは出隅部近傍にそれぞれ配置されている。そして、
図4(b)で示すように、押圧装置5が、構真柱1に設置された押圧装置支持部材7に吊り下げられた状態で、構真柱1と地中孔Hの孔壁との間に配置され、押圧装置5と構真柱1との間に反力受け部材6が配置される。
【0035】
押圧装置5は、
図7(a)の正面図及び
図7(b)の側面図で示すように、表裏面が平滑な鋼板よりなり、フック51を備えたベース板52と、ベース板52の表面に設置される伸縮装置53と、を備えている。伸縮装置53は、表面が地中孔Hの孔壁に当接する当接面を有する面部材54と、面部材54の裏面に設置されている伸縮機構55とを備える。
【0036】
また、フック51には、吊治具56が備えられており、吊治具56としては、ワイヤー等の紐材を介してクレーン等の揚重装置により、吊り上げもしくは吊り下ろしが可能な構造を有していればいずれの部材を採用してもよく、本実施の形態では、吊治具56としてアイボルトを採用している。
【0037】
また、伸縮機構55についても、面部材54をベース板52の表面から地中孔Hの孔壁に向けて押し引き可能な機構であれば、いずれを採用してもよいが、本実施の形態では、パンタグラフジャッキを採用している。
【0038】
なお、伸縮機構55に採用するパンタグラフジャッキは、押圧装置5が、地中孔Hの孔壁と構真柱1の平面部との間に形成される最も間隔の狭い出隅部に配置されることを考慮し、一般に市場で取引されているパンタグラフと比較して薄型化を図っている点に大きな特徴がある。
【0039】
具体的には、
図7(b)で示すように、一端が面部材54の裏面にピンを介して回動自在に連結されている駆動アーム551及び従動アーム552と、油圧ジャッキ553により構成されている。従動アーム552はその他端が、ベース板52の表面に対して起伏自在となるようピンを介して回動自在に連結され、駆動アーム551はその他端が、油圧ジャッキ553にピンを介して回動自在に連結され、従動アーム552の他端に向けてベース板52の表面上をスライド移動自在に設置されている。
【0040】
したがって、
図7(b)で示すように、油圧ジャッキ553をベース板52の表面に沿う方向に伸長させて、駆動アーム551の他端を従動アーム552の他端に向けてスライドさせると、駆動アーム551及び従動アーム552がベース板52の表面から立ち上がり、面部材54がベース板52から離間する。
【0041】
これにより面部材54は、地中孔Hの孔壁に向けて押し出され、ひいては孔壁に当接する。なお、伸縮機構55は、面部材54の押し出し量を、地中孔Hの軸心と構真柱1の軸心が合致した状態で、構真柱1の出隅部と構真柱Hの孔壁との離間距離よりも大きくなるよう確保しておく。そして、面部材54が孔壁を押圧した際の反力は、構真柱1の側面に設置された反力受け部材6を介して構真柱1に伝達される。
【0042】
反力受け部材6は、押圧装置支持部材7から吊り下げた押圧装置5の裏面と当接するように、押圧装置支持部材7との間で高さ方向の間隔を確保するとともに、押圧装置5の伸縮装置53における面部材54の押出し方向が、構真柱1の放射方向となるように、配置向きを設定し配置する。
【0043】
以下に、反力受け部材6と押圧装置支持部材7を、構真柱1の柱部分11に装着する場合、埋設部分12に装着する場合ごとに、その詳細を説明する。
【0044】
<位置調整装置を構真柱の柱部分に装着する場合>
図4(a)(c)で示すように、構真柱1の柱部分11は、矩形断面を有するプレキャスト部材111により構成されており、その外表面は、4つの平面部で形成されている。したがって、これら4つの平面部の交差位置となる出隅部4か所に、押圧装置支持部材7及び反力受け部材6が設置される。
【0045】
反力受け部材6は、
図8(a)で示すように、その表面が押圧装置5のベース板52の裏面に当接する押圧装置当接プレート61と、押圧装置当接プレート61の裏面に設置される補強部材63および構真柱当接部材62と、を備える。
【0046】
押圧装置当接プレート61は、押圧装置5のベース板52の裏面と面どうしで当接する平滑な表面を有していれば、いずれを用いてもよく、本実施の形態では、平板上の鋼板を採用している。構真柱当接部材62は、断面視がくの字に形成された鋼板よりなり、入隅側が、構真柱1の外表面を構成する隣り合う平面部各々に当接し、出隅側が補強部材63に設置されている。
【0047】
補強部材63は、押圧装置当接プレート61と同様の鋼材より形成され、押圧装置当接プレート61の裏面と構真柱当接部材62の出隅側の面とを連結するように設置されており、押圧装置当接プレート61の変形を防止する機能と、押圧装置当接プレート61の裏面に構真柱当接部材62を設置する機能とを有している。
【0048】
このような構成の反力受け部材6は、
図9で示すように、構真柱当接部材62が構真柱1に当接した際に、押圧装置当接プレート61の表面が、平面視で構真柱1の対角線と直交するように、つまり、構真柱1の軸線と直交する線に直交するようにして配置される。これにより、構真柱1の出隅部各々で、反力受け部材6に当接するように配置される押圧装置5における面部材54の押し出し方向を、構真柱1の放射方向に向けることが可能となり、反力を構真柱1の軸心に向けて作用させることができる。
【0049】
押圧装置支持部材7は、
図4(b)で示すように、構真柱1の反力受け部材6より上方に間隔を設けて設置される部材であり、
図8(b)で示すように、表面にリング孔71が形成された鋼板よりなる支持プレート72と、支持プレート72の裏面側に設置される補強部材73及び取付け部材74と、を備える。
【0050】
取付け部材74は、反力受け部材6に備えた構真柱当接部材62と同様に断面視くの字に形成された鋼板よりなり、入隅側が、構真柱1の外表面を構成する隣り合う平面部各々に当接し、出隅側が補強部材73に設置されている。
【0051】
補強部材73は、支持プレート72と同様の鋼材より形成され、支持プレート72の裏面と取付け部材74の出隅側の面を連結するように設置されており、支持プレート72の変形を防止する機能と、支持プレート72の裏面に取付け部材74を設置する機能とを有している。
【0052】
リング孔71は、押圧装置支持部材7を構真柱1に設置した際、上方から押圧装置5のベース板52に備えたフック51を引っ掛けることができるよう、構真柱1の軸線方向に貫通する孔に形成されている。
【0053】
このような構成の押圧装置支持部材7は、
図4(b)(c)で示すように、取付け部材74が構真柱1に当接した際に、支持プレート72の表面が、平面視で構真柱1の対角線と直交するように、つまり、反力受け部材6の押圧装置当接プレート61と平行に配置される。
【0054】
これら反力受け部材6と押圧装置支持部材7はともに、構真柱1の柱部材11に着脱自在に設置されれば、その設置方法はいずれでもよいが、本実施の形態では、構真柱1にインサートナット(図示せず)を埋設しておくとともに、構真柱当接部材62にボルト孔を設けておき、ボルトを介して構真柱1に反力受け部材6を設置する。
【0055】
同様に、押圧装置支持部材7の取付け位置にもインサートナットを埋設しておくとともに、取付け部材74にボルト孔を設けておき、ボルトを介して構真柱1に押圧装置支持部材7を設置する。
【0056】
また、本実施の形態では、構真柱1が矩形断面に形成されていることから、反力受け部材6に備えた構真柱当接部材62及び押圧装置支持部材7に備えた取付け部材74を、それぞれ90°の角度をもった断面視くの字に形成している。しかし、この角度は、構真柱1の断面形状(出隅部の角度)に応じて、適宜変更すればよい。
【0057】
このような構成により位置調整装置4は、
図4(a)で示すように、構真柱1の柱部分11における所定位置に反力受け部材6及び押圧装置支持部材7が設置されたのち、
図4(b)で示すように、押圧装置5が押圧装置支持部材7に吊り下げられることで構真柱1に装着される。そして、これら位置調整装置4が装着された状態の構真柱1が、
図5で示すように、地中孔Hに挿入される。
【0058】
なお、位置調整装置4を装着した構真柱1を地中孔Hに挿入する際、押圧装置5には、ワイヤー等の紐部材を吊治具56に接続しておく。こうすると、押圧装置支持部材7に吊り下げられるのみの押圧装置5は、故障等の不測の事態や構真柱1の位置調整作業の終了後等、適時のタイミングで地中孔Hからクレーン等を介して吊り上げ回収することが可能となる。
【0059】
<位置調整装置を構真柱の埋設部分に装着する場合>
上記の反力受け部材6と押圧装置支持部材7は、構真柱1の埋設部分12にも設置可能であるが、一部部材を省略してより簡略化したものを採用することも可能である。以下に、構造を簡略化した反力受け部材6と押圧装置支持部材7を説明する。
【0060】
図10(a)(b)で示すように、構真柱1の埋設部分12は、クロスH鋼材により構築されており、埋設部分12の外表面は、H形鋼が備える4つのフランジよりなる平面部で形成されている。したがって、これら4つのフランジを延長させた際の交差位置となる4か所に、押圧装置支持部材7及び反力受け部材6が設置される。なお、4つのフランジを延長させた際の交差位置はそれぞれ、
図11で示すように、柱部分の対角線上となる。
【0061】
反力受け部材6は、
図10(b)(c)で示すように、表面が押圧装置5のベース板52の裏面に当接する鋼板よりなる押圧装置当接プレート61と、押圧装置当接プレート61を補強する補強部材63とにより構成されている。また、押圧装置当接プレート61は、裏面を構真柱1の埋設部分12に直接溶接固定できるため、構真柱当接部材62を備えていない。なお、補強部材63は、構真柱1の埋設部分12との溶接位置を回避するようにして、押圧装置当接プレート61の裏面に設置されている。
【0062】
押圧装置支持部材7は、
図10(a)(b)で示すように、表面にリング孔71が形成された鋼板よりなる支持プレート72よりなり、この支持プレート72の裏面を、構真柱1の埋設部分12に直接溶接固定できるため、補強部材73及び取付け部材74を備えていない。
【0063】
そして、構真柱1の柱部分11に装着する場合と同様に、反力受け部材6の押圧装置当接プレート61の表面は、平面視で構真柱1の対角線と直交するように配置し、この押圧装置当接プレート61と押圧装置支持部材7における支持プレート72とを平行に配置する。
【0064】
なお、押圧装置支持部材7と反力受け部材6は、
図10(a)(c)で示すように、隣り合うフランジ各々の対向する側端部に溶接固定しているが、その固定方法はこれに限定されるものではなく、いずれの手段を採用してもよい。
【0065】
ところで、構真柱1の埋設部分12に装着する場合、押圧装置5と地中孔Hの孔壁までの距離は、
図11で示すように、位置調整装置4を柱部分11の出隅部に設置する場合と比較して長くなっている。したがって、押圧装置5に備えた伸縮機構55の伸長距離が不足する場合には、面部材54に所定の部材厚を有するアタッチメント57を装着し、伸縮機構55を伸長した際にアタッチメント57が地中孔Hの孔壁に当接するようにしてもよい。
【0066】
また、
図11で示すように、埋設部分12の平面視の外形形状は柱部分11より小さいため、押圧装置5に設置する吊治具56を、位置調整装置4を構真柱の柱部分11に装着する場合と同様な位置に設置すると、押圧装置5を地中孔Hから吊り上げて回収することができない。
【0067】
そこで、位置調整装置4を構真柱1の埋設部分12に装着する場合には、
図12で示すように、押圧装置5を構成する一対のフック51各々に、張出し耳58を設けておく。一対の張出し耳58はそれぞれ、構真柱1の埋設部分12に設置された際に、
図11で示すように、平面視で構真柱1の柱部分11より張り出す大きさの板材により形成されている。
【0068】
そして、張出し耳58における柱部分11より張り出した位置に、吊治具56を設置する。これにより、ワイヤー等の紐部材を吊治具56に接続しておくことにより、柱部分11に装着した場合と同様に、適時のタイミングで地中孔Hから押圧装置5のみを吊り上げ回収することが可能となる。
【0069】
上記のとおり、位置調整装置4は構真柱1の柱部分11及び埋設部分12のいずれの外表面に装着できることから、
図5で示すように、地中孔H内で深い位置、つまり孔壁の地盤が安定している位置に配置することも可能となる。したがって、地中孔Hに備えたケーシングPを利用することなく、押圧装置5を介して構真柱1の下端側に側方からの外力を作用させ、構真柱1の上端部に設置したヤットコ13の側面であって水平位置調整装置8のガイドローラー装置10が当接されている位置を支点にして、構真柱1の軸心が鉛直となるように姿勢を制御し、位置調整することが可能となる。
【0070】
<位置調整装置の設置位置の選択方法>
位置調整装置4を構真柱1に装着する際には、水平位置調整装置8と位置調整装置4との間に十分な間隔を確保することが、構真柱1の鉛直度をより高い精度で確保するために有利である。したがって、施工条件や構築しようとする地下躯体の構造等に応じて、位置調整装置4の装着位置を適宜選択する。
【0071】
しかし、位置調整装置4を構真柱1の埋設部分12に装着する場合には、その範囲に制約が生じる。具体的には、設置可能範囲は、
図3で示すような、柱部分11の底面とコンクリートCを打設した際の余盛り部分24の上端との間の高さ範囲Lとなる。ところが、押圧装置支持部材7の上端面と柱部分11の下端面との間に十分な高さが確保できない場合、押圧装置支持部材7に吊り下げられている押圧装置5を地上から吊り上げ撤去することができない。
【0072】
このため、位置調整装置4を構真柱1の埋設部分12に装着できる場合とは、柱部分11の底面とコンクリートCを打設した際の余盛り部分24の上端との間の高さ範囲Lであって、押圧装置支持部材7の上端面と柱部分11の下端面との間に、押圧装置5を吊り上げ撤去可能な距離を十分確保できる位置であることが条件となる。
【0073】
これらの条件を満足できる場合には、位置調整装置4を構真柱1の埋設部分12に装着すると、構真柱1に対する位置調整装置4の装着位置と、構真柱1の位置調整時に支点となる水平位置調整装置8の配置位置との配置間隔を、より大きく確保することが可能となる。
【0074】
<位置調整方法>
上記の位置調整装置4を用いた構真柱1の建込み位置を調整する方法を、位置決め装置3を利用して構真柱1を建込む工程を含む逆打ち工法の手順と併せて、以下に説明する。なお、本実施の形態では位置調整装置4を、構真柱1の柱部分11に装着する場合を事例にあげ、以下にその手順を説明する。
【0075】
なお、構真柱1を地中孔Hに挿入する前に、
図1(c)で示すように、地中孔Hの孔口を囲むようにして、地表面に架台2を据え付けるとともに、その上部に水平位置調整装置8を設置し、レベル調整架台9で水平レベルの調整を行い、8体のガイドローラー装置10の高さレベルを水平に合わせておく。
【0076】
まず、
図4(b)で示すように、構真柱1の下端側であって、柱部分11の4つの出隅部各々に、押圧装置5が配置されるよう位置調整装置4を装着する。この位置調整装置4が装着された構真柱1を、クレーン等の揚重装置により吊り下ろし、
図2(a)で示すように、地中孔Hの所定深さまで挿入する。なお、構真柱1の上端部にはヤットコ13を装着し、このヤットコ13を介して構真柱1を地中孔H内に吊り下げ支持する。
【0077】
先にも述べたように、構真柱1の柱部分11は、複数の超高強度プレキャスト部材111を積層して連結することにより形成されている。したがって、構真柱1の吊り下ろし作業は、地中孔H内で、これら超高強度プレキャスト部材111を積層・連結して柱部分11を形成しつつ、所定の位置に反力受け部材6及び押圧装置支持部材7を設置するとともに、押圧装置5を押圧装置支持部材7に吊り下げることにより、位置調整装置4が装着された構真柱1を地中孔Hに挿入してもよい。
【0078】
次に、地中孔H内で安定液W中に吊り下ろされた状態の構真柱1を、設計時に設定された建込み位置に先決めするための位置調整を行う。
【0079】
具体的には、
図5で示すように、8体のガイドローラー装置10のアーム101を伸縮させて長さを調整しながら、構真柱1の上端部に設置したヤットコ13の側面にローラー102を当接させる。また、位置調整装置4に備えた押圧装置5の伸縮装置53を作動させ、面部材54の表面を地中孔Hの孔壁に当接させるとともに、ベース板52の裏面を反力受け部材6に当接させる。
【0080】
次に、アーム101を伸縮させつつ構真柱1の平面視位置を調整し、構真柱1を地中孔H内の平面視における建込み位置に位置決めする。この状態で、構真柱1の出隅部各々に配置した押圧装置5の伸縮機構55を適宜伸縮させることにより、反力受け部材6を介して構真柱1の下端側に側方から外力を作用させ、構真柱1の上端部に設置したヤットコ13の側面であってローラー102が当接されている位置を支点にして、構真柱1の軸心が鉛直となるように姿勢を制御し、位置調整を行う。
【0081】
これにより、地中孔Hに挿入した構真柱1を設計時に設定された建込み位置に配置することができる。こうして、構真柱1の建込み作業を終えた後、地中孔Hにトレミー管Tを挿入・配置する。
【0082】
図6及び
図9で示すように、位置調整装置4の押圧装置5および水平位置調整装置8のガイドローラー装置10はいずれも、構真柱1の出隅部および出隅部近傍に配置されることから、地中孔Hの孔壁と構真柱1の平面部との間に形成される隙間には、高さ方向に連続する空間が用意される。したがって、この空間に、トレミー管を挿入・配置する。
【0083】
このように、平面視円形の地中孔Hに矩形断面の構真柱1を挿入すると、孔壁と構真柱1との間に形成される最も広い隙間は、地中孔Hの孔壁と構真柱1の平面部との間に形成される空間であり、この空間をトレミー管Tの配置に利用できる。このため、構真柱1の断面形状が大型化することに伴い、平面視で既往の断面径(最大3000mm程度)を有する地中孔Hに対して構真柱1の占める割合が大きくなった場合にも、構真柱1の建込み位置を調整する位置調整装置4とトレミー管Tの干渉を回避して、構真柱1の建込み位置を先決めしたのち、地中孔Hにコンクリートを後打ちすることが可能となる。
【0084】
こののち、
図2(b)で示すように、このトレミー管Tを介して地中孔Hに鉄筋籠Sを埋設する深さまでコンクリートCを打設してコンクリートCを養生する。所定時間の経過後、位置調整装置4の押圧装置5を吊り上げ撤去し、この撤去した押圧装置5を、後行して設置予定の構真柱1に設置する位置調整装置4に再利用する。
【0085】
また、地中孔Hに打設したコンクリートCに所定の強度発現が確認されたところで、地中孔Hの埋戻しを行うとともにケーシングPを撤去したのち、地下躯体22の構築作業を行う。つまり、地表面から掘削を行いつつ地下階を下方に向かって順次構築し、地盤の掘削と地下階の構築を繰り返して最下階まで到達したのち、
図3で示すように、基礎梁23を構築する。
【0086】
このとき、
図3で示すように、位置調整装置4の反力受け部材6及び押圧装置支持部材7が、地下階に露出している場合には、インサートナットに螺合したボルトを取り外し、両者ともに回収する。こうすると、後行して建込み予定の構真柱1に装着する位置調整装置4に、押圧装置5だけでなく反力受け部材6及び押圧装置支持部材7も再利用することができる。
【0087】
なお、位置調整装置4を構真柱1の埋設部分12に設置した場合も、位置調整方法の手順は同様であるが、反力受け部材6及び押圧装置支持部材7は、基礎梁23に埋設される高さ位置に配置されることとなるため、撤去してもしなくてもよい。
【0088】
本発明の位置調整装置および構真柱の位置調整方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0089】
例えば、本実施の形態では、矩形断面に形成された構真柱1を事例に挙げたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、軸線と平行な平面部を外表面に複数備える構真柱であれば、長方形や三角形、多角形等、いずれの断面形状を有する構真柱1にも採用可能である。
【0090】
また、本実施の形態では、押圧装置5の伸縮機構55にパンタグラフジャッキを採用したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、水中で使用することの可能な伸縮機構であればいずれを採用してもよい。
【0091】
さらに、本実施の形態では、位置調整装置4の反力受け部材6を構真柱1に設置したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、構真柱1に反力受け部材6を当接させるのみでもよい。具体的には、
図13(a)(b)で示すように、押圧装置5のベース板52の裏面に、反力受け部材6を固着して、一体に形成する。こうすると、構真柱1の位置調整作業が終了し、押圧装置5を地表から吊り上げ撤去する際、反力受け部材6も同時に回収でき、経済的である。
【0092】
なお、この場合には反力受け部材6も押圧装置5とともに、押圧装置支持部材7に吊り下げられたのみの状態となる。しかし、構真柱1を地中孔Hに挿入し、押圧装置5の伸縮機構55を伸長して面部材54を地中孔Hの孔壁に当接させると、反力受け部材6の構真柱当接部材62の入隅側は構真柱1の外表面を構成する平面部に当接する。したがって、反力受け部材6は構真柱に設置しなくても、押圧装置5が地中孔Hの孔壁を押圧した際の反力を、構真柱1に伝達することができる。
【0093】
また、本実施の形態では、水平位置調整装置8を構成するガイドローラー装置10を、ヤットコ13の側面であって平面視で構真柱1の平面部に相当する位置に当接させたが、ガイドローラー装置10の当接位置は必ずしもこれに限定するものではない。例えば、ガイドローラー装置10により、ヤットコ13を介して構真柱1の側方に外力を作用させる際の方向が、位置調整装置4の押圧装置5により構真柱1に作用させる外力の方向と同一となるよう、ガイドローラー装置10の配置位置を調整してもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 構真柱
11 柱部分
12 埋設部分
13 ヤットコ
2 架台
3 位置決め装置
4 位置調整装置
5 押圧装置
51 フック
52 ベース板
53 伸縮装置
54 面部材
55 伸縮機構
56 吊治具
57 アタッチメント
58 張出し耳
6 反力受け部材
61 押圧装置当接プレート
62 構真柱当接部材
63 補強部材
7 押圧装置支持部材
71 リング孔
72 ベース板
73 補強部材
74 構真柱当接部
8 水平位置調整装置
9 レベル調整架台
10 ガイドローラー装置
101 アーム
102 ローラー
21 基礎杭
22 地下躯体
23 基礎梁
H 地中孔
W 安定液
P ケーシング
S 鉄筋籠
C コンクリート