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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】測定方法及び測定用装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/12 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
B66B5/12 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023532889
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2021025332
(87)【国際公開番号】W WO2023281590
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-07-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 龍
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-120771(JP,A)
【文献】特開平06-345357(JP,A)
【文献】特開平09-086828(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110884978(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102004029133(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015101634(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 - 5/28
B66B 7/00 - 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごを吊り下げる複数のロープに、前記複数のロープを両側から挟み込むように連結装置が取り付けられたエレベーター装置において、ロープの張力を測定する方法であって、
前記連結装置の姿勢を検出する第1検出工程と、
前記第1検出工程の後、前記連結装置に固定装置を取り付け、前記かごが移動する昇降路の固定部材又は前記昇降路を移動する移動体の固定部材の一方に、前記固定装置を介して前記連結装置を固定する第1固定工程と、
前記第1固定工程の後、前記連結装置の姿勢を検出する第2検出工程と、
前記第1検出工程で検出された姿勢及び前記第2検出工程で検出された姿勢に基づいて、前記連結装置の姿勢の変化が許容範囲内であるか否かを判定する第1判定工程と、
前記連結装置の姿勢の変化が前記許容範囲内であると判定されると、前記複数のロープに含まれるロープの張力を測定する測定工程と、
を備えた測定方法。
【請求項2】
前記連結装置の姿勢の変化が前記許容範囲内であると前記第1判定工程で判定されなければ、前記連結装置から前記固定装置を外す取外工程と、
前記取外工程の後、前記連結装置の姿勢を検出する第3検出工程と、
前記第3検出工程の後、前記一方に前記固定装置を介して前記連結装置を固定する第2固定工程と、
前記第2固定工程の後、前記連結装置の姿勢を検出する第4検出工程と、
前記第3検出工程で検出された姿勢及び前記第4検出工程で検出された姿勢に基づいて、前記連結装置の姿勢の変化が許容範囲内であるか否かを判定する第2判定工程と、
を更に備えた請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記連結装置の姿勢として、水平面に対する前記連結装置の取付角度が検出される請求項1又は請求項2に記載の測定方法。
【請求項4】
かごを吊り下げる複数のロープに、前記複数のロープを両側から挟み込むように連結装置が取り付けられたエレベーター装置において、ロープの張力を測定する際に使用される測定用装置であって、
前記連結装置の姿勢を検出するためのセンサと、
前記連結装置に取り付けられる第1取付部材と、
前記かごが移動する昇降路の固定部材又は前記昇降路を移動する移動体の固定部材に取り付けられる第2取付部材と、
前記第1取付部材及び前記第2取付部材に設けられた調整装置と、
を備え、
前記調整装置は、
第1軸及び前記第1軸に直交する第2軸を中心に前記第1取付部材を回転させるための変位機構と、
前記変位機構による前記第1取付部材の変位を阻止するための阻止機構と、
を備えた測定用装置。
【請求項5】
前記変位機構は、前記第1軸及び前記第2軸のそれぞれに直交する第3軸を中心に前記第1取付部材を回転させる請求項4に記載の測定用装置。
【請求項6】
前記センサは、前記連結装置の姿勢として、水平面に対する前記連結装置の取付角度を検出する請求項4又は請求項5に記載の測定用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロープの張力を測定するための方法と、当該方法で用いられる測定用装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、ロープに発生した振動の周波数を測定するための装置が記載されている。特許文献1に記載された装置は、ロープを撮影するための撮影装置を備える。撮影装置によって撮影された動画に基づいて、ロープに発生した振動の周波数が測定される。また、測定された周波数から、ロープの張力が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特開2020-40810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレベーターのかごは、複数のロープによって昇降路に吊り下げられる。この複数のロープには、連結装置が取り付けられる場合がある。当該連結装置は、複数のロープを両側から挟み込むように当該複数のロープに取り付けられる。
【0005】
連結装置を備えるエレベーター装置では、1本のロープに振動が発生すると、当該ロープに発生した振動が連結装置を介して他のロープに伝わってしまう。即ち、張力測定のために1本のロープに振動を発生させると、他のロープで振動が発生する。当該他のロープで発生した振動は、連結装置を介して当該ロープに伝わる。このため、連結装置を介して当該ロープに伝わった振動がノイズとして測定されてしまう。
【0006】
このような理由から、従来では、張力測定を行う場合は、ロープに振動を発生させる前にロープから連結装置を取り外していた。しかし、連結装置の着脱を短時間で行うことは難しいことから、張力測定のために長い時間が必要になるといった問題があった。
【0007】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされた。本開示の目的は、ロープの張力を測定するために必要な時間を短くすることができる測定方法を提供することである。本開示の他の目的は、ロープの張力を測定するために必要な時間を短くするための測定用装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る測定方法は、かごを吊り下げる複数のロープに、複数のロープを両側から挟み込むように連結装置が取り付けられたエレベーター装置において、ロープの張力を測定する方法である。当該方法は、連結装置の姿勢を検出する第1検出工程と、第1検出工程の後、連結装置に固定装置を取り付け、かごが移動する昇降路の固定部材又は昇降路を移動する移動体の固定部材の一方に、固定装置を介して連結装置を固定する第1固定工程と、第1固定工程の後、連結装置の姿勢を検出する第2検出工程と、第1検出工程で検出された姿勢及び第2検出工程で検出された姿勢に基づいて、連結装置の姿勢の変化が許容範囲内であるか否かを判定する第1判定工程と、連結装置の姿勢の変化が許容範囲内であると判定されると、複数のロープに含まれるロープの張力を測定する測定工程と、を備える。
【0009】
本開示に係る測定用装置は、かごを吊り下げる複数のロープに、複数のロープを両側から挟み込むように連結装置が取り付けられたエレベーター装置において、ロープの張力を測定する際に使用される測定用装置である。当該測定用装置は、連結装置の姿勢を検出するためのセンサと、連結装置に取り付けられる第1取付部材と、かごが移動する昇降路の固定部材又は昇降路を移動する移動体の固定部材に取り付けられる第2取付部材と、第1取付部材及び第2取付部材に設けられた調整装置と、を備える。調整装置は、第1軸及び第1軸に直交する第2軸を中心に第1取付部材を回転させるための変位機構と、変位機構による第1取付部材の変位を阻止するための阻止機構と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ロープの張力を測定するために必要な時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】エレベーター装置の例を示す図である。
図2図1のA部を拡大した図である。
図3図2のB-B断面を示す図である。
図4】ロープに振動を与えることによって測定される周波数の例を示す図である。
図5】実施の形態1における張力の測定方法を示すフローチャートである。
図6】張力の測定方法を説明するための図である。
図7】張力の測定方法を説明するための図である。
図8】張力の測定方法を説明するための図である。
図9】張力の測定方法を説明するための図である。
図10】測定用装置の他の例を示す図である。
図11図10のE-E断面を示す図である。
図12】測定用装置21の他の例を示す図である。
図13図12のF-F断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して詳細な説明を行う。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。
【0013】
実施の形態1.
図1は、エレベーター装置の例を示す図である。エレベーター装置は、かご1及びつり合いおもり2を備える。かご1は、昇降路3を上下に移動する。つり合いおもり2は、昇降路3を上下に移動する。かご1及びつり合いおもり2は、昇降路3を移動する移動体の例である。昇降路3は、建物に形成された上下に延びる空間である。かご1及びつり合いおもり2は、ロープ4によって昇降路3に吊り下げられる。ロープ4は、例えばワイヤロープである。図1は、1:1ローピング方式のエレベーター装置を一例として示す。
【0014】
ロープ4は、巻上機5に巻き掛けられる。かご1は、巻上機5によって駆動される。制御装置6は、巻上機5を制御する。即ち、かご1の移動は、制御装置6によって制御される。図1は、巻上機5及び制御装置6が昇降路3の上方の機械室7に設けられる例を示す。巻上機5及び制御装置6は、昇降路3に設けられても良い。巻上機5は、昇降路3の頂部に設けられても良いし、昇降路3のピットに設けられても良い。
【0015】
かご1は、かご室8、ドア9、かご枠10、及びガイド部材11を備える。かご室8は、乗客が乗るための空間を形成する。ドア9は、かご室8に形成された出入口を開閉する。かご枠10は、かご室8を支持する。かご枠10は、かご室8の上下左右を囲むように配置される。ガイド部材11は、かご枠10に設けられる。
【0016】
昇降路3に、かご1用の一対のガイドレール12が設けられる。ガイドレール12は、昇降路3のピットから頂部に亘って鉛直に配置される。かご1は、ガイド部材11がガイドレール12に対向或いは接触することにより、その移動が案内される。ガイド部材11は、例えばガイドシューである。ガイド部材11は、ガイドローラでも良い。
【0017】
つり合いおもり2は、調整おもり13、おもり枠14、及びガイド部材15を備える。調整おもり13は、つり合いおもり2の全体の重量を調整するためのおもりである。調整おもり13は、おもり枠14に支持される。おもり枠14は、調整おもり13の上下左右を囲むように配置される。ガイド部材15は、おもり枠14に設けられる。
【0018】
昇降路3に、つり合いおもり2用の一対のガイドレール16が設けられる。ガイドレール16は、昇降路3のピットから頂部に亘って鉛直に配置される。つり合いおもり2は、ガイド部材15がガイドレール16に対向或いは接触することにより、その移動が案内される。ガイド部材15は、例えばガイドシューである。ガイド部材15は、ガイドローラでも良い。
【0019】
図2は、図1のA部を拡大した図である。図3は、図2のB-B断面を示す図である。本実施の形態に示す例では、かご1は、複数のロープ4によって吊られている。各ロープ4は、ロープシャックル17を介してかご枠10に接続される。当該複数のロープ4に、連結装置18が取り付けられている。
【0020】
連結装置18は、図3に示すように、2つの押付部材19及び20を備える。連結装置18は、押付部材19及び20によって複数のロープ4を両側から挟み込むことにより、当該複数のロープ4に取り付けられる。押付部材19及び20の固定には、複数のボルトが用いられることが好ましい。押付部材19に、ロープ4を配置するための溝19aが形成される。同様に、押付部材20に、ロープ4を配置するための溝20aが形成される。連結装置18の上向きの表面18aは、溝19a及び溝20aに対して直交する。
【0021】
エレベーター装置では、定期点検等において、保守員がロープ4の張力を測定する。張力の測定では、保守員は、ロープ4に振動を与え、その周波数を測定する。保守員は、測定した周波数から張力を得る。図4は、ロープ4に振動を与えることによって測定される周波数の例を示す図である。図4に示す実線は、図2に示す5本のうちの真ん中のロープ4に振動を与えた時に測定された周波数の例を示す。以下においては、当該ロープ4を他のロープ4と区別する必要がある場合は、符号4に替えて符号4aを付す。
【0022】
上述したように、連結装置18を備えたエレベーター装置では、1本のロープ4に振動が発生すると、当該ロープ4に発生した振動が連結装置18を介して他のロープ4に伝わる。例えば、ロープ4aに振動が発生すると、ロープ4aに発生した振動が連結装置18を介して他のロープ4に伝わる。そして、他のロープ4で発生した振動は、連結装置18を介してロープ4aに伝わる。このため、図2に示す状態で振動の周波数を測定すると、図4において符号C及びDで示されているように、他のロープ4から伝わった振動がノイズとして検出されてしまう。
【0023】
以下に、図5から図9も参照し、図4において符号C及びDで示されるノイズを低減させるために、測定用装置21を用いてロープ4の張力を測定する方法について説明する。図5は、実施の形態1における張力の測定方法を示すフローチャートである。図6から図9は、張力の測定方法を説明するための図である。測定用装置21には、センサ22と固定装置23とが備えられる。
【0024】
保守員は、先ず、乗場からかご1の上に移動する。保守員は、かご1の上に移動すると、ロープ4に取り付けられている連結装置18の姿勢を検出する(S101)。S101に示す検出工程では、一例として、図6に示すように、連結装置18の姿勢を検出するためのセンサ22が連結装置18の表面18aに載せられる。センサ22は、例えば水準器である。かかる場合、センサ22は、連結装置18の姿勢として、水平面に対する連結装置18の取付角度αを検出する。具体的に、図6に示す例では、水平面に対する表面18aの角度がセンサ22によって検出される。
【0025】
次に、保守員は、連結装置18に固定装置23を取り付ける(S102)。図7及び図8は、S102において、連結装置18に固定装置23が取り付けられた例を示す。図7は、図2に相当する図である。図8は、図3に相当する図である。
【0026】
図7及び図8に示すように、固定装置23は、取付部材24、取付部材25、及び調整装置26を備える。取付部材24は、連結装置18に取り付けられる。図7及び図8に示す例では、取付部材24は、直方体形状の部材である。取付部材24は、表面18aに面接触した状態で、長孔24aに通されたボルト27を用いて連結装置18に取り付けられる。取付部材24は、クランプ、磁石、或いは嵌合機構等を利用して連結装置18に取り付けられても良い。
【0027】
次に、保守員は、固定部材28に固定装置23を取り付ける(S103)。一例として、固定部材28は、昇降路3に固定された部材である。固定部材28は、建築梁、ガイドレール12、或いはガイドレール12に固定されたブラケットでも良い。他の例として、固定部材28は、かご1に備えられた部材である。固定部材28は、かご枠10、かご室8、或いはかご室8から延びるブラケットでも良い。
【0028】
S103において、保守員は、調整装置26によって取付部材25の位置及び向きを調整しながら、取付部材25を固定部材28に取り付ける。取付部材25は、クランプ、磁石、或いは嵌合機構等を利用して固定部材28に取り付けられても良い。
【0029】
調整装置26は、取付部材24と取付部材25との間に設けられる。調整装置26は、複数の軸を中心に取付部材24を回転させるための変位機構29と、変位機構29による取付部材24の変位を阻止するための阻止機構30とを備える。
【0030】
例えば、変位機構29は、図7及び図8に示すX軸、Y軸、及びZ軸のそれぞれを中心に回転可能である。X軸は、Y軸及びZ軸のそれぞれに直交する。Y軸は、Z軸に直交する。変位機構29を操作することにより、保守員は、取付部材25に対する取付部材24の向きを任意の向きに変更することができる。また、保守員は、阻止機構30に対して特定の操作を行うことにより、変位機構29による取付部材24の変位を阻止できる。即ち、阻止機構30に対して特定の操作が行われると、取付部材25に対する取付部材24の向きがその時点における向きに固定される。
【0031】
保守員は、取付部材25を固定部材28に取り付けると、阻止機構30を操作して取付部材25に対する取付部材24の向きを固定する。これにより、連結装置18は、固定装置23を介して固定部材28に固定される。
【0032】
なお、S103に示す工程は、S102に示す工程の前に行われても良い。即ち、取付部材25の固定部材28への取り付けは、取付部材24の連結装置18への取り付けより先に行われても良い。S103に示す工程は、S102に示す工程と並行して行われても良い。即ち、保守員は、取付部材25を固定部材28に取り付けながら、取付部材24を連結装置18に取り付けても良い。
【0033】
S102及びS103に示す固定工程の後、保守員は、センサ22を用いて連結装置18の姿勢を再び検出する(S104)。S104に示す検出工程は、S101に示す検出工程と同様である。
【0034】
連結装置18が固定装置23を介して固定部材28に固定されると、連結装置18の姿勢が変わる。図9は、固定装置23の取り付け前後において、連結装置18の設置角度がΔだけ大きくなった例を示す。連結装置18の設置角度が変化すると、ロープ4に対して引張力或いは圧縮力が作用し、ロープ4の張力が変化してしまう。このため、連結装置18の設置角度の変化が大きいと、ロープ4の張力を正確に測定することができなくなってしまう。
【0035】
そこで、保守員は、S104に示す検出工程の後に、連結装置18の姿勢の変化が許容範囲内であるか否かを判定する(S105)。S105に示す判定工程は、S101で検出された連結装置18の姿勢とS104で検出された連結装置18の姿勢とに基づいて行われる。当該許容範囲は予め設定される。例えば、連結装置18の設置角度の変化Δが許容範囲に入っていなければ、S105でNoと判定される。変化Δが許容範囲に入っていれば、S105でYesと判定される。
【0036】
連結装置18の姿勢の変化が許容範囲内であると判定されなければ(S105のNo)、保守員は、固定装置23を固定し直し、連結装置18の姿勢を検出し直す。具体的に、保守員は、S105でNoと判定すると、固定装置23を連結装置18から取り外す(S106)。S106に示す取外工程では、固定装置23を連結装置18と固定部材28との双方から取り外しても良い。その後、保守員は、S101からS105に示す手順を再度行う。
【0037】
即ち、S106に示す取外工程の後、保守員は、センサ22を用いて連結装置18の姿勢を検出する(S101)。S101に示す検出工程の後、保守員は、固定装置23を連結装置18に取り付ける(S102)。S106に示す取外工程で固定装置23が固定部材28からも取り外されていれば、保守員は、固定装置23を固定部材28に取り付ける(S103)。これにより、連結装置18は、固定装置23を介して固定部材28に固定される。連結装置18が固定装置23を介して固定部材28に再び固定されると、保守員は、センサ22を用いて連結装置18の姿勢を検出する(S104)。その後、保守員は、連結装置18の姿勢の変化が許容範囲内であるか否かを判定する(S105)。S105に示す2回目の判定工程は、S105でNoと判定された後にS101で検出された連結装置18の姿勢とS104で検出された連結装置18の姿勢とに基づいて行われる。
【0038】
連結装置18の姿勢の変化が許容範囲内であると判定されると(S105のYes)、保守員は、ロープ4の張力を測定する(S107)。具体的に、S107に示す測定工程では、保守員は、先ず、ロープ4に外力を加えることによってロープ4を振動させる。保守員は、ロープ4に発生した振動の周波数を測定し、測定した周波数からロープ4の張力を得る。
【0039】
本実施の形態に示す例では、ロープ4に発生した振動の周波数を測定する際に、連結装置18が固定装置23を介して固定部材28に固定されている。このため、ロープ4に発生した振動が連結装置18を介して他のロープ4に伝わることを抑制できる。また、他のロープ4で発生した振動が連結装置18を介して当該ロープに伝わることも抑制できる。
【0040】
図4に示す破線は、連結装置18が固定装置23を介して固定部材28に固定されている状態でロープ4aに発生した振動の周波数を示す。図4に示すように、ロープ4の張力を測定する際に測定用装置21を用いることにより、測定時のノイズを大幅に低減できる。このため、ロープ4の張力を測定する際に連結装置18をロープ4から取り外す必要はない。本実施の形態に示す例であれば、ロープ4の張力を測定するために必要な時間を短くすることができる。
【0041】
図10は、測定用装置21の他の例を示す図である。図11は、図10のE-E断面を示す図である。図10は、図2に相当する図である。図11は、図3に相当する図である。図10及び図11に示す測定用装置21では、調整装置26の変位機構29と阻止機構30とが上述した例と相違する。
【0042】
図10及び図11に示す調整装置26は、変位機構29として、調整部材31、調整部材32、軸33、及び軸34を備える。調整装置26は、阻止機構30として、ボルト35、及びボルト36を備える。
【0043】
調整部材31は、ブロック状の部材である。調整部材31は、取付部材25に設けられる。調整部材31は、取付部材25に対して変位しない。調整部材32は、ブロック状の部材である。調整部材32は、軸33を介して調整部材31に設けられる。軸33は、調整部材31に設けられている。軸33は、調整部材31に対して変位しない。軸33は、X軸に沿うように配置される。調整部材32は、調整部材31に対して軸33を中心に変位可能である。
【0044】
取付部材24は、軸34を介して調整部材32に設けられる。軸34は、調整部材32に設けられている。軸34は、調整部材32に対して変位しない。軸34は、Y軸に沿うように配置される。取付部材24は、調整部材32に対して軸34を中心に変位可能である。図10及び図11に示す例では、調整装置26は、取付部材25に対して、X軸及びY軸を中心に取付部材24を回転させる。
【0045】
ボルト35は、調整部材32に形成されたねじ孔に取り付けられる。ボルト35の先端は、軸33に対向する。このため、ボルト35がねじ込まれると、軸33にボルト35の先端が押し付けられる。これにより、調整部材31に対する調整部材32の変位が阻止される。同様に、ボルト36は、取付部材24に形成されたねじ孔に取り付けられる。ボルト36の先端は軸34に対向する。このため、ボルト36がねじ込まれると、軸34にボルト36の先端が押し付けられる。これにより、調整部材32に対する取付部材24の変位が阻止される。
【0046】
図10及び図11に示す例によれば、安価な構成で測定用装置21を実現できる。
【0047】
図12は、測定用装置21の他の例を示す図である。図13は、図12のF-F断面を示す図である。図12及び図13に示す測定用装置21では、センサ22が上述した例と相違する。
【0048】
図12及び図13に示す測定用装置21は、センサ22として、2台のレーザ変位計22a及び22bを備える。レーザ変位計22aは、S101に示す検出工程において、連結装置18より上方に配置された固定部材37に取り付けられる。同様に、レーザ変位計22bは、S101に示す検出工程において、連結装置18より上方に配置された固定部材38に取り付けられる。
【0049】
固定部材37及び固定部材38は、昇降路3に固定された部材又はかご1に備えられた部材である。固定部材37と固定部材38とは、同じ部材であっても良い。検出工程において、レーザ変位計22aから連結装置18の表面18aに対して上方から光が照射される。図13では、レーザ変位計22aからの光が照射される位置が符号Gで示されている。図13は、レーザ変位計22aからの光が表面18aの一方の端部に照射される好適な例を示す。
【0050】
同様に、検出工程において、レーザ変位計22bから連結装置18の表面18aに対して上方から光が照射される。図13では、レーザ変位計22bからの光が照射される位置が符号Hで示されている。図13は、レーザ変位計22bからの光が表面18aのもう一方の端部に照射される好適な例を示す。図13に示す例では、位置GのY軸座標と位置HのY軸座標とは同じである。ロープ4は、X軸に沿って並んでいる。
【0051】
図12及び図13に示す例においても、保守員は、S105において、連結装置18の姿勢の変化が許容範囲内であるか否かを判定する。かかる場合、S105に示す判定工程は、S101においてレーザ変位計22a及び22bの双方によって検出された結果とS104においてレーザ変位計22a及び22bの双方によって検出された結果とに基づいて行われる。
【0052】
他の例として、センサ22として、ダイヤルゲージ或いは鋼尺等が用いられても良い。
【0053】
本実施の形態では、固定装置23が連結装置18に取り付けられた状態でロープ4の張力を測定する方法について説明した。連結装置18は、かご枠10のすぐ上で複数のロープ4を両側から挟み込み、当該複数のロープ4を一体化する。連結装置18と同様の装置は、おもり枠14のすぐ上にも設けられる。図1は、おもり枠14のすぐ上に、連結装置18と同様の連結装置39が設けられた例を示す。
【0054】
保守員は、連結装置39に対して測定用装置21を用いることにより、上述した方法と同様の方法によってロープ4の張力を測定しても良い。かかる場合、固定装置23が取り付けられる固定部材28は、ガイドレール16、或いはガイドレール16に固定されたブラケットでも良い。また、固定部材28は、つり合いおもり2に備えられた部材でも良い。かかる場合、固定部材28は、調整おもり13、おもり枠14、或いはおもり枠14から延びるブラケットでも良い。
【0055】
上述したように、図1は、1:1ローピング方式のエレベーター装置を示す。連結装置18と同様の装置は、2:1ローピング方式のエレベーター装置でも用いられる。保守員は、当該装置に対して測定用装置21を用いることにより、上述した方法と同様の方法によってロープ4の張力を測定しても良い。かかる場合、固定部材28は、建築梁、ガイドレール12、ガイドレール12に固定されたブラケット、ガイドレール16、或いはガイドレール16に固定されたブラケットでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示に係る測定方法は、連結装置が取り付けられたロープの張力を測定する際に利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 かご、 2 つり合いおもり、 3 昇降路、 4 ロープ、 5 巻上機、 6 制御装置、 7 機械室、 8 かご室、 9 ドア、 10 かご枠、 11 ガイド部材、 12 ガイドレール、 13 調整おもり、 14 おもり枠、 15 ガイド部材、 16 ガイドレール、 17 ロープシャックル、 18 連結装置、 18a 表面、 19~20 押付部材、 19a~20a 溝、 21 測定用装置、 22 センサ、 22a~22b レーザ変位計、 23 固定装置、 24 取付部材、 24a 長孔、 25 取付部材、 26 調整装置、 27 ボルト、 28 固定部材、 29 変位機構、 30 阻止機構、 31~32 調整部材、 33~34 軸、 35~36 ボルト、 37~38 固定部材、 39 連結装置
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