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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】クロロフィル含有食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/41 20160101AFI20231011BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20231011BHJP
   A23L 2/58 20060101ALI20231011BHJP
   A23L 2/42 20060101ALI20231011BHJP
   A23F 3/14 20060101ALI20231011BHJP
   A23D 9/00 20060101ALN20231011BHJP
   A23L 23/00 20160101ALN20231011BHJP
   A23L 11/65 20210101ALN20231011BHJP
【FI】
A23L5/41
A23L5/00 K
A23L2/00 M
A23L2/00 N
A23F3/14
A23D9/00 518
A23L23/00
A23L11/65
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023541663
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2022036284
(87)【国際公開番号】W WO2023054522
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2021159879
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武田 真梨子
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 昌伸
(72)【発明者】
【氏名】池永 直弥
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-29103(JP,A)
【文献】特開2002-238493(JP,A)
【文献】特開2000-4828(JP,A)
【文献】特開2020-127372(JP,A)
【文献】国際公開第2010/016231(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、A23F、A23D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロフィル素材と、遊離アミノ酸を乾物換算にて3重量%~40重量%含むたん白質加水分解物を、クロロフィル素材の固形分1重量部に対して、乾物換算で0.02重量部~1.5重量部添加することを特徴とする、クロロフィル含有食品の製造方法。
【請求項2】
たん白質加水分解物が酵素分解されたものであることを特徴とする、請求項1記載のクロロフィル含有食品の製造方法。
【請求項3】
クロロフィル素材が抹茶であることを特徴とする、請求項1記載のクロロフィル含有食品の製造方法。
【請求項4】
クロロフィル素材が抹茶であることを特徴とする、請求項2記載のクロロフィル含有食品の製造方法。
【請求項5】
クロロフィル素材と、遊離アミノ酸を乾物換算にて3重量%~40重量%含むたん白質加水分解物を、クロロフィル素材の固形分1重量部に対して、乾物換算で0.02重量部~1.5重量部添加することを特徴とする、クロロフィル含有食品の退色を防止する方法。
【請求項6】
クロロフィル素材が抹茶であることを特徴とする、請求項5記載のクロロフィル含有食品の退色を防止する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロフィル含有食品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
緑茶や緑色野菜等のクロロフィルを含有する飲食品は、栄養的価値と食嗜好の両面で食品に変化と多様性を与えるので食事に欠かせない食品である。この食品の嗜好性に大きく関わるものの1つが、そのクロロフィルに由来する緑色である。
なかでも、緑茶、特に抹茶は、鮮やかな緑色特有と上品な香りを活かし、抹茶ドリンク、和菓子、洋菓子など幅広く使用されている。抹茶風味は今や定番のひとつになるほど人気である。
【0003】
しかしながら、抹茶をはじめとするクロロフィル含有飲食品は、製造から保管、販売に至るまでの流通過程において、熱、光などにより緑色が退色、変色してしまい、商品価値を下げるといった問題が起こりやすい。
そのため、抹茶などの粉末茶の退色および変色を防止するために、様々な検討が試みられている(特許文献1~3)。例えば、特許文献1および2には、粉末茶入り飲料に、アスコルビン酸またはその塩、あるいはさらに甘味料を添加することによって、上記飲料中に含有される粉末茶の変色を抑制することが開示されている。特許文献3には、抹茶をサイクロデキストリンでコーティングすることによって、紫外線を遮断し、さらに酸化や吸湿を防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭57-194749号公報
【文献】特開2001-61412号公報
【文献】特公平7-46969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、先行文献1~3は、抹茶の退色および変色防止効果が十分ではなく、また退色防止剤の風味により全体の風味が損なわれるという課題もある。特に、先行文献1では、アスコルビン酸により風味が阻害される。
本発明は、クロロフィル素材を添加した食品において、退色防止剤によって風味が損なわれることがなく、保存時に生じる退色を抑制するクロロフィル含有食品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行ったところ、クロロフィル素材と、遊離アミノ酸を特定量含有するたん白質加水分解物を特定量添加することにより、クロロフィル含有食品の風味を阻害することなく、保存時に生じるクロロフィル含有食品の退色抑制効果を見出し、上記課題を解決するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
1.クロロフィル素材と、遊離アミノ酸を乾物換算にて3重量%~40重量%含むたん白質加水分解物を、クロロフィル素材の固形分1重量部に対して、乾物換算で0.02重量部~1.5重量部添加することを特徴とする、クロロフィル含有食品の製造方法、
2.たん白質加水分解物が酵素分解であることを特徴とする、請求項1記載のクロロフィル含有食品の製造方法、
3.クロロフィル素材が抹茶であることを特徴とする、請求項1記載のクロロフィル含有食品の製造方法、
4.クロロフィル素材が抹茶であることを特徴とする、請求項2記載のクロロフィル含有食品の製造方法、
5.クロロフィル素材と、遊離アミノ酸を乾物換算にて3重量%~40重量%含むたん白質加水分解物を、クロロフィル素材の固形分1重量部に対して、乾物換算で0.02重量部~1.5重量部添加することを特徴とする、クロロフィル含有食品の退色を防止する方法、
6.クロロフィル素材が抹茶であることを特徴とする、請求項5記載のクロロフィル含有食品の退色を防止する方法、
に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に用いられるクロロフィル含有食品は、遊離アミノ酸を特定量含むたん白質加水分解物を特定量添加することにより、全体の風味を阻害することなく、保存時に生じる退色を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0010】
(クロロフィル素材)
本発明のクロロフィル素材は、クロロフィル含有食品に緑色を付与するために使用することができる。クロロフィルは、植物や藻類などに含まれる緑色の天然色素であり、クロロフィル素材としては、緑黄色野菜類や豆類、藻類、茶類等があげられる。例えば、野菜類では、ホウレンソウ、ブロッコリー、ピーマン、小松菜、、ケール、パクチー、スプラウト、トウミョウ、インゲン、大葉、エゴマ、アスパラガス、春菊、サンチュ、レタス、キャベツ、あさつき、ししとうがらし、ズッキーニ、にがうり、バジル等があげられ、豆類では、えんどう豆、枝豆、青大豆等があげられ、クロレラやあおさ等の藻類や緑茶 抹茶等の茶類である。
クロロフィル素材の添加量は、クロロフィル含有食品の種類に応じて、特に限定されず、クロロフィル含有食品に良好な風味と緑色を付与する適切な量を選択することができる。
クロロフィル含有食品に緑色を付与する場合は、粉末状で利用する方がより好ましい。粉末状で使用する場合、各食品を乾燥して粉末化することもできるが、碾茶を粉末化した抹茶が、良好な風味と鮮やかな緑色をクロロフィル含有食品に効果的に付与できる点でより好ましい。
【0011】
(抹茶)
本発明に使用する抹茶としては、新芽の蒸し葉を乾燥させた碾茶(てん茶)を挽いて粉末にしたものであれば、産地は特に限定されない。また、如何なる方法で製造された抹茶であってもよい。例えば、市販されている飲用抹茶をそのまま使用することが出来る。
クロロフィル含有食品に添加する抹茶の量は、特に限定されず、食品の種類により適宜選ばれるが、例えば、飲料では0.5重量%以上、通常1~2重量%、ソース類では1~3重量%の範囲が一般的である。
【0012】
(たん白質加水分解物)
本発明のたん白質加水分解物には、退色防止効果がある。たん白質加水分解物は、たん白質原料を酵素又は酸により加水分解した組成物であるが、酸分解よりも酵素分解の方が、遊離アミノ酸を少なくコントロール出来る点からからより好ましい。
たん白質加水分解物の形態は、特に限定されず、例えば、性状が液体の場合、乾物(dry matter)は通常0.1~20重量%程度であるが、特に限定されるものではない。すなわち、牛乳や植物乳などの液状のたん白質原料を単に加水分解したものや、減圧濃縮や凍結濃縮等の濃縮加工により高粘度化したものであってもよく、また噴霧乾燥や凍結乾燥等の粉末加工により粉末状としたものであってもよい。
たん白質原料は、その起源を問わずたん白質を少なくとも含む原料である。例えば、植物性と動物性のどちらかを選択する、または併用することもできるが、植物ベースの加工食品を製造する場合、植物性たん白質を選択する方が好ましい。植物性のたん白質原料としては、麦類、豆類、穀類等の天然原料や、天然原料からたん白質を濃縮加工した大豆たん白質、エンドウたん白質、緑豆たん白質、小麦たん白質、米たん白質、麻たん白質、ナッツ類たん白質等が挙げられる。動物性たん白質としては、カゼイン、ホエー、コラーゲン等に由来するたん白質を用いることができる。また、微生物発酵由来のたん白質もあげられる。
【0013】
(遊離アミノ酸含量)
本発明におけるたん白質加水分解物は、遊離アミノ酸を乾物換算にて3重量%~40重量%含むことが重要である。さらに、該加水分解物は、遊離アミノ酸を乾物換算にて5重量%以上、7重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、または25重量%以上含み得る。一方、該加水分解物は、遊離アミノ酸を乾物換算にて40重量%以下、30重量%以下、または25重量%以下含み得る。
たん白質加水分解物中に遊離アミノ酸が上記適切な範囲で含まれることにより、ペプチド画分と相俟って、保存時に生じる退色を抑制することができる。たん白質加水分解物中の遊離アミノ酸含量が少なすぎる場合、退色を抑制する効果が不足する傾向があり、高すぎる場合、アミノ酸自体の風味が強く出てしまい、好ましくない傾向がある。なお、遊離アミノ酸含量は、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)により算出できる。
【0014】
そして、本発明におけるたん白質加水分解物は、その加水分解度が90%以上であることが好ましい。さらに、該加水分解度は95%以上、98%以上、または100%であり得る。ここで、加水分解度は15%トリクロロ酢酸可溶率(TCA可溶率)として表すものとし、その数値が高くなるほどたん白質加水分解物の分子量は低分子である。加水分解度がかかる範囲の分解物を用いることにより、保存時に生じる退色を抑制することができる。
なお、15%TCA可溶率は、たん白質加水分解物試料の1重量%水溶液に、30重量%のトリクロロ酢酸(TCA)を等量添加し、3000rpm、10分間遠心分離した後、得られた上澄中の粗たん白質量を、別途測定した全粗たん白質量に対する割合として算出する。なお、粗たん白質量の測定はケルダール法により算出する。
【0015】
(たん白質加水分解物の添加量)
本発明において、該たん白質加水分解物は、クロロフィル素材の固形分1重量部に対して、0.02~1.5重量部を添加する。これにより、保存時に生じる退色を抑制することができる。添加量の下限はクロロフィル素材の固形分1重量部に対して0.02重量部以上、より好ましい態様では、0.1重量部以上とすることができる。
また、添加量の上限は、クロロフィル素材の固形分1重量部に対して1.5重量部以下、より好ましくは1.0重量部以下とすることができる。
添加量が少ない場合、退色を抑制する効果が十分得られない傾向があり、多い場合は、たん白質加水分解物の風味が感じられやすく、良好な風味が得られない傾向がある。
【0016】
(クロロフィル含有食品)
本発明のクロロフィル含有食品は、緑色を呈することが好ましい。例としては、抹茶、緑茶、青汁などの飲料類、抹茶アイスクリーム、メロンシャーベット等の冷菓類、メロンゼリー、抹茶プリンなどのデザート類、メロンケーキ、抹茶クッキー等の菓子類、バジルソース、ホウレンソウソース、グリンピースソース等のソース類、エンドウマメスナック、グリンピーススナック等のスナック類、抹茶蒸しパン、ホウレンソウパン等のパン類、マスカットラムネ、タブレット等の錠菓類などの固体状もしくは液体状食品が挙げられる。本発明のクロロフィル含有食品としては、飲料類等の液体状食品が好ましい。液体状食品は、水分を多く含むため保存時の退色が起こりやすいが、本発明によれば、このような水分を多く含む液体状食品であっても、退色を十分に抑制することができる。
【0017】
(クロロフィル含有食品の製造方法)
本発明におけるクロロフィル含有食品は、クロロフィル素材と、遊離アミノ酸を特定量含むたん白質加水分解物を添加後、食品の種類に応じて適宜、攪拌、混練、乳化等を経て、均一に混合した後に、必要に応じて、焼成、加熱殺菌、冷却、乾燥などを行って製造することができる。これらの工程に使用される機械は、通常の食品製造に使用される物であれは、特に制限なく使用することができる。
該クロロフィル素材と、該たん白質加水分解物を添加する順番や時期は特に問わず、クロロフィル含有食品の種類に応じて適宜に行われる。
例えば、飲料の場合はそのまま添加することができ、ゼリーや水羊羹の場合は加熱して甘味料などを溶解した寒天水溶液に冷却する前の段階で添加することができる。
長期間保存する場合には、密閉容器に収納する等、異物の混入防止方策を採ることが好ましい。
【0018】
(副原料)
本発明の組成物には副原料を含んでもよい。副原料としては、必要な食品原料(油脂、果汁、果肉、野菜、糖類、乳製品、穀粉類、澱粉類、カカオマス、鳥獣魚肉製品、調味料等)や食品添加物(乳化剤、ミネラル、ビタミン、増粘安定剤、酸味料、香料等)を適宜使用することができる。
【実施例
【0019】
以下に実施例を示し、本発明の詳細をより具体的に説明する。なお、例中、「部」あるいは「%」はいずれも重量基準を表すものとする。
【0020】
(製造例1)
脱脂大豆たん白質を塩酸の存在下で加熱処理し、噴霧乾燥して、たん白質加水分解物を得た。
【0021】
(比較例1)
「抹茶」(株式会社堀田勝太郎商店製、全固形分95.0%、緑茶100%)を1.5部、水98.5部をホモミキサーで混合し、70℃に加熱後、5℃に冷却して、抹茶飲料を製造した。
【0022】
(実施例1~6、比較例1~4)たん白質加水分解物の添加量
比較例1の配合をベースとし、水の一部を表1に選択したたん白質加水分解物に置き換え、比較例1と同様の方法で、抹茶飲料を製造した。
抹茶飲料は、製造直後および14日間5℃冷蔵保存後に、下記の評価方法で、各加水分解物の効果を確認した。
(評価方法)
乳の分野に熟練した嗜好パネラー5名に依頼し、保存後の目視による官能評価を行うことにより確認した。官能評価による退色抑制の点数は、下記の評価基準に従って、パネラーの合議により1点から5点を付けた。
(評価基準)
5点:保存前と同等の緑色である。
4点:わずかに退色しているが、保存前とほぼ同等の緑色である。
3点:少し退色が認められるが、許容範囲である。
2点:退色が認められる。
1点:退色が著しく認められる。
たん白質加水分解物由来の風味の有無について製造直後に、乳の分野に熟練した嗜好パネラー5名に依頼し、官能評価を行うことにより確認した。官能評価の点数は、下記の評価基準に従って、パネラーの合議により1点から5点を付けた。
(評価基準)
5点:たん白質加水分解物由来の風味を感じない。
4点:たん白質加水分解物由来の風味をほとんど感じない。
3点:たん白質加水分解物由来を少し感じるが、良好な風味である。
2点:たん白質加水分解物由来の風味を感じる。
1点:たん白質加水分解物由来の風味を最も感じる。
退色抑制効果の目視による官能検査とたん白質加水分解物由来の風味の官能検査を基に総合評価を行い、退色抑制効果が3点以上、かつたん白質加水分解物由来の風味が2点以上を合格と判断した。
【0023】
(表1)選択したたん白質加水分解物

※いずれの製品も15%TCA可溶率はほぼ100%である。
【0024】
(表2)
【0025】
(表3)
【0026】
表2、表3の結果より、遊離アミノ酸を特定量含有するたん白質加水分解物を添加することで、保存時に生じる抹茶飲料の退色を抑制することができた。
【0027】
(実施例7、比較例5)光照射下
実施例6、比較例1の配合をベースに実施例1と同様の方法で抹茶飲料を製造、充填した。続いてこれらを蛍光灯にてそれぞれ照射した。照射条件はいずれも500ルクスとした。
添加効果は、光照射下で3日間、5℃冷蔵保存後、実施例1と同様に退色抑制効果、風味評価を行った。
【0028】
(表4)
【0029】
表4の結果より、光照射下でも遊離アミノ酸を乾物換算にて特定量含むたん白質加水分解物を特定量添加することで、保存時に生じる抹茶飲料の退色を抑制することができた。
【0030】
(実施例8~12)
実施例1の配合をベースに、ハイニュートHKB(不二製油(株)製)を表5の割合で添加し、実施例1と同様の方法で抹茶飲料とした。
抹茶飲料を14日間5℃で冷蔵保存後、実施例1と同様に退色抑制効果、風味評価を行った。
【0031】
(表5)
【0032】
表5の結果より、実施例8~12は総合評価が合格であり、保存時に生じる抹茶飲料の退色を抑制することができた。
【0033】
(実施例13)
低脂肪豆乳(不二製油(株)製、水分:90.2%、蛋白質:5.1%)に対し、プロテアーゼ、及びペプチダーゼにて酵素処理を行い、遊離アミノ酸含量2%の豆乳(乾物換算20.4%)を得た。
上記たん白質加水分解処理した豆乳10部と「抹茶」(株式会社堀田勝太郎商店製、全固形分95.0%、緑茶100%)1.5部、水89.5部をホモミキサーで混合し、70℃に加熱後、5℃に冷却して、抹茶含有豆乳飲料を製造した。
得られた抹茶含有豆乳飲料を14日間5℃で冷蔵保存後、実施例1と同様に退色抑制効果、風味評価を行った。
【0034】
(表6)
【0035】
表6より、たん白質加水分解処理により遊離アミノ酸を乾物換算にて20.4重量%含む植物乳においても保存時に生じる抹茶含有豆乳飲料の退色を抑制することができた。
【0036】
(実施例14)水中油型乳化物
ラウリン系油脂(精製ヤシ油)6部、脱脂粉乳5部、砂糖5.5部、抹茶(株式会社堀田勝太郎商店製、全固形分95.0%、緑茶100%)1部、ハイニュートHKB 0.5部、水81部、ショ糖脂肪酸エステル0.1部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.1部、重曹0.01部、セルロース0.15部、キサンタンガム0.07部、グァーガム0.05部、ジェランガム0.015部を添加し、60℃で30分間、ホモミキサーで攪拌し予備乳化した後、超高温滅菌装置(岩井機械工業(株)製)によって、144℃において4秒間の直接加熱方式による滅菌処理を行った後、15MPaの均質化圧力で均質化して、直ちに5℃に冷却した。冷却後約24時間エージングして、抹茶含有水中油型乳化物を得た。
得られた水中油型乳化物を14日間5℃で冷蔵保存後、実施例1と同様に退色抑制効果、風味評価を行った。
【0037】
(表7)
【0038】
表7の結果より、遊離アミノ酸を乾物換算で25%含有するたん白質加水分解物を特定量添加することで、保存時に生じる抹茶含有水中油型乳化物の退色を抑制することができた。
【0039】
(比較例6)ソース類
パーム油低融点部(上昇融点13℃)9部、菜種油3部に対しグリセリン脂肪酸エステル0.06部、酸化防止剤0.03部を添加後、混合、溶解し、油相を調製した。
水13.4部、水あめ42.942.942.9部、砂糖23部、脱脂粉乳6部、乳蛋白1.2部、抹茶(株式会社堀田勝太郎商店製、全固形分95.0%、緑茶100%)1.2部、ハイニュートHKB0.2部、食塩0.1部、、グリセリン飽和脂肪酸エステル0.01部、香料0.17部、色素0.0052部を添加し、ホモミキサーにより攪拌し水相を調製した。
調製した油相と水相を60℃30分間ホモミキサーで攪拌し予備乳化した後、80℃に昇温、ニーダーにて混捏し、3MPaの均質化圧力で均質化して、5℃に冷却し、抹茶含有ソースを得た。
【0040】
(実施例15)ソース類でのたん白質加水分解物の効果
比較例6の配合をベースとし、水の一部をハイニュートHKB0.2部に置き換え、比較例5と同様の方法で抹茶含有ソースを製造した。
得られた抹茶含有ソースを90日間30℃で保存後、実施例1と同様に退色抑制効果、風味評価を行った。
【0041】
(表8)
【0042】
表8の結果より、得られた抹茶含有ソースは、遊離アミノ酸を乾物換算で25重量%含有するたん白質加水分解物を添加することで、保存時に生じる抹茶含有ソースの退色を抑制することができた。
【0043】
(比較例7)青大豆豆乳
脱皮脱胚軸した青大豆(黒千石)1部に熱水(90℃)4部を加え、30分間浸漬を行い、十分に吸水した脱皮・脱胚軸大豆1部に対し、熱水(90℃)6部を加えたものを「コミトロール」プロセッサー(URSCHEL社製)を用いて湿式粉砕し、さらに、ホモゲナイザー(APV社製)に供給し、15MPaで均質化処理し、粒子径20~30μmの大豆懸濁液を得た。得られた大豆懸濁液を連続遠心分離機に供給し、3000g、3分で遠心分離を行い、豆乳とおからに分離した。分離した豆乳は、超高温滅菌装置(岩井機械工業(株)製)によって、144℃において4秒間の直接加熱方式による滅菌処理を行った後、15MPaの均質化圧力で均質化して、直ちに5℃に冷却して、青大豆使用豆乳を得た。得られた青大豆使用豆乳の固形分は9.3%であった。
【0044】
(実施例16)たん白質加水分解物の添加
比較例7の滅菌前の青大豆使用豆乳99.2部に、ハイニュートHKB0.8部を加え、比較例7と同様の滅菌方法で青大豆使用豆乳を製造した。
得られた青大豆使用豆乳を14日間5℃冷蔵保存後、実施例1と同様に退色抑制効果、風味評価を行った。
(表9)
【0045】
表9の結果より、得られた青大豆使用豆乳は遊離アミノ酸を乾物換算にて25重量%含むたん白質加水分解物を特定量添加することで、保存時に生じる退色を抑制することができた。