(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】コーディネートされた空域の探索
(51)【国際特許分類】
G08G 5/04 20060101AFI20231011BHJP
G01S 13/87 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
G08G5/04 A
G01S13/87
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019110535
(22)【出願日】2019-06-13
【審査請求日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】10 2018 114 109.2
(32)【優先日】2018-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503195311
【氏名又は名称】エアバス・ディフェンス・アンド・スペース・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォティオス カトスィリエリス
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルド クラハ
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06690318(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0114324(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64B 1/00- 1/70
B64C 1/00-99/00
B64D 1/00-47/08
B64F 1/00- 5/60
B64G 1/00-99/00
B64U 10/00-80/86
F41A 1/00-99/00
F41B 1/00-15/10
F41C 3/00-33/08
F41F 1/00- 7/00
F41G 1/00-11/00
F41H 1/00-13/00
F41J 1/00-13/02
F42B 1/00-99/00
F42C 1/00-99/00
F42D 1/00-99/00
G01S 7/00- 7/42、13/00-13/95
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
探索領域を探索す
る少なくとも2つの飛行体により実行される方法において、それぞれ少なくとも1つのレー
ダが前記少なくとも2つの飛行
体に配置され
、前記方法は、
a
)前記探索領域
が前記少なくとも2つの飛行体のそれぞれに割り当てられる部分探索領
域に分割されるこ
とであって、前記部分探索領域の数は、前記少なくとも2つの飛行体の数に等しい、ことと、
b
)前記少なくとも2つの飛行体のそれぞれ
の前記レーダによっ
て前記割り当てられた部分探索領域が探索されることを含み
、
前記部分探索領域は総探索時間が最小限度になるように選択さ
れ、
前記部分探索領域への前記探索領域の前記分割は前記少なくとも2つの飛行体の運動および/または軌跡に応じて継続的に前記探索領域に対して適合化され、
前記探索領域を分割することは、それぞれ2つの部分探索領域のさまざまな組み合わせについて実施されて、前記探索領域を探索するための総探索時間が算定され、
総探索時間がもっとも短い前記2つの部分探索領域の前記組み合わせが前記探索領域の以後の前記探索のために用いられる、方法。
【請求項2】
総探索時間は相応の部分探索領域についての探索時間に基づく最大値である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
探索領域内の物体の検知の確率を設定可能であり、または事前定義される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
部分探索領域は実質的に重なり合いを有さない、請求項1から3のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
探索領域を設定可能または変更可能である、請求項1から4のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
設定された距離での設定された大きさの物体の検知の最小限度の確率が保証される、請求項1か
ら5のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
部分探索領域は水平角、鉛直角、およびこれらに対応する角度幅に基づいて、または三次元座標に基づいて規定される、請求項1か
ら6のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも2つの飛行体のうちの1つが探索されるべき部分探索領域を少なくとも1つの他の飛行体に割り当てる、請求項1か
ら7のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
探索領域を探索する少なくとも2つの飛行体により実行される方法において、それぞれ少なくとも1つのレーダが前記少なくとも2つの飛行体に配置され、前記方法は、
a)前記探索領域が前記少なくとも2つの飛行体のそれぞれに割り当てられる部分探索領域に分割されることであって、前記部分探索領域の数は、前記少なくとも2つの飛行体の数に等しい、ことと、
b)前記少なくとも2つの飛行体のそれぞれの前記レーダによって前記割り当てられた部分探索領域が探索されることを含み、
前記
部分探索領域は総探索時間が最小限度になるように選択され、
前記部分探索領域は実質的に重なり合いを有さない、方法。
【請求項10】
探索領域を探索する少なくとも2つの飛行体により実行される方法において、それぞれ少なくとも1つのレーダが前記少なくとも2つの飛行体に配置され、前記方法は、
a)前記探索領域が前記少なくとも2つの飛行体のそれぞれに割り当てられる部分探索領域に分割されることであって、前記部分探索領域の数は、前記少なくとも2つの飛行体の数に等しい、ことと、
b)前記少なくとも2つの飛行体のそれぞれの前記レーダによって前記割り当てられた部分探索領域が探索されることを含み、
前記部分探索領域は総探索時間が最小限度になるように選択され、
前記部分探索領域への前記探索領域の前記分割は前記少なくとも2つの飛行体の運動および/または軌跡に応じて変化する、方法。
【請求項11】
探索領域を探索する少なくとも2つの飛行体により実行される方法において、それぞれ少なくとも1つのレーダが前記少なくとも2つの飛行体に配置され、前記方法は、
a)前記探索領域が前記少なくとも2つの飛行体のそれぞれに割り当てられる部分探索領域に分割されることであって、前記部分探索領域の数は、前記少なくとも2つの飛行体の数に等しい、ことと、
b)少なくとも2つの飛行体のそれぞれの前記レーダによって前記割り当てられた部分探索領域が探索されることを含み、
前記部分探索領域は総探索時間が最小限度になるように選択され、
前記部分探索領域への前記探索領域の前記分割は前記少なくとも2つの飛行体の運動および/または軌跡に応じて継続的に前記探索領域に対して適合化される、方法。
【請求項12】
少なくとも1つのレーダとプロセスユニットとを含む飛行体において、前記プロセスユニットは請求項1から11のいずれか1項に記載の方法を実施するようにセットアップされている飛行体。
【請求項13】
請求項12に記載の少なくとも2つの飛行体を含む飛行体編隊において、前記飛行体編隊は空域内の探索領域を検出するようにセットアップされている飛行体編隊。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、探索領域を探索する方法、飛行体、および飛行体編隊に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の航空機は、多くの場合、最善の結果をもってミッションを遂行するために航空機および/またはパイロットにとって重要な役割を有する多数のセンサを装備している。
【0003】
このようなセンサは、たとえば、多くの場合に使用される現況認識のためのセンサの1つでもあるレーダである。レーダによって、物体や目標物を広い到達範囲で認識または検知することができる。レーダの特性は、たとえばカメラセンサほどには気象によって損なわれることがない。レーダによる目標物の認識/追跡は、たとえばそれがIMC(Instrument Metereological Conditions、ドイツ語でInstrumentenflugbedingungen計器飛行条件)に基づき、撮像をする電気・光学センサまたは赤外センサが可能ではなくなった場合にも依然として可能である。
【0004】
航空機は、機械的に旋回するレーダアンテナをしばしば装備していた。このことは、最適化可能である数個のパラメータで、空域の探索を実行できるという帰結をもたらしていた。通常、パイロットは探索されるべき空域を多くの場合において角度指定と半値幅として定義するとともに、定義された大きさの目標物が内部で認識されるべき到達範囲を定義する。これらの情報に基づいてレーダは、その後に発信される波形を最適化する。このような方式では空域の探索パターンと距離がほぼ規定され、探索される空域の広さのみに依存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、たとえばパイロットのために迅速で効率的な現況認識を保証することができるように、空域の探索を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、独立請求項のうちの1つに記載の方法、飛行体、および飛行体編隊によって解決される。付言しておくと、以下に記述されている各態様は方法および飛行体について、および飛行体編隊についても該当する。
【0007】
本発明によると、探索領域を探索する方法が記載され、それぞれ1つのレーダが少なくとも2つの飛行体に配置される。本方法は、a)少なくとも2つの部分探索領域に探索領域を分割すること、b)少なくとも2つの飛行体のそれぞれのレーダによって少なくとも2つの部分探索領域を探索することを含み、少なくとも2つの飛行体は探索を協力的に実行し、部分探索領域は総探索時間が最小化されるように選択される。
【0008】
レーダは、さまざまな物体を検知するようにセットアップされる。特にレーダは、多くの場合に(空気)体積である探索領域の探索を実行することができる。本発明によると探索領域は、設定された、選択可能な、または調整可能な検知確率で物体または目標物を検知することができるように探索される。換言すると、探索領域の探索後に検知されなかった目標物または物体がその中にある確率は非常に低い。検知されずに残る目標物または物体は可能な限り少なく、もしくは存在しない。この探索は、たとえばパイロットによる現況認識にとって最高の意義を有する。検知されない物体または目標物は、ミッション中の潜在的な敵意によってだけでなく、空域内で起こり得る衝突の危険によっても問題となり得る。現況認識とは、他の目標物または物体の場所若しくは速度の決定をいう。
【0009】
この出願書類では短くレーダとも呼ぶレーダセンサは、飛行体が場合により他のカメラ等のセンサに加えて有しているセンサである。このようなレーダは、レーダの個別部品の能動的な電子制御を装備していてよい(英語ではactive electronically scanned array antennas(AESA))。このようなレーダは、レーダビームをさまざまな空間角についてほぼ瞬時に制御することができ(空間角は、方位角および仰角とも呼ばれる水平角および垂直角として表される)、それによりアダプティブなビームアライメントが可能である。
【0010】
飛行体は、あらゆる種類の駆動装置を有する、あらゆる種類の飛行する機器を含み、たとえば航空機、無人航空機、英語ではUAV(「unmanned aerial vehicle」)、ドローン、誘導ミサイル、ロケット、またはヘリコプターを含む。
【0011】
探索領域内の物体または目標物を2つまたはそれ以上の飛行体で検知する探索コストが協力的に費やされる。すなわち、コーディネートされた探索領域の探索が行われる。
【0012】
探索領域は、それぞれの飛行体の少なくとも1つのレーダによって検出することができる(空気)体積である。探索領域は水平角、鉛直角を用いて表すことができる。三次元の座標を用いて探索領域を表すことも可能である。
【0013】
飛行体は、飛行する空域内でしばしば飛行編隊として存在する。探索領域は、たとえば両方の飛行体の周囲に存在する。探索領域は飛行方向で見て飛行体の前にあるのが好ましい。
【0014】
空域内の探索されるべき領域は、すなわち飛行体にとっての探索領域は、少なくとも2つの部分探索領域に分割される。部分探索領域の数は、本発明のいくつかの例では、飛行体の数である。少なくとも2つの部分探索領域の探索は飛行体のそれぞれのレーダによって行われ、それぞれ1つの飛行体が少なくとも1つの部分探索領域を探索する。
【0015】
部分探索領域または探索領域の探索は、協力的な探索である。探索コストは、探索領域の同じ領域を頻繁に探索しなくてすむように配分される。それぞれ1つのレーダを有する2つの飛行体の場合、探索領域はたとえば2つの部分探索領域に分割される。これら両方の飛行体が同時に、または実質的に同時に、それぞれの部分領域を探索する。本方法は、いくつかの例では、空中に存在する少なくとも2つの飛行体によって実施される。
【0016】
部分探索領域は、総探索時間が最小化されるように選択される。それにより、探索領域の最善の分割が見出され、同じ領域の複数回の探索が不要になることが保証される。探索領域が最大限迅速な時間で探索され、それにより、パイロットによって設定することもできる、三次元の空気体積の探索のための時間削減が実現される。本発明の方法により、たとえば探索領域が素朴な仕方でたとえば同じ部分に分割された場合に発生する、探索領域を探索するときの遅延を回避することができる。このことが特に当てはまるのは、探索領域が任意の水平角と鉛直角で空域内を延びている場合である。本方法のいくつかの例では、総探索時間は、探索領域を探索するために少なくとも2つの飛行体によって必要とされる協力的な総探索時間である。
【0017】
1つの例では、総探索時間は、相応の部分探索領域についての探索から生じる時間最大値である。たとえば部分探索領域への探索領域のさまざまな分割について探索時間を測定し、そのようにして探索時間の最大値を決定することができる。部分探索領域への探索領域の特定の分割については総探索時間が最小となる。探索時間とは、部分探索領域を照射してエコーを受信するためにレーダビームが必要とする時間である。いくつかの例では、受信された信号(エコー)を処理して物体または目標物を発見するために必要となる時間も考慮に取り入れられる。
【0018】
1つの例では、探索領域内の物体の検知の確率を設定可能であり、もしくは事前定義される。たとえばパイロットは検知の確率を設定することができる。場合により確率を変更し、またはそのつどの現況認識に合わせて適合化することができる。
【0019】
1つの例では、部分探索領域は実質的に重なり合いを有さない。いくつかの例では、部分領域は重なり合いを有さない。それにより、探索のコーディネートがいっそう簡素になり、飛行体の間での通信の必要性が低くなる。部分探索領域が最小限度に重なり合う例もある。最小限度の重なり合いにより、またはまったく存在しない重なり合いにより、(部分)領域の複数回の探索が回避され、探索領域を探索するための探索コストを少なく抑えることができる。探索領域内で隙間も、同時に最小限度の総探索時間のもとで回避される。
【0020】
1つの例では、探索領域を設定可能または変更可能である。たとえばパイロットは、水平角または鉛直角およびこれに対応する(半値)幅(方位角および仰角の(半値)幅ともの呼ばれる)を調整することで、探索領域を設定することができる。場合により、探索領域をそのつどの現況認識に合わせて適合化することができる。いくつかの例では、探索領域が事前定義される。
【0021】
1つの例では、部分探索領域への探索領域の分割は、少なくとも2つの飛行体の運動および/または軌跡に応じて変化する。
【0022】
1つの例では、部分探索領域への探索領域の分割は、少なくとも2つの飛行体の運動および/または軌跡に応じて継続的に適合化される。探索領域は、たとえば三次元座標によって設定される。飛行体は探索領域内で動き、それにより水平角と鉛直角(方位角と仰角)およびそれらの角度幅も変化する。
【0023】
1つの例では、設定された距離での設定された大きさの物体の検知の最小限度の確率が保証される。このことは状況への注意に役立ち、それにより、たとえば探索領域がどの程度良好に探索されたかをパイロットに表示することができる。
【0024】
1つの例では、部分探索領域は水平角、鉛直角、およびこれらに対応する角度幅に準じて決定され、または三次元座標に準じて決定される。すべての部分探索領域を水平角、鉛直角を用いて決定することもできる。いくつかの例では、1つまたは複数の部分探索領域の決定は三次元座標によって可能であり、たとえば部分探索領域の角の頂点または面を表すことができる。
【0025】
1つの例では、少なくとも2つの飛行体のうちの1つは探索されるべき部分探索領域を少なくとも1つの別の飛行体に割り当てる。それにより、本方法の集中制御が創出される(集中化された方法)。割り当ては、各々の飛行体によって実行することができる。いくつかの例では、飛行隊のうちの1つがそのために指定される。集中制御によって探索コストを最適化することができる。
【0026】
1つの例では、少なくとも2つの飛行体は、その飛行体のレーダによって探索されるべき部分探索領域をそれぞれ互いに独立して規定する。探索されるべき領域がそれぞれの飛行体によって独立して割り当てられることで、分散制御が創出される(分散化された方法)。探索領域が1つの飛行体により集中制御でそれぞれ異なる部分探索領域に分けられるとき、個々の飛行体が自らに割り当てることができる探索されるべき領域は部分領域と同一であってよい。
【0027】
本発明の1つの態様では、少なくとも1つのレーダとプロセスユニットとを含む飛行体が意図される。プロセスユニットは、本発明による方法が実施されるようにセットアップされる。
【0028】
本発明の1つの態様では、少なくとも2つの飛行体を含む飛行体編隊が意図され、飛行体編隊は空域内で探索領域を検出するようにセットアップされる。
【0029】
本発明の1つの態様では、それぞれ少なくとも1つのレーダが配置された少なくとも2つの飛行体によるコーディネートされた探索領域の探索が非常に有益である。特に本方法により、3次元の探索領域を探索するときの時間削減がもたらされる。任意に設定された方位角と仰角(水平角と鉛直角)およびこれらに対応する角度幅で探索領域が存在しているとき、従来技術のような探索領域の単純な分割は、たとえば探索領域を半分にすることは、総探索時間の有意な時間的遅延につながる。このような種類の時間的遅延は、本発明による方法ではほぼ排除される。部分探索領域が重なり合うことがない(部分探索領域の最小限度の重なり合い、たとえば探索領域の共通の境界がいくつかの例では存在し得る)。本方法は探索領域を最善の部分領域に分割し、それにより、所望の検知確率を保証するために探索領域の協力的な探索に必要となる総探索時間が最小化される。換言すると、探索領域を探索するために必要となる時間が最小化され、事前決定された距離の事前決定された大きさの目標物または物体についての最小限度の検知確率が保証される。パイロットにより設定することができる三次元の体積を探索するための時間削減が、その帰結となる。このことは、特に任意に設定される探索領域で、いっそう効率的かつ特に明らかにいっそう迅速な探索につながる。
【0030】
指摘しておくと、本方法の実施例の構成要件は、飛行体の実施形態ならびに飛行体編隊にも適用することができ、その逆も成り立つ。さらに、明文をもって言及はされていなくとも、構成要件を互いに自由に組み合わせることができる。
【0031】
本発明の上記および下記の態様は以下の説明の遠用と参照から明らかとなる。
【0032】
次に、添付の図面を参照しながら、本発明の実施例について詳しく説明する。図面は次のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】2つの飛行体と1つの探索領域を示す略図である。
【
図2】探索されるべき探索領域を一例として座標系で示す図である。
【
図3】探索されるべき探索領域を一例として座標系で示す図である。
【
図4】
図2の探索領域S1のそれぞれ2つの部分探索領域TS1,TS2への分割を示す図である。
【
図5】
図3の探索領域S2のそれぞれ2つの部分探索領域TS1,TS2への分割を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、2つの飛行体AC1,AC2と、1つの探索領域Sを略図として示している。両方の飛行体AC1,AC2は空中にある。各々の飛行物体AC1,AC2はレーダRを有している。探索領域Sは、飛行体AC1,AC2の周囲にある三次元の領域である。飛行体AC1,AC2は、いくつかの実施例では飛行編隊として飛行する。
【0035】
探索領域Sは、それぞれの飛行体AC1,AC2のレーダRによって探索される2つの部分探索領域TS1,TS2に分割される。部分探索領域TS1,TS2は重なり合いを有していない。部分探索領域TS1,TS2の探索は協力的に実行される。以下の図面で説明するとおり、部分探索領域TS1,TS2は全体の探索領域Sを含む。
【0036】
図2および
図3は、探索領域S1またはS2をそれぞれ示している。飛行体AC1,AC2は10kmの高度で飛行し、図示しているY軸上で500mだけ互いに距離をおく。図示可能性の理由により、飛行体AC1,AC2は互いにほとんど区別することができない。数値の指定は一例である。以下において、探索領域または部分探索領域を方位角θ(水平角)と仰角φ(鉛直角)および、方位角についての角度半値θ-S1,θ-S2と仰角についての角度半値φ-S1,φ-S2によって指定する。
【0037】
図2では、方位角θ=0°と仰角φ=0°で、すなわち飛行体AC1,AC2のすぐ手前で、方位角についての-25°から25°の角度幅θ-S1と仰角についての-25°から25°の角度幅φ-S1をもってセンタリングされた探索領域S1を、飛行体AC1,AC2のそれぞれのレーダRで探索することが意図される。このような探索領域は、他の飛行体との衝突を避けるために普通である。
【0038】
図3では、方位角θ=30°と仰角φ=20°で、方位角についての5°から55°の角度幅θ-S1と仰角についての-5°から45°の角度幅φ-S1をもってセンタリングされた探索領域S2を、飛行体AC1,AC2のそれぞれのレーダRで探索することが意図される。このような探索領域は、迫っている目標物または物体が接近している可能性があるという情報をパイロットが受けたときの状況を表す。無人飛行体では、飛行体の相応の機器またはシステムがこの情報を受け取る。別の実施形態では、地上ステーションが情報を受け取ることが可能である。
【0039】
両方の
図2および
図3では、所与のレーダ反射断面積σ(英語ではradar cross section)と到達範囲で、探索領域S1,S2が最速で探索されることが意図され、特定の検知確率PDが設定される。本方法では、探索領域S1またはS2が2つの部分探索領域に分割されて、これらが2つの飛行体AC1,AC2のレーダRによって協力的に探索される。部分探索領域はここでは重なり合いを有さない。
【0040】
すなわち、探索領域S1,S2を探索するための総探索時間が最小化されるように、探索領域S1,S2の分割を見出することが意図される。このとき検知確率PDが満たされるのがよい。いくつかの実施例では、設定された大きさと距離の目標物または物体の検知について最小限度の検知確率が保証される。
【0041】
探索領域S1またはS2を分割する方法が、それぞれ2つの部分探索領域TS1,TS2のさまざまな組み合わせについて実施されて、探索領域S1またはS2の探索のための総探索時間が算定される。探索領域S1,S2の最善の分割を得るために、本例ではそれぞれ方位角範囲または仰角範囲が変更される。各々の飛行体AC1,AC2が仰角範囲の全体を探索するが、ただし方位角範囲の一部だけを探索し、または方位角範囲の全体を探索するが、仰角範囲の一部だけを探索する。別の例では、これ以外の組み合わせを分割の基礎とすることもできる。
【0042】
各々の組み合わせについて、レーダビームあたりのレーダ照明時間が算定される。そして、飛行体AC1,AC2ごとにすべてのレーダ照明時間が合算される。探索領域S1,S2についての総探索時間は、相応の部分探索領域TS1,TS2についての探索時間からなる最大値として計算される。
【0043】
そして、総探索時間がもっとも短い2つの部分探索領域TS1,TS2との組み合わせが、探索領域S1またはS2の以後の探索について適用される。本例では、水平角、鉛直角、および距離に基づき見出された幾何学的な分割、物体または目標物についての検知確率PD、および最小限度の総探索時間が探索領域S1またはS2の迅速な探索につながり、それに伴って迅速な現況認識につながる。たとえば迫っている衝突の危険を回避することができる。
【0044】
図4および
図5は、
図2,
図3に示す探索領域S1,S2のそれぞれ2つの部分探索領域TS1,TS2への分割を示している。各々の部分探索領域TS1,TS2が飛行体AC1,AC2のうちの1つに割り当てられて、それぞれの飛行体AC1,AC2のレーダRによって探索される。
【0045】
図4では、部分探索領域TS1,TS2への対称の分割を見ることができる。このような分割は直感的であり容易である。仰角に関する分割比率は、部分探索領域TS1,TS2について25°/25°である。探索領域S1は
図2で説明したものである。
【0046】
図5には、部分探索領域TS1,TS2への分割を見ることができる。仰角に関する分割比率は部分探索領域TS1,TS2について27.8°/22.2°である。探索領域S2は
図3で説明したものである。
【0047】
各図面が示すように、探索領域がレーダセンサ(
図2参照)のアンテナ法線を中心として対称に位置しているとき、部分探索領域TS1,TS2の対称の分割は最小限度の総探索時間につながる。それに対して探索領域が対称でないとき、対称の分割はさらに長い総探索時間につながり、その結果、探索領域を探索するときの有意な時間的遅延が予想される。
【0048】
それぞれの探索領域について最善の分割を見出すために本方法が実施される時間は、探索領域の探索よりも明らかに早いので、このことは総探索時間にほとんど影響を及ぼさない。
【0049】
別の例では、2つの部分探索領域TS1,TS2への探索領域S1,S2の分割は、飛行体の運動または軌跡に伴って変化する。いくつかの例では、部分探索領域TS1,TS2への分割が継続的に適合化される。
【0050】
いくつかの実施形態では、本方法は、たとえば飛行体AC1の相応の装置で実施される。そのためには、他の飛行体AC2(
図1も参照)の位置しか必要ない。そしてこの飛行体が、探索されるべき部分探索領域TS2を他の飛行体AC2に割り当てる。たとえば次のような値が、他の飛行体AC2へ伝送されるだけである。他の飛行体AC2に割り当てられる部分探索領域TS2の方位角・中心線と仰角・中心線、および半値幅。それにより、本方法の集中制御が創出される。
【0051】
しかしながら飛行体AC1,AC2が、飛行体AC1,AC2のレーダRによって探索されるべき部分探索領域TS1,TS2を互いに独立してそれぞれ規定することも可能である。探索されるべき部分探索領域TS1,TS2がそれぞれの飛行体AC1,AC2により独立して割り当てられることで、分散制御が創出される。
【0052】
上述した飛行体AC1,AC2は、本方法を実施するために、および探索領域の探索をするために相応の装備を有する。たとえばこのような飛行体は、本方法を実施するためのプロセスユニットも有する。
【0053】
図6は、従来技術に基づく空域内の領域Sの探索を示している。探索は非協力的に実行される。特に、それぞれの飛行体AC1,AC2によって探索される領域A,Bは、
図6に示すとおり、これらの領域A,Bが大部分で重なり合うように分割される。このことは総探索時間を長くするとともに、現況認識のときの時間遅延につながる。
【0054】
以上に説明した各実施形態は、さまざまに異なる仕方で組み合わせることができる。特に、本方法の態様を装置の実施形態のために適用し、ならびに装置の利用法のために適用することもでき、その逆も成り立つ。各図面の図示は模式的なものであって、縮尺に忠実ではない。以下の図面の説明において、異なる図面で同じ符号が使われている場合、それは同一または類似の部材を指している。ただし、同一または類似の部材がそれぞれ異なる符号で表されている場合もある。
【0055】
補足として指摘しておくと、「含む」は、それ以外の部材やステップを排除するものではなく、不定冠詞の「eine」や「ein」は複数を排除するものではない。さらに付言しておくと、上記の各実施例のうちの1つを援用して説明した構成要件やステップは、上で説明した別の実施例の構成要件やステップとの組み合わせでも適用することができる。特許請求の範囲の符号は限定とみなされるべきものではない。