(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】配電ネットワークの周波数調整システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/14 20060101AFI20231011BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H02J3/14 130
H02J13/00 311T
(21)【出願番号】P 2020524536
(86)(22)【出願日】2019-03-25
(86)【国際出願番号】 EP2019057450
(87)【国際公開番号】W WO2019180275
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-10
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520143823
【氏名又は名称】エレクトリシティ ノース ウェスト プロパティ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【氏名又は名称】小越 一輝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】小越 勇
(72)【発明者】
【氏名】コックス、スティーブ
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-526515(JP,A)
【文献】特開2012-217332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/14
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電グリッドの一部への電圧供給を制御す
るシステムであって、前記グリッドの前記部分は前記グリッドの
一部内の消費者に供給する電圧を増減する動作が可能な1以上のトランスを提供する変電所を含み、
前記
電圧供給を制御するシステムは、
データセットを含み、データセットは、以前測定された特
性又は複数の特
性の値に関連付けられた以前測定された電力消費を含み、前記特性は電圧、電流、周波数、負荷の一つ又はその組み合わせであり、
測定装置を含み、前記グリッドの
一部内における前記特
性又は複数の特
性を測定し、
処理装置を含み、前記データセット内の前記特
性又は複数の特
性の以前測定された値から、
前記グリッドの一部内の消費者に供給される電圧を第1値から第2値へ変更することによる
前記グリッドの一部内の消費者の電力消費への最も可能性が高い効果を決定し、
記憶装置を含み、前記変電所に関連付けられた応答措置をトリガーイベントと関連付ける1以上のルールを保存するためであって、前記応答措置が
前記グリッドの一部内の消費者に供給される電圧を第1値から第2値に変更することを含み、
制御装置を含み、制御装置は、前記グリッドの複数の部分の測定値を受け取り、前記測定値が1以上のトリガーイベントと一致するか否かを判定し、トリガールールの各々について、前記トリガールールに関連付けられた前記応答措置を実行するために、前記ルールに関連付けられた対応する前記変電所に命令を伝達するように構成される。
【請求項2】
各々が対応する変電所によって供給される配電グリッドの複数部分への電圧供給を制御するためのシステムであって、前記変電所の各々とつながる測定装置を含み、
前記制御装置は、前記グリッドの複数の部分の測定値を受け取り、前記測定値が1以上のトリガーイベントと一致するか否かを判定し、トリガールールの各々について、前記トリガールールに関連付けられた前記応答措置を実行するために、前記ルールに関連付けられた対応する前記変電所に命令を伝達するように構成された請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記トリガーイベントは、前記グリッドの一部での電圧、電流、周波数、又は電力消費に関連するしきい値である請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記トリガーイベントは、前記トリガーイベントが最初に観察される時から前記応答措
置が実行されるまでの間の関連する時間経過を含み、前記応答措置は、前記所定の時間が経過した後でも前記トリガーイベントが依然としてトリガーされている場合にのみ実行される請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記応答措置は、特定の変電所に関連する電圧上昇又は電圧低下を特定する請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムは、
前記グリッドの一部内の消費者に供給される電圧を第1値から第2の番目の値に変更することによる前記グリッドの
前記一部又は各部分での電力消費に対する最も可能性が高い効果に応じて、ルールを生成又は更新するように動作可能である請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記測定装置は、前記グリッドの前記部分内の消費者に初回に供給される第1電圧を測定するように構成されており、前記測定装置は、電圧制御装置の一部を形成し、この電圧制御装置は、前記制御装置として機能するネットワーク制御装置に前記測定された電圧を伝達するように動作可能であり、前記ネットワーク制御装置は、前記測定値が前記ルールのいずれかに一致するか否かを判定し、直接的又は前記電圧制御装置を介して間接的に前記変電所に命令を伝達するように動作可能である請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記測定装置、前記記憶装置及び前記制御装置の全てが電圧制御装置によって提供され、前記電圧制御装置は、前記測定値が前記ルールのいずれかに一致するか否かを判定し、前記応答措置に応じて直接前記変電所に命令を伝達するように動作可能である請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
配電グリッドの一部に供給される電圧を制御する方法であって、前記電圧制御方法は、
前記の何れかの請求項に記載されるデータセットを提供することと、
前記グリッドの前記部分の特
性又は複数の特
性であって、電圧、電流、周波数、負荷、又はその組み合わせである特
性又は複数の特
性を測定することと、
前記データセット内の前記特
性又は複数の特
性の以前に測定された値から、
前記グリッドの一部内の消費者に供給される電圧を第1値から第2値へ変更することによる前記配電グリッド前記部分における電力消費への最も可能性の高い効果を決定することと、
前記変電所に関連付けられた応答措置であって、
前記グリッドの一部内の消費者に供給される電圧を前記第1値から前記第2値に変更することを含む応答措置にトリガーイベントを関連付ける1以上のルールを保存することと、
前記測定値が前記ルールのいずれか1つのトリガーイベントと一致するか否かを判定することと、
各トリガールールについて、前記トリガールールに関連付けられた前記応答措置を実行するために前記グリッドの前記部分内の変電所に命令を伝達することを含む方法。
【請求項10】
トリガーイベントが発生したと判定すると、前記トリガーイベントで特定された時間が経過するのを待ってから、前記ルールをトリガーした前記グリッドの前記部分の特徴を再測定し、前記トリガーイベント条件が後の測定で依然として満たされている場合にのみ、前記変電所に命令を伝達することを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記グリッドの一部内の消費者に供給される電圧を第1値から第2値に変更することによる前記グリッドの
一部又は各部分での電力消費に対する最も可能性の高い効果に従って1以上前記ルールを生成又は更新することを更に含む請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
ユーザからの入力として前記ルールを受け取ること、及びそれらのルールを保存するこ
とを含む請求項10又は11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電ネットワークの周波数調整のためのシステム及び方法並びに該システムで使用する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配電ネットワークに接続された再生可能型の発電の増加により、双方向の電力フローがますます一般化し、より能動的なネットワークが作り出されている。そのような再生可能な発電機としては、限定するものではないが、例えば風力発電機、太陽光発電機、潮力発電機等が挙げられ、発電所と、家庭用及び商業用施設の両方で(例えば住宅用建物にソーラーパネルを設置して)提供される。これらの能動的ネットワークは、従来の電圧調整方法、即ち、受動的かつ負荷支配的なネットワークに合わせて調整され、トランスの出力端子に一定の電圧を維持することを目的とする電圧調整方法に課題をもたらす。
【0003】
電力需要の増加が予想されると、経時的にグリッド及び一次変電所の既存のネットワーク容量マージンを侵食することがある。そのような変化に対応するには、配電ネットワーク事業者(DNO)は、増加が永続的で即時介入を必要とするのか、又は増加は分散型発電によって最終的に相殺され、ネットワークの強化(即ち、追加の発電機提供)を回避又は延期できるのかを評価する必要がある。その間費用がかかる可能性のある介入なしに、一時的にネットワークを安全に運用するために既存の資産を使用して、ピーク需要における短期急激な上昇を適切に管理し対処する技術が提案されてきた。容量が明らかに問題であることが分かるまでは、これら技術により追加の発電リソースの取得を延期しつつ、需要の短期的変化を管理できる。
【0004】
電力ネットワークの需要(ある時間におけるネットワーク全体の総電力使用量)は、公共電力供給ネットワーク上の電圧を変更することで削減及び増加できることが実証されている。千鳥状タップ(staggered tap)構成での一次トランスの動作は、ネットワークの無効電力を吸収し、過電圧状況を抑制する有効な手段を提供できる。
【0005】
一般的に施設にはネットワークから電力が供給されている。各施設で動作する電気装置は、十分に効果的な動作状態で動作するために特定の電圧を必要とする。電気装置に供給される電圧のわずかな変動は、装置の動作に影響を与える可能性があるが、非常に小さな電圧の変動は、通常、装置を操作するユーザは気付かない。例えば、規定電圧のわずかな誤差範囲内で供給される電圧で動作する冷凍ユニット又はエアコンは、十分な効率で動作しない場合があるが、動作効率の違いはほとんど検出されない可能性が高い。これらの装置はそのままユーザの要求に応じて動作することになる。
【0006】
能動的ネットワークの電圧調整を調査する研究及び関連するフィールドトライアルにより、電圧制御スキーム(自動電圧制御、AVC)は、ネットワークへの供給電圧を調整できるが、一方で追加の分散型発電接続には制約的に機能することが判明した。
【0007】
更に、上記システムはネットワークの許容不可高電圧を回避するのに役立つが、そうでないと高分散型発電出力が低いローカル需要と一致する期間にネットワーク上で発生し得る。
【0008】
また、ネットワーク内で供給可能な発電量が需要又はネットワーク容量を超える可能性が高まっており、許容不可ネットワーク状況および発電量制限の必要性を引き起こしている。この制限は発電効率を低下させ、それにより顧客のコストを押し上げることになる。
【0009】
電力プロバイダーは、大型の原子力発電ユニットと共にシステムに接続された低慣性の断続的な発電量の増加に応じた、ネットワークへの電力供給に使用する発電機のタイプの変化を監視しつづけている。その結果、経時的に、カスケードトリッピング事象を回避するためにシステム全体の安定性を維持ためのシステムリザーブにアクセスする必要性が高まることになる。従来のスピニングリザーブの高い財政的コストおよび炭素コストのため、周波数やシステムバランシングのための迅速かつ柔軟な需要管理は、将来のシステム運用においてより重要な要素になると予想される。これは、DNOネットワーク内のローカル電力バランシングにとって特にメリットがあり、将来の分散型システムオペレーターのネットワーク管理にも潜在的な利点をもたらす。
【0010】
全ての交流(AC)電気ネットワークには固有のシステム周波数がある。周波数はヘルツ(Hz)で測定され、これはネットワークに接続された同期発電プラントの回転速度を表す。英国では、周波数は通常50Hzである。
【0011】
追加の需要がネットワークに接続されると、周波数が低下する。逆に、需要が減少するか、ネットワークに追加発電が追加されると、周波数が高まる。システムの周波数は、技術的理由により厳しい動作限界内に維持する必要がある。通常、周波数は、公称周波数又は目標周波数(英国では50Hz)に対してマイナス数パーセントからプラス数パーセントの範囲内に維持する必要がある。例えば、目標周波数が50Hzのネットワークでは、49.5Hzから50.5Hzの周波数で電力を供給する必要がある。
【0012】
周波数は通常、発電プラントの出力を増減することによって調整する。当然ながら、ネットワークへの需要が高まると、ある段階でネットワークの発電容量に達し、必要に応じてネットワークに追加の電力を提供することによってでは周波数を十分に調整できない可能性がある。この段階に達する前に追加発電容量をネットワークに追加して、必要に応じてネットワーク上の周波数のバランスを確実にとる必要がある。しかし、発電所の出力を増加は、達成するには時間を要しまた費用効果的とはいえず、追加の発電設備の短期的な利用可能性に依存したものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許出願公開第US2011/0251732号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従来技術のシステムに関連する1以上の問題を改善又は低減することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書に記載されているシステムは、電気システムの周波数に応じて電圧を自動的に調整することを可能にする開発に関する。この方法により、需要も自動的に調整され、システム周波数の変化を抑制する。従って、周波数調整が、電力ネットワークの周波数を安定させるための有利な方法を構成する。
【0016】
このようなシステムは、既存のインフラストラクチャを使用して周波数と負荷の要件を満たすことができる状況で、追加の発電機の必要性を減らすという利点に加えて、電力消費を削減するメカニズムを可能にすることにより環境上の利点も提供する。
【0017】
そのようなシステムは、システム周波数の変化に対抗するために需要を自動的に調整して、追加の発電所を必要とせずに周波数を規定の動作限界内に維持することを目的とする。センサは、システム周波数を測定し、ネットワーク電圧を変更するために、ネットワークトランスのオンロードタップ変更を動作させるために使用される。これらの電圧変化は、システム需要に所定の信頼性の高い変化を生じさせるための技術を介して連係され、それ故にシステム周波数を所望の値に安定化させる。
【0037】
第1の態様は配電グリッドの一部への電圧供給を制御するシステムであり、
前記グリッドの前記部分は、前記グリッドの前記部分内の消費者に供給する電圧を増減できる1以上のトランスを提供する変電所を含み、
前記電圧供給を制御するシステムは、
特性(又は複数の特性)(電圧、電流、周波数、負荷、又はその組み合わせ)の以前に測定された値に関連付けられた以前に測定された電力消費を含むデータセットと、
前記グリッドの前記部分内における前記特性(又は複数の特性)を測定する測定装置と、
前記データセット内の前記特性(又は複数の特性)の以前に測定された値から、前記グリッドの一部内の消費者に供給される電圧を第1値から第2値へ変更することによる前記グリッドの一部内の消費者の電力消費への最も可能性が高い効果を決定する処理装置と、
前記変電所に関連付けられた応答措置であって、前記グリッドの一部内の消費者に供給される電圧を前記第1値から前記第2値に変更することを含む応答措置にトリガーイベントを関連付ける1以上のルールを保存するための記憶装置と、
前記グリッドの前記部分内の前記特性(又は複数の特性)の測定値を受け取り、前記測定値が前記ルールのいずれか1つのトリガーイベントと一致するか否かを判定し、各トリガールールについて、前記トリガールールに関連付けられた前記応答措置を実行するため
に前記変電所に命令を伝達するように構成された制御装置とを含む。
【0065】
前記システムは、配電グリッドの複数の部分であって各々がそれぞれの変電所によって電力供給を受ける複数の部分への電圧供給を制御するのに適していてもよく、前記システムは、前記変電所の各々とつながった測定装置を含んでもよく、この場合、前記制御装置は、前記グリッドの複数の部分の測定値を受け取り、前記測定値が1以上のトリガーイベントと一致するか否かを判定し、各トリガールールについて、前記トリガールールに関連付けられた前記応答措置を実行するために前記ルールに関連付けられた前記対応する変電所に命令を伝達するように構成される。
【0066】
前記トリガーイベントは、前記グリッドの一部での電圧、電流、周波数、又は電力消費に関連するしきい値であってもよい。
【0067】
前記トリガーイベントは、前記トリガーイベントが最初に観察される時と前記応答措置が実行される時の間の関連する時間経過を含んでもよく、この場合、前記応答措置は、所定の時間が経過した後でも前記トリガーイベントが依然としてトリガされている場合にのみ実行されるであろう。
【0068】
前記応答措置は、特定の変電所に関連する電圧上昇又は電圧低下を特定してもよい。
【0069】
前記システムは、前記グリッドの一部内の消費者に供給される電圧を第1値から第2値に変更するこが前記グリッド前記(又は各)部分での電力消費に与える最も可能性が高い効果に応じて、ルールを生成又は更新するように動作可能であってもよい。
【0070】
前記測定装置は、前記グリッドの前記部分内の消費者に最初(初回)に供給される第1の電圧を測定するように構成され、この場合、前記測定装置は、電圧制御装置の一部を形成してもよく、この電圧制御装置は、前記制御装置として機能するネットワーク制御装置に前記測定された電圧を伝達するように動作可能であり、前記ネットワーク制御装置は、前記測定値が前記ルールのいずれかに一致するか否かを判定し、直接的又は前記電圧制御装置を介して間接的に前記変電所に命令を伝達するように動作可能である。
【0071】
前記測定装置、前記記憶装置及び前記制御装置の全てが電圧制御装置によって提供されてもよく、前記電圧制御装置は、前記測定値が前記ルールのいずれかに一致するか否かを判定し、前記応答措置に応じて直接前記変電所に命令を伝達するように動作可能である。
【0072】
第2の態様は、配電グリッドの一部に供給される電圧を制御する方法を提供し、前記方法は、
前記何れかの請求項に記載されるデータセットを提供することと、
前記グリッドの前記部分の特性(又は複数の特性)(電圧、電流、周波数、負荷、又は
その組み合わせ)を測定することと、
前記データセット内の前記特性(又は複数の特性)の以前に測定された値から、前記グリッドの一部内の消費者に供給される電圧を第1値から第2値へ変更することによる前記グリッドの前記部分における電力消費への最も可能性の高い効果を決定することと、
前記変電所に関連付けられた応答措置であって、前記グリッドの一部内の消費者に供給される電圧を前記第1値から前記第2値に変更することを含む応答措置にトリガーイベントを関連付ける1以上のルールを保存することと、
前記測定値が前記ルールのいずれか1つのトリガーイベントと一致するか否かを判定することと、
各トリガールールについて、前記トリガールールに関連付けられた前記応答措置を実行するために前記グリッドの前記部分内の変電所に命令を伝達することを含む。
【0073】
前記方法は、トリガーイベントが発生したと判定すると、前記トリガーイベントで特定された時間が経過するのを待ってから、前記ルールをトリガーした前記グリッドの前記部分の特徴を再測定し、前記トリガーイベント条件が後の測定で依然として満たされている場合にのみ、前記変電所に命令を伝達するステップを含んでもよい。
【0074】
前記方法は更に、
前記グリッドの一部内の消費者に供給される電圧値を第1値から第2値に変更することによる前記グリッド前記(又は各)部分での電力消費に対する最も可能性の高い効果に従って、前記ルールの1以上を生成又は更新することを含んでもよい。
【0075】
前記方法は、ユーザからの入力として前記ルールを受け取ること、及びそれらのルールを保存することを含んでもよい。
【0081】
添付の図面を参照しながら例示のみにより本発明の実施形態の特徴を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1】本発明の態様による電力グリッド及びシステムの一部の概略図である。
【
図2】本発明の態様による電圧制御装置の概略図である。
【
図3】本発明の態様によるネットワーク制御装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
大まかに述べれば、トランスは電磁誘導によって2つの回路間で電気エネルギーを伝達する。当技術分野で知られているように、変化する磁場は、トランスのコイル内の電流を変化させることによって生成され、次に、第2コイルに電圧を引き起こす。このようにして、磁場を介して2つのコイル間で電力が伝送される。トランスは、電力グリッド10内のさまざまな位置に配備される。例えば、トランス18は、発電リソース16(発電所など)が配置された送電グリッド12上で使用され、配電グリッド14で消費者に送電するのに適したより低い電圧に給電を変換する。トランス20は、グリッド上のローカル変電所にも設けられており、電圧を更に、例えば、住宅、商業、及び産業用施設での消費に適したレベル(英国では240V)に下げる。
【0084】
一般的な電力ネットワークでは、トランス18、20のタップ位置を変更することにより、システム電圧が調整される。タップ切換器を使用して、トランスのいずれか一方又は両方のコイルの巻数比を不連続のステップで変更する。可変巻数比は、トランス18、20の一次巻線又は二次巻線のいずれかにいくつかの追加のタップを接続して、一次巻線と二次巻線の間の巻数の比率を増減することで可能になる。比率を増減することにより、トランスからの電圧出力が変更される。例えば、トランスのデフォルト設定では、一次(即ち、入力)巻線の巻数を80、二次(即ち、出力)巻線の巻数を20とすることで、高電圧入力を低電圧出力に変換し、入力と出力電圧の比を4:1にする。2つの巻線間のコイルの比率を増やすことにより(例えば、一次巻線にタップコイルを追加することにより)、出力電圧に対する入力電圧の比率が増加し、出力電圧が低下する。タップ切替器は自動化可能であるが、手動で操作してもよい。
【0085】
多くの変電所には、並列で動作する一対のトランスを含む。図示では、変電所20が単一のトランス20によって表されているが、変電所は通常、並列に動作する一対のトランスが設けられることを理解されたい。各トランス20の各タップは、約1.5%電圧を変化させ、各トランス20で、約20%の一般的なタップ範囲が利用可能である。20,000人の顧客に給電する一対のトランス20は、通常の動作中に一般的に毎日2回から20回タップアップ及びタップダウンして、送電グリッド12から受け取った入力電圧に変動があっても出力電圧を均一に保つ。結果として生じる電圧変化は非常に小さいため、顧客には気付かれない。
【0086】
施設のグループに給電する一対のトランス20が異なるタップ位置で、即ち「千鳥状タップ(staggered taps)」で動作する場合、循環電流がトランス対の回りに導入される。循環電流は、ネットワーク力率を低下させ、上流の配電グリッド12からの無効電力を効果的に吸収する。結果として生じる無効需要の増加により、グリッドの上位側のネットワーク電圧が低下するが、顧客の電圧は影響を受けない。この手法は、発生し得る許容できない高電圧の抑制に非常に効果的である。
【0087】
トランス20の対の構成はまた、給電における大きな発電喪失の場合に、自動的にネットワークのバランスをとることができる迅速な需要応答を提供するためにも使用できる。例えば、一対のトランス20のうちの一方が切り離された場合、他方のトランス20によってグループ内の全ての施設への給電は維持されるが、グループに供給される電圧は、4~8%瞬時に減少し、グループ内の同様の瞬間的な需要の減少を誘発する。多くの変電所にわたって集約が行なわれた場合、この応答は、大規模発電機16での喪失を打ち消すのに十分な大きさとなる。本発明のシステムは、この種の応答を、連係、制御された方法で提供することを可能にするものである。
【0088】
特定の条件下、例えば利用可能な予備発電源が全て使い果たされ、システムのバランスを取るために利用できる唯一の選択肢が需要削減だけである場合は、需要の大幅な減少(例えば、20~40%)が可能とされるであろう。需要削減は、電圧を低下させること又は負荷を直接切り離すことのいずれかによって実現できる。3%の電圧低下は、通常5%の需要削減をもたらし、6%の電圧低下は、10%の需要削減をもたらす。これらの需要削減要件を満たすために、トランスのタップ操作による1.5%の電圧変化が、予測可能で制御された需要応答を提供し、これはネットワーク内のあるポイントで集約された場合、ローカルであれ、より広域の全国的なグリッドであれ、同時に顧客への供給の品質に影響を与えずに、需要を管理するのに十分である。
【0089】
図1を参照すると、配電グリッド12は変電所20を介して接続され、変電所20は、例えば、送電電圧をより低い電圧に変換して消費者22に供給するための(上述のように対の)トランスを提供する。一般的に、電力は、例えば住宅用、商業用、又は工業用ユニットなどの施設内の消費者に局所的に供給される。単一の変電所20は、単一又は複数の消費者22に電力を供給するであろう。例えば、住宅街では、変電所が数百、数千の所有地に電力を供給するであろう。住宅地の場合、消費者22は、それぞれ数kWのオーダーの比較的少量の電力を消費する。しかし、変電所20が受け持つグリッドの各サブセクション内で消費電力は常に変化する。消費はある一定の一般的なパターンに従って変化するが、特定の時間又は将来の一定期間に必要とされる電力量を予測する特定の方法がないため、変電所20にかかる負荷を事前に正確に知ることはできない。
【0090】
大まかに述べれば、配電グリッドの各部への電圧供給を制御するシステムが提供される。各部分は、グリッドのその部分内の消費者に供給する電圧を増減できる1以上のトランスを有するそれぞれの変電所20を提供するものと考えることができる。一般的に、この電圧制御システムは、グリッドのその部分内の消費者に初回に供給される第1電圧を測定する。システムは、消費者が使用しているその時点での負荷の推定値、即ち、消費されている電力量も測定(又は他の測定値に基づいて計算)する。このデータを使用して、電圧制御システムは、それら消費者に供給される電圧を供給電圧から修正電圧への変更することによるそれら消費者の電力消費に対する効果の推定値を決定する。換言すると、グリッドのその部分への電圧が低下した場合、その電圧低下の結果として、対応する電力使用量の低下はどの程度になりそうであるかを決定する。同様に、電圧上昇時、どのような影響があるかを決定する。このような電力消費の変動はグリッドの周波数に影響を与えるため、そのような上昇と減少の影響について、それらを行う前に知ることでグリッド管理と周波数の変動への対応に使用する重要な情報が得られる。
【0091】
電圧制御装置26は電圧制御システムの一部を形成し、電圧制御システムは、それぞれの変電所20及び消費者22のセットに関連付けられている複数の電圧制御装置26を含み得る。1以上のネットワーク制御装置28もまた、電圧制御システムの一部を形成し、ネットワーク制御装置28は、電圧制御装置26と通信してそれらの装置からデータを受け取り、それぞれの変電所20を制御することによってグリッド上の周波数を調整する方法を決定するように構成される。
【0092】
各電圧制御装置26はリレー48を提供して、例えば故障が発生した場合に、回路遮断器を作動させて電力が供給されている接続を遮断することにより、電力消費ネットワークから消費者22を切り離すことができる。
【0093】
複数の実施形態では、特に住宅及び商業環境においては、単一の電圧制御装置26が1以上の建物を変電所20に接続する。好ましくは、電圧制御装置26は、変電所20と複数の消費者22との間に電力接続を提供する。産業環境においては、即ち、例えば病院などの大きな電力消費を生じる単一の消費者のためには、単一の電圧制御装置26が変電所20を単一の消費者22に接続することが効果的であろう。
【0094】
各消費者22は、各々がネットワークから電気的負荷を引き出す複数の電気式装置を使用するであろう。例えば住宅用所有地には、電力を必要とする数十又は数百の装置が含まれるであろう。工場又は商業施設は、空調システム、冷凍システム、貯蔵ヒーターなどの数十又は数百の電力消費ユニット24を提供するであろう。
【0095】
図2及び
図3は、本発明の実施形態による電圧制御装置26及びネットワーク制御装置28を示す。電圧制御装置26は、そのそれぞれの消費者22に供給される電気(入力ライン42を参照)の電圧を測定するように動作可能な測定装置44を含む。測定装置44、又は更に別の測定装置はまた、ネットワークのそのサブセクションを形成する消費者22によってネットワークから引き出される負荷を測定又は計算するように動作可能である。前記測定装置44又は別の測定装置44は、ネットワークの周波数を測定するように動作可能であってもよい。
【0096】
複数の実施形態では、電圧制御装置26は、この装置の動作を制御するためのプロセッサ46を含む。プロセッサ46は、データ記憶装置50に、(装置の内部において、又は、例えばリモート装置又はクラウドリソースへのデータリンクを介して)接続されている。記憶装置50は、特定の動作状態が検出されたときにリレー48を動作させるためにプロセッサ46を構成するための動作命令を記憶するために使用されるであろう。例えば、測定装置44によって過電圧が検出された場合にリレー48が遮断されるであろう。
【0097】
電圧制御装置26によって測定された電圧及び/又は電流の測定値は、ネットワーク制御装置28に伝達され、ネットワーク通信インターフェース32を介して受け取られる。測定値はまた、記憶装置50にローカルに記憶されてもよい。電圧制御装置26は、通信チャネル54を介してネットワーク制御装置28との間でデータを送受信するための通信インターフェース52を提供する。通信チャネル54は、直接有線リンクによって、又は有線又は無線ネットワークを介して、インターネットプロトコルを介して(例えば、クラウドベースのサーバを介して)、又は当技術分野で知られている他の適切な通信手段によって提供してもよい。ネットワーク制御装置28は、電圧制御装置26及び/又は変電所20との間でデータを送受信するためのそれぞれの通信インターフェース32を提供する。
【0098】
更に、プロセッサ46は、電圧制御装置26及びそのそれぞれの消費者22に電力を供給する各変電所20と通信するように構成されていてもよい。
【0099】
複数の実施形態では、ネットワーク制御装置28は、ダッシュボード機能を更に提供、即ちユーザがネットワーク全体の様々な分散配置された電圧制御装置の動作を監視及び/又は制御し、及び/又はネットワーク上のさまざまな変電所20において動作するトランスを制御するためのインターフェースを提供する。ネットワーク制御装置28及びダッシュボードという用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0100】
ネットワーク制御装置28は、通信インターフェース32を介して、ネットワーク上のローカル変電所20における電圧制御装置26及びトランスを制御及び構成するように動作可能なプロセッサ36を提供する。ネットワーク制御装置28は更に、動作データ及び/又は動作命令及び設定を保存するためのネットワーク記憶装置38を提供する。ネットワーク記憶装置38は、ネットワーク制御装置28と一体的に形成されていてもよく、又は、例えば、ネットワーク上の他の場所又はクラウドホスト型リモートストレージ上に収容されていてもよい。そのような場合、記憶装置38は、通信インターフェース32を介してアクセス可能であってもよい。
【0101】
複数の実施形態では、ネットワーク制御装置28自体が、ネットワークの一部における電圧、電流又は周波数条件などのネットワーク動作状態の態様を測定するための測定装置34を提供してもよい。
【0102】
複数の実施形態では、電圧制御装置26は、ネットワークの各サブセクションで検出された条件に応じて変電所20に命令を送信して、その変電所におけるトランスの一次コイル及び二次コイルの巻線の比率を増加又は減少させるように動作可能である。電圧制御装置26は、例えば、消費者22に供給される電圧が低すぎることを検出して、供給電圧を上げるためにトランスが一次コイルのタッピングを減らす(又は二次コイルのタッピングを増やす)ことを要求してもよい。変電所20は、トランスの一方が動作を停止し、その結果、トランスの対のうち一方のみが動作可能となるように制御されてもよい。そうすることで動作可能なトランスの負荷が増大し、これがトランスによる出力電圧に影響を与え、従って、ネットワークのその部分の供給電圧にも影響を与える。
【0103】
ネットワーク制御装置28は、グリッド運用及びパフォーマンスを監視するように動作可能なグリッド管理システム30に接続するための制御インターフェース40を更に提供する。グリッド管理システム30は、ユーザインターフェース32を介して、グリッドネットワークを運用及び監視するユーザに動作状態のフィードバックを提供するように動作可能である。ユーザインターフェースは、ネットワーク制御装置28にローカルに収容されてもよく、又はリモート端末上のネットワーク接続を介して、又は例えばサーバ上に収容されるウェブベースのポータルを介して収容されてもよい。
【0104】
ネットワーク制御装置28は、主として、電圧制御装置26から送信されたデータを受信するように動作可能であり、このデータは、関連するローカル変電所20から供給される電気の電圧の詳細を示す。受信した情報は、電圧、グリッドのその部分で消費者22によって引き出された電流、動作電流状態、及び周波数についての1以上の測定値を含んでもよい。このようにして、電圧制御システムは、グリッドの前記部分に供給されている電圧及びそのグリッドのそれぞれの部分での動作状態(引き出される負荷を含む)を使用し、電圧を変更することによる効果(少なくともそこから対応する周波数の変化を推測できる電力消費の変化に関する効果)をそのような変更を行う前に推定できる。次に、電圧制御システムは、変電所20に命令を伝達して、グリッドの前記部分内の消費者22に供給される電圧を修正電圧に変更する。
【0105】
変電所20のトランスは、通常は、上述のようなタップ切換器を提供する。このタップ切換器は、トランスの一次及び/又は二次巻線の一方又は両方の巻線を増減させて、グリッドの前記部分内の消費者へトランスから出力される電圧を変更するように動作可能である。電圧を変更するための命令は、ネットワーク制御装置28によって直接変電所20に送信されるか、ネットワーク制御装置28から、その変電所20に関連する電圧制御装置26を介して送信される。
【0106】
複数の実施形態では、ネットワーク制御装置28は、特定の変電所20及び/又は電圧制御装置26が受け持つネットワークのサブセクションでローカルに、又はネットワークレベルで、ネットワークで生じる状況に対する自動応答を実行するようにプログラムされており、ネットワークレベルの場合、ネットワーク上の複数の電圧制御装置26及び/又は変電所20の応答が、特定のグリッドレベルの応答を達成するために集中的に制御される。
【0107】
複数の実施形態では、ネットワーク制御装置28は、電圧変更が必要であることを示す周波数イベントなどが検出された場合に、印加する電圧の適切な変更を決定するように構成されている。例えば、周波数の突然のピークの場合、ネットワーク制御装置28は、グリッドの一部で消費される電力を低減するために電圧低下が必要であると決定するであろう。或いは、システムのユーザが、(ダッシュボード及びユーザインターフェース32を介して)、可能性のある電圧降下を、その実施前に検討して、その起こり得る結果を決定するであろう。ネットワーク制御装置28は、記憶装置38に保存された所定の電圧のセットから候補電圧を選択するか、又はデータ読取り値(即ち、現在の電圧、グリッドの前記部分の負荷、及び必要に応じてグリッドの周波数又は達成すべき周波数応答)に基づいて候補電圧を計算するであろう。複数の実施形態では、それぞれが電力消費及び関連する周波数応答の異なる変化を提供する複数の異なる電圧が考慮されるであろう。消費の変化の推定値がユーザに表示されるか、又はネットワーク制御装置28によって計算されレビューされるので、好ましい候補が、使用すべき修正電圧として選択されるであろう。次にそれに応じた命令が送信され、またユーザ入力が必要な場合は、命令が送信される前に確認が要求される。
【0108】
当然ながら、ネットワーク制御装置28は、グリッド中の複数の電圧制御装置26から情報を受け取り、救済措置を必要とする変電所を選択する前にグリッドの異なる部分間で選択するように動作可能である。システムは、それぞれ異なる負荷を受け、恐らく異なる周波数応答特性を有するグリッドの異なる部分に提供される電圧を変更することによる推定される効果を比較してもよい。このようにして、システムオペレーターは、グリッドの異なる部分に電圧変更を適用したことによる効果を比較して、どの変電所トランスを操作するか(即ち、供給される電圧を変更するか)に関して経験に基づいた評価を行うことができる。
【0109】
グリッドの様々な部分の相対的な特性を評価した後、ネットワーク制御装置28(及び包括的なグリッド管理システム30)は、特定の変電所20及びそれらのそれぞれの電圧制御装置26に関連する特性に関する情報を保存するように動作可能である。一般的に、グリッドの様々な部分で電圧を変更することによる推定される効果は、変電所が受け持つ消費者と引き出される負荷の大きさとの間に強い相関がある点で、一般的パターンに従う。全て住宅で2万人の消費者を受け持つ部分は、20の工場からなる工業団地を受け持つ変電所とは引き出し負荷が異なる可能性が高い。24時間にわたって各変電所において引き出される負荷パターンは大きく異なり、異なる時間に需要がピークになり、変動のレベルも異なる。例えば、各部分での2%の電圧降下の効果は、電力消費量の異なる低下、及びそれに応じて異なる周波数応答をもたらす可能性がある。
【0110】
グリッドの需要/負荷がネットワークの発電能力より大きい場合、周波数は低下するが、容量が過剰な場合は周波数が上昇する。本発明の実施形態によれば、電圧制御システムは、トリガーイベントを関連する応答に関連付けた、一連のルールを決定し保存する。例えば、グリッド上の周波数が特定のしきい値を下回る場合、グリッド上の1以上の指定された変電所トランスは、出力電圧を所定量だけ低下させる必要がある。従って、このようにして、グリッドの負荷が高すぎて周波数が低下した場合、電圧制御システムは、電圧出力を低減する必要がある特定のトランスを自動的に選択して、問題を修正又は少なくとも軽減する。
【0111】
複数の実施形態では、ネットワーク制御装置28は、グリッド上の1以上の変電所からの出力電圧の増減をトリガーするための一連のルールを表すデータを保存する。ルールは、グリッドで測定された周波数がしきい値を下回ること、又はしきい値を超えて上昇することを、実行すべき一連の措置に関連付ける。各措置は、変電所と必要な電圧降下又は上昇、又は電圧の上昇又は降下を達成するためにその変電所で取る一連の措置(例えば、トランスの1つを切断する、トランスの一次又は二次巻線の一方に対してコイルのタッピング又はアンタッピングを行うなど)を特定する。
【0112】
このようにして、電圧制御装置26が電圧又は周波数を測定し、又はネットワークの関連する部分の負荷を測定、計算し、そのデータをネットワーク制御装置28に伝達すると、ネットワーク制御装置は、受信したデータを1以上の保存されたルールと比較する。1以上のルールが受信したデータと一致する(即ち、データが、しきい値を超えたこと、又はデータが指定された範囲にあることを示す)場合、ネットワーク制御装置28は、トリガールールに対応する命令を指定された装置に伝達する。装置は、変電所20、又はそれらの変電所20に関連する電圧制御装置26であってもよい。このようにして、トリガールールによって指定されるように、電圧応答は、グリッドの1以上の変電所20で達成される。
【0113】
他実施形態では、上記に加え、ルール及び対応措置を個々の電圧制御装置26に保存してもよい。その場合、電圧制御装置26は、グリッドのそれ自体の関連する部分における電圧及び負荷の読取りを行い、その読取りが、ルールがトリガーされたことを示す場合(例えば、負荷、周波数又は電圧が目標しきい値を超えた場合)、電圧制御装置26は、その出力電圧を保存されたルールに従って変更するために変電所20に命令を伝達する。
【0114】
グリッド全体に実装されるルールでは、周波数イベント(即ち、高周波数読取り値又は低周波数読取り値が観測された場合)に対して時間をずらした応答(staggered response)を作ってもよい。ルールでは、しきい値を超えてから電圧の応答変化が印加されるまでの時間遅延を規定してもよく、又は、措置が実行される前の設定された期間、読取り値がしきい値を超えていることを要求してもよい。このようにして、ネットワークの所定部分(及び関連する変電所)での応答が遅延される。
【0115】
例えば、発電所の故障に対する最初の応答は、高周波数又は低周波数が初めて特定されたときに行われる。このようなシナリオでは、結果として生じる周波数の低下が増強される可能性が高く、迅速な応答が必要である。その最初の応答は、所与の電圧低下に対し単一で電力消費の最大低下を提供可能な変電所20で行われ、これにより、例えば、過剰な電圧降下を生じさせずに可能な限り最も即時の調整を提供する。そして、所定の時間遅れの後で更なる応答がトリガーされ、その結果、所定の期間後においても周波数が所定の範囲又はしきい値の外にあると判定された場合には更に別の変電所20が電圧低下を適用する。この場合、これらの別の変電所20が保存されたルールに従って電圧低下を適用し、グリッド上の周波数のバランスを取り戻す。
【0116】
この手法は、グリッド全体の電力消費を管理にも適用できる。複数の実施形態によれば、ルールでは、それぞれの変電所20により供給される電圧への変化を、前記グリッドの各部分が所定の範囲又はしきい値を超えた推定電力需要に従うよう規定する。例えば、電力需要がグリッドのある部分で特定レベルを超えて上昇すると推定される場合、その部分に関連する電圧制御装置26は、電力消費がレベルXを超えると推定される場合に、その関連する変電所20に供給される電圧を0.5V低減することを規定するルールを適用する。レベルがXを超えて上昇するのに応答して、電圧制御装置26は、その関連する変電所20に命令を伝達し、0.5Vの電圧の低減を要求する。変電所20はそのトランスをそれに応じて調整し、特定の電圧低下をもたらす。電圧制御装置26は、グリッドの前記部分の電圧を監視し続け、その部分における電力需要を推定し続ける。電力需要が特定のレベルを下回ると、別のルールが元の電圧レベルの復元をトリガーし、変電所20と通信してその変更を実施することを電圧制御装置26に促す。
【0117】
グリッド全体の電力需要は、このように、本発明のシステムで管理される。
【0118】
グリッド全体の異なる電圧制御装置26に保存されたルールは異なっていてもよい。電圧制御装置26に保存されたルールは、それぞれの装置で記憶するため、ネットワーク制御装置28及び/又はグリッド管理システム30から受信されてもよい。更新されたルールは、定期的に又はオンデマンドで受信されてもよく、例えばインターネット接続を介して、又はクラウドベースのサービスから、ネットワーク制御装置28又は電圧制御装置26にインストールされてもよい。
【0119】
複数の実施形態では、システムは、1つ又は複数種の特性の以前に測定された1以上の値に関連付けられている以前に測定された電力消費を含むデータセットを含んでもよい。この1つ又は複数種の特性は、電圧、電流、周波数、負荷、又はそれらの組み合わせであってもよい。この1つ又は複数種の特性は、上記のように測定装置によって測定される。データセットは、(トリガーイベント情報を保存する)記憶装置50に保存されてもよく、又はシステムに関連する別の記憶装置に保存されてもよい。或いは、システムによるリモートアクセスのためにデータセットをクラウドに保存されてもよい。
【0120】
そのようなデータセットを使用すると大規模ネットワークでの応答予測が有利であると知られており、特に前記グリッドの前記部分が一定電力と一定インピーダンス負荷の組み合わせを含む場合で、そのような負荷の例としては、モーターコントローラー、発電機、他の電力負荷/電源が挙げられ、電力消費変化の抑制又は増幅に対し実質的に独立して応答する。システムは、以前より、米国特許出願公開第US2011/0251732号明細書(特許文献1)で説明されているような式駆動モデル(即ち、理論モデル)に依存してきた。その式駆動モデルは特定の入力セットに対して同じ応答を呈する(なぜなら、式は定義済入力セットに対して一つの結果を提供するからである)。多くの場合、これらのモデルには、式駆動型モデルを、モデルがモデル化している前記グリッドの前記部分に可能な限り厳密に一致させるための調整可能なパラメータが用意されている。更に、このようなモデルは、電力出力応答の理論的予測を提供する、有限で通常は少ない数のパラメータのセットによって拘束される。対照的に、データセット、即ちグリッドの一部の又は消費者の特性(又は複数の特性)及び/又は特性(又は複数の特性)の変化に関連する以前測定された電力消費及び/又は電力消費の変化、並びに消費電力に関するインプットを持つ他のファクタを含むセットを使用することにより、特性(又は複数の特性)の何らかの変化に対して、どのように電力グリッドの一部又は消費者の電力消費が変化するかを確実に予測することができる。換言すれば、固定されたパラメータのセットに基づいて理論的な予測を行うのではなく、前記システムは、ネットワークに関連する類似(又は同一)シナリオ、類似(又は同一)状況下のネットワーク、又は類似(又は同一)状況変化が発生したネットワークの記録済観察に基づいて、消費電力の変化(即ち、特性(又は複数の特性)値を変更することによる最も可能性の高い効果)を推定する。本発明の複数の実施形態では、システムは、このようにその応答が、観察、又は過去の挙動、及びその挙動の結果に応じて異なった適応的行動を提供する。
【0121】
上記のように、システムはプロセッサ、即ち処理装置を含んでもよい。データセットを含む実施形態では、処理装置は、データセット内の以前測定された前記特性(又は複数の特性)値から、前記特性(又は複数の特性)値を第1値から第2値へ変更することによるそれら消費者の電力消費への最も可能性の高い効果を決定できる。
【0122】
処理装置は、消費者の電力消費が所望の値に達したか否かを決定するように構成されうる。これは、グリッドの一部が予想される量の電力を引き出していることを保証する上で有利であろう。
【0123】
特性、又は複数の特性の測定値、あるいは測定された消費電力は、データセットに追加されてもよい。これは、特性(又は複数の特性)値を第1値から第2値へ変更することによるそれら消費者の電力消費への最も可能性の高い効果を決定する際に処理装置が取得するデータセットにさらに多くのデータを提供でき、有利であろう。
【0124】
データセットには、1以上の特性の測定値、及び消費電力の測定値が含まれてもよく、それらは、60分、50分、40分、30分、20分、15分、10分、5分、4分、3分、2分、又は1分ごとに測定される。これにより、データセットの精度が改善され、特性又は複数の特性の値を変更することによる消費者の電力消費への最も可能性の高い効果の精度を改善するので、有益である。
【0125】
データセットには、特性(又は複数の特性)と電力消費が測定された曜日(例えば、月曜日、火曜日、水曜日、木曜日、金曜日、土曜日、又は日曜日)を含んでもよい。特性(又は複数の特性)と電力消費が測定された曜日は、特性(又は複数の特性)値を変更することによる消費者の電力消費への最も可能性の高い効果を決定するのを支援するために使用されるであろう。
【0126】
データセットには、少なくとも1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、10年間、15年間、又は20年間の期間にわたり測定された特性(又は複数の特性)と電力消費値が含まれてもよい。これにより、データセットの精度が改善され、特性値又は複数種の特性値を変更することによる消費者の電力消費への最も可能性の高い効果の精度を改善する堅牢なデータセットを提供するのに有利であろう。
【0127】
データセットには、測定された特性(又は複数の特性)と測定された電力消費に関連する季節情報を含んでもよい。例えば、データセットには、測定が冬、春、夏、秋のいずれの季節に行われたかのデータを含んでもよい。データセットには、測定が祝日に行われたか否かも含まれていてもよい。そして、季節情報を使用して、特性(又は複数の特性)値を変更することによる消費者の電力消費への最も可能性の高い効果を決定するのに役立てることができる。
【0128】
データセットは、測定された特性(又は複数の特性)及び測定された電力消費に関連する環境情報を含んでもよい。例えば、データセットには、測定が行われたときの温度を含んでもよい。データセットには、測定が行われた時点の天候を含んでもよい。これにより、現在測定されている特性(又は複数の特性)と以前に測定された特性(又は複数の特性)をより正確に一致させることができ、特性(又は複数の特性)値を第1値から第2値に変更することによる消費者の電力消費への最も可能性の高い効果をより正確に決定できるので、このことは有利であろう。
【0129】
データセットには、測定が行われたときのトランスの一次及び/又は二次巻線上の巻線数を含んでもよい。これによりデータッセットの精度が向上し、特性(又は複数の特性)値の変更よる消費者の電力消費への最も可能性の高い効果の精度が向上するため、有利であろう。
【0130】
特性(又は複数の特性)値を第1値から第2値に変更することによる消費者の電力消費への最も可能性の高い効果は、数値回帰、k平均法、多変量解析、ニューラルネットワーク、ベイズの定理のうちの1つ以上を使用して決定してもよい。これは、システムがデータセットを獲得する能力を向上させるので有利であろう。これにより、1以上の特性値を変更することによるそれら消費者の電力消費への最も可能性の高い効果を決定する基となる、最も適切な以前の測定値を決定するシステムの能力を向上させる。
【0131】
記憶装置は、変電所に関連付けられた応答措置にトリガーイベントを関連付ける1以上のルールを保存してもよい。複数の実施形態では、応答措置は、処理装置による判定に従い、特性又は複数の特性を第1値から第2値に変更することを含んでもよい。
【0132】
本明細書では本発明の例示的な実施形態について説明しているが、特に明記しない限り、異なる実施形態の特徴は、互いに分離して、又は任意の組み合わせで、互いに組み合わせることが可能であることを理解されたい。
【0133】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される、「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」という用語、並びにそれらの変形は、指定された特徴、ステップ、又は完全体(integers)が含まれていることを意味する。これらの用語は、他の特徴、ステップ、又はコンポーネントの存在を排除するものと解釈されるべきではない。
【0134】
上記の説明、又は特許請求の範囲、又は添付の図面に開示された特徴は、適宜、それらの特定の形式で、又は開示された機能を実行するための手段、又は開示された結果を達成するための方法又はプロセスとして表現されているが、本発明を種々の異なる形態で実現するために、そのような特徴を別々に、又は任意の組み合わせで利用してもよい。