(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】位置測定システム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20231011BHJP
B64F 1/36 20170101ALI20231011BHJP
【FI】
G01B11/00 A
B64F1/36
(21)【出願番号】P 2020571523
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 US2019036884
(87)【国際公開番号】W WO2019245835
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-09
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500116694
【氏名又は名称】サウスウェスト リサーチ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】バートレット, グリン, アール.
(72)【発明者】
【氏名】ゾス, ジェレミー, ケー.
(72)【発明者】
【氏名】フラニガン, ウィリアム, シー.
(72)【発明者】
【氏名】ボーイジンク, ピーター
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0076193(US,A1)
【文献】特開2019-053003(JP,A)
【文献】特開2005-164323(JP,A)
【文献】特開2011-150443(JP,A)
【文献】特開平05-170191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01C 15/00
B64F 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットを物体の方へ配向する方法であって、
a)複数のターゲットを前記物体上の既知の地点において前記物体に接続するステップと、
b)
第1のスキャナを用いて、前記複数のターゲットのうちの少なくともいくつかをスキャンして、ターゲットデータを取得するステップと、
c)スキャンされた前記ターゲットデータを、前記複数のターゲットのうちの1つの少なくとも1つの既知の寸法と比較するステップと、
d)スキャンされた前記ターゲットデータが前記複数のターゲットのうちの1つの前記少なくとも1つの既知の寸法と一致する場合、前記ターゲットデータに適合するように既知の物体モデルデータをマッピングして、前記既知の物体の位置及び向きを判定するステップと、
e)
前記第1のスキャナに代えて、第2のスキャナを用いて前記ステップb)~d)を実施するステップと、
f)
前記第1のスキャナ及び前記第2のスキャナの結果を比較するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ステップf)の結果が、前記第1のスキャナ及び前記第2のスキャナから物体の同じ位置及び向きを示す場合にのみ、前記ロボットの運動を可能にするステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記物体が、複数の部分に分割され、前記ステップa)~
f)が、前記複数の部分の各々について実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記物体が航空機であり、前記航空機が、各翼及び胴体のについて異なる部分に分割される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
物体に接続可能な複数のターゲットであって、前記複数のターゲットの各々がレトロリフレクタを有する、複数のターゲットと、
光線を放出し、前記複数のターゲットのうちの1つ又は複数からの反射光を検知して、ターゲットデータを取得することができる少なくとも1つのスキャナと、
コントローラであって、
前記スキャナからの前記ターゲットデータを解析し、既知のデータと比較して、前記ターゲットの真の位置を示し、
前記真の位置、前記複数のターゲットの既知の位置、及び既知の物体モデルデータを使用して、航空機の位置及び向きをマッピングするように構成されている、コントローラと、を備え、
前記少なくとも1つのスキャナが、第1のスキャナ及び第2のスキャナを備え、各々が、それぞれ少なくとも180度スキャンするためにベースに回転可能に搭載され、
前記コントローラが、
前記第1のスキャナからの前記ターゲットデータを解析し、既知のデータと比較して、前記ターゲットの真の位置を示し、
前記真の位置、前記複数のターゲットの既知の位置、及び既知の航空機モデルデータを使用して、前記航空機の位置及び配向の第1のマップを形成し、
前記第2のスキャナからの前記ターゲットデータを解析し、既知のデータと比較して、前記ターゲットの真の位置を示し、
前記真の位置、前記複数のターゲットの既知の位置、及び既知の航空機モデルデータを使用して、前記航空機の位置及び配向の第2のマップを形成し、
前記第1のマップを前記第2のマップと比較するように、
さらに構成されている、
物体位置測定システム。
【請求項6】
前記複数のターゲットが各々、
1つ又は複数のレトロリフレクタ部分、1つ又は複数のより暗い非反射部分、及び、前記1つ又は複数のレトロリフレクタ部分と前記1つ又は複数のより暗い非反射部分との間の少なくとも2つの移行部を有する円筒状本体部、並びに
前記航空機に接続するための吊り下げ式コネクタ
を備える、請求項5に記載の物体位置測定システム。
【請求項7】
前記吊り下げ式コネクタが、
航空機表面コネクタと、
前記航空機表面コネクタに接続されるケーブルと、
前記円筒状本体部を前記ケーブルに接続するボールジョイントと
を備える、請求項6に記載の物体位置測定システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのスキャナが、回転可能であり、スキャンしながら斜めに動くように水平及び垂直方向にさらに移動可能である、請求項5に記載の物体位置測定システム。
【請求項9】
移動可能な物体の位置及び向きを判定する方法であって、
a)複数のターゲットを前記物体上の既知の点にて前記物体に接続し、その結果として、前記ターゲットが前記物体と共に動くようにする、ステップと、
b)前記物体の表面及び前記複数のターゲットのうちの少なくともいくつかを、第1のスキャナを用いて、スキャンして、ターゲットデータを取得するステップと、
c)スキャンされた前記ターゲットデータを、前記複数のターゲットのうちの1つの少なくとも1つの既知の寸法と比較するステップと、
d)スキャンされたターゲットデータが前記複数のターゲットのうちの1つの前記少なくとも1つの既知の寸法と一致する場合、前記ターゲットデータに従って既知の物体モデルデータをマッピングして、前記物体の位置及び向きを判定するステップと
を含
み、
前記物体の表面をスキャンする前記ステップb)が、前記第1のスキャナを用いて実施され、
当該方法は、
第2のスキャナを用いてターゲットデータを取得するために前記物体の表面及び前記複数のターゲットの少なくともいくつかをスキャンして、ターゲットデータの第2のセットを取得するステップと、
前記第1のスキャナからのターゲットデータを前記第2のスキャナからのターゲットデータと比較するステップと
をさらに含む、
方法。
【請求項10】
前記複数のターゲットを前記物体に接続する前記ステップが、複数の吊り下げ式ターゲットを前記物体上の既知の地点に接続し、前記ターゲットが前記物体から吊り下げられるとともに、前記ターゲットが前記物体と共に動くようにすることを含み、
前記複数のターゲットの各々が、
1つ又は複数のレトロリフレクタ部分(32)、1つ又は複数のより暗い非反射部分(33)、及び、前記1つ又は複数のレトロリフレクタ部分と前記1つ又は複数のより暗い非反射部分との間の少なくとも2つの移行部を有する円筒状本体部、並びに
前記物体に接続するための吊り下げ式コネクタ
を備える、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記移動可能な物体が航空機であり、前記吊り下げ式コネクタが、航空機表面コネクタと、前記航空機表面コネクタに接続されるケーブルと、前記円筒状本体部を前記ケーブルに接続するボールジョイントとを備える、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
スキャンされた前記ターゲットデータを、前記複数のターゲットのうちの1つの少なくとも1つの既知の寸法と比較する前記ステップが、
予測されるターゲットの重心の位置を定めることと、
前記ターゲットの前記重心によって軸線を規定することと、
前記ターゲットの既知の寸法に基づいて、前記軸線を実際の中心に再配置することと、
前記ターゲットの既知の寸法が、スキャンされた前記寸法に一致するかどうか比較することと
を含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップc)が、スキャンされたターゲットの半径を前記複数のターゲットのうちの1つの既知の半径と比較することを含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップb)が、前記物体に向けられ回転されるスキャナを、前記スキャナが少なくとも180度の範囲の回転により前記複数のターゲットのうちの少なくともいくつかを検知して、ターゲットデータを取得するように、回転させることを含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップb)が、前記スキャナを、前記スキャナが回転しながら垂直及び水平に動いてさらなるターゲットデータを検知するように、斜めに動かすことをさらに含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記物体が航空機であり、前記既知の物体モデルデータが、特定の物体タイプの既知の寸法を含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項17】
前記ターゲットが、前記特定の物体タイプに基づいて特定の既知の地点に配置される、請求項
16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]航空機の表面処理は、製造中だけでなく、航空機の保守のためにも重要な作業である。外側塗料は、航空機が最適且つ安全に性能発揮することができるように十分に良好な状態になければならない。小さな擦り傷又は塗料の持ち上がった部分は、航空機性能に影響を及ぼし得る。したがって、外側塗料を完全に除去すること、及び新しい塗料を定期的に塗布することが必要とされる。しかしながら、航空機の外側表面に使用される塗料は、それが耐えなければならない条件に起因して、容易に除去可能なものではない。そのような塗料は、典型的には、塗料を溶解することができる化学溶液を手作業で塗布することによって除去される。
【0002】
[0002]位置測定システムは、多くの場合、物体の位置を調べるために使用される。そのようなシステムの1つの例は、ターゲットをパルス光レーザで照射し、反射されたパルスをセンサにより測定することによって、ターゲットまでの距離を測定することを試みる、光による検知と測距(「ライダー(LIDAR)」:Light Detection and Ranging)システムである。レーザの戻ってくる時間及び波長における違いが、ターゲットの3次元表示を作製するために使用され得る。
【0003】
[0003]そのような位置測定システムは、時として、移動可能なワークピースに対するロボット処理のために使用される。そのような場合、ワークピースは、典型的には、ロボット処理がその周りで作業することができるような既知の位置にしっかりと固定される。固定具は、高価であり、先に作製された3次元スキャン画像を使用するために、大型の移動可能な物体を精密な既知の場所及び配向に置く必要があることから、使用するのに手間がかかる。航空機などの物体の場合、先に作製された3次元スキャン画像は、精密な格納庫位置が利用可能であり、航空機が正確な位置に戻されるように巧みに配向され、また航空機がその正確な位置に留まるときにのみ使用され得る。航空機を正確な位置に保つことは、航空機材料が、外的影響、例えば、温度に起因して、位置を変える傾向があるため、ジャッキなどの他の外部器具も必要とする。
【発明の概要】
【0004】
[0004]本発明の第1の態様によると、移動可能な物体の位置及び向きを判定する方法は、a)複数のターゲットを物体の既知の地点において物体に接続し、その結果として、ターゲットが物体と共に動くようにする、ステップと、b)物体の表面及び複数のターゲットのうちの少なくともいくつかをスキャンして、ターゲットデータを取得するステップと、c)スキャンされたターゲットデータを、複数のターゲットのうちの1つの少なくとも1つの既知の寸法と比較するステップと、d)スキャンされたターゲットデータが複数のターゲットのうちの1つの少なくとも1つの既知の寸法と一致する場合、ターゲットデータに従って既知の物体モデルデータをマッピングして、物体の位置及び向きを判定するステップと、を含む。そのような方法は、航空機などの大型の移動可能な物体の位置及び配向を、固定具を必要とすることなく、継続して見つけ出すことを可能にし得る。これは、物体に接触することによって物体に損傷を及ぼす可能性を回避しながら、物体周辺及び物体近くでの動作(例えば、航空機表面処理)を可能にし得る。
【0005】
[0005]一実施形態によると、物体の表面をスキャンするステップb)は、第1のスキャナを用いて実施され、本方法は、第2のスキャナを用いてターゲットデータを取得するために物体の表面及び複数のターゲットの少なくともいくつかをスキャンして、ターゲットデータの第2のセットを取得するステップと、第1のスキャナからのターゲットデータを第2のスキャナからのターゲットデータと比較するステップと、をさらに含む。第1及び第2のスキャナを使用することにより、正確な結果を確保にするためにスキャンデータの比較が可能になる。それはまた、一方のスキャナの故障の場合に冗長性をもたらす(重複することを可能とする)。
【0006】
[0006]一実施形態によると、複数のターゲットを物体に接続するステップは、複数の吊り下げ式ターゲットを物体上の既知の地点に接続し、その結果として、ターゲットが物体と共に動くようにすることを含む。吊り下げ式ターゲットは、物体の特定の部分が時間と共に動き得る(例えば、航空機翼は給油後に下がる)ときにさえ、位置及び向きを判定することを可能にする。任意選択ではあるが、ターゲットは回転可能である。これは、ターゲットが常に物体からセット距離に吊り下がっていることを確実にし得る。
【0007】
[0007]一実施形態によると、スキャンされたターゲットデータを複数のターゲットのうちの1つの少なくとも1つの既知の寸法と比較するステップは、予測されるターゲットの重心を位置特定することと、ターゲットの重心によって軸線を規定することと、ターゲットの既知の寸法に基づいて、軸線を実際の中心に再配置することと、ターゲットの既知の寸法が、スキャンされた寸法に一致するかどうか比較することと、を含む。
【0008】
[0008]一実施形態によると、ステップc)は、スキャンされたターゲット半径を複数のターゲットのうちの1つの既知の半径と比較することを含む。これは、スキャンデータの正確性を確実にし得る。
【0009】
[0009]一実施形態によると、ステップb)は、物体に向けられ、回転されるスキャナを、それが、少なくとも180度の範囲の回転により複数のターゲットのうちの少なくともいくつかを検知して、ターゲットデータを取得するように、回転させることを含む。少なくとも180度の回転は、スキャナの広範囲の視点を可能にする。任意選択で、ステップb)は、スキャナを、スキャナが回転しながら垂直及び水平に動いて、さらなるターゲットデータを検知するように、斜めに動かすことをさらに含む。これは、ターゲットの正確な特別な位置を判定することを助けることができる。
【0010】
[0010]一実施形態によると、物体は、航空機であり、既知の物体モデルデータは、特定の物体タイプの既知の寸法を含む。
【0011】
[0011]一実施形態によると、ターゲットは、特定の物体タイプに基づいて特定の既知の地点に配置される。これは、航空機などの大型の移動可能な物体に特に有用であり得る。十分なターゲットが常に可視であること、及び物体の特定の部分(例えば、運動を起こしやすい部分)が接続されたターゲットを有することを確実にするために、指定された位置が、ターゲットのために選択され得る。
【0012】
[0012]さらなる態様によると、ロボットを物体の方へ配向する方法は、a)複数のターゲットを物体の既知の地点において物体に接続するステップと、b)複数のターゲットのうちの少なくともいくつかをスキャンして、ターゲットデータを取得するステップと、c)スキャンされたターゲットデータを、複数のターゲットのうちの1つの少なくとも1つの既知の寸法と比較するステップと、d)スキャンされたターゲットデータが複数のターゲットのうちの1つの少なくとも1つの既知の寸法と一致する場合、ターゲットデータに適合するように既知の物体モデルデータをマッピングして、既知の物体の位置及び向きを判定するステップと、e)第2のスキャナを用いてステップb)~d)を実施するステップと、f)第1のスキャナ及び第2のスキャナの結果を比較するステップと、を含む。そのような方法は、物体の空間配置を正確に判定することができる。
【0013】
[0013]一実施形態によると、本方法は、ステップf)の結果が、第1のスキャナ及び第2のスキャナから大型の物体の同じ場所及び位置を示す場合にのみロボットの運動を可能にするステップをさらに含む。2つのスキャナを使用すること、及びそれらが認めた場合にのみ運動を可能にすることにより、正確な配向を確実にするために信頼性の高い安全機構をシステムに提供する。
【0014】
[0014]一実施形態によると、物体は、複数の部分に分割され、ステップa)~g)は、各部分について実施される。これは、例えば、航空機の翼構造が燃料なしの状態から燃料ありの状態になるとき、物体の非剛体変形の検出を可能にし得る。任意選択で、航空機において、分割は、各翼及び胴体のための異なる部分への分割であり得る。
【0015】
[0015]さらなる態様によると、物体位置測定システムは、物体に接続可能な複数のターゲットであって、各ターゲットがレトロリフレクタを有する、複数のターゲットと、光線を放出し、複数のターゲットのうちの1つ又は複数からの反射光を検知して、ターゲットデータを取得することができる少なくとも1つのスキャナと、コントローラであって、スキャナからのターゲットデータを解析し、それを既知のデータと比較してターゲットの真の位置を示し、真の位置、複数のターゲットの既知の位置、及び既知の物体モデルデータを使用して、航空機の位置及び向きをマッピングするように構成される、コントローラと、を備える。そのようなシステムは、物体の位置及び向きの単純且つ正確なマッピングを可能にし得る。
【0016】
[0016]一実施形態によると、複数のターゲットは各々が、1つ又は複数のレトロリフレクタ部分、より暗い(非反射)部分のうちの1つ、及び反射部分と非反射部分との間の少なくとも2つの移行部を有する円筒状本体部、並びに航空機に接続するための吊り下げ式コネクタを備える。2つの移行部を有することは、スキャナがターゲット及び寸法を正確に取得することができることを確実にし、吊り下げ式接続部は、ターゲットが物体と共に動くことを確実にする。
【0017】
[0017]一実施形態によると、吊り下げ式コネクタは、航空機表面コネクタと、航空機表面コネクタに接続されるケーブルと、円筒状本体部をケーブルに接続するボールジョイントとを備える。そのようなコネクタは、ターゲットの回転及び垂直吊り下げを可能にし、物体表面に対する配置が一定のままであることを確実にする。
【0018】
[0018]一実施形態によると、少なくとも1つのスキャナは、第1のスキャナ及び第2のスキャナを備え、各々が、それぞれ少なくとも180度スキャンするためにベースに回転可能に搭載される。第1及び第2のスキャナを使用することにより、故障の場合のバックアップを提供し、また正確性を確実にするために比較を可能にする。
【0019】
[0019]一実施形態によると、コントローラは、第1のスキャナからのターゲットデータを解析し、それを既知のデータと比較して、ターゲットの真の位置を表し、真の位置、複数のターゲットの既知の位置、及び既知の航空機モデルデータを使用して、航空機の位置及び配向の第1のマップを形成し、第2のスキャナからのターゲットデータを解析し、それを既知のデータと比較して、ターゲットの真の位置を表し、真の位置、複数のターゲットの既知の位置、及び既知の航空機モデルデータを使用して、航空機の位置及び配向の第2のマップを形成し、第1のマップを第2のマップと比較するようにさらに構成される。
【0020】
[0020]一実施形態によると、少なくとも1つのスキャナは、回転可能であり、スキャンしながら斜めに動くように水平及び垂直方向にさらに移動可能である。
【0021】
[0021]
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】大型の乗物の表面処理のために使用されるロボットシステムの斜視図である。
【
図2a】航空機をマッピングするために使用される位置測定システムの上面図である。
【
図2c】航空機に接続されるターゲットの斜視図である。
【
図2d】位置測定システムによって実施される航空機の3次元的な場所を判定する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[0028]
図1は、大型乗物の表面処理のために使用されるロボットシステム10の斜視図を示す。システム10は、航空機12の表面にわたってレーザを走査ないしはスキャンすることによって被膜を除去するために高出力レーザを使用した塗料除去システムとして示され、また説明されるが、システム10は、塗装、研磨、直接印刷、他の被膜又は表面処理の適用又は除去、洗浄、拭き取り、表面スキャン又は検査及び修理など、多種多様な表面処理を提供するために使用され得るということを理解されたい。加えて、システム10は、ヘリコプター、船、トラック、自動車、潜水艦、宇宙船などの他の乗物若しくは構造体、又はすべての表面に達するには大面積及び/若しくは複雑な配置を伴う任意の乗物若しくは構造体と共に使用され得る。
【0024】
[0029]システム10は、全方向型台車16に接続される可動性のベース14を有する自立型の表面処理システムである。電力、冷却水、及びガスなど、任意の必要とされるユーティリティは、テザー(tether)を介して提供され得るが、いくつかの場合においては、一部のユーティリティのみが必要とされるか、又はいずれのユーティリティも必要とされないため(例えば、電力は、バッテリによって提供される)、システム10は、様々な場所での作業のためにフレキシブルである(順応性が高い)可動性のベース14は、航空機12のところまで走行し、自ら「停車」し、作業のための安定したベースを提供することができるように、比較的小型でありながら安定していることにより、様々な航空機及び格納庫のバリエーションに対応することができる。全方向型台車16及びフレキシブル懸架システムは、可動性のベース14が、システム10の大きな荷重を均一に分散させることができると同時に、平坦ではない、又は障害物を有する領域を円滑に移動することができるということを結果としてもたらす。システム10はまた、例えば、レーザ発生装置、排気フィルタ、バッテリなど、特定の表面処理に関連したベース14上のいくつかの他の構成要素を含む。
【0025】
[0030]表面処理は、マスト18、ショルダ(肩部)19、アーム(腕部)20及びリスト(手首部)22を通じてベース14から行われ、この場合、マスト18、ショルダ19、アーム20及びリスト22は協働して、レーザビームをベース14から航空機12表面上の任意の所望の地点へ伝送することを可能にするための構造体を提供する。マスト18及びアーム20は、伸長可能であり、回転することができるが、マスト18の回転は、ベース14の運動又は回転を通じたものであり得る。ショルダ19は、マスト18に対するアーム20の回転及び並進運動を可能にする。アーム20はまた、マスト18の長さ方向に沿って上下に動くことができる。リスト22は、航空機12のすべての表面に達して、それを処理する能力をシステム10に提供するために、例えば、3つなど、より多くの自由度の軸を提供する。
【0026】
[0031]レーザは、マスト18、ショルダ19、アーム20及びリスト22の中空部分を通じて、ベース14からリスト22へ伝送され、ミラー制御システムを用いて一連のミラーによって誘導されて、正確なレーザビームの位置決めを確実にする。システム10はまた、マスト18、ショルダ19、アーム20及びリスト22の内部を通じて廃物を除去するための排ガスシステムと、航空機12に対するすべてのシステム10構成要素の配置及び配向のための位置測定システム30とを含む。
【0027】
[0032]
図2aは、航空機12をマッピングするために使用される位置測定システム30の上面図を示し、
図2bは、
図2aの拡大部分を示し、
図2cは、航空機12に接続されるターゲット32の斜視図を示し、
図2dは、位置測定システム30によって実施される航空機12の3次元の位置及び向きを判定する方法40を示す。位置測定システム30は、ターゲット32、スキャナ34a、34b、及びコントローラ36を含む。
【0028】
[0033]スキャナ34a、34bは、ベース14に配置されるか、又はベースに接続される。スキャナ34a、34bの位置は、単に例の目的のためであり、それらは、ベース14に接続される他の位置に配置し得る。スキャナ34a、34bは、少なくとも180度、この場合、
図2aにおいてスキャン領域によって示されるように約270度回転することができる。加えて、スキャナ34a、34bは、それらが、スキャンしているときより多くの位置データを取得することができるように、斜めに、水平に、及び垂直に動くことができる。これは、ベース14上の、又はこれに接続される、トラック、アーム、又は他の運動システムの使用を通じたものであり得る。スキャナ34a、34bは、いくつかの異なるタイプのスキャナであり得、光線を放出し、反射して戻ってくる光を検知することによって作用し得る。
【0029】
[0034]コントローラ36は、ベース14上に配置されるか、又はベース14から遠隔に配置され得、スキャナ34a、34bと(ワイヤレスで、又は、有線接続を通じて)通信することができる。コントローラは、スキャナからのターゲットデータを解析し、既知の航空機モデルに関する情報、既知の航空機モデルに関連するターゲットについて位置、既知のターゲットの寸法などを含む1つ又は複数のデータベースを参照するように構成される。コントローラは、データを受信、記憶、解析、処理、及び/又は送信するためのプロセッサを伴うソフトウェア及び/又はハードウェアであり得る。データベースは、コントローラ36のコンピュータシステム内に配置され得るか、又は遠隔的にアクセスされ得る。いくつかの実施形態において、これは、互いと通信する特定のコンピュータの分散ネットワークであり得る。コントローラはまた、例えば、航空機タイプを入力すること、スキャンを開始すること、マッピングを見ることなど、ユーザが相互作用をとり得るユーザインターフェースに接続され得る。
【0030】
[0035]受動マーカとしても知られる取外し可能なターゲット31は、再帰反射表面(retroreflective surface)32及び(非反射)黒色部分33を含み、また黒色(非反射)と再帰反射部分(「レトロリフレクタ部分」ともいう)(複数可)32との間に少なくとも2つの移行部を含む。移行部間の距離は、知られており(例えば、単位mm)、ターゲット31は、既知の位置x及びyにおいて航空機に接続される。
【0031】
[0036]
図3は、位置測定システム30と共に使用するための例示的なターゲット31を示す。ターゲット31は、再帰反射部分32、黒色部分33、ケーブル37、表面コネクタ38、及び回転可能なジョイント38を含む。
【0032】
[0037]黒色部分33内に再帰反射部分32が存在しているターゲット本体は、全体的に円筒状である。黒色部分に付属する再帰反射部分の使用は、スキャナ34a、34bのために、確実に、間に明確な区別をつけることができる。ターゲット本体は、寸法が様々であり得、例えば、直径4インチ(10.2cm)、及び高さ18インチ(45.7cm)であり得る。この構成は、例の目的のためであり、変更され得る。
【0033】
[0038]ピン37は、ターゲット本体の上端部に接続し、回転可能なジョイント39、例えば、ボールジョイントを通じて航空機表面コネクタに接続して、ターゲット本体を垂直に向けて重力によって空間内に自由状態で吊り下げる。航空機表面コネクタは、いくつかの様々な手段、例えば、磁石、ボルトヘッドクリップ、ホールクリップ、又は他の一時的な保持デバイスを通じて、航空機12の表面に取外し可能に接続することができる。
【0034】
[0039]ターゲット31は、航空機12から垂直に吊り下げられており、表面コネクタ38とピン37との間の回転可能なジョイント39に起因して回転可能である。常に垂直に吊り下がっている円筒状のターゲットの使用は、ターゲットが、航空機12又はベース14の運動の際に再位置合わせされる必要がないことを確実にする。それらは、航空機12の特定の場所に単純に接続され得、位置測定システム30及び方法40とともに機能することになろう。
【0035】
[0040]位置測定方法40は、ターゲット32を特定の場所にて航空機12に取外し可能に接続することにより開始する(ステップ42)。ターゲット32は、航空機12から吊り下がっており、一旦接続されると、航空機と共に移動可能であり、その結果として、位置測定方法40は、ターゲット32が接続されている航空機12又は航空機部品(例えば、翼)のいかなる運動にも対応することができる。接続場所は、航空機12のタイプに基づき、コントローラ36(又は別のシステム)は、ターゲット32が接続されるべき場所を示すことができる。典型的には、いくつかのターゲット32、例えば、いくつかのターゲット12がスキャンのために任意の場所から見えるように10~20個のターゲット32が使用される。これは、ターゲットの場所の正確な3次元表示が形成され、チェックされ得ることを確実にすることができる。
【0036】
[0041]次に、スキャナ34a、34bは、ターゲットデータのためにスキャンを開始する(ステップ44)。これは、スキャナ34a、34bを回転させること、並びに同時に垂直及び水平方向に斜めに動かすことを伴う。ベース14は、それが動作しているハンガー又は他の空間内のベースのx、y位置を取得するために継続的なメートル測定システムを使用する。z位置は、停車モード(そのジャッキ上)にある着地した位置に基づいた固定の数字である。既知のx、y、及びz位置を有するスキャナ34a、34bは、次いで、ターゲット31の再帰反射表面32を検出し、回転運動により、スキャナが、スキャナの視野内の各再帰反射部分32のα及びβ角度を判定することが可能になり、こうして、水平位置に関するターゲットデータを取得する。
【0037】
[0042]スキャナ34a、34bは、回転しながら同時にスキャン角度を増大させる。ターゲット上の2つの移行部におけるスキャナ34a、34bの角度は、各ターゲットの2つのγ(ガンマ)角を提供し、2つの移行部間のターゲット上の固定の距離を知ることにより、垂直にターゲット31の重心位置に関するターゲットデータを計算することが可能である。
【0038】
[0043]スキャナ34a、34bはまた、ターゲットの寸法、例えば、再帰反射部分32の半径又は高さ、に関連したターゲットデータを取得することができる。これは、予測されるターゲットの重心を位置特定すること、ターゲットの重心によって軸線を規定すること、ターゲットの既知の寸法に基づいて、軸線を実際の中心に再配置すること、及びターゲットの既知の寸法が、スキャンされた寸法に一致するかどうか比較することによって行われ得る。重心を位置特定することはまた、重心、及びコネクタから航空機表面までのオフセット(ずれ量)を知ることによって、ステップ48におけるマッピングを助けることができる。
【0039】
[0044]スキャンから取得されるターゲットデータは、次いで、既知のターゲットデータと比較され得る(ステップ46)。既知のターゲットデータは、例えば、ターゲット31の半径、直径、高さ、又は他の測定された寸法であり得る。既知の寸法は、コントローラ36によって、スキャンされた寸法測定値と比較される。この比較は、スキャナ34a、34bがターゲット31のみを取得しており、他の反射物体を取得していないことを確実にするために、チェックとして、いくつかの寸法、例えば、黒色部分33の間のレトロリフレクタ32の半径及び高さを含み得る。
【0040】
[0045]ステップ46における比較の結果が許容公差内での一致を示す場合、ターゲット位置データは、ターゲット位置データに従って既知の航空機モデルをマッピングするために使用される(ステップ48)。公差は、例えば、75%以内の一致を設定され得、及び/又は、スキャナ34a、34b、スキャンされる航空機、若しくは他の因子に基づいて、コントローラによって設定され得る。
【0041】
[0046]特定の航空機12に対するターゲット31の場所が知られており(特定の場所にターゲット31を接続することに起因して)、ターゲットの重心と航空機への接続部との間の長さが知られており、またその航空機のモデル寸法が知られていることから、次いで、正確なターゲット位置データが、スキャンされたターゲットデータに対する既知のモデル寸法及び位置を使用することによって、航空機12の位置及び向きを判定するために使用され得る。次いでこれは、航空機12に対する正確なロボットシステム10の配置のために使用されて、ロボットシステム10が作業中又は動作中に航空機12表面に触れて損傷を及ぼすことがないことを確実にする。
【0042】
[0047]比較ステップ46の結果が一致とならなかった場合、スキャナ34a、34bは、位置マップを作成するために十分な一致がなされるまでステップ44に戻って再スキャンする。これは、一致がなされるまで任意の回数行われ得る。これはまた、例えば、ベース14の初期位置が、十分且つ正確なターゲットデータを取得するのに、十分なターゲット31がスキャナ34a、34bにとって可視であるということを結果としてもたらさない場合には、ベース14を動かすこと、及び/又はターゲット31を追加することも含み得る。
【0043】
[0048]2つのスキャナ34a、34bの使用は、それぞれ個々のスキャナについてステップ44~48を使用して個々のマッピングを可能にし得る。スキャナ34aデータに従う航空機12の位置及び向きの第1のマップ、並びにスキャナ34bデータに従う航空機12の位置及び向きの第2のマップというように、1つのマップが、各スキャナに関連して作製され、第1のマップ及び第2のマップは、それらが整合すること(公差内)を確実にするために比較され得る。レーザ塗料除去システム出力が、航空機12外表面の近くを、例えば、約20cmの間隙で進行するため、公差は、典型的には、約1cmである。コントローラ36は、次いで、第1のマップ及び第2のマップが十分に整合する場合にのみロボットシステム10の移動を許可するという信号を送信し得る。
【0044】
[0049]位置測定システム30及び方法40は、航空機12などの大型の移動可能な物体の位置及び向きを、過去のシステムの固定具を必要とすることなく、継続して見つけ出すことを可能にする。ロボットシステム10による作業が、航空機本体のいかなる部分にも損傷を及ぼさないように、及び離陸及び飛行のために信頼される精密な空気力学的形状を維持するように、航空機と接触することなく実施されることが非常に重要であり、位置測定システム30及び方法40は、ロボットシステム10が、任意の航空機12の周りで、それに触れて損傷を及ぼすことなしに、任意の場所で作業することができることを確実にする。
【0045】
[0050]再帰反射材料32、及び円筒状であり常に垂直に吊り下げられている複数のターゲット31の使用は、ターゲットがスキャナ34a、34bにとって可視であること、及びスキャナがバックグラウンドセンサ戻りデータ又は誤ったターゲットからターゲット31を容易にフィルタリングすることができることを確実にする。2つの回転可能及び移動可能なスキャナ34a、34bの使用は、位置及び寸法に関する正確なターゲットデータを取得すること、並びにそのデータを比較して、それが航空機12の位置及び向きをモデル化するために正しいものであることを確実にするためのチェックを可能にする。ターゲット31の数もまた、追加の冗長性をもたらす。位置測定システム30及び方法40の使用は、航空機12の正確な位置及び向きを、それがどこに位置するかにかかわらず、非接触方式でのマッピングを結果としてもたらす。方法40は、例えば、処理中の環境又は他の調整に起因する、位置及び向きの変化が考慮され得るように、航空機12の位置及び向きをリアルタイムモニタリングするために継続的に使用され得る。ターゲット31は、重力に起因して垂直に吊り下がっており、また回転可能であるため、ターゲットが装着されている物体において任意のシフト(位置ずれ)又は動きがあった場合には、ターゲット31は、それに応じてシフトしたり動いたりし、位置測定システム及び方法は、ターゲットのシフト及び動きに応じて位置及び向きを更新することができる。リアルタイムモニタリングの使用はまた、作業中に航空機表面12に対して精密に位置合わせ及び制御されなければならないいくつかの移動部品を伴う、航空機表面12の近くで作業するロボットシステム10にとって極めて有用である。
【0046】
[0051]本方法のいくつかの実施形態において、方法40が関連して使用される航空機12(又は他の乗物)は、マッピングのための別個の部分にゾーン分けされ得る。これは、例えば、翼構造が燃料ありの状態から燃料なしの状態になるとき、航空機12の非剛体変形の検出を可能にし得る。各部分は、独自の参照点及び既知のモデルデータを有し得、以て個々のゾーンに対する方法40の使用を可能にする。航空機12において、これは、例えば、翼及び胴体を別々にゾーン分けするために使用され得る。そのような一実施形態において、ターゲットは、スキャナ34a、34bがマッピングされている特定のゾーンのターゲットのみをスキャンするように、各ゾーンのために異なる構成を有し得る。
【0047】
[0052]本発明は、例示的な実施形態を参照して説明されているが、様々な変更がなされ得、等価物が、本発明の範囲から逸脱することなく、それら実施形態の要素の代わりになり得ることは、当業者により理解されるものとする。加えて、多くの修正は、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況及び物質を本発明の教示に適合させるために行われ得る。したがって、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されないが、本発明は、添付の特許請求の範囲内に入るすべての実施形態を含むことが意図される。