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7364186水質浄化材、水質浄化装置、水質浄化方法、およびフルボ酸固定化複合材の製造方法
<図1>
  • -水質浄化材、水質浄化装置、水質浄化方法、およびフルボ酸固定化複合材の製造方法 図1
  • -水質浄化材、水質浄化装置、水質浄化方法、およびフルボ酸固定化複合材の製造方法 図2
  • -水質浄化材、水質浄化装置、水質浄化方法、およびフルボ酸固定化複合材の製造方法 図3
  • -水質浄化材、水質浄化装置、水質浄化方法、およびフルボ酸固定化複合材の製造方法 図4
  • -水質浄化材、水質浄化装置、水質浄化方法、およびフルボ酸固定化複合材の製造方法 図5
  • -水質浄化材、水質浄化装置、水質浄化方法、およびフルボ酸固定化複合材の製造方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】水質浄化材、水質浄化装置、水質浄化方法、およびフルボ酸固定化複合材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/24 20060101AFI20231011BHJP
   C02F 1/28 20230101ALI20231011BHJP
   C02F 1/58 20230101ALI20231011BHJP
   B01J 20/16 20060101ALI20231011BHJP
   C07K 14/00 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
B01J20/24 B
C02F1/28 A
C02F1/58 L
B01J20/16
C07K14/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019159786
(22)【出願日】2019-09-02
(65)【公開番号】P2021037454
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】305035288
【氏名又は名称】▲高▼味 充日児
(73)【特許権者】
【識別番号】511183917
【氏名又は名称】株式会社 T&G
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼味 充日児
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-086852(JP,A)
【文献】特開平07-204659(JP,A)
【文献】特開平01-189310(JP,A)
【文献】特開2006-159082(JP,A)
【文献】特開2006-328240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28;20/30-20/34
C02F 1/28、1/58
C07K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖にアミノ基を有するポリマーを含む基材と、フルボ酸を含みフミン酸を含まない第一の組成物とを接触させ前記基材にフルボ酸を固定化したフルボ酸固定化複合材を得る接触工程を有する、フルボ酸固定化複合材の製造方法。
【請求項2】
前記第一の組成物が、フルボ酸含有液である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
側鎖にアミノ基を有するポリマーを含む基材に、フルボ酸を固定化させたフルボ酸固定化複合材を含み、かつ、前記フルボ酸固定化複合材がフミン酸を含まないものであり、
1Lの水に前記フルボ酸固定化複合材を1g接触させたとき、接触後の水に含まれたフルボ酸濃度が、0.01mg/L以上である水質浄化材。
【請求項4】
前記ポリマーが、キトサン、ポリリジンおよびポリエチレンイミンからなる群から選択される少なくとも1以上のポリマーである請求項3記載の水質浄化材。
【請求項5】
請求項3または4記載の水質浄化材を充填した層を有する改質槽を有する水質浄化装置。
【請求項6】
前記改質槽の内部に無機多孔質体を有する請求項5記載の水質浄化装置。
【請求項7】
請求項5または6記載の水質浄化装置の改質槽に、改質対象の水を接触させる改質工程を有する水質浄化方法。
【請求項8】
前記改質対象の水が、水道水、井戸水、および地下水からなる群から選択されるいずれかである請求項7記載の水質浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質浄化材、および水質浄化装置、ならびに水質浄化方法に関する。また、本発明は、水質浄化材に用いられるフルボ酸固定化複合材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水道水には消毒等のために用いられた残留塩素などが含まれている。この残留塩素は、カルキ臭の原因や人体への悪影響などが懸念されるため、飲用するときに除去できることが好ましい。また、健康志向の高まりから、飲用や料理など生活の多くの場面で用いられる水道水等の水をよりよいものとすることが求められている。例えば、水道水に含まれる残留塩素等は、酸化力を有している。この酸化力は、老化や病気の原因の一つとも考えられている。
【0003】
水道水の品質を向上させる手法が、種々検討されている。水道水の品質を向上させる浄水器としては、蛇口直結型のものや、据置型、ポット型、シャワーノズル型などの設置方式のものが市販化されている。また、単に水道水に含まれる有害物質を除去するだけでなくアルカリイオン水を提供するものなど、水質を調製するものも市販化されている。これらの浄水器等のろ材は、活性炭や中空糸膜などが採用されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、カートリッジ内部に中空糸膜繊維状束をUの字状に折曲した状態で収容した内部ケースを備えた浄水器用カートリッジにおいて、前記中空糸膜繊維状束は、捩じられていることを特徴とする浄水器用カートリッジを開示している。
【0005】
また、特許文献2は、活性炭を用いて主に水道水中の残留塩素の除去を目的として原水が活性炭に均等に接触し活性炭の除去性能を最大限ならしめるべく、原水の流入部、浄水部流出部において流入部は原水が流入断面における流速が一定になるよう断面全般にわたり均等な開口部を設け活性炭素の中央部近傍においては該断面における流速がほぼ一定になるよう壁面流水抵抗が少ない中心部近傍に流速の過大を阻止する遮へい部を設け、流出部は活性炭の流出を防止するフイルターを設けると共に、該フイルターの表面積を大とし活性炭及び水中の異物の詰りによる流水抵抗の増大を防ぐ為に凹状となし、しかも短絡流による流速の不均等化を防止する目的でフイルターの案内流板を設けたことを特徴とする浄水器を開示している。
【0006】
特許文献3は、抗酸化能力を有する飲料水であって、飲料水原水に腐植前駆物質水溶液を添加し、攪拌混合後、数時間静置することで抗酸化能力を有することを特徴とする、飲料水を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平6-142650号公報
【文献】特開昭59-183883号公報
【文献】特開2009-292780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
水道水に含まれる残留塩素の除去などができる浄水器が求められている。特許文献1~2のような種々の浄水器が提案され、市販されている各種浄水器等もあるが、浄水器の設計の自由度や、浄化後の水の品質向上などの観点から、新たな手法の浄水器も求められている。また、特許文献3のように飲料水を改質するものが開示されているが、水道水等を利用するとき適宜改質する手法等も求められている。
係る状況下、本発明の目的は、水の酸化力を低減して品質が向上した水を得ることができる浄水器用の浄化材等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0010】
<1> 側鎖にアミノ基を有するポリマーを含む基材に、フルボ酸を固定化させたフルボ酸固定化複合材を含む水質浄化材。
<2> 前記ポリマーが、キトサン、ポリリジンおよびポリエチレンイミンからなる群から選択される少なくとも1以上のポリマーである<1>記載の水質浄化材。
<3> <1>または<2>記載の水質浄化材を充填した層を有する改質槽を有する水質浄化装置。
<4> 前記改質槽の内部に無機多孔質体を有する<3>記載の水質浄化装置。
<5> <3>または<4>記載の水質浄化装置の改質槽に、改質対象の水を接触させる改質工程を有する水質浄化方法。
<6> 前記改質対象の水が、水道水、井戸水、および地下水からなる群から選択されるいずれかである<5>記載の水質浄化方法。
【0011】
<7> 側鎖にアミノ基を有するポリマーを含む基材と、フルボ酸を含む第一の組成物とを接触させ前記基材にフルボ酸を固定化したフルボ酸固定化複合材を得る接触工程を有する、フルボ酸固定化複合材の製造方法。
<8> 前記第一の組成物が、フルボ酸含有液である<7>記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の浄化材等によれば、水の酸化力を低減して品質が向上した水を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一の実施形態に係る水質浄化装置の概要図である。
図2】本発明に係る水質浄化装置の製造に用いる製造装置の概要図である。
図3】本発明の実施例に係る水質浄化装置により水道水を処理したときの処理された水道水に含まれるフルボ酸濃度を示す図である。
図4】本発明の実施例に係る水質浄化装置により水道水を処理したときの処理された水道水のORP値を示す図である。
図5】本発明の実施例に係る水質浄化装置により水道水を処理したときの処理された水道水に含まれる残留塩素濃度を示す図である。
図6】実施例に係る水質浄化装置の改質槽を撮像した像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0015】
[本発明の水質浄化材]
本発明の水質浄化材は、側鎖にアミノ基を有するポリマーを含む基材に、フルボ酸を固定化させたフルボ酸固定化複合材を含む。
【0016】
[本発明の水質浄化装置]
本発明の水質浄化装置は、側鎖にアミノ基を有するポリマーを含む基材に、フルボ酸を固定化させたフルボ酸固定化複合材を含む水質浄化材を充填した層を有する改質槽を有するものとすることができる。
【0017】
[本発明の水質浄化方法]
本発明の水質浄化方法は、側鎖にアミノ基を有するポリマーを含む基材に、フルボ酸を固定化させたフルボ酸固定化複合材を含む水質浄化材を充填した層を有する改質槽を有する水質浄化装置の改質槽に、改質対象の水を接触させる改質工程を有するものとすることができる。
【0018】
[本発明のフルボ酸固定化複合材の製造方法]
本発明のフルボ酸固定化複合材の製造方法は、側鎖にアミノ基を有するポリマーを含む基材と、フルボ酸を含む第一の組成物とを接触させ前記基材にフルボ酸を固定化したフルボ酸固定化複合材を得る接触工程を有する。
なお、本願において本発明のフルボ酸固定化複合材の製造方法により製造されたフルボ酸固定化複合材は、本発明の水質浄化材に用いることができる。また、本発明の水質浄化材は、本発明の水質浄化装置に用いることができる。また、本発明の水質浄化装置を用いて、本発明の水質浄化方法を行うことができる。本願において、これらのそれぞれの発明のそれぞれに対応する構成は相互に利用することができる。
【0019】
本発明は、フルボ酸を水道水などの水と接触させることで、その水を改質することができることを利用するものである。本発明者は、水道水などの水とフルボ酸を接触させるにあたって、フルボ酸の固定化を検討した。フルボ酸は、腐植物質のうち、アルカリに可溶であり、かつ、酸に可溶な成分である。このフルボ酸には多様な機能が期待できると考えられ、本発明者らは水道水などの流水と継続して接触させる手法を検討した。そこで、フルボ酸を、キトサン等を基材として接触させて固定化させ、このフルボ酸が固定化した複合材を利用することを考えた。ここで、フルボ酸は官能基としてカルボキシル基等を有し、一方でキトサンは側鎖にアミノ基を有している。このフルボ酸のカルボキシル基とキトサンの側鎖のアミノ基が反応することで、アミド結合や静電的相互作用により固定化すると考えられる。そして、このように所定の基材にフルボ酸を固定化することで、継続して流水等と接しながら、その流水の水質を改善することができる水質改善材を得ることができることを見出した。
【0020】
[フルボ酸固定化複合材]
フルボ酸固定化複合材は、基材にフルボ酸を固定化させたものである。このフルボ酸固定化複合材は、本発明の水質浄化材などに用いられる。例えば、図1は、フルボ酸固定化複合材を含む水質浄化材を用いた水質浄化装置の概要図である。水質浄化装置10は、フルボ酸固定化複合材を含む水質浄化材1を有する。また、水質浄化装置10は、さらに、無機多孔質体2を有する。水質浄化装置10は、カラム31の底部にフィルター32を設けてあり、フィルター32の上部に無機多孔質体2の層と、その上層にさらに、水質浄化材1の層を設けてある。この水質浄化装置10は、カラム31の上部の配管41から水を供給すると、水質浄化材1の層と、無機多孔質体2の層を通り、配管42から、改質された水を効率よく回収することができる。
【0021】
[腐植物質]
腐植物質は、生物の死後、生物体有機物が微生物的・化学的作用を受けて崩壊した「化学構造が特定されない有機物(非生体有機物)」の総称と言われている。この腐植物質についても、機能性を示すものと、機能性を示さないものとがあることが経験的に知られており、これは、その自然界の有機物である生物体有機物が、土へ還ろうとするときの中間生成物が含まれるか否かの影響が大きいものと考えられる。この中間生成物を含むとき、すなわち機能性を示す腐植物質については、腐植前駆物質と呼ばれることがある。(内水護「自然と輪廻 土・自然・人間・社会 ベーシック文明論」18-28頁,漫画社,1986)
【0022】
ここで腐植前駆物質や腐植物質(腐植物)には、その成分の腐植化度合(重縮合反応化度合)として、ヒュミンやフルボ酸、フミン酸等が含まれていることが知られている。そして、一般的な腐植物質において、フルボ酸とフミン酸との比率は2:8程度の重量比で含まれている。本発明においては、このフルボ酸を利用する。
【0023】
フルボ酸自体は、フェノール及び/又はフェノール露出基のある化合物を含む代謝産物を、有機物等と反応させることで生じる腐植物質(特に腐植前駆物質)の内、酸およびアルカリへの溶解性からフミン酸と区別されるものの、様々な構造を有する有機物等の混合物である。
【0024】
[フルボ酸含有液]
本発明にはフルボ酸含有液を用いることが好ましい。フルボ酸含有液は、一般的な腐植物よりもフルボ酸が高比率で含有されており、フミン酸等の含有量が低いものである。フルボ酸含有液を第一の組成物として用いることで、基材への固定化が効率よく行われる。このようなフルボ酸含有液としては、例えば、株式会社T&Gのリードアップなどを用いることができる。
【0025】
[フルボ酸およびフミン酸]
なお、本願におけるフルボ酸およびフミン酸は、日本腐植物質学会の属する国際腐植物質学会(IHSS)の分類に基づき、生物体有機物が微生物的・化学的作用を受けて崩壊して生じる化学構造が特定されていない有機物(非生体有機物)である腐植物のうち、アルカリ・酸に対する溶解性での分類を行う。すなわち、フルボ酸は、アルカリに可溶であり、かつ、酸に可溶な成分である。一方、フミン酸は、アルカリに可溶であるが、酸に不溶な成分である。なお、ヒュミンは、アルカリに不溶であり、かつ、酸に不溶な成分である。
【0026】
[フルボ酸濃度・腐植化度の測定例]
フルボ酸含有液等に含まれているフルボ酸の程度は、フルボ酸が混合物質であり、かつ他の有機物の有無の影響も大きいため具体的な成分ごとの濃度で規定することが適切ではなく、具体的な数値では規定しにくい場合がある。
【0027】
フルボ酸抽出液より、国際腐植物質学会(IHSS)の方法に従い疎水性様物質を分離・精製し、この物質が日本腐植物質学会(JHSS)より頒布されている標準フルボ酸と類似した物理化学的特性(吸収、FTIR、3D蛍光スペクトル、固体NMR等)をもつことが確認されている。
【0028】
このフルボ酸は、その指紋的特性として、3D蛍光スペクトルに励起波長(Ex)310nm近傍、蛍光波長(Em)410nm付近に蛍光ピークを示す。
【0029】
このフルボ酸の指紋的特性を利用して、簡易的に溶存有機物溶液のフルボ酸濃度を算出する。そのため、一次加工した腐植前駆物質の抽出液をIHSS法により分離・精製したフルボ酸(BF)を用いて、濃度10mg/L~100mg/Lのフルボ酸溶液を調製する。10μg/L硫酸キニーネのEx350nm/Em455nmにおける蛍光強度に対するフルボ酸のEx310nm/Em410nmにおける蛍光の相対強度とBF濃度の関係を検量線として、任意の溶存有機物溶液に対しては適度に希釈あるいは濃縮して、フルボ酸濃度を算出する。例えば、現在販売されているフルボ酸液(商品名「リードアップ」(株式会社T&G))のフルボ酸含有量は約1000ppmと評価されている。
【0030】
また、そのフルボ酸の品質である腐植化度の指標として、3D蛍光スペクトルのピークの蛍光強度(FI)とその励起波長に対応する吸光度(Abs)の比、FI/Absを評価することも有効である。この量は、見かけの量子収率QYappを表しており、フルボ酸の構成部分構造の疎水性多環芳香族成分の成長度に依存している。本発明に用いるフルボ酸(BF)のQYappは、JHSSから頒布されている標準試料・段戸フルボ酸のQYappに比べ、この標準試料よりもQYappが高いほうが好ましく、標準試料よりも2倍以上QYappが高いほうがより好ましい。
【0031】
なお、一般的な汚水等の有機性物質含有液の腐植化が進まない段階では、QYapp値はほとんど0に近い。なお、QYapp値は腐植化度に関するフルボ酸の品質の指標であるとともに、抗酸化性の活性にも相関する。
【0032】
一方、フミン酸の含有については、フミン酸を特定する精製や分析を行ってその濃度を基に判断することができる。この判断を簡易的に行う場合、前述したフルボ酸の測定同様、3D蛍光スペクトルの特性による確認できる。フミン酸の場合、Ex285nm/Em545nm、Ex360nm/Em545nm、Ex445nm/Em540nmの3ヵ所にピークが検出される。本発明に用いるフルボ酸含有液には、フミン酸に相当するピークは確認されていない。なお、本発明に用いるフルボ酸やフルボ酸含有液については、特許第6026631号公報に開示の技術も参照して、利用することができる。
【0033】
[基材]
本発明は、側鎖にアミノ基を有するポリマーを含む基材を用いる。このようなポリマーとしては、例えば、キトサン、ポリリジン、ポリエチレンイミンからなる群から選択される1以上のポリマーを含む基材を用いることができる。キトサンや、ポリリジン、ポリエチレンイミンは、側鎖にアミノ基を有している。フルボ酸のこれらの基材による固定化については、フルボ酸の官能基・カルボキシル基(-COOH(解離により-COO-、アニオン性)と、基材の官能基・アミノ基(-NH2(-NH2+H+→-NH3 +、カチオン性)の反応により、-COO- + -NH3 + →-CONH-(アミド結合)+H2O(化学結合)および、-COO-:-NH3 +の静電的相互作用により固定化されると考えられる。
【0034】
[キトサン]
キトサンは、多糖類の一種で、ポリ-β1→4-グルコサミンである。キトサンの一般式を式(1)に示す。キトサンは、分子量が数千から数十万に及ぶ高分子である。例えば、カニやエビなどの甲殻類の外骨格から得られるキチンを、濃アルカリ中での煮沸処理等により脱アセチル化して得ることができる。繊維や、フィルム、粒状、発泡素材の形状とすることができる。生物資源由来の原料より生産されるため、原料が枯渇しにくいと考えられ、かつ、人体等に副作用が生じるおそれが低い。本発明においては、基材として用いることができる任意の形状のキトサンを用いることができる。特に、粒状や発泡素材の形状のものが好ましく用いられる。
【0035】
【化1】
【0036】
[ポリリジン]
ポリリジン(ε-ポリリジン)は、L-リジンのホモポリマーである。ポリリジンの一般式を式(2)に示す。一般的に、ポリリジンは細菌による発酵等により製造される。ε-ポリリジンは親水性アミノ基を含み、水中では正に帯電する。ポリリジンは、天然物系食品添加物として保存料や保湿剤等として用いられてものなどを用いることができる。
【0037】
【化2】
【0038】
[ポリエチレンイミン]
ポリエチレンイミンは、アミンと脂肪族スペーサーの繰り返し単位からなるポリマーである。ポリリジンの一般式を式(3)に示す。直鎖状ポリエチレンイミン、分岐状ポリエチレンイミンのいずれを用いてもよく、これらは、第二級アミン、あるいは第一級~第三級アミンを含む。ポリエチレンイミンは、ポリカチオンの性質を利用したものなどの各種工業的手法で生産されているものを用いることができる。
【0039】
【化3】
【0040】
側鎖にアミノ基を有するポリマーは、水中で粉末や粒状となる固形となるものを用いてもよい。また、基材は、側鎖にアミノ基を有するポリマーからなるものとしてもよいし、他の材質と組み合わせて用いてもよい。このとき、適宜、側鎖にアミノ基を有するポリマーを他の材質に固定化して用いてもよい。例えば、ポリウレタン繊維などを固定化するための材質として用いて、これらの材質に担持させたものを用いてもよい。側鎖にアミノ基を有するポリマーとして、水溶性ポリマーなどを用いる場合、側鎖にアミノ基を有するポリマーを固定化させるための材質に、フタル酸などの化学物質を含浸させ、これに水溶性ポリマーを架橋結合させて固定化させて用いることもできる。
【0041】
[フルボ酸固定化複合材]
フルボ酸固定化複合材は、側鎖にアミノ基を有するポリマーを含む基材にフルボ酸を固定化させたものである。この固定化は、フルボ酸固定化複合材を水に接触させたとき、フルボ酸が微量に水中に徐放される程度の固定でよい。このためフルボ酸固定化複合材において、基材にフルボ酸が固定化されているかは、フルボ酸固定化複合材を、水に浸漬させたとき、水にフルボ酸が溶け出して水にフルボ酸が含まれたものとなることと、この溶け出しが一定の時間継続することをもって確認することができる。
【0042】
例えば、1Lの水にフルボ酸固定化複合材を1g接触させたとき、接触後の水にフルボ酸が含まれていることを確認することで、フルボ酸が含まれたものとなることを確認でき、この濃度は例えば、0.01mg/L以上や、0.05mg/L以上、0.1mg/L以上のような下限を設けて確認してもよい。
【0043】
また、一定の時間継続することの確認は、例えば、1gのフルボ酸固定化複合材に10Lの水を通液しながら接触させた後も、その10L通液時の水に、上述したような濃度のフルボ酸が溶け出して含まれていることで、安定して一定の時間継続するものとしてもよい。
【0044】
フルボ酸固定化複合材に固定されるフルボ酸の量は、水質浄化材として使用するときに求められる浄化能力や、基材の種類等を考慮して、適したものとすればよい。例えば、フルボ酸固定化複合材におけるフルボ酸濃度(フルボ酸の質量/フルボ酸固定化複合材の質量)として、1.0mg/g以上や、5.0mg/g以上、10.0mg/g以上、20.0mg/g以上のような下限を設けてもよい。また、この上限は特に定めなくてもよいが、フルボ酸の固定化量を向上させるための製造条件の制限等を鑑みて、2,000mg/g以下や、1,000mg/g以下、800mg/g以下、500mg/g以下のような上限を設けてもよい。
【0045】
特に制限がないときは、製造時の固定化されたフルボ酸量と、固定化されず排出されたフルボ酸量とから算出して、固定化相当量として求めた値をフルボ酸固定化複合材に固定されるフルボ酸の量として用いる。この測定が難しい場合、このフルボ酸固定化複合材におけるフルボ酸濃度は、固定化されているフルボ酸を水に溶けださせて、その水に含まれているフルボ酸濃度を積算して求めてもよい。また、簡易的には、フルボ酸固定化複合材をNaOH溶液等のアルカリ溶液に浸漬させて加水分解させ、フルボ酸を離脱・回収して評価してもよい。
【0046】
また、フルボ酸固定化複合材は、フミン酸を含まないことが好ましい。フミン酸が含まれる場合、水道水などに含まれる残留塩素と反応し、有毒なトリハロメタンを生成する恐れがある。フミン酸を含まないものとするために、フルボ酸を固定するにあたり、フルボ酸を含む第一の組成物として、フルボ酸純度が高く、フミン酸を含まないものを選択的に用いることが好ましい。このフルボ酸固定化複合材におけるフミン酸の固定化量は、10mg/g未満や、5mg/g未満、1mg/g未満、0.5mg/g未満とすることが好ましく、検出下限以下であることがより好ましい。
【0047】
[水質浄化材]
本発明の水質浄化材は、フルボ酸固定化複合材を含む。水質浄化材は、フルボ酸固定化複合材からなるものとしてもよいし、他の材を含むものとしてもよい。他の材としては、フルボ酸固定化複合材以外の他の水質浄化材や、フルボ酸固定化複合材を担持するもの、処理対象となる水の流通を促進したり抑制したりさせて処理時間を調整するためのものなどがあげられる。この水質浄化材は、人体などへの有害物質の除去や水の酸化を還元し、かつ細胞に蓄積する活性酸素種の除去を図りながら細胞の生理的活性を促すことができる浄水器用の浄化材等として有用である。
【0048】
[水質浄化装置]
本発明の水質浄化装置は、水質浄化材を充填した層を有する改質槽を有する。前述のように、図1は、フルボ酸固定化複合材を含む水質浄化材を用いた水質浄化装置の概要図である。この水質浄化装置10は、フルボ酸固定化複合材を含む水質浄化材1を有する。水質浄化装置10は、この水質浄化材1を含むことで、この水質浄化材1と、処理対象の水道水などの水が接触して、この水道水などの水が浄化される。カラム31は、水質浄化材1を充填した層を有するため、改質槽として機能する。水質浄化材1を充填した層は、処理対象の水の水流の流速や、処理量、フルボ酸固定化複合材に固定化されたフルボ酸量などを考慮して、適宜、その層の厚みなどを調節して容積が設定される。
【0049】
例えば、水質浄化材を充填した層の容積(V1)に対して、処理対象の水の最大流速(Fm)に基づいて、滞留時間(Tx=V1(L)/Fm(L/秒))は、0.1秒以上や、0.2秒以上、0.5秒以上、1秒以上となるようなものとしてもよい。また、滞留時間(Tx=V1/Fm)の上限は特に定めなくてもよいが、30分以下や、20分以下、10分以下となるようなものとしてもよい。
【0050】
[無機多孔質体]
本発明の水質浄化装置は、改質槽の内部に無機多孔質体を有することが好ましい。この無機多孔質体は、改質槽内に任意の態様で配置するものとしてもよく、フルボ酸固定化複合材と混合された状態で配置してもよいし、無機多孔質体の無機多孔質層として配置してもよい。層状に設けるとき、水質浄化材を充填した層の上流側、下流側のいずれに設けることもできる。図1に示す水質浄化装置10は、無機多孔質体2を含む無機多孔質層を有する。このような無機多孔質層を有することで、水質浄化装置から、フルボ酸固定化複合材などの水質浄化材の一部が流失することをより確実に防止することができる。また、無機多孔質体は、処理される水にミネラル(カルシウム、マグネシウム、鉄など)を補充するものとしても機能する。
【0051】
[シリケイト化合物]
この無機多孔質体は、シリケイト化合物であることが好ましい。ここで、本願におけるシリケイト化合物とは、珪藻土など由来の活性珪酸に、アルミニウムや鉄を含んだものをいう。例えば、安山岩質もしくは流紋岩質の岩石に由来したものを好適に用いることができる。また、人工物である活性硅酸に鉄、アルミニウムなどの金属を天然物に含まれているものと同等以上の割合となるように混合したものを用いることもできる。
【0052】
このシリケイト化合物に含まれるアルミニウム量は、酸化アルミニウム(Al23)として、5質量%以上が好ましい。酸化アルミニウム量として、10質量%以上がより好ましく、11質量%以上、12質量%以上としてもよい。酸化アルミニウム量として、十分に活性珪酸や鉄を含む範囲で上限を定めなくてもよいが、30質量%以下や、25質量%以下、20質量%以下としてもよい。
【0053】
このシリケイト化合物に含まれる鉄量は、酸化鉄(酸化第一鉄および酸化第二鉄の総量)として、3質量%以上が好ましい。酸化鉄量として、4質量%以上がより好ましく、4.5質量%以上、5.0質量%以上としてもよい。酸化鉄量として、十分に活性珪酸や酸化アルミニウムも含む範囲で上限を定めなくてもよいが、30質量%以下や、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下としてもよい。
【0054】
また、シリケイト化合物は、ケイ酸(シリケイト)を50質量%以上含有するものとすることができる。また、塩基置換機能が、100meq/100g(乾土)のものとすることができる。
【0055】
シリケイト化合物は、鉄や、アルミニウム等のミネラル成分となる成分も含んでいることで、シリケイト化合物は、水にミネラル成分を供給することができ無機多孔質体として特に適している。また、水質浄化を促進する材質としても機能することができる。
【0056】
[フルボ酸固定化複合材の製造]
本発明のフルボ酸固定化複合材の製造方法は、側鎖にアミノ基を有するポリマーを含む基材と、フルボ酸を含む第一の組成物とを接触させ前記基材にフルボ酸を固定化したフルボ酸固定化複合材を得る接触工程を有する。
【0057】
[接触工程]
この接触工程は、基材と、第一の組成物とを接触させる工程である。基材は、側鎖にアミノ基を有するポリマーを含むものであり、例えば、キトサンやポリリジン、ポリエチレンイミンなどを用いることができる。これらのポリマーを用いるとき、キトサン単独でもよいし、ポリリジン単独でもよいし、ポリエチレンイミン単独でもよいし、これらを組み合わせて用いてもよい。また、キトサン等に加えて、他の担体となる材等を組み合わせて用いてもよい。他の担体等としては、多孔質担体や、水溶性ポリマー粒子、水分散性ポリマー粒子等を用いることができる。
【0058】
第一の組成物は、フルボ酸を含む。この第一の組成物は、フルボ酸からなるものとしてもよいが、一般的にフルボ酸は、混合物質であり、腐植物質等を原料として入手され、他の物質と混合した状態で用いられることから、これらを合わせた概念として以下、組成物として説明する。
【0059】
第一の組成物は、フルボ酸を溶解や分散させることができ、基材と接触させやすいものとなるように、フルボ酸と、適宜その他の物質とを組み合わせた組成物として用いることができる。特に、溶媒や分散媒となる液体に、フルボ酸を溶解・分散させた液状の組成物として用いることが好ましい。第一の組成物は、液状とすることで、基材と接触しやすくかつ基材に固定化されやすい状態となる。
【0060】
基材とフルボ酸との固定化は、フルボ酸の官能基と、基材のアミノ基等とが乖離した状態で、静電気的な結合等により起こりやすいと考えられることから、第一の組成物は、極性が高い液体を含むことが好ましい。また、用いた液体等は、フルボ酸固定化複合材に残存し、水質改善材として用いるとき、水に移行する可能性もあることから人体に対する毒性が低いものであることが好ましい。このような観点から、第一の組成物は、溶媒や分散媒として水やアルコールなどを用いることが好ましい。
【0061】
第一の組成物は、第一の組成物におけるフルボ酸濃度は、10mg/kg以上であることが好ましく、100mg/kg以上、300mg/kg以上、500mg/kg以上などとしてもよい。フルボ酸はその物性との関係から、フルボ酸濃度を極端に高いものとすることが難しい場合もあることから、50,000mg/kg以下や、30,000mg/kg以下、10,000mg/kg以下のような上限を設けてもよい。第一の組成物が媒質を水とするとき、前記フルボ酸濃度は、mg/kgに代えmg/Lとみなして前述の範囲としてもよい。第一の組成物は、その組成物全量においてフルボ酸と水とが占める割合が95質量%以上や98質量%以上のような実質的にフルボ酸と水からなるフルボ酸水溶液として用いることが好ましい。
【0062】
接触工程において、基材と、第一の組成物との接触は、それぞれの形状等に応じて、任意のものとしてよい。基材は固体のものを用いて、第一の組成物は液状のものを用いると、より効率的に接触させることができる。このような基材と、第一の組成物との接触は、例えば、第一の組成物に基材を浸漬させたり、所定の時間浸漬させたら第一の組成物を取り換える回分的な浸漬としたり、カラム等に配置した基材に対して第一の組成物を連続的に流通させたりすることができる。
【0063】
図2は、フルボ酸固定化複合材の製造を説明するための概要図である。カラム33内に基材6を充填する。タンク51に収容された第一の組成物5を、配管43から連続的にカラム33に供給する。カラム33内の基材6は連続的に第一の組成物5と接触して、第一の組成物5に含まれるフルボ酸を固定化する。配管43から供給され過剰な液は、カラム33の端部から配管44を介して排出される。このカラム33内で、基材6と、第一の組成物5を接触させることで、基材6に第一の組成物5に含まれるフルボ酸が固定され、フルボ酸固定化複合材を得ることができる。
【0064】
接触工程における基材と、第一の組成物との比率は、製造するフルボ酸固定化複合材のフルボ酸濃度や、それぞれの原料等を考慮して、適宜設定することができる。接触時の条件等にもよるが、フルボ酸を含む第一の組成物と基材とを接触させたとき、全フルボ酸が基材に固定化されずに、第一の組成物の媒質中に含まれるフルボ酸濃度と、基材に固定化されるフルボ酸濃度とは、所定の濃度で平衡に達することが多いため、第一の組成物に含まれるフルボ酸の20質量%~80質量%程度が、基材に固定されるものと仮定して、接触時の比率を調整することが好ましい。また、入手しやすい第一の組成物に含まれるフルボ酸濃度が限られ、基材に対するフルボ酸の固定化量の比率等も鑑みて、基材に対して、第一の組成物の方が十分に多い状態で接触させることが好ましい。
【0065】
例えば、接触させる質量の比率について、第一の組成物1kgに対して接触させる基材は、500g以下や、200g以下、100g以下のように、第一の組成物に基材が十分に浸漬等して接触するものとしてもよい。第一の組成物に対する基材の接触量が減少すると、基材に固定化されるフルボ酸量も飽和するため、第一の組成物1kgに対して接触させる基材は、0.01g以上や、0.05g以上、0.1g以上、0.5g以上、1.0g以上のような下限を設けてもよい。
【0066】
または、第一の組成物に含まれるフルボ酸の総量と、基材との質量比に基づいて、基材1gに対して接触させるフルボ酸相当量が5mg以上や、10mg以上、50mg以上、100mg以上となるように接触させるものとしてもよい。基材1gに固定化できるフルボ酸濃度は一定の濃度で飽和する場合があるため、基材1gに対して接触させるフルボ酸相当量が2000mg以下や、1000mg以下、800mg以下のような上限を設けてもよい。
【0067】
基材と、第一の組成物との接触時間は、固定化させる量等を考慮して適宜設定してよい。例えば、0.5時間以上や、1時間以上、2時間以上、3時間以上のような時間接触させてもよい。また、特に接触時間の上限を設けなくてもよいが、接触時間が長すぎても固定化量は飽和し、製造効率が低下するため、10日以下や、5日以下、2日以下程度としてもよい。
【0068】
基材と第一の組成物とを接触させるときの温度や圧力などは特に指定はなく、任意の条件としてもよい。基材へのフルボ酸の固定化は、常温・常圧でもおこるため、製造装置の簡素化などの観点からは、温度を10℃~40℃や、20℃~35℃程度で管理してもよい。また、圧力も常圧程度としてよい。また、基材の内部への第一の組成物の浸透などを促進するためなどの観点から、加圧下や減圧下で接触させてもよいし、温度も適宜変更してもよい。
【0069】
基材と第一の組成物とを接触させて、フルボ酸固定化複合材が得られていることは、例えば、第一の組成物と接触させている基材を取り出し、純水などに浸漬させて、その純水中にフルボ酸が溶出して検出されるようになるかをもって確認することもできる。
【0070】
[水質浄化]
本発明の水質浄化材を、処理対象の水と接触させることで、処理対象の水を浄化することができる。水質浄化は、水を含む容器(例えば、各種ボトル等)に水質浄化材を混合して、所定の時間処理させても処理後の水を用いることができる。処理された水を利用した後は、水質浄化材を回収して他の容器に入れたり、初めの容器に水質浄化材を入れたまま新たな処理対象の水を入れて、水質浄化してもよい。また、水質浄化は、水質浄化装置の改質槽に、改質対象の水を接触させる改質工程を有する水質浄化方法とすることが効率的である。水質浄化装置は、筒状などの流路に水質浄化材を充填した層を有し、この筒状の流路の一端から処理対象の水を入れて、筒内で水質浄化材と接触して改質され、筒状の流路の他端から改質された水を得ることができる。
【0071】
処理する液量は、処理対象の水の質や、フルボ酸固定化複合材に固定化しているフルボ酸の濃度や固定化の程度、改質したい程度などに応じて適宜設定することができる。例えば目安としては、水質浄化材に用いられているフルボ酸固定化複合材の量に対して処理される水の量で求める比(処理される水の量/フルボ酸固定化複合材の量)が、その下限を1L/g以上や、5L/g以上、10L/g以上などとすることができる。その上限は、1000L/g以下や、500L/g以下、200L/g以下などとしてもよい。
【0072】
処理された水は飲用などに特に適したものとなるため、処理対象の水は水道水や井戸水、地下水などとすることが好ましい。処理前の水が水道水のように残留塩素を含む場合その濃度を低減でき、さらに処理された水は処理前の水の酸化力を低減して品質が向上したものとなる。また、地下水などを対象とする場合、大腸菌等の低減にも有効である。
【0073】
このように処理された水は、ヒトの飲用とすることで、活性酸素の除去等による生活習慣病対策効果等が得られる。また、家畜等の飲用水や飼育に用いる水とすると、畜舎内の悪臭の抑制やハエなどの害虫発生の抑制、ストレス低減、罹病抑制効果等が得られ、肉や乳製品、卵などの畜産物等の品質が向上する。
【実施例
【0074】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0075】
[試薬等]
基材(1):ダイキトサン100D(大日本精化工業株式会社)
無機多孔質体(1):グリーンタフ基材(シリケイト化合物、粒径約5mm、酸化アルミニウムを13.7質量%含有し、酸化鉄(第一鉄)を1.0質量%、酸化鉄(第二鉄)を5.0質量%含有)
フルボ酸溶液(1):腐植前駆物質水溶液・リードアップ(登録商標)(株式会社T&G)、フルボ酸濃度1,000mg/L
超純水:Milli-Q(超純水装置Milli-Q Direct8(日本ミリポア株式会社))
【0076】
[評価方法等]
分光光度計:UVmini-1240(株式会社島津製作所)
ORP計:ポータブル型水質計D72S(株式会社堀場アドバンスドテクノ)
ORP測定用電極9300-10D(株式会社堀場アドバンスドテクノ)
ORP標準液:ORP標準液(東亜ディーケーケー株式会社)
残留塩素測定:簡易水質測定器、残留塩素測定器、DPD法(柴田科学株式会社)
TDS測定器:コンパクト電気伝導率計 LAQUAtwin(株式会社堀場製作所)
【0077】
[製造例1]
(1)基材の前処理
基材(1)(ダイキトサン100D)5.0gと、超純水200mLを、500mLビーカーに加えて懸濁し、蓋をしてガスコンロで加熱し30分煮沸した。
煮沸後、放冷して、オープンクロマトカラム(内径20mm、長さ300mm)にキトサンを充填(BET容積50mL)し、超純水を流通させて洗浄した。この洗浄後の基材(1)を充填したカラムを、基材充填カラムとする。
【0078】
(2)基材へのフルボ酸の固定化
基材充填カラムに、フルボ酸溶液(1)を流速2.0mL/minで流通させ、フルボ酸溶液(1)に含まれるフルボ酸を、基材(1)に固定化した。
基材充填カラムを通過した液の吸光度(波長400nm)を分光光度計で10分ごとに測定し、フルボ酸溶液(1)が基材(1)を含む基材充填カラムを飽和吸着して破過するまで通液させた。破過するまでの通液量と、フルボ酸濃度-吸光度の検量線から、基材充填カラムへのフルボ酸の固定化量を算出した。
フルボ酸溶液(1)による破過後に、カラム内に超純水を流通させ、カラム内の残存していた余剰なフルボ酸溶液を除去して、基材(1)にフルボ酸が十分に固定化された「フルボ酸固定化複合材(1)」を含む「フルボ酸固定化基材カラム(1)」を得た。
【0079】
[評価結果]キトサン(基材(1))のフルボ酸固定化
製造例1のフルボ酸固定化複合材(1)を得る過程で、基材充填カラムを通過した液の吸光度(波長400nm)を分光光度計で10分ごとに測定した結果は、以下のものであった。なお、この吸光度は、通過した液の吸光度が高いほど、フルボ酸を含む液のまま流失していると考えられ、通過した液の吸光度が低いほど、フルボ酸が基材に固定化されていると判断する指標となる。
【0080】
フルボ酸溶液(1)の吸光度は約0.6であった。基材充填カラムを通液下フルボ酸溶液(1)の流通開始時の通過した液の吸光度は約0であった。流通量が約200mLのとき、吸光度は約0.2となった。流通量が約400mLのとき、吸光度は約0.3となった。流通量約720mLのとき、吸光度がフルボ酸溶液(1)と同程度の約0.6となり、その後、吸光度の上昇は見られなかった。
【0081】
このことから、約720mLのフルボ酸溶液(1)の流通量で、基材(1)5gの飽和固定化量に達するものと判断した。ここで流通させた液量と吸光度を積算した値から求められる基材(1)に対するフルボ酸の固定化量(フルボ酸の質量/基材(1)の質量)は、82.6mg/gであった。
【0082】
なお、飽和吸着したフルボ酸固定化複合材(1)を含むフルボ酸固定化基材カラム(1)に、100mL程度の超純水を流通させると、通過した液の吸光度は約0となり、カラム中で基材(1)に吸着していないフルボ酸含有液は置換され、固定化は安定したものであることも確認された。
【0083】
[試験例1]「フルボ酸固定化基材カラム(1)」の水道水改質試験
フルボ酸固定化基材カラム(1)にカラム上部から水道水を初期流速2.0mL/minで3L通液させ、10分毎に通過した液の酸化還元電位(ORP値)、残存塩素濃度、およびフルボ酸濃度を測定した。フルボ酸濃度は、ロータリーエバポレーター(設定温度:50℃)にて20倍に濃縮して液中のフルボ酸濃度を算出した。
その後、水道水を流速1.0mL/minで33L流通し、通過した液2LごとにORP値、残存塩素濃度、およびフルボ酸濃度を算出した。フルボ酸濃度は、前述のように20倍に濃縮して算出した。
【0084】
[評価結果] フルボ酸固定化基材カラム(1)に、水道水を流通させた。カラムを通過した液のフルボ酸濃度を測定した結果を、図3に示す。また、ORP値を、図4に示す。また、残留塩素を図5に示す。
フルボ酸固定化基材カラム(1)を通過させた液は、フルボ酸を含むことが確認された。少なくとも1mg/L以上含まれ、およそ2~7mg/L程度含まれるものとなった。
フルボ酸固定化基材カラム(1)を通過させた液は、ORP値が水道水よりも低いことが確認された。通過させた液のORP値は、300~450mV程度であった。この評価に用いた水道水は、ORP値が680mV程度のものであった。すなわちフルボ酸固定化基材カラム(1)を通過させて処理することで水道水の酸化力が低下することが確認された。
フルボ酸固定化基材カラム(1)を通過させた液は、残留塩素が低下することが確認された。通過させた液の残留塩素は、検出下限程度の0mg/Lであった。
【0085】
[製造例2]
(1)無機多孔質体の前処理
無機多孔質体(1)30gを純水に懸濁させながら洗浄し、上清が透明になるまで洗浄した。
(2)カラムの調製
洗浄した無機多孔質体(1)と、製造例1と同様の操作で製造したフルボ酸固定化複合材(1)とを、オープンクロマトカラム(内径20mm、長さ300mm)に充填した。
洗浄した無機多孔質体(1)約30gをオープンクロマトカラムの下層に配置し、その上層にフルボ酸固定化複合材(1)約5gを充填し、超純水を流通させて洗浄し、「フルボ酸固定化基材カラム(2)」を得た。
その後、このフルボ酸固定化基材カラム(2)の上部から、水道水を流速1.0mL/minで流通させ、通水量1LごとにORP値、残存演奏濃度、フルボ酸濃度を算出した。フルボ酸濃度は、前述のように20倍に濃縮して算出した。
【0086】
[評価結果] 無機多孔質体(1)の層を有するフルボ酸固定化基材カラム(2)に、水道水を流通させた。カラムを通過した液のフルボ酸濃度、ORP値、残留塩素の測定結果を表1に示す。
フルボ酸固定化基材カラム(2)を用いたときも、通過した液は、水道水よりも大幅にORP値、残存塩素が低下し、フルボ酸が含まれていることが確認された。
【0087】
【表1】
【0088】
・TDSの測定値
処理前の水道水のTDSは、140ppmであったが、通過水のTDSは150~160ppmに増加した。このTDSの増加は、鉄やアルミニウム等のミネラル成分の上昇によるものと考えられ、通過水はミネラル成分を処理前の水道水よりも多く含むものとなる。
なお、図6は、本実施例に用いたフルボ酸固定化基材カラム(2)を撮像したものであり、上層にフルボ酸固定化複合材(1)の層を有し、下層に無機多孔質担体(1)の層を有する改質槽である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の水質浄化材や水質浄化装置等は、水道水や井戸水などの水質浄化に利用することができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0090】
1 水質浄化材
10 水質浄化装置
2 多孔質体
31、33 カラム
32 フィルター
41、42、43、44 配管
5 第一の組成物
51 タンク
6 基材
図1
図2
図3
図4
図5
図6