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  • 特許-脈動吸収機能付きコネクタ 図1
  • 特許-脈動吸収機能付きコネクタ 図2
  • 特許-脈動吸収機能付きコネクタ 図3A
  • 特許-脈動吸収機能付きコネクタ 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】脈動吸収機能付きコネクタ
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20231011BHJP
   F02M 55/02 20060101ALI20231011BHJP
   F16L 55/053 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
F02M37/00 321A
F02M55/02 310C
F02M55/02 330C
F16L55/053
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020035968
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021139312
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000233619
【氏名又は名称】株式会社ニチリン
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】原 慎也
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 一斉
(72)【発明者】
【氏名】桝野 哲朗
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-157649(JP,A)
【文献】特開2004-183812(JP,A)
【文献】特開2014-051997(JP,A)
【文献】特開2005-220782(JP,A)
【文献】特開2003-139257(JP,A)
【文献】実開平07-029303(JP,U)
【文献】実開昭60-003269(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00
F02M 55/00~55/04
F16L 55/04~55/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプが挿入される第1開口と、前記第1開口に対向する第2開口とを有するコネクタ本体部と、
前記コネクタ本体部の側面に設けられ、前記コネクタ本体部の内部と連通する流路を有する継手部と、
前記第2開口から前記コネクタ本体部の内部に配置され、流体の脈動を吸収する脈動吸収体と、
前記第2開口を密封するキャップ部と、
を有し、
前記脈動吸収体は、前記キャップ部側の端面から前記キャップ部の方に向かって延びる柱状の突起部を有し、
前記キャップ部の内面には、前記突起部が嵌り込む窪み部が形成されており、
前記突起部の先端部にフランジ部が設けられており、
前記突起部の中央部に嵌るスリットを有して、前記端面と前記フランジ部との間に配置された円板状の円板部材を有し、
前記スリットの幅は、前記フランジ部の外径よりも小さく、
前記円板部材の周縁部が、前記コネクタ本体部と前記キャップ部とで挟まれていることを特徴とする脈動吸収機能付きコネクタ。
【請求項2】
前記円板部材は、その中央部から前記キャップ部の方に向かって延びて、内側に前記突起部を収容するとともに、前記スリット側が開口した筒状の筒状部を有し、
前記フランジ部が、前記キャップ部と前記筒状部とで挟まれていることを特徴とする請求項1に記載の脈動吸収機能付きコネクタ。
【請求項3】
前記脈動吸収体には、前記パイプの挿入方向に沿って伸縮する蛇腹が形成されており、
前記脈動吸収体において、前記蛇腹を形成する部分の肉厚は、前記脈動吸収体における前記パイプの挿入方向の両端部の肉厚よりも薄いことを特徴とする請求項1又は2に記載の脈動吸収機能付きコネクタ。
【請求項4】
前記脈動吸収体において、前記蛇腹を形成する部分の肉厚は、30μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項3に記載の脈動吸収機能付きコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈動吸収機能を有するL字形状のコネクタに関し、特に、燃料用配管などの接続に用いるのに好適な脈動吸収機能を有するL字形状のコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パイプが挿入されるコネクタ本体部の内部に、流体の脈動を吸収する脈動吸収体が配置されたL字形状の脈動吸収機能付きコネクタが開示されている。脈動吸収体は、パイプが挿入される開口からコネクタ本体部の内部に挿入された吸収体保持部材により位置決めされる。具体的には、コネクタ本体部の内面に形成された凸部に、脈動吸収体の一端部に設けられた凹部が嵌り、吸収体保持部材の先端部に、脈動吸収体の他端部に設けられた凹部が嵌ることで、脈動吸収体が位置決めされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-157649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、脈動吸収体の脈動吸収能力を向上させるために、脈動吸収体の肉厚を薄肉化すると、脈動吸収体の変形量が大きくなる。脈動吸収体の変形量が大きくなると、特許文献1のものでは、脈動吸収体の一端部側の凹部がコネクタ本体部の凸部から外れたり、脈動吸収体の他端側の凹部が吸収体保持部材の先端部から外れたりして、脈動吸収体が位置ずれし、そのまま元の位置に戻らなくなる虞がある。
【0005】
本発明の目的は、脈動吸収体の位置ずれを防止することが可能な脈動吸収機能付きコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、パイプが挿入される第1開口と、前記第1開口に対向する第2開口とを有するコネクタ本体部と、前記コネクタ本体部の側面に設けられ、前記コネクタ本体部の内部と連通する流路を有する継手部と、前記第2開口から前記コネクタ本体部の内部に配置され、流体の脈動を吸収する脈動吸収体と、前記第2開口を密封するキャップ部と、を有し、前記脈動吸収体は、前記キャップ部側の端面から前記キャップ部の方に向かって延びる柱状の突起部を有し、前記キャップ部の内面には、前記突起部が嵌り込む窪み部が形成されており、前記突起部の先端部にフランジ部が設けられており、前記突起部の中央部に嵌るスリットを有して、前記端面と前記フランジ部との間に配置された円板状の円板部材を有し、前記スリットの幅は、前記フランジ部の外径よりも小さく、前記円板部材の周縁部が、前記コネクタ本体部と前記キャップ部とで挟まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、円板部材の周縁部が、コネクタ本体部とキャップ部とで挟まれることで、円板部材が固定されている。円板部材は、脈動吸収体のキャップ部側の端面と、突起部の先端部側のフランジ部との間に配置されており、スリットの幅は、フランジ部の外径よりも小さいので、脈動吸収体が大きく変形しても、脈動吸収体の突起部が円板部材から抜けることがない。これにより、脈動吸収体の位置が確実に維持されるので、脈動吸収体の位置ずれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】コネクタの斜視図である。
図2】コネクタの断面図である。
図3A】バルーンおよび円板部材の分解斜視図である。
図3B】バルーンおよび円板部材の組立斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
(コネクタの構成)
本実施形態におけるコネクタ(脈動吸収機能付きコネクタ)は、例えば、インジェクタ(燃料噴射装置、不図示)に、燃料(ガソリンなどの燃料油)を供給するための燃料配管系統において、配管接続に用いられるコネクタである。
【0011】
コネクタ100の斜視図である図1、および、コネクタ100の断面図である図2に示すように、コネクタ100は、L字形状のコネクタである。コネクタ100は、パイプ50が挿入される雌継手部としてのコネクタ本体部1と、雄継手部(継手部)2と、キャップ部3と、を備える。
【0012】
コネクタ本体部1は、パイプ50が挿入される第1開口1aと、第1開口1aに対向する第2開口1bとを有している。雄継手部2は、コネクタ本体部1の側面に設けられ、コネクタ本体部1の内部と連通する流路2aを有している。雄継手部2には、例えば、燃料ホース(不図示)が接続される。
【0013】
コネクタ本体部1は、一体成形品であり、例えば、射出成形により一体成形される。また、コネクタ本体部1および雄継手部2についても同様であり、コネクタ本体部1と雄継手部2とは、例えば、射出成形により一体成形される。なお、本実施形態では、コネクタ本体部1と雄継手部2とが一体成形されているが、コネクタ本体部1と雄継手部2とが一体成形されている必要はなく、例えば、コネクタ本体部1と雄継手部2とが別々に成形されたものを接合してもよい。
【0014】
また、本実施形態では、コネクタ本体部1と雄継手部2とは直交しているが、コネクタ本体部1と雄継手部2とが直交している必要はなく、例えば、コネクタ本体部1と雄継手部2とのなす角度が45度であってもよい。すなわち、上記の「L字形状」とは、コネクタ本体部1と雄継手部2とのなす角度が、90度のものだけを含むのではなく、30度や45度や60度など、様々な角度をなすものも含まれる。
【0015】
キャップ部3は、樹脂製であり、第2開口1bを密封している。
【0016】
また、コネクタ100は、リテーナ4を有している。リテーナ4は、コネクタ本体部1にパイプ50を固定するための部品である。パイプ50の外周面に形成された環状の凸部であるスプール部50aと、リテーナ4とが係合されることで、パイプ50は、コネクタ本体部1に固定(ロック)される。
【0017】
ここで、燃料が流れる雄継手部2の流路2a、コネクタ本体部1の内部、および、パイプ50の流路50bは、燃料ポンプ(不図示)により、常時、高い圧力(燃料圧力)がかかった状態となる。そして、インジェクタから燃料が噴射されると、圧力は下がり、インジェクタの弁が閉じると、圧力は上昇する。この繰り返しにより圧力が変動し、この圧力変動が、燃料(流体)の脈動の原因となる。
【0018】
そこで、図2に示すように、コネクタ100は、バルーン(脈動吸収体)5を有している。バルーン5は、中空の弾性体であって、その材料は、樹脂、ゴムなどである。バルーン5は、第2開口1bからコネクタ本体部1の内部に配置され、燃料(流体)の脈動を吸収する。燃料の圧力変動が、バルーン5により緩和されることで、燃料の脈動が抑えられる。
【0019】
本実施形態のバルーン5には、パイプ50の挿入方向に沿って伸縮する蛇腹が形成されている。バルーン5の外径Dm(図3A参照)は、パイプ50の外径Dpよりも大きい。
【0020】
ここで、バルーン5において、蛇腹を形成する部分の肉厚は、バルーン5におけるパイプ50の挿入方向の両端部の肉厚よりも薄くされている。これにより、バルーン5が伸縮しやすくなるので、バルーン5の脈動吸収能力を向上させることができる。
【0021】
本実施形態では、バルーン5において、蛇腹を形成する部分の肉厚は、30μm以上500μm以下であり、好ましくは50μm以上400μm以下である。これにより、バルーン5がより伸縮しやすくなるので、バルーン5の応答性および屈曲耐久性を向上させることができる。
【0022】
バルーン5および円板部材6の分解斜視図である図3Aに示すように、バルーン5は、柱状の突起部5aを有している。図2に示すように、突起部5aは、キャップ部3側(図中右側)の端面からキャップ部3の方に向かって延びている。キャップ部3の内面には、突起部5aが嵌り込む窪み部3aが形成されている。円板部材6については、後述する。
【0023】
図3Aに示すように、突起部5aの先端部には、フランジ部5bが設けられている。フランジ部5bの外径は、突起部5aの外径よりも大きい。また、コネクタ100は、円板状の円板部材6を有している。円板部材6は、突起部5aの中央部に嵌るスリット6aを有している。スリット6aの幅は、突起部5aの外径と同等かそれよりも僅かに大きく、フランジ部5bの外径よりも小さい。
【0024】
バルーン5および円板部材6の組立斜視図である図3Bに示すように、円板部材6のスリット6aが突起部5aの中央部に嵌められることで、バルーン5に円板部材6が取り付けられる。この状態で、図2に示すように、バルーン5がコネクタ本体部1の内部に配置される。これにより、円板部材6は、バルーン5のキャップ部3側(図中右側)の端面とフランジ部5bとの間に配置される。
【0025】
図2に示すように、キャップ部3で第2開口1bが密封されると、円板部材6の周縁部は、コネクタ本体部1とキャップ部3とで挟まれる。
【0026】
このように、円板部材6の周縁部が、コネクタ本体部1とキャップ部3とで挟まれることで、円板部材6が固定されている。円板部材6は、バルーン5のキャップ部3側の端面と、突起部5aの先端部側のフランジ部5bとの間に配置されており、スリット6aの幅は、フランジ部5bの外径よりも小さいので、バルーン5が大きく変形しても、バルーン5の突起部5aが円板部材6から抜けることがない。これにより、バルーン5の位置が確実に維持されるので、バルーン5の位置ずれを防止することができる。
【0027】
図3Aに示すように、円板部材6は、筒状の筒状部6bを有している。筒状部6bは、円板部材6の中央部からキャップ部3の方(図中右方)に向かって延びている。筒状部6bのスリット6a側は開口している。図3Bに示すように、スリット6aが突起部5aの中央部に嵌められると、筒状部6bは、その内側に突起部5aを収容する。
【0028】
図2に示すように、キャップ部3で第2開口1bが密封されると、バルーン5のフランジ部5bが、キャップ部3と筒状部6bとで挟まれる。
【0029】
このように、フランジ部5bが、キャップ部3と筒状部6bとで挟まれている。これにより、突起部5aの長手方向におけるバルーン5の動きが拘束されるので、バルーン5の位置ずれをより防止することができる。
【0030】
(コネクタの組立方法)
次に、コネクタ100の組立方法について説明する。
【0031】
まず、図3Aに示すように、円板部材6のスリット6aを突起部5aの中央部に嵌める。そして、図2に示すように、円板部材6が取り付けられたバルーン5を、コネクタ本体部1の第2開口1bから、コネクタ本体部1の内部に挿入する。
【0032】
次に、キャップ部3で第2開口1bを密封する。すると、円板部材6の周縁部が、コネクタ本体部1とキャップ部3とで挟まれる。その後、Oリング7、環状のスペーサ8、Oリング7、環状のスペーサ9を、この順で第1開口1aからコネクタ本体部1の内部へ挿入する。なお、本実施形態では、コネクタ本体部1の内部に、Oリング7が2個挿入されているが、Oリング7の個数は、これに限定されることはない。
【0033】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係るコネクタ100によると、円板部材6の周縁部が、コネクタ本体部1とキャップ部3とで挟まれることで、円板部材6が固定されている。円板部材6は、バルーン5のキャップ部3側の端面と、突起部5aの先端部側のフランジ部5bとの間に配置されており、スリット6aの幅は、フランジ部5bの外径よりも小さいので、バルーン5が大きく変形しても、バルーン5の突起部5aが円板部材6から抜けることがない。これにより、バルーン5の位置が確実に維持されるので、バルーン5の位置ずれを防止することができる。
【0034】
また、フランジ部5bが、キャップ部3と筒状部6bとで挟まれている。これにより、突起部5aの長手方向におけるバルーン5の動きが拘束されるので、バルーン5の位置ずれをより防止することができる。
【0035】
また、バルーン5において、蛇腹を形成する部分の肉厚が、バルーン5におけるパイプ50の挿入方向の両端部の肉厚よりも薄くされている。これにより、バルーン5が伸縮しやすくなるので、バルーン5の脈動吸収能力を向上させることができる。
【0036】
また、バルーン5において、蛇腹を形成する部分の肉厚は、30μm以上500μm以下であり、好ましくは50μm以上400μm以下である。これにより、バルーン5がより伸縮しやすくなるので、バルーン5の応答性および屈曲耐久性を向上させることができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に、本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0038】
例えば、コネクタ100の雄継手部2の部分については、この部分が、フランジ継手などにされていてもよい。
【0039】
また、コネクタ100の用途は、燃料用配管などの接続に限られるものではない。例えば、内部に水が流れる配管の接続にコネクタ100を用いてもよい。バルーン5で、水の脈動を抑えることができるとともに、水が凍ったときに、コネクタ100や、これに接続されているパイプの割れを防止することができる。さらには、圧縮空気が流れる配管の接続用に、コネクタ100を用いてもよく、この用途では、圧縮空気の脈動が抑えられる。
【符号の説明】
【0040】
1 コネクタ本体部
1a 第1開口
1b 第2開口
2 雄継手部(継手部)
2a 流路
3 キャップ部
3a 窪み部
4 リテーナ
5 バルーン(脈動吸収体)
5a 突起部
5b フランジ部
6 円板部材
6a スリット
6b 筒状部
7 Oリング
8,9 スペーサ
50 パイプ
50a スプール部
50b 流路
100 コネクタ
図1
図2
図3A
図3B