(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】エアシャワー
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
F24F7/06 C
(21)【出願番号】P 2019106844
(22)【出願日】2019-06-07
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】391038475
【氏名又は名称】株式会社TRINC
(74)【代理人】
【識別番号】100079832
【氏名又は名称】山本 誠
(72)【発明者】
【氏名】高柳 真
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-111031(JP,A)
【文献】特開2017-219282(JP,A)
【文献】米国特許第05692954(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1975918(KR,B1)
【文献】特開昭62-138638(JP,A)
【文献】特開2007-307449(JP,A)
【文献】国際公開第2011/052560(WO,A1)
【文献】特開2003-024830(JP,A)
【文献】特開2018-176041(JP,A)
【文献】特開昭63-044982(JP,A)
【文献】特開2019-016441(JP,A)
【文献】特開2000-044209(JP,A)
【文献】国際公開第2012/078266(WO,A2)
【文献】特開2011-208884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放空間内の除塵対象に除塵エア流を吹き付ける除塵エア流発生手段と、 前記除塵対象を挟んで、前記除塵エア流発生手段の反対側に配置され、吸引力によって、前記除塵対象の周囲を流れる集塵エア流を発生する集塵手段と、 を備えたエアシャワーにおいて、
前記除塵エア流発生手段が設けられた第1の筐体と、 前記集塵手段が設けられた第2の筐体と、 前記第2の筐体に設けられ、前記集塵エア流を浄化するフィルタと、
前記第1、第2の筐体を連通するとともに、浄化された集塵エア流を、前記除塵エア流発生手段の
周囲に帰還させる帰還流路と、
前記第1の筐体に設けられたファンを備え、帰還流路によって第1の筐体に帰還した集塵エア流を、前記除塵エア流を厚く囲繞するシースエア流として、前記除塵エア流に沿って流すシースエア流発生手段
と、をさらに備え、前記集塵手段は、前記除塵対象に衝突した前記除塵エア流、前記除塵エア流によって除塵された異物、および前記シースエア流を、前記集塵エア流として吸引する、エアシャワー。
【請求項2】
前記除塵エア流発生手段は、エアシャワー周辺のエアを浄化して取り込むフィルタを有し、このフィルタで浄化したエアを、除塵エア流として除塵対象に吹き付けることを特徴とする請求項1記載のエアシャワー。
【請求項3】
前記除塵エア
流に乗せる空気イオンを発生し、前記空気イオンを前記除塵エア
流とともに前記除塵対象表面に放射する空気イオン放射手段をさらに備えた、請求項1または2に記載のエアシャワー。
【請求項4】
前記開放空間にはドアなどの開閉手段は設けられていないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエアシャワー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体や物体等の除塵対象に付着する異物を、開放空間でエアブローを吹き付けて除去するエアシャワー、すなわち、開放型のエアシャワーに関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルーム通用口等に設置されるエアシャワーは、一般に、閉鎖空間であるシャワー室を設け、この閉鎖空間内で側方から除塵対象にエアブローを吹き付け、シャワー室内で集塵するものであるが、インターロックされたドアを開け閉めする閉鎖空間への入退出動作が煩雑であるばかりでなく、ドア有することから大型になり、製造原価は高価であり、高頻度でドア開閉するため、ドア補修等のメンテナンスを要し、多様な経費が発生するという問題がある。
【0003】
そこで、特許文献1記載のエアシャワー装置は、シャワー室両側の側面室に、着脱可能な送風部を取り付け、送風部自体も相互組付け可能な別体部材により構成して、コストダウンを図っているが、さらなるコストダウンが望まれていた。
しかし、開放空間でエアブローを行うとすると、除塵対象から除去された異物が周囲に拡散する可能性がある。
【0004】
特許文献2は、ワークに対する作業を行うテーブル上の作業空間等を清浄に維持する清浄空間維持装置に係り、図7、図8に示すように、作業空間の一側面の吹出しユニット102、他側面に吸入ユニット104を配置し、吹出しユニット102から吹出した空気を吸入ユニット104で回収するもので、一見エアシャワーのような印象を与えるが、作業空間の上面は庇118によって塞がれ(図7、図8)、作業空間の後部は、吹出しユニット102、吸入ユニット104を連結する部材120によって塞がれている。このため、作業空間は略箱状に形成され、閉鎖的な特性を備えている。これによって、作業空間内で生じた塵埃は効果的に吸入ユニット104で回収される。一方、特許文献2のような構造のエアシャワーでは、入口と出口が同一であるため、除塵対象である人間の出入が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-70902号公報
【文献】特開2015-111031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、開放型のエアシャワーを実現することによって、処理能力を上げ、小型化し、コストダウンを図るとともに、充分高い除塵率を確保し、除去された異物の周囲への拡散を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエアシャワーは、開放空間内の除塵対象に除塵エア流を吹き付ける除塵エア流発生手段と、前記除塵対象を挟んで、前記除塵エア流発生手段の反対側に配置され、吸引力によって、前記除塵対象の周囲を流れる集塵エア流を発生する集塵手段と、を備えたエアシャワーにおいて、前記除塵エア流発生手段が設けられた第1の筐体と、前記集塵手段が設けられた第2の筐体と、前記第2の筐体に設けられ、前記集塵エア流を浄化するフィルタと、前記第1、第2の筐体を連通するとともに、浄化された集塵エア流を、前記除塵エア流発生手段の周囲に帰還させる帰還流路と、前記第1の筐体に設けられたファンを備え、帰還流路によって第1の筐体に帰還した集塵エア流を、前記除塵エア流を厚く囲繞するシースエア流として、前記除塵エア流に沿って流すシースエア流発生手段と、をさらに備え、前記集塵手段は、前記除塵対象に衝突した前記除塵エア流、前記除塵エア流によって除塵された異物、および前記シースエア流を、前記集塵エア流として吸引するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エアシャワーを開放型として小型化し、処理能力を上げ、コストダウンを図るとともに、充分高い除塵率を確保し、除塵した異物の周囲への拡散を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るエアシャワーの実施例1を示す部分破断正面図である。
【
図6】除塵エア流発生手段および空気イオン放射手段を示す斜視図である。
【
図7】
特許文献2における実施例1を示す平面図(図1)である。
【
図8】
特許文献2における実施例3を示す斜視図(図3)である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0010】
次に、本発明に係るエアシャワーの一実施例を
図1~
図5に基づいて説明する。
【0011】
本発明に係るエアシャワー100は、ドア等の開閉手段のない開放空間OS内に、人間等の除塵対象MMを配置し、除塵エア流DRを吹き付けて、除塵対象MMに付着した異物Dを除去する。エアシャワー100は、エア供給ユニット200およびエア吸引ユニット300を有し、除塵エア流DRはエア供給ユニット200から吹き出される。開放空間OSは両ユニット200、300の間に設けられ、エア吸引ユニット300は開放空間OS内のエアを吸引するとともに、除塵対象から除去された異物Dを吸引する。
【0012】
エア供給ユニット200は空洞の、第1の筐体210を有し、筐体210には、開放空間OSに接する略鉛直な送気面220と、送気面220の裏側に略鉛直な吸気面230が設けられている。エア供給ユニット200には、送気面220の左右略中央から、縦一列、略水平に除塵エア流DRを吹き出す除塵エア流発生手段400が設けられており、除塵エア流発生手段400は、吸気面230に開口する吸気フィルタ410と、吸気フィルタ410からエアを吸引して開放空間OS方向にエアを送給するファン420と、ファン420から送給されたエアを開放空間OSに向かって吹き出す吹き出し部430とを備える。吹き出し部430はファン420の下流で上下に延在し、その下流面に、縦一列に配列された吐出孔435が穿設されている。
吸気フィルタ410、ファン420、吹き出し部430は協働して除塵エア流発生手段400として機能する。
【0013】
除塵エア流発生手段400における吹き出し口430の近傍には、イオナイザ500が配置され、イオナイザ500が発生したイオンINは除塵エア流DRに乗って、空気イオンAIとして、除塵対象MMに放射される。これによって、異物Dおよび除塵対象MMは除電され、異物Dは除塵対象MMから容易に離脱する。除塵エア流発生手段400とイオナイザ500とは、協働して空気イオン放射手段600として機能する。
【0014】
エア供給ユニット200の送気面220には、メッシュ状の保護部材225が設けられ、除塵エア流発生手段400および空気イオン放射手段600は保護部材225によって保護されている。
保護部材225の水平方向中央には、除塵エア流DRを吹き出す除塵エア流吹き出し口226が縦1列に複数設けられ、人体等の縦長の除塵対象MMに対して、その全体に万遍無く除塵エア流DRを吹き付け得る。
除塵エア流吹き出し口226の両側には、それぞれ、空気イオンAIを放射する空気イオン放射口227が縦一列に複数設けられ、人体等の縦長の除塵対象MMに対して、その全体に万遍無く空気イオンAIを吹き付け得る。
【0015】
エア吸引ユニット300は空洞の、第2の筐体310を有し、筐体310には、送気面220に対向する吸気面320が設けられている。吸気面(吸気口)320には、集塵手段700の吸引力によって、除塵エア流DR、異物D、シースエア流SA、開放空間OS内エアを含む集塵エア流CAが流入する。
筐体310内には、吸気面320に対向するフィルタ900が設けられ、集塵エア流CAはフィルタ900によって浄化される。筐体310は、その底面に帰還流路810が接続され、帰還流路810は底面において筐体210、310を連通する。筐体210には、帰還流路810を通じて、筐体310内のエアを吸引するファン800が設けられ、ファン800は吸引したエアを筐体210内、特に、除塵エア発生手段400の周囲に送給するとともに、送気面220において、除塵エア発生手段400の周囲から、開放空間OSに向かって、シース(鞘)エア流SAを供給する。ファン800は、帰還流路810から筐体210の方向にのみエアを案内するガイドボックス830内に収められ、ファン800はエアを充分に昇圧しつつ筐体210内に送給し、かつ周囲へのエア漏出は防止されている。なお、シースエア流SAの機能については後述する。
筐体310、フィルタ900、帰還流路810、ファン800、筐体210は、協働して、集塵エア流DRを発生するとともに、集塵エア流DRを浄化する集塵手段700として機能し、同時に、筐体310、フィルタ900、帰還流路810、ファン800、筐体210はシース(鞘)エア流SAを発生するシースエア流発生手段820として機能する。
筐体310の吸気面320には、メッシュ状の保護部材325が設けられ、筐体310やフィルタ900が保護されている。
なお、帰還流路810は、必ずしも底面相互を連通する必要はなく、相互に異なる位置、上面(天井)、側面の位置等、エアシャワー100の設置状況に応じて、自由に選択し得る。
【0016】
図4において、除塵エア流吹出口226の存在領域は、送気面220における中央の狭小部分であり、その周囲の広範な領域からシースエア流SAが送給されるため、シースエア流SAが除塵エア流DRを厚く囲繞することは明らかである。 すなわち、シースエア流SAは、送気面220から、除塵対象MMおよび除塵エア流DRを囲繞しつつ、除塵エア流DRに沿って、吸気面320方向に流れるため除塵エア流DRによって除塵された異物Dは、拡散することなく、集塵エア流CAとして、円滑に吸気面320に到達する。 これによって、フィルタ900で浄化された集塵エア流CAが、異物拡散防止効果を有するシースエア流SAとして再利用されつつ、異物の拡散を防止する。このように異物拡散防止効果が保証されたエアシャワー100においては、強力な除塵エア流DRを除塵
対象MMに吹き付けることが可能であり、除塵対象MMの除塵率を著しく高めることができる。開放空間OS内に開放空間OSの容量を超えた過剰のエアが存在すると、開放空間OSを包囲するシースエア流SAの一部が開放空間OSからあふれる可能性があるが、シースエア流SAはフィルタ900で浄化されているので、エアシャワー100周辺の環境を汚染することはない。
【0017】
除塵エア流DRは、開放空間OS内に流入する際には集塵手段700の方向に向かう運動量を保有しており、除塵対象MMに衝突して運動量が減少した除塵エア流DRや、除塵対象MMから剥離した異物Dは、運動量が残存する除塵エア流DRと、それを囲繞するシースエア流SAによって、除塵対象MMの周縁に沿って、吸気面320の方向に運ばれる。このとき、異物Dは集塵エア流CAによって導かれて、吸気面320に向かって流れ、吸気面320に流入する。
すなわち、開放空間OS内の除塵対象MMを挟んで、除塵エア流発生手段400の反対側に集塵手段700を配置することにより、異物Dの開放空間OSの周囲への拡散を防止し得る。
【0018】
以上のとおり、本実施例のエアシャワー100は、ドアを持たず、開放空間OS内で除塵対象MMの除塵を行うので小型化でき、その製造原価、メンテナンス費等の経費を節減し得るとともに、異物Dの拡散を防止し、かつ高い集塵率を確保し得る。
【産業上の利用可能性】
【0019】
以上の実施例では、除塵対象MMが開放空間OSに静止した状態で、除塵エア流DRを吹き付けたが、開放空間OSを通過するベルトコンベア等搬送手段を設けて置き、移動手段の両側にエア供給ユニット200、エア吸引ユニット300を設置しておき、除塵対象MMが開放空間OSを通過する期間内に吹き付けることも可能である。
【符号の説明】
【0020】
AI 空気イオン
CA 集塵エア流
D 異物
DR 除塵エア流
FB 帰還エア流
IN イオン
MM 除塵対象
OS 開放空間
SA シース(鞘)エア流
100 エアシャワー
200 エア供給ユニット
210 第1の筐体
220 送気面
225 保護部材
226 除塵エア流吹き出し口
227 空気イオン放射口
230 吸気面
300 エア吸引ユニット
310 第2の筐体
320 吸気面
325 保護部材
400 除塵エア流発生手段
410 吸気フィルタ
415 外気吸入口
420 ファン
430 吹き出し口
500 イオナイザ
600 空気イオン放射手段
700 集塵手段
800 ファン
810 帰還流路
820 シースエア流発生手段
830 ガイドボックス
900 フィルタ