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▶ 株式会社ダリヤの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】油性皮膚保護剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20231011BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
A61K8/31
A61Q17/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019221205
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021091613
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】横山 亮太
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-088914(JP,A)
【文献】特開2016-160187(JP,A)
【文献】特開2007-320906(JP,A)
【文献】特開2017-043583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(C);
(A)ワセリン 45~48質量%
(B)流動パラフィン 37~40質量%
(C)マイクロクリスタリンワックス 13~17質量%
を含有する油性皮膚保護剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性染料を含有した染毛料による皮膚の染着を防止する油性皮膚保護剤に関する。更に詳しくは、前記染毛料の使用前に、頭皮、額、首筋、耳等の頭髪周辺部の皮膚に塗布することにより、皮膚の染着を防止するものに関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪を染毛する手段として、酸性染料を含有したヘアマニキュアや塩基性染料を含有したカラートリートメントなどの使用があるが、中でもヘアマニキュアに含有されている酸性染料は皮膚に染着しやすい。酸性染料による皮膚の染着は、石鹸等では洗い落とすことは困難である。従って、皮膚への染着を防止するために、染毛前に皮膚保護剤を塗布する必要がある。
【0003】
従来この皮膚保護剤としては、ワセリン、液状の鉱物油、油性成分を含む乳液およびクリーム等が使用されていた。ワセリンは酸性染料による皮膚の染着を防ぐことはできるが、伸びが悪いことから皮膚に塗布しにくく、水で洗浄後もべたつきが残り、ワセリン自体が高温において液状化し、固形ペースト状を維持できず不安定である。また、液状の鉱物油は、塗布時に垂れ落ちるという欠点がある。更に、水分を含む乳液やクリームは、皮膚への染着を完全に防ぐことは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-99515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、塗布のしやすさ、洗浄のしやすさ、酸性染料の染着防止効果および経時安定性に優れる油性皮膚保護剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討した結果、ワセリン、20℃で液体の炭化水素油、および20℃で固体の炭化水素油を含有する油性皮膚保護剤が、上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0007】
本願発明は、塗布しやすく、塗布後、容易に洗い流すことができ、酸性染料を含有した染毛料による皮膚の染着を防ぎ、経時安定性に優れた油性皮膚保護剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明は、酸性染料の染着防止の観点から、(A)ワセリンを含有する。
【0010】
本発明で用いられる前記(A)成分の含有量は40~50質量%、好ましくは45~48質量%がよい。前記(A)成分の含有量が40質量%未満の場合、経時安定性が悪くなる恐れがある。前記(A)成分の含有量が50質量%を超える場合、塗布後の洗浄のしやすさが悪くなる恐れがある。
【0011】
本発明は、塗布のしやすさ、洗浄のしやすさおよび経時安定性に優れる観点から、(B)20℃で液体の炭化水素油から選ばれる1種以上を含有する。
【0012】
本発明で用いられる前記(B)成分としては、特に限定されないが、例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、スクワラン、α-オレフィンオリゴマー等が挙げられる。
【0013】
本発明で用いられる前記(B)成分のうち、塗布のしやすさ、洗浄のしやすさおよび経時安定性に優れる観点から、流動パラフィンおよびスクワランが好ましい。
【0014】
本発明で用いられる前記(B)成分の含有量は、好ましくは35~45質量%、より好ましくは37~40質量%がよい。前記(B)成分の含有量が35質量%未満の場合、塗布後の洗浄のしやすさが悪くなる恐れがある。前記(B)成分の含有量が45質量%を超える場合、経時安定性が悪くなる恐れがある。
【0015】
本発明は、塗布のしやすさ、洗浄のしやすさおよび経時安定性に優れる観点から、(C)20℃で固体の炭化水素油を含有する。
【0016】
本発明で用いられる前記(C)成分としては、特に限定されないが、例えば、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0017】
本発明で用いられる前記(C)成分のうち、塗布のしやすさ、洗浄のしやすさおよび経時安定性に優れる観点から、マイクロクリスタリンワックスが好ましい。
【0018】
本発明で用いられる前記(C)成分の含有量は、好ましくは10~20質量%、より好ましくは13~17質量%がよい。前記(C)成分の含有量が10質量%未満の場合、経時安定性が悪くなる恐れがある。前記(C)成分の含有量が20質量%を超える場合、組成物の伸びが悪くなり塗布のしやすさおよび洗浄のしやすさが悪くなる恐れがある。
【0019】
本発明の油性皮膚保護剤は前記必須成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品および医薬品等に用いられる各種成分、例えば、紛体、ビタミン類、増粘剤、(A)~(C)成分以外の油性成分、保湿剤、薬効成分、蛋白誘導体、加水分解蛋白、酸化防止剤、還元剤、植物性抽出液、生薬抽出物、香料、防腐剤、色素、成分以外の顔料、紫外線吸収剤、界面活性剤等から選ばれる少なくとも1種以上を含有することができる。ただし、これら例示に限定されるものではない。
【0020】
本発明の油性皮膚保護剤は、ジェル状、クリーム状、ペースト状等の形態で用いられ、パウチ容器等に充填され、使用時まで保存される。
【実施例
【0021】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0022】
本明細書に示す評価試験において、実施例および比較例に示す油性皮膚保護剤に含まれる成分、およびその含有量を種々に変更しながら実施した。各成分の含有量を示す単位はすべて質量%であり、これを常法にて調製した。
【0023】
また、評価に用いた酸性染毛料を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
「塗布のしやすさ」
実施例および比較例で得られた各油性皮膚保護剤を、ガラス瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃の恒温槽に24時間静置した各油性皮膚保護剤0.5gを塗布後、官能にて塗布のしやすさを評価した。評価は専門のパネラー7名にて評価を行った。
<評価基準>
○:7人中6人以上が良好と評価した
△:7人中3人以上5人以下が良好と評価した
×:7人中2人以下が悪いと評価した
【0026】
「洗浄のしやすさ」
実施例および比較例で得られた各油性皮膚保護剤を、ガラス瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃の恒温槽に24時間静置した各油性皮膚保護剤0.5gを塗布後、洗浄のしやすさを評価した。評価は専門のパネラー7名にて評価を行った。
【0027】
<評価基準>
○:7人中6人以上が良好と評価した
△:7人中3人以上5人以下が良好と評価した
×:7人中2人以下が悪いと評価した
【0028】
「酸性染料の染着防止効果」
実施例および比較例で得られた各油性皮膚保護剤を、ガラス瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃の恒温槽に24時間静置した各油性皮膚保護剤0.5gをヒトの上腕部に1cm四方に塗布し、その上から表1の酸性染毛料0.5gを塗布し、5分放置した後シャンプーで洗浄した。評価は専門のパネラー1名にて評価を行った。
<評価基準>
○:染着が全くない
△:わずかに染着している
×:ひどく染着している
【0029】
「経時安定性」
実施例および比較例で得られた各油性皮膚保護剤を、ガラス瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、40℃の恒温槽に6ヶ月静置後、目視にてその外観を観察した。
<評価基準>
○:液状化することがない
△:やや液体油の分離による発汗が見られるが、使用上問題なし
×:液状化が見られる
【0030】
<第1評価試験>
第1評価試験では、(A)ワセリンの含有量を様々に代えた油性皮膚保護剤に関して評価した。表2に油性皮膚保護剤の含有量および評価結果を示す。
【0031】
【表2】
【0032】
実施例1~4において、前記(A)ワセリンの含有量を様々に代えても良好な結果が得られた。
【0033】
<第2評価試験>
第2評価試験では、(B)20℃で液体の炭化水素油の含有量を様々に代えた油性皮膚保護剤に関して評価した。表3に油性皮膚保護剤の含有量および評価結果を示す。
【0034】
【表3】
【0035】
実施例5において、前記(B)20℃で液体の炭化水素油のスクワランは良好な結果が得られた。
【0036】
<第3評価試験>
第3評価試験では、(B)20℃で固体の炭化水素油の含有量を様々に代えた油性皮膚保護剤に関して評価した。表4に油性皮膚保護剤の含有量および評価結果を示す。
【0037】
【表4】
【0038】
実施例6~10において、前記(C)20℃で固体の炭化水素油の含有量を様々に代えても良好な結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本願発明によれば、酸性染料を配合した染毛料を使用する際に、頭皮、手、肌などに付着した染着性の汚れから保護するための油性皮膚保護剤に関して、塗布のしやすさ、洗浄のしやすさ、酸性染料の染着防止効果および経時安定性に優れる油性皮膚保護剤を提供できる。