(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】癌治療のためのT細胞の活性化方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20231011BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20231011BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231011BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231011BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231011BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231011BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231011BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20231011BHJP
C12N 5/0781 20100101ALI20231011BHJP
C12N 5/0784 20100101ALI20231011BHJP
C12N 5/0786 20100101ALI20231011BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231011BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20231011BHJP
C07K 14/52 20060101ALI20231011BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231011BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231011BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20231011BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K7/06 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/0783
C12N5/0781
C12N5/0784
C12N5/0786
C07K19/00
C07K16/00
C07K14/52
A61P35/00
A61P37/04
A61K35/17
(21)【出願番号】P 2020507093
(86)(22)【出願日】2018-08-10
(86)【国際出願番号】 KR2018009224
(87)【国際公開番号】W WO2019031938
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】10-2017-0101800
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518426066
【氏名又は名称】グッド ティー セルズ、 インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ポム ソク
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-117023(JP,A)
【文献】特表2015-501651(JP,A)
【文献】特表2016-523888(JP,A)
【文献】ウイルス (2002) Vol.52, No.1, pp.123-127
【文献】Nucleic Acids Research (2008) Vol.36,pp.W509-W512
【文献】J. Immunol. (2005) Vol.175, No.6, pp.4137-4147
【文献】Scientific Reports (2017) Vol.7, No.5072, pp.1-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C07K 1/00-19/00
A61K 35/00
A61K 38/00
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
CAplus/REGISTRY(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号55、86、123、136、152、157および184のうちのいずれか1つで表される、エプスタイン-バールウイルス(EBV)陽性癌特異的ネオエピトープ(neo-epitope)。
【請求項2】
HLA-A*2402、HLA-A*A0201、HLA-A*3303、HLA-A*1101、HLA-A*0206、HLA-A*3101、HLA-B*5101、HLA-B*4403、HLA-B*5401、HLA-B*5801、及びHLA-B*3501のうちの少なくとも1つと結合親和性を示すものである、請求項1に記載のエプスタイン-バールウイルス(EBV)陽性癌特異的ネオエピトープ。
【請求項3】
前記エプスタイン-バールウイルス(EBV)陽性癌は、EBV陽性胃癌、EBV陽性子宮頸癌、EBV陽性バーキットリンパ腫、EBV陽性T細胞リンパ腫、EBV陽性乳癌、EBV陽性平滑筋肉腫(leiomyosarcomas)、EBV陽性平滑筋腫、EBV陽性ホジキンリンパ腫、EBV陽性鼻咽頭癌、又はEBV陽性移植後リンパ細胞増殖疾患(PTLD)である、請求項1に記載のエプスタイン-バールウイルス(EBV)陽性癌特異的ネオエピトープ。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載のエプスタイン-バールウイルス(EBV)陽性癌特異的ネオエピトープをコードする、核酸分子。
【請求項5】
請求項
4に記載の核酸分子が挿入された、発現ベクター。
【請求項6】
請求項
5に記載の発現ベクターがトランスフェクトされた、宿主細胞。
【請求項7】
配列番号55、86、123、136、152、157および184のうちのいずれか1つで表されるエプスタイン-バールウイルス(EBV)陽性癌特異的ネオエピトープを含む、エプスタイン-バールウイルス(EBV)陽性癌の予防または治療用T細胞の活性化用組成物。
【請求項8】
前記T細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、制御性T細胞、及びメモリーT細胞からなる群より選択される1種以上を含む、請求項
7に記載のT細胞の活性化用組成物。
【請求項9】
配列番号55、86、123、136、152、157および184のうちのいずれか1つで表されるエプスタイン-バールウイルス(EBV)陽性癌特異的ネオエピトープが負荷(loading)された、抗原提示細胞。
【請求項10】
樹状細胞、B細胞、及びマクロファージのうちの1種以上を含む、請求項
9に記載の抗原提示細胞。
【請求項11】
T細胞の増殖又は分化を促進する、請求項
10に記載の抗原提示細胞。
【請求項12】
配列番号55、86、123、136、152、157および184のうちのいずれか1つで表される、エプスタイン-バールウイルス(EBV)陽性癌特異的ネオエピトープを抗原提示細胞に負荷する工程を含む、抗原提示細胞を製造する方法(但し、前記工程がヒト生体内で行われる場合を除く)。
【請求項13】
前記抗原提示細胞は、樹状細胞、B細胞、及びマクロファージのうちの1種以上を含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記抗原提示細胞は、目的の個体の末梢血液由来の末梢血単核細胞(PBMC)から得られたものである、請求項
12に記載の方法。
【請求項15】
前記負荷は、前記抗原提示細胞を前記エプスタイン-バールウイルス(EBV)陽性癌特異的ネオエピトープと接触させて行われる、請求項
12に記載の方法。
【請求項16】
前記負荷は、前記抗原提示細胞を前記エプスタイン-バールウイルス(EBV)陽性癌特異的ネオエピトープにパルシング(pulsing)して行われる、請求項
12に記載の方法。
【請求項17】
前記負荷は、前記エプスタイン-バールウイルス(EBV)陽性癌特異的ネオエピトープをコードする核酸分子が挿入された発現ベクターを前記抗原提示細胞にヌクレオフェクション(nucleofection)させて行われる、請求項
12に記載の方法。
【請求項18】
前記負荷は、
前記エプスタイン-バールウイルス(EBV)陽性癌特異的ネオエピトープ及び樹状細胞特異的抗体又はその断片を含む、融合タンパク質を用いて行われる、請求項
12に記載の方法。
【請求項19】
請求項
9~
11のいずれか一項に記載の抗原提示細胞によって活性化されたT細胞。
【請求項20】
請求項
9~
11のいずれか一項に記載の抗原提示細胞によってT細胞を活性化する方法(但し、前記活性化がヒト生体内で行われる場合を除く)。
【請求項21】
前記T細胞を前記抗原提示細胞と共培養して行われる、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
前記T細胞は、目的の個体の末梢血単核細胞(PBMC)から得られたものである、請求項
20に記載の方法。
【請求項23】
前記T細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、制御性T細胞、及びメモリーT細胞からなる群より選択される1種以上を含む、請求項
20に記載の方法。
【請求項24】
前記共培養が、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-15(IL-15)、インターロイキン-21(IL-21)、又はこれらの組み合わせを添加して行われる、請求項
21に記載の方法。
【請求項25】
前記共培養が、サイトカイン及び兔疫グロブリン重鎖不変部を含む融合タンパク質を添加して行われる、請求項
21に記載の方法。
【請求項26】
前記サイトカインは、インターフェロン-γ(IFN-γ)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-12(IL-12)、IL-18、腫瘍壊死因子(TNF)、又は顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)である、請求項
25に記載の方法。
【請求項27】
前記共培養が、
CD27、CXCR3、又はCD62Lのリガンド、及び兔疫グロブリン重鎖不変部を含む、融合タンパク質を添加して行われる、請求項
21に記載の方法。
【請求項28】
請求項
9~
11のいずれか1項に記載の抗原提示細胞を有効成分として含む、エプスタイン-バールウイルス(EBV)陽性癌の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項29】
請求項
19に記載の活性化されたT細胞を有効成分として含む、エプスタイン-バールウイルス(EBV)陽性癌の予防又は治療用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌特異的ネオエピトープ(neo-epitope)、前記ネオエピトープが負荷された抗原提示細胞、及び前記抗原提示細胞によって癌治療のためのT細胞を活性化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
胃癌の発病は全世界的に、特にアジアで高い発病率を示す悪性腫瘍として知られている。胃癌の発病原因としては種々知られてきているが、代表的に、エプスタイン-バールウイルス(epstein barr virus;EBV)の感染によって現れるEBV-関連性胃癌と、胃腸細胞の遺伝子変異の蓄積によって発生する胃癌細胞抗原-関連性胃癌とに分類することができる。現在、胃癌に対する治療策は、長い時間の間癌組織の切開手術が最も効果的であると知られており、化学的療法及び放射線治療も行われているが、胃癌を初期に発見できなかった場合は完治が難しい疾病とされている。また、様々な生物学的製剤(抗体、small molecule)により臨床試験が進行しているが、まだ良い臨床的効果を示す治療剤は現れていない。
【0003】
最近、患者由来の自己T細胞を用いた癌細胞特異的ターゲット治療方法が様々な機関で研究されてきており、キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor;CAR)T細胞を用いたリンパ腫に対して様々な機関で臨床試験を行った結果、良好な臨床的効果と低い副作用により、抗癌治療への新たな分野として注目されてきている。
【0004】
患者由来T細胞を用いると、細胞治療剤の最も大きな副作用である免疫反応の誘導が少なく、供与者のHLAタイプに対する制限が無くなるので、効果的で副作用のない治療剤とされてきた。今のところ、抗癌治療分野で最も多く使用されている細胞治療剤の種類には、CD8+ T細胞、CD4+ T細胞、NK細胞、樹状細胞、CAR T細胞が知られている。NK細胞の場合、細胞死滅効能を有しているが、抗原特異性がないため、様々な副作用があり、樹状細胞の場合には、直接的に細胞を死滅する機能がないのに対し、患者体内のT細胞に抗原特異性を伝達して高い効率でT細胞の癌細胞特異性を付与できるワクチン概念の治療剤である。また、CD4+T細胞は、抗原特異性により他の細胞に対して補助する役割を有しており、CD8+T細胞の場合、抗原特異性及び細胞死滅効果が最も良い細胞として知られている。
【0005】
しかし、今のところ使用又は開発されている細胞治療剤はほとんど限界があり、臨床的な効果が現れていないのが現状である。その限界をみると、癌細胞は、人体内の免疫反応を抑制する物質を自ら分泌するか、癌細胞に対する抗体の生成に必須な抗原を提示できないため、適切な免疫反応を起こせないようにする。
【0006】
一方、樹状細胞は、人体の外部から入ってくるか、内部で発生する抗原を検知する監視者の役割を果たすだけでなく、このように認知し吸収した抗原をもって免疫器官(secondary lymphoid organ)に迅速に移動し、抗原と反応するT細胞を含む免疫細胞に抗原を提示する、専門的な抗原提示細胞の役割を果たす。樹状細胞を用いた抗癌免疫治療ワクチンの場合、様々な方法により開発されてきており、生体外で生成された(ex vivo generated)樹状細胞ワクチンと、生体内(in vivo)樹状細胞ワクチンとに大きく分けられる。生体内樹状細胞ワクチンの場合、体内に存在する樹状細胞に抗原を直接的に伝達する方式である。また、生体外で発生した樹状細胞ワクチン方法の場合、患者のPBMCから樹状細胞を分離し、分離された樹状細胞に提示する抗原を伝達し、これによって樹状細胞が活性化された後、さらに患者に注入し、注入された樹状細胞からT細胞へ抗原を伝達する方法である。この方式の場合には、生体外で樹状細胞の培養方法及び抗原伝達方式が重要であり、現在使用される抗原提示方法としては、提示する抗原のDNAをウイルスやヌクレオフェクション(nucleofection)を用いてトランスフェクションさせるか、樹状細胞を標的とする抗体に抗原を結合させて樹状細胞を標的とする抗原の伝達が使用されている。
【0007】
現在、樹状細胞ワクチンの最も大きな問題点としては、体内の激しい慢性炎症現象、ワールブルク効果(Warburg effect)、免疫抑制サイトカイン、免疫抑制T細胞及び樹状細胞などが存在する癌の微細環境中で効果的な抗癌兔疫細胞の活性化が極めて困難とされているという点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一つの目的は、エプスタイン-バールウイルス(epstein barr virus;EBV)陽性癌特異的ネオエピトープ(neoepitope)とこれを含むT細胞活性化用組成物を提供しようとする。
【0009】
本発明の他の目的は、本発明のネオエピトープが負荷されたもので、癌治療のためのT細胞を活性化させることができる抗原提示細胞を提供しようとする。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、本発明のネオエピトープが負荷された抗原提示細胞によって活性化されたT細胞を提供しようとする。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、癌治療のためにT細胞を活性化する方法を提供しようとする。
【0012】
しかし、本発明がなそうとする技術的課題は以上に述べた課題に制限されず、述べていないさらに他の課題は、以下の記載から当業界における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、癌特異的エピトープ(tumor antigen epitope)に関する。
【0014】
本発明において、前記「癌特異的エピトープ」は、癌細胞にのみ存在し、正常細胞には存在しないタンパク質抗原に由来するものである。本発明において、前記癌特異的エピトープは、T細胞受容体によって認識される少なくとも1つのエピトープを含むもので、好ましくは、エプスタイン-バールウイルス(epstein barr virus;EBV)陽性癌細胞に存在するエピトープとして、前記EBVウイルスエピトープ又は癌細胞のエピトープを含むことができ、より好ましくは、エプスタイン-バールウイルス(EBV)陽性癌細胞の抗原であるエプスタイン-バールウイルス潜伏性膜タンパク質2(Epstein-Barr virus latent membrane protein2、LMP2a)、エプスタイン-バール核抗原1(Epstein-Barr nuclear antigen1、EBNA-1)、又はこれらのネオエピトープ(neoepitope)であってもよい。
【0015】
本発明において、前記「エプスタイン-バールウイルス潜伏性膜タンパク質2(Epstein-Barr virus latent membrane protein2、LMP2a)」は、すべてのII型及びIII型疾患/悪性腫瘍で発現するいくつかのEBV遺伝子のうちの1つで、LMP2aは、B細胞-受容体信号伝達のネガティブ調節者として作用し、チロシンキナーゼの隔離(sequestering)による細胞生存を促進させる膜貫通タンパク質に相当する。HLA-A2制限ペプチドは、生体外の、個人の60~75%から検出可能なエピトープ特異的細胞毒性Tリンパ球で、潜伏性疾患において最も免疫優性であるLMPエピトープである。CLGGLLTMVペプチドは、エピトープがNPC及びHL患者から検査した生検で保存され、その他EBV潜在エピトープとともに、免疫学的に脆弱であるので、NPC及びHL治療に対する潜在的標的であると、長い間示されてきた。
【0016】
本発明において、前記「エプスタイン-バール核抗原1(Epstein-Barr nuclear antigen1、EBNA-1)」は、エプスタイン-バールウイルスに関連する多機能性の二量体ウイルスタンパク質に相当する。これは、すべてのEBV-関連悪性腫瘍でのみ発見されるEBVタンパク質に相当する。これは、細胞がEBVに感染した時に伴う状態変形を維持するのに重要な役割をする。一方、EBNA-1は、タンパク質をアミノ及びカルボキシ末端ドメインに分けるグリシン-アラニン反復配列に相当する。このような配列は、タンパク質を安定化し、プロテアソーム関連分解を防止し、抗原プロセッシングとMHCクラスI-制限的抗原発現を損なう役割をする。したがって、前記EBNA-1は、ウイルス感染した細胞に対するCD8-制限的細胞傷害性T細胞の反応を抑制する。前記EBNA-1は、すべての潜伏性プログラム(latency programs)でQpプロモーターによって発現し、潜伏性プログラムIで唯一発現するウイルスタンパク質に相当する。
【0017】
本発明において、前記「ネオエピトープ(neo-epitope)」は、正常な非癌細胞又は生殖細胞のようなレファレンスでは存在しないが、癌細胞では発見されるエピトープを指す。
【0018】
本発明において、前記ネオエピトープとしては、ヒトの血液から抽出されたT細胞、好ましくは、メモリーT細胞(memory T cells)が効能を有し得るように、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、β2-ミクログロブリン、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DRA1、HLA-DRB1、HLA-DRB3、HLA-DRB4、HLA-DRB5、HLA-DM、HLA-DOA、及びHLA-DOB遺伝子座のうちの少なくとも1つと結合親和性を示すことができ、なかでも、韓国人にとって最も多く発現しているHLAタイプとして、例えば、HLA-A*2402、HLA-A*A0201、HLA-A*3303、HLA-A*1101、HLA-A*0206、HLA-A*3101、HLA-B*5101、HLA-B*4403、HLA-B*5401、HLA-B*5801、及びHLA-B*3501のうちの少なくとも1つと高い結合親和性を示すものであってもよい。
【0019】
好ましくは、本発明において、前記ネオエピトープとしては、HLA-A*2402に対して高い結合親和性を有するもので、配列番号1~151のうちのいずれか1つで表されるペプチドであるLMP2a抗原のネオエピトープであってもよく;又はHLA-A*3101に対して高い結合親和性を有するもので、配列番号152~184のうちのいずれか1つで表されるペプチドであるEBNA-1抗原のネオエピトープであってもよい。
【0020】
ただし、本発明において、前記ネオエピトープ-HLA親和性を測定する方法としては、ネオエピトープが特定のHLA対立形質に結合するかを予測するためにNetMHC3.4(URL:www.cbs.dtu.dk/services/NetMHC-3.4/)を用いることができるが、これに制限されるわけではない。
【0021】
本発明において、前記「HLA」又は「ヒト白血球抗原」は、免疫系の調節の原因になる細胞の表面上でMHC(主組織適合性複合体)タンパク質をコードするヒト遺伝子を表す。「HLA-I」又は「HLAクラスI」は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、及びβ2-ミクログロブリン遺伝子座を含むヒトMHCクラスI遺伝子を表す。「HLA-II」又は「HLAクラスII」は、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DRA1、HLA-DRB1、HLA-DRB3、HLA-DRB4、HLA-DRB5、HLA-DM、HLA-DOA、及びHLA-DOB遺伝子座を含むヒトMHCクラスII遺伝子を表す。
【0022】
本発明において、前記癌としては、エプスタイン-バールウイルス(epstein barr virus;EBV)陽性癌、EBV陽性胃癌、EBV陽性子宮頸癌、EBV陽性バーキットリンパ腫(Burkitt’s lymphoma)、EBV陽性T細胞リンパ腫(T cell lymphomas)、EBV陽性乳癌、EBV陽性平滑筋肉腫(leiomyosarcomas)、EBV陽性平滑筋肉腫、EBV陽性ホジキンリンパ腫(Hodgkin lymphoma)、EBV陽性鼻咽頭癌、又はEBV陽性移植後リンパ細胞増殖疾患(PTLD)であってもよいが、好ましくは、EBV陽性胃癌である。
【0023】
本発明の他の実施形態によれば、本発明で提供する癌特異的エピトープ(tumor antigen epitope)で、好ましくは、エプスタイン-バールウイルス(EBV)陽性癌細胞の抗原であるLMP2a又はEBNA-1のネオエピトープ(neoepitope)をコードする核酸分子に関する。
【0024】
本発明の核酸分子は、当業者に知られているように、本発明で提供するポリペプチドのアミノ酸配列を、ポリヌクレオチド配列に翻訳された核酸分子のすべてを含む。そのため、ORF(open reading frame)による多様なポリヌクレオチド配列が製造可能であり、これもすべて本発明の核酸分子に含まれる。
【0025】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する前記単離された核酸分子が挿入された発現ベクターを提供する。
【0026】
本発明において、前記「ベクター」は、ある核酸分子が連結された他の核酸を輸送できる前記核酸分子である。ベクターの一つの類型は、追加的なDNAセグメントがライゲーションされ得る円形の二重鎖DNAを指す「プラスミド」である。他の類型のベクターは、ファージベクターである。さらに他の類型のベクターは、ウイルス性ベクターで、追加的なDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲーションされ得る。あるベクターは、それらが導入された宿主細胞で自律的な複製を行うことができる(例えば、バクテリア性ベクターはバクテリア性複製起点を有するエピソーム哺乳類ベクター)。その他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞に導入されて宿主細胞のゲノムに統合され、それによって、宿主ゲノムとともに複製される。それだけでなく、あるベクターは、これらが作動レベルで連結された遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本願において「組換え発現ベクター」又は単に「発現ベクター」と名付けられる。一般的に、組換えDNA手法で有用な発現ベクターは、たびたびプラスミドの形態で存在する。本明細書において、「プラスミド」と「ベクター」は、プラスミドがベクターのうち最も通常使用される形態であるため、相互交換して使用可能である。
【0027】
本発明において、前記発現ベクターの具体的な例としては、商業的に広く使用されるpCDNAベクター、F、R1、RP1、Col、pBR322、ToL、Tiベクター;コスミド;ラムダ、ラムドイド(lambdoid)、M13、Mu、p1 P22、Qμ、T-even、T2、T3、T7などのファージ;植物ウイルスからなる群より選択されるが、これに制限されるわけではなく、当業者に発現ベクターとして知られたすべての発現ベクターは本発明に使用可能であり、発現ベクターを選択する際には、目的の宿主細胞の性質による。宿主細胞へのベクターの導入時、リン酸カルシウムトランスフェクション、ウイルス感染、DEAE-デキストラン調節トランスフェクション、リポフェクタミントランスフェクション、又は電気穿孔法によって行われるが、これに限定されるものではなく、当業者は使用する発現ベクター及び宿主細胞に適した導入方法を選択して用いることができる。好ましくは、ベクターは、1つ以上の選別マーカーを含有するが、これに限定されず、選別マーカーを含まないベクターを用いて生産物の生産有無によって選別が可能である。選別マーカーの選択は、目的の宿主細胞によって選別され、これは、すでに当業者に知られた方法を利用するので、本発明はこれに制限を置かない。
【0028】
本発明の核酸分子を、精製を容易にするためにタグ配列を発現ベクター上に挿入して融合させることができる。前記タグとしては、ヘキサヒスチジンタグ、ヘマグルチニンタグ、mycタグ、又はflagタグを含むが、これに限定されるものではなく、当業者に知られた精製を容易にするタグはすべて本発明で利用可能である。
【0029】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する前記発現ベクターがトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。
【0030】
本発明において、前記「宿主細胞」には、ポリペプチド挿入物の組込みのためのベクターの受取者(recipient)であるか、受取者であった個別的な細胞又は細胞培養物が含まれる。宿主細胞には単一宿主細胞の子孫が含まれ、前記子孫は、自然的な、偶発的な又は故意の突然変異のため、必ずしも元の母細胞と完全に同一(形態学上又はゲノムDNA補完体において)でないことがある。宿主細胞には本願のポリペプチドで体内に形質注入された細胞が含まれる。
【0031】
本発明において、前記宿主細胞としては、哺乳動物、植物、昆虫、菌類、又は細胞性起源の細胞を含むことができ、例えば、大腸菌、ストレプトマイセス、サルモネラ・ティフィムリウムなどのバクテリア細胞;酵母細胞、ピキア・パストリスなどの菌類細胞;ショウジョウバエ、スポドプテラSf9細胞などの昆虫細胞;CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞、Chinese hamster ovary cells)、SP2/0(マウス骨髄腫)、ヒトリンパ芽球(Human lymphoblastoid)、COS、NSO(マウス骨髄腫)、293T、BOWメラノーマ細胞、HT-1080、BHK(ベビーハムスター腎臓細胞、Baby Hamster Kidney cells)、HEK(ヒト胚腎臓細胞、Human Embryonic Kidney cells)、又はPERC.6(ヒト網膜細胞)の動物細胞;又は植物細胞であってもよいが、これに制限されるわけではなく、当業者に知られた宿主細胞として使用可能な細胞はすべて利用可能である。
【0032】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する癌特異的エピトープ(tumor antigen epitope)、これをコードする核酸分子、前記核酸分子が挿入された発現ベクター又は前記発現ベクターが形質転換された宿主細胞を含むT細胞の活性化用組成物に関する。
【0033】
本明細書で使用されるように、「T細胞の活性化」は、少なくとも1つの腫瘍抗原ペプチドを認識するT細胞受容体を有する、単クローン(例えば、同一のTCRをコードする)又は多クローン(例えば、相異なるTCRをコードするクローンを有する)T細胞集団を称する。活性化されたT細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、制御性T細胞、及びメモリーT細胞からなる群より選択される1種以上を含むが、これに限定されないT細胞の1つ以上の亜型を含有することができるが、好ましくは、メモリーT細胞(memory T cells)である。
【0034】
本発明において、前記活性化されたT細胞は、癌細胞の防御機序を避けて癌又は腫瘍性状態を治療するか、癌の再発、進行又は転移を予防することができる。
【0035】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する癌特異的エピトープ(tumor antigen epitope)が負荷(loading)された抗原提示細胞(antigen presenting cells、APC)であってもよい。
【0036】
本発明において、前記抗原提示細胞は、樹状細胞(dendritic cells、DC)、B細胞、及びマクロファージのうちの1種以上を含むことができるが、好ましくは、樹状細胞である。
【0037】
本発明において、前記「樹状細胞」は、リンパ性又は非リンパ性組織で発見される形態学的に類似する細胞類型の多様な集団の構成員である。このような細胞は、これら独特の形態、及び抗原ペプチドをT細胞に提示するタンパク質である表面クラスI及びクラスII MHC分子の高い発現水準を特徴とする。DC、他のAPC及びT細胞は、末梢血液に由来する末梢血単核細胞(PBMC)のように、都合的には末梢血液から、そして多数の組織供給源から単離されるか、それらに由来すること(例えば、分化)ができる。
【0038】
本発明において、前記抗原提示細胞は、癌抗原特異的なT細胞、好ましくは、メモリーT細胞の分化及び増殖を誘導することで癌細胞の防御機序を避けて癌又は腫瘍性状態を治療するか、癌の再発、進行又は転移を予防することができる。
【0039】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する癌特異的エピトープ(tumor antigen epitope);及び樹状細胞特異的抗体又はその断片を含む融合タンパク質に関する。
【0040】
本発明で提供する融合タンパク質は、樹状細胞に本発明で提供する癌特異的エピトープが負荷できるようにする。
【0041】
本発明において、前記樹状細胞特異的抗体としては、樹状細胞のDCIR、MHCクラスI、MHCクラスII、CD1、CD2、CD3、CD4、CD8、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD29、CD31、CD40、CD43、CD44、CD45、CD54、CD56、CD57、CD58、CD83、CD86、CMRF-44、CMRF-56、DCIR、DC-ASPGR、CLEC-6、CD40、BDCA-2、MARCO、DEC-205、Clec9A、33D1、マンノース受容体、ランゲリン(Langerin)、DECTIN-1、B7-1、B7-2、IFN-γ受容体、IL-2受容体、ICAM-1、Fcγ受容体、LOX-1、又はASPGRに特異的な抗体であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0042】
本発明の融合タンパク質において、前記癌特異的エピトープは、前記樹状細胞特異的抗体又はその断片にコンジュゲートされたものであってもよい。ここで、前記「コンジュゲート(conjugate)」は、2つの部分を一緒に結合させて形成された任意の物質をいう。本発明に係る代表的な接合体は、抗原と抗体及びTLR効能剤を一緒に結合させて形成されたものを含む。用語「コンジュゲーション(conjugation)」は、接合体を形成する工程をいい、一般的に、物理的カップリング、例えば、共有結合、同時-配位共有結合、又は第2結合力、例えば、ファンデルワールス結合力(Van der Waals bonding force)をいう。抗原を抗体に連結させる工程はさらに、ドックリン-コヘシン連合(dockerin-cohesin association)のような非共有結合性連合[(Banchereau)らの米国特許公報第20100135994号、本願に参照として引用された部分に関連する]により、又はペプチド又は化学的結合を形成することで直接的な化学的連結によって行われる。
【0043】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する癌特異的エピトープ(tumor antigen epitope)が負荷された抗原提示細胞(Antigen presenting cells)を製造する方法に関する。
【0044】
本発明において、前記抗原提示細胞は、樹状細胞、B細胞、及びマクロファージのうちの1種以上を含むことができるが、好ましくは、樹状細胞であってもよい。
【0045】
本発明において、前記樹状細胞(例えば、未成熟樹状細胞)は、自己供給源、すなわち、目的の個体由来を含む多様な供給源から得ることができ、好ましくは、末梢血液由来の末梢血単核細胞(Peripheral blood mononuclear cell、PBMC)から得られ、より好ましくは、個体由来PBMCから単核球を分離して複数のサイトカインと接触させることで得られる。ここで、前記単核球の樹状細胞への分化を誘導するサイトカインの種類は特に制限されないが、例えば、GM-CSF及びIL-4のうちの1種以上を含むことができる。
【0046】
本発明において、前記「目的の個体」とは、癌が発病したか、発病の可能性が高い個体を意味する。
【0047】
本発明において、前記のように抗原提示細胞が用意されると、前記抗原提示細胞に本発明の癌特異的エピトープを負荷することができる。一般的に、未成熟樹状細胞は、食作用や受容体を介した細胞内取込み(エンドサイトーシス)により抗原を捕獲して、細胞内の一連の過程により抗原を加工後、MHCに抗原ペプチドを積載してTリンパ球に提示する。抗原を加工する過程とともに、樹状細胞は次第に成熟して食作用とエンドサイトーシスに使用される受容体を失い、MHC class I、II、補助刺激分子、細胞癒着分子の発現が増加し、新たなケモカイン受容体を発現して周辺リンパ節のTリンパ球がリッチな地域に移動してTリンパ球に抗原を提示することにより、Tリンパ球免疫反応を起こす。
【0048】
本発明の一例として、前記癌特異的エピトープを前記抗原提示細胞に負荷するためには、前記抗原提示細胞を本発明の癌特異的エピトープと接触させることができ、好ましくは、前記抗原提示細胞として、例えば、未成熟樹状細胞、又はPBMCに含まれるか、これに由来する(例えば、分化した)抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)に本発明の前記癌特異的エピトープをパルシング(pulsing)するステップを行うことができる。本技術分野で知られているように、パルシングは、細胞、例えば、樹状細胞を、本発明の癌特異的エピトープペプチドを含有する溶液と混合し、次いで、任意に混合物から前記癌特異的エピトープを除去する工程を表す。本発明では、前記未成熟樹状細胞を癌特異的エピトープと接触させる際に、Toll-like受容体作用剤を処理して未成熟樹状細胞の集団の成熟を追加的に誘導することができる。この時、例示的なTLR作用剤には、Poly IC、MALP、及びR848が含まれるが、これに限定されない。
【0049】
本発明の他の例として、前記癌特異的エピトープを前記抗原提示細胞に負荷するためには、前記癌特異的エピトープをコードする核酸分子が挿入された発現ベクター、好ましくは、プラスミドで前記抗原提示細胞をヌクレオフェクション(nucleofection)させることができる。ここで、前記ヌクレオフェクションの際、例えば、Amaxa(登録商標)ヌクレオフェクションシステム又はInVitrogen(登録商標)ヌクレオフェクションシステムを含む、本分野における何らかの有用な手段によって発生することができる。
【0050】
本発明のさらに他の例として、前記癌特異的エピトープを前記抗原提示細胞に負荷するためには、本発明で提供する前記癌特異的エピトープ;及び樹状細胞特異的抗体又はその断片を含む融合タンパク質を用いて行われる。
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する抗原提示細胞によって活性化されたT細胞に関する。
【0051】
本発明において、前記T細胞は、腫瘍抗原ペプチドを認識するT細胞受容体を有する、単クローン(例えば、同一のTCRをコードする)又は多クローン(例えば、相異なるTCRをコードするクローンを有する)T細胞集団を称するもので、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、制御性T細胞、及びメモリーT細胞からなる群より選択される1種以上を含むことができ、これに限定されないT細胞の1つ以上の亜型を含有することができるが、好ましくは、メモリーT細胞であってもよい。
【0052】
本発明において、前記「メモリーT細胞(memory T cells)」は、これらの特異的抗原と前に遭遇して反応したT細胞又は活性化されたT細胞から分化したT細胞である。腫瘍特異的メモリーT細胞は、T細胞総量の小さい部分を構成するが、これらは、個人の全体寿命の間に腫瘍細胞の監視に重要な機能を行う。腫瘍特異的メモリーT細胞がこれらの特定腫瘍抗原を発現する腫瘍細胞に遭遇すれば、メモリーT細胞は直ちに活性化されてクローン増殖(clonally expanded)する。活性化され増殖されたT細胞は、エフェクターT細胞に分化して、高効率で腫瘍細胞を殺す。メモリーT細胞は、T細胞の臓器腫瘍抗原特異的反応を確立し維持するのに重要である。本発明において、活性化されたT細胞、好ましくは、活性化されたメモリーT細胞は、癌細胞の抗原を特異的に認識して、癌細胞の防御機序を避けて癌又は腫瘍性状態を治療するか、癌の再発、進行又は転移を予防することができる。
【0053】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する抗原提示細胞(Antigen presenting cells、APC)によってT細胞を活性化する方法に関する。
【0054】
本発明では、前記T細胞の活性化のためには、前記T細胞を本発明の癌特異的エピトープが負荷された抗原提示細胞と共培養することができる。
【0055】
本発明において、前記T細胞は、自己供給源、すなわち、目的の個体由来を含む多様な供給源から得ることができ、好ましくは、末梢血液由来の末梢血単核細胞(Peripheral blood mononuclear cell、PBMC)から得られ、より好ましくは、前記末梢血単核細胞の非付着性部分から得ることができる。本発明の一例として、前記PBMCの非付着性部分を末梢血液サンプルの密度勾配遠心分離によって得ることができ、これを抗CD3抗体(例えば、OKT3)がある又はない状態で、少なくとも1つのサイトカイン(例えば、IL-2)と一緒に培養して得ることができる。
【0056】
本発明において、前記T細胞は、腫瘍抗原ペプチドを認識するT細胞受容体を有する、単クローン(例えば、同一のTCRをコードする)又は多クローン(例えば、相異なるTCRをコードするクローンを有する)T細胞集団を称するもので、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、制御性T細胞、及びメモリーT細胞からなる群より選択される1種以上を含むことができ、これに限定されないT細胞の1つ以上の亜型を含有することができるが、好ましくは、メモリーT細胞であってもよい。
【0057】
また、本発明において、前記T細胞及び前記抗原提示細胞は、同一の個体、例えば、癌、好ましくは、EBV陽性癌に罹患している個体(例えば、低等級から中間等級の癌)に由来できるが、これに制限されるわけではない。
【0058】
本発明において、前記T細胞の活性化のために、前記T細胞は、本発明の抗原提示細胞と1、2、3、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、又は30日間のうちのいずれか1つ以上の間に共培養され、好ましくは、1日~21日、1日~14日、2日~10日、2日~5日、2日~5日、3日、5日、7日、10日、14日、16日、18日、又は21日間共培養されるが、これに制限されるわけではない。
【0059】
本発明において、前記T細胞と本発明の抗原提示細胞の共培養時、1種以上のサイトカインを添加してT細胞の活性化、成熟及び/又は増殖を促進し、後のメモリーT細胞への分化のためにT細胞をプライミングすることができる。このようなステップで使用できる例示的なサイトカインには、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-15(IL-15)、インターロイキン-21(IL-21)、又はこれらの組み合わせなどが含まれるが、これに限定されない。
【0060】
また、本発明では、前記T細胞と本発明の抗原提示細胞の共培養時、サイトカイン及び兔疫グロブリン重鎖不変部を含む融合タンパク質を添加してT細胞の活性化、成熟及び/又は増殖を促進し、後のメモリーT細胞への分化のためにT細胞をプライミングすることができる。ここで、前記サイトカインとしては、インターフェロン-γ(IFN-γ)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-12(IL-12)、IL-18、腫瘍壊死因子(TNF)又は顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)であってもよいが、これに制限されるわけではない。また、前記兔疫グロブリン重鎖不変部は、兔疫グロブリンヒンジ部、及び任意にCH2ドメイン、CH3ドメイン、及びCH4ドメイン又はその配合物から構成された群より選択される兔疫グロブリン重鎖不変部領域であってもよいが、これに制限されるわけではない。さらに、前記兔疫グロブリン重鎖不変部は、IgA(Igα)、IgD(Igδ)、IgE(Igε)、IgG(Igγ)、及びIgM(Igμ)で、当業界で呼ばれる任意の5つの兔疫グロブリンクラスに属する兔疫グロブリンに由来できるが、好ましくは、IgGクラスに由来する兔疫グロブリン重鎖不変部であってもよい。
【0061】
また、本発明では、前記T細胞と本発明の抗原提示細胞の共培養時、メモリーT細胞で高く発現する細胞表面タンパク質と結合するリガンド;及び兔疫グロブリン重鎖不変部を含む融合タンパク質を添加してT細胞の活性化、成熟及び/又は増殖を促進し、後のメモリーT細胞への分化のためにT細胞をプライミングすることができる。ここで、前記メモリーT細胞で高く発現する細胞表面タンパク質としては、CD27、CXCR3、又はCD62Lであってもよい。前記CD27に結合可能なリガンドとしては、CD70であってもよく、CXCR3に結合可能なリガンドは、CXCR9又はCXCR10であってもよいし、前記CD62Lに結合可能なリガンドは、GlyCAM-1、CD34、MadCAM-1、又はPSGL-1であってもよいが、これに制限されるわけではない。さらに、前記兔疫グロブリン重鎖不変部は、IgA(Igα)、IgD(Igδ)、IgE(Igε)、IgG(Igγ)、及びIgM(Igμ)で、当業界で呼ばれる任意の5つの兔疫グロブリンクラスに属する兔疫グロブリンに由来できるが、好ましくは、IgGクラスに由来する兔疫グロブリン重鎖不変部であってもよい。
【0062】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する癌特異的エピトープが負荷された抗原提示細胞を有効成分として含む免疫治療剤に関する。本発明に係る免疫治療剤は、免疫反応を増加させるか、特定疾病で、例えば、癌の治療又は予防に好ましい免疫反応の一部を選択的に上昇させることができる。
【0063】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する癌特異的エピトープが負荷された抗原提示細胞;及び/又は活性化されたT細胞を有効成分として含む抗癌ワクチン、又は癌の予防又は治療用薬学組成物に関する。
【0064】
本発明において、前記「癌」は、哺乳類で典型的に調節されない細胞成長で特徴づけられた生理的状態を示すか、指す。本発明において、予防、改善又は治療の対象になる癌は、エプスタイン-バールウイルス(epstein barr virus;EBV)陽性癌で、EBV陽性胃癌、EBV陽性子宮頸癌、EBV陽性バーキットリンパ腫(Burkitt’s lymphoma)、EBV陽性T細胞リンパ腫(T cell lymphomas)、EBV陽性乳癌、EBV陽性平滑筋肉腫(leiomyosarcomas)、EBV陽性平滑筋腫(smooth muscle tumors)、EBV陽性ホジキンリンパ腫(Hodgkin lymphoma)、EBV陽性鼻咽頭癌、又はEBV陽性移植後リンパ細胞増殖疾患(PTLD)であってもよく、好ましくは、EBV陽性胃癌であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0065】
本発明で提供する前記抗原提示細胞は、EBV陽性癌抗原特異的なT細胞、好ましくは、メモリーT細胞の分化及び増殖を誘導することができ、このように活性化されたメモリーT細胞は、癌細胞の防御機序を避けて癌又は腫瘍性状態を治療するか、癌の再発、進行又は転移を予防することができる。
【0066】
本発明に係る抗癌ワクチンは、1回投与することで行われる免疫化方法と、連続投与することで行われる免疫化方法をすべて含むことができる。本発明において、「予防」は、本発明の薬学組成物を用いて癌の症状を遮断するか、その症状を抑制又は遅延させるあらゆる行為であれば制限なく含むことができる。
【0067】
また、本発明において、「治療」は、本発明の薬学組成物を用いて癌の症状が好転するか、有利になるあらゆる行為であれば制限なく含むことができる。
【0068】
本発明において、前記薬学組成物は、カプセル、錠剤、顆粒、注射剤、軟膏剤、粉末、又は飲料形態であることを特徴とし、前記薬学組成物は、ヒトを対象にすることを特徴とすることができる。
【0069】
本発明において、前記薬学組成物は、これらに限定されるものではないが、それぞれ通常の方法によって、散剤、顆粒剤、カプセル、錠剤、水性懸濁液などの経口型剤形、外用剤、坐剤、及び滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用できる。本発明の薬学組成物は、薬学的に許容可能な担体を含むことができる。薬学的に許容される担体は、経口投与時には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用することができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張剤、安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。本発明の薬学組成物の剤形は、上述のような薬剤学的に許容される担体と混合して多様に製造可能である。例えば、経口投与時には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル(elixir)、サスペンション、シロップ、ウエハーなどの形態で製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アンプル又は多数回投薬の形態で製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、徐放型製剤などに剤形化することができる。
【0070】
一方、製剤化に適した担体、賦形剤、及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、未晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート、又は鉱物油などが使用できる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などを追加的に含むことができる。
【0071】
本発明において、前記薬学組成物の投与経路はこれらに限定されるものではないが、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下、又は直腸が含まれる。経口又は非経口投下が好ましい。
【0072】
本発明において、前記「非経口」とは、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、硬膜内、病巣内、及び頭蓋骨内注射又は注入技術を含む。本発明の薬学組成物はさらに、直腸投与のための坐剤の形態で投与される。
【0073】
本発明の前記薬学組成物は、使用された特定化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康、性別、定式、投与時間、投与経路、排出率、薬物配合、及び予防又は治療される特定疾患の重症度を含む様々な要因によって多様に変化することができ、前記薬学組成物の投与量は、患者の状態、体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路、及び期間によって異なるが、当業者によって適切に選択可能であり、1日0.0001~50mg/kg又は0.001~50mg/kg投与することができる。投与は、1日に1回投与してもよく、数回分けて投与してもよい。前記投与量は、いかなる面でも本発明の範囲を限定するものではない。本発明に係る医薬組成物は、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤に剤形化される。
【0074】
本発明の他の実施形態によれば、癌を予防又は治療するために、目的の個体に本発明で提供する癌特異的エピトープが負荷された抗原提示細胞;及び/又は活性化されたT細胞を投与するステップを含む、癌の予防又は治療方法に関する。
【0075】
本発明において、前記癌は、エプスタイン-バールウイルス(epstein barr virus;EBV)陽性癌で、EBV陽性胃癌、EBV陽性子宮頸癌、EBV陽性バーキットリンパ腫(Burkitt’s lymphoma)、EBV陽性T細胞リンパ腫(T cell lymphomas)、EBV陽性乳癌、EBV陽性平滑筋肉腫(leiomyosarcomas)、EBV陽性平滑筋腫瘍(smooth muscle tumors)、EBV陽性ホジキンリンパ腫(Hodgkin lymphoma)、EBV陽性鼻咽頭癌、又はEBV陽性移植後リンパ細胞増殖疾患(PTLD)であってもよく、好ましくは、EBV陽性胃癌であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0076】
本発明で提供する癌特異的エピトープが負荷された抗原提示細胞又は活性化されたT細胞の投与量、スケジュール、及び投与経路は、個体の大きさ及び条件によって、そして標準薬剤学的慣行によって決定可能である。例示的な投与経路は、静脈内、動脈内、腹腔内、肺内、血管内、筋肉内、器官内、皮下、眼内、脊髄腔内、又は経皮を含む。
【0077】
個体に投与される細胞の用量は、例えば、投与される細胞の特定類型、投与経路、及び治療される癌の特定類型と病期によって異なる。前記量は、激しい毒性又は有害な事例なしに、癌に対する治療反応のような所望の反応をもたらすのに十分でなければならない。一部の実施形態において、投与される活性化されたT細胞又は抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)の量は、治療的有効量である。一部の実施形態において、細胞(例えば、癌特異的エピトープが負荷された樹状細胞又は活性化されたT細胞)の量は、治療前の同一の個体での相応する腫瘍の大きさ、癌細胞の数又は腫瘍の成長速度と比較して、又は治療を受けていない他の個体での相応する活性と比較して、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%のうちのいずれか1つの分だけ腫瘍の大きさを減少させるか、癌細胞の数を減少させるか、腫瘍の成長速度を減少させるのに十分な量である。精製された酵素を用いた試験管内検定、細胞ベース検定、動物モデル、又は人体実験のような標準方法を用いて効果の規模を測定することができる。
【0078】
本発明の一実施形態において、本発明の癌特異的エピトープが負荷された抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)は、1×105~5×105、5×105~1×106、1×106~2×106、2×106~3×106、3×106~4×106、4×106~5×106、5×106~6×106、6×106~7×106、7×106~8×106、8×106~1×108、1×106~3×106、3×106~5×106、5×106~7×106、2×106~4×106、1×106~5×106、又は5×106~1×107個のうちのいずれか1つの細胞/個体の投与量で投与されるが、これに制限されるわけではない。
【0079】
本発明の他の実施形態において、本発明の癌特異的エピトープが負荷された抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)は、1×104~5×104、5×104~1×105、1×105~2×105、2×105~4×105、4×105~6×105、6×105~8×105、8×105~1×106、1×106~2×106、2×106~1×107、1×104~1×105、1×105~1×106、1×106~1×107、1×104~1×106、又は1×105~1×107個のうちのいずれか1つの細胞/kgの投与量で投与されるが、これに制限されるわけではない。
【0080】
また、本発明の一実施形態において、本発明の活性化されたT細胞は、1×108~5×108、5×108~9×108、9×108~1×109、1×109~2×109、2×109~3×109、3×109~4×109、4×109~5×109、5×109~6×109、6×109~1×1010、1×109~3×109、3×109~5×109、5×109~7×109、7×109~1×1010、1×109~5×109、5×109~1×1010、3×109~7×109、1×1010~1.5×1010、1×1010~2×1010、又は1×109~1×1010個のうちのいずれか1つの細胞/個体の投与量で投与されるが、これに制限されるわけではない。
【0081】
本発明の他の実施形態において、本発明の活性化されたT細胞は、1×107~1×108、1×108~2×108、2×108~4×108、4×108~6×108、6×108~8×108、8×108~1×109、1×109~2×109、2×109~4×109、4×109~1×1010、2×108~6×108、6×108~1×109、1×108~2×108、2×108~2×109、1×107~1×108、1×108~1×109、1×109~1×1010、又は1×107~1×109個のうちのいずれか1つの細胞/kgの投与量で投与されるが、これに制限されるわけではない。
【0082】
本発明において、前記癌特異的エピトープが負荷された抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)及び/又は活性化されたT細胞の投与時、ヒトアルブミンのような安定化剤又は賦形剤がともに使用できる。
【0083】
本発明において、前記癌特異的エピトープが負荷された抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)及び/又は活性化されたT細胞の投与量及び投与スケジュールは、投与する医師の判断に基づいて治療過程にわたって調整可能である。一部の実施形態において、活性化されたT細胞は、前記癌特異的エピトープが負荷された抗原提示細胞が投与され、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、又は1ヶ月後に投与されるか、前記抗原提示細胞と同時に投与されるが、これに制限されるわけではない。
【0084】
本発明において、前記癌特異的エピトープが負荷された抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)及び/又は活性化されたT細胞の投与時、単独で又は他の療法、例えば、手術、放射線治療、遺伝子治療、免疫治療、骨髄移植、幹細胞移植、ホルモン療法、標的治療、冷凍療法、超音波治療、光線力学療法、化学療法などとともに行われる。追加的に、増殖性疾患が発病する危険がより大きい人は疾患の発病を抑制及び/又は遅延するための治療を受けることができる。
【発明の効果】
【0085】
本発明で提供するエプスタイン-バールウイルス(EBV)陽性癌特異的エピトープが負荷された抗原提示細胞、すなわち、樹状細胞を介して前記癌抗原特異的なT細胞、好ましくは、メモリーT細胞の分化及び増殖を迅速で効果的に誘導することができ、このように活性化されたメモリーT細胞は、癌細胞の防御機序を避けてエプスタイン-バールウイルス(EBV)陽性癌又は腫瘍性状態を治療するか、癌の再発、進行又は転移を予防することができる。
【0086】
かつて養子(adoptive)T細胞治療において、癌患者治療のために多数のT細胞を生産するために3~6ヶ月の長時間がかかり、免疫細胞治療における細胞生産工程で大きな問題点があった。しかし、本発明による場合、患者の治療に使用しなければならない109の自己メモリーT細胞を3週以内に生産することができ、費用節減及び外部汚染源に対する感染危険要素を最小化することができる。したがって、本発明による場合、より多くの固形癌患者に迅速な治療的接近が可能で、末期癌患者にも適用可能な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【
図1】本発明の一実施例によりSNU719細胞株において、EBNA-1由来ネオエピトープのT細胞の活性化程度を確認するために、それぞれのネオエピトープに対するELISPOTを実施した結果を示すものである。
【
図2】本発明の一実施例によりEBV感染したMKN74細胞株において、EBNA-1由来ネオエピトープのT細胞の活性化程度を確認するために、それぞれのネオエピトープに対するELISPOTを実施した結果を示すものである。
【
図3】本発明の一実施例によりSNU719細胞株において、LMP-2A由来ネオエピトープのT細胞の活性化程度を確認するために、それぞれのネオエピトープに対するELISPOTを実施した結果を示すものである。
【
図4】本発明の一実施例によりEBV感染したMKN74細胞株において、LMP-2A由来ネオエピトープのT細胞の活性化程度を確認するために、それぞれのネオエピトープに対するELISPOTを実施した結果を示すものである。
【
図5】本発明の一実施例により作製されたヒト由来メモリーT細胞のEBV陽性胃癌細胞抗原の標的癌細胞の死滅活性を確認するために、HLAタイプによるSNU-719細胞株においてEBNA-1由来のネオエピトープの中から選定された3つのネオエピトープに対してそれぞれCr51放出分析法(Cr51 release assay)を行った結果を示すものである。
【
図6】本発明の一実施例により作製されたヒト由来メモリーT細胞のEBV陽性胃癌細胞抗原の標的癌細胞の死滅活性を確認するために、HLAタイプによるEBV感染したMKN74細胞株においてEBNA-1由来のネオエピトープの中から選定された3つのネオエピトープに対してそれぞれCr51放出分析法(Cr51 release assay)を行った結果を示すものである。
【
図7】本発明の一実施例により作製されたヒト由来メモリーT細胞のEBV陽性胃癌細胞抗原の標的癌細胞の死滅活性を確認するために、HLAタイプによるSNU-719細胞株においてLMP-2A由来のネオエピトープの中から選定された3つのネオエピトープに対してそれぞれCr51放出分析法(Cr51 release assay)を行った結果を示すものである。
【
図8】本発明の一実施例により作製されたヒト由来メモリーT細胞のEBV陽性胃癌細胞抗原の標的癌細胞の死滅活性を確認するために、HLAタイプによるEBV感染したMKN74細胞株においてLMP-2A由来のネオエピトープの中から選定された3つのネオエピトープに対してそれぞれCr51放出分析法(Cr51 release assay)を行った結果を示すものである。
【
図9】本発明の一実施例により作製されたヒト由来メモリーT細胞のEBV陽性胃癌細胞抗原のうち、EBNA-1由来ネオエピトープの癌細胞特異性を確認するために、EBV陰性MKN74細胞株から選定された3つのネオエピトープに対してそれぞれCr51放出分析法(Cr51 release assay)を行った結果を示すものである。
【
図10】本発明の一実施例により作製されたヒト由来メモリーT細胞のEBV陽性胃癌細胞抗原のうち、EBNA-1由来ネオエピトープの癌細胞特異性を確認するために、EBV陰性MKN74細胞株から選定された3つのネオエピトープに対してそれぞれCr51放出分析法(Cr51 release assay)を行った結果を示すものである。
【
図11】本発明の一実施例により作製されたヒト由来メモリーT細胞のEBV陽性胃癌細胞抗原のうち、LMP-2A由来ネオエピトープの癌細胞特異性を確認するために、EBV陰性MKN74細胞株から選定された3つのネオエピトープに対してそれぞれCr51放出分析法(Cr51 release assay)を行った結果を示すものである。
【
図12】本発明の一実施例により作製されたヒト由来メモリーT細胞のEBV陽性胃癌細胞抗原のうち、LMP-2A由来ネオエピトープの癌細胞特異性を確認するために、EBV陰性MKN74細胞株から選定された3つのネオエピトープに対してそれぞれCr51放出分析法(Cr51 release assay)を行った結果を示すものである。
【
図13】本発明の一実施例によりEBNA-1由来ネオエピトープの生体内(in vivo)抗癌効果を検証するために、BALB/cヌードマウス異種移植動物モデル(SNU-719)におけるネオエピトープ特異的細胞毒性T細胞の効果に対する実験結果を示すものである。
【
図14】本発明の一実施例によりEBNA-1由来ネオエピトープの生体内(in vivo)抗癌効果を検証するために、BALB/cヌードマウス異種移植動物モデル(EBV感染MKN74)におけるネオエピトープ特異的細胞毒性T細胞の効果に対する実験結果を示すものである。
【
図15】本発明の一実施例によりLMP-2A由来ネオエピトープの生体内(in vivo)抗癌効果を検証するために、BALB/cヌードマウス異種移植動物モデル(SNU-719)におけるネオエピトープ特異的細胞毒性T細胞の効果に対する実験結果を示すものである。
【
図16】本発明の一実施例によりLMP-2A由来ネオエピトープの生体内(in vivo)抗癌効果を検証するために、BALB/cヌードマウス異種移植動物モデル(EBV感染MKN74)におけるネオエピトープ特異的細胞毒性T細胞の効果に対する実験結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0088】
本発明の一実施形態によれば、配列番号1~184のうちのいずれか1つで表されるエプスタイン-バールウイルス(epstein barr virus;EBV)陽性癌特異的ネオエピトープ(neo-epitope)に関する。
【0089】
本発明の他の実施形態によれば、本発明で提供する前記癌特異的ネオエピトープ(neo-epitope)が負荷(loading)された抗原提示細胞(antigen presenting cells、APC)に関する。
【0090】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する抗原提示細胞(Antigen presenting cells)によって活性化されたT細胞に関する。
【0091】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する癌特異的エピトープが負荷された抗原提示細胞;及び/又は活性化されたT細胞を有効成分として含む抗癌ワクチン、又は癌の予防又は治療用薬学組成物に関する。
【実施例】
【0092】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないことは当業界における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0093】
[実施例1]EBV陽性胃癌細胞に特異的な自己メモリーT細胞の作製方法及び臨床的適用
1.EBV陽性胃癌細胞抗原ネオエピトープの選別
胃癌細胞で遺伝子変異が蓄積された最も主なシーケンスを予測し、このシーケンスがT細胞のHLAに結合するエピトープを予測するアルゴリズムは、バイオインフォマティクス及びプロテオミクスを利用して開発した。ネオエピトープ予測アルゴリズムとしては、NetMHC及びNetCTLpanを用いた。この時、韓国人にとって最も多く発現しているHLAタイプであるHLA-A*2402、HLA-A*A0201、及びHLA-A*3303を含む様々なHLAタイプで、HLA-A*1101、HLA-A*0206、HLA-A*3101と、HLA-B*5101、HLA-B*4403、HLA-B*5401、HLA-B*5801、HLA-B*3501と結合親和性が高いと予想されるペプチドシーケンスを発掘した。このために、現在存在するEBV+胃癌細胞株のHLAタイピング(typing)により各細胞株のHLAタイプを調べ、EBVウイルスによってEBV+胃癌細胞にのみ存在し、悪性腫瘍を誘発する代表的タンパク質であるLMP-2AとEBNA-1タンパク質に対して、NetMHCプログラムにより各HLAタイプと結合親和性が高いネオエピトープを予測して発掘した。その結果はそれぞれ表1及び2に示した。
【0094】
【0095】
【0096】
前記表1及び2から明らかなように、インシリコ(in silico)予測により、HLA-A*2402、HLA-A*A0201、HLA-A*3303、HLA-A*1101、HLA-A*0206、HLA-A*3101、HLA-B*5101、HLA-B*4403、HLA-B*5401、HLA-B*5801、又はHLA-B*3501に対して高い結合親和性を有するネオエピトープを発掘し、各HLAと結合親和性をIC50(nM)値により予測した。実際にヒトの胃癌細胞に存在し、体内にあるT細胞によって認知できるシーケンスを前記HLAとの結合親和性に基づいて選別した。表1から明らかなように、LMP-2Aに対するネオエピトープは、HLA-A*2402に対する結合親和性が高い順にTYGPVFMCL(IC50=43.1nM)、LLWTLVVLL(IC50=22368.6nM)、LTEWGSGNR(IC50=45205.3nM)を選定し、HLA-A*3101に対するネオエピトープは、LAYRRRWRR(IC50=5.2nM)、LTVMTNTLL(IC50=14004.8nM)、YPSASGSYG(IC50=42032nM)を選定した。また、表2から明らかなように、EBNA-1に対するネオエピトープは、HLA-A*2402に対する結合親和性が高い順にMVFLQTHIF(IC50=773.1nM)、AIKDLVMTK(IC50=39676.1nM)、GSRERARGR(IC50=47184.8nM)を選定し、HLA-A*3101に対するネオエピトープは、KTSLYNLRR(IC50=18.8nM)、RGRGGSGGR(IC50=289.3nM)、FPPMVEGAA(IC50=43126.1nM)を選定した。以下の実験のために、前記のように選別したネオエピトープをペプチド(eptide)で合成した。
【0097】
2.選別されたネオエピトープが負荷された樹状細胞で活性化されたT細胞のELISPOT結果
健康なヒトの血液から抽出したPBMCをフローサイトメトリーにより単核球(monocyte)と白血球(leukocyte)に分離して、単核球は樹状細胞に分化させるために、GM-CSFとIL-4サイトカインを培養液に入れて、2日間培養した。また、白血球の場合、抗-CD3/CD28抗体とともに3日間培養し、この後、IL-2サイトカインをともに入れた培養液で培養した。樹状細胞に分化した単核球に、前記のように選別したネオエピトープペプチドを電気衝撃遺伝子伝達法(electrophoration)を利用して樹状細胞に伝達する。この後、2日間培養して、樹状細胞の表面で前記ネオエピトープが発現することを確認した後、抗CD3/CD28抗体が含まれた培養液で培養している白血球とともに1:20(樹状細胞:白血球)の比率で共培養する。共培養時、培養液には樹状細胞の抗原提示機能の効能を増加させるサイトカインであるIL-4と、T細胞のメモリ細胞への転換を補助する機能をするサイトカインであるIL-2とIL-7をともに入れたサイトカインカクテルを混ぜて培養した。16時間後、このように活性化されたT細胞のIFN-γの発現程度をELISPOTで測定して、
図1~4に示した。ただし、前記実験に使用された陰性対照群のペプチドは、EBNA-1とLMP-2AでNetMHCを通して抽出されない任意のEBNA-1、LMP-2Aタンパク質のアミノ酸配列9mer(配列:GGSRERARG)を採用した。
【0098】
その結果、本発明のネオエピトープペプチドが負荷された樹状細胞とともに培養されたT細胞において、前記ペプチドのHLAに対する結合親和性と関係なく、対照群に比べてIFNrの分泌がはるかに多いことを確認することができた。
これによって、本発明において、前記表1及び2で、各細胞株のHLA-A類型によって選定されたネオエピトープが負荷された樹状細胞によって細胞毒性Tリンパ球(Cytotoxic T lymphocytes、CTLs)を活性化させることができ、このように活性化されたT細胞は、新抗原であるネオエピトープを認知できる抗原特異性を有することが分かった。
【0099】
3.選別されたネオエピトープが負荷された樹状細胞で活性化されたT細胞の癌細胞の溶血効果
前記2.のように、72時間共培養した後、樹状細胞を介して抗原が提示されたメモリーT細胞を選び出すために、IFNrサイトカインを分泌するT細胞を抽出できる磁石を用いた細胞抽出機(MACS)を用いてEBV抗原特異的メモリーT細胞を抽出した。抽出されたメモリーT細胞は、メモリ機能を維持し、細胞の数を増加させるために、IL-2、IL-7、IL-15サイトカインが混合された培養液で培養して、マウスに注入可能な細胞数に到達するまで培養した。
【0100】
このように活性化されたT細胞をEBV陽性胃癌細胞であるSNU-719細胞株と、EBV感染MKN74細胞株と共培養(co-culture)させて、癌細胞の溶血(lysis)の有無をCr51放出分析法(release assay)で確認して、その結果を
図5~8に示し、EBV陰性胃癌細胞であるMKN-74細胞株と共培養(co-culture)させて、癌細胞の溶血(lysis)の有無をCr51放出分析法(release assay)で確認して、その結果を
図9~12に示した。ただし、前記実験に使用された陰性対照群のペプチドは、EBNA-1とLMP-2AでNetMHCを介して抽出されない任意のEBNA-1、LMP-2Aタンパク質のアミノ酸配列9mer(配列:GGSRERARG)を採用した。
【0101】
その結果、本発明に係るネオエピトープで活性化されたT細胞は、EBV陽性胃癌細胞の溶血能に優れているのに対し、EBV陰性胃癌細胞に対する溶血能はわずかであることを確認することができた。すなわち、本発明に係るEBV癌特異的抗原ネオエピトープが負荷された樹状細胞で活性化されたT細胞は、EBV陽性癌細胞を特異的に溶血させることが分かる。
【0102】
また、本発明のネオエピトープで活性化されたT細胞は、特に、EBV陽性胃癌細胞との共培養時、混合濃度依存的に前記溶血能が増加する傾向を示し、各HLAタイプによるネオエピトープの中でも特にHLAとの結合親和性が高いほど、EBV陽性胃癌細胞株に対する溶血能が増加することを確認することができた。
【0103】
4.選別されたネオエピトープが負荷された樹状細胞で活性化されたT細胞の生体内(in vivo)での抗癌効果の確認
BALB/cヌードマウスの脇腹に、EBV陽性胃癌細胞株であるSNU-719(HLA type:HLA-A*2402)又はEBV感染MKN74(HLA type:HLA-A*3101)を1×10
7細胞の量でマトリゲルと混合して移植して異種移植動物モデルを作製し、4週経過して癌組織が観察されると、前記2.で活性化されたT細胞を1×10
7細胞の量で1週に1回ずつ腫瘍内(intratumoral)注入した後、癌組織の大きさを測定して、
図13~16に示した。ただし、前記実験に使用された陰性対照群のペプチドは、EBNA-1とLMP-2AでNetMHCを介して抽出されない任意のEBNA-1、LMP-2Aタンパク質のアミノ酸配列9mer(配列:GGSRERARG)を採用した。
【0104】
その結果、本発明に係るネオエピトープで活性化されたT細胞を処理した場合、対照群対比、EBV陽性胃癌の大きさが著しく減少したことを確認することができ、各HLAタイプによるネオエピトープの中でも特にHLAとの結合親和性が高いほど、胃癌の大きさ減少率が高いことを確認することができた。
【0105】
上記のように、各細胞株のHLA-A類型によって選定されたネオエピトープは、すべてT細胞の活性向上効果に優れ、バイオインフォマティクス(bioinformatics)による結合親和性が増加するほど(すなわち、IC50値が低くなるほど)、前記T細胞の活性向上及び標的癌細胞の死滅に対する活性度が増加することを確認することができた。これによって、表1及び2に示したネオエピトープを樹状細胞を用いてT細胞の活性を向上させることができ、これによって標的癌の治療効果にも優れることを容易に予測することができる。
【0106】
以上、本発明の特定の部分を詳細に述べたが、当業界における通常の知識を有する者にとってこのような具体的な記述は単に好ましい実施形態に過ぎず、そのため、本発明の範囲が制限されるわけではない点は明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付した請求項とその等価物によって定義されるというべきである。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、癌特異的ネオエピトープ(neo-epitope)、前記ネオエピトープが負荷された抗原提示細胞、及び前記抗原提示細胞によって癌治療のためのT細胞を活性化する方法に関する。
【配列表】