(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】吊り足場
(51)【国際特許分類】
E04G 3/28 20060101AFI20231011BHJP
E04G 7/32 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
E04G3/28 301A
E04G7/32 A
(21)【出願番号】P 2022020492
(22)【出願日】2022-02-14
【審査請求日】2023-08-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516288044
【氏名又は名称】株式会社クリス・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗栖 龍男
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-80810(JP,A)
【文献】特許第5860182(JP,B1)
【文献】特許第5860187(JP,B1)
【文献】登録実用新案第3223667(JP,U)
【文献】特開2015-137506(JP,A)
【文献】特開2018-048450(JP,A)
【文献】特開2017-128876(JP,A)
【文献】特開2017-048649(JP,A)
【文献】特開2003-314054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G1/00-7/34
27/00
E01D21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で矩形状をなすように接続された複数のデッキビームと、
作業床を構成するパネル材と、
前記デッキビームを建築物に吊り下げる吊り部材とを備えた吊り足場において、
複数の前記デッキビームの中で互いに対向するように配置された第1デッキビーム及び第2デッキビームの水平方向に延びるパイプ材にそれぞれ掛けられ、当該パイプ材の軸方向にスライドする一対のスライド部材と、
一対の前記スライド部材に連結され、前記第1デッキビーム及び前記第2デッキビームの離間方向に延びる布材とを備え、
前記パネル材の長手方向の端部は、前記布材に係合する係合部を有している吊り足場。
【請求項2】
請求項1に記載の吊り足場において、
前記第1デッキビーム及び前記第2デッキビームは、上側パイプ材と、当該上側パイプ材から下方に離れて配置され、当該上側パイプ材と平行に延びる下側パイプ材と、前記上側パイプ材及び前記下側パイプ材に固定され、当該上側パイプ材及び当該下側パイプ材を連結する連結材とを備え、
前記スライド部材は、前記上側パイプ材に掛けられる吊り足場。
【請求項3】
請求項2に記載の吊り足場において、
前記デッキビームは、前記第1デッキビーム及び前記第2デッキビームの端部を連結する第3デッキビーム及び第4デッキビームを含み、
前記第3デッキビーム及び前記第4デッキビームは、前記上側パイプ材よりも下方に配置され、前記第1デッキビーム及び前記第2デッキビームの離間方向に延びている吊り足場。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の吊り足場において、
前記スライド部材は、前記パイプ材の上に配置される上板部と、前記上板部における前記パイプ材の径方向両端部に対応する部分からそれぞれ下方へ延びる第1縦板部及び第2縦板部とを備えている吊り足場。
【請求項5】
請求項4に記載の吊り足場において、
前記第1縦板部には、前記布材の端部が連結される被連結部が設けられている吊り足場。
【請求項6】
請求項4または5に記載の吊り足場において、
前記第1縦板部及び前記第2縦板部は、前記パイプ材の下部よりも下方まで延びており、
前記第1縦板部及び前記第2縦板部には、前記パイプ材の下部に当接するクサビが打ち込まれるクサビ孔がそれぞれ水平方向に貫通するように形成されている吊り足場。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1つに記載の吊り足場において、
前記上板部には、上下方向に延びる短支柱の下端部が固定されている吊り足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば各種建築物等に吊り下げられた状態で使用される吊り足場に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な吊り足場は、例えば各種建築物等から吊り下げられた複数のパイプからなる梁部材を平行に配置し、梁部材間に横架材を架け渡し、横架材の上に作業床となる床材を設置することによって構成されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている吊り足場は、互いに平行配置される複数の梁ユニットと、梁ユニット間に架け渡される足場パネルとを備えている。梁ユニットは、複数の本体部を長手方向に連結することによって構成されている。本体部は、水平に延びる左右一対の上弦材と、左右の上弦材の下方において水平に延びる左右一対の下弦材と、上弦材及び下弦材に架け渡される複数の斜材とで構成されたトラス構造となっている。
【0004】
また、この特許文献1の吊り足場は、既設の梁ユニットに延長用の梁ユニットが連結可能になっている。延長用の梁ユニットを既設の梁ユニットに連結する際には、既設の梁ユニットに足場パネルを設置した後、延長用の梁ユニットを足場パネルの縁部に沿うように配置するとともに、既設の梁ユニットの先端部に対して連結ピンによって連結する。その後、延長用の梁ユニットを連結ピン周りに回動させて既設の梁ユニットの延長線上に直列に配置してから固定ピンによって固定する。延長用の梁ユニットを固定した後、延長用の梁ユニットの上に足場パネルを設置する。このように、既設の梁ユニットを吊り下げた状態で順次、足場を拡張していくことが可能な吊り足場は、先行床施工型吊り足場と呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、吊り足場を構築する際には、まず、既設の梁ユニットに延長用の梁ユニットを連結した後、この延長用の梁ユニットに別の延長用の梁ユニットを連結し、これを繰り返して作業床を拡張していくことになる。
【0007】
このとき、作業床を構成するアンチと呼ばれるパネル材も順次、梁ユニットに載置することになるが、このパネル材を安全にかつ所望の位置に設置するのが問題になる場合がある。
【0008】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、パネル材を安全にかつ所望の位置に設置できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様では、平面視で矩形状をなすように接続された複数のデッキビームと、作業床を構成するパネル材と、前記デッキビームを建築物に吊り下げる吊り部材とを備えた吊り足場を前提とすることができる。吊り足場は、複数の前記デッキビームの中で互いに対向するように配置された第1デッキビーム及び第2デッキビームの水平方向に延びるパイプ材にそれぞれ掛けられ、当該パイプ材の軸方向にスライドする一対のスライド部材と、一対の前記スライド部材に連結され、前記第1デッキビーム及び前記第2デッキビームの離間方向に延びる布材とを備えている。前記パネル材の長手方向の端部は、前記布材に係合する係合部を有している。
【0010】
この構成によれば、複数のデッキビームとパネル材とによってシステム化された吊り足場とすることができるので、従来からある単管吊り足場に比べて構築に要する時間が大幅に短縮される。複数のデッキビームの中で互いに対向する第1デッキビーム及び第2デッキビームのパイプ材に掛けられているスライド部材には布材が連結されていて、この布材にはパネル材の長手方向の端部の係合部が係合している。例えば先行床施工型吊り足場を構築する際には、第1デッキビーム及び第2デッキビームに別の第1デッキビーム及び第2デッキビームを接続して水平方向に延長していくことができ、このとき、第1デッキビーム及び第2デッキビームの基端側にスライド部材を配置した状態で布材にパネル材の係合部を係合させておくと、パネル材を先端側へ押すだけでスライド部材がスライドしていき、パネル材を第1デッキビーム及び第2デッキビームのパイプ材に沿って先端側へ送ることが可能になる。つまり、作業者が第1デッキビーム及び第2デッキビームの基端側に居ながら、パネル材を先端側へ安全に送り、所望の位置に設置可能になる。
【0011】
本開示の第2の態様では、前記第1デッキビーム及び前記第2デッキビームが、上側パイプ材と、当該上側パイプ材から下方に離れて配置され、当該上側パイプ材と平行に延びる下側パイプ材と、前記上側パイプ材及び前記下側パイプ材に固定され、当該上側パイプ材及び当該下側パイプ材を連結する連結材とを備えていてもよい。この場合、前記スライド部材は、前記上側パイプ材に掛けることができる。
【0012】
この構成によれば、パネル材の荷重を受ける第1デッキビーム及び第2デッキビームが上側パイプ材及び下側パイプ材を備えているので高い強度を持つものになり、耐荷重を十分に確保できる。
【0013】
本開示の第3の態様に係るデッキビームは、前記第1デッキビーム及び前記第2デッキビームの端部を連結する第3デッキビーム及び第4デッキビームを含んでいてもよい。前記第3デッキビーム及び前記第4デッキビームは、前記上側パイプ材よりも下方に配置され、前記第1デッキビーム及び前記第2デッキビームの離間方向に延びるように形成することができる。
【0014】
この構成によれば、パネル材を第1デッキビーム及び第2デッキビームのパイプ材に沿って先端側へ送る際に、第3デッキビーム及び第4デッキビームが第1デッキビーム及び第2デッキビームのパイプ材よりも下方に位置していることから、布材やスライド部材と干渉することはなく、パネル材を容易に設置できる。
【0015】
本開示の第4の態様に係るスライド部材は、前記パイプ材の上に配置される上板部と、前記上板部における前記パイプ材の径方向両端部に対応する部分からそれぞれ下方へ延びる第1縦板部及び第2縦板部とを備えていてもよい。
【0016】
この構成によれば、スライド部材がパイプ材の径方向にずれにくくなり、軸方向へ狙い通りにスライド可能になる。
【0017】
本開示の第5の態様に係るスライド部材の第1縦板部には、前記布材の端部が連結される被連結部が設けられていてもよい。
【0018】
この構成によれば、スライド部材の上板部よりも下に布材の端部を連結することができるので、パネル材の高さをスライド部材の上板部の高さに近づけることができる。
【0019】
本開示の第6の態様では、前記第1縦板部及び前記第2縦板部は、前記パイプ材の下部よりも下方まで延びていてもよい。この場合、前記第1縦板部及び前記第2縦板部には、前記パイプ材の下部に当接するクサビが打ち込まれるクサビ孔がそれぞれ水平方向に貫通するように形成されていてもよい。
【0020】
この構成によれば、第1縦板部及び第2縦板部のクサビ孔にクサビを打ち込むことで、クサビがパイプ材の下部に当接するので、パイプ材がクサビと上板部とで上下方向(径方向)に挟まれることになる。これにより、スライド部材をパイプ部材に対して軸方向に動かないように固定できる。
【0021】
本開示の第7の態様に係るスライド部材の上板部には、上下方向に延びる短支柱の下端部が固定することができる。この構成によれば、短支柱を用いることで、スライド部材に別の足場構成部材を固定することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、デッキビームのパイプ材にそれぞれ掛けられるスライド部材に布材を連結し、布材にパネル材の係合部を係合させることができるので、パネル材を安全にかつ所望の位置に設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】構築途中の吊り足場を上方から見た斜視図である。
【
図4】第1デッキビームを上方から見た斜視図である。
【
図5】第3デッキビームの端部近傍を上方から見た斜視図である。
【
図9】上側パイプ材に固定した状態を示すスライド部材の正面図である。
【
図10】クサビを省略したスライド部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る吊り足場1の側面図である。吊り足場1は、デッキ2と、作業床を構成する複数のパネル材3と、複数の吊り部材4とを備えている。パネル材3は、例えば木製足場板、鋼製足場板、アンチ(板付き布枠)等で構成されており、作業用の足場となる作業床を構成することができる部材であれば、特に限定されない。パネル材3の大きさや形状も、デッキ2の大きさや形状に合わせて任意に設定することができる。また、パネル材3の数も、デッキ2の大きさや形状によって変更可能である。本実施形態では、パネル材3がアンチであり、
図2や
図3にも示すように、長方形または長方形に近似可能な所定方向に長い板材3aと、板材3aの長手方向両端部(板材3aの一端部及び他端部)にそれぞれ設けられ、後述する布材に係合する係合部3bとを有している。
図2及び
図3は、吊り足場1を構築する途中の状態を示しており、パネル材3が設置途中となっている。また、
図2及び
図3は、各部材を模式的に示しており、各部材の詳細構造は省略している。
【0026】
2つの係合部3bが板材3aの一端部に互いに幅方向に間隔をあけて設けられるとともに、板材3aの他端部にも2つの係合部3bが互いに幅方向に間隔をあけて設けられている。これら4つの係合部3bは同じものであり、下方に開放するフック状に形成されている。
【0027】
吊り部材4は、デッキ2を構成するデッキビーム21~24(後述する)を建築物に吊り下げるための部材であり、例えば金属製のチェーン等で構成することができる。吊り部材4の上部は、例えば建築物等に対して直接または吊り具用金物等を介して間接的に固定されている。吊り部材4の下部にデッキビーム21~24が固定される。吊り部材4の本数は、デッキ2の大きさや形状に合わせて任意の本数にすることができる。また、吊り部材4の長さは、建築物や作業内容等に応じて任意の長さに変更することができる。デッキビーム21~24、パネル材3及び吊り部材4は、吊り足場1を構成する足場構成部材である。
【0028】
吊り足場1は、各種建築物の建築現場や各種土木作業現場において、その作業の種類や内容等に応じて構築されるものである。例えば、橋梁の架設や橋梁の補修工事等においても吊り足場1を使用することができる。建設作業以外にも、メンテナンス作業時にも吊り足場1が構築される。吊り足場1は、例えば規模の大きな生産設備や工場施設である各種プラントの建築現場やメンテナンス作業現場で構築するのに適している。各種プラントでは、建物の外部に複数の配管が入り組むようにして設けられており、これら配管に対する作業や建物に対する作業を行う際に、本実施形態に係る吊り足場1を構築することができる。
【0029】
図1に示すように、デッキ2は、第1デッキ2A、第2デッキ2B及び第3デッキ2Cを備えている。デッキ2は、第1デッキ2Aのみで構成されていてもよいし、任意の複数のデッキ2A~2Cで構成されていてもよく、その数は3つに限られるものではない。第1デッキ2Aは、第2デッキ2B及び第3デッキ2Cとは別に組み立てられるデッキであり、ファーストデッキとも呼ばれる。また、デッキ2は、紙面の奥行方向に拡張される形態であってもよい。
【0030】
すなわち、デッキ2を構築する際には、第1デッキ2Aを例えば地上で組み立てた後、吊り部材4によって建築物に吊り下げる工程を行う。この工程を行うことで、第2デッキ2B及び第3デッキ2Cよりも先にパネル材3によって作業床を形成できる。これがファーストデッキ組立工程である。ファーストデッキ組立工程の後、第1デッキ2Aの作業床に作業員が上がって第2デッキ2Bを組み立て、第2デッキ2Bの組み立てが完了した後、第2デッキ2Bの作業床に作業員が上がって第3デッキ2Cを組み立てることで、作業床を順次拡張していくことが可能になっている。つまり、本実施形態の吊り足場1は、既設のデッキ(第1デッキ2A)を吊り下げた状態で順次、足場を拡張していくことが可能な先行床施工型吊り足場である。第1デッキ2A、第2デッキ2B及び第3デッキ2Cの並ぶ方向が足場の拡張方向であり、施工方向とも呼ぶ。施工方向の手前側を基端側といい、奥側を先端側という。また、デッキ2を基端側から見た時に右となる側を単に右といい、左となる側を単に左という。尚、吊り足場1には、図示しないが、必要に応じて手摺、幅木、布材等が取り付けられていてもよい。
【0031】
図2及び
図3に示すように、第1デッキ2Aは、平面視で矩形状をなすように接続された複数のデッキビーム21~24、即ち、第1デッキビーム21と、第2デッキビーム22と、第3デッキビーム23と、第4デッキビーム24とを備えている。第1デッキ2Aは、筋交いを備えていてもよい。
【0032】
第1デッキビーム21は、第1デッキ2Aの右側に配置される部材であり、施工方向に水平に延びている。第2デッキビーム22は、第1デッキ2Aの左側に配置される部材であり、施工方向に水平に延びている。第1デッキビーム21及び第2デッキビーム22は、4本のデッキビーム21~24の中で、互いに左右方向に対向しており、互いに平行に配置されている。第1デッキビーム21と第2デッキビーム22とは同じものであり、よって、第1デッキビーム21及び第2デッキビーム22の長さは同じである。
【0033】
第3デッキビーム23は、第1デッキ2Aの基端側に配置される部材であり、左右方向に水平に延びている。第4デッキビーム24は、第1デッキ2Aの先端側に配置される部材であり、左右方向に水平に延びている。第3デッキビーム23及び第4デッキビーム24は、4本のデッキビーム21~24の中で、互いに施工方向に対向しており、互いに平行に配置されている。第3デッキビーム23と第4デッキビーム24とは同じものであり、よって、第3デッキビーム23及び第4デッキビーム24の長さは同じである。
【0034】
第1デッキビーム21と、第3デッキビーム23及び第4デッキビーム24とは直交しており、また、第2デッキビーム22と、第3デッキビーム23及び第4デッキビーム24とは直交している。第1デッキビーム21と第3デッキビーム23との長さは同じであってもよいし、一方が他方より長くてもよい。
【0035】
第1デッキビーム21の基端部が第3デッキビーム23の右端部と接続され、第1デッキビーム21の先端部が第4デッキビーム24の右端部と接続されている。また、第2デッキビーム22の基端部が第3デッキビーム23の左端部と接続され、第2デッキビーム22の先端部が第4デッキビーム24の左端部と接続されている。これらデッキビーム21~24の接続構造については後述する。また、デッキビーム21~24の長さは、特に限られるものではなく、任意に設定することができ、あくまでも例であるが、短いものから順に、610mm、914mm、1219mm、1524mm、1829mm等とすることもでき、この場合は5種類の長さのデッキビームを任意に組み合わせてデッキ2A~2Cを構成することができる。上記寸法は、例えばデッキビームの両端に取り付けるビームジョイントの中心~中心までの寸法とすることができる。
【0036】
尚、例えば第1デッキ2Aにおいて対向するデッキビーム21、22の長さ(またはデッキビーム23、24の長さ)は同じにする。これにより、第1デッキ2Aは、長方形か正方形となる。デッキビーム21~24の長さ、幅、上下方向の寸法等の諸元を予め決めておくことで、デッキビーム21~24を規格品とすることができ、システム化された吊り足場1を構成できる。
【0037】
また、
図1に側面視で示す第2デッキ2Bは、第1デッキ2Aと同様に平面視で矩形状をなしている。第2デッキ2Bの基端側のデッキビームは、第1デッキ2Aの第4デッキビーム24と共通化されている。第1デッキ2Aの第4デッキビーム24の右端部に、第2デッキ2Bの右側に配置される第1デッキビーム21が接続され、第1デッキ2Aの第4デッキビーム24の左端部に、第2デッキ2Bの左側に配置される第2デッキビーム(図示せず)が接続されている。第2デッキ2Bの第1デッキビーム21の先端部に第4デッキビームの右端部が接続され、第2デッキ2Bの第2デッキビーム22の先端部に第4デッキビームの左端部が接続されている。これにより、第2デッキ2Bが構成される。
【0038】
また、
図1に側面視で示す第3デッキ2Cも第1デッキ2Aと同様に平面視で矩形状をなしている。第3デッキ2Cの基端側のデッキビームは、第2デッキ2Bの第4デッキビーム24と共通化されている。第2デッキ2Bの第4デッキビーム24の右端部に、第3デッキ2Cの右側に配置される第1デッキビーム21が接続され、第2デッキ2Bの第4デッキビーム24の左端部に、第3デッキ2Cの左側に配置される第2デッキビーム(図示せず)が接続されている。第3デッキ2Cの第1デッキビーム21の先端部に第4デッキビームの右端部が接続され、第3デッキ2Cの第2デッキビーム22の先端部に第4デッキビームの左端部が接続されている。これにより、第3デッキ2Cが構成される。
【0039】
第1デッキビーム21と第2デッキビーム22とは同じものであることから、以下、
図4に基づいて第1デッキビーム21の構造について詳細に説明する。第1デッキビーム21は、上側パイプ材40と、下側パイプ材41と、一側連結材42と、他側連結材43と、中間パイプ材44とを備えている。上側パイプ材40及び下側パイプ材41は、例えば円形断面を有する鋼管等で構成されており、具体的には、従来から仮設足場を構成している単管建地や布材等の部材である。よって、上側パイプ材40及び下側パイプ材41の外径は、単管建地や布材等と同じである。
【0040】
上側パイプ材40は水平に延びている。下側パイプ材41は、上側パイプ材40から下方に離れて配置され、当該上側パイプ材40と平行に延びている。上側パイプ材40の外径と下側パイプ材41の外径とは同じであるが、異なっていてもよい。また、上側パイプ材40の長さと下側パイプ材41の長さとは同じである。第1デッキビーム21の長さは、上側パイプ材40の長さに相当する。平面視で第1デッキビーム21の長手方向に直交する方向を第1デッキビーム21の左右方向と定義し、第1デッキビーム21の左右方向は第1デッキビーム21の幅方向と呼ぶこともできる。
【0041】
一側連結材42及び他側連結材43は、それぞれ、上側パイプ材40及び下側パイプ材41に対して例えば溶接等によって固定されており、当該上側パイプ材40材及び当該下側パイプ材41を連結するための部材である。一側連結材42は、上側パイプ材40の一端部から下側パイプ材41の一端部まで延び、左右方向に互いに間隔をあけて配設された左右一対の金属製の板材42a、42bで構成されている。左側の板材42aは、上側パイプ材40の一端部の外周面における下側部分から下側パイプ材41の一端部の外周面における上側部分まで連続して延びるとともに、第1デッキビーム21の長手方向にも延びており、平面視で上側パイプ材40及び下側パイプ材41の軸線から左方向に偏位している。右側の板材42bは、左側の板材42aと平行であり、平面視で上側パイプ材40及び下側パイプ材41の軸線から右方向に偏位している。平面視では、左右の板材42a、42bが上側パイプ材40によって隠れるように位置付けられる。
【0042】
他側連結材43は、上側パイプ材40の他端部から下側パイプ材41の他端部まで延び、左右方向に互いに間隔をあけて配設された左右一対の板材43a、43bで構成されている。左側の板材43aは、上側パイプ材40の他端部の外周面における下側部分から下側パイプ材41の他端部の外周面における上側部分まで連続して延びるとともに、第1デッキビーム21の長手方向にも延びており、平面視で上側パイプ材40及び下側パイプ材41の軸線から左方向に偏位している。右側の板材43bは、左側の板材43aと平行であり、平面視で上側パイプ材40及び下側パイプ材41の軸線から右方向に偏位している。一側連結材42と他側連結材43とは同じ構造である。従って、第1デッキビーム21は、長手方向の中央部を通って鉛直方向に延びる直線を対称の中心とした対称構造となっている。
【0043】
中間パイプ材44は、例えば鋼管等で構成されており、上側パイプ材40の長手方向中間部から下側パイプ材41の長手方向中間部まで延びている。中間パイプ材44の上端部は、上側パイプ材40の外周面における下側部分に対して上側ブラケット44aを介して固定されている。中間パイプ材44の下端部は、下側パイプ材41の外周面における上側部分に対して下側ブラケット44bを介して固定されている。中間パイプ材44も上側パイプ材40及び下側パイプ材41に対して溶接等で固定することができる。したがって、上側パイプ材40と下側パイプ材41とは、長手方向両端部だけではなく、中間部同士も連結されることになるので、第1デッキビーム21は高い強度を確保することができる。中間パイプ材44は、平面視で上側パイプ材40の径方向両方にはみ出さないように形成されている。
【0044】
尚、中間パイプ材44の個数は1つに限られるものではなく、2つ以上であってもよい。中間パイプ材44は、足場構成部材に設けられたクサビが差し込まれる差し込み部を有していてもよい。上側パイプ材40及び下側パイプ材41が短い場合には、中間パイプ材44を省略してもよい。
【0045】
第1デッキビーム21の左右方向の寸法は、上下方向の寸法よりも短く設定されている。すなわち、第1デッキビーム21を構成する上側パイプ材40は1本のみであり、上側パイプ材40の側方に別のパイプ材が配設されておらず、また、下側パイプ材41も1本のみであり、下側パイプ材41の側方に別のパイプ材が配設されていない。そして、これら上側パイプ材40及び下側パイプ材41が平面視で左右方向には並ばないように配置されている。具体的には、上側パイプ材40の真下に下側パイプ材41が位置しており、従って、平面視では、上側パイプ材40の軸線と、下側パイプ材41の軸線とが重複する位置関係になる。このように上側パイプ材40及び下側パイプ材41を配置することで、第1デッキビーム21の左右方向の寸法は、上側パイプ材40ないし下側パイプ材41の外径と等しくなる。尚、中間パイプ材44のブラケット44a、44bの左右方向の寸法が上側パイプ材40ないし下側パイプ材41の外径よりも大きい場合があるが、その差は僅かであるとともに、第1デッキビーム21の長手方向の一部分のみであるため、デッキ2を構成する上では殆ど問題にならない。また、中間パイプ材44のブラケット44a、44bの左右方向の寸法を上側パイプ材40ないし下側パイプ材41の外径以下としてもよい。
【0046】
第1デッキビーム21の上側パイプ材40と、第2デッキビーム22の上側パイプ材40とは同じ高さに配置される。また、第1デッキビーム21の下側パイプ材41と、第2デッキビーム22の下側パイプ材41とは同じ高さに配置される。
【0047】
次に、第3デッキビーム23及び第4デッキビーム24について説明する。第3デッキビーム23と第4デッキビーム24とは同じものであることから、
図2及び
図5に基づいて第3デッキビーム23の構造について詳細に説明する。第3デッキビーム23は、第1デッキビーム21の上側パイプ材40よりも下方に配置され、第1デッキビーム21及び第2デッキビーム22の離間方向(第1デッキ2Aの左右方向)に延びている。
【0048】
第3デッキビーム23は、第1デッキビーム21の上側パイプ材40と同様な円形断面を有する鋼管等で構成されている。第3デッキビーム23の外径と、第1デッキビーム21の上側パイプ材40の外径とは同じにすることができる。第3デッキビーム23は、第1デッキビーム21の上側パイプ材40よりも上方に位置しており、具体的には、第1デッキビーム21の上下方向中央部と同じ高さに位置付けられている。
【0049】
図2に示すように、第3デッキビーム23の長手方向両端部には、ビームジョイント72がそれぞれ接続されている。第3デッキビーム23の右端部に配置されるビームジョイント72は、第3デッキビーム23の右端部と、第1デッキビーム21の基端部とを接続するための部材であり、また、第3デッキビーム23の左端部に配置されるビームジョイント72は、第3デッキビーム23の左端部と、第2デッキビーム22の基端部とを接続するための部材である。同様に、第4デッキビーム24の長手方向両端部にもビームジョイント72がそれぞれ接続されている。第4デッキビーム24の右端部に配置されるビームジョイント72は、第4デッキビーム24の右端部と、第1デッキビーム21の先端部とを接続するための部材であり、また、第4デッキビーム24の左端部に配置されるビームジョイント72は、第4デッキビーム24の左端部と、第2デッキビーム22の先端部とを接続するための部材である。
【0050】
図7に示すように、ビームジョイント72は、ジョイント本体72aと、第1接続部72bと、第2接続部72gと、第3接続部72eとを備えており、これらは高強度な金属材で構成されている。ジョイント本体72aは上下方向に延びる円管材からなり、その上下方向の寸法は第1デッキビーム21の上下方向の寸法よりも短く設定されている。第1接続部72b、第2接続部72g及び第3接続部72eは、上下方向に延びる板材で構成されており、ジョイント本体72aに対して固定されている。第1接続部72bと第2接続部72gとは互いに反対方向に突出するように配置され、また、第1接続部72bと第3接続部72eとは平面視でのなす角度が直角となるように配置されている。第1接続部72b、第2接続部72g及び第3接続部72eには、それぞれ挿入孔72d、72h、72iが形成されている。
【0051】
また、
図5に示すように、第3デッキビーム23の両端部には、それぞれ、上下方向に延びる第1連結板23aと第2連結板23bとが当該第3デッキビーム23の軸方向に沿って突出するように固定されている。
図5では第3デッキビーム23の一端部のみ示しているが、他端部も同様な構造となっている。第1連結板23aと第2連結板23bとは互いに平行であり、第1連結板23aと第2連結板23bとの間には、
図7に示すビームジョイント72の第3接続部72eを差し込むことが可能な隙間が形成されている。
図5に示すように、第1連結板23aと第2連結板23bには、挿入孔23cと挿入孔23dがそれぞれ形成されている。ビームジョイント72の第3接続部72eを第1連結板23aと第2連結板23bとの間に差し込んだ状態で、第3接続部72eの挿入孔72iと、第1連結板23a及び第2連結板23bの挿入孔23c及び挿入孔23dとが一致するようになっている。挿入孔72i、挿入孔23c及び挿入孔23dには、後述する
図6に示すような留め具63が挿入され、この留め具63によって第3デッキビーム23とビームジョイント72とが着脱可能に連結される。
【0052】
ジョイント本体72aの上下両端部はそれぞれ開放されているので、ジョイント本体72aには吊り部材4を挿入することができるようなっている。また、ジョイント本体72aには、周壁部を貫通する複数の貫通孔72fが形成されている。吊り部材4をジョイント本体72aに挿入した状態で、ピン(図示せず)を外部から貫通孔72fに差し込むとともに、吊り部材4を構成しているチェーンの穴に通すことで、ジョイント本体72aを吊り部材4に固定できる。この固定位置によってデッキ2の高さを任意に設定できる。
【0053】
第1接続部71bは、第1デッキビーム21の一対の板材42a、42bの間に差し込まれる部分であり、ジョイント本体72aに固定されている。第1接続部71bは、板材42a、42bに沿って上下方向に延びるとともに、第1デッキビーム21の長手方向にも延びている。第1接続部71bの長手方向(第1デッキビーム21の長手方向と同方向)の寸法は、板材42a、42bの同方向の寸法よりも長く設定されている。これにより、第1接続部71bが板材42a、42bの間に差し込まれた状態で、板材42a、42bの間から突出する(
図7では第2デッキビーム22に接続された状態を示している)。第1接続部71bは、板材42a、42bの間へ向けて第1デッキビーム21の端部から差し込まれるので、差し込み方向を基準として、第1接続部71bの先端部は差し込み方向の先端側に位置する端部とし、第1接続部71bの基端部は差し込み方向の基端側に位置する端部とする。
【0054】
第1接続部71bの先端部寄りの部分は、板材42a、42bの間から突出する部分である。この第1接続部71bの先端部寄りの部分には、
図6に示すような留め具63が挿入される挿入孔72dが厚み方向に貫通するように形成されている。留め具63は、互いに直交する第1棒状部63a及び第2棒状部63bを備えている。第1棒状部63aの先端部は、回動軸63c周りに回動可能になっている。第1棒状部63aを挿入孔72dに挿入した状態で第1接続部72bが板材42a、42bの間から抜ける方向に移動しようとすると、第1棒状部63aが板材42a、42bの縁部に当接するので、第1接続部72bが板材42a、42bの間から抜けなくなる。第1棒状部63aを挿入孔72dから抜いて留め具63を取り外すことにより、第1接続部72bを板材42a、42bの間から抜くことができる。留め具63は、例えば板材42a、42bを貫通するように取り付けることもできる。また、留め具63は、例えば板材42aやジョイント本体72aに対して落下防止用のワイヤやチェーン等(図示せず)で取り付けられている。
【0055】
第2接続部72gは、第1接続部71bと同様に構成された板材からなるものであり、ジョイント本体72aに固定され、第1接続部71bと反対方向に延びている。第2接続部72gにも、留め具63の挿通が可能な挿入孔72hが形成されている。
【0056】
(スライド部材及び布材)
図2及び
図3に示すように、吊り足場1は、第1デッキビーム21の上側パイプ材40及び第2デッキビーム22の上側パイプ材40にそれぞれ掛けられ、当該上側パイプ材40の軸方向にスライドする一対のスライド部材80、80と、一対のスライド部材80、80に連結され、第1デッキビーム21及び第2デッキビーム22の離間方向に延びる布材90とを備えている。パネル材3の係合部3bは、布材90に対して上方から掛けられた状態で係合するようになっている。
【0057】
一対のスライド部材80、80は同じものである。
図8及び
図9に示すように、各スライド部材80は、本体部81と、ポケット82と、クサビ83とを有している。本体部81が上側パイプ材40に上から掛けられる部分であり、上側パイプ材40の軸方向にスライド可能になっている。本体部81は、上側パイプ材40の上に配置される上板部81aと、上板部81aにおける上側パイプ材40の径方向両端部に対応する部分からそれぞれ下方へ延びる第1縦板部81b及び第2縦板部81cとを備えている。上板部81aは、上側パイプ材40の上部に沿って軸方向に延びるとともに、径方向に対応する方向(左右方向)にも延びている。
【0058】
図9にも示すように、第1縦板部81bは、上板部81aにおけるデッキ2の内方に位置する端部から下方へ延びている。第2縦板部81cは、上板部81aにおけるデッキ2の外方に位置する端部から下方へ延びている。尚、デッキ2の内外方向は、
図9に示す方向と反対であってもよい。
【0059】
第1縦板部81bと第2縦板部81cとは、上端部同士が上板部81aによって連結されているだけであり、下方向及び上側パイプ材40の軸方向に対応する両方向は開放されている。第1縦板部81bと第2縦板部81cとの間隔は、上端部から下端部まで略同じに設定されており、上側パイプ材40の外径よりも若干広めである。これにより、上側パイプ材40を第1縦板部81b及び第2縦板部81cの下方から、第1縦板部81b及び第2縦板部81cの間に容易に挿入することができ、スライド部材80を上側パイプ材40に簡単に掛けることが可能になる。スライド部材80を上側パイプ材40に掛けた状態では、スライド部材80に作用する下向きの荷重を、上板部81aを介して上側パイプ材40で受けることができる。また、スライド部材80が上側パイプ材40の径方向に変位しようとすると、第1縦板部81bまたは第2縦板部81cが上側パイプ材40の外面に当接することで変位が抑制されてスライド部材80の脱落を未然に防止できる。
【0060】
第1縦板部81b及び第2縦板部81cは、上側パイプ材40の下部よりも下方まで延びている。ポケット82は、布材90の端部が連結される部分(被連結部)である。すなわち、布材90の両端部には、それぞれ下方へ突出するクサビ(図示せず)が設けられている。ポケット82は上下方向に開放されており、布材90のクサビを上方から差し込み可能に構成されている。本実施形態では、ポケット82が第1縦板部81bと第2縦板部81cとの両方に設けられているが、第1縦板部81bと第2縦板部81cとの一方にのみ設けられていてもよい。
【0061】
第1縦板部81b及び第2縦板部81cには、上側パイプ材40の下部に当接するクサビ83が打ち込まれる第1クサビ孔81d及び第2クサビ孔81eがそれぞれ形成されている。第1クサビ孔81dは、矩形状とされており、第1縦板部81bの厚み方向(水平方向)に貫通している。また、第2クサビ孔81eも矩形状とされており、第2縦板部81cの厚み方向(水平方向)に貫通している。第1クサビ孔81dの下縁部と、第2クサビ孔81eの下縁部とは同じ高さに位置しており、上側パイプ材40の軸方向に直線状に延びている。一方、第1クサビ孔81dの上縁部は、第2クサビ孔81eの上縁部よりも上に位置しており、下縁部と平行に延びている。第1クサビ孔81d及び第2クサビ孔81eの幅(上側パイプ材40の軸方向に対応する方向の寸法)は、同じに設定されている。
【0062】
クサビ83の長さは、第1クサビ孔81dから第2クサビ孔81eに達し、かつ、第1クサビ孔81dからデッキ2の内方へ突出するとともに、第2クサビ孔81eからデッキ2の外方へも突出するように設定されている。クサビ83は、第1クサビ孔81dへの打ち込み方向に長い下板部83aと、下板部83aの幅方向両端部から上方へ突出する一対の側板部83b、83bとを有している。側板部83b、83bの上下方向の寸法は、打ち込み方向先端に近づくほど短くなるように設定されている。具体的には、側板部83b、83bの打ち込み方向先端の上下方向の寸法は、第2クサビ孔81eに挿入可能に設定されているが、側板部83b、83bの打ち込み方向基端の上下方向の寸法は、第1クサビ孔81dの上下方向の寸法よりも長く設定されていて、クサビ83の基端が第1クサビ孔81dを通過不能になっている。
【0063】
図10に示すように、クサビ83の下板部83aには、打ち込み方向に延びるスリット83cが形成されている。スリット83cには、
図9に示すようにクサビホルダ81fが入るようになっている。クサビホルダ81fは、第1縦板部81bに両端部が固定された棒状の部材で構成されており、クサビ83が本体部81から落下しないようにするためのものである。クサビ83を第1クサビ孔81d及び第2クサビ孔81eから抜くと、クサビ83は
図9に仮想線で示すように下に垂れ下がった姿勢(非固定姿勢)になる。一方、
図9に実線で示す固定姿勢となるように、クサビ83を第1クサビ孔81d及び第2クサビ孔81eに打ち込むと、クサビ83の側板部83b、83bの上縁部が下側パイプ材41に下から当接して下側パイプ材41をクサビ83と上板部81aとによって上下方向に強固に挟むことができる。これにより、スライド部材80を上側パイプ部材40に対して軸方向に動かないように固定できる。クサビホルダ81fは、スリット83cに挿入した後に第1縦板部81bに固定すればよい。
【0064】
(変形例1)
スライド部材80は、
図12に示す変形例1のように構成することもできる。変形例1に係るスライド部材80は、
図8に示す例と比べて、布材90の端部が連結される被連結部の構造が異なるだけであり、他の部分は同一である。すなわち、スライド部材80は、水平方向に延びる板材84を備えており、この板材84によって被連結部が構成されている。板材84には、布材90のクサビが差し込まれる差込孔84aが上下方向に貫通するように形成されている。布材90のクサビを差込孔84aに差し込むことにより、布材90をスライド部材80に連結することが可能になる。差込孔84aの形状や大きさは、布材90のクサビに合わせて設定することができ、図示したものに限られない。
【0065】
(変形例2)
スライド部材80は、
図13に示す変形例2のように構成することもできる。変形例2に係るスライド部材80の上板部81aには、上下方向に延びる短支柱85の下端部が固定されている。短支柱85の上部には貫通孔85aが形成されている。また、上板部81aには、短支柱85の下端部を囲むように形成された大径の環状部材86も固定されている。例えば図示しない支柱の下部に短支柱85を差し込んだ状態で、ピン(図示せず)を貫通孔85aに挿入することで、支柱を短支柱85に固定することができる。支柱の下端面は、環状部材86の上端面に当接するようになっている。
【0066】
(変形例3)
スライド部材80は、
図14に示す変形例3のように構成することもできる。変形例3に係るスライド部材80は、変形例2と同様な板材84を備えている。変形例3に係るスライド部材80の上板部81aには、変形例2と同様に上下方向に延びる短支柱85及び環状部材86の下端部が固定されている。
【0067】
(パネル材の設置方法)
次に、
図2及び
図3に基づいてパネル材3の設置方法について説明する。パネル材3を設置する前に、第1デッキ2Aを吊り部材4によって建築物に吊り下げる。第1デッキ2Aを構成している第1デッキビーム21の上側パイプ材40及び第2デッキビーム22の上側パイプ材40には、それぞれ、スライド部材80を掛ける。このとき、クサビ83による固定は行わない。
【0068】
一対のスライド部材80、80に布材90の両端部を連結する。スライド部材80、80及び布材90は第1デッキビーム21及び第2デッキビーム22の基端側に寄せておき、パネル材3の一端部の係合部3bを布材90に係合させる。このとき、第1デッキ2Aの一部のパネル材3のみ布材90に係合させておく。その後、
図2に矢印で示すように、パネル材3を第1デッキ2Aの先端側へ押すと、パネル材3がスライド部材80によって上側パイプ材40に支持されているので、上側パイプ材40によって先端側へ案内されながら移動する。
【0069】
このように、パネル材3を第1デッキビーム21及び第2デッキビーム22のパイプ材40に沿って先端側へ送る際に、第3デッキビーム23及び第4デッキビーム24が第1デッキビーム21及び第2デッキビーム22のパイプ材よりも下方に位置していることから、布材90やスライド部材80、80と干渉することはなく、パネル材3を容易に設置できる。
【0070】
図3に示すように、上側パイプ材40の基端側には別のスライド部材80、80を掛け、スライド部材80、80に布材90を連結する。この基端側の布材90にパネル材3の他端部の係合部3bを係合させる。このようにして2枚のパネル材3を第1デッキ2Aに設置した後、1枚を右端へ移動させ、もう1枚を左端へ移動させることによって第1デッキ2Aの左右両側にパネル材3を設置する。その後、第1デッキ2Aの左右方向中間部にパネル材3を設置することで、第1デッキ2Aに作業床を形成する。また、スライド部材80のクサビ83を第1クサビ孔81d及び第2クサビ孔81eに打ち込んでスライド部材80を上側パイプ材40に固定する。
【0071】
第1デッキ2Aに作業床を形成した後、第2デッキ2Bを構成する第1デッキビーム21及び第2デッキビームを、第1デッキ2Aの第1デッキビーム21及び第2デッキビーム22に接続する。また、第2デッキ2Bを構成する第4デッキビームを、第2デッキ2Bの第1デッキビーム21及び第2デッキビームに接続する。
【0072】
その後、第1デッキ2Aの場合と同様に、第2デッキ2Bを構成している第1デッキビーム21の上側パイプ材40及び第2デッキビームの上側パイプ材(図示せず)に、それぞれ、スライド部材80を掛け、一対のスライド部材80、80に布材90の両端部を連結する。パネル材3の一端部の係合部3bを布材90に係合させた後、パネル材3を第2デッキ2Bの先端側へ押してパネル材3を設置していく。このようにして第3デッキ2Cも構築することができる。
【0073】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、複数のデッキビーム21~24とパネル材3とを用いてシステム化された吊り足場1とすることができるので、従来からある単管吊り足場に比べて構築に要する時間が大幅に短縮される。
【0074】
例えば第1デッキ2Aを構成している4本のデッキビーム21~24の中で互いに対向する第1デッキビーム21及び第2デッキビーム22の上側パイプ材40、40に掛けられているスライド部材80、80には布材90が連結されていて、この布材90にはパネル材3の係合部3bが係合している。例えば先行床施工型吊り足場1を構築する際には、第1デッキビーム21及び第2デッキビーム22に別の第1デッキビーム21及び第2デッキビーム22を接続して水平方向に延長していくことができ、このとき、第1デッキビーム21及び第2デッキビーム22の基端側にスライド部材80、80を配置した状態で布材90にパネル材3の係合部3bを係合させておくと、パネル材3を先端側へ押すだけで、パネル材3を第1デッキビーム21及び第2デッキビーム22の上側パイプ材40、40に沿って先端側へ送ることが可能になる。つまり、作業者が第1デッキビーム21及び第2デッキビーム22の基端側に居ながら、パネル材3を先端側へ安全に送り、所望の位置に設置することができる。
【0075】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明に係る吊り足場は、例えば各種建築物等の作業現場で利用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 吊り足場
2 デッキ
3 パネル材
3b 係合部
4 吊り部材
21 第1デッキビーム
22 第2デッキビーム
23 第3デッキビーム
24 第4デッキビーム
40 上側パイプ材
41 下側パイプ材
42 一側連結材
43 他側連結材
80 スライド部材
81a 上板部
81b 第1縦板部
81c 第2縦板部
90 布材