(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】物体検知装置、画像処理表示方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20231011BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231011BHJP
【FI】
H04N7/18 D
H04N7/18 K
G06T7/00 350B
(21)【出願番号】P 2022040061
(22)【出願日】2022-03-15
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】和田 慎二
【審査官】長谷川 素直
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-104117(JP,A)
【文献】特開2013-025528(JP,A)
【文献】特開2013-225289(JP,A)
【文献】特開2019-067174(JP,A)
【文献】特開2020-190925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
G06T 7/00
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域を撮像してカメラ画像を出力する測距カメラと、
前記カメラ画像の2D画像から対象物体の検知を行う第1物体検知部と、
前記カメラ画像の測距画像から前記対象物体の検知を行う第2物体検知部と、
前記第1物体検知部及び第2物体検知部が検知した前記対象物体に関する対象物体情報に基づいて対象物体の2Dモデリング画像及び測距モデリング画像を作成するモデリング画像生成部と、
前記2Dモデリング画像を前記カメラ画像に重畳する2Dオーバーレイ画像を生成する2Dオーバーレイ画像生成部と、
前記
測距モデリング画像を前記カメラ画像に重畳する測距オーバーレイ画像を生成する測距オーバーレイ画像生成部と、
前記2Dオーバーレイ画像及び前記測距オーバーレイ画像を表示する表示部とを備える物体検知装置。
【請求項2】
前記第1物体検知部及び前記第2物体検知部は、画像学習エンジンを用いて前記対象物体の検知を行う請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項3】
前記モデリング画像生成部は、
前記第1物体検知部及び前記第2物体検知部の検知結果に基づいて製品DBから前記対象物体情報を取得して
前記2Dモデリング画像及び前記測距モデリング画像を作成する請求項1または2に記載の物体検知装置。
【請求項4】
測距カメラから取得したカメラ画像の2D画像から対象物体の検知を行う第1物体検知工程と、
前記カメラ画像の測距画像から前記対象物体の検知を行う第2物体検知工程と、
前記第1物体検知工程及び第2物体検知工程で検知した前記対象物体に関する対象物体情報に基づいて対象物体の2Dモデリング画像及び測距モデリング画像を作成するモデリング画像生成工程と、
前記2Dモデリング画像を前記カメラ画像に重畳する2Dオーバーレイ画像を生成する2Dオーバーレイ画像生成工程と、
前記
測距モデリング画像を前記カメラ画像に重畳する測距オーバーレイ画像を生成する測距オーバーレイ画像生成工程と、
前記2Dオーバーレイ画像及び測距オーバーレイ画像を表示する表示工程と
を有する画像処理表示方法。
【請求項5】
測距カメラから取得したカメラ画像の2D画像から対象物体の検知を行う第1物体検知処理と、
前記カメラ画像の測距画像から前記対象物体の検知を行う第2物体検知処理と、
前記第1物体検知処理及び第2物体検知処理で検知した前記対象物体に関する対象物体情報に基づいて対象物体の2Dモデリング画像及び測距モデリング画像を作成するモデリング画像生成処理と、
前記2Dモデリング画像を前記カメラ画像に重畳する2Dオーバーレイ画像を生成する2Dオーバーレイ画像生成処理と、
前記
測距モデリング画像を前記カメラ画像に重畳する測距オーバーレイ画像を生成する測距オーバーレイ画像生成処理と、
前記2Dオーバーレイ画像及び測距オーバーレイ画像を表示する表示処理と
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検知装置、画像処理表示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラを使用した距離測定技術として、ステレオカメラや赤外線センサによる各種測距方式(アクティブステレオ、ToF、LiDAR等)が知られている。また、このような距離測定技術の1つとして、下記特許文献1,2に開示されているように、測距カメラから取得した2D画像及び測距画像からディープラーニング(Deep Learning)学習エンジンによる物体検知を行い、推定される物体の向きなどの状態情報及び外部データベースから取得した物体の寸法情報等を元に3DCG等を用いた精度の高いモデリング画像を生成するものがある。
【0003】
このようなAI技術を利用した距離測定技術では、外乱により視認性が低下した測距画像や暗所などで非可視の2D画像の物体に対して、実測データを保持したまま相互の画像の利点を活かして作成したモデリング画像のオーバーレイ表示を可能にし、以って監視者による物体の視認性や認識精度を改善することができる。なお、このような距離測定技術に関連する先行技術文献の一例として、以下の特許文献1,2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-91063号公報
【文献】国際公開第2020/105225号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、測距カメラを使用した距離測定技術における共通の問題点として、外乱要因(太陽光、天候、センサ干渉、物体表面の凹凸による乱反射等)により測距精度の低下および測距画像の物体視認性の悪化が発生し、危険判定などの精度が低下するという問題がある。また、照明のない暗所などの条件下では2D画像学習エンジンによる物体検知や監視者による物体認識が出来ない場合が発生する。測距カメラの方式によって得意な条件(距離、環境、外乱要因等)が異なり、条件が合わない場合は著しい精度低下や監視者及び危険検知システムに誤った判定をさせる可能性がある。
【0006】
この発明は、上述の課題を解決する物体検知装置、画像処理表示方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、物体検知装置は、監視領域を撮像してカメラ画像を出力する測距カメラと、前記カメラ画像から対象物体の検知を行う物体検知部と、当該対象物体に関する対象物体情報に基づいて対象物体のモデリング画像を作成するモデリング画像生成部と、当該モデリング画像を前記カメラ画像に重畳するオーバーレイ画像を生成するオーバーレイ画像生成部と、前記オーバーレイ画像を表示する表示部とを備える。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、画像処理表示方法は、測距カメラから取得したカメラ画像から対象物体の検知を行う物体検知工程と、当該対象物体に関する対象物体情報に基づいて対象物体のモデリング画像を作成するモデリング画像生成工程と、当該モデリング画像を前記カメラ画像に重畳するオーバーレイ画像を生成するオーバーレイ画像生成工程と、前記オーバーレイ画像を表示する表示工程とを有する。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、プログラムは、測距カメラから取得したカメラ画像から対象物体の検知を行う物体検知処理と、当該対象物体に関する対象物体情報に基づいて対象物体のモデリング画像を作成するモデリング画像生成処理と、当該モデリング画像を前記カメラ画像に重畳するオーバーレイ画像を生成するオーバーレイ画像生成処理と、前記オーバーレイ画像を表示する表示処理とをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、距離測定の精度低下や誤った判定を抑制することが可能な物体検知装置、画像処理表示方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る物体検知装置Aの機能構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る物体検知装置Aの動作を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の一実施形態における物体候補の選択を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態におけるオーバーレイ表示処理の組合せを示す表である。
【
図5】本発明の一実施形態におけるオーバーレイ画像の位置調整を示す模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態におけるオーバーレイ画像の一例を示す模式図である。
【
図7】本発明の最小構成に係る物体検知装置Bのブロック図である。
【
図8】上記最小構成の物体検知装置Bによる処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る物体検知装置、画像処理表示方法及びプログラムについて上記各図面を参照して説明する。
【0013】
最初に、
図1を参照して本実施形態に係る物体検知装置Aの構成を説明する。この物体検知装置Aは、図示するように3D測距カメラ1、2D画像バッファ2A、測距画像バッファ2B、第1AI物体検知部3A、第2AI物体検知部3B、製品DB4、3DCGモデリング部5(モデリング画像生成部)、2Dモデリングバッファ6A、Zモデリングバッファ6B、表示判定・位置補正部7、2Dオーバーレイ処理部8A、Zオーバーレイ処理部8B、2D画像補助表示部9A及び測距画像補助表示部9Bを備える。
【0014】
ここで、上記複数の構成要素のうち、2D画像バッファ2A、測距画像バッファ2B、第1AI物体検知部3A及び第2AI物体検知部3Bは、3D測距カメラ1から入力されるカメラ画像から対象物体の検知を行う物体検知部である。この物体検知部は、物体検知工程及び物体検知処理を行う。
【0015】
また、製品DB4及び3DCGモデリング部5は、第1AI物体検知部3A及び第2AI物体検知部3Bの対象物体に関する対象物体情報に基づいて対象物体のモデリング画像を作成するモデリング画像生成部である。このモデリング画像生成部は、モデリング画像生成工程及びモデリング画像生成処理を行う。
【0016】
また、2Dモデリングバッファ6A、Zモデリングバッファ6B、表示判定・位置補正部7、2Dオーバーレイ処理部8A及びZオーバーレイ処理部8Bは、上記モデリング画像から得られる対象物体の輪郭線及び特徴画像をカメラ画像に重畳するオーバーレイ画像を生成するオーバーレイ画像生成部である。このオーバーレイ画像生成部は、オーバーレイ画像生成工程及びオーバーレイ画像生成処理を行う。
【0017】
さらに、2D画像補助表示部9A及び測距画像補助表示部9Bは、上記オーバーレイ画像を表示する表示部である。この表示部は、表示工程及び表示処理を行う。
【0018】
このような物体検知装置Aは、ハードウエア資源とソフトウエア資源との協働によって上記各構成要素を実現している。すなわち、本実施形態に係る物体検知装置Aは、コンピュータ(ハードウエア資源)に所定の物体検知プログラム(ソフトウエア資源)に基づく物体検知処理を実行させることにより以下に説明する各種機能を実現し、以って距離測定の精度低下や誤った判定を抑制するものである。
【0019】
3D測距カメラ1は、所定の監視領域を撮像して2D画像及び測距画像を取得する撮像装置である。この3D測距カメラ1は、監視領域の2D画像及び測距画像をカメラ画像として外部に出力する。すなわち、この3D測距カメラ1は、可視可能な監視領域の2D画像(2次元画像)を取得する撮像装置と、赤外線やレーザ等を用いて監視領域の物体までの距離を示す不可視な測距画像(3次元画像)を取得する測距装置からなる。
【0020】
ここで、上記監視領域は、予め設定されるとともに直交3軸(X軸、Y軸及びZ軸)からなる3次元空間であり、車両等の製品が対象物体として載置されている。本実施形態における3D測距カメラ1は、このような対象物体が載置された監視領域を撮像することにより、対象物体が含まれる2D画像及び測距画像を取得する。すなわち、2D画像は、対象物体が映るX-Y平面画像である。また、測距画像は、X-Y平面の各サンプル点における対象物体までの距離(Z軸方向の距離)情報を含む3次元データである。
【0021】
2D画像バッファ2Aは、3D測距カメラ1から取得した監視領域の2D画像を一時的に保存する画像メモリである。この2D画像バッファ2Aは、第1AI物体検知部3Aあるいは2Dオーバーレイ処理部8Aから入力される読出し要求に応答して、2D画像を第1AI物体検知部3Aあるいは2Dオーバーレイ処理部8Aに出力する。
【0022】
測距画像バッファ2Bは、3D測距カメラ1から取得した測距画像を一時的に保存する画像メモリである。この測距画像バッファ2Bは、第2AI物体検知部3BあるいはZオーバーレイ処理部8Bから入力される読出し要求に応答して、測距画像を第2AI物体検知部3BあるいはZオーバーレイ処理部8Bに出力する。
【0023】
第1AI物体検知部3Aは、AI技術として周知のディープラーニング(Deep Learning)の手法に基づく画像学習エンジンを用いることにより、2D画像に映る対象物体を特定する。この第1AI物体検知部3Aは、対象物体を特定して得られた物体特定情報を製品DB4に出力し、対象物体のサイズ及び向きを示す情報を3DCGモデリング部5に出力する。なお、この第1AI物体検知部3Aは、対象物体を特定することができなかった場合、このことを示す検知NGを第2AI物体検知部3Bに出力する。
【0024】
第2AI物体検知部3Bは、AI技術として周知のディープラーニング(Deep Learning)の手法に基づく画像学習エンジンを用いることにより、測距画像に含まれる対象物体を特定する。この第2AI物体検知部3Bは、対象物体を特定して得られた物体特定情報を製品DB4に出力し、対象物体のサイズ及び向きを示す情報を3DCGモデリング部5に出力する。
【0025】
製品DB4は、複数種類の対象物体に関する詳細カタログサイズ情報が予め保存された外部記憶装置(データベース)である。上記詳細カタログサイズ情報は、複数種類の対象物体の各々について、詳細形状やサイズ(大きさ)が登録されたものである。この製品DB4は、第1AI物体検知部3A及び第2AI物体検知部3Bから物体特定情報が入力されると、当該物体特定情報が示す1あるいは複数種類の対象物体候補に関する詳細カタログサイズ情報を読出して3DCGモデリング部5に出力する。
【0026】
3DCGモデリング部5は、第1AI物体検知部3A及び第2AI物体検知部3Bにおける検知結果に従って第1AI物体検知部3A及び第2AI物体検知部3Bから入力される対象物体のサイズ及び向きを示す情報、また第1AI物体検知部3A及び第2AI物体検知部3Bにおける検知結果に従って製品DB4から入力される詳細タログサイズ情報に基づいて、1あるいは複数種類の対象物体候補に関するモデリング画像(物体画像)を生成する。
【0027】
このモデリング画像は、3DCG技術を用いて生成された精度の高い立体画像(3次元画像)である。このようなモデリング画像は、3次元の相対座標系画像であり、X軸及びY軸における2D画像(2Dモデリング画像)とZ値(Z軸における距離データ)を含んでいる。3DCGモデリング部5は、2Dモデリング画像を2Dモデリングバッファ6Aに出力し、またモデリング画像のZ値をZモデリングバッファ6Bに出力する。
【0028】
2Dモデリング画像は、1あるいは複数種類の対象物体候補に関する輪郭線あるいは/及び特徴点を示す特徴画像である。また、Z値は、詳細タログサイズ情報から得られる1あるいは複数種類の対象物体候補の距離情報である。このような2Dモデリング画像及びZ値は、監視者による監視領域の2D画像あるいは/及び測距画像に基づく対象物体の特定を補助し得る画像である。
【0029】
2Dモデリングバッファ6Aは、3DCGモデリング部5から入力される2Dモデリング画像を一時的に保存するメモリである。この2Dモデリングバッファ6Aは、2Dオーバーレイ処理部8Aから入力される読出し要求に応答して、2Dモデリング画像を2Dオーバーレイ処理部8Aに出力する。
【0030】
Zモデリングバッファ6Bは、3DCGモデリング部5から入力されるモデリング画像のZ値を一時的に保存するメモリである。このZモデリングバッファ6Bは、Zオーバーレイ処理部8Bから入力される読出し要求に応答して、モデリング画像のZ値をZオーバーレイ処理部8Bに出力する。
【0031】
表示判定・位置補正部7は、監視者の指示に基づいて、監視領域の2D画像に対する2Dモデリング画像の重畳/非重畳及び監視領域の測距画像に対するZ値の重畳/非重畳を2Dオーバーレイ処理部8A及びZオーバーレイ処理部8Bに指示する。また、表示判定・位置補正部7は、監視者の指示に基づいて、監視領域の2D画像に対する2Dモデリング画像の重畳位置の補正及び監視領域の測距画像に対するZ値の重畳位置の補正を2Dオーバーレイ処理部8A及びZオーバーレイ処理部8Bに指示する。
【0032】
2Dオーバーレイ処理部8Aは、2D画像バッファ2Aから入力される監視領域の2D画像、2Dモデリングバッファ6Aから入力される2Dモデリング画像及び表示判定・位置補正部7から入力される監視者の指示に基づいて、監視領域の2D画像に重畳(オーバーレイ)する2Dオーバーレイ画像を生成する。この2Dオーバーレイ処理部8Aは、2Dオーバーレイ画像を2D画像補助表示部9Aに出力する。
【0033】
Zオーバーレイ処理部8Bは、測距画像バッファ2Bから入力される監視領域の測距画像、Zモデリングバッファ6Bから入力されるZ値及び表示判定・位置補正部7から入力される監視者の指示に基づいて、監視領域の測距画像に重畳(オーバーレイ)する測距オーバーレイ画像を生成する。このZオーバーレイ処理部8Bは、測距オーバーレイ画像を測距画像補助表示部9Bに出力する。
【0034】
2D画像補助表示部9Aは、2Dオーバーレイ処理部8Aから入力される2Dオーバーレイ画像を監視者の判断を補助するための2D補助画像として表示する。測距画像補助表示部9Bは、Zオーバーレイ処理部8Bから入力される測距オーバーレイ画像を監視者の判断を補助するための測距補助画像として表示する。
【0035】
次に、本実施形態に係る物体検知装置Aの動作つまり本実施形態に係る画像処理表示方法及びプログラムについて、
図2に示すフローチャートに沿って説明する。
【0036】
なお、以下の説明では、一例として基準点(絶対座標)が定められた駐車場に置かれた車(対象物体)を監視者が3D測距カメラ1を用いて監視する場合について説明する。また、画像に複数の物体が存在するような場合は、Deep Learningの領域抽出手法や動体の検出などを用いて物体エリアを抽出する方法を用いても良い。
【0037】
この物体検知装置Aにおいて、3D測距カメラ1が取得した2D画像は2D画像バッファ2Aに保存され、同じく3D測距カメラ1が取得した測距画像は測距画像バッファ2Bに保存される。そして、第1AI物体検知部3Aは2D画像バッファ2Aの2D画像から対象物体のエリア(物体エリア)を抽出し(ステップS1)、また第2AI物体検知部3Bは、測距画像バッファ2Bの測距画像から対象物体のエリア(物体エリア)を抽出する(ステップS1)。
【0038】
そして、第1AI物体検知部3Aは、2D画像の物体エリアから対象物体の2D画像を取得し(ステップS2)、第2AI物体検知部3Bは、測距画像の物体エリアから対象物体の測距画像を取得する(ステップS3)。
【0039】
そして、第1AI物体検知部3Aは、AI技術として周知のディープラーニング(Deep Learning)の手法に基づく2D画像学習エンジンを用いて対象物体の2D画像を処理することにより、対象物体の検知を試みる(ステップS4)。一方、第2AI物体検知部3Bは、ディープラーニング(Deep Learning)の手法に基づく測距画像学習エンジンを用いて対象物体の測距画像を処理することにより、対象物体の検知を試みる(ステップS5)。
【0040】
そして、第1AI物体検知部3Aは、ステップS4の処理の結果に基づいて対象物体を検知したと判定すると(ステップS6)、対象物体の2D画像から対象物体の寸法(サイズ)及び向き等を示すサイズ・向き情報を取得する(ステップS8)。なお、第1AI物体検知部3Aは、ステップS6において対象物体を検知しなかった場合には、検知NGを第2AI物体検知部3Bに通知する。
【0041】
一方、第2AI物体検知部3Bは、ステップS5の処理の結果に基づいて対象物体を検知したと判定すると(ステップS7)、対象物体の測距画像から対象物体の寸法(サイズ)及び向き等を示すサイズ・向き情報を取得する(ステップS9)。
【0042】
なお、図示していないが、第1AI物体検知部3A及び第2AI物体検知部3Bは、サイズ・向き情報に加えて物体特定情報を取得する。そして、第1AI物体検知部3A及び第2AI物体検知部3Bは、各々に物体特定情報を製品DB4に出力する。この結果、製品DB4は、物体特定情報に基づいて詳細カタログサイズ情報を3DCGモデリング部5に出力する。
【0043】
3DCGモデリング部5は、第1AI物体検知部3A及び第2AI物体検知部3Bから取得した対象物体のサイズ及び向きを示す情報及び製品DB4から入力される詳細タログサイズ情報を用いて対象物体のモデリング画像の要素である2Dモデリング画像及びZ値を2D・Zモデリングデータを生成する(ステップS10)。
【0044】
そして、2Dオーバーレイ処理部8Aは、2D画像バッファ2Aから入力される監視領域の2D画像、2Dモデリングバッファ6Aから入力される2Dモデリング画像及び表示判定・位置補正部7から入力される監視者の指示に基づいて、監視領域の2D画像に重畳(オーバーレイ)する2Dオーバーレイ画像を生成する。そして、2D画像補助表示部9Aは、2Dオーバーレイ処理部8Aから取得した2D補助画像として表示する(ステップS11)。
【0045】
また、Zオーバーレイ処理部8Bは、測距画像バッファ2Bから入力される監視領域の測距画像、Zモデリングバッファ6Bから入力されるZ値及び表示判定・位置補正部7から入力される監視者の指示に基づいて、監視領域の測距画像に重畳(オーバーレイ)する測距オーバーレイ画像を生成する。そして、測距画像補助表示部9Bは、Zオーバーレイ処理部8Bから取得した測距オーバーレイ画像を測距補助画像として表示する(ステップS11)。
【0046】
一方、第2AI物体検知部3Bは、上記ステップS7において上記対象物体を検知できなかったと判定した場合に非検知アラームを出力する。監視者は、非検知アラームに基づいて監視領域の2D画像から対象物体を特定可能であるか否かを判断する(ステップS12)、そして、この判断が「yes」の場合、監視者は、表示判定・位置補正部7を操作することにより、候補物体モデルの選択・表示を行う(ステップS13)。
【0047】
なお、監視者は、上記ステップS12の判断が「no」の場合、表示判定・位置補正部7を操作することにより、特定不可アラームを2D画像補助表示部9A及び測距画像補助表示部9Bに表示させる(ステップS14)。
【0048】
図3(a)は2D画像による物体候補選択例であり、また
図3(b)は測距画像による物体候補選択例である。監視者は、
図3(a)に示すように、第1AI物体検知部3Aが抽出した候補車X1及び候補車X2、2D画像に基づく2D画像輪郭線Y1及び2D特徴点図形Y2のいずれかを相互補完の観点から測距補助画像(測距オーバーレイ画像)として選択する。
【0049】
また、監視者は、
図3(b)に示すように、第2AI物体検知部3Bが抽出した候補車X1’及び候補車X2’、測距画像に基づく測距輪郭線Y1’及び測距特徴点図形Y2’のいずれかを相互補完の観点から2D補助画像(2Dオーバーレイ画像)として選択する。
【0050】
図4は、2Dオーバーレイ処理部8A及びZオーバーレイ処理部8Bにおけるオーバーレイ表示処理の組み合わせ例である。この
図4に示すように、環境条件が「明所・外乱なし」の場合、第1AI物体検知部3Aにおける2D画像検知及び第2AI物体検知部3Bにおける測距画像検知は何れも良好に行われる(丸印)。
【0051】
この場合、2Dオーバーレイ処理部8A及びZオーバーレイ処理部8Bにおける表示処理は「そのまま表示」となる。すなわち、2Dオーバーレイ処理部8Aは、2D画像バッファ2Aから取得した監視領域の2D画像をそのまま表示させる。また、Zオーバーレイ処理部8Bは、測距画像バッファ2Bから取得した監視領域の測距画像をそのまま表示させる。なお、この場合、第2AI物体検知部3Bは、非検知アラームを外部に出力することはない。
【0052】
また、環境条件が「明所・外乱あり」の場合、第1AI物体検知部3Aにおける2D画像検知は良好に行われるが(丸印)、第2AI物体検知部3Bにおける測距画像検知は行われない(バツ印)。この場合には、Zオーバーレイ処理部8Bにおける表示処理が「測距画像補助表示」となる。すなわち、Zオーバーレイ処理部8Bは、測距画像バッファ2Bから取得した監視領域の測距画像に代えて測距補助画像(測距オーバーレイ画像)を表示させる。
【0053】
また、環境条件が「暗所・外乱なし」の場合、第1AI物体検知部3Aにおける2D画像検知は行われないが(バツ印)、第2AI物体検知部3Bにおける測距画像検知は良好に行われる(丸印)。この場合には、Zオーバーレイ処理部8Bにおける表示処理が「測距画像補助表示」となる。すなわち、2Dオーバーレイ処理部8Aは、2D画像バッファ2Aから取得した監視領域の2D画像に代えて2D補助画像(2Dオーバーレイ画像)を表示させる。
【0054】
さらに、環境条件が「暗所・外乱あり」の場合、第1AI物体検知部3Aにおける2D画像検知及び第2AI物体検知部3Bにおける測距画像検知はいずれも行われない(バツ印)。この場合には、2Dオーバーレイ処理部8A及びZオーバーレイ処理部8Bにおける表示処理は「そのまま表示」となる。また、第2AI物体検知部3Bは、外部に非検知アラームを出力する。
【0055】
ところで、監視者は、上述したステップS11,S13,S14の処理後、2D画像補助表示部9A及び測距画像補助表示部9Bの画像を視認することにより、監視領域における対象物体の検知(チェック)がOKか否かを判断する(ステップS15)。そして、この判断が「yes」の場合は全ての処理を終了する。
【0056】
一方、監視者は、ステップS15の判断が「no」の場合には上記操作部を用いて外部通知を行う(ステップS16)。この外部通知によって、3D測距カメラ1の設定や第1AI物体検知部3A及び第2AI物体検知部3Bにおける学習エンジンの変更等が行われる。この結果、第1AI物体検知部3A及び第2AI物体検知部3Bにおける物体エリアの抽出性能及び対象物体の検知性能が更新される。
【0057】
このように、物体検知装置Aは、第1AI物体検知部3A及び第2AI物体検知部3Bにおける物体検知及び監視者による物体検知に応じて2D補助画像(2Dオーバーレイ画像)や測距補助画像(測距オーバーレイ画像)を表示させるが、2D補助画像(2Dオーバーレイ画像)及び測距補助画像(測距オーバーレイ画像)の表示位置は、表示判定・位置補正部8によって調整される。
【0058】
図5は、2D補助画像(2Dオーバーレイ画像)及び測距補助画像(測距オーバーレイ画像)の表示位置の調整例を示している。3DCGモデリング部5におけるモデリングでは、3D測距カメラ1の視点座標系および実際の物体の位置基準となる絶対座標を考慮する必要がある。相対座標で作成されたモデリングデータの表示位置決めには、取得した画像への空間の絶対座標変換に必要な座標基準点が必要となる。3D測距カメラ1のカメラ画像による位置決め精度が低い場合はあらかじめ基準画像を用意し基準点の絶対座標を決定する。
【0059】
図5に示すように駐車場などの場合、停止線、車止めなどの固定物の絶対座標を基準点としてモデリング画像の相対座標から絶対座標に変換する。例えば、LiDAR方式の3D測距カメラ1やGPSを応用したシステムなど、精度の高い測距、位置計測手段で基準となる座標が明らかな場合やモデリングに必要な精度の良い測距基準点(絶対座標)の決定手段があれば代用可能である。動画撮影に動体への応用も可能であり対象物体や条件などを限定するものではない。
【0060】
このような物体検知装置Aによれば、監視領域の2D画像に2D補助画像をオーバーレイ表示し、また監視領域の測距画像に測距補助画像をオーバーレイ表示するので、外乱により視認性低下した2D画像及び測距画像を2D補助画像及び測距補助画像で補完することが可能であり、以って監視者の視認性及びシステムの信頼性を向上させることができる。
【0061】
また、この物体検知装置Aによれば、第1AI物体検知部3A及び第2AI物体検知部3Bによる物体検知ができなかった場合に非検知アラームを外部に出力するので、監視者による再チェックや監視者による再判断を促し、3D測距カメラ1の設定パラメータの改善や第1AI物体検知部3A及び第2AI物体検知部3Bにおける学習エンジンの切り替えなどを行うことを可能とし、以ってシステムの認識精度を向上させることができる。
【0062】
すなわち、本実施形態によれば、距離測定の精度低下や誤った判定を抑制することが可能な物体検知装置A、画像処理表示方法及びプログラムを提供することができる。
【0063】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のような変形例が考えられる。例えば、オーバーレイに使用する画像は、必ずしも学習エンジンから得られた精密な情報を元にモデリングした結果によるものでなくても、3D測距カメラ1のカメラ画像の特徴点や輪郭線を用いた簡易なもので代用することが可能である。
【0064】
画像精度が著しく低い場合、モデリング画像によって3D測距カメラ1のカメラ画像を置き換えることにより、危険検知精度を改善することが考えられる。条件やシステム性能、要求精度に見合ったモデルを選択することで、パフォーマンスの良い危険検知補助を実現することが可能となる。このような変形例によれば、監視者による各モデリング画像の選択により、要求レベルの変更やシステム負荷の軽減が可能となる。
【0065】
また、測距補助画像(測距オーバーレイ画像)については、
図6に示すように簡易Boxモデル、サーフェイスモデルあるいはソリッドモデル等の簡易モデルや高精度ワイヤモデルあるいは高精度ソリッドモデル等の高精細モデルを3DCGモデリング部5で生成し、これらモデル画像の1つをセレクタで選択して測距補助画像(測距オーバーレイ画像)を精度が低い測距画像に重畳(オーバーレイ)してもよい。
【0066】
最後に、本発明に係る物体検知装置の最小構成について
図7及び
図8を参照して説明する。最小構成の物体検知装置Bは、
図7に示すように、測距カメラ10、物体検知部11、モデリング画像生成部12、オーバーレイ画像生成部13及び表示部14を少なくとも備える。
【0067】
この物体検知装置Bは、
図8に示すように、測距カメラ10から取得したカメラ画像から対象物体の検知を行う物体検知処理(ステップSa)、対象物体に関する対象物体情報に基づいて対象物体のモデリング画像を作成するモデリング画像生成処理(ステップSb)、モデリング画像から得られる対象物体の輪郭線あるいは特徴画像をカメラ画像に重畳するオーバーレイ画像を生成するオーバーレイ画像生成処理(ステップSc)、オーバーレイ画像を表示する表示処理(ステップSd)を実行する。
【符号の説明】
【0068】
A 物体検知装置
1 3D測距カメラ
2A 2D画像バッファ
2B 測距画像バッファ
3A 第1AI物体検知部
3B 第2AI物体検知部
4 製品DB
5 3DCGモデリング部(モデリング画像生成部)
6A 2Dモデリングバッファ
6B Zモデリングバッファ
7 表示判定・位置補正部
8A 2Dオーバーレイ処理部
8B Zオーバーレイ処理部
9A 2D画像補助表示部
9B 測距画像補助表示部