(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ウェハボート
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231011BHJP
H01L 21/22 20060101ALI20231011BHJP
H01L 21/324 20060101ALI20231011BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/22 511G
H01L21/324 Q
H01L21/31 F
(21)【出願番号】P 2022092201
(22)【出願日】2022-06-07
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000229830
【氏名又は名称】株式会社フェローテックホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】須賀川 智夫
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 丈生
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-304652(JP,A)
【文献】特開2002-068852(JP,A)
【文献】米国特許第6811040(US,B2)
【文献】中国実用新案第213401121(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/22
H01L 21/324
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれシリコンを材料とする複数の支柱および底板を備え、前記底板の表面上に、その表裏方向に沿って延びる軸線を包囲する位置関係で前記支柱それぞれが設けられたウェハボートであって、
前記底板は、
その表面側に前記軸線を包囲する位置関係で形成され、それぞれ前記支柱の下端側が嵌合する複数の凹部と、
それぞれ前記軸線を均等な角度間隔で包囲し、かつ、前記軸線と交差する平面視で前記凹部それぞれから6mm以上離れた位置関係で形成された複数の突起部と、を備える、
ウェハボート。
【請求項2】
前記底板には、前記軸線を中心とする円形状でその表裏方向を貫通する貫通孔と、それぞれ前記貫通孔の内周面を前記軸線周りに均等な角度間隔で切り欠いた複数のスリットと、が形成されている、
請求項1に記載のウェハボート
【請求項3】
前記底板には、前記ウェハボートを設置する設置対象物とのネジ止めのためにそれぞれ表裏方向に貫通する複数のネジ孔が、前記軸線を均等な角度間隔で包囲し、かつ、前記軸線と交差する平面視で前記凹部それぞれから6mm以上離れた位置関係で形成されており、
前記突起部は、前記ネジ孔それぞれの内周面に沿って表裏方向に延びる円筒状の突起として形成されている、
請求項1に記載のウェハボート。
【請求項4】
少なくとも1以上の前記支柱は、その長さ方向と交差する断面形状が矩形をなしており、
前記凹部のうち、矩形の断面形状をなす前記支柱に対応する前記凹部は、前記支柱の断面形状に沿った矩形をなし、矩形のなす角から前記底板の表面に沿って前記凹部から離れる方向に延びる延出溝が形成されている、
請求項1に記載のウェハボート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれシリコンを材料とする底板および複数の支柱を備えるウェハボートに関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハボートは、ここに搭載した半導体ウェハに熱処理を施すべく高温(1000℃超)環境下に曝されるものであるため、熱膨張に伴う応力で底板に亀裂が発生することを予防するための技術が提案されている。具体的には、底板の外周側から内側へと延びるスリットを設けて局所的な応力を緩和する、というものである(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-208428号公報
【文献】特開平9-293685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただ、上記技術では、支柱と底板との連結部分を考慮したものとはいえず、この連結部分の周辺から発生する亀裂を効果的に予防できるものとはいえない。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、支柱と底板との連結部分の周辺から発生する亀裂を予防するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため第1局面は、それぞれシリコンを材料とする複数の支柱および底板を備え、前記底板の表面上に、その表裏方向に沿って延びる軸線を包囲する位置関係で前記支柱それぞれが設けられたウェハボートであって、前記底板は、その表面側に前記軸線を包囲する位置関係で形成され、それぞれ前記支柱の下端側が嵌合する複数の凹部と、それぞれ前記軸線を均等な角度間隔で包囲し、かつ、前記軸線と交差する平面視で前記凹部それぞれから6mm以上離れた位置関係で形成された複数の突起部と、を備える、ウェハボートである。
【0007】
本願出願人は、支柱と底板との連結部分から発生する亀裂を予防するために、この連結部分周辺への応力の集中を緩和することに着目して分析を進めた。その結果、連結部分周辺への応力の集中を緩和するには、底板に突起を設けつつ、この突起や凹部など構造物同士をある程度離して応力の高い領域ができないようにする、といった構成に想到した。
【0008】
ここでの構造物同士の距離は、材料特性および温度環境により規定でき、シリコンを材料として高温(1000℃超)域で使用するウェハボートであれば、6mm以上としておくと、亀裂の発生に至るような高い応力の領域が生じにくくなる。
【0009】
上記局面のウェハボートは、上記分析結果に基づいて構成されたものであり、この構成によって支柱と底板との連結部分周辺に応力の高い領域が生じにくくなる結果、亀裂の発生を効果的に予防することができる。
【0010】
また、上記局面は、以下に示す第2局面のようにしてもよい。第2局面において、前記底板には、前記軸線を中心とする円形状でその表裏方向を貫通する貫通孔と、それぞれ前記貫通孔の内周面を前記軸線周りに均等な角度間隔で切り欠いた複数のスリットと、が形成されている。
【0011】
この局面のウェハボートであれば、貫通孔の内周面に沿って形成されたスリットそれぞれによっても、底板における局所的な応力の集中を緩和させることができる。
【0012】
また、上記各局面は、以下に示す第3局面のようにしてもよい。第3局面において、前記底板には、前記ウェハボートを設置する設置対象物とのネジ止めのためにそれぞれ表裏方向に貫通する複数のネジ孔が、前記軸線を均等な角度間隔で包囲し、かつ、前記軸線と交差する平面視で前記凹部それぞれから6mm以上離れた位置関係で形成されており、前記突起部は、前記ネジ孔それぞれの内周面に沿って表裏方向に延びる円筒状の突起として形成されている。
【0013】
この局面のウェハボートであれば、底板に形成された複数のネジ孔それぞれを応力の集中を緩和するための構造物として流用することができる。
【0014】
また、上記各局面は、以下に示す第4局面のようにしてもよい。第4局面において、少なくとも1以上の前記支柱は、その長さ方向と交差する断面形状が矩形をなしており、前記凹部のうち、矩形の断面形状をなす前記支柱に対応する前記凹部は、前記支柱の断面形状に沿った矩形をなし、矩形のなす角から前記底板の表面に沿って前記凹部から離れる方向に延びる延出溝が形成されている。
【0015】
この局面のウェハボートであれば、凹部の角に形成された延出溝によっても、支柱と底板との連結部分周辺における局所的な応力の集中を緩和させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本開示におけるウェハボートの要部を示す斜視図
【
図3】本開示におけるウェハボートの要部を下方側からみた斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係るウェハボートの実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
(1)全体構成
ウェハボート1は、
図1に示すように、それぞれシリコンを材料とする複数の支柱10、底板20および天板30を備え、底板20の表面上に、その表裏方向に沿って延びる軸線100を包囲する位置関係で支柱10それぞれが設けられている。
【0019】
支柱10それぞれは、
図2、
図3に示すように、軸線100側に向けて開口する支持溝11が、支柱10の長手方向に沿って複数設けられており、各支柱10の支持溝11により半導体ウェハが支持される。
【0020】
また、支柱10それぞれは、その長さ方向と交差する断面形状が矩形(本実施形態では四角形)をなしている。ここでは、全ての支柱10が矩形の断面形状をなしているが、円形など矩形以外の断面形状をなしている支柱10が1以上含まれていてもよい。
【0021】
なお、支柱10のうち、軸線100周りの辺が一定以上の長さとなっている一部の支柱10については、軸線100周りに延びる辺が、軸線100周りに円弧をなすように曲線状となっている。
【0022】
底板20は、軸線100を中心とする円形の板材であり、複数の凹部40、複数の突起部50、貫通孔60、複数のネジ孔70、を備えている。
【0023】
複数の凹部40は、底板20の表面側に、軸線100を包囲する位置関係で形成されたものであり、それぞれ支柱10の下端側が嵌合する。こうして支柱10はその下端側が凹部40に嵌合した状態で底板20に固定される。
【0024】
凹部40のうち、矩形の断面形状をなす支柱10に対応する凹部40は、
図4に示すように、支柱10の断面形状に沿った矩形をなし、矩形のなす角それぞれから底板20の表面に沿って凹部40から離れる方向に延びる延出溝41が形成されている。
【0025】
複数の突起部50は、それぞれ軸線100を均等な角度間隔で包囲し、かつ、軸線100と交差する平面視で凹部40それぞれから6mm以上離れた位置関係で形成されている。ここでは、
図3に示すように、底板20の裏面側に複数の突起部50が形成されている。
【0026】
本実施形態では、
図5に示すように、3つの突起部50が、軸線100周りに120度間隔となり、かつ、凹部40それぞれから6mm以上離れた位置に形成されている。ここで、突起部50と凹部40との距離Lは、平面視で両者が最も接近する部分同士の直線距離として規定される。
【0027】
貫通孔60は、軸線100を中心とする円形状で底板20を表裏方向に貫通しており、その内周面を軸線100周りに均等な角度間隔で切り欠いた複数のスリット61が形成されている。ここでは、突起部50と同数のスリット61が、軸線100周りに均等な角度間隔となり、かつ、突起部50との角度が均等になる位置関係で形成されている。
【0028】
本実施形態では、3つのスリット61が、軸線100周りに120度間隔となり、かつ、突起部50との軸線周りの角度が60度となる位置関係で形成されている。また、各スリット61は、平面視で少なくとも凹部40それぞれから6mm以上離れた位置関係で形成されている。
【0029】
なお、本実施形態におけるスリット61は、貫通孔60の縁を中心とする円弧状の切欠きとして形成されている。
【0030】
複数のネジ孔70は、ウェハボート1を設置する設置対象物とのネジ止めのために、底板20を表裏方向に貫通するものであり、軸線100を均等な角度間隔で包囲し、かつ、軸線100と交差する平面視で凹部40それぞれから6mm以上離れた位置関係で形成されている。
【0031】
本実施形態では、このネジ孔70それぞれの内周面に沿って表裏方向(具体的には裏面側)に延びる円筒状の突起部50が、ネジ孔70と一体のものとして形成されている。
【0032】
(2)変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0033】
例えば、上記実施形態では、平面視で突起部50および凹部40を6mm以上離した構成を例示した。しかし、突起部50および凹部40は、底板20の板厚に応じて直線距離で6mm以上離れたものとしてもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、突起部50およびスリット61が3つ備えられている構成を例示した。しかし、これらはそれぞれ複数備えられていればよく、2つであってもよいし、4つ以上備えられていてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、ネジ孔70に突起部50が一体的に備えられている構成を例示した。しかし、突起部50はネジ孔70とは別の構造物として備えられていてもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、突起部50が底板20の裏面側に備えられている構成を例示した。しかし、突起部50は底板20の表面側に備えられていてもよい。
【0037】
(3)作用効果
本願出願人は、支柱10と底板20との連結部分から発生する亀裂を予防するために、この連結部分周辺への応力の集中を緩和することに着目して分析を進めた。その結果、連結部分周辺への応力の集中を緩和するには、底板20に突起を設け、この突起や凹部など構造物同士を一定以上離して応力の高い領域ができないようにする、という構成に想到した。
【0038】
ここでの構造物同士の距離は、材料特性および温度環境により規定でき、シリコンを材料として高温(1000℃超)域で使用するウェハボートであれば、6mm以上としておくと、亀裂の発生に至るような高い応力の領域が生じにくくなることが知られている(米永一郎,シリコンの強度,まてりあ第37巻第12号,1998,
図3など)。
【0039】
上記実施形態におけるウェハボート1は、上記分析結果に基づいて構成されたものであり、この構成のように、突起部50および凹部40を6mm以上離したものとすることによって、支柱10と底板20との連結部分周辺に応力の高い領域が生じにくくなる結果、亀裂の発生を効果的に予防することができる。
【0040】
また、上記実施形態のウェハボート1であれば、貫通孔60の内周面に沿って形成されたスリット61それぞれによっても、底板20における局所的な応力の集中を緩和させることができる。
【0041】
また、上記実施形態のウェハボート1であれば、底板20に形成された複数のネジ孔70それぞれを応力の集中を緩和するための構造物(突起部50)として流用することができる。
【0042】
また、上記実施形態のウェハボート1であれば、凹部40の角に形成された延出溝41によっても、支柱10と底板20との連結部分周辺における局所的な応力の集中を緩和させることができる。
【符号の説明】
【0043】
1…ウェハボート、10…支柱、11…支持溝、20…底板、30…天板、40…凹部、41…延出溝、50…突起部、60…貫通孔、61…スリット、70…ネジ孔、100…軸線。
【要約】
【課題】ウェハボートにおける支柱と底板との連結部分から発生する亀裂を予防するための技術を提供する。
【解決手段】それぞれシリコンを材料とする複数の支柱および底板を備え、前記底板の表面上に、その表裏方向に沿って延びる軸線を包囲する位置関係で前記支柱それぞれが設けられたウェハボートであって、前記底板は、その表面側に前記軸線を包囲する位置関係で形成され、それぞれ前記支柱の下端側が嵌合する複数の凹部と、それぞれ前記軸線を均等な角度間隔で包囲し、かつ、前記軸線と交差する平面視で前記凹部それぞれから6mm以上離れた位置関係で形成された複数の突起部と、を備える。
【選択図】
図4