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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】把持システム、及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
B25J15/08 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022157192
(22)【出願日】2022-09-29
【審査請求日】2023-03-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518106124
【氏名又は名称】コネクテッドロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127384
【弁理士】
【氏名又は名称】坊野 康博
(74)【代理人】
【識別番号】100152054
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 孝雅
(72)【発明者】
【氏名】塚本 光一
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-162695(JP,A)
【文献】特開2019-135073(JP,A)
【文献】特開2021-024026(JP,A)
【文献】特表2012-504016(JP,A)
【文献】特開2019-025565(JP,A)
【文献】特開2019-126875(JP,A)
【文献】特開2021-020278(JP,A)
【文献】特開2001-095348(JP,A)
【文献】特開2009-027976(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015113220(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0176561(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/00-15/08
A61B 17/28
B65G 47/90
B66C 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部材を備えたロボットと、前記ロボットの動作を制御する制御装置と、を備えた把持システムであって、
前記把持部材は、開閉する機構を有する一対の把持部材であって、さらに先端が直線状の縁部を有する板状部材を備えると共に、閉状態となった場合に互いの前記板状部材の縁部が当接する形状を有しており、
前記制御装置は、
把持対象となる対象物を前記一対の把持部材により把持する第1把持動作と、
前記第1把持動作により把持した前記対象物を前記一対の把持部材から解放する解放動作と、
前記解放動作により解放した前記対象物を再度把持する第2把持動作と、
を前記ロボットに実行させると共に、
前記第1把持動作及び前記第2把持動作の少なくとも何れかを実行する際に、前記一対の把持部材を閉状態とすることで、前記当接する形状で前記対象物を切断するよう前記ロボットを制御する、
ことを特徴とする把持システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記一対の把持部材を閉状態として前記対象物を切断して把持した状態で、前記一対の把持部材を把持していない他の対象物から遠ざけるように移動させることで、前記把持をしている対象物と、前記他の対象物とを分離するよう前記ロボットを制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の把持システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記第1把持動作、前記解放動作、及び前記第2把持動作を、前記対象物の表面上の同一箇所で前記ロボットに実行させる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の把持システム。
【請求項4】
前記第1把持動作及び第2把持動作は前記対象物の表面に対する前記一対の把持部材の差し込みを伴う把持動作であり、
前記制御装置は、少なくとも前記第1把持動作により把持した前記対象物の物理量に基づいて、前記第2把持動作の際に前記ロボットが前記一対の把持部材を前記対象物の表面に差し込む深さを算出する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の把持システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
第1把持動作、前記解放動作、及び前記第2把持動作の実行に伴い前記一対の把持部材に付着した前記対象物を目標物に新たに付着させて除去する除去動作を、前記第2把持動作実行後の前記ロボットに実行させる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の把持システム。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記第1把持動作後に前記一対の把持部材を上昇させると共に、前記解放動作において前記一対の把持部材を下降させながら前記対象物を前記一対の把持部材から解放するよう前記ロボットを制御する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の把持システム。
【請求項7】
前記対象物は、前記第1把持動作及び第2把持動作により、収容空間に収容されている状態から一部が分離して把持される対象物である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の把持システム。
【請求項8】
把持部材を備えたロボットの動作を制御する制御手段を備えた制御装置であって、
前記把持部材は、開閉する機構を有する一対の把持部材であって、さらに先端が直線状の縁部を有する板状部材を備えると共に、閉状態となった場合に互いの前記板状部材の縁部が当接する形状を有しており、
前記制御手段は、
把持対象となる対象物を前記一対の把持部材により把持する第1把持動作と、
前記第1把持動作により把持した前記対象物を前記一対の把持部材から解放する解放動作と、
前記解放動作により解放した前記対象物を再度把持する第2把持動作と、
を前記ロボットに実行させると共に、
前記第1把持動作及び前記第2把持動作の少なくとも何れかを実行する際に、前記一対の把持部材を閉状態とすることで、前記当接する形状で前記対象物を切断するよう前記ロボットを制御する、
とを特徴とする制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持システム、及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、把持機能を備えたロボットにより、様々な作業が行われている。例えば、弁当の盛り付け作業をロボットが行う場合、バット等の容器に蓄えられた具材をロボットが所定量把持し、弁当容器の定められた領域に移送して解放(リリース)することで盛り付け作業が実現される。
このような、盛り付けを行うロボットに関する技術は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-30407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロボットによる作業において、把持の対象となる対象物によっては、作業を適切に行えない場合がある。例えば、ポテトサラダ等のように、具材が混在している食材を対象物とする場合である。この場合、従来の技術では、これら混在した具材を適切に分離した上で把持することが困難であった。そのため、例えば、把持部材に不要な具材が付着してしまい、具材を規定量だけ把持することを妨げることがあった。また、例えば、具材を適切に分離できていないことから、把持した具材を盛り付けた場合に、想定していたような見栄えとならないことがあった。
【0005】
そして、このような課題は、対象物が食材である場合に限られるものではなく、工業分野等の、ロボットによる把持を行う様々な分野全般に共通するものである。
すなわち、従来の技術では、ロボットによって対象物を把持する作業を適切に行うために、未だ改善の余地があった。
【0006】
本発明の課題は、ロボットによって対象物を把持する作業をより適切に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態に係る把持システムは、
把持部材を備えたロボットと、前記ロボットの動作を制御する制御装置と、を備えた把持システムであって、
前記制御装置は、
把持対象となる対象物を前記把持部材により把持する第1把持動作と、
前記第1把持動作により把持した前記対象物を前記把持部材から解放する解放動作と、
前記解放動作により解放した前記対象物を再度把持する第2把持動作と、
を前記ロボットに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロボットによって対象物を把持する作業をより適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る把持システム1が複数並べられた状態を示す斜視図である。
図2】本発明に係る把持システム1の主要部を拡大した斜視図である。
図3】ハンド31の先端に設置される把持部材31aの形状例を示す模式図である。
図4】一対の把持部材31aの開閉について示す図である。
図5】制御装置40のハードウェア構成を示す模式図である。
図6】制御装置40の機能的構成を示すブロック図である。
図7】具材収容部10の収容空間10Aを鉛直上方から俯瞰した図である。
図8】各動作を実行する場合の、収容空間10A、ハンド31、把持部材31a、ロボットアーム32、及び具材の位置関係について示す図である。
図9】再把持動作に含まれる一連の動作の1つである第1把持動作の概念を示す模式図である。
図10】再把持動作に含まれる一連の動作の1つである開放動作の概念を示す模式図である。
図11】再把持動作に含まれる一連の動作の1つである第2把持動作の概念を示す模式図である。
図12】除去動作における一連の動作の概念を示す模式図である。
図13】収容空間10A内の具材の状態例を示す模式図である。
図14】レベリング動作の概念を示す模式図である。
図15】スクレイピング動作の概念を示す模式図である。
図16】把持システム1が実行する具材取り分け処理の流れを示すフローチャートである。
図17】把持システム1が実行する具材取り分け処理の流れを示すフローチャートである。
図18】レベリング動作の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[実施形態]
[構成]
図1及び図2は、本発明に係る把持システム1全体の構成を示す模式図であり、図1は、把持システム1が複数並べられた状態を示す斜視図、図2は、把持システム1の主要部を拡大した斜視図である。
本実施形態における把持システム1は、材料を取り分ける把持システムに本発明を適用することを想定したものである。以下の説明においては、把持システム1が、材料として弁当に盛り付けられる総菜等の具材を把持し、この具材を弁当の容器に取り分ける場合を例に挙げて説明する。なお、以下の説明において、盛り付けられる具材の量として、重量を例に挙げて説明するが、本発明は、重量以外であっても、体積、かさ、質量等、各種呼称の物理量を対象に適用することが可能である。
【0011】
図1及び図2に示すように、把持システム1は、具材収容部10と、容器供給部20と、多関節ロボット30と、制御装置40と、遮蔽部50と、を備えている。なお、把持システム1に隣接して、弁当の容器を自動的に運搬するベルトコンベア2が設置されている。
【0012】
具材収容部10は、把持システム1において取り分けられる総菜等の具材を収容する収容空間10Aを備えている。この収容空間10Aは、例えば、具材収容部10自体により構成されてもよいし、具材収容部10に設置可能な大型のバットやトレー等の汎用の容器により構成されてもよい。そして、この収容空間10Aには、例えば、ポテトサラダ等の練りサラダ(粘性・粘着性を有する具材を含むサラダ)、おから、切り干し大根、なます、ひじき、煮豆、バターコーン等の総菜が収容される。これらの総菜は、複数の種類あるいは多数の種類の具材が混在した状態で収容空間10Aに収容されている。そして、多関節ロボット30により、収容されている一部を分離して把持される。
【0013】
本実施形態において、具材収容部10には、1種類の具材が複数食分(例えば、数十~数百食分)収容されているものとする。そして、複数の把持システム1がそれぞれ異なる具材を1つの弁当の容器に盛り付けることで、弁当の盛り付け作業を完了させることができる。具材収容部10の収容空間10Aは、作業者が手作業によって、又は、多関節ロボット30が自動的に交換することが可能である。
【0014】
容器供給部20は、把持システム1において、具材が盛り付けられる所定位置(図2中の盛り付け位置P1)に弁当の容器を供給する。容器供給部20には、弁当の容器が複数収容されており、把持システム1が動作を開始すると、容器を1つずつ盛り付け位置P1に供給する。また、盛り付け位置P1には、弁当の容器の重量を計測する重量センサ21が設置されており、盛り付け位置P1において具材が盛り付けられると、盛り付けられた具材の重量(すなわち、盛り付けによって増加した重量)を計測する。このとき計測された重量のデータは、制御装置40に出力される。そして、重量の計測が終了すると、容器供給部20に備えられた押し出し機構によって、弁当の容器がベルトコンベア2に搬出される。
【0015】
多関節ロボット30は、例えば、水平多関節ロボットあるいは垂直多関節ロボット等によって構成され、盛り付けられる具材を把持可能なハンド31と、可動範囲において任意の位置にハンド31を移動させるロボットアーム32と、を備えている。
また、多関節ロボット30のハンド31を保持する関節には、ハンド31が把持部材31aにより把持した具材の物理量を取得する手段の一例として、把持した具材の重量を計測する重量センサ30Aが設置されている。また、多関節ロボット30のハンド31を保持する関節には、ハンド31が具材に接触したことを検出する手段の一例として、接触した具材からの反力(表面に接触されることで得られる力覚を含む)を計測する力センサ30Bが設置されている。重量センサ30Aによって計測された具材の重量(すなわち、把持された具材の重量)のデータや、力センサ30Bによって計測された具材からの反力(すなわち、具材への接触の検出結果)のデータは、制御装置40に出力される。
【0016】
更に、ハンド31を保持する関節は、ロボットアーム32に対してハンド31を捻り方向に回転させる軸を備えている。そのため、ハンド31が具材を把持する際に、ハンド31の向きを変化させることで、ハンド31が開閉する方向を調整することができる。これにより、ハンド31が容器の内壁面近傍に達した際に、収容空間10Aの内壁面と平行な方向にハンド31が開閉するようにハンド31の向きを変更することが可能となり、容器内壁面近傍の具材を把持し易くなる。
【0017】
図3は、ハンド31の先端に設置される把持部材31aの形状例を示す模式図である。
なお、図3においては、一対で用いられる把持部材31aの一方のみが示されている。
図3に示すように、本実施形態における把持部材31aは、天板部と、主板部と、第1側板部と、第2側板部と、により構成されている。天板部は、長方形状の平面を有している。また、主板部は、天板部の有する平面を水平とした場合に、この平面の長手方向の一端から、この平面の長手方向の他端の鉛直下方の離間した位置に向かって傾斜して延在している。更に、第1側板部と第2側板部は、天板部を有する平面を水平とした場合に、この平面の短手方向の両端それぞれから鉛直下方に向かって延在している。
【0018】
図4は、一対の把持部材31aの開閉について示す図である。図3に示す把持部材31aは、結合部材(図示を省略する)により、それぞれの主板部の内面が対向するようにハンド31に結合される。そして、把持動作を行うにあたって、図4(a)及び図4(b)に示すように開閉方向(ここでは、一対の把持部材31aそれぞれの主板部の内面が対向する方向)に沿って、開く動作及び閉じる動作を行う。そして、図3に示すような把持部材31aの形状により、ハンド31が一対の把持部材31aを閉じた場合に、把持部材31a同士が当接することで、少なくとも先端及び側板部が閉じた内面が具材を把持するための容器形状となる。
【0019】
このような把持部材31aの形状の場合、練りサラダ等の具材に対して、把持部材31aの先端を表面から垂直に差し込み、所定の深さで一対の把持部材31aを閉じて具材を持ち上げることで、ほぼ一定量の具材を把持して収容空間10Aから取り出すことが可能となる。また、この把持により取り出した具材を、盛り付け位置P1の弁当の容器に解放することで、ほぼ一定量の具材を盛り付けることができる。
【0020】
ただし、仮に従来の技術をそのまま用いると、把持の対象となる対象物によっては、作業を適切に行えない場合がある。例えば、ポテトサラダ等のように具材が混在している対象物を所定量分離して把持する場合に、これら混在した具材を適切に分離して把持することが困難であった。そのため、例えば、把持部材に具材が付着してしまったり、把持したものを盛り付けた場合に想定していたような見栄えとならなかったりするといった課題があった。
そこで、本実施形態では、後述の「再把持動作」を行うことで、このような事態の発生を防止する。
【0021】
また、一対の把持部材31aそれぞれの先端は平坦(先端が直線状の縁部を有する形状)であると共に、この先端は、収容空間10Aの底面と平行となるように設置される。これにより、把持部材31aは、後述するレベリング動作(具材の表面を平坦化する動作)に適した形状であると共に、レベリング動作を行い易い形態で設置することが可能となっている。
なお、以下の説明において、これら一対の把持部材31aのそれぞれを区別することなく説明する際は、単に「把持部材31a」と称する。
【0022】
図1及び図2に戻り、制御装置40は、PC(Personal Computer)又はプログラマブルコントローラ等の情報処理装置によって構成され、各種プログラムを実行することにより、把持システム1全体を制御する。例えば、制御装置40は、容器供給部20が容器を供給する動作、及び多関節ロボット30が具材収容部10から具材を把持して盛り付ける動作等を制御する。
【0023】
遮蔽部50は、把持システム1において、具材収容部10、容器供給部20及び多関節ロボット30が設置された領域の周囲及び情報を囲う板状部材によって構成されている。遮蔽部50を構成する板状部材は、ガラス又は樹脂等の透明な材料によって構成され、外部から把持システム1の稼動状況を視認することが可能となっている。また、遮蔽部50が構成する側壁の一部には、開閉可能な扉が設置されている。具材収容部10の収容空間10Aの交換、容器供給部20への容器の追加あるいは把持システム1のメンテナンス等が行われる場合、作業者は遮蔽部50の扉を開けて各種作業を行うことができる。
【0024】
[制御装置40のハードウェア構成]
図5は、制御装置40のハードウェア構成を示す模式図である。
図5に示すように、制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)711と、ROM(Read Only Memory)712と、RAM(Random Access Memory)713と、バス714と、入力部715と、出力部716と、記憶部717と、通信部718と、ドライブ719と、を備えている。
【0025】
CPU711は、ROM712に記録されているプログラム、又は、記憶部717からRAM713にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM713には、CPU711が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0026】
CPU711、ROM712及びRAM713は、バス714を介して相互に接続されている。バス714には、入力部715、出力部716、記憶部717、通信部718及びドライブ719が接続されている。
【0027】
入力部715は、マウスやキーボード等の入力装置を備え、制御装置40に対する各種情報の入力を受け付ける。なお、入力部715としてマイクを備え、作業者の音声入力によって各種情報の入力を受け付けることとしてもよい。
出力部716は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、画像や音声を出力する。
記憶部717は、ハードディスクあるいはDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各サーバで管理される各種データを記憶する。
通信部718は、ネットワークを介して他の装置との間で行う通信を制御する。
【0028】
ドライブ719には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、あるいは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア731が適宜装着される。ドライブ719によってリムーバブルメディア731から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部717にインストールされる。
なお、上記ハードウェア構成は、制御装置40の基本的構成であり、一部のハードウェアを備えない構成としたり、付加的なハードウェアを備えたり、ハードウェアの実装形態を変更したりすることができる。
【0029】
[機能的構成]
次に、制御装置40の機能的構成について説明する。
図6は、制御装置40の機能的構成を示すブロック図である。
図6に示すように、把持システム1の動作を制御するためのプログラムを実行することにより、制御装置40のCPU711においては、センサ情報取得部151と、具材状態判定部152と、具材量判定部153と、多関節ロボット制御部154と、容器供給制御部155と、記録制御部156と、が機能する。また、記憶部717には、パラメータ記憶部171と、履歴データベース(履歴DB)172と、が形成される。
【0030】
パラメータ記憶部171には、把持システム1が動作する際に用いられる各種パラメータが記憶されている。例えば、パラメータ記憶部171には、具材収容部10の収容空間10Aの位置、容器供給部20から供給される弁当の容器の位置、弁当の容器内における具材を盛り付ける領域の位置、具材を把持する際のハンド31の具材への差し込み量と把持される具材の重量との関係(関数あるいはテーブル形式のデータ等)、多関節ロボット30の動作パターンを定義するパラメータ等が記憶される。本実施形態において、ハンド31の具材への差し込み量は、具材の重量(物理量)を推定する指標となっている。すなわち、ハンド31の具材への差し込み量と把持される具材の重量との関係から、把持された具材の実際の重量(目標とする把持重量)は、ハンド31の具材への差し込み量を基に推定される。
【0031】
履歴DB172には、把持システム1が動作した際に取得される制御に関するパラメータ、あるいは把持システム1で取り分けられた具材の重量の計測データが記憶される。また、履歴DB172には、具材収容部10の収容空間10Aにおける具材の状態を示す具材状態マップも記憶される。
【0032】
図7は、履歴DB172に記憶される具材状態マップについて説明するための図であって、具材収容部10の収容空間10Aを鉛直上方から俯瞰した図である。図7に示すように、本実施形態では、収容空間10Aを、複数の列(ここでは、A列~C列)と、複数の行(ここでは、第1行~第5行)で区分けした複数の領域(ここでは、領域A1~領域C5)として管理している。そして、後述の記録制御部156は、把持システム1が把持動作をした際に取得された具材の重量及び具材の反力の計測データや、後述の具材状態判定部152による判定結果や、把持システム1で取り分けられた具材の重量の計測データに基づいて、各領域の具材の状態を検出し、各領域を管理する番号(ここでは、領域A1~領域C5)に紐づけて記憶することで、具材状態マップを生成する。この場合、具材の状態とは、各領域における具材の残量や、後述の具材状態判定部152が判定した具材の深さや平坦度合である。
【0033】
また、収容空間10A内の具材が取り分けられた後に、収容空間10Aが新たに交換された場合には、予め定められた所定量の具材(例えば、収容空間10Aに対して充分な量の具材)が、所定の状態(例えば、平坦な状態)で収容されているものとして具材状態マップが更新される。
【0034】
なお、多関節ロボット30により、把持動作を実行する場合、例えば、図7に矢印で示すように、収容空間10Aを形成する内壁面に沿って、時計回りあるいは反時計回りの順に把持動作が行われる。例えば、領域A1、領域B1、領域C1、領域C2、・・・といった順に把持動作が行われる。あるいは、収容空間10A内の具材の状態によっては、例えば、収容空間10Aの内壁面に沿っていない領域(ここでは、領域B2、領域B3、及び領域B4)においても、適宜把持動作が行われる。
【0035】
図6に戻り、センサ情報取得部151は、把持システム1に設置された各種センサによって検出された情報であるセンサ情報を取得する。例えば、センサ情報取得部151は、多関節ロボット30の関節に設置された重量センサ30Aによって計測された具材の重量のデータや、力センサ30Bによって計測された具材からの反力のデータや、容器供給部20の重量センサ21によって計測された具材の重量のデータを取得する。
【0036】
具材状態判定部152は、力センサ30Bによって計測された具材からの反力のデータに基づいて、具材の状態を認識する。例えば、具材状態判定部152は、力センサ30Bによって計測された具材からの反力のデータから、収容空間10A内の具材の深さ(収容空間10A内の具材表面から収容空間10A底面までの深さ)、表面の平坦度合(表面がどの程度荒れているか)を認識する。本実施形態では、カメラを用いた画像解析で具材の状態を判定するといった手法ではなく、力センサ30Bを用いた反力に基づいて具材の状態を測定するといった手法を用いる。そのため、例えば、カメラの導入コストや管理コストを削減できると共に、カメラの死角等を考慮する必要がないので、多関節ロボット30と収容空間10Aの位置等の配置をより柔軟に選択することができる。また、具材から生じる湯気や、照明の影響を考慮する必要もない。
【0037】
そして、具材状態判定部152は、具材の深さ及び表面の平坦度合を認識すると、これらが具材を把持するための条件に適合しているか否か(例えば、具材の深さ及び平坦度合が設定された閾値以上であるか否か)を判定する。なお、具材の表面の平坦度合は、例えば、表面が有する凹凸の大きさの絶対値等に基づいて定義することができ、具材の表面が平坦であるほど大きい値となるように定義することができる。また、具材の表面の部分毎に平坦度合を判定することとしてもよい。また、具材状態判定部152は、収容空間10A内の具材の状態が、一度の把持動作で規定量の具材を把持可能であるか否かを判定する。
【0038】
具材量判定部153は、多関節ロボット30の重量センサ30Aによって計測された具材の重量のデータや、容器供給部20の重量センサ21によって計測された具材の重量のデータに基づいて、規定量の具材が把持されたか否か、及び、規定量の具材が弁当の容器に取り分けられたか否かを判定する。
【0039】
多関節ロボット制御部154は、多関節ロボット30の動作を制御し、把持システム1において定義されている動作パターンに従って、具材を取り分けるための一連の動作を多関節ロボット30に実行させる。例えば、多関節ロボット制御部154は、多関節ロボット30のハンド31によって具材を把持する動作(把持動作)、把持した具材を弁当の容器に移送する動作(移送動作)、把持している具材を解放する動作(解放動作)、収容空間10A内の具材の表面を平坦にする動作(レベリング動作)、収容空間10A内の具材を寄せ集める動作(スクレイピング動作)等を多関節ロボット30に実行させる。
【0040】
また、他にも多関節ロボット制御部154は、把持動作を行った後に解放動作を行い、更に解放した具材を再度把持する動作(再把持動作)や、把持部材31aに付着した具材を目標物となる他の具材に接触させた状態で把持部材31aを移動することにより、把持部材31aに付着した具材を他の具材に新たに付着させて除去する動作(除去動作)を多関節ロボット30に実行させる。
【0041】
図8は、これら各動作を実行する場合の、収容空間10A、ハンド31、把持部材31a、ロボットアーム32、及び具材の位置関係について示す図である。図8では、鉛直方向をZ方向と称し、このZ方向と直交する第1の水平方向(紙面と直交する方向)をY方向と称し、これらZ方向及びY方向のそれぞれと直交する第2の水平方向をX方向と称する。すなわち、Z方向、Y方向、及びX方向はそれぞれ互いに直行する方向である。
【0042】
ハンド31は、ロボットアーム32の先端に配置される。また、把持部材31aは、結合部材により、このハンド31に結合されることで、ハンド31に支持される。そして、このハンド31及びこれに結合された把持部材31aは、多関節ロボット制御部154の制御するロボットアーム32の動作に従って、X方向、Y方向、及びZ方向の各方向における、可動範囲内に移動することが可能である。また、ハンド31は、不図示のアクチュエータによって、一対の把持部材31aをY方向に開閉することで、把持動作を実現する。
また、ハンド31及びこれに結合された把持部材31aは、Z方向を回転軸として回転することが可能である。
このような構成により、多関節ロボット制御部154は、各動作を実行する際に、ハンド31及び把持部材31aの、位置や向きを任意に変化させることができ、これにより各動作を適切に実行することが可能となる。
【0043】
図9図11は、多関節ロボット制御部154の制御に基づいて、多関節ロボット30が実行する再把持動作に含まれる一連の動作の概念を示す模式図である。ここで、再把持動作には、(1)まず具材を把持する動作である第1把持動作、(2)次に第1把持動作にて把持している具材を開放する動作である解放動作、(3)開放動作により解放された具材を再度把持する動作である第2把持動作、の3つの動作が少なくとも一連の動作として含まれる。また、これら再把持動作に含まれる一連の動作は、具材の表面上の同一箇所で実行される。例えば、図7で示したような何れかの領域で一連の動作として実行される。
【0044】
また、多関節ロボット制御部154は、再把持動作を多関節ロボット30に実行させることと並行して、第1把持動作において把持した具材の重量を計測し、少なくとも計測した具材の重量に基づいて、第2把持動作において、把持部材31aを具材に差し込む深さ(差し込み量)を算出する。そして、多関節ロボット制御部154は、この算出した、差し込む深さだけ把持部材31aを具材に差し込んで第2把持動作を行うように、多関節ロボット30を制御する。なお、これら差し込む深さの算出等については、「把持動作の具体的な制御方法」として後述する。
また、説明の前提として、図9図11に示すように、収容空間10A内にはこれから把持動作の対象となる具材が収容されている。なお、図中及び以下の説明では、この収容されている具材を適宜「収容具材」と称する。
【0045】
まず第1把持動作が行われる。この場合、図9(a)に示すように、多関節ロボット30は、把持部材31aを下降させることで、収容具材の表面を検出する。このように、具材の表面を検出することは、力センサ30Bにより、多関節ロボット30のハンド31が具材に接触することで受ける反力を計測することで実現できる。
【0046】
次に図9(b)に示すように、多関節ロボット30は、検出した収容具材の表面から、把持部材31aを差し込む。そして、多関節ロボット30は、多関節ロボット制御部154が算出した、差し込む深さまで把持部材31aを差し込むと、把持部材31aの下降を停止する。このように、差し込む深さまで実際に把持部材31aを差し込めたか否かの判定は、多関節ロボット30の制御パラメータ(関節の回転角度等)から差し込み量を算出したり、具材の表面を検出して差し込みを開始してからの経過時間から差し込み量を算出したりすることで実現できる。
【0047】
次に図9(c)に示すように、多関節ロボット30は、収容具材に差し込まれた把持部材31a同士が当接するまで閉じる。これにより、多関節ロボット30は、具材を把持することができる。なお、図中及び以下の説明では、この収容されている具材を適宜「把持具材」と称する。なお、図3に示したように、本実施形態では、把持動作を行う際に、把持部材31aの形状により、ハンド31が一対の把持部材31aを閉じた場合に、把持部材31a同士が当接することで、少なくとも先端及び側板部が閉じた内面が具材を把持するための容器形状となる。また、この一対の把持部材31aそれぞれの先端は平坦(先端が直線状の縁部を有する形状)であると共に、この先端は、収容空間10Aの底面と平行となるように設置される。そのため、例えば、この把持動作により把持した把持具材は、当接した先端部や側板部によって収容具材から適切に分離され、新たな一塊の具材として扱いやすくなっている状態である。
なお、把持部材31aの材質や形状や、把持動作における把持力や、具材の性質にもよるが、当接した先端部や側板部によって具材が切断される場合であれば、新たな一塊の具材として、より一層扱いやすくなるので、具材の切断が許容されるような盛り付け作業であれば、このように具材が切断されるように把持動作を行うとよい。
【0048】
次に図10(d)に示すように、多関節ロボット30は、第1把持動作により把持した具材の重量を計測する。また、多関節ロボット制御部154は、少なくとも計測した具材の重量に基づいて、第2把持動作において、把持部材31aを具材に差し込む深さ(差し込み量)を算出する。また、この時点で、把持部材31aは、閉じた状態であり、把持具材の把持を継続している。更に、把持部材31aの外面には、第1把持動作において収容具材に差し込まれたことに伴い、粘性あるいは粘着性を有する具材が付着している。なお、図中及び以下の説明では、この付着している具材を適宜「付着具材」と称する。
【0049】
次に解放動作が行われる。この場合、図10(e)に示すように、多関節ロボット30は、具材が付着した状態の把持部材31aを下降させながら把持部材31aを開くことで、把持具材を把持部材31aから解放する。そして、多関節ロボット30は、把持部材31aが、解放した具材や収容具材に接触しない高さで把持部材31aの下降を停止する。このように下降をさせながら解放をして、その後停止することにより、停止時に多関節ロボット30により支持される把持部材31aについては下降方向の慣性力が打ち消される一方で、付着具材に対しては下降方向の慣性力が保たれるので、付着具材を効率よく落下させることができる。
【0050】
この場合に、付着具材により慣性力を与えて付着具材を落下させやすくするために、多関節ロボット30のスペック等に応じて許容される範囲で急停止を行うようにするとよい。また、開放した具材が飛散しないために、可能な限り収容具材の近傍において解放を行うようにするとよい。なお、図中及び以下の説明では、この解放した具材を適宜「解放具材」と称する。第1把持動作の説明の際にも上述したが、図中に模式的に示すように、解放具材は、収容具材から適切に分離され、新たな一塊の具材として扱いやすい状態になっている。
【0051】
次に、第2把持動作が行われる、この場合、図11(f)に示すように、多関節ロボット30は、多関節ロボット30は、把持部材31aを下降させることで、解放具材の表面を検出する。
次に図11(g)に示すように、多関節ロボット30は、検出した解放具材の表面から把持部材31aを差し込む。この際、状況によっては、把持部材31aは解放具材を貫通し、先端の一部が収容具材まで差し込まれる。そして、多関節ロボット30は、多関節ロボット制御部154が算出した、差し込む深さまで把持部材31aを差し込むと、把持部材31aの下降を停止する。
【0052】
次に図11(h)に示すように、多関節ロボット30は、解放具材及び収容具材に差し込まれた把持部材31a同士が当接するまで閉じる。これにより、ほぼ付着具材が存在しない状態で、多関節ロボット制御部154が推定した重量だけの具材を把持することができる。
これにより、第1把持動作、開放動作、及び第2把持動作という、再把持動作に含まれる一連の動作は終了する。すなわち、再把持動作が終了する。なお、図11(h)に示すように、第2把持動作により把持しきれなかった解放具材は、新たな収容具材として再利用され、以後、多関節ロボット30に把持される対象となる。
【0053】
以上説明した再把持動作によれば、第1把持動作により具材同士を適切に分離し、新たな一塊の具材として扱いやすくした上で第2把持動作やその後の具材の盛り付け動作を行える。
そのため、第2把持動作において、把持部材に具材が付着することを抑制し、具材を規定量だけ把持することができる。なお、この効果は、ポテトサラダのように粘性あるいは粘着性を有する具材を把持する際に、特に顕著である。
また、新たな一塊の具材として具材を把持して、これを盛り付けられることから、具材を盛り付けた場合に、想定していたような美しい見栄えで盛り付けることができる。なお、この効果は、ごぼうサラダや千切りにしたキャベツのように、棒状あるいは線状の絡まってしまいやすい具材を把持する際に、特に顕著である。
さらに、具材の切断が許容されるような盛り付け作業を行う場合、把持部材31aの材質や形状や、把持動作における把持力や、具材の性質等を調整することで、当接した先端部や側板部によって具材が切断されようにすれば、新たな一塊の具材として、より一層扱いやすくなるのでよい。
【0054】
すなわち、把持システム1によれば、ロボットによって具材を把持する作業をより適切に行うことができる。
また、把持システム1が行うこれらの動作は、把持部材31aが移動することで実現される。そのため、これらの動作を実現するための専用の部材や機構等を別途用意する必要もない、という効果も奏する。
更に、解放した具材を収容空間10Aに戻して、再度把持することで、具材を無駄にすることなく活用できる、という効果も奏する。
【0055】
図12(a)~図12(c)は、再把持動作の後に行われる除去動作における一連の動作の概念を示す模式図である。
まず図12(a)に示すように、多関節ロボット30は、把持動作を完了して把持具材を把持している状態の把持部材31aの先端と、把持動作をした領域に隣接する付近の領域の収容具材の表面とが同等の高さとなるまで、把持部材31aを上昇させる。
【0056】
次に図12(b)に示すように、多関節ロボット30は、把持部材31aに付着した付着具材を目標物となる収容具材に接触させた状態で把持部材31aを移動することにより、把持部材31aに付着した付着具材を収容具材に新たに付着させて除去する。
この場合、把持部材31aの移動方向は適宜設定できるが、例えば、収容具材により形成される表面に対して平行な方向に把持部材31aを移動させる。本実施形態であれば、収容具材の表面は略水平面であるので、把持部材31aの天板部が水平となった状態及び図12(a)で上昇させた把持部材31aの高さを維持しつつ、水平方向に把持部材31aを移動させる。
このように、多関節ロボット30は、具材の特性である粘性あるいは粘着性を利用し、付着具材を収容具材に対してあたかも擦り付けるようにすることで、付着具材を把持部材31aから除去をする。
【0057】
次に図12(c)に示すように、多関節ロボット30は、この擦り付けのための把持部材31aの移動が終了すると、把持部材31aを上昇させる。図示するように、擦り付けにより、付着具材は把持部材31aから除去され、第2把持動作により把持しきれなかった解放具材や付着具材は新たに収容具材の一部となる。また、擦り付けにより、把持動作をした領域や、この領域に隣接する付近の領域の収容具材の表面は平坦化する。
これにより除去動作は完了し、規定量の具材が把持されたか否かの判定が行われることになる。
【0058】
このように、本実施形態では、除去動作を行うことにより、把持部材31aに付着しており、適切な制御を妨げていた付着具材を除去することができる。そのため、例えば、多関節ロボット30が実際に把持している把持具材の量を精度高く検出することができる。他にも、例えば、実際に把持する具材の量や、実際に解放する具材の量を、ロボットの制御において推定していた量とすることができる。
【0059】
また、上述したように第2把持動作で把持する主たる対象となる解放具材は、収容具材から適切に分離され、新たな一塊の具材として扱いやすい状態になっている。そのため、第2把持動作では、把持部材31aの外面において、側面には付着具材が付着しにくいが、先端には収容具材が付着することがある。そのため、第2把持動作の後に、除去動作を行うことで先端に付着した収容具材を効率良く除去することが可能となり、好適である。
【0060】
なお、再把持動作や除去動作において、把持部材31aを上昇させるべき高さ、移動範囲(ストローク)、移動速度、といったものについては、具材の性質や具材の大きさや具材の形状や盛り付け作業に要求される早さ等を考慮して予め設定しておくことができる。
【0061】
図13は、収容空間10A内の具材の状態例を示す模式図である。
また、図14は、レベリング動作の概念を示す模式図、図15は、スクレイピング動作の概念を示す模式図である。
図13に示すように、収容空間10A内の具材の表面の平坦度合が低い(荒れている)場合、図14に示すように、多関節ロボット30がレベリング動作を行い、把持部材31aによって表面を平坦化する。なお、レベリング動作を行う場合、把持部材31aの先端が平坦である(直線状の縁部を有する)ことを利用し、収容空間10Aの底面と把持部材31aの先端とが平行な状態を維持して、把持部材31aを収容空間10Aの底面から同一の高さで移動させることができる。また、レベリング動作において、把持部材31aの外面が平面であることを利用して、具材に把持部材31aの外面を押し付けて平坦化したり、把持部材31aの外面で具材表面をなでることで平坦化したりすることも可能である。
【0062】
また、図13に示すように、収容空間10A内の具材の深さが把持動作を行うために十分でない場合、図15に示すように、多関節ロボット30がスクレイピング動作を行い、把持部材31aによって具材を寄せ集めて、把持動作を行うために十分な深さとする。なお、図15に示すように、具材に把持部材31aの外面を押し当てて移動させることによって、具材を寄せ集めることの他、具材を把持部材31aで把持し、他の部分の具材の上に積み上げることで寄せ集めることとしてもよい。
【0063】
図6に戻り、容器供給制御部155は、容器供給部20を制御し、把持システム1において取り分けられる具材を盛り付けるための弁当の容器を所定のタイミングで盛り付け位置P1に供給させる。また、容器供給制御部155は、容器供給部20を制御し、具材が盛り付けられた弁当の容器をベルトコンベア2に搬出させる。
【0064】
記録制御部156は、把持システム1が把持動作した際に取得された制御に関するパラメータ及び把持システム1で取り分けられた具材の重量の計測データを履歴DB172に記憶する。また、記録制御部156は、図7を参照して上述した、具材収容部10の収容空間10Aにおける具材の状態を示す具材状態マップを作成及び更新すると共に、この具材状態マップについても履歴DB172に記憶する。
【0065】
[把持動作の具体的な制御方法]
本実施形態に係る把持システム1では、具材及び使用される把持部材31aの種類に応じて、把持部材31aを具材に差し込む深さ(差し込み量)と、そのときに把持される具材の重量との関係が、予め把握されている。例えば、把持される具材の密度(単位深さあたりの重量を表すパラメータ)を予め計測しておき、具材の密度と把持部材31aを差し込む深さとの乗算値を要素とする関数によって、把持される重量を算出(推定)することができる。これにより、簡単な演算によって、把持される具材の重量を推定することができる。
【0066】
また、このように算出される重量をテーブル形式のデータとして保持しておくこともできる。更に、1回の把持動作で平坦度合いが低下する具材の表面の範囲が把握できるため、収容空間10A内の具材の表面において、把持動作毎に把持位置をずらすピッチが設定されている。また、予め設定された把持部材31aを差し込む深さ及びピッチに基づいて、具材の表面のいずれの位置からどのように具材を把持するかの基本的な動作パターンが設定されている。
【0067】
なお、上述したように、収容空間10A内の具材の表面の平坦度合が具材を把持するための条件に適合しない場合、レベリング動作が行われ、具材の表面が平坦化される。また、収容空間10A内の具材の深さが具材を把持するための条件に適合しない場合、スクレイピング動作が行われ、具材が寄せ集められる。
そして、具材の表面の平坦度合及び深さが具材を把持するための条件に適合している場合、図9図11に示したような動作パターンに従って、再把持動作における、第1把持動作や第2把持動作が行われる。
【0068】
また、第2把持動作において把持した重量(あるいは、更に除去動作を行った後に把持した重量)が規定量に適合する場合、弁当の容器に具材が移送されて解放される。なお、把持した重量が規定量に適合するとは、例えば、目標とする重量に対して、把持した具材の重量が所定誤差以内(±15%以内等)にあることをいう。ただし、把持部材31aに具材が粘着して解放されないケースを考慮し、把持した重量が規定量よりも多い場合の誤差を少ない場合の誤差よりも大きく設定することとしてもよい。
【0069】
更に、上述したように、多関節ロボット制御部154は、第1把持動作において把持した具材の重量を計測し、少なくとも計測した具材の重量に基づいて、第2把持動作において、把持部材31aを具材に差し込む深さ(差し込み量)を算出する。そして、多関節ロボット制御部154は、この算出した、差し込む深さだけ把持部材31aを具材に差し込んで第2把持動作を行うように、多関節ロボット30を制御する。すなわち、多関節ロボット制御部154は、第1把持動作の結果に基づいて、第2把持動作での差し込む深さを調整する。
例えば、第1把持動作にて把持した具材の重量が超過していた場合(例えば、把持した具材の重量が規定量の範囲の上限を超えている場合)には、第1把持動作よりも把持部材31aを具材に差し込む深さを浅く修正して第2把持動作にて具材を把持する。一方で、第1把持動作にて把持した具材の重量が不足していた場合(例えば、把持した具材の重量が規定量の範囲の下限を下回っている場合)には、第1把持動作よりも把持部材31aを具材に差し込む深さを深く修正して第2把持動作にて把持をする。
このように、多関節ロボット制御部154は、第1把持動作の結果に基づいて、第2把持動作での差し込む深さを調整することで、具材を適正量だけ精度高く把持することができる。
【0070】
なお、把持部材31aを具材に差し込む深さ(差し込み量)と、そのときに把持される具材の重量との関係については、具材の密度から算出(推定)することの他、把持部材31aを差し込んだ深さのデータと、そのときに把持された具材の重量を計測したデータとを機械学習し、機械学習によって生成された機械学習モデルを用いて、把持される重量を推定することとしてもよい。また、この機械学習の過程において具材の密度を算出し、算出した密度を用いて、把持部材31aを具材に差し込んだ深さ(差し込み量)から、把持された具材の重量を算出してもよい。
【0071】
[動作]
次に、把持システム1の動作を説明する。
図16及び図17は、把持システム1が実行する具材取り分け処理の流れを示すフローチャートである。
【0072】
具材取り分け処理が開始されると、図16のステップS1において、多関節ロボット制御部154は、具材を把持するためのデータ(動作パターンのデータ及びハンド31の差し込み量のデータ等)をパラメータ記憶部171から読み込むことで、具材を把持するための準備を行う。
【0073】
ステップS2において、多関節ロボット制御部154は、動作パターンのデータに従って、収容空間10Aへ、ハンド31を移送する。
【0074】
ステップS3において、具材状態判定部152は、具材収容部10の収容空間10Aにおける具材の状態を示す具材状態マップを、履歴DB172から読み込むことで、収容空間10Aにおける具材の状態を認識する。具材状態判定部152は、その後も、センサ情報取得部151が取得した、力センサ30Bによって計測された具材からの反力のデータに基づいて、具材の状態の認識を継続する。
【0075】
ステップS4において、具材状態判定部152は、具材の表面の平坦度合が具材を把持するための条件に合致しているか否かの判定を行う。
具材の表面の平坦度合が具材を把持するための条件に適合していない場合、ステップS4においてNOと判定されて、処理はステップS5に移行する。
具材の表面の平坦度合が具材を把持するための条件に適合している場合、ステップS4においてYESと判定されて、処理はステップS6に移行する。
ステップS5において、多関節ロボット制御部154は、具材の表面を平坦化するためのレベリング動作を実行する。
【0076】
ステップS6において、具材状態判定部152は、収容空間10A内の具材の深さが具材を把持するための条件に適合しているか否かの判定を行う。
収容空間10A内の具材の深さが具材を把持するための条件に適合していない場合、ステップS6においてNOと判定されて、処理はステップS7に移行する。
収容空間10A内の具材の深さが具材を把持するための条件に適合している場合、ステップS6においてYESと判定されて、処理はステップS8に移行する。
ステップS7において、多関節ロボット制御部154は、具材を寄せ集めるスクレイピング動作を実行する。
【0077】
図17に遷移し、ステップS8において、多関節ロボット制御部154は、第1把持動作について設定された深さまで、把持部材31aを具材に差し込む。
ステップS9において、多関節ロボット制御部154は、把持部材31aを閉じて具材を把持する。これにより、第1把持動作が実現される。
【0078】
ステップS10において、多関節ロボット制御部154は、第1把持動作において把持した具材の重量(物理量)を計測する。
ステップS11において、多関節ロボット制御部154は、少なくとも計測した具材の重量(物理量)に基づいて、第2把持動作において、把持部材31aを具材に差し込む深さ(差し込み量)を算出する。そして、算出した、差し込む深さを第2把持動作の差し込む深さとして再設定する。
ステップS12において、多関節ロボット制御部154は、解放動作を実行して第1把持動作において把持した具材を開放する。
【0079】
ステップS13において、多関節ロボット制御部154は、第2把持動作について設定された深さまで、把持部材31aを具材に差し込む。
ステップS13において、多関節ロボット制御部154は、把持部材31aを閉じて具材を把持する。これにより、第2把持動作が実現される。
このようにステップS9~ステップS14を一連の動作として実行することで、再把持動作は実現される。
【0080】
ステップS15において、多関節ロボット制御部154は、除去動作を実行する。除去動作の詳細については、図12を参照して上述した通りである。
【0081】
ステップS16において、具材量判定部153は、把持した具材の重量(物理量)を計測する。
ステップS17において、具材量判定部153は、規定量の具材が把持されているか否かの判定を行う。
規定量の具材が把持されていない場合、ステップS17においてNOと判定されて、処理はステップS11に移行する。そして、このステップS11では、
多関節ロボット制御部154は、少なくとも移行直前のステップS16において計測された、具材の重量(物理量)に基づいて、再度の第2把持動作において、把持部材31aを具材に差し込む深さ(差し込み量)を算出する。そして、算出した、差し込む深さを再度の第2把持動作の差し込む深さとして再設定する。すなわち、多関節ロボット制御部154は、一度行った第2把持動作の結果に基づいて、再度の第2把持動作での差し込む深さを調整することで、具材を適正量だけ精度高く把持することができる。
【0082】
規定量の具材が把持されている場合、ステップS17においてYESと判定されて、処理はステップS18に移行する。
【0083】
ステップS18において、多関節ロボット制御部154は、把持した具材を弁当の容器の位置に移送し、容器内の所定の領域に解放する。容器内の所定の領域に具材が解放されると、具材量判定部153によって、取り分けられた具材の量が規定量に適合するか否かが判定される。この判定結果は、弁当の容器と対応付けられて、後段の処理に引き継がれる。
【0084】
ステップS19において、記録制御部156は、具材取り分け処理において取得された制御に関するパラメータ及び取り分けられた具材の重量の計測データ(履歴データ)を履歴DB172に記憶する。また、記録制御部156は、具材収容部10の収容空間10Aにおける具材の状態を示す具材状態マップを更新し、この更新後の具材状態マップも履歴DB172に記憶する。
【0085】
ステップS20において、多関節ロボット制御部154は、具材取り分け処理を終了する条件に適合したか否かの判定を行う。具材取り分け処理を終了する条件としては、予定された数の弁当の容器に具材を盛り付けたこと、あるいは、具材取り分け処理を終了させる操作が行われたこと等を定義することができる。
具材取り分け処理を終了する条件に適合していない場合、ステップS20においてNOと判定されて、図16に遷移し、処理はステップS2に移行する。
具材取り分け処理を終了する条件に適合している場合、ステップS20においてYESと判定されて、具材取り分け処理は終了する。
【0086】
以上のように、本実施形態に係る把持システム1は、再把持動作を行うことにより、第1把持動作により具材同士を適切に分離し、新たな一塊の具材として扱いやすくした上で第2把持動作やその後の具材の盛り付け動作を行える。また、それ以外にも、把持システム1は、再把持動作を行うことにより、図9図12を参照して上述したような様々な効果を奏する。
すなわち、把持システム1によれば、ロボットによって具材を把持する作業をより適切に行うことができる。
【0087】
更に、把持システム1によれば、把持部材31aを具材に差し込む深さを基に、把持される具材の重量(物理量)を算出(推定)することができる。
そのため、多関節ロボット30によって同様の把持動作を行うことで、ばらつきが抑制された正確な量の具材を取り分けることが可能となる。
すなわち、把持システム1によれば、ロボットによって具材を取り分ける作業をより適切に行うことができる。
【0088】
また、把持システム1によれば、把持対象となる具材の表面の平坦度合を認識し、具材の表面の平坦度合が具材を把持するための条件に適合していない場合、具材の表面を平坦にするレベリング動作が実行される。
したがって、把持部材31aをより正確な差し込み量で具材に差し込むことができるため、具材をより適切に取り分けることができる。
【0089】
また、把持システム1によれば、収容空間10A内の具材の量が減少した場合等、具材の深さが具材を把持するための条件に適合しない場合、収容空間10A内の具材を寄せ集めるスクレイピング動作が実行される。
そのため、具材が少ない状態であっても、具材を把持するために必要な深さに調整することができ、具材を有効活用できると共に、具材を供給する頻度を低下させることができる。
したがって、ロボットによって具材を取り分ける作業をより効率的に実行することが可能となる。
【0090】
また、本実施形態に係る把持システム1によれば、一度で規定量の具材を把持できない場合、複数回の把持動作によって規定量の具材が把持される。
したがって、収容空間10A内の具材の量が減少した場合や一度の把持で規定量の具材を把持し難い具材を取り分ける場合等において、より柔軟な動作によって、必要な重量の具材を把持することが可能となる。
【0091】
[変形例1]
上述の実施形態において、制御装置40による多関節ロボット30の制御について説明したが、これに限られない。本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、制御装置40による多関節ロボット30の制御について種々に変更や追加や省略を行うことができる。
例えば、上述の実施形態において、第2把持動作の後に除去動作を行うこととしていたが、これに限られない。例えば、把持する具材がそれほど粘性あるいは粘着性がない具材であれば、把持部材31aへの付着は発生しにくいので、このような場合は、作業全体の迅速化のために、除去動作の実行を省略するようにしてもよい。他にも、例えば、第2把持動作で差し込む深さをより高精度で算出するために、第1把持動作後にも除去動作を行うようにし、この除去動作後に計測した重量(物理量)に基づいて、算出を行うようにしてもよい。
【0092】
また、例えば、上述の実施形態において、第2把持動作の後に規定量が把持されていない場合には、再度開放動作や第2把持動作を行っていた(図17のステップSにおいてNO、及び再度のステップS11~ステップS16に相当)。そして、第2把持動作の後に規定量が把持されるまで、これらの処理を繰り返していた。これに限らず、所定の回数だけ繰り返しても、あるいは所定の時間が経過するまで繰り返しても、引き続き、規定量が把持されてない場合には、繰り返しを終了するようにしてもよい。この場合、例えば、収容空間10Aの他の領域を対象として、ステップS2から処理を繰り返すようにしてもよい。また、これと共にある領域において再把持動作を完了できなかった旨を作業者等に警報等で通知するようにしてもよい。
【0093】
更に、上述の実施形態において、再把持動作に含まれる一連の動作である、第1把持動作、開放動作、及び第2把持動作について、具材の表面上の同一箇所で実行していたが、これに限られない。例えば、収容空間10Aのある領域において、第1把持動作を行ったのち、他の領域において開放動作や第2把持動作を行うようにしてもよい。
【0094】
更に、上述の実施形態において、第1把持動作において、規定量の具材を把持することを想定していたが、これに限られない。例えば、第1把持動作では、意図的に規定量以上の具材を把持するようにして、開放動作で開放される一塊となった開放具材を多量とする。そして、この開放具材を対象として第2把持動作を行うようにしてもよい。これにより、第2把持動作において、収容具材ではなく、解放具材のみを把持の対象とするようなことができる。
【0095】
[変形例2]
上述の実施形態において、具材状態判定部152が具材の表面の状態を認識し、具材の表面の平坦度合が具材を把持するための条件に適合していない場合にレベリング動作が行われるものとしたが、これに限られない。
例えば、把持動作毎に具材の表面における把持位置をずらすピッチが設定されていることから、収容空間10A内の具材の表面全体から具材を把持した後(すなわち、所定回数の把持動作が行われる毎)に、レベリング動作を行うこととしてもよい。
【0096】
この場合、力センサ30Bによって計測された具材からの反力(すなわち、具材への接触の検出結果)のデータ等によって具材の表面の状態を検出することなく、具材の表面を一定の平坦度合を有する状態に調整することができる。
なお、上述の実施形態におけるレベリング動作に対し、所定回数の把持動作が行われる毎のレベリング動作を併せて実行することとしてもよい。
【0097】
[変形例3]
上述の実施形態において、具材状態判定部152が具材の深さを認識し、具材の深さが具材を把持するための条件に適合していない場合にスクレイピング動作が行われるものとしたが、これに限られない。
例えば、把持動作毎に具材の表面から取り出される具材の量(把持部材31aが差し込まれる深さ)が設定されていることから、収容空間10A内の具材の表面全体から具材を把持した後(すなわち、所定回数の把持動作が行われる毎)に、スクレイピング動作を行うこととしてもよい。
【0098】
この場合、力センサ30Bによって計測された具材からの反力(すなわち、具材への接触の検出結果)のデータ等によって具材の深さを検出することなく、具材が一定の深さを有する状態に調整することができる。
なお、上述の実施形態におけるスクレイピング動作に対し、所定回数の把持動作が行われる毎のスクレイピング動作を併せて実行することとしてもよい。
【0099】
[変形例4]
上述の実施形態において、具材状態判定部152は、力センサ30Bによって計測された具材からの反力(すなわち、具材への接触の検出結果)のデータに基づいて、具材の状態を判定するものとしたが、これに限られない。
【0100】
カメラの設置コスト等が問題とならない場合には、カメラ(すなわち、撮像装置)によって撮影を行うことにより、具材の状態を判定するようにしてもよい。この場合、把持システム1において、多関節ロボット30のハンド31付近を撮影する撮像装置を設ける。そして、この撮像装置は、具材収容部10から具材を取り出す工程及び取り出した具材を弁当の容器に盛り付ける工程において、ハンド31付近の画像を含む撮影対象箇所の画像を逐次撮影する。このとき撮影された画像のデータは、制御装置40に出力される。なお、撮像装置に代えて、又は、撮像装置に加えて、多関節ロボット30の稼動範囲を撮影可能な撮像装置を把持システム1の所定箇所に備えておき、この撮像装置によって、ハンド31付近を含む撮影対象箇所の画像を撮影することとしてもよい。また、撮像装置等、把持システム1に設置される撮像装置をステレオカメラ等の立体形状を取得可能なものとしてもよい。ただし、2次元画像を撮影する撮像装置の撮像位置を変化させて取得した2つの2次元画像を基に、被写体の3次元形状を算出することも可能である。
【0101】
そして、制御装置40は、撮像装置を制御し、多関節ロボット30のハンド31付近の画像、具材収容部10の具材の画像あるいは弁当の容器の画像等を所定時間間隔で撮影させる。
また、具材状態判定部152は、撮像装置によって撮影された具材の画像に基づいて、具材の状態を判定する。例えば、具材状態判定部152は、撮像装置によって撮影された具材の画像から、収容空間10A内の具材の深さ(収容空間10A内の具材表面から収容空間10A底面までの深さ)、表面の平坦度合(表面がどの程度荒れているか)を認識する。この場合に、具材状態判定部152は、撮像装置によって撮影された具材の画像に加えて、更に力センサ30Bによって計測された具材からの反力(すなわち、具材への接触の検出結果)のデータにも基づいて、具材の状態を判定するようにしてもよい。
【0102】
また、例えば、撮像装置として、被写体までの距離(深度)を測定する機能を備えたDepthカメラを用いることも可能である。
この場合、被写体を撮影することで、カラー画像と共に、各部の正確な深度情報を容易に取得することができる。
そのため、各部の深度情報によって、具材表面や収容空間10A等の立体的な形状を把握することが可能となる。
したがって、具材表面の平坦度合を判定し、レベリング動作の要否を決定したり、具材の深さを判定し、スクレイピング動作の要否を決定したりすることが可能となる。
【0103】
[変形例5]
上述の実施形態において、多関節ロボット30が把持した具材の重量あるいは弁当の容器に取り分けられた具材の重量を重量センサ30A,21によって計測するものとしたが、これに限られない。
例えば、撮像装置によって撮像された具材の画像から、具材の体積を推定し、密度と推定された体積を乗算すること等により、具材の重量を算出することも可能である。
この場合、重量センサ30A,21を用いることなく、具材の重量を算出する手段を実装することができる。
【0104】
[変形例6]
上述の実施形態において、レベリング動作を実行する場合、図12に示すように、収容空間10Aの底面と把持部材31aの先端とが平行な状態を維持して、把持部材31aを収容空間10Aの底面から同一の高さで移動させるものとして説明したが、これに限られない。
すなわち、レベリング動作を実行する場合、具材表面を平坦化可能な各種形態の動作を実行することができる。
図18は、レベリング動作の一例を示す模式図である。
図18に示すように、レベリング動作を実行する場合、具材の表面に把持部材31aの先端が接触する状態(図18(a)参照)で、把持部材31aを開閉させる動作(図18(b)参照)を実行し、把持部材31aが開閉動作する範囲の具材表面を平坦化(図18(c)参照)することが可能である。
この場合、一対の把持部材31aの中央に位置する具材の表面が平坦化されるため、次に具材を把持する予定の位置を確実に平坦化することができる。また、ハンド31自体を搬送する動作が必要ないため、レベリング動作に要する時間を短縮することができる。
【0105】
[変形例7]
上述の実施形態において、スクレイピング動作を実行する場合、図13に示すように、具材に把持部材31aの外面を押し当てて移動させることによって、具材を寄せ集める例や、具材を把持部材31aで把持し、他の部分の具材の上に積み上げることで寄せ集める例について説明したが、これに限られない。
すなわち、スクレイピング動作を実行する場合、具材を寄せ集めることが可能な各種形態の動作を実行することができる。
例えば、一対の把持部材31aの少なくとも一方の形状を、具材を寄せ集めるために好適な形状(一例として、平板状等)とすることも可能である。この場合、スクレイピング動作を実行する際には、この把持部材31aをスクレイピング用のブレードとして機能させ、効率的に具材を寄せ集めることができる。
【0106】
[変形例8]
上述の実施形態において、多関節ロボット30のハンド31が、把持部材31aを具材の物理量が所定量になると推定される深さまで具材収容部10の具材に差し込むことにより、目的とする量の具材を把持する例について説明したが、これに限られない。
すなわち、把持部材31aの開き具合を調整して具材に差し込むことで、把持部材31aが把持する具材の量を調整することも可能である。例えば、把持した具材の重量が超過していた場合(例えば、把持した具材の重量が規定量の範囲の上限を超えている場合)には、把持部材31aを具材に差し込む際の把持部材31aの開き具合を前回よりも狭く修正して具材を把持する、把持した具材の重量が不足していた場合(例えば、把持した具材の重量が規定量の範囲の下限を下回っている場合)には、把持部材31aを具材に差し込む際の把持部材31aの開き具合を前回よりも広く修正して具材を把持する、といったことが可能である。
これにより、把持部材31aを具材に差し込む深さ(差し込み量)を調整できない場合であっても、把持する具材の量を調整することが可能となる。
【0107】
[変形例9]
上述の実施形態において、具材を把持のし易さを反映させて、把持部材31aで具材を把持する際の動作を調整することとしてもよい。
例えば、把持部材31aで具材を把持する際に、具材の一部が把持部材31aから漏れて(逃げて)把持位置の周囲に移動するという現象が起こり得る。
発明者らの検証により、把持部材31aが具材を把持する位置(すなわち、収容空間10Aの内壁面や底面からの距離等)によって、具材の逃げ易さに相違が生じることが判明した。
特に壁際では、把持部材31aの向きが具材の逃げ易さに影響することが判明した。具体的には、把持部材31aから具材が漏れ易い方向に壁が存在する場合、具材は逃げ場所が無いため、逃げ易さが低下(すなわち、把持のし易さが向上)した。
このことを踏まえ、把持位置(すなわち、収容空間10Aの内壁面や底面からの距離)と把持部材31aの向きという2つ要素と、具材の逃げ易さ(又は取り込み易さ)というパラメータの関係性を機械学習によって取得し、その結果に応じて、把持部材31aが具材を把持する把持位置における把持部材31aを差し込む深さ(差し込み量)を調整することができる。例えば、具材が逃げ易い把持位置では、把持部材31aを具材に差し込む深さ(差し込み量)をより大きく設定する等の調整を行うことができる。
これにより、多関節ロボット30によって具材を把持する際に、状況に応じて、より適切な把持動作を行うことが可能となる。
【0108】
[変形例10]
上述の実施形態において、図3に示すように、先端が平坦な板状部材の左右に、側板を備えた形状の把持部材31aを用いる例について説明したが、これに限られない。
例えば、固形物の割合が多い具材を取り分ける場合等には、先端に爪を有する把持部材31aの形状とすることができる。
このような形状の把持部材31aとした場合、爪が固形物を押し退けること等により、具材に対して把持部材31aを差し込み易くなるという効果を有する。また、このとき、具材の表面に対して、爪を斜交させて差し込むことにより、把持部材31aをより差し込み易くすることができる。
なお、ハンド31の一対の把持部材31aを異なる種類の把持部材31aで構成することとしてもよい。
例えば、ハンド31が備える一対の把持部材31aの一方を図3に示す先端が平坦な形状とし、他方を先端に爪を有する形状とすることも可能である。
この場合、具材の状態等に応じて、適切な形状の把持部材31aを選択して、把持動作、レベリング動作あるいはスクレイピング動作を行うことができる。
【0109】
以上のように、本実施形態における把持システム1は、把持部材31aを備えた多関節ロボット30と、多関節ロボット30の動作を制御する制御装置40と、を備える。
制御装置40は、
把持対象となる対象物を把持部材31aにより把持する第1把持動作と、
第1把持動作により把持した対象物を把持部材31aから解放する解放動作と、
解放動作により解放した対象物を再度把持する第2把持動作と、
を多関節ロボット30に実行させる。
これにより、第1把持動作により対象物同士を適切に分離し、新たな一塊の対象物として扱いやすくした上で第2把持動作やその後の対象物の盛り付け動作を行える。
そのため、第2把持動作において、把持部材に対象物が付着することを抑制し、対象物を規定量だけ把持することができる。なお、この効果は、ポテトサラダのように粘性あるいは粘着性を有する対象物を把持する際に、特に顕著である。
また、新たな一塊の対象物として対象物を盛り付けられることから、対象物を盛り付けた場合に、想定していたような美しい見栄えで盛り付けることができる。なお、この効果は、ごぼうサラダや千切りにしたキャベツのように、棒状あるいは線状の絡まってしまいやすい対象物を把持する際に、特に顕著である。
すなわち、把持システム1によれば、ロボットによって対象物を把持する作業をより適切に行うことができる。
また、把持システム1が行うこれらの動作は、把持部材31aが移動することで実現される。そのため、これらの動作を実現するための専用の部材や機構等を別途用意する必要もない、という効果も奏する。
更に、解放した対象物を収容空間10Aに戻して、再度把持することで、対象物を無駄にすることなく活用できる、という効果も奏する。
【0110】
制御装置40は、
第1把持動作、解放動作、及び第2把持動作を、対象物の表面上の同一箇所で多関節ロボット30に実行させる。
これにより、第1把持動作と解放動作により具材同士を適切に分離した対象物の表面上で、第2把持動作を行い、把持部材への具材の付着をより抑制することができる。
【0111】
第1把持動作及び第2把持動作は対象物の表面に対する把持部材31aの差し込みを伴う把持動作であり、
制御装置40は、少なくとも第1把持動作により把持した対象物の物理量に基づいて、第2把持動作の際に多関節ロボット30が把持部材31aを対象物の表面に差し込む深さを算出する。
これにより、多関節ロボット30が把持部材31aを対象物の表面に差し込む深さを調整し、より精度高く具材を規定量把持することができる。
【0112】
制御装置40は、
第1把持動作、解放動作、及び第2把持動作の実行に伴い把持部材31aに付着した対象物を目標物に接触させた状態で把持部材31aを移動することにより、把持部材31aに付着した対象物を目標物に新たに付着させて除去する除去動作を、第2把持動作実行後の多関節ロボット30に実行させる。
これにより、把持部材31aに付着していた具材を除去することができる。
【0113】
制御装置40は、
第1把持動作後に把持部材31aを上昇させると共に、解放動作において把持部材31aを下降させながら対象物を把持部材31aから解放するよう多関節ロボット30を制御する。
これにより、付着した対象物に対しては下降方向の慣性力が保たれるので、付着した対象物を効率よく落下させることができる。
【0114】
把持部材31aは、開閉する機構を有する一対の把持部材31aであると共に、閉状態となった場合に互いに当接する形状を有しており、
制御装置40は、
第1把持動作及び第2把持動作の少なくとも何れかを実行する際に、一対の把持部材31aを閉状態とすることで、当接する形状で対象物を切断するよう多関節ロボット30を制御する。
これにより、具材の切断が許容されるような盛り付け作業を行う場合、当接した先端部や側板部によって具材が切断されるようにして、新たな一塊の具材として、より一層扱いやすることができる。
【0115】
対象物は、第1把持動作及び第2把持動作により、収容空間10Aに収容されている状態から一部が分離して把持される対象物である。
これにより、具材同士を適切に分離するという効果を、具材の性質に合致させて充分に奏することができる。
【0116】
なお、上述の実施形態及び変形例は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の機能を実現する種々の実施形態が本発明の範囲に含まれる。
例えば、上述の実施形態及び変形例において、総菜を取り分ける把持システムに本発明を適用する場合を例に挙げて説明したが、本発明は、種々の対象物を把持するシステムに適用することができる。例えば、練ったモルタル、コンクリート、漆喰、粘土等、粘性あるいは粘着性が高い材料を把持するシステムに本発明を適用することができる。本発明は、作業温度又は室温において中粘度以上(5000mPa・s)以上の粘度を有する対象物を把持する際に好適である。
また、上述の実施形態に記載された例を適宜組み合わせて、本発明を実施することが可能である。
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、図6の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。すなわち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が把持システム1に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に図6の例に限定されない。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0117】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0118】
プログラムを記憶する記憶媒体は、装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディア、あるいは、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体等で構成される。リムーバブルメディアは、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクあるいはフラッシュメモリ等により構成される。光ディスクは、例えば、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk),Blu-ray Disc(登録商標)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini-Disk)等により構成される。フラッシュメモリは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリあるいはSDカードにより構成される。また、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体は、例えば、プログラムが記憶されているROMやハードディスク等で構成される。
【0119】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0120】
上記実施形態は、本発明を適用した一例を示しており、本発明の技術的範囲を限定するものではない。すなわち、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができ、上記実施形態以外の各種実施形態を取ることが可能である。本発明が取ることのできる各種実施形態及びその変形は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0121】
1 把持システム、2 ベルトコンベア、10 具材収容部、10A 収容空間、20 容器供給部、21,30A 重量センサ、30 多関節ロボット、31 ハンド、31a 把持部材、32 ロボットアーム、40 制御装置、50 遮蔽部、151 センサ情報取得部、152 具材状態判定部、153 具材量判定部、154 多関節ロボット制御部、155 容器供給制御部、156 記録制御部、171 パラメータ記憶部、172 履歴データベース(履歴DB)、711 CPU、712 ROM、713 RAM、714 バス、715 入力部、716 出力部、717 記憶部、718 通信部、719 ドライブ、731 リムーバブルメディア
【要約】
【課題】ロボットによって対象物を把持する作業をより適切に行う。
【解決手段】把持システム1は、把持部材31aを備えた多関節ロボット30と、多関節ロボット30の動作を制御する制御装置40と、を備える。制御装置40は、把持対象となる対象物を把持部材31aにより把持する第1把持動作と、第1把持動作により把持した対象物を把持部材31aから解放する解放動作と、解放動作により解放した対象物を再度把持する第2把持動作と、を多関節ロボット30に実行させる。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18