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特許7364300親水化処理剤、不織布、及び不織布の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】親水化処理剤、不織布、及び不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/17 20060101AFI20231011BHJP
   D06M 13/184 20060101ALI20231011BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20231011BHJP
   D06M 13/256 20060101ALI20231011BHJP
   D06M 13/262 20060101ALI20231011BHJP
   D06M 13/292 20060101ALI20231011BHJP
   D06M 13/295 20060101ALI20231011BHJP
   D06M 101/20 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
D06M13/17
D06M13/184
D06M13/224
D06M13/256
D06M13/262
D06M13/292
D06M13/295
D06M101:20
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023115641
(22)【出願日】2023-07-14
(62)【分割の表示】P 2022141409の分割
【原出願日】2022-09-06
【審査請求日】2023-07-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】金子 一輝
(72)【発明者】
【氏名】大海 卓滋
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特許第6490883(JP,B1)
【文献】特開昭63-303184(JP,A)
【文献】特開平03-059169(JP,A)
【文献】特許第6830710(JP,B1)
【文献】特開2013-159884(JP,A)
【文献】特開2002-161477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00 - 15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のアニオン成分(A)、又は下記のポリエーテル変性シリコーン(B)を含有する親水化処理剤であって、
更に、ノニオン界面活性剤(D)を含有し、
前記ノニオン界面活性剤(D)は、質量平均分子量が200以上20000以下であり、且つ炭素数2以上18以下の1価以上4価以下のアルコール1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で3モル以上50モル以下付加させた化合物(d1)、及び炭素数2以上6以下の2価以上4価以下のアルコールと炭素数8以上22以下の1価脂肪酸とのエステル化合物に対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを1モル以上100モル以下の割合で付加させた化合物(d2)から選ばれる少なくとも1つであり、
下記の疎水性成分(E)を含有する熱可塑性樹脂からなる合成繊維から形成された不織布に適用され、
前記熱可塑性樹脂が、前記疎水性成分(E)を0.1質量%以上10質量%以下含有することを特徴とする親水化処理剤。
アニオン成分(A):脂肪酸(a1)、有機スルホン酸(a2)、有機サルフェート(a3)、ポリオキシアルキレン有機サルフェート(a4)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のアルキルリン酸エステル(a5)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル(a6)、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1つ。
ポリエーテル変性シリコーン(B):質量平均分子量が3000以上50000以下。
疎水性成分(E):炭素数12以上24以下のモノカルボン酸と1価脂肪族アルコールとのエステル化合物(e1)、炭素数16以上24以下のモノカルボン酸の金属塩(e3)、炭素数16以上40以下の脂肪酸アミド化合物(e4)、炭素数16以上32以下の1価脂肪族アルコール(e5)から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項2】
前記親水化処理剤の全質量に対する、前記アニオン成分(A)、又は前記ポリエーテル変性シリコーン(B)の含有割合の合計が、10質量%以上100質量%以下である請求項1に記載の親水化処理剤。
【請求項3】
前記疎水性成分(E)が、
炭素数12以上24以下のモノカルボン酸と1価脂肪族アルコールとのエステル化合物(e1)、炭素数16以上24以下のモノカルボン酸の金属塩(e3)、及び炭素数16以上40以下の脂肪酸アミド化合物(e4)から選ばれる少なくとも1つを含有する請求項1又は2に記載の親水化処理剤。
【請求項4】
前記アニオン成分(A)が、
有機スルホン酸(a2)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のアルキルリン酸エステル(a5)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル(a6)、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1つを含有し、
前記ポリエーテル変性シリコーン(B)の質量平均分子量が3000以上50000以下である請求項1に記載の親水化処理剤。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである請求項1に記載の親水化処理剤。
【請求項6】
前記不織布が、5g/m2以上50g/m2以下の長繊維不織布である請求項1に記載の親水化処理剤。
【請求項7】
下記の疎水性成分(E)を含有する熱可塑性樹脂からなる合成繊維から形成された不織布であって、表面に下記のアニオン成分(A)、又は下記のポリエーテル変性シリコーン(B)と、下記のノニオン界面活性剤(D)とを含有する親水化処理剤が付着しており、前記熱可塑性樹脂が、前記疎水性成分(E)を0.1質量%以上10質量%以下含有することを特徴とする不織布。
アニオン成分(A):脂肪酸(a1)、有機スルホン酸(a2)、有機サルフェート(a3)、ポリオキシアルキレン有機サルフェート(a4)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のアルキルリン酸エステル(a5)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル(a6)、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1つ。
ポリエーテル変性シリコーン(B):質量平均分子量が3000以上50000以下。
ノニオン界面活性剤(D):質量平均分子量が200以上20000以下であり、且つ炭素数2以上18以下の1価以上4価以下のアルコール1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で3モル以上50モル以下付加させた化合物(d1)、及び炭素数2以上6以下の2価以上4価以下のアルコールと炭素数8以上22以下の1価脂肪酸とのエステル化合物に対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを1モル以上100モル以下の割合で付加させた化合物(d2)から選ばれる少なくとも1つ。
疎水性成分(E):炭素数12以上24以下のモノカルボン酸と1価脂肪族アルコールとのエステル化合物(e1)、炭素数16以上24以下のモノカルボン酸の金属塩(e3)、炭素数16以上40以下の脂肪酸アミド化合物(e4)、炭素数16以上32以下の1価脂肪族アルコール(e5)から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項8】
下記の疎水性成分(E)を0.1質量%以上10質量%以下含有する熱可塑性樹脂からなる合成繊維から形成された不織布に、下記のアニオン成分(A)、又は下記のポリエーテル変性シリコーン(B)と、下記のノニオン界面活性剤(D)とを含有する親水化処理剤を付着させることを特徴とする不織布の製造方法。
アニオン成分(A):脂肪酸(a1)、有機スルホン酸(a2)、有機サルフェート(a3)、ポリオキシアルキレン有機サルフェート(a4)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のアルキルリン酸エステル(a5)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル(a6)、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1つ。
ポリエーテル変性シリコーン(B):質量平均分子量が3000以上50000以下。
ノニオン界面活性剤(D):質量平均分子量が200以上20000以下であり、且つ炭素数2以上18以下の1価以上4価以下のアルコール1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で3モル以上50モル以下付加させた化合物(d1)、及び炭素数2以上6以下の2価以上4価以下のアルコールと炭素数8以上22以下の1価脂肪酸とのエステル化合物に対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを1モル以上100モル以下の割合で付加させた化合物(d2)から選ばれる少なくとも1つ。
疎水性成分(E):炭素数12以上24以下のモノカルボン酸と1価脂肪族アルコールとのエステル化合物(e1)、炭素数16以上24以下のモノカルボン酸の金属塩(e3)、炭素数16以上40以下の脂肪酸アミド化合物(e4)、炭素数16以上32以下の1価脂肪族アルコール(e5)から選ばれる少なくとも1つ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水化処理剤、不織布、及び不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、不織布の原料繊維として、合成繊維が用いられている。例えば、不織布は、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂で構成された合成繊維を用いて、スパンボンド法によって製造される。不織布に対して処理剤を塗布することにより、親水性等の機能が付与される。親水性等の機能が付与された不織布は、衛材分野、医療分野、土木分野等、幅広い分野で活用されている。
【0003】
特許文献1には、ポリオレフィンで構成された合成繊維を用いて製造されたスパンボンド不織布が開示されている。合成繊維には処理剤としての親水化処理剤が付着されており、衛生材料の表面材等に用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-201670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、衛材分野等で用いられる不織布には、親水性として、初期親水性と耐久親水性の両方を良好に維持することが求められる。さらに、一旦吸収された液体の濡れ戻りを抑制する濡れ戻り防止性も求められる。一般に、親水性と濡れ戻り防止性とはトレードオフの関係にあり、両者を好適に両立させることは難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
態様1の親水化処理剤は、下記のアニオン成分(A)、又は下記のポリエーテル変性シリコーン(B)を含有する親水化処理剤であって、更に、ノニオン界面活性剤(D)を含有し、前記ノニオン界面活性剤(D)は、質量平均分子量が200以上20000以下であり、且つ炭素数2以上18以下の1価以上4価以下のアルコール1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で3モル以上50モル以下付加させた化合物(d1)、及び炭素数2以上6以下の2価以上4価以下のアルコールと炭素数8以上22以下の1価脂肪酸とのエステル化合物に対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを1モル以上100モル以下の割合で付加させた化合物(d2)から選ばれる少なくとも1つであり、下記の疎水性成分(E)を含有する熱可塑性樹脂からなる合成繊維から形成された不織布に適用され、前記熱可塑性樹脂が、前記疎水性成分(E)を0.1質量%以上10質量%以下含有することを要旨とする。
【0007】
アニオン成分(A):脂肪酸(a1)、有機スルホン酸(a2)、有機サルフェート(a3)、ポリオキシアルキレン有機サルフェート(a4)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のアルキルリン酸エステル(a5)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル(a6)、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1つ。
【0008】
ポリエーテル変性シリコーン(B):質量平均分子量が3000以上50000以下。
疎水性成分(E):炭素数12以上24以下のモノカルボン酸と1価脂肪族アルコールとのエステル化合物(e1)、炭素数16以上24以下のモノカルボン酸の金属塩(e3)、炭素数16以上40以下の脂肪酸アミド化合物(e4)、炭素数16以上32以下の1価脂肪族アルコール(e5)から選ばれる少なくとも1つ。
【0009】
態様2は、態様1に記載の親水化処理剤において、前記親水化処理剤の全質量に対する、前記アニオン成分(A)、又は前記ポリエーテル変性シリコーン(B)の含有割合の合計が、10質量%以上100質量%以下である。
【0010】
態様3は、態様1又は2に記載の親水化処理剤において、前記疎水性成分(E)が、炭素数12以上24以下のモノカルボン酸と1価脂肪族アルコールとのエステル化合物(e1)、炭素数16以上24以下のモノカルボン酸の金属塩(e3)、及び炭素数16以上40以下の脂肪酸アミド化合物(e4)から選ばれる少なくとも1つを含有する。
【0011】
態様4は、態様1~3のいずれか一態様に記載の親水化処理剤において、前記アニオン成分(A)が、有機スルホン酸(a2)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のアルキルリン酸エステル(a5)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル(a6)、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1つを含有し、前記ポリエーテル変性シリコーン(B)の質量平均分子量が3000以上50000以下である。
【0012】
態様5は、態様1~4のいずれか一態様に記載の親水化処理剤において、前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである。
態様6は、態様1~5のいずれか一態様に記載の親水化処理剤において、前記不織布が、5g/m2以上50g/m2以下の長繊維不織布である。
【0013】
態様7の不織布は、下記の疎水性成分(E)を含有する熱可塑性樹脂からなる合成繊維から形成された不織布であって、表面に下記のアニオン成分(A)、又は下記のポリエーテル変性シリコーン(B)と、下記のノニオン界面活性剤(D)とを含有する親水化処理剤が付着しており、前記熱可塑性樹脂が、前記疎水性成分(E)を0.1質量%以上10質量%以下含有することを要旨とする。
【0014】
アニオン成分(A):脂肪酸(a1)、有機スルホン酸(a2)、有機サルフェート(a3)、ポリオキシアルキレン有機サルフェート(a4)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のアルキルリン酸エステル(a5)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル(a6)、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1つ。
【0015】
ポリエーテル変性シリコーン(B):質量平均分子量が3000以上50000以下。
ノニオン界面活性剤(D):質量平均分子量が200以上20000以下であり、且つ炭素数2以上18以下の1価以上4価以下のアルコール1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で3モル以上50モル以下付加させた化合物(d1)、及び炭素数2以上6以下の2価以上4価以下のアルコールと炭素数8以上22以下の1価脂肪酸とのエステル化合物に対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを1モル以上100モル以下の割合で付加させた化合物(d2)から選ばれる少なくとも1つ。
【0016】
疎水性成分(E):炭素数12以上24以下のモノカルボン酸と1価脂肪族アルコールとのエステル化合物(e1)、炭素数16以上24以下のモノカルボン酸の金属塩(e3)、炭素数16以上40以下の脂肪酸アミド化合物(e4)、炭素数16以上32以下の1価脂肪族アルコール(e5)から選ばれる少なくとも1つ。
【0017】
態様8の不織布の製造方法は、下記の疎水性成分(E)を0.1質量%以上10質量%以下含有する熱可塑性樹脂からなる合成繊維から形成された不織布に、下記のアニオン成分(A)、又は下記のポリエーテル変性シリコーン(B)と、下記のノニオン界面活性剤(D)とを含有する親水化処理剤を付着させることを要旨とする。
【0018】
アニオン成分(A):脂肪酸(a1)、有機スルホン酸(a2)、有機サルフェート(a3)、ポリオキシアルキレン有機サルフェート(a4)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のアルキルリン酸エステル(a5)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル(a6)、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1つ。
【0019】
ポリエーテル変性シリコーン(B):質量平均分子量が3000以上50000以下。
ノニオン界面活性剤(D):質量平均分子量が200以上20000以下であり、且つ炭素数2以上18以下の1価以上4価以下のアルコール1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で3モル以上50モル以下付加させた化合物(d1)、及び炭素数2以上6以下の2価以上4価以下のアルコールと炭素数8以上22以下の1価脂肪酸とのエステル化合物に対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを1モル以上100モル以下の割合で付加させた化合物(d2)から選ばれる少なくとも1つ。
【0020】
疎水性成分(E):炭素数12以上24以下のモノカルボン酸と1価脂肪族アルコールとのエステル化合物(e1)、炭素数16以上24以下のモノカルボン酸の金属塩(e3)、炭素数16以上40以下の脂肪酸アミド化合物(e4)、炭素数16以上32以下の1価脂肪族アルコール(e5)から選ばれる少なくとも1つ。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、不織布に対して、良好な初期親水性及び耐久親水性を維持しながら、良好な濡れ戻り防止性を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
以下、本発明の親水化処理剤(以下、処理剤ともいう。)を具体化した第1実施形態について説明する。
【0023】
本実施形態の処理剤は、下記のアニオン成分(A)、及び下記のポリエーテル変性シリコーン(B)から選ばれる少なくとも1つを含有する。また、下記の疎水性成分(E)を含有する熱可塑性樹脂からなる合成繊維から形成された不織布に適用される。
【0024】
アニオン成分(A):脂肪酸(a1)、有機スルホン酸(a2)、有機サルフェート(a3)、ポリオキシアルキレン有機サルフェート(a4)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のアルキルリン酸エステル(a5)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル(a6)、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1つ。
【0025】
ポリエーテル変性シリコーン(B):質量平均分子量が1000以上100000以下のもの。
疎水性成分(E):炭素数12以上24以下のモノカルボン酸と1価脂肪族アルコールとのエステル化合物(e1)、炭素数12以上24以下のモノカルボン酸と2価以上5価以下の多価アルコールとのエステル化合物(e2)、炭素数16以上24以下のモノカルボン酸の金属塩(e3)、炭素数16以上40以下の脂肪酸アミド化合物(e4)、炭素数16以上32以下の1価脂肪族アルコール(e5)、エチレン・α-オレフィン共重合体(e6)、プロピレン・α-オレフィン共重合体(e7)、アルキル変性シリコーン(e8)、ポリジメチルシリコーン(e9)から選ばれる少なくとも1つ。
【0026】
処理剤が上記成分を含有するとともに、上記疎水性成分(E)を含有する熱可塑性樹脂からなる合成繊維から形成された不織布に適用されることにより、不織布に対して、良好な初期親水性及び耐久親水性を維持しながら、良好な濡れ戻り防止性を付与することができる。
【0027】
<アニオン成分(A)>
(脂肪酸(a1))
アニオン成分(A)としての脂肪酸(a1)は、特に制限されず、飽和脂肪酸であってもよいし、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖脂肪酸であってもよいし、分岐鎖を有する脂肪酸であってもよい。
【0028】
脂肪酸(a1)の具体例としては、例えば酢酸、オクチル酸、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(セチル酸、パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、オクタデセン酸(オレイン酸、リノール酸)等が挙げられる。
【0029】
(有機スルホン酸(a2))
アニオン成分(A)としての有機スルホン酸(a2)は、特に制限されない。有機スルホン酸(a2)としては、例えば脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素に結合したスルホン酸基を有する化合物が挙げられる。脂肪族炭化水素としては、例えば上記脂肪酸(a1)を構成する炭化水素が挙げられる。芳香族炭化水素としては、例えばドデシルベンゼンが挙げられる。
【0030】
有機スルホン酸(a2)の具体例としては、例えばラウリルスルホン酸、ミリスチルスルホン酸、ペンタデカンスルホン酸、セチルスルホン酸、ステアリルスルホン酸、オレイルスルホン酸、2級アルキルスルホン酸(炭素数位13以上15以下)、ジオクチルスルホコハク酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
【0031】
(有機サルフェート(a3))
アニオン成分(A)としての有機サルフェート(a3)は、特に制限されない。有機サルフェート(a3)としては、例えば脂肪族アルコール、芳香族アルコール、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸を必須に含んでいる脂肪酸エステルの硫酸エステルが挙げられる。脂肪族アルコールとしては、例えば上記脂肪酸(a1)を構成する炭化水素のアルコールが挙げられる。
【0032】
芳香族アルコールとしては、例えばドデシルベンジルアルコールが挙げられる。
不飽和脂肪酸としては、例えばオレイン酸、リシノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
【0033】
不飽和脂肪酸を必須に含んでいる脂肪酸エステルとしては、例えば牛脂、豚脂、ひまし油、菜種油、綿実油、胡麻油、オリーブ油、大豆油、やし油、パーム油、パーム核油、硬化パ-ム油、硬化パ-ム核油等が挙げられる。
【0034】
上記脂肪酸エステルは、アルコールと脂肪酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物であり、合成品であっても、天然品であってもよい。構成する脂肪酸は不飽和脂肪酸を必須に含み、飽和脂肪酸、ヒドロキシ脂肪酸又はヒドロキシ不飽和脂肪酸等を含有していてもよい。
【0035】
有機サルフェート(a3)の具体例としては、例えばラウリル硫酸エステル、オレイル硫酸エステル、ステアリル硫酸エステル、オレイン酸サルフェート、牛脂サルフェート、ナタネ油サルフェート等が挙げられる。
【0036】
(ポリオキシアルキレン有機サルフェート(a4))
アニオン成分(A)としてのポリオキシアルキレン有機サルフェート(a4)は、特に制限されない。ポリオキシアルキレン有機サルフェート(a4)としては、例えば脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステルが挙げられる。また、これらのアミン塩であってもよい。アミン塩としては、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
【0037】
ポリオキシアルキレン有機サルフェートの具体例としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレン(3モル)ドデシル硫酸エステルトリエタノールアミン塩等が挙げられる。
【0038】
(アルキル基の炭素数が6以上12以下のアルキルリン酸エステル(a5))
アニオン成分(A)としてのアルキル基の炭素数が6以上12以下のアルキルリン酸エステル(a5)は、特に制限されない。アルキル基の炭素数が6以上12以下のアルキルリン酸エステル(a5)の具体例としては、例えばヘキシルリン酸エステル、ヘプチルリン酸エステル、オクチルリン酸エステル、ノニルリン酸エステル、デシルリン酸エステル、ウンデシルリン酸エステル、ドデシルリン酸エステル等が挙げられる。
【0039】
(アルキル基の炭素数が6以上12以下のポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル(a6))
アニオン成分(A)としてのアルキル基の炭素数が6以上12以下のポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル(a6)は、特に制限されない。アルキル基の炭素数が6以上12以下のポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル(a6)としては、炭素数が6以上12以下の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステルが挙げられる。
【0040】
アルキル基の炭素数が6以上12以下のポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル(a6)の具体例としては、例えばポリオキシエチレンヘキシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンヘプチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンオクチルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンウンデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンドデシルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。
【0041】
アニオン成分(A)は、上記のアニオン成分(A)の塩であってもよい。塩の具体例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
また、上記のアニオン成分(A)は、アニオン界面活性剤であってもよい。すなわち、上記の塩が、アニオン界面活性剤を構成する対イオンであってもよい。
【0042】
これらのアニオン成分(A)は、一種類のアニオン成分(A)を単独で使用してもよいし、又は二種以上のアニオン成分(A)を適宜組み合わせて使用してもよい。
<ポリエーテル変性シリコーン(B)>
ポリエーテル変性シリコーン(B)は、質量平均分子量が1000以上100000以下である。質量平均分子量は、3000以上50000以下であることが好ましい。
【0043】
ポリエーテル変性シリコーン(B)としては、例えばABn型ポリエーテル変性シリコーン、側鎖型ポリエーテル変性シリコーン、両末端型ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル基とアルキル基の両方が側鎖、又は末端に導入されたアルキルポリエーテル変性シリコーン、側鎖型ポリエーテル変性シリコーンのポリエーテル鎖末端部分が脂肪族化合物、又は脂肪酸化合物で封鎖されたもの、両末端型ポリエーテル変性シリコーンのポリエーテル鎖末端部分が脂肪族化合物、又は脂肪酸化合物で封鎖されたもの等が挙げられる。
【0044】
これらのポリエーテル変性シリコーン(B)は、一種類のポリエーテル変性シリコーン(B)を単独で使用してもよいし、又は二種以上のポリエーテル変性シリコーン(B)を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0045】
また、上記アニオン成分(A)が、有機スルホン酸(a2)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のアルキルリン酸エステル(a5)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル(a6)、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1つを含有し、ポリエーテル変性シリコーン(B)の質量平均分子量が3000以上50000以下であることが好ましい。
【0046】
アニオン成分(A)が、有機スルホン酸(a2)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のアルキルリン酸エステル(a5)、アルキル基の炭素数が6以上12以下のポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル(a6)、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1つを含有し、ポリエーテル変性シリコーン(B)の質量平均分子量が上記数値範囲であることにより、初期親水性を向上させることができる。
【0047】
処理剤の全質量に対する、アニオン成分(A)、及びポリエーテル変性シリコーン(B)の含有割合は特に制限されない。処理剤の全質量に対して、アニオン成分(A)、及びポリエーテル変性シリコーン(B)の含有割合の合計が、10質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0048】
アニオン成分(A)、及びポリエーテル変性シリコーン(B)の含有割合の合計が上記数値範囲であることによって、初期親水性を向上させることができる。
ポリエーテル変性シリコーン(B)の質量平均分子量の測定方法については後述する。
【0049】
<疎水性成分(E)>
(炭素数12以上24以下のモノカルボン酸と1価脂肪族アルコールとのエステル化合物(e1))
疎水成分(E)としての炭素数12以上24以下のモノカルボン酸と1価脂肪族アルコールとのエステル化合物(e1)は、特に制限されない。上記炭素数12以上24以下のモノカルボン酸は、芳香族カルボン酸であってもよいし、脂肪族カルボン酸であってもよい。脂肪族カルボン酸は、飽和脂肪族カルボン酸であってもよいし、不飽和脂肪族カルボン酸であってもよい。また、直鎖脂肪族カルボン酸であってもよいし、分岐鎖を有する脂肪族カルボン酸であってもよい。
【0050】
炭素数12以上24以下のモノカルボン酸としては、例えば、ドデカン酸(ラウリン酸)、トリデカン酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(セチル酸、パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、オクタデセン酸(オレイン酸、リノール酸)、イソオクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、ヘンイコサン酸、ドコサン酸、ドコセン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸等が挙げられる。
【0051】
上記1価脂肪族アルコールは、飽和脂肪族アルコールであってもよいし、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。また、直鎖脂肪族アルコールであってもよいし、分岐鎖を有する脂肪族アルコールであってもよい。
【0052】
1価脂肪族アルコールとしては、例えば、炭素数16以上32以下の1価脂肪族アルコールを挙げることができる。炭素数16以上32以下の1価脂肪族アルコールとしては、例えば、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、エライジルアルコール、イソオクタデシルアルコール、ドコシルアルコール、エルシルアルコール、テトラコシルアルコール、ヘキサコシルアルコール、オクタコシルアルコール、トリアコンチルアルコール、ドトリアコンチルアルコール等が挙げられる。
【0053】
上記エステル化合物(e1)の具体例としては、例えばオクタデカン酸とオクタデシルアルコールのエステル等が挙げられる。
(炭素数12以上24以下のモノカルボン酸と2価以上5価以下の多価アルコールとのエステル化合物(e2))
疎水成分(E)としての炭素数12以上24以下のモノカルボン酸と2価以上5価以下の多価アルコールとのエステル化合物(e2)は、特に制限されない。上記炭素数12以上24以下のモノカルボン酸は、上記エステル化合物(e1)と同様のものが挙げられる。
【0054】
上記2価以上5価以下の多価アルコールは、飽和脂肪族多価アルコールであってもよいし、不飽和脂肪族多価アルコールであってもよい。また、直鎖脂肪族多価アルコールであってもよいし、分岐鎖を有する脂肪族多価アルコールであってもよい。
【0055】
2価以上5価以下の多価アルコールとしては、例えば2-メチル-1,3-プロパンジオール(2価)、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(2価)、トリメチロールエタン(3価)、グリセリン(3価)、トリメチロールプロパン(3価)、ペンタエリスリトール(4価)、キシリトール(5価)等が挙げられる。
【0056】
上記エステル化合物(e2)の具体例としては、例えばオクタデカン酸とグリセリンのモノエステル等が挙げられる。
(炭素数16以上24以下のモノカルボン酸の金属塩(e3))
疎水成分(E)としての炭素数16以上24以下のモノカルボン酸の金属塩(e3)は、特に制限されない。炭素数16以上24以下のモノカルボン酸としては、上記エステル化合物(e1)のうち炭素数16以上24以下のものが挙げられる。
【0057】
金属塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えば、カルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0058】
上記炭素数16以上24以下のモノカルボン酸の金属塩(e3)の具体例としては、例えばオクタデカン酸マグネシウム等が挙げられる。
(炭素数16以上40以下の脂肪酸アミド化合物(e4))
疎水成分(E)としての炭素数16以上40以下の脂肪酸アミド化合物(e4)は、特に制限されない。炭素数16以上40以下の脂肪酸は、1価脂肪酸であってもよいし、多価脂肪酸であってもよい。また、飽和脂肪酸であってもよいし、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖脂肪酸であってもよいし、分岐鎖を有する脂肪酸であってもよい。
【0059】
炭素数16以上40以下の脂肪酸としては、例えば上記エステル化合物(e1)のモノカルボン酸のうち炭素数16以上24以下のものが挙げられる。これらに加えて、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコンタン酸、ヘントリアコンタン酸、ドトリアコンタン酸、トリトリアコンタン酸、テトラトリアコンタン酸、ペンタトリアコンタン酸、ヘキサトリアコンタン酸、ヘプタトリアコンタン酸、オクタトリアコンタン酸、ノナトリアコンタン酸、テトラコンタン酸等が挙げられる。
【0060】
炭素数16以上40以下の脂肪酸アミド化合物(e4)の具体例としては、例えばオクタデカン酸アミド、ドコセン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0061】
(炭素数16以上32以下の1価脂肪族アルコール(e5))
疎水成分(E)としての炭素数16以上32以下の1価脂肪族アルコール(e5)は、特に制限されない。炭素数16以上32以下の1価脂肪族アルコール(e5)は、上記エステル化合物(e1)の1価脂肪族アルコールと同様のものが挙げられる。
【0062】
炭素数16以上32以下の1価脂肪族アルコール(e5)の具体例としては、例えばテトラコシルアルコール等が挙げられる。
(エチレン・α-オレフィン共重合体(e6))
疎水成分(E)としてのエチレン・α-オレフィン共重合体(e6)は、特に制限されない。エチレン・α-オレフィン共重合体(e6)としては、例えばエチレンと炭素数2以上8以下のα-オレフィンとの共重合体を挙げることができる。α-オレフィンは、いずれも公知の高活性チーグラー触媒、メタロセン触媒等の均一系触媒を用い、気相法、溶液重合法等によって得られたものであることが好ましい。
【0063】
エチレン・α-オレフィン共重合体(e6)の具体例としては、例えばエチレン・プロピレン共重合体等が挙げられる。
(プロピレン・α-オレフィン共重合体(e7))
疎水成分(E)としてのプロピレン・α-オレフィン共重合体(e7)は、特に制限されない。プロピレン・α-オレフィン共重合体(e7)としては、例えばプロピレンと炭素数2以上8以下のαオレフィンとの共重合体を挙げることができる。α-オレフィンは、いずれも公知の高活性チーグラー触媒、メタロセン触媒等の均一系触媒を用い、気相法、溶液重合法等によって得られたものであることが好ましい。
【0064】
プロピレン・α-オレフィン共重合体の具体例としては、例えばプロピレン-1-ブテン共重合体等が挙げられる。
(アルキル変性シリコーン(e8))
疎水成分(E)としてのアルキル変性シリコーン(e8)は、特に制限されない。アルキル変性シリコーン(e8)の25℃における動粘度の下限は、特に制限されないが、好ましくは100mm/s以上、より好ましくは300mm/s以上である。25℃における動粘度の上限は、特に制限されないが、好ましくは7000mm/s以下、より好ましくは5000mm/s以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。25℃における動粘度は、公知の方法で測定することができる。
【0065】
(ポリジメチルシリコーン(e9))
疎水成分(E)としてのポリジメチルシリコーン(e9)は、特に制限されない。ポリジメチルシリコーン(e9)の25℃における動粘度の下限は、特に制限されないが、好ましくは1000mm/s以上、より好ましくは3000mm/s以上である。25℃における動粘度の上限は、特に制限されないが、好ましくは20000mm/s以下、より好ましくは15000mm/s以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0066】
これらの疎水成分(E)は、一種類の疎水成分(E)を単独で使用してもよいし、又は二種以上の疎水成分(E)を適宜組み合わせて使用してもよい。疎水性成分(E)に本発明の親水化処理剤は含まれない。
【0067】
疎水成分(E)は、炭素数12以上24以下のモノカルボン酸と1価脂肪族アルコールとのエステル化合物(e1)、炭素数12以上24以下のモノカルボン酸と2価以上5価以下の多価アルコールとのエステル化合物(e2)、炭素数16以上24以下のモノカルボン酸の金属塩(e3)、及び炭素数16以上40以下の脂肪酸アミド化合物(e4)から選ばれる少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0068】
疎水成分(E)が、上記(e1)~(e4)から選ばれる少なくとも1つを含有することにより、濡れ戻り防止性を向上させることができる。
熱可塑性樹脂における、疎水性成分(E)の含有割合は特に制限されない。熱可塑性樹脂は、疎水性成分(E)を0.1質量%以上10質量%以下含有することが好ましい。疎水性成分(E)の含有割合が上記数値範囲であることにより、初期親水性、及び濡れ戻り防止性の少なくともいずれかを向上させることができる。
【0069】
(ノニオン界面活性剤(D))
処理剤は、更にノニオン界面活性剤(D)を含有することが好ましい。
ノニオン界面活性剤(D)は、質量平均分子量が200以上20000以下であることが好ましい。
【0070】
また、炭素数2以上18以下の1価以上4価以下のアルコール1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で3モル以上50モル以下付加させた化合物(d1)、炭素数2以上6以下の2価以上4価以下のアルコールと炭素数8以上22以下の1価脂肪酸とのエステル化合物に対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを1モル以上100モル以下の割合で付加させた化合物(d2)、及び炭素数2以上6以下の2価以上4価以下のアルコールと炭素数8以上22以下の1価脂肪酸とのエステル化合物に対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを1モル以上100モル以下の割合で付加させた化合物1モルと、炭素数8以上22以下の1価脂肪酸2モル以上3モル以下と、を縮合させたエーテルエステル化合物(d3)から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0071】
ノニオン界面活性剤(D)の質量平均分子量が上記数値範囲であり、上記(d1)~(d3)選ばれる少なくとも1つであることによって、濡れ戻り防止性を向上させることができる。
【0072】
(化合物(d1))
ノニオン界面活性剤(D)としての、炭素数2以上18以下の1価以上4価以下のアルコール1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で3モル以上50モル以下付加させた化合物(d1)は特に制限されない。上記化合物(d1)のアルコールとしては、上記エステル化合物(e2)に記載した多価アルコールが挙げられる。炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。
【0073】
上記アルキレンオキサイドの付加モル数である、3モル以上50モル以下は、仕込み原料中におけるアルコール1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を意味する。以後も同様。
【0074】
(化合物(d2))
ノニオン界面活性剤(D)としての、炭素数2以上6以下の2価以上4価以下のアルコールと炭素数8以上22以下の1価脂肪酸とのエステル化合物に対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを1モル以上100モル以下の割合で付加させた化合物(d2)は特に制限されない。上記化合物(d2)のアルコールとしては、上記エステル化合物(e2)に記載した多価アルコールが挙げられる。
【0075】
上記化合物(d2)の炭素数8以上22以下の1価脂肪酸としては、上記エステル化合物(e1)のモノカルボン酸のうち炭素数が22以下のものが挙げられる。これに加えて、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸等が挙げられる。
【0076】
炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドとしては、上記化合物D1のアルキレンオキサイドに加えて、ブチレンオキサイドが挙げられる。
(エーテルエステル化合物(d3))
ノニオン界面活性剤(D)としての、炭素数2以上6以下の2価以上4価以下のアルコールと炭素数8以上22以下の1価脂肪酸とのエステル化合物に対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを1モル以上100モル以下の割合で付加させた化合物1モルと、炭素数8以上22以下の1価脂肪酸2モル以上3モル以下と、を縮合させたエーテルエステル化合物(d3)は特に制限されない。
【0077】
上記エーテルエステル化合物(d3)の、炭素数2以上6以下の2価以上4価以下のアルコールと炭素数8以上22以下の1価脂肪酸とのエステル化合物に対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを1モル以上100モル以下の割合で付加させた化合物は、上記化合物(d2)と同様のものが挙げられる。また、炭素数8以上22以下の1価脂肪酸も、上記化合物(d2)と同様のものが挙げられる。
【0078】
ノニオン界面活性剤(D)の具体例としては、例えばポリオキシエチレン(5モル)ドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(20モル)ドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(15モル)ポリオキシプロピレン(5モル)オクタデシルエーテル、ポリオキシエチレン(8モル)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンモノオレート、トリラウリン酸ポリオキシエチレン(20モル)硬化ヒマシ油、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ポリオキシエチレン(340モル)ポリオキシプロプレン(170モル)ブロック共重合体(ポロキサマー)等が挙げられる。
【0079】
これらのノニオン界面活性剤(D)は、一種類のノニオン界面活性剤(D)を単独で使用してもよいし、又は二種以上のノニオン界面活性剤(D)を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0080】
ノニオン界面活性剤(D)は、上記(d1)~(d3)に加えて、親水化処理剤として用いられる公知のノニオン界面活性剤を含有してもよい。また、ノニオン界面活性剤(D)は、上記(d1)~(d3)以外の親水化処理剤として用いられる公知のノニオン界面活性剤であってもよい。すなわち、ノニオン界面活性剤(D)は、上記の(d1)~(d3)に限定されない。
【0081】
<質量平均分子量(Mw)の測定方法>
ポリエーテル変性シリコーン(B)、及びノニオン界面活性剤(D)の質量平均分子量(Mw)の測定方法について説明する。
【0082】
ポリエーテル変性シリコーン(B)、及びノニオン界面活性剤(D)の質量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、例えばGPC法に基づき以下の測定条件で測定することができる。
【0083】
装置:東ソー社製HLC-8320GPC
カラム:TSK gel Super H4000
:TSK gel Super H3000
:TSK gel Super H2000(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
検出装置:示差屈折率検出器
試料溶液:0.25質量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液流速:0.5mL/分
溶液注入量:10μL
標準試料:ポリスチレン(東ソー社製TSK STANDARD POLYSTYRENE)
標準試料を用いて検量線を作成することによって、各ポリエーテル変性シリコーン(B)、及びノニオン界面活性剤(D)の質量平均分子量(Mw)を求めることができる。
【0084】
<第2実施形態>
以下、本発明の不織布、及びこの不織布の製造方法を具体化した第2実施形態について説明する。第2実施形態の不織布は、上記の疎水性成分(E)を含有する熱可塑性樹脂からなる合成繊維から形成されている。また、表面に上記のアニオン成分(A)、及び上記のポリエーテル変性シリコーン(B)から選ばれる少なくとも1つと、任意選択で上記のノニオン界面活性剤(D)とを含有する第1実施形態の処理剤が付着している。
【0085】
第2実施形態の不織布の製造方法は、上記の疎水性成分(E)を含有する熱可塑性樹脂からなる合成繊維から形成された不織布に、上記のアニオン成分(A)、及び上記のポリエーテル変性シリコーン(B)から選ばれる少なくとも1つと、任意選択でノニオン界面活性剤(D)とを含有する第1実施形態の処理剤を付着させる。
【0086】
上記合成繊維は、不織布用の合成繊維であることが好ましく、長繊維不織布用合成繊維であることがより好ましい。なお、長繊維とは、繊維長が100mm以上の繊維を意味するものとする。
【0087】
また、不織布が、5g/m2以上50g/m2以下の長繊維不織布であることが好ましい。
不織布が、5g/m2以上50g/m2以下の長繊維不織布であることによって、初期親水性、及び濡れ戻り防止性の少なくともいずれかを向上させることができる。
【0088】
上記合成繊維を構成する熱可塑性樹脂は特に制限されない。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィンであることが好ましい。言い換えれば、合成繊維は、ポリオレフィン系合成繊維であることが好ましい。
【0089】
熱可塑性樹脂がポリオレフィンであることによって、耐久親水性を向上させることができる。
ここで、ポリオレフィン系合成繊維とは、オレフィンやアルケンをモノマーとして合成された合成繊維を意味するものとする。ポリオレフィン系合成繊維の具体例としては、例えば、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリブテン系繊維が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。さらにポリプロピレン系繊維としては、種々のモノマーを共重合した改質ポリプロピレン繊維、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合ポリプロピレン繊維等が適用されてもよい。また、芯鞘構造の複合繊維であって、芯、鞘部の両方がポリオレフィン系繊維である複合繊維であってもよい。
【0090】
なお、芯、鞘部の少なくともいずれか一方がポリオレフィン系繊維ではない複合繊維は、ポリオレフィン系合成繊維に含まれないものとする。
第1実施形態の処理剤を合成繊維に付着させる割合に特に制限はないが、処理剤(溶媒を含まない)を合成繊維に対し0.1質量%以上2質量%以下となるように付着させることが好ましく、0.3質量%以上1.2質量%以下となるように付着させることがより好ましい。
【0091】
処理剤を合成繊維に付着させる方法としては、例えば、第1実施形態の処理剤、及び水を含有する水性液、又はさらに希釈した水溶液を用いて、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、ローラー法、計量ポンプを用いたガイド給油法等によって付着させる方法を適用できる。
【0092】
以下、合成繊維の製造方法、及び合成繊維を用いた不織布の製造方法について説明する。
合成繊維を用いた不織布は、スパンボンド法によって製造されることが好ましい。
【0093】
スパンボンド法による不織布の製造方法は、下記の工程1~7を経ることが好ましい。
工程1:合成繊維の原料樹脂であるポリオレフィンと疎水性成分(E)とを、押出成形機に供給する原料供給工程。
【0094】
工程2:押出成形機内でポリオレフィンを加熱し、ポリオレフィンを溶融させるとともに疎水性成分(E)とともに混練して、紡糸口金を備えるノズルへ押し出す溶融・押出工程。
【0095】
工程3:ノズルから溶融紡糸を行い、さらに溶融紡糸した繊維に対してエジェクタを用いて延伸を行う紡糸・延伸工程。
工程4:前記工程3を経た繊維をコンベア上に積層してウェブを形成し、さらにウェブをコンベアによって搬送する積層・搬送工程。
【0096】
工程5:前記工程4を経たウェブを、一対の加熱したローラー間を通過させて繊維間を融着させる融着工程(熱エンボスローラー加工ともいう)。
工程6:前記工程5を経て形成された不織布に対して、第1実施形態の処理剤を付着させる付着工程。
【0097】
工程7:前記工程6を経た不織布を巻取用ローラーに巻き取る巻取工程。
以上の工程を経ることにより、不織布を製造することができる。工程2の溶融・押出工程を経ることにより、ポリオレフィンの樹脂中に疎水性成分(E)が練り込まれる。また、工程3の紡糸・延伸工程を経ることにより、合成繊維の長繊維が製造される。また、工程5の融着工程を経ることにより、長繊維不織布が製造される。また、工程6の付着工程を経ることにより、疎水性成分(E)を含有する合成繊維に処理剤が付着して、長繊維不織布に親水性が付与される。
【0098】
<作用及び効果>
上記実施形態の作用について説明する。
不織布は、熱可塑性樹脂からなる合成繊維を用いて作製されている。この合成繊維は、疎水性成分(E)を含有する熱可塑性樹脂を紡糸することによって作製されている。そのため、合成繊維は、内部に疎水性成分(E)が練り込まれているとともに、合成繊維の表面にも一部の疎水性成分(E)が露出している。これにより、合成繊維の内部と表面の両方に疎水性が付与される。さらに、この不織布に対して、親水化処理剤が適用されることによって、合成繊維の表面に選択的に親水性が付与される。
【0099】
例えば、公知の吸収体に隣接した状態で不織布が用いられる場合、液体が吸収体へ導かれる際には、重力や吸収体の吸水力といった、吸収体に向かう補助的な力が働く。そのため、不織布表面に疎水性成分(E)が存在していたとしても、親水化処理剤の作用が優先するため透水させることが可能である。
【0100】
一方、吸収体に取り込まれた液体が再び外部へ染み出す際には上記のような補助的な力が作用しない。一般的に、吸水時と比較して高い圧力がかかった場合に濡れ戻りが発生する。
【0101】
本発明の疎水性成分(E)が練り込まれている場合、圧力をかけられた不織布は圧縮により繊維同士の距離が近接し、繊維表面に存在する疎水性成分の働きが強く発揮されるため、液体の濡れ戻りを抑制することができる。
【0102】
以上の作用により、疎水性成分(E)を含有する熱可塑性樹脂からなる合成繊維から形成された不織布に対し、アニオン成分(A)、及び下記のポリエーテル変性シリコーン(B)から選ばれる少なくとも1つを含有する親水化処理剤を付与した場合には、親水性と濡れ戻り防止性とを好適に両立させることが可能である。
【0103】
上記実施形態の効果について説明する。
(1)上記のアニオン成分(A)、及び上記のポリエーテル変性シリコーン(B)から選ばれる少なくとも1つを含有する親水化処理剤であって、上記の疎水性成分(E)を含有する熱可塑性樹脂からなる合成繊維から形成された不織布に適用される。
【0104】
したがって、不織布に対して、良好な初期親水性及び耐久親水性を維持しながら、良好な濡れ戻り防止性を付与することができる。
(2)親水化処理剤の全質量に対する、アニオン成分(A)、及びポリエーテル変性シリコーン(B)の含有割合の合計が、10質量%以上100質量%以下である。したがって、不織布の初期親水性を向上させることができる。
【0105】
(3)疎水成分(E)は、上記(e1)~(e4)から選ばれる少なくとも1つを含有する。したがって、不織布の濡れ戻り防止性を向上させることができる。
(4)アニオン成分(A)が、上記(a2)、(a5)、(a6)、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1つを含有し、ポリエーテル変性シリコーン(B)の質量平均分子量が3000以上50000以下である。したがって、不織布の初期親水性を向上させることができる。
【0106】
(5)更に、ノニオン界面活性剤(D)を含有し、ノニオン界面活性剤(D)の質量平均分子量が200以上20000以下であり、上記(d1)~(d3)選ばれる少なくとも1つである。したがって、不織布の濡れ戻り防止性を向上させることができる。
【0107】
(6)熱可塑性樹脂は、疎水性成分(E)を0.1質量%以上10質量%以下含有する。したがって、不織布の初期親水性、及び濡れ戻り防止性の少なくともいずれかを向上させることができる。
【0108】
(7)熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである。すなわち、合成繊維は、ポリオレフィン系合成繊維である。したがって、不織布の耐久親水性を向上させることができる。
(8)不織布が、5g/m2以上50g/m2以下の長繊維不織布である。したがって、不織布の初期親水性、及び濡れ戻り防止性の少なくともいずれかを向上させることができる。
【0109】
(9)不織布が、上記疎水性成分(E)を含有する熱可塑性樹脂からなる合成繊維から形成されている。また、表面に上記のアニオン成分(A)、及び上記のポリエーテル変性シリコーン(B)から選ばれる少なくとも1つと、任意選択でノニオン界面活性剤(D)とを含有する親水化処理剤が付着している。
【0110】
したがって、良好な初期親水性及び耐久親水性を維持しながら、良好な濡れ戻り防止性を有する不織布を得ることができる。
(10)不織布の製造方法は、上記の疎水性成分(E)を含有する熱可塑性樹脂からなる合成繊維から形成された不織布に、上記のアニオン成分(A)、及び上記のポリエーテル変性シリコーン(B)から選ばれる少なくとも1つと、任意選択でノニオン界面活性剤とを含有する親水化処理剤を付着させる。
【0111】
したがって、良好な初期親水性及び耐久親水性を維持しながら、良好な濡れ戻り防止性を有する不織布を製造することができる。
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態、及び、以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0112】
・第2実施形態において、合成繊維は長繊維であったが、合成繊維は短繊維であってもよい。例えば、繊維長が約30mm以上約70mm以下のステープルであってもよい。
・処理剤が付着した不織布は、スパンボンド法以外の方式でウェブが形成された不織布であってもよい。スパンボンド法以外のウェブ形成方式としては、例えば、原料繊維が短繊維の場合において、カード方式やエアレイド方式等の乾式法や、抄紙方式等の湿式法が挙げられる。また、原料繊維が長繊維の場合において、メルトブローン法やフラッシュ紡糸法が挙げられる。また、繊維間結合方式としては、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、スティッチボンド法等が挙げられる。
【0113】
・処理剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の品質保持のための安定化剤や制電剤、帯電防止剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤(シリコーン系化合物)等の通常処理剤に用いられる成分を含有してもよい。
【実施例
【0114】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例、参考例、及び比較例において、%は質量%を意味し、部は質量部を意味する。
【0115】
試験区分1(処理剤の調製)
(実施例1)
表1に示されるアニオン成分(A1)15gと、ノニオン界面活性剤(D1)35gを混合して処理剤を調製した。さらに、450gの水を加えて10%の水性液を調製した。調製した処理剤の水性液を更に水で希釈して、0.25%の濃度の水性液を得た。
【0116】
(実施例1、7、8、12、19、21、24、26、27、29、41、47、49、53、55、57、69、71、72、75、参考例2~6、9~11、13~18、20、22、23、25、28、30~40、42~46、48、50~52、54、56、58~68、70、73、74、76~88、及び比較例1~10)
実施例1、7、8、12、19、21、24、26、27、29、41、47、49、53、55、57、69、71、72、75、参考例2~6、9~11、13~18、20、22、23、25、28、30~40、42~46、48、50~52、54、56、58~68、70、73、74、76~88、及び比較例1~10の各処理剤は、表1、2に示される各成分を使用し、実施例1と同様の方法にて調製した。
【0117】
なお、各例の処理剤中におけるアニオン成分(A)の種類と含有量、ポリエーテル変性シリコーン(B)の種類と含有量、及びノニオン界面活性剤(D)の種類と含有量は、表1の「アニオン成分(A)」欄、「ポリエーテル変性シリコーン(B)」欄、及び「ノニオン界面活性剤(D)」欄にそれぞれ示すとおりである。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
表1、2の種類欄に記載するA1~A6、rA1、B1~B8、rB1、rB2、D1~D8の詳細は以下のとおりである。
【0120】
(アニオン成分(A))
A1:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩
A2:ヘキサデシルスルホン酸ナトリウム塩
A3:ドデシルリン酸エステルカリウム塩
A4:ポリオキシエチレン(3モル)オクチルリン酸エステルカリウム塩
A5:ナタネ油硫酸エステルカリウム塩
A6:ポリオキシエチレン(3モル)ドデシル硫酸エステルトリエタノールアミン塩
rA1:オクタデシルリン酸エステルカリウム塩
(ポリエーテル変性シリコーン(B))
ポリエーテル変性シリコーン(B)の詳細について表3に示す。
【0121】
【表3】
表3において、「Me基」はメチル基を意味する。「n-Bu基」はノーマルブチル基を意味する。「Si%」は、ポリエーテル変性シリコーンの質量平均分子量からアルキレンオキサイドを除いた部分の質量比率を意味する。「EO%(モル比)」は、アルキレンオキサイドに占めるエチレンオキサイドのモル比率を意味する。例えば、アルキレンオキサイドが、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)を含む場合、下記の式により、EO%(モル比)を求めることができる。
【0122】
EO%(モル比)=(EOモル数/(EOモル数+POモル数))×100
(ノニオン界面活性剤(D))
D1:1-ドデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物(質量平均分子量407)
D2:C12-C13分岐アルコール1モルに対してエチレンオキサイド6モルとプロピレンオキサイド2モルをランダム付加させた化合物(質量平均分子量574)
D3:1-オクタデカノール(0.8モル)と1-ヘキサデカノール(0.2モル)の混合物に対してエチレンオキサイドを15モルとプロピレンオキサイド5モルをブロック重合させた化合物(質量平均分子量1200)
D4:硬化ヒマシ油1モルに対して、エチレンオキサイドを8モル付加させた化合物(質量平均分子量1291)
D5:ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイド20モルを付加させた後、オレイン酸1モルを付加させた化合物(質量平均分子量約1300)
D6:硬化ヒマシ油1モルに対してエチレンオキサイド20モルを付加させた後、ラウリン酸3モルを付加させた化合物(質量平均分子量約2000)
D7:ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(質量平均分子量190)
D8:ポリオキシエチレン(340モル)ポリオキシプロプレン(170モル)ブロック共重合体(ポロキサマー)(質量平均分子量25000)
試験区分2(合成繊維、及び長繊維不織布の製造)
表4に示される熱可塑性樹脂と疎水性成分(E)を用いて、疎水性成分(E)が付着した長繊維不織布(F)を製造した。
【0123】
なお、各長繊維不織布(F)における熱可塑性樹脂の種類、疎水性成分(E)の種類、長繊維不織布(F)中の疎水性成分(E)の含有割合、長繊維不織布(F)の目付は、表4の「熱可塑性樹脂」欄、「疎水性成分(E)」欄、「長繊維不織布(F)中の疎水性成分(E)の含有割合(質量%)」欄、「目付(g/cm)」欄にそれぞれ示すとおりである。
【0124】
【表4】
表4の疎水性成分(E)欄に記載するE1~E11、rE1、rE2の詳細は以下のとおりである。
【0125】
(疎水性成分(E))
E1:オクタデカン酸とオクタデシルアルコールのエステル
E2:オクタデカン酸とグリセリンのモノエステル
E3:オクタデカン酸マグネシウム
E4:オクタデカン酸アミド
E5:ドコセン酸アミド
E6:メチレンビスステアリン酸アミド
E7:テトラコシルアルコール
E8:エチレン-プロピレン共重合体
E9:プロピレン-1-ブテン共重合体
E10:25℃における動粘度が500mm/sのアルキル変性シリコーン
E11:25℃における動粘度が10000mm/sのジメチルシリコーンオイル
rE1:ポリオキシエチレン(2モル)オクタデシルエーテル
rE2:ドデカン酸アミド
なお、表4の熱可塑性樹脂欄において、「PP」はポリプロピレン樹脂、「PET」はポリエチレンテレフタレート樹脂、「PE」はポリエチレン樹脂、「PLA」はポリ乳酸樹脂を意味するものとする。また、「PE/PET」は、鞘部分がポリエチレン樹脂で、芯部分がポリエチレンテレフタレート樹脂で構成された芯鞘構造の複合樹脂であることを意味するものとする。また、「PE/PP」は、鞘部分がポリエチレンで、芯部分がポリプロピレンで構成された芯鞘構造の複合樹脂であることを意味するものとする。
【0126】
以下、各例の長繊維不織布(F)の製造方法について説明する。
(長繊維不織布(F1)の調製)
疎水性成分(E1)10.0kgとポリプロピレン樹脂10.0kgとを混合し、押出成形機内で約200℃に加熱溶融させることで、疎水性成分(E1)を50%含有するポリオレフィン系樹脂組成物(以下、マスターバッチともいう。)を製造した。
【0127】
マスターバッチが10.0%となるようにポリプロピレン樹脂と混合した。さらに、混合物を245℃で溶融紡糸し、熱エンボスローラー加工した。以上の手順によって、疎水性成分(E1)の含有割合が5.0%、目付20g/m、単糸平均繊度2デニールのポリオレフィン系スパンボンド不織布を得た。
【0128】
(長繊維不織布(F2~6、9~15、20、21、23、24、27、29、33)の調製)
長繊維不織布中の疎水性成分(E)の種類、及び含有割合が表4になるように、上記のマスターバッチとポリプロピレン樹脂とを混合した。さらに、混合物を245℃で溶融紡糸し、熱エンボスローラー加工して、単糸平均繊度2デニールのポリオレフィン系スパンボンド不織布を得た。
【0129】
(長繊維不織布(F16、17、25、26、30、32、34、36)の調製)
ポリプロピレン樹脂に代えてポリエチレンテレフタレート樹脂を用いたこと以外は、長繊維不織布(F1)の調製と同様にポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物(以下、マスターバッチともいう。)を製造した。
【0130】
疎水性成分(E)の種類、及び含有割合が表4に示すものとなるように、マスターバッチとポリエチレンテレフタレート樹脂とを混合した。混合物を280℃で溶融紡糸し、熱エンボスローラー加工して、単糸平均繊度2デニールのポリエチレンテレフタレート系スパンボンド不織布を得た。
【0131】
(長繊維不織布(F19、35)の調製)
ポリプロピレン樹脂に代えてポリ乳酸樹脂を用いたこと以外は、長繊維不織布(F1)と同様にしてポリ乳酸系樹脂組成物(以下、マスターバッチともいう。)を製造した。
【0132】
疎水性成分(E)の含有割合が表4に示すものとなるように、マスターバッチとポリ乳酸樹脂とを混合した。混合物を200℃で溶融紡糸し、熱エンボスローラー加工して、単糸平均繊度2デニールのポリ乳酸系スパンボンド不織布を得た。
【0133】
(長繊維不織布(F7、8、18、22、28、31)の調製)
ポリプロピレン樹脂に代えてポリエチレン樹脂を用いたこと以外は、長繊維不織布(F1)と同様にしてポリエチレン系樹脂組成物(以下、マスターバッチともいう。)を製造した。
【0134】
疎水性成分(E)の含有割合が表4の値となるように、マスターバッチとポリエチレン樹脂とを混合した。混合物を、芯部を構成する樹脂と共に、270℃で複合溶融紡糸し、熱エンボスローラー加工して、芯比率が50%(芯/鞘の質量比率が50:50)である単糸平均繊度2デニールの同芯複合樹脂系スパンボンド不織布を得た。
【0135】
(長繊維不織布(F37~40)の調製)
長繊維不織布(F37、38)は、ポリプロピレン樹脂に疎水性成分(E)を混合しなかったこと以外は、長繊維不織布(F1)の調製と同様にポリプロピレン系スパンボンド不織布を得た。
【0136】
長繊維不織布(F39、40)は、疎水性成分(E1)に代えて、表4に示すrE1、rE2を用いたこと以外は、長繊維不織布(F1)の調製と同様にポリプロピレン系スパンボンド不織布を得た。
【0137】
(処理剤の付着)
表4の各長繊維不織布(F)に対して、以下の手順で処理剤を付着した。
まず、試験区分1で調製した0.25%の濃度の各処理剤の水性液を用いて浴温25℃の処理浴を用意した。この処理浴に、各長繊維不織布(F)を5分間浸漬した後、取り出した。長繊維不織布(F)2gに対する水性液の付着量が4gとなるように絞り率を調整しながら公知の絞り器(マングルともいう)を用いて絞った。80℃で30分間送風乾燥して、処理剤が付着した長繊維不織布(F)を作製した。長繊維不織布(F)1gに対する処理剤の付着量は0.5%であった。
【0138】
なお、長繊維不織布(F)に対する処理剤の付着量は、長繊維不織布(F)をメタノール/キシレン(50/50容量比)混合溶剤で抽出することにより測定した。
試験区分3(評価)
実施例1、7、8、12、19、21、24、26、27、29、41、47、49、53、55、57、69、71、72、75、参考例2~6、9~11、13~18、20、22、23、25、28、30~40、42~46、48、50~52、54、56、58~68、70、73、74、76~88、及び比較例1~10の長繊維不織布(F)の評価として、濡れ戻り防止性、初期親水性、及び耐久親水性を評価した。各試験の手順について以下に示す。また、試験結果を表1、2の「濡れ戻り防止性」、「初期親水性」、「耐久親水性」欄に示す。
【0139】
(濡れ戻り防止性)
濾紙(10cm角)を5枚重ね、この濾紙上に試験区分2で作製した長繊維不織布(F)(10cm角)を置いた。長繊維不織布(F)上に公知の通液度測定器に付属する通液検知電極を備えた通液検知プレートを置いた。次に、長繊維不織布(F)に対して、鉛直方向の上方25mmの高さから12mLの生理食塩水を滴下し、長繊維不織布(F)を通して生理食塩水を濾紙に吸収させた。生理食塩水の吸収後、通液検知プレートを取り除いた。その後、長繊維不織布(F)上に3.5kgの荷重を3分間付与した。
【0140】
次に、予め秤量した濾紙(10cm角)を2枚重ねて長繊維不織布(F)上に置いた。続いて、この濾紙の上から、3.5kgの荷重を2分間かけた。2分経過後に、長繊維不織布(F)上に置いた2枚の濾紙の重量を測定して、重量増加分を算出した。この重量増加分を液戻り量(g)とした。上記測定を5回行い、平均値を下記の評価基準で評価した。なお、液戻り量が少ない程、濡れ戻り防止性に優れていることを意味する。
【0141】
・濡れ戻り防止性の評価基準
◎◎(優れる):液戻り量が0.2g未満である場合
◎(良好):液戻り量が0.2g以上且つ0.8g未満である場合
〇(可):液戻り量が0.8g以上且つ1.0g未満である場合
×(不可):液戻り量が1.0g以上である場合
(初期親水性)
LENZING社製通液度測定器(Lister)を使用して透水試験を行った。まず、濾紙を3枚重ねた上に、試験区分2で作製した長繊維不織布(F)(10cm角)を置いた。その上に、通液度測定器に付属する通液検知電極を備えた通液検知プレートを置いた。長繊維不織布(F)の表面に対して、鉛直方向の上方25mmの高さから5mLの生理食塩水を滴下した。
【0142】
生理食塩水を滴下してから、生理食塩水が長繊維不織布(F)を通過するまでの時間(透水時間)を通液度測定器で測定して、下記の評価基準で評価した。なお、透水時間が短い程、透水性が良好であることを意味する。
【0143】
・初期親水性の評価基準
◎◎(優れる):3秒未満で通過した場合
◎(良好):3秒以上且つ4秒未満で通過した場合
〇(可):4秒以上且つ10秒未満で通過した場合
×(不可):10秒以上で通過した場合
(耐久親水性)
上記初期親水性の試験を3回繰り返し行い、3回目の透水時間を下記の評価基準で評価した。なお、2回目、3回目の透水時間が1回目の透水時間との差が小さく且つ短い程、耐久親水性が良好であることを意味する。
【0144】
・耐久親水性の評価基準
◎◎(優れる):10秒未満で通過した場合
◎(良好):10秒以上且つ20秒未満で通過した場合
〇(可):20秒以上且つ60秒未満で通過した場合
×(不可):60秒以上で通過した場合
表1、2の結果から、本発明によれば、不織布の初期親水性、耐久親水性、及び濡れ戻り防止性を好適に両立させることができる。言い換えれば、良好な初期親水性及び耐久親水性を維持しながら、良好な濡れ戻り防止性を付与することができる。
【要約】
【課題】不織布に対して、良好な初期親水性及び耐久親水性を維持しながら、良好な濡れ戻り防止性を付与する。
【解決手段】下記のアニオン成分、又は下記のポリエーテル変性シリコーンから選ばれる少なくとも1つを含有する親水化処理剤であって、更に、ノニオン界面活性剤(D)を含有し、下記の疎水性成分を含有する熱可塑性樹脂からなる合成繊維から形成された不織布に適用され、熱可塑性樹脂が、疎水性成分(E)を0.1質量%以上10質量%以下含有する。
【選択図】なし