(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】角型導線の接続方法及び回転電機の固定子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/04 20060101AFI20231011BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20231011BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20231011BHJP
H01F 41/10 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
H02K15/04 E
H01B13/00 501Z
B23K26/21 L
H01F41/10 C
(21)【出願番号】P 2019128952
(22)【出願日】2019-07-11
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】315017775
【氏名又は名称】ニデックマシンツール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】成田 竜一
(72)【発明者】
【氏名】呉屋 真之
(72)【発明者】
【氏名】森 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】西谷 裕介
(72)【発明者】
【氏名】田内 拓至
(72)【発明者】
【氏名】山下 貢丸
(72)【発明者】
【氏名】法山 敬一
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-062762(JP,A)
【文献】特開2016-208829(JP,A)
【文献】特開昭59-061452(JP,A)
【文献】特開2019-054693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/04
H01B 13/00
B23K 26/21
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形断面を有する第1導線の第1端面と、矩形断面を有する第2導線の第2端面とが隣り合わせになった状態で、前記第1端面及び前記第2端面に跨って前記第1端面及び前記第2端面の少なくとも一部を覆うように覆い部材を配置するステップと、
前記第1端面と前記第2端面とに跨って配置された前記覆い部材にエネルギービームを照射して、前記覆い部材の全体を溶融して前記覆い部材と前記第1導線の端部と前記第2導線の端部とが溶融した溶融層を生成するステップと、
を備え
、
前記覆い部材を配置するステップは、前記第1端面及び前記第2端面に対向するように形成された端部対向部と、前記第1導線及び前記第2導線の側面の少なくとも一部と対向するように形成された側部対向部とを有する前記覆い部材を、前記端部対向部で前記第1端面及び前記第2端面の少なくとも一部を覆うように配置する角型導線の接続方法。
【請求項2】
前記覆い部材を配置するステップは、前記第1端面と、前記第1端面に対して前記第2導線の延在方向に突出した位置に配置された前記第2端面とに跨って前記覆い部材を配置する
請求項
1に記載の角型導線の接続方法。
【請求項3】
前記溶融層を生成するステップは、前記エネルギービームを走査しながら照射して、前記覆い部材の全体を溶融して前記覆い部材と前記第1導線の端部と前記第2導線の端部とが溶融した溶融層を生成する
請求項1乃至
2の何れか一項に記載の角型導線の接続方法。
【請求項4】
前記溶融層を生成するステップは、前記覆い部材のうち前記第1端面の縁部と前記第2端面の縁部とが互いに隣り合っている領域を覆う部分に前記エネルギービームを照射して、前記覆い部材の全体を溶融して前記覆い部材と前記第1導線の端部と前記第2導線の端部とが溶融した溶融層を生成する
請求項1乃至
2の何れか一項に記載の角型導線の接続方法。
【請求項5】
前記覆い部材を配置するステップは、それぞれ上方を向いた前記第1端面及び前記第2端面に跨って前記第1端面及び前記第2端面の少なくとも一部を覆うように覆い部材を配置する
請求項1乃至
4の何れか一項に記載の角型導線の接続方法。
【請求項6】
前記覆い部材を配置するステップは、前記第1端面及び前記第2端面に対向するように形成された端部対向部の板厚が0.1mm以上0.5mm以下である前記覆い部材を前記第1端面と前記第2端面とに跨って配置する
請求項1乃至
5の何れか一項に記載の角型導線の接続方法。
【請求項7】
前記覆い部材を配置するステップは、前記第1導線及び前記第2導線と材質が同じである前記覆い部材を前記第1端面と前記第2端面とに跨って配置する請求項1乃至
6の何れか一項に記載の角型導線の接続方法。
【請求項8】
前記覆い部材を配置するステップは、前記第1導線及び前記第2導線とは材質が異なる前記覆い部材を前記第1端面と前記第2端面とに跨って配置する
請求項1乃至
6の何れか一項に記載の角型導線の接続方法。
【請求項9】
前記覆い部材を配置するステップは、前記矩形断面の1辺の長さが1mm以上5mm以下の前記第1導線における前記第1端面と、前記矩形断面の1辺の長さが1mm以上5mm以下の前記第2導線における前記第2端面とに跨って前記覆い部材を配置する
請求項1乃至
8の何れか一項に記載の角型導線の接続方法。
【請求項10】
回転電機の固定子鉄心における複数のスロットのうちの一のスロットの一方端から他方端に向かって前記第1導線を挿通して前記第1端面を前記他方端から前記一のスロットの外部に突出させるステップと、
前記一のスロットとは異なる他のスロットの一方端から他方端に向かって前記第2導線を挿通して前記第2端面を前記他方端から前記他のスロットの外部に突出させるステップと、
前記スロットの外部に突出させた前記第1端面と前記第2端面とを隣り合わせに配置するステップと、
をさらに備え、
前記覆い部材を配置するステップは、前記隣り合わせに配置するステップを実施した後で実施される
請求項1乃至
9の何れか一項に記載の角型導線の接続方法。
【請求項11】
回転電機の固定子鉄心における複数のスロットのうちの一のスロットの一方端から他方端に向かって矩形断面を有する第1導線を挿通して前記第1導線の第1端面を前記他方端から前記一のスロットの外部に突出させるステップと、
前記一のスロットとは異なる他のスロットの一方端から他方端に向かって矩形断面を有する第2導線を挿通して前記第2導線の第2端面を前記他方端から前記他のスロットの外部に突出させるステップと、
前記スロットの外部に突出させた前記第1端面と前記第2端面とを隣り合わせに配置するステップと、
隣り合わせに配置された前記第1端面及び前記第2端面に跨って前記第1端面及び前記第2端面の少なくとも一部を覆うように覆い部材を配置するステップと、
前記第1端面と前記第2端面とに跨って配置された前記覆い部材にエネルギービームを照射して、前記覆い部材の全体を溶融して前記覆い部材と前記第1導線の端部と前記第2導線の端部とが溶融した溶融層を生成するステップと、
を備え
、
前記覆い部材を配置するステップは、前記第1端面及び前記第2端面に対向するように形成された端部対向部と、前記第1導線及び前記第2導線の側面の少なくとも一部と対向するように形成された側部対向部とを有する前記覆い部材を、前記端部対向部で前記第1端面及び前記第2端面の少なくとも一部を覆うように配置する回転電機の固定子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、角型導線の接続方法及び回転電機の固定子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電動機や発電機などの回転電機では、例えば固定子巻線が固定子鉄心に装着されて固定子が構成される。また、例えば回転電機では、小型化や効率向上の要請から巻線の占積率向上のため、巻線として断面が円形の丸線に代えて断面が矩形の角線(角型導線)が用いられるようになっている。
また、例えば回転電機において、平角線によるセグメント導体を複数接続して固定子巻線として使用するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1には、回転電機の導体接合方法として、接合対象となる2つセグメント導体のそれぞれの先端面に板状の導電性プレートを設置し、レーザを照射することで2つセグメント導体のそれぞれの先端と導電性プレートとを溶接する点が開示されている。
特許文献1に記載の導体接合方法では、2つセグメント導体同士の間を流れる電流は、主に導電性プレートを介して流れることとなる。しかし、セグメント導体の先端面と導電性プレートにおける該先端面と対向する面との接触が良好でない場合、セグメント導体と導電性プレートとの間を流れる電流は、主にセグメント導体の先端と導電性プレートとが串刺しするように接合された部分、すなわちレーザ照射時にセグメント導体の延在方向に沿って細長く伸びるように形成された溶融領域を介して流れることになる。上記接合された部分の断面積は、セグメント導体の先端面の面積よりも小さい。そのため、2つセグメント導体同士の間を十分に大きな電流を流すことが難しくなるおそれがある。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、導線同士の接続部において十分な電流を流すことができる角型導線の接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る角型導線の接続方法は、
矩形断面を有する第1導線の第1端面と、矩形断面を有する第2導線の第2端面とが隣り合わせになった状態で、前記第1端面及び前記第2端面に跨って前記第1端面及び前記第2端面の少なくとも一部を覆うように覆い部材を配置するステップと、
前記第1端面と前記第2端面とに跨って配置された前記覆い部材にエネルギービームを照射して、前記覆い部材の全体を溶融して前記覆い部材と前記第1導線の端部と前記第2導線の端部とが溶融した溶融層を生成するステップと、
を備える。
【0007】
上記(1)の方法によれば、覆い部材の全体を溶融して覆い部材と第1導線の端部と第2導線の端部とが溶融した溶融層を生成するので、第1導線と第2導線とが溶接によって接続された接続部の大きさを確保できる。これにより、該接続部において十分な電流を流すことが可能となる。したがって、第1導線と第2導線との接続の信頼性を向上できる。
また、上記(1)の方法によれば、第1端面及び第2端面に跨って第1端面及び第2端面の少なくとも一部を覆い部材で覆うので、例えば第1導線の端部と第2導線の端部との間に隙間が存在していても、照射されたエネルギービームが該隙間を通過してしまって上記溶融層の生成が不十分になってしまうことを抑制できる。
また、上記(1)の方法によれば、上述したように照射されたエネルギービームが該隙間を通過してしまうことを抑制できるので、エネルギービームの出力を不必要に上げる必要がなく、エネルギービームを出力するための照射装置に要求される性能が過剰になることを抑制できる。
【0008】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の方法において、前記覆い部材を配置するステップは、前記第1端面及び前記第2端面に対向するように形成された端部対向部と、前記第1導線及び前記第2導線の側面の少なくとも一部と対向するように形成された側部対向部とを有する前記覆い部材を、前記端部対向部で前記第1端面及び前記第2端面の少なくとも一部を覆うように配置する。
【0009】
上記(2)の方法によれば、側部対向部と第1導線及び第2導線の側面の少なくとも一部とが当接することで、第1導線又は第2導線と覆い部材との位置ずれを防止できる。
【0010】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の方法において、前記覆い部材を配置するステップは、前記第1端面と、前記第1端面に対して前記第2導線の延在方向に突出した位置に配置された前記第2端面とに跨って前記覆い部材を配置する。
【0011】
上記(3)の方法によれば、第1端面と第2端面との位置が第1導線又は第2導線の延在方向にずれていても、第1端面と第2端面とに跨って配置された覆い部材にエネルギービームを照射することで、上述した溶融層を生成できる。
【0012】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの方法において、前記溶融層を生成するステップは、前記エネルギービームを走査しながら照射して、前記覆い部材の全体を溶融して前記覆い部材と前記第1導線の端部と前記第2導線の端部とが溶融した溶融層を生成する。
【0013】
上記(4)の方法によれば、上述した溶融層を効率的に生成できる。
【0014】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの方法において、前記溶融層を生成するステップは、前記覆い部材のうち前記第1端面の縁部と前記第2端面の縁部とが互いに隣り合っている領域を覆う部分に前記エネルギービームを照射して、前記覆い部材の全体を溶融して前記覆い部材と前記第1導線の端部と前記第2導線の端部とが溶融した溶融層を生成する。
【0015】
上記(5)の方法によれば、上述した溶融層の形状が第1導線側と第2導線側とで異なることを抑制できる。
【0016】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの方法において、前記覆い部材を配置するステップは、それぞれ上方を向いた前記第1端面及び前記第2端面に跨って前記第1端面及び前記第2端面の少なくとも一部を覆うように覆い部材を配置する。
【0017】
上記(6)の方法によれば、配置した覆い部材を第1導線や第2導線に仮止めする必要性が少なくなり、仮止めに要する手間やコストを抑制できる。
【0018】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの方法において、前記覆い部材を配置するステップは、前記第1端面及び前記第2端面に対向するように形成された端部対向部の板厚が0.1mm以上0.5mm以下である前記覆い部材を前記第1端面と前記第2端面とに跨って配置する。
【0019】
発明者らが鋭意検討した結果、端部対向部の板厚が0.1mm以上であれば、仮に第1導線の端部と第2導線の端部との間に隙間が存在していても、照射されたエネルギービームが覆い部材を貫通して該隙間を通過してしまうことを抑制できることが分かった。また、発明者らが鋭意検討した結果、端部対向部の板厚が0.5mm以下であれば、上述した溶融層の生成に要する時間が覆い部材の有無によってほとんど変わることがないことが分かった。
上記(7)の方法によれば、上述した溶融層を効率的に生成できる。
【0020】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの方法において、前記覆い部材を配置するステップは、前記第1導線及び前記第2導線と材質が同じである前記覆い部材を前記第1端面と前記第2端面とに跨って配置する。
【0021】
上記(8)の方法によれば、上述した溶融層の組成が第1導線及び第2導線と同じになるので、電気的な特性に及ぼす影響を抑制できる。
【0022】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの方法において、前記覆い部材を配置するステップは、前記第1導線及び前記第2導線とは材質が異なる前記覆い部材を前記第1端面と前記第2端面とに跨って配置する。
【0023】
上記(9)の方法によれば、例えばエネルギービームの吸収率が第1導線及び第2導線よりも高くなる材質で覆い部材を構成すれば、上述した溶融層を効率的に生成できる。
【0024】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(9)の何れかの方法において、前記覆い部材を配置するステップは、前記矩形断面の1辺の長さが1mm以上5mm以下の前記第1導線における前記第1端面と、前記矩形断面の1辺の長さが1mm以上5mm以下の前記第2導線における前記第2端面とに跨って前記覆い部材を配置するようにしてもよい。
【0025】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(10)の何れかの方法において、
回転電機の固定子鉄心における複数のスロットのうちの一のスロットの一方端から他方端に向かって前記第1導線を挿通して前記第1端面を前記他方端から前記一のスロットの外部に突出させるステップと、
前記一のスロットとは異なる他のスロットの一方端から他方端に向かって前記第2導線を挿通して前記第2端面を前記他方端から前記他のスロットの外部に突出させるステップと、
前記スロットの外部に突出させた前記第1端面と前記第2端面とを隣り合わせに配置するステップと、
をさらに備え、
前記覆い部材を配置するステップは、前記隣り合わせに配置するステップを実施した後で実施される。
【0026】
上記(11)の方法によれば、回転電機の固定子の巻線を効率的に接続できる。
【0027】
(12)本開示の少なくとも一実施形態に係る回転電機の固定子の製造方法は、
回転電機の固定子鉄心における複数のスロットのうちの一のスロットの一方端から他方端に向かって矩形断面を有する第1導線を挿通して前記第1導線の第1端面を前記他方端から前記一のスロットの外部に突出させるステップと、
前記一のスロットとは異なる他のスロットの一方端から他方端に向かって矩形断面を有する第2導線を挿通して前記第2導線の第2端面を前記他方端から前記他のスロットの外部に突出させるステップと、
前記スロットの外部に突出させた前記第1端面と前記第2端面とを隣り合わせに配置するステップと、
隣り合わせに配置された前記第1端面及び前記第2端面に跨って前記第1端面及び前記第2端面の少なくとも一部を覆うように覆い部材を配置するステップと、
前記第1端面と前記第2端面とに跨って配置された前記覆い部材にエネルギービームを照射して、前記覆い部材の全体を溶融して前記覆い部材と前記第1導線の端部と前記第2導線の端部とが溶融した溶融層を生成するステップと、
を備える。
【0028】
上記(12)の方法によれば、回転電機の固定子を効率的に製造できる。
【発明の効果】
【0029】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、導線同士の接続部において十分な電流を流すことができる角型導線の接続方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】幾つかの実施形態に係る回転電機の構成を模式的に示した図である。
【
図2】幾つかの実施形態に係るハウジング及び固定子の斜視図である。
【
図3】固定子巻線を構成するセグメント導体の模式的な斜視図である。
【
図4】幾つかの実施形態に係る固定子巻線の形成手順を説明するための模式的な図である。
【
図5】端面同士が隣り合わせに配置された状態における端部の近傍を示す模式的な図である。
【
図6】隣り合わせに配置された2つの端面に跨って覆い部材を配置した状態を示す模式的な図である。
【
図7】隣り合わせに配置された2つの端面に跨って配置した覆い部材を上方から見た模式的な図である。
【
図8】幾つかの実施形態に係る覆い部材の一例についての模式的な斜視図である。
【
図9】セグメント導体の端面に覆い部材を配置した後、レーザビームの照射を開始した直後の状態を示す模式的な図である。
【
図10】レーザビームの照射を開始した直後の状態を示す模式的な図である。
【
図11】溶融層の形成状態を模式的に示す図である。
【
図12】レーザビームの照射についての他の実施形態の一例を示す図である。
【
図13】隣り合わせに配置された端面に覆い部材を配置する様子を示す模式的な図である。
【
図14】第1端面と第2端面との位置が第1導線及び第2導線の延在方向にずれている場合において端面に覆い部材を配置した後の状態を示す模式的な図である。
【
図15】幾つかの実施形態に係る回転電機の固定子の製造方法における処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0032】
(回転電機1の構成の概略)
図1は、幾つかの実施形態に係る回転電機の構成を模式的に示した図である。
図1では、幾つかの実施形態に係る回転電機の一部の断面を図示している。
図1に示す回転電機1は、電動機として用いられてもよく、発電機として用いられてもよい。
幾つかの実施形態に係る回転電機1は、ハウジング3と、ハウジング3の内部に固定された固定子10とを備えている。固定子10は、固定子鉄心11と固定子巻線13とを備えている。固定子鉄心11の内側には、回転子5が空隙を介して回転可能に保持されている。回転子5は、円柱状のシャフト7に固定されている。ハウジング3、固定子10及び回転子5は、ケース9の内部に配置されている。ケース9は、シャフト7を回転可能に支持している。
以下の説明では、シャフト7の軸線AXの延在方向を単に軸方向とも呼び、軸線AXを中心とする周方向を単に周方向とも呼び、軸線AXを中心とする径方向を単に径方向とも呼ぶ。
【0033】
図2は、幾つかの実施形態に係るハウジング3及び固定子10の斜視図である。なお、
図2に示した固定子10は、後述するセグメント導体20の端部25同士を溶接で接続する前の状態のものである。
図3は、固定子巻線13を構成するセグメント導体20の模式的な斜視図であり、固定子鉄心11に装着する前の状態を示している。
【0034】
幾つかの実施形態に係る固定子10では、回転電機1の小型化や効率向上の要請から巻線の占積率向上のため、固定子巻線13として矩形断面を有する角線(角型導線)2が用いられている。幾つかの実施の形態では、角型導線2を
図3に示すようなU字状の形状を有するセグメント導体20に成形する。すなわち、幾つかの実施形態では、セグメント導体20は、U字状に屈曲されたU字部21と、U字部21から直線状に延在する2つの直線部23とを有する。
なお、
図3では図示はしていないが、幾つかの実施形態に係るセグメント導体20に用いられる角型導線2の表面には、例えばエナメル等の絶縁被覆29(
図5参照)が施されていてもよい。
幾つかの実施形態に係る固定子10では、固定子鉄心11の複数のスロット15に挿通された複数のセグメント導体20の端部25同士を後述するように溶接で接続することで固定子巻線13が形成される。
【0035】
(固定子巻線13の形成手順の概略)
図4は、幾つかの実施形態に係る固定子巻線13の形成手順を説明するための模式的な図である。なお、
図4では、固定子10を径方向内側から見て、周方向に沿って展開した状態を示している。
説明の便宜上、
図4では、多数存在するセグメント導体20のうち、直線部23の端部25同士が後述するように溶接で接続される2つのセグメント導体20を参照して説明する。以下の説明において、該2つのセグメント導体20の区別をすることが必要な場合には、一方のセグメント導体20を第1セグメント導体20Aと呼び、他方のセグメント導体20を第2セグメント導体20Bと呼ぶ。また、第1セグメント導体20Aを構成する角型導線2を第1導線2Aとも呼び、第2セグメント導体20Bを構成する角型導線2を第2導線2Bとも呼ぶこととする。
【0036】
幾つかの実施形態では、固定子巻線13は次のように形成される。
例えば幾つかの実施形態では、
図3に示すようなセグメント導体20を固定子鉄心11のスロット15に軸方向から挿入する。このとき、複数のスロット15を跨いで離間した2つのスロット15に、セグメント導体20の直線部23が挿入される。例えば幾つかの実施形態では、固定子鉄心11の軸方向が鉛直方向と同じ方向となるように固定子鉄心11の姿勢を保った状態で、
図4の矢印aで示すように、セグメント導体20をスロット15に下方から上方に向かってから挿入する。
このようにして、スロット15の一方端から他方端に向かって直線部23を挿通して直線部23の先端側の端面27をスロット15の他方端からスロット15の外部に突出させる。
【0037】
次に、溶接で端部25同士を電気的に接続するために、第1セグメント導体20Aの一方の端部25と第2セグメント導体20Bの一方の端部25とを接近させて、第1セグメント導体20Aの一方の端部25の端面27と第2セグメント導体20Bの一方の端部25の端面27とを隣り合わせに配置する。具体的には、
図4の矢印bで示すように、スロット15の他方端からスロット15の外部に突出している直線部23のそれぞれを屈曲させることで、端部25を接続相手のセグメント導体20の端部25に近づける。そして、
図4の矢印cで示すように、互いに近づいた端部25において端面27が同じ方向、例えば上方を向くようにそれぞれの端部25を屈曲させる。これにより、第1セグメント導体20Aの一方の端部25の端面27と第2セグメント導体20Bの一方の端部25の端面27とが隣り合わせに配置される。
図5は、上述したように端面27同士が隣り合わせに配置された状態における端部25の近傍を示す模式的な図である。
図5に示すように、幾つかの実施形態では、第1セグメント導体20Aの一方の端部25と第2セグメント導体20Bの一方の端部25とが径方向に沿って並んでいるが、周方向に沿って並んでいてもよい。
なお、端部25における絶縁被覆29は、予め除去されていることが望ましい。
以下の説明では、第1セグメント導体20A(第1導線2A)の端面27を第1端面27Aとも呼び、第2セグメント導体20B(第2導線2B)の端面27を第2端面27Bとも呼ぶ。
【0038】
次に、隣り合って並んでいる端部25同士を溶接で接続する。幾つかの実施形態では、端部25同士を溶接することに先立って、
図4及び
図5の矢印dで示すように、隣り合わせに配置された2つの端面27に跨って覆い部材40を配置する。そして、端面27上に配置された覆い部材40にエネルギービーム(例えばレーザビーム)を照射することで、覆い部材40ごと端部25を溶融させて接続する。以下、幾つかの実施形態に係る角型導線の接続方法について詳述する。なお、
図6は、隣り合わせに配置された2つの端面27に跨って覆い部材40を配置した状態を示す模式的な図である。また、
図7は、隣り合わせに配置された2つの端面27に跨って配置した覆い部材40を上方から見た模式的な図である。
【0039】
(角型導線の接続方法について)
幾つかの実施形態では、上述したようにレーザビームによってセグメント導体20の端部25同士を溶接で接続するようにしている。しかし、例えば
図5に示すように、固定子10のスロット15から外部に端部25が突出している直線部23を屈曲させて端面27同士が隣り合わせに配置させても、第1導線2Aの一方の端部25と第2導線2Bの一方の端部25との間に隙間17が生じることがある。
【0040】
この隙間17が生じる原因は様々であるが、幾つか例を挙げるとすると次のような原因を挙げることができる。例えば、上述のようにして直線部23を屈曲させて、一旦は第1導線2Aの一方の端部25の側面25aと第2導線2Bの一方の端部25の側面25aとを接触させても、角型導線2のスプリングバックによって端部25の側面25a同士が離れてしまうことが考えられる。特に、
図5に示すように、角型導線2の表面に絶縁被覆29が施されている場合には、絶縁被覆29の厚さの分だけ端部25同士の距離がより離間しているため、隙間17が生じ易くなるとも考えられる。
また、スロット15と直線部23との間の隙間に起因して固定子鉄心11に対してセグメント導体20が動いてしまうと、隙間17が生じることとなる。
【0041】
レーザビームのようなエネルギービームによってセグメント導体20の端部25同士を溶接で接続する場合、レーザビームによって生成された溶融層、及び溶融層が凝固することで形成される接続部は、2つの端部25の何れかの方へ偏る等の歪んだ形状とならないことが望まれる。そのため、レーザービームは、一方の端面27の縁部27aと他方の端面27の縁部27aとが互いに隣り合っている領域に照射することが望ましい。
しかし、上述したような隙間17が存在している場合、照射されたレーザビームが隙間17から抜けてしまい、端面27を十分に加熱できないおそれがある。
【0042】
そこで、幾つかの実施形態に係る角型導線の接続方法では、端部25同士を溶接することに先立って、
図4及び
図5の矢印dで示すように、隣り合わせに配置された2つの端面27に跨って覆い部材40を配置することとしている。
これにより、隣り合わせに配置された2つの端面27を覆い部材40が覆うので、隣り合う端部25同士の間に隙間17が存在していても、照射されたレーザビームが隙間17から抜けてしまうことを覆い部材40が抑制する。これにより、隣り合う端部25同士の間に隙間17が存在していても、端面27を十分に加熱できるようになるので、隣り合う端部25同士の溶接による接続の信頼性を向上できる。
【0043】
図8は、幾つかの実施形態に係る覆い部材40の一例についての模式的な斜視図である。
図8では、セグメント導体20の端面27と対向する面が現れるような姿勢で覆い部材40を描いている。幾つかの実施形態に係る覆い部材40は、隣り合わせに配置された第1端面27A及び第2端面27Bに対向するように形成された端部対向部41と、第1導線2A及び第2導線2Bの側面25aの少なくとも一部と対向するように形成された側部対向部43とを有する。すなわち、例えば幾つかの実施形態に係る覆い部材40は、端部対向部41を天板とするキャップ形状の部材である。なお、
図8に示した覆い部材40では、側部対向部43は端部対向部41の縁部に沿って全周にわたって形成されているが、端部対向部41の縁部に沿って部分的に形成されていない領域があってもよい。
【0044】
幾つかの実施形態では、覆い部材40を、端部対向部41で第1端面27A及び第2端面27Bの少なくとも一部を覆うように配置する。
これにより、側部対向部43と第1導線2A及び第2導線2Bの側面25aの少なくとも一部とが当接することで、第1導線2A又は第2導線2Bと覆い部材40との位置ずれを防止できる。なお、端部対向部41を挟んで離れた2カ所に側部対向部43を設ければ、2箇所の側部対向部43によって第1導線2A又は第2導線2Bの少なくとも一方の移動を規制できる。また、
図8に示すように端部対向部41の縁部の全周にわたって側部対向部43を設ければ、第1端面27Aや第2端面27Bと平行な方向に第1導線2Aと第2導線2Bとが互いに位置ずれしてしまうことを抑制できる。
【0045】
図9は、セグメント導体20の端面27に覆い部材40を配置した後、レーザビームの照射を開始した直後の状態を示す模式的な図であり、覆い部材40の上方から見た図である。同様に、
図10は、レーザビームの照射を開始した直後の状態を示す模式的な図であり、覆い部材40及びセグメント導体20を周方向から見た図である。
幾つかの実施形態では、例えば、端面27上に配置された覆い部材40に対してレーザビーム51を第1端面27Aの縁部27aと第2端面27Bの縁部27aとが互いに隣り合っている領域に照射する。換言すると、幾つかの実施形態では、隣り合って配置されている第1端面27Aと第2端面27Bを上方から見たときに第1端面27Aと第2端面27Bとを含む投影面の図心Gに向けてレーザビーム51を照射する。
そして、幾つかの実施形態では、
図11に示すように、覆い部材40の全体を溶融して覆い部材40と第1導線2Aの端部25と第2導線2Bの端部25とが溶融した溶融層55を生成させる。
図11は、溶融層55の形成状態を模式的に示す図である。なお、溶融層55が凝固することで接続部57が形成される。接続部57は、第1導線2Aの端部25と第2導線2Bの端部25とを電気的に接続する部位である。
【0046】
幾つかの実施形態によれば、覆い部材40の全体を溶融して覆い部材40と第1導線2Aの端部25と第2導線2Bの端部25とが溶融した溶融層55を生成するので、第1導線2Aと第2導線2Bとが溶接によって接続された接続部57の大きさを確保できる。これにより、該接続部57において十分な電流を流すことが可能となる。したがって、第1導線2Aと第2導線2Bとの接続の信頼性を向上できる。ここで、「十分な電流」とは、例えば第1導線2Aや第2導線2Bに流すことができる許容電流と同等の電流であるとよい。
また、幾つかの実施形態によれば、第1端面27A及び第2端面27Bに跨って第1端面27A及び第2端面27Bの少なくとも一部を覆い部材40で覆うので、例えば第1導線2Aの端部25と第2導線2Bの端部25との間に隙間17が存在していても、照射されたレーザビームが該隙間17を通過してしまって溶融層55の生成が不十分になってしまうことを抑制できる。
また、幾つかの実施形態によれば、上記隙間17の存在が許容されるので、第1端面27Aと第2端面27Bとの位置合わせに高い精度が要求されなくなり、固定子10の製造に要する時間や製造コストを抑制できる。
幾つかの実施形態によれば、第1端面27A及び第2端面27Bの上に覆い部材40を配置しているので、レーザビームの照射開始直後の時点で覆い部材40から第1導線2A及び第2導線2Bの端部25に熱が伝わるよりも覆い部材40自体の溶融にエネルギーが使われるので、覆い部材40が優先的に溶融する。その後、溶融した覆い部材40から第1導線2A及び第2導線2Bの端部25に熱エネルギーが伝わり、第1導線2A及び第2導線2Bの端部25を効率的に溶融させることができる。
【0047】
図12は、レーザビームの照射についての他の実施形態の一例を示す図である。幾つかの実施形態では、覆い部材40に対してレーザビーム51を照射するにあたって、上方、すなわちレーザビームの出射端側から覆い部材40を見たときに、端部対向部41の存在する領域内においてレーザビーム51を走査しながら照射してもよい。この場合、例えば、
図12に示すように上方から見たときの第1端面27Aの図心位置、又は第2端面27Bの図心位置からレーザビーム51の走査を開始して、端部対向部41の存在する領域内で円を描くようにレーザビーム51の走査するようにしてもよい。
【0048】
図13は、隣り合わせに配置された端面27に覆い部材40を配置する様子を示す模式的な図である。なお、
図13では、第1端面27Aと第2端面27Bとの位置が第1導線2A及び第2導線2Bの延在方向にずれている場合について示している。
図13に示す例では、第2端面27Bは、第1端面27Aに対して第2導線2Bの延在方向に突出した位置に配置されている。
図14は、
図13に示すように第1端面27Aと第2端面27Bとの位置が第1導線2A及び第2導線2Bの延在方向にずれている場合において端面27に覆い部材40を配置した後の状態を示す模式的な図である。
図14に示すように、第1端面27Aと第2端面27Bとの位置が第1導線2A及び第2導線2Bの延在方向にずれている場合、端面27に覆い部材40を配置すると、覆い部材40は端面27に対して傾いた状態となるが、端部25の側面25aとが当接することで、覆い部材40がずれ落ちてしまうことが抑制される。したがって、
図14に示すように、第1端面27Aと第2端面27Bとの位置が第1導線2A又は第2導線2Bの延在方向にずれていても、第1端面27Aと第2端面27Bとに跨って配置された覆い部材40にレーザビームを照射することで、溶融層55を生成できる。
【0049】
(回転電機の固定子の製造方法について)
上述した角型導線の接続方法を用いた回転電機の固定子の製造方法について説明する。
図15は、幾つかの実施形態に係る回転電機の固定子の製造方法における処理手順を示すフローチャートである。幾つかの実施形態に係る回転電機の固定子の製造方法は、挿入工程S1と、曲げ工程S3と、配置工程S5と、溶接工程S7とを含んでいる。
挿入工程S1は、回転電機1の固定子鉄心11における複数のスロット15のうちの一のスロット15の一方端から他方端に向かって矩形断面を有する第1導線2Aを挿通して第1導線2Aの第1端面27Aを該他方端から該一のスロット15の外部に突出させる工程を含んでいる。また、挿入工程S1は、該一のスロット15とは異なる他のスロット15の一方端から他方端に向かって矩形断面を有する第2導線2Bを挿通して第2導線2Bの第2端面27Bを該他方端から該他のスロット15の外部に突出させる工程を含んでいる。
挿入工程S1では、上述したように、
図3に示すようなセグメント導体20を固定子鉄心11のスロット15に軸方向から挿入する。
【0050】
曲げ工程S3は、スロット15の外部に突出させた第1端面27Aと第2端面27Bとを隣り合わせに配置する工程である。曲げ工程S3では、上述したように、第1セグメント導体20Aの一方の端部25と第2セグメント導体20Bの一方の端部25とを接近させて、第1セグメント導体20Aの一方の端部25の端面27と第2セグメント導体20Bの一方の端部25の端面27とを隣り合わせに配置する。
【0051】
配置工程S5は、隣り合わせに配置された第1端面27A及び第2端面27Bに跨って第1端面27A及び第2端面27Bの少なくとも一部を覆うように覆い部材40を配置する工程である。配置工程S5では、上述したように、隣り合わせに配置された2つの端面27に跨って覆い部材40を配置する。
【0052】
溶接工程S7は、第1端面27Aと第2端面27Bとに跨って配置された覆い部材40にレーザビーム等のエネルギービームを照射して、覆い部材40の全体を溶融して覆い部材40と第1導線2Aの端部25と第2導線2Bの端部25とが溶融した溶融層55を生成することで接続部57を形成する工程である。溶接工程S7では、上述したように、端面27上に配置された覆い部材40にレーザビームを照射することで、覆い部材40ごと端部25を溶融させて接続する。
上述した回転電機の固定子の製造方法は、回転電機1の固定子10を効率的に製造できる。
【0053】
上述した角型導線の接続方法について、以下のようにまとめることができる。
幾つかの実施形態に係る角型導線の接続方法は、第1端面27Aと第2端面27Bとが隣り合わせになった状態で、第1端面27A及び第2端面27Bに跨って第1端面27A及び第2端面27Bの少なくとも一部を覆うように覆い部材40を配置する配置工程S5を含んでいる。また、幾つかの実施形態に係る角型導線の接続方法は、第1端面27Aと第2端面27Bとに跨って配置された覆い部材40にレーザビーム等のエネルギービームを照射して、覆い部材40の全体を溶融して覆い部材40と第1導線2Aの端部25と第2導線2Bの端部25とが溶融した溶融層55を生成する溶接工程S7を含んでいる。
幾つかの実施形態に係る角型導線の接続方法では、上述した溶融層55を生成するので、接続部57の大きさを確保できる。これにより、該接続部57において十分な電流を流すことが可能となる。したがって、第1導線2Aと第2導線2Bとの接続の信頼性を向上できる。
また、幾つかの実施形態に係る角型導線の接続方法では、第1端面27A及び第2端面27Bに跨って第1端面27A及び第2端面27Bの少なくとも一部を覆い部材40で覆うので、例えば上述した隙間17が存在していても、照射されたレーザビームが該隙間17を通過してしまって上記溶融層55の生成が不十分になってしまうことを抑制できる。
また、幾つかの実施形態に係る角型導線の接続方法によれば、上述したように照射されたレーザビームが該隙間17を通過してしまうことを抑制できるので、レーザビームの出力を不必要に上げる必要がなく、レーザビームを出力するための照射装置に要求される性能が過剰になることを抑制できる。
【0054】
幾つかの実施形態に係る角型導線の接続方法では、配置工程S5において、
図13及び
図14に示すように、第1端面27Aと、第1端面27Aに対して第2導線2Bの延在方向に突出した位置に配置された第2端面27Bとに跨って覆い部材40を配置することもできる。
したがって、
図14に示すように、第1端面27Aと第2端面27Bとの位置が第1導線2A又は第2導線2Bの延在方向にずれていても、第1端面27Aと第2端面27Bとに跨って配置された覆い部材40にレーザビームを照射することで、溶融層55を生成できる。
【0055】
幾つかの実施形態に係る角型導線の接続方法では、溶接工程S7において、
図12に示すように、レーザビーム51を走査しながら照射して、覆い部材40の全体を溶融して覆い部材40と第1導線2Aの端部25と第2導線2Bの端部25とが溶融した溶融層55を生成するようにしてもよい。
これにより、上述した溶融層を効率的に生成できる。
【0056】
幾つかの実施形態に係る角型導線の接続方法では、溶接工程S7において、覆い部材40のうち第1端面27Aの縁部27aと第2端面27Bの縁部27aとが互いに隣り合っている領域を覆う部分にレーザビーム51を照射して、覆い部材40の全体を溶融して覆い部材40と第1導線2Aの端部25と第2導線2Bの端部25とが溶融した溶融層55を生成するようにしてもよい。
これにより、上述した溶融層55の形状が第1導線2A側と第2導線2B側とで異なることを抑制できる。すなわち、溶融層55の形状が第1導線2A及び第2導線2Bの2つの端部25の何れかの方へ偏る等の歪んだ形状となることを抑制できる。
【0057】
幾つかの実施形態に係る角型導線の接続方法では、配置工程S5において、それぞれ上方を向いた第1端面27A及び第2端面27Bに跨って第1端面27A及び第2端面27Bの少なくとも一部を覆うように覆い部材40を配置するようにするとよい。
これにより、配置した覆い部材40を第1導線2Aや第2導線2Bに仮止めする必要性が少なくなり、仮止めに要する手間やコストを抑制できる。
なお、例えば、第1端面27A及び第2端面27Bが下方を向いている場合には、配置工程S5において、第1端面27A及び第2端面27Bに跨って配置した覆い部材40を第1導線2Aや第2導線2Bに仮止めするとよい。
【0058】
幾つかの実施形態に係る角型導線の接続方法では、配置工程S5において、端部対向部41の板厚が0.1mm以上0.5mm以下である覆い部材40を第1端面27Aと第2端面27Bとに跨って配置するとよい。
【0059】
発明者らが鋭意検討した結果、端部対向部41の板厚が0.1mm以上であれば、仮に第1導線2Aの端部25と第2導線2Bの端部25との間に隙間17が存在していても、照射されたレーザビームが覆い部材40を貫通して該隙間17を通過してしまうことを抑制できることが分かった。また、発明者らが鋭意検討した結果、端部対向部41の板厚が0.5mm以下であれば、上述した溶融層55の生成に要する時間が覆い部材40の有無によってほとんど変わることがないことが分かった。
したがって、幾つかの実施形態に係る角型導線の接続方法によれば、上述した溶融層55を効率的に生成できる。
【0060】
幾つかの実施形態に係る角型導線の接続方法では、配置工程S5において、第1導線2A及び第2導線2Bと材質が同じである覆い部材40を第1端面27Aと第2端面27Bとに跨って配置するとよい。
これにより、溶融層55の組成が第1導線2A及び第2導線2Bと同じになるので、電気的な特性に及ぼす影響を抑制できる。
【0061】
なお、幾つかの実施形態に係る角型導線の接続方法では、配置工程S5において、第1導線2A及び第2導線2Bとは材質が異なる覆い部材40を第1端面27Aと第2端面27Bとに跨って配置してもよい。
これにより、例えばレーザビームの吸収率が第1導線2A及び第2導線2Bよりも高くなる材質で覆い部材40を構成すれば、溶融層55を効率的に生成できる。
【0062】
幾つかの実施形態に係る角型導線の接続方法では、配置工程S5において、矩形断面の1辺の長さが1mm以上5mm以下の第1導線2Aにおける第1端面27Aと、矩形断面の1辺の長さが1mm以上5mm以下の第2導線2Bにおける第2端面27Bとに跨って覆い部材40を配置するようにしてもよい。
【0063】
幾つかの実施形態に係る角型導線の接続方法では、挿入工程S1において、回転電機1の固定子鉄心11における複数のスロット15のうちの一のスロット15の一方端から他方端に向かって矩形断面を有する第1導線2Aを挿通して第1導線2Aの第1端面27Aを該他方端から該一のスロット15の外部に突出させる工程を含んでいるとよい。また、幾つかの実施形態に係る角型導線の接続方法では、挿入工程S1において、該一のスロット15とは異なる他のスロット15の一方端から他方端に向かって矩形断面を有する第2導線2Bを挿通して第2導線2Bの第2端面27Bを該他方端から該他のスロット15の外部に突出させる工程を含んでいるとよい。
このような角型導線の接続方法は、回転電機の固定子の巻線を効率的に接続できる。
【0064】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した幾つかの実施形態に係る角型導線の接続方法は、回転電機1の角型導線2以外の導線の接続に適用してもよい。
また、上述した幾つかの実施形態では、例えば
図7に示すように、覆い部材40は、第1端面27A及び第2端面27Bに跨って第1端面27A及び第2端面27Bの全体を覆っている。しかし、幾つかの実施形態において、覆い部材40は、必ずしも第1端面27A及び第2端面27Bの全体を覆っていなくてもよく、レーザビーム51が上述した隙間17から抜けないようにできるのであれば、第1端面27A及び第2端面27Bの少なくとも一部を覆っていればよい。
【符号の説明】
【0065】
1 回転電機
2 角線(角型導線)
2A 第1導線
2B 第2導線
10 固定子
11 固定子鉄心
13 固定子巻線
15 スロット
20 セグメント導体
20A 第1セグメント導体
20B 第2セグメント導体
25 端部
27 端面
27A 第1端面
27B 第2端面
40 覆い部材
41 端部対向部
43 側部対向部
51 レーザビーム
55 溶融層
57 接続部