(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】電力変換装置、及び電力変換制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
H02M3/28 B
H02M3/28 C
(21)【出願番号】P 2019059224
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】及川 淳
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 健志
(72)【発明者】
【氏名】藤井 庸平
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-192527(JP,A)
【文献】特開2011-250584(JP,A)
【文献】特開2016-158457(JP,A)
【文献】特開平11-205112(JP,A)
【文献】特開2011-239631(JP,A)
【文献】特開2011-101452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00~ 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスに供給される電力を制御する一次側回路と、
前記トランスを介して供給される電圧を変換して所定の定格電圧を出力するフルブリッジ回路と、
前記フルブリッジ回路の
2つのブリッジ中点
のそれぞれに接続されることにより前記フルブリッジ回路の
2つの高圧側スイッチに対する駆動電圧を
それぞれ生成する
2つのレベルシフト回路を含み、入力される外部信号に基づいて前記一次側回路及び前記フルブリッジ回路を駆動する電力変換制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記外部信号がONからOFFへ切り替わる場合に、前記フルブリッジ回路の
2つの低圧側スイッチをONにした状態で前記電力変換制御を停止する、電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記外部信号がONからOFFへ切り替わる場合に、
2つの前記高圧側スイッチをOFFにした状態で前記電力変換制御を停止する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記一次側回路への電力供給が停止された場合に、
2つの前記低圧側スイッチをOFFに制御する、請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記一次側回路への電力供給が再開された場合に、前記外部信号がOFFであることを条件として
2つの前記低圧側スイッチをONに制御する、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
トランスに供給される電力を制御する一次側回路と、前記トランスを介して供給される電圧を変換して所定の定格電圧を出力するフルブリッジ回路と、前記フルブリッジ回路の
2つのブリッジ中点
のそれぞれに接続されることにより前記フルブリッジ回路の
2つの高圧側スイッチに対する駆動電圧を
それぞれ生成する
2つのレベルシフト回路を含む制御部と、を備える電力変換装置の電力変換制御方法であって、
入力される外部信号に基づいて前記一次側回路及び前記フルブリッジ回路を駆動する電力変換制御を行い、
前記外部信号がONからOFFへ切り替わる場合に、前記フルブリッジ回路の
2つの低圧側スイッチをONにした状態で前記電力変換制御を停止する、電力変換制御方法。
【請求項6】
前記外部信号がONからOFFへ切り替わる場合に、
2つの前記高圧側スイッチをOFFにした状態で前記電力変換制御を停止する、請求項5に記載の電力変換制御方法。
【請求項7】
前記一次側回路への電力供給が停止された場合に、
2つの前記低圧側スイッチがOFFに制御される、請求項5又は6に記載の電力変換制御方法。
【請求項8】
前記一次側回路への電力供給が再開された場合に、前記外部信号がOFFであることを条件として
2つの前記低圧側スイッチがONに制御される、請求項7に記載の電力変換制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置、及び電力変換制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DC-DCコンバータなどのスイッチング電源に利用される同期整流回路は、一般的に2つの電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)を交互にON/OFF制御するよう構成されることが多く、2つのFETの各ゲートに入力されるPWM信号によって所望の電圧を有する電力を安定的に出力することができる。
【0003】
これに対し、例えば20~100V程度の比較的高い電圧を高効率で出力する場合には、フルブリッジ回路による同期整流制御を行うことができ、このような構成のDC-DCコンバータが特許文献1に開示されている。より詳しくは、特許文献1に開示された従来技術は、絶縁型のDC-DCコンバータにおける二次側回路として4つのスイッチング素子を含むフルブリッジ回路が構成され、当該フルブリッジ回路に対するPWM信号のDuty比により出力電圧を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、直列接続された2つのNチャンネルMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を含む同期整流回路においては、高圧側のFETを駆動するためのゲート電圧は、低圧側のFETのソース電圧よりも高い必要がある。このような場合には、高圧側のFETを駆動するための駆動電圧を生成するレベルシフト回路(ブートストラップ回路)が設けられるのが一般的である。
【0006】
しかしながら、レベルシフト回路は、同期整流回路の停止時において漏れ電流が発生することがある。このため、上記の従来技術におけるフルブリッジ回路に対してレベルシフト回路を導入した場合には、レベルシフト回路からの漏れ電流が高圧側のFETのボディダイオードを介して出力側に流れる可能性がある。この場合、同期整流回路は、同期整流制御が停止しているにも拘らず、当該漏れ電流が出力側の抵抗器に流入することによって出力電圧の上昇を招き、出力側に接続される負荷装置に対して意図しない電圧を印加してしまう虞が生じる。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、レベルシフト回路の漏れ電流に伴う出力電圧の上昇を抑制することができる電力変換装置、及び電力変換制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、トランスに供給される電力を制御する一次側回路と、前記トランスを介して供給される電圧を変換して所定の定格電圧を出力するフルブリッジ回路と、前記フルブリッジ回路のブリッジ中点に接続されることにより前記フルブリッジ回路の高圧側スイッチに対する駆動電圧を生成するレベルシフト回路を含み、入力される外部信号に基づいて前記一次側回路及び前記フルブリッジ回路を駆動する電力変換制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記外部信号がONからOFFへ切り替わる場合に、前記フルブリッジ回路の低圧側スイッチをONにした状態で前記電力変換制御を停止する、電力変換装置である。
【0009】
電力変換装置は、トランスを介して互いに接続される一次側回路及び二次側回路を備え、制御部が両者をそれぞれ駆動することにより電力変換制御を行う。ここで、二次側回路は、比較的高い出力電圧に対応可能なフルブリッジ回路として構成されており、フルブリッジ回路のブリッジ中点において、高圧側スイッチの駆動電圧を生成するための制御部のレベルシフト回路が接続されている。そして、電力変換装置は、一次側回路に入力電圧が入力された状態において、制御部に入力される外部信号に基づいて、電力変換制御のON/OFFを切り替えることができる。
【0010】
ここで、電力変換装置は、入力される外部信号がONからOFFに切り替わった場合には、一次側回路に対する駆動制御を停止して二次側回路への電力供給を停止しつつ、フルブリッジ回路の低圧側スイッチをONに制御した状態で二次側回路に対するスイッチング制御を停止する。これにより、電力変換装置は、電力変換制御の停止により出力側に接続された負荷装置への電力供給を停止する。
【0011】
このとき、制御部におけるレベルシフト回路からフルブリッジ回路のブリッジ中点へ漏れ電流が発生する可能性があるが、当該ブリッジ中点は、ON制御されている低圧側スイッチを介して二次側グランドへの接地経路が形成されている。このため、当該漏れ電流がフルブリッジ回路の高圧側スイッチに付随するボディダイオードを介して出力側に流出するのを防止し、出力側の抵抗器において電圧が意図せず上昇することを回避することができる。従って、本発明の第1の態様に係る電力変換装置によれば、レベルシフト回路の漏れ電流に伴う出力電圧の上昇を抑制することができる。
【0012】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、上記した本発明の第1の態様において、前記制御部は、前記外部信号がONからOFFへ切り替わる場合に、前記高圧側スイッチをOFFにした状態で前記電力変換制御を停止する、電力変換装置である。
【0013】
本発明の第2の態様に係る電力変換装置は、電力変換制御の停止時において、二次側のフルブリッジ回路におけるスイッチのうち、低圧側スイッチのON制御によりレベルシフト回路の漏れ電流に対する接地経路を形成すると共に、高圧側スイッチのOFF制御により出力側からの電流の流入を遮断することができる。このため、本発明の第2の態様に係る電力変換装置によれば、例えば電力変換装置の出力側から何らかの予期せぬ電荷が印加された場合であっても、二次側回路における各スイッチの逆流電流による破損を防止することができる。
【0014】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、上記した本発明の第1又は2の態様において、前記制御部は、前記一次側回路への電力供給が停止された場合に、前記低圧側スイッチをOFFに制御する、電力変換装置である。
【0015】
本発明の第3の態様に係る電力変換装置によれば、電力変換制御の停止中であっても、二次側回路のブリッジ中点に制御部から漏れ電流が流入しなくなるため、二次側回路の全てのスイッチをOFFに制御して安全性を向上させることができる。
【0016】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、上記した本発明の第3の態様において、前記制御部は、前記一次側回路への電力供給が再開された場合に、前記外部信号がOFFであることを条件として前記低圧側スイッチをONに制御する、電力変換装置である。
【0017】
本発明の第4の態様においては、制御部は、電力変換制御の停止中において二次側回路の全てのスイッチをOFFにしている状態であっても、一次側回路への電力供給が再開された場合には二次側回路の低圧側スイッチをONに制御する。これにより、本発明の第4の態様によれば、一次側回路への電力供給の再開により再び漏れ電流が発生する可能性がある場合であっても、当該漏れ電流に伴う意図しない出力電圧の上昇を抑制することができる。
【0018】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、トランスに供給される電力を制御する一次側回路と、前記トランスを介して供給される電圧を変換して所定の定格電圧を出力するフルブリッジ回路と、前記フルブリッジ回路のブリッジ中点に接続されることにより前記フルブリッジ回路の高圧側スイッチに対する駆動電圧を生成するレベルシフト回路を含む制御部と、を備える電力変換装置の電力変換制御方法であって、入力される外部信号に基づいて前記一次側回路及び前記フルブリッジ回路を駆動する電力変換制御を行い、前記外部信号がONからOFFへ切り替わる場合に、前記フルブリッジ回路の低圧側スイッチをONにした状態で前記電力変換制御を停止する、電力変換制御方法である。
【0019】
電力変換装置は、トランスを介して互いに接続される一次側回路及び二次側回路を備え、制御部が両者をそれぞれ駆動することにより電力変換制御を行う。ここで、二次側回路は、比較的高い出力電圧に対応可能なフルブリッジ回路として構成されており、フルブリッジ回路のブリッジ中点において、高圧側スイッチの駆動電圧を生成するための制御部のレベルシフト回路が接続されている。
【0020】
ここで、電力変換装置は、一次側回路に入力電圧が入力された状態において、制御部に入力される外部信号に基づいて、電力変換制御のON/OFFが切り替えられる。また、電力変換装置は、入力される外部信号がONからOFFに切り替わった場合には、一次側回路に対する駆動制御を停止して二次側回路への電力供給を停止しつつ、フルブリッジ回路の低圧側スイッチをONに制御した状態で二次側回路に対するスイッチング制御を停止するよう制御される。これにより、電力変換装置による電力変換制御が停止され、出力側に接続された負荷装置への電力供給が停止される。
【0021】
このとき、制御部におけるレベルシフト回路からフルブリッジ回路のブリッジ中点へ漏れ電流が発生する可能性があるが、当該ブリッジ中点は、ON制御されている低圧側スイッチを介して二次側グランドへの接地経路が形成される。このため、当該漏れ電流がフルブリッジ回路の高圧側スイッチに付随するボディダイオードを介して出力側に流出するのが防止され、出力側の抵抗器において電圧が意図せず上昇することを回避することができる。従って、本発明の第5の態様に係る電力変換制御方法によれば、レベルシフト回路の漏れ電流に伴う出力電圧の上昇を抑制することができる。
【0022】
<本発明の第6の態様>
本発明の第6の態様は、上記した本発明の第5の態様において、前記外部信号がONからOFFへ切り替わる場合に、前記高圧側スイッチをOFFにした状態で前記電力変換制御を停止する、電力変換制御方法である。
【0023】
本発明の第6の態様に係る電力変換制御方法は、電力変換制御の停止時において、二次側のフルブリッジ回路におけるスイッチのうち、低圧側スイッチのON制御によりレベルシフト回路の漏れ電流に対する接地経路を形成すると共に、高圧側スイッチのOFF制御により出力側からの電流の流入を遮断する。このため、第6の態様に係る電力変換制御方法によれば、例えば電力変換装置の出力側から何らかの予期せぬ電荷が印加された場合であっても、二次側回路における各スイッチの逆流電流による破損を防止することができる。
【0024】
<本発明の第7の態様>
本発明の第7の態様は、上記した本発明の第5又は6の態様において、前記一次側回路への電力供給が停止された場合に、前記低圧側スイッチがOFFに制御される、電力変換制御方法である。
【0025】
本発明の第7の態様に係る電力変換制御方法によれば、電力変換制御の停止中であっても、二次側回路のブリッジ中点に制御部から漏れ電流が流入しなくなるため、二次側回路の全てのスイッチをOFFに制御して安全性を向上させることができる。
【0026】
<本発明の第8の態様>
本発明の第8の態様は、上記した本発明の第7の態様において、前記一次側回路への電力供給が再開された場合に、前記外部信号がOFFであることを条件として前記低圧側スイッチがONに制御される、電力変換制御方法である。
【0027】
本発明の第8の態様に係る電力変換制御方法によれば、電力変換制御の停止中において二次側回路の全てのスイッチをOFFにしている状態であっても、一次側回路への電力供給が再開された場合には二次側回路の低圧側スイッチをONに制御する。これにより、本発明の第8の態様によれば、一次側回路への電力供給の再開により再び漏れ電流が発生する可能性がある場合であっても、当該漏れ電流に伴う意図しない出力電圧の上昇を抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、レベルシフト回路の漏れ電流に伴う出力電圧の上昇を抑制することができる電力変換装置、及び電力変換制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明に係る電力変換装置の全体構成を示す回路図である。
【
図2】電力変換装置の二次側回路を制御するための構成を表す配線図である。
【
図3】本発明に係る電力変換装置の電力変換制御方法を示すフローチャートである。
【
図4】電力変換制御による電圧波形の時間変化を示す波形図である。
【
図5】電力変換動作を停止するタイミングの前後における二次側回路の駆動信号の一例である。
【
図6】電力変換動作を停止するタイミングの前後における二次側回路の駆動信号の他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施の形態の説明に用いる図面は、いずれも構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。
【0031】
図1は、本発明に係る電力変換装置1の全体構成を示す回路図である。本実施形態における電力変換装置1は、いわゆる絶縁型DC‐DCコンバータであり、一次側回路10、トランスT、二次側回路20、及び制御部30を備える。そして本発明に係る電力変換装置1は、一次側回路10に入力される入力電圧Vinを変換して二次側回路20から出力電圧Voutとして出力することにより、安定化された所定の定格電圧Vrを出力先の負荷装置(図示せず)に供給する。
【0032】
一次側回路10は、公知のフルブリッジインバータ回路であり、コンデンサC1、複数の電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)Q11~Q14、及びコイルL1を含む。尚、本発明においては、一次側回路10は、フルブリッジ方式に限定されるものではなく、例えばハーフブリッジ、フライバック、フォーワード等、他の方式のインバータ回路であってもよい。
【0033】
コンデンサC1は、図示しない外部電源から入力される直流の入力電圧Vinを平滑化する入力フィルタである。
【0034】
電界効果トランジスタQ11は、ドレインがコンデンサC1のハイサイド出力端、及び電界効果トランジスタQ12のドレインに接続されると共に、ソースが電界効果トランジスタQ13のドレインに接続されている。また、電界効果トランジスタQ14は、ドレインが電界効果トランジスタQ13のソースに接続されると共に、ソースが電界効果トランジスタQ13のソース、及び上記のコンデンサC1のローサイド出力端、すなわち一次側グランドGND1に接続されている。
【0035】
コイルL1は、一端が電界効果トランジスタQ11と電界効果トランジスタQ13との接続点に、他端がトランスTの一次巻線にそれぞれ接続される。コイルL1は、電界効果トランジスタQ11~Q14とのLC共振により電流と電圧とのクロス時間を減らし、スイッチング損失を低減することができる。
【0036】
トランスTは、一次側コイルL11及び二次側コイルL21を含み、一次側回路10と二次側回路20とを直流的に絶縁しつつ、一次側回路10から供給される交流電力を二次側回路20に伝達する。ここで、一次側コイルL11は、巻き始め端が電界効果トランジスタQ12と電界効果トランジスタQ14との連結点に接続され、巻き終わり端がコイルL1を介して電界効果トランジスタQ11と電界効果トランジスタQ13との連結点に接続されている。
【0037】
二次側回路20は、第1スイッチQ21~第4スイッチQ24、コイルL2、コンデンサC2、及び分圧抵抗R21、R22を含む。第1スイッチQ21~第4スイッチQ24のそれぞれは、例えばNチャンネルMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。第1スイッチQ21は、ドレインがコイルL2の一端、及び第2スイッチQ22のドレインに接続され、ソースが第3スイッチQ23のドレイン、及び二次側コイルL21の巻き始め端に接続されている。第4スイッチQ24は、ドレインが第2スイッチQ22のソース、及びトランスTの二次側コイルL21の巻き終り端に接続され、ソースが第3スイッチQ23のソース、及び二次側グランドGND2に接続されている。すなわち、本実施形態においては、第1スイッチQ21及び第2スイッチQ22が「高圧側スイッチ」に相当し、第3スイッチQ23及び第4スイッチQ24が「低圧側スイッチ」に相当し、これらによって「フルブリッジ回路」が構成されている。
【0038】
コイルL2及びコンデンサC2は、第1スイッチQ21~第4スイッチQ24からなるフルブリッジ回路から出力される電圧を平滑化して出力電圧Voutとして出力する。
【0039】
分圧抵抗R21、R22は、二次側グランドGND2と出力電圧Vinの出力端子との間に直列に設けられ、設定される抵抗値の比率により出力電圧Voutを分圧することで後述する制御部30が当該出力電圧Voutを読み取ることができる。尚、分圧抵抗R21、R22の直列抵抗体に対して並列となるように、回路保護のための抵抗器が別途設けられてもよい。
【0040】
制御部30は、一次側ドライバ31、第1二次側ドライバ32、第2二次側ドライバ33、制御回路34、及びアイソレータ35を含み、一次側回路10及び二次側回路20を駆動することにより、出力電圧Voutが所定の定格電圧Vrとなるように電力変換制御を行う。
【0041】
一次側ドライバ31は、電界効果トランジスタQ11~Q14のそれぞれのゲートを制御する駆動回路であり、電界効果トランジスタQ11及び電界効果トランジスタQ14に対して電界効果トランジスタQ12及び電界効果トランジスタQ13が逆位相となるようにON/OFFをPWM制御(Pulse Width Modulation)することで、トランスTに供給する電力を制御する。
【0042】
第1二次側ドライバ32は、第1スイッチQ21及び第3スイッチQ23のそれぞれのゲートを制御する駆動回路であり、第1スイッチQ21に対して第3スイッチQ23が逆位相となるようにPWM制御で交互にON/OFFする同期整流制御を行う。また、第2二次側ドライバ33は、第2スイッチQ22及び第4スイッチQ24のそれぞれのゲートを制御する駆動回路であり、第2スイッチQ22に対して第4スイッチQ24が逆位相となるようにPWM制御で交互にON/OFFする同期整流制御を行う。尚、第1二次側ドライバ32及び第2二次側ドライバ33は、互いに一体であってもよく、更には共に制御回路34の内部に設けられていてもよい。
【0043】
制御回路34は、公知の制御ICからなり、電力変換装置1の全体を統括制御する。より具体的には、制御回路34は、互いに反転する2つのパルス信号からなるPWM信号を生成し、一次側ドライバ31を介して一次側回路10を制御すると共に、第1二次側ドライバ32及び第2二次側ドライバ33を介して二次側回路20を制御する。ここで、制御回路34が出力するPWM信号は、同時にONになる状態が生じないように僅かなデッドタイムが形成されている。そして、制御回路34は、第1二次側ドライバ32及び第2二次側ドライバ33を同期して制御することにより、第1スイッチQ21及び第4スイッチQ24に対して第2スイッチQ22及び第4スイッチQ24が逆位相となるようにPWM制御で交互にON/OFFすることで、所定の定格電圧Vrを有する直流の出力電圧Voutを生成する。
【0044】
また、制御回路34は、出力電圧Voutが定格電圧Vrとなるよう制御するために、分圧抵抗R21、R22を介して出力電圧Voutを取得する。
【0045】
ここで、制御回路34から一次側ドライバ31へはアイソレータ35を介して制御が行われることで、一次側と二次側との接続を直流的に絶縁している。尚、本実施形態においては、制御回路34が二次側に配置されているが、一次側と二次側とを上記のようにアイソレータを介して接続していれば制御回路34を一次側に配置してもよい。
【0046】
そして、制御回路34は、外部信号が入力されるリモート端子(図示せず)を備え、当該外部信号がONである期間において、一次側回路10及び二次側回路20を駆動する電力変換制御を行う。また、制御回路34は、外部信号がONからOFFへ切り替わった場合に、一次側回路10及び二次側回路20を介したPWM制御を終了して電力変換制御を停止する。すなわち、電力変換装置1は、一次側回路10に入力電圧Vinが入力された状態において、制御回路34に対する外部信号のON/OFF制御により出力電圧Voutの供給をON/OFF制御するリモート制御方式である。
【0047】
次に、第1二次側ドライバ32及び第2二次側ドライバ33について、より詳細に説明する。
図2は、電力変換装置1の二次側回路20を制御するための構成を表す配線図である。
【0048】
本実施形態における第1二次側ドライバ32は、DRV-H端子を介して第1スイッチQ21のゲート電圧を制御すると共に、DRV-L端子を介して第3スイッチQ23のゲート電圧を制御するゲートドライバICである。第1二次側ドライバ32は、一次側回路10に入力電圧Vinが入力されている場合に、電源電圧Vccからの電力供給を受けることで動作する。
【0049】
ここで、第1スイッチQ21を駆動するためのゲート電圧は、第3スイッチQ23のソース電圧よりも高い必要がある。そのため、第1二次側ドライバ32は、第1スイッチQ21と第3スイッチQ23との接続点であるブリッジ中点に接続されるブートストラップコンデンサC3によりチャージポンプ回路が構成されている。これにより、第1二次側ドライバ32は、レベルシフト回路(ブートストラップ回路)としての機能を備え、第1スイッチQ21のゲートを制御する充分な大きさの駆動電圧を生成することができる。
【0050】
また、本実施形態における第2二次側ドライバ33は、DRV-H端子を介して第2スイッチQ22のゲート電圧を制御すると共に、DRV-L端子を介して第4スイッチQ24のゲート電圧を制御するゲートドライバICである。第2二次側ドライバ33の構成及び機能については上記の第1二次側ドライバ32と共通であるため、ここでは具体的な説明を省略する。
【0051】
ここで、上記したように、制御回路34に入力される外部信号がONからOFFへ切り替わった場合には、第1二次側ドライバ32及び第2二次側ドライバ33のそれぞれのDRV-H端子及びDRV-L端子からのPWM制御が終了するため、電力変換装置1の電力変換制御が停止されて二次側回路20が出力する電圧が低下することになる。
【0052】
しかしながら、レベルシフト回路を有する一般的なゲートドライバICは、動作が停止される場合であっても、Bridge端子に接続されているフルブリッジ回路のブリッジ中点へ漏れ電流が流出する可能性がある。そして、当該漏れ電流は、フルブリッジ回路のブリッジ中点、及び高圧側スイッチを介して出力側に流れ、出力側の抵抗器によって出力電圧の上昇を招き、出力側に接続される負荷装置に対して意図しない電圧を印加してしまう可能性がある。
【0053】
より具体的には、例えば、第1スイッチQ21と第3スイッチQ23とが接続されるブリッジ中点に第1二次側ドライバ32から50μAの漏れ電流が流入した場合、当該漏れ電流は、「高圧側スイッチ」としての第1スイッチQ21に付随するボディダイオードを通って出力側に流れ込む。同様に、第2二次側ドライバ33からの50μAの漏れ電流は、第2スイッチQ22に付随するボディダイオードを通って出力側に流れ込む。
【0054】
ここで、分圧抵抗R21、R22の合成抵抗が28kΩであった場合、合計100μAの漏れ電流が発生することによる分圧抵抗R21、R22における電圧降下は2.8Vとなる。すなわち、電力変換装置1は、電圧変換制御を停止したにも拘らず、出力側に接続した負荷装置に対して2.8Vの意図しない出力電圧Voutを印加してしまう虞が生じる。このため、本発明に係る電力変換装置1は、次に説明する電力変換制御方法の手順に基づいて当該虞を低減する。
【0055】
続いて、電力変換装置1の電力変換制御方法について、電圧波形及び信号波形を参照しながらフローチャートで説明する。
図3は、本発明に係る電力変換装置1の電力変換制御方法を示すフローチャートである。また、
図4は、電力変換制御による電圧波形の時間変化を示す波形図である。電力変換装置1は、
図4のVinで表されるように、継続して入力される入力電圧Vinに対して、当該フローチャートに示すルーチンに従って電力変換制御のON/OFFを切り替える。
【0056】
まず、電力変換装置1は、電力変換制御がOFFの状態において、制御回路34に入力される外部信号がONであるか否かを判定する(
図3のステップS1)。そして、外部信号がOFFである期間においては(ステップS1でNo)、
図4のタイミングt1までの期間として示されるように外部信号がONになるまで待機する。
【0057】
制御回路34は、外部信号がONに切り替わった場合には(ステップS1でYes)、一次側回路10及び二次側回路20のそれぞれのフルブリッジ回路をPWM制御し(ステップS2)、
図4のタイミングT1からタイミングT2までの期間で示されるように、オンDutyを徐々に広げるスロースタート(ソフトスタート)で電力変換制御を開始して出力電圧Voutが定格電圧Vrとなるよう制御する。尚、電力変換制御の開始方法は、必ずしもスロースタートに限定されるものではない。
【0058】
また、制御回路34は、電力変換制御の実行中における外部信号の状態を監視し、外部信号がOFFになったか否かを判定する(ステップS3)。そして、外部信号がOFFに切り替わるまでの期間においては、一次側回路10及び二次側回路20に対するPWM制御を継続して(ステップS3でNo)、
図4のタイミングT2からタイミングT3までの期間で示されるように、電力変換制御による出力電圧Voutを維持する。
【0059】
そして、外部信号がONからOFFに切り替わる場合には、制御回路34は、
図4のタイミングT3からタイミングT4までの期間で示されるように、オンDutyを徐々に低下させる(ステップS4)。
【0060】
このとき、制御回路34は、出力電圧Voutが例えば0Vとして設定される所定の閾値電圧Vth未満に低下したか否かを判定し(ステップS5)、出力電圧Voutが閾値電圧Vth未満に低下するまではDutyの低減を継続する(ステップS5でNo)。すなわち、制御回路34は、本実施形態においては、スローストップ(ソフトストップ)で電力変換制御を終了することにより、出力電圧Voutが0Vまで低下するよう制御する。尚、電力変換制御の終了方法は、必ずしもスローストップに限定されるものではない。
【0061】
一方、制御回路34は、出力電圧Voutが閾値電圧Vth未満に低下した場合には(ステップS5でYes)、第1スイッチQ21及び第2スイッチQ22をOFFに制御し、第3スイッチQ23及び第4スイッチQ24をONに制御して(ステップS6)、電力変換制御のON/OFFを切り替えるための当該ルーチンを終了する。つまり、制御回路34は、二次側回路20における低圧側スイッチをONにした状態で、一次側回路10及び二次側回路20による電力変換制御を停止する。
【0062】
このとき、第1二次側ドライバ32及び第2二次側ドライバ33からそれぞれのブリッジ中点へ漏れ電流が発生する虞があったとしても、当該ブリッジ中点は、ONに制御されている第3スイッチQ23及び第4スイッチQ24のそれぞれを介して二次側グランドGND2に至る接地経路が形成されることになる。このため、電力変換装置1は、電圧変換制御を停止したときの漏れ電流に伴う意図しない出力電圧Voutの上昇を抑制することができる。
【0063】
また、電力変換制御の停止中においては、第3スイッチQ23及び第4スイッチQ24がONに制御されている一方、第1スイッチQ21及び第2スイッチQ22がOFFに制御されていることにより、例えば電力変換装置1の出力側から何らかの予期せぬ電荷が印加された場合であっても、二次側回路20の各スイッチの逆流電流による破損を防止することができる。
【0064】
図5は、電力変換動作を停止するタイミングの前後における二次側回路20の駆動信号の一例である。
図5においては、二次側のフルブリッジ回路における第1スイッチQ21~第4スイッチQ24それぞれについての駆動電圧を示している。
図5に見られるように、二次側回路20の第1スイッチQ21~第4スイッチQ24のゲート-ソース間電圧V
GSは、外部信号がOFFとなるタイミングt3までの期間においてはいずれもPWM制御されている。
【0065】
また、外部信号がONからOFFに切り替わるタイミングt3において、二次側回路20に対するPWM制御のオンDutyが徐々に低減されて出力電圧Voutを低下させる。尚、タイミングt4までの期間においては、一次側回路10の各電界効果トランジスタQ11~Q14についても、二次側回路20の第1スイッチQ21~第4スイッチQ24と同様のゲート-ソース間電圧VGSでそれぞれ制御される。
【0066】
そして、出力電圧Voutが0Vまで低下したタイミングt4において、一次側回路10に対するPWM制御を停止することにより二次側回路20に電力が供給されないようにした上で、「高圧側スイッチ」としての第1スイッチQ21及び第2スイッチQ22がOFFに制御され、「低圧側スイッチ」としての第3スイッチQ23及び第4スイッチQ24がONに制御される。このため、電力変換装置1は、低圧側スイッチによって漏れ電流に対する接地経路を構成しつつ、高圧側スイッチを介した出力側からの電圧印加に対する安全性を向上させることができる。
【0067】
ここで、本実施形態においては二次側回路20における第1スイッチQ21~第4スイッチQ24のそれぞれを独立して制御できる場合を例示しているが、第1スイッチQ21と第4スイッチQ24とが連動し、第2スイッチQ22と第3スイッチQ23とが連動する構成であってもよい。
図6は、電力変換動作を停止するタイミングの前後における二次側回路の駆動信号の他の例である。すなわち、
図6に示す二次側回路20の駆動信号は、タイミングt4において二次側回路20の全てのスイッチがON制御されている。この場合であっても、少なくとも「低圧側スイッチ」としての第3スイッチQ23及び第4スイッチQ24がONに制御されているため、漏れ電流に伴う意図しない出力電圧Voutの上昇を抑制することができる。
【0068】
また、制御回路34は、外部信号がOFFの状態において、一次側回路10への電力供給、すなわち入力電圧Vinが停止された場合には、「低圧側スイッチ」としての第3スイッチQ23及び第4スイッチQ24をOFFに制御してもよい。これにより、電力変換装置1は、二次側回路20のブリッジ中点に第1二次側ドライバ32及び第2二次側ドライバ33から漏れ電流が流入しなくなるため、二次側回路20の全てのスイッチをOFFに制御して安全性を向上させることができる。
【0069】
更に、制御回路34は、一次側回路10への電力供給、すなわち入力電圧Vinが再開された場合には、外部信号がOFFであることを条件として、「低圧側スイッチ」としての第3スイッチQ23及び第4スイッチQ24をONに制御してもよい。これにより、電力変換装置1は、例えば
図4のタイミングt1までの期間のように、入力電圧VinがONで且つ外部信号がOFFである状態において、第1二次側ドライバ32及び第2二次側ドライバ33から漏れ電流が発生する可能性がある場合であっても、当該漏れ電流に伴う意図しない出力電圧Voutの上昇を抑制することができる。
【0070】
以上のように、本発明に係る電力変換装置1は、電力変換制御の開始及び停止を制御する外部信号がONからOFFへ切り替わる場合に、二次側回路20としてのフルブリッジ回路のスイッチのうち、低圧側スイッチとしての第3スイッチQ23及び第4スイッチQ24がONに制御される。これにより、電力変換装置1は、電力変換制御の停止時において、二次側回路20のフルブリッジ回路をPWM制御する第1二次側ドライバ32及び第2二次側ドライバ33からブリッジ中点へ漏れ電流が発生した場合であっても、当該漏れ電流を二次側グランドGND2に流す接地経路が構成される。
【0071】
従って、本発明に係る電力変換装置1によれば、出力側に設けられた抵抗器において、レベルシフト回路の漏れ電流に伴う出力電圧Voutの意図しない上昇を抑制することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 電力変換装置
10 一次側回路
20 二次側回路
30 制御部
31 一次側ドライバ
32 第1二次側ドライバ
33 第2二次側ドライバ
34 制御回路
T トランス
Q21~Q24、 第1スイッチ~第4スイッチ
R21、R22 分圧抵抗