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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】フォークリフト
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/16 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
B66F9/16 B
B66F9/16 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021133990
(22)【出願日】2021-08-19
(65)【公開番号】P2023028344
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 弘樹
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-261296(JP,A)
【文献】特開2016-003731(JP,A)
【文献】特開平10-330095(JP,A)
【文献】特開平09-295800(JP,A)
【文献】特開平06-272501(JP,A)
【文献】特開2016-044010(JP,A)
【文献】特開昭55-161797(JP,A)
【文献】特開2010-030771(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03173372(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第104649196(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面上を走行する車両本体と、
荷物を持ち上げるためのフォークと、
前記フォークを上下方向に移動させるリフト装置と、
前記フォークの上面を前後方向に傾動させるチルト装置とを備え、
前記チルト装置は、同一方向に伸縮するように連結された第1シリンダおよび第2シリンダを備え、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの各々は、最も収縮した状態である最短状態と最も伸長した状態である最長状態とに切り替わるように伸縮し、
前記第1シリンダおよび前記第2シリンダのうち一方が最短状態で他方が最長状態にあるとき、前記フォークの上面が前記路面に対して平行な状態である基準状態になるように構成され、
前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの双方が最長状態にあるとき、前記フォークの上面が前記基準状態から後傾した状態である後傾状態になるように構成され、
前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの双方が最短状態にあるとき、前記フォークの上面が前記基準状態から前傾した状態である前傾状態になるように構成されている
ことを特徴とするフォークリフト。
【請求項2】
路面上を走行する車両本体と、
荷物を持ち上げるためのフォークと、
前記フォークを上下方向に移動させるリフト装置と、
前記フォークの上面を前後方向に傾動させるチルト装置とを備え、
前記チルト装置は、同一方向に伸縮するように連結された第1シリンダおよび第2シリンダを備え、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの各々は、最も収縮した状態である最短状態と最も伸長した状態である最長状態とに切り替わるように伸縮し、
前記第1シリンダおよび前記第2シリンダは、上下方向に延びるように配置され、
前記チルト装置は、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの伸縮に応じて左右方向に平行な軸を中心に揺動するレバーを備え、
前記レバーは、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの少なくとも一方が伸長するときに前記フォークを前方に押すように構成されている
ことを特徴とするフォークリフト。
【請求項3】
前記レバーは、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの双方が最短状態にあるとき、前記フォークを押さないように構成され、
前記チルト装置は、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの双方が最短状態にあるとき、前記フォークの揺動を規制するストッパーを備えている
ことを特徴とする請求項2に記載のフォークリフト。
【請求項4】
路面上を走行する車両本体と、
荷物を持ち上げるためのフォークと、
前記フォークを上下方向に移動させるリフト装置と、
前記フォークの上面を前後方向に傾動させるチルト装置とを備え、
前記チルト装置は、同一方向に伸縮するように連結された第1シリンダおよび第2シリンダを備え、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの各々は、最も収縮した状態である最短状態と最も伸長した状態である最長状態とに切り替わるように伸縮し、
前記第1シリンダおよび前記第2シリンダにより構成されるシリンダ装置が、左右方向に間隔を空けて左右一対で設けられている
ことを特徴とするフォークリフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チルト装置を備えたフォークリフトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、荷役を行うフォークリフトは、荷物を持ち上げるためのフォークと、フォークを上下方向に移動させるリフト装置とを備えている。また、フォークの上面を傾動させるチルト装置を備えたフォークリフトが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、フォークの上面を、路面に対して平行な状態である基準状態と、基準状態から後傾した状態である後傾状態と、基準状態から前傾した状態である前傾状態とに切り替えるためのシリンダを備えたチルト装置が記載されている。当該シリンダは、最も収縮した状態である最短状態と、最も伸長した状態である最長状態と、最短状態および最長状態の一方から他方へ移行する際に停止した状態である中間停止状態とに切り替わるように伸縮する。シリンダが中間停止状態にあるとき、フォークの上面が基準状態になり、シリンダが最長状態にあるとき、フォークの上面が後傾状態になり、シリンダが最短状態にあるとき、フォークの上面が前傾状態になるように構成されている。
【0004】
しかしながら、シリンダを最も収縮および伸長させる場合を除いて、簡単な構成でシリンダの長さを精度良く制御することは難しい。したがって、特許文献1の構成では、シリンダを所定の中間停止状態に精度良く切り替えることが難しく、フォークの上面の傾斜態様を精度良く制御できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-030771号公報(図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、簡単な構成でフォークの上面の傾斜態様を精度良く制御できるフォークリフトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本願発明のフォークリフトは、路面上を走行する車両本体と、荷物を持ち上げるためのフォークと、前記フォークを上下方向に移動させるリフト装置と、前記フォークの上面を前後方向に傾動させるチルト装置とを備え、前記チルト装置は、同一方向に伸縮するように連結された第1シリンダおよび第2シリンダを備え、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの各々は、最も収縮した状態である最短状態と最も伸長した状態である最長状態とに切り替わるように伸縮することを特徴とする。
【0008】
また、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダのうち一方が最短状態で他方が最長状態にあるとき、前記フォークの上面が前記路面に対して平行な状態である基準状態になるように構成され、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの双方が最長状態にあるとき、前記フォークの上面が前記基準状態から後傾した状態である後傾状態になるように構成され、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの双方が最短状態にあるとき、前記フォークの上面が前記基準状態から前傾した状態である前傾状態になるように構成されていることが好ましい。
【0009】
また、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダは、上下方向に延びるように配置され、前記チルト装置は、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの伸縮に応じて左右方向に平行な軸を中心に揺動するレバーを備え、前記レバーは、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの少なくとも一方が伸長するときに前記フォークを前方に押すように構成されていることが好ましい。
【0010】
また、前記レバーは、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの双方が最短状態にあるとき、前記フォークを押さないように構成され、前記チルト装置は、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの双方が最短状態にあるとき、前記フォークの揺動を規制するストッパーを備えていることが好ましい。
【0011】
また、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダにより構成されるシリンダ装置が、左右方向に間隔を空けて左右一対で設けられていることが好ましい。
【0012】
また、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの各々は、複動式の油圧シリンダにより構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な構成でフォークの上面の傾斜態様を精度良く制御できるフォークリフトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(A)は、本発明の一実施形態に係るフォークリフトの側面図であり、(B)は、同実施形態に係るフォークリフトが備える昇降体およびチルト装置等の背面図である。
図2】同実施形態に係るチルト装置およびフォーク等の側面図である。
図3】(A)は、同実施形態に係るフォークリフトの側面図であり、(B)は、同実施形態に係るフォークリフトが備えるチルト装置およびフォーク等の側面図である。
図4】(A)は、同実施形態に係るフォークリフトの側面図であり、(B)は、同実施形態に係るフォークリフトが備えるチルト装置およびフォーク等の側面図である。
図5】(A)および(B)は、同実施形態に係るフォークリフトが荷物を持ち上げる工程を説明するための概要図である。
図6】(A)および(B)は、比較例に係るフォークリフトの側面図である。
図7】(A)および(B)は、同比較例に係るフォークリフトの問題点を説明するための概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~5を参照して、本発明を具体化した一実施形態に係るフォークリフト1を説明する。なお、図中の矢印で示す前後方向X、左右方向Y、および、上下方向Zは、互いに直交する方向である。
【0016】
図1(A)は、フォークリフト1の概略構成を示しており、フォークリフト1を右方から見た図である。また、図1(B)は、フォークリフト1の一部を、後方から見た図である。また、図2は、フォークリフト1の一部を、右方から見た図である。
【0017】
図1(A)に示すように、フォークリフト1は、AGV(Automatic Guided Vehicle)である無人フォークリフトである。フォークリフト1は、車両本体10と、フォーク21と、バックレスト22と、昇降体30と、リフト装置40と、チルト装置50と、制御装置90とを備えている。
【0018】
車両本体10は、自律制御プログラムに従って路面上を走行する。フォーク21がパレットPおよび荷物L(いずれも図5参照)を持ち上げている状態で車両本体10が走行することで、フォークリフト1は荷物Lを搬送する。
【0019】
フォーク21は、左右方向Yに間隔を空けて左右一対で設けられ、前後方向Xに延びている。バックレスト22は、フォーク21で持ち上げた荷物Lが後方に落下することを防止する。フォーク21およびバックレスト22は、昇降体30とともに昇降可能(すなわち上下方向Zに移動可能)に構成されるとともに、左右方向Yに平行なチルト軸Aを中心に揺動可能に構成されており、一体となって動作する。フォーク21がチルト軸Aを中心に揺動することで、フォーク21の上面は前後方向Xに傾動する。
【0020】
昇降体30は、後述するマスト41に沿って昇降可能に構成されており、フォーク21、バックレスト22、および、チルト装置50を支持している。昇降体30の詳しい構成は、図1(B)を参照して説明する。
【0021】
リフト装置40は、上下方向Zに伸縮可能に構成されたマスト41と、マスト41を伸縮させるリフトシリンダ(図示略)と、マスト41の伸縮に伴って昇降体30を引き上げるリフトチェーン(図示略)とを備えている。マスト41は、左右方向Yに間隔を空けて左右一対で設けられ、上下方向Zに延びている。リフト装置40は、リフトシリンダを伸縮させることで、昇降体30とともにフォーク21等を昇降させる。
【0022】
チルト装置50は、チルト軸Aを中心に、昇降体30およびリフト装置40を傾動させることなく、フォーク21の上面を前後方向Xに傾動させる(すなわちチルト軸Aを中心にフォーク21を揺動させる)。チルト装置50の詳しい構成は、図1(B)および図2を参照して説明する。
【0023】
制御装置90は、リフト装置40を制御することで、フォーク21の高さを制御するとともに、チルト装置50を制御することで、前後方向Xに対するフォーク21の傾動態様を制御する。
【0024】
図1(B)は、バックレスト22、昇降体30、および、チルト装置50の概略構成を示しており、図2は、フォーク21、バックレスト22、昇降体30、および、チルト装置50の概略構成を示している。なお、図2において、昇降体30は二点鎖線で図示されている。
【0025】
図1(B)に示すように、昇降体30は、リフトブラケット31と、リフトローラー32と、シリンダ支持プレート33と、レバー支持プレート34とを備えている。リフトブラケット31は、左右一対のマスト41間に設けられている。リフトローラー32は、リフトブラケット31の側面に設けられており、マスト41に沿って転動する。シリンダ支持プレート33およびレバー支持プレート34は、リフトブラケット31と一体に設けられており、シリンダ支持プレート33は、後述するシリンダブラケット53を支持し、レバー支持プレート34は、後述するレバーブラケット54を支持している。
【0026】
図1(B)および図2に示すように、チルト装置50は、第1シリンダ61および第2シリンダ62と、レバー51と、ローラー52と、シリンダブラケット53と、レバーブラケット54と、チルト材55と、ストッパー56とを備えている。
【0027】
シリンダ61,62は、同一方向に伸縮するように連結されており、シリンダ装置60を構成している。シリンダ61,62の各々は、最も収縮した状態である最短状態と、最も伸長した状態である最長状態とに切り替わるように伸縮する複動式の油圧シリンダである。シリンダ61,62は、上下方向Zに延びるように配置されており、シリンダ装置60の上端部を構成する第1シリンダ61は、シリンダブラケット53に接続され、シリンダ装置60の下端部を構成する第2シリンダ62は、レバー51に接続されている。したがって、シリンダ装置60は、レバー51を揺動させるアクチュエータとして機能する。シリンダ装置60は、左右方向Yに間隔を空けて左右一対で設けられている。
【0028】
レバー51は、左右方向Yに平行な軸Rを中心に揺動可能に構成されており、シリンダ61,62の伸縮に応じて揺動する。レバー51の一端部には、シリンダ装置60が接続され、レバー51の他端部である先端部には、ローラー52が設けられている。レバー51は、シリンダ61,62の少なくとも一方が伸長するときに、ローラー52およびチルト材55を介してフォーク21を押すように構成されている。
【0029】
シリンダブラケット53は、シリンダ装置60(すなわちシリンダ61,62)を揺動可能に支持する支持具であり、シリンダ支持プレート33の下部に固定されている。レバーブラケット54は、レバー51を揺動可能に支持する支持具であり、レバー支持プレート34の下部に固定されている。
【0030】
チルト材55は、チルト軸Aを中心に揺動可能に構成されている。チルト材55には、フォーク21およびバックレスト22が取り付けられており、フォーク21は、チルト材55とともに揺動する。ストッパー56は、リフトブラケット31に固定されており、チルト材55に接触することで、チルト材55およびフォーク21の揺動を規制する。
【0031】
次に、チルト装置50によるフォーク21の傾斜態様の変化について説明する。
図1(A)および図2は、フォーク21の上面が路面に平行な状態である基準状態をとっているときのフォークリフト1の概略構成を示している。
図1(A)および図2に示すように、第1シリンダ61が最短状態で第2シリンダ62が最長状態にあるとき、フォーク21の上面が基準状態になるように構成されている。このとき、ローラー52がチルト材55に接触しているため、フォーク21の揺動が規制され、フォーク21の上面の基準状態が維持される。フォーク21の上面が基準状態にあるときに、第1シリンダ61を最長状態に切り替えると、ローラー52を前方に移動させ、フォーク21の上面を後述する後傾状態(図3参照)にすることができる。また、フォーク21の上面が基準状態にあるときに、第2シリンダ62を最短状態に切り替えると、ローラー52を後方に移動させ、フォーク21の上面を後述する前傾状態(図4参照)にすることができる。
【0032】
図3(A)および図3(B)は、フォーク21の上面が基準状態から後傾した状態である後傾状態をとっているときのフォークリフト1の概略構成を示している。
図3(A)および図3(B)に示すように、シリンダ61,62の双方が最長状態にあるとき、フォーク21の上面が後傾状態になるように構成されている。このとき、基準状態と同様に、ローラー52がチルト材55に接触しているため、フォーク21の揺動が規制され、フォーク21の上面の後傾状態が維持される。フォーク21の上面が後傾状態にあるときに、第1シリンダ61のみを最短状態に切り替えると、ローラー52を後方に移動させ、フォーク21の上面を基準状態にすることができる。フォーク21の上面が後傾状態にあるとき、フォークリフト1は、フォーク21で持ち上げた荷物L(図5参照)の安定性を高めることが可能となる。
【0033】
図4(A)および図4(B)は、フォーク21の上面が基準状態から前傾した状態である前傾状態をとっているときのフォークリフト1の概略構成を示している。
図4(A)および図4(B)に示すように、シリンダ61,62の双方が最短状態にあるとき、フォーク21の上面が前傾状態になるように構成されている。本実施形態では、シリンダ61,62の双方が最短状態にあるとき、レバー51がフォーク21を押さないように(すなわちローラー52がチルト材55に接触しないように)構成されており、ローラー52に代えてストッパー56がチルト材55に接触することで、フォーク21の揺動が規制され、フォーク21の上面の前傾状態が維持される。フォーク21の上面が前傾状態にあるときに、第2シリンダ62のみを最長状態に切り替えると、ローラー52を前方に移動させ、フォーク21の上面を基準状態にすることができる。フォーク21の上面が前傾状態にあるとき、フォークリフト1は、傾斜面の登坂時に水平面上の荷物L(図5参照)をフォーク21で持ち上げることが可能となる。
【0034】
図5(A)および図5(B)を参照して、傾斜面の登坂時に水平面上の荷物Lを持ち上げるフォークリフト1の動作について説明する。
図5(A)に示すように、フォークリフト1が傾斜面を登坂するとき、フォーク21の上面が前傾状態にある場合は、フォーク21の上面が基準状態および後傾状態にある場合に比べて、フォーク21の上面と水平面とのなす角度が0度に近くなる。このため、フォーク21は、水平に延びたパレットPのフォーク差込口P1が可能となり、車両本体10を前進させながらフォーク21を下降させることで、図5(B)に示すように、フォーク差込口P1にフォーク21が十分に差し込まれる。そして、フォーク21を上昇させることで、パレットPおよび荷物Lをフォーク21で持ち上げる。
【0035】
図6,7を参照して、比較例に係るフォークリフト101について説明する。図6(A)および図6(B)は、フォークリフト101の概略構成を示している。また、図7(A)および図7(B)は、フォークリフト101の登坂時の様子を示している。
【0036】
図6(A)および図6(B)は、比較例に係るフォークリフト101の概略構成を示している。このフォークリフト101は、車両本体110と、フォーク121と、フォーク121を支持する昇降体130と、フォーク121および昇降体130を昇降させるリフト装置140と、フォーク121の上面を前後方向に傾動させるチルト装置150とを備えている。フォーク121は、チルト軸Aを中心に揺動可能に構成されている。チルト装置150は、最短状態と最長状態とに切り替わるように収縮する単一のシリンダにより構成されており、シリンダが最短状態にあるとき、図6(A)に示すように、フォーク121の上面が基準状態になるように構成されている。また、シリンダが最長状態にあるとき、図6(B)に示すように、フォーク121の上面が後傾状態になるように構成されている。
【0037】
図7(A)に示すように、フォークリフト101が傾斜面を登坂するとき、フォーク121の上面が基準状態にある場合は、フォーク121の上面は路面である傾斜面に対して平行に延びる。このため、図7(B)に示すように、フォークリフト101が傾斜面を登坂するときに、水平面に置かれたパレットPのフォーク差込口P1、すなわち水平に延びるフォーク差込口P1にフォーク121を十分に差し込むことができない。したがって、フォークリフト101は、水平面上のパレットPおよび荷物Lをフォーク121で持ち上げることができないという問題を有する。
【0038】
本実施形態では以下の効果が得られる。
(1)チルト装置50は、同一方向に伸縮するように連結された第1シリンダ61および第2シリンダ62を備え、シリンダ61,62の各々は、最も収縮した状態である最短状態と最も伸長した状態である最長状態とに切り替わるように伸縮する。このため、シリンダ61,62のうち一方が最短状態で他方が最長状態にあるとき、フォーク21の上面が路面に対して平行な基準状態になり、シリンダ61,62の双方が最長状態にあるとき、フォーク21の上面が基準状態から後傾した後傾状態になり、シリンダ61,62の双方が最短状態にあるとき、フォーク21の上面が基準状態から前傾した前傾状態になるように構成できる。このように、シリンダ61,62を中間停止状態にすることなく、フォーク21の上面を基準状態、後傾状態、および、前傾状態に切り替えることができるため、簡単な構成でフォーク21の上面の傾斜態様を精度良く制御できる。また、傾斜面の登坂時に、フォーク21の上面を前傾状態にすることで、水平に延びたフォーク差込口P1にフォーク21を十分に差し込んで、水平面上のパレットPおよび荷物Lをフォーク21で持ち上げることができる。
【0039】
(2)シリンダ61,62は、上下方向Zに延びるように配置され、チルト装置50は、シリンダ61,62の伸縮に応じて左右方向Yに平行な軸Rを中心に揺動するレバー51を備え、レバー51は、シリンダ61,62の少なくとも一方が伸長するときにフォーク21を前方に押すように構成されている。この構成によれば、レバー51が、シリンダ61,62の上下方向Zの運動を、チルト軸Aを中心とするフォーク21の運動に変換することがき、シリンダ61,62が前後方向Xに延びるように配置されている場合に比べて、前後方向Xにおいてチルト装置50を小型化できる。
【0040】
(3)レバー51は、シリンダ61,62の双方が最短状態にあるとき、フォーク21を押さないように構成され、チルト装置50は、シリンダ61,62の双方が最短状態にあるとき、フォーク21の揺動を規制するストッパー56を備えている。このため、ストッパー56の位置(ストッパー56がチルト材55と接触する位置)を調整することで、前傾状態におけるフォーク21の上面の角度を調整することができる。
【0041】
(4)シリンダ61,62により構成されるシリンダ装置60が、左右方向Yに間隔を空けて左右一対で設けられているため、1つのシリンダ装置60が昇降体30の左右中央部のみに設けられている場合に比べて、耐荷重性を高めることができる。
【0042】
(5)シリンダ61,62の各々は、複動式の油圧シリンダにより構成されているため、シリンダ61,62が単動式の油圧シリンダにより構成されている場合に比べて、フォーク21の上面を基準状態と後傾状態と前傾状態に切り替える速度を容易に制御できる。
【0043】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記構成を変更することもできる。例えば、以下のように変更して実施することもでき、以下の変更を組み合わせて実施することもできる。
【0044】
・チルト装置50の構成を適宜変更することもできる。例えば、レバー51の先端部にローラー52を設けず、レバー51がローラー52を介さずにチルト材55を押すように構成することもできる。また、レバー51を用いずに、シリンダ61,62の伸縮に伴ってフォーク21を揺動させるように構成してもよい。また、レバー51とチルト材55とが機械的に接続されるように構成してもよい。
【0045】
・シリンダ装置60の構成を適宜変更することもできる。例えば、シリンダ61,62が、単動式の油圧シリンダにより構成されていてもよい。また、シリンダ61,62の配置を変更してもよい。また、第1シリンダ61が最長状態で第2シリンダ62が最短状態にあるとき、フォーク21の上面が基準状態になるように構成することもできる。すなわち、シリンダ61,62のうち一方が最短状態で他方が最長状態にあるとき、フォーク21の上面が基準状態になるように構成されていればよい。
【0046】
・また、本発明は、無人フォークリフトに限られず、有人フォークリフトまたは有人兼無人フォークリフトに適用することもできる。
【符号の説明】
【0047】
1 フォークリフト
10 車両本体
21 フォーク
22 バックレスト
30 昇降体
40 リフト装置
50 チルト装置
51 レバー
52 ローラー
55 チルト材
56 ストッパー
60 シリンダ装置
61 第1シリンダ
62 第2シリンダ
A チルト軸
L 荷物
P パレット
P1 フォーク差込口
X 前後方向
Y 左右方向
Z 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7