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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】コンピュータシステム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20231011BHJP
   B64C 13/20 20060101ALI20231011BHJP
   B64F 1/36 20170101ALI20231011BHJP
   G08G 5/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
G01C21/26 A
B64C13/20 Z
B64F1/36
G08G5/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019003988
(22)【出願日】2019-01-15
(65)【公開番号】P2020112458
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】597151563
【氏名又は名称】株式会社ゼンリン
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】志岐 愛介
(72)【発明者】
【氏名】大原 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】秋元 大地
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-146946(JP,A)
【文献】特開2018-180359(JP,A)
【文献】特開2018-163517(JP,A)
【文献】特開2011-227043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
B64B 1/00 - 1/70
B64C 1/00 - 99/00
B64D 1/00 - 47/08
B64F 1/00 - 5/60
B64G 1/00 - 99/00
G05D 1/00 - 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのプロセッサを備え、
前記少なくとも一つのプロセッサが、地上ネットワークと地物とが関連付けられた地上ネットワークデータと、空ネットワークと前記地上ネットワークとが関連付けられた空ネットワークデータとに基づいて、前記空ネットワークにおける飛行体の飛行を制御する、
コンピュータシステムであり、
前記地上ネットワークデータが、前記地上ネットワークを構成する地上地図要素と前記地物との関連付けを含み、
前記空ネットワークデータが、前記空ネットワークを構成する空地図要素と前記地上地図要素との関連付けを含み、
前記少なくとも一つのプロセッサが、
前記空ネットワーク内の少なくとも一つの前記空地図要素を特定し、
前記空ネットワークデータを参照することで、前記少なくとも一つの空地図要素に対応する少なくとも一つの前記地上地図要素を特定し、
前記少なくとも一つの地上地図要素に対応する前記地上ネットワークデータを参照することで、該少なくとも一つの地上地図要素に対応する少なくとも一つの前記地物を特定し、
前記少なくとも一つの地物に基づいて、前記少なくとも一つの空地図要素を含む前記空ネットワークにおける前記飛行体の飛行を制御する、
コンピュータシステム。
【請求項2】
少なくとも一つのプロセッサを備え、
前記少なくとも一つのプロセッサが、地上ネットワークと地物とが関連付けられた地上ネットワークデータと、空ネットワークと前記地上ネットワークとが関連付けられた空ネットワークデータとに基づいて、前記空ネットワークにおける飛行体の飛行を制御する、
コンピュータシステムであり、
前記地上ネットワークデータが、前記地上ネットワークを構成する地上地図要素と前記地物との関連付けを含み、
前記空ネットワークデータが、前記空ネットワークを構成する空地図要素と前記地上地図要素との関連付けを含み、
前記少なくとも一つのプロセッサが、
前記地上ネットワーク内の少なくとも一つの前記地上地図要素を特定し、
前記地上ネットワークデータを参照することで、前記少なくとも一つの地上地図要素に対応する少なくとも一つの前記地物を特定し、
前記空ネットワークデータを参照することで、前記少なくとも一つの地上地図要素に対応する少なくとも一つの前記空地図要素を特定し、
前記少なくとも一つの地物に基づいて、前記少なくとも一つの空地図要素を含む前記空ネットワークにおける前記飛行体の飛行を制御する、
コンピュータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面はコンピュータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、飛行体を制御するための技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-146946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一側面は、飛行体を適切に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係るコンピュータシステムは、少なくとも一つのプロセッサを備え、少なくとも一つのプロセッサが、地上ネットワークと地物とが関連付けられた地上ネットワークデータと、空ネットワークと地上ネットワークとが関連付けられた空ネットワークデータとに基づいて、空ネットワークにおける飛行体の飛行を制御する、コンピュータシステムであり、地上ネットワークデータが、地上ネットワークを構成する地上地図要素と地物との関連付けを含み、空ネットワークデータが、空ネットワークを構成する空地図要素と地上地図要素との関連付けを含み、少なくとも一つのプロセッサが、空ネットワーク内の少なくとも一つの空地図要素を特定し、空ネットワークデータを参照することで、少なくとも一つの空地図要素に対応する少なくとも一つの地上地図要素を特定し、少なくとも一つの地上地図要素に対応する地上ネットワークデータを参照することで、少なくとも一つの地上地図要素に対応する少なくとも一つの地物を特定し、少なくとも一つの地物に基づいて、少なくとも一つの空地図要素を含む空ネットワークにおける飛行体の飛行を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る飛行制御システムの機能構成の一例を示す図である。
図2】実施形態に係るサーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】地上ネットワークおよび空ネットワークの一例を示す図である。
図4】地上ネットワークと空ネットワークとの関連付けの一例を示す図である。
図5】地上ネットワークデータおよび空ネットワークデータの一例を示す図である(図4に対応)。
図6】地上ネットワークデータおよび空ネットワークデータの別の例を示す図である(図4に対応)。
図7】地上ネットワークおよび空ネットワークの別の例を示す図である。
図8】地上ネットワークと空ネットワークとの関連付けの別の例を示す図である。
図9】地上ネットワークデータおよび空ネットワークデータの一例を示す図である(図8に対応)。
図10】飛行制御システムの動作の一例を示すシーケンス図である。
図11】飛行体の制御の詳細を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら本開示での実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0008】
[システムの概要]
実施形態に係る飛行制御システム1は飛行体を制御するコンピュータシステムである。飛行体とは、空中を移動することが可能な人工物のことをいう。飛行体の種類は限定されず、例えば有人航空機でもよいし無人航空機(ドローン)でもよい。飛行体の制御方法は限定されない。例えば、飛行制御システム1は飛行体を直接に制御してもよいし、他の装置またはコンピュータを介して飛行体を間接的に制御してもよい。飛行体の間接的な制御の一例として、飛行体の制御の支援が挙げられる。「飛行体の制御」は直接的な制御と間接的な制御(例えば飛行体の制御の支援)との双方を含み得る。飛行制御システム1は飛行体の進行方向または速度を変更してもよいし、飛行体を離着陸させてもよいし、飛行体を空中で停止させてもよいし、決定された飛行経路を飛行体の移動中に変更してもよい。「飛行体の制御」は、飛行体の移動の制御と、飛行体に搭載された機器(例えばカメラ)の制御との少なくとも一方を含んでもよい。飛行体の移動の制御にあたっては、空中における飛行体の現在位置(三次元位置)を検出する機能を有していることが好ましい。飛行体の制御の目的も何ら限定されず、飛行制御システム1は輸送、調査、監視、誘導に関する案内(例えば、ペースメーカ、観光案内など)、規制に関する案内などの任意の目的で利用され得る。
【0009】
飛行制御システム1は地上ネットワークデータおよび空ネットワークデータに基づいて飛行体の飛行を制御する。地上ネットワークデータおよび空ネットワークデータはいずれも、コンピュータが読み取ることが可能な電子データであり、飛行体の制御に必要なデジタル情報を含む制御データである。
【0010】
地上ネットワークデータは、地上を移動する物体(例えば人、自動車、列車、船舶など)が通行し得る経路を示す地上ネットワークを表すデータである。本開示における「地上」は地球の表面を意味し、したがって、地面だけでなく水面も包含する概念である。具体的には、地上ネットワークデータは、地上ネットワークと地物とが関連付けられたデータである。
【0011】
地物とは、地上に存在する任意の有体物または無体物である。地物は自然物でも人工物でもよい。例えば、地物は、山地、農地、住宅地、更地、河川、湖、海、観光地、道路、鉄道、建物、公園、塔、信号機、踏切、横断歩道、歩道橋、浮標などを含み得る。無体物である地物の例として、任意の目的で設定された区域(例えば、撮影禁止区域、一時的な進入禁止区域など)、イベントが開催される区域、集合場所、撮影スポットなどが挙げられる。当然ながら、地物の種類はこれらに限定されない。
【0012】
空ネットワークデータは、飛行体が通行し得る経路を示す空ネットワークを表すデータである。具体的には、空ネットワークデータは、空ネットワークと地上ネットワークとが関連付けられたデータである。
【0013】
地上ネットワークデータおよび空ネットワークデータは任意の手法で用意されてよい。これら2種類のネットワークデータの少なくとも一方は地図データの一部であってもよい。言い換えると、地図データが地上ネットワークデータおよび空ネットワークデータの少なくとも一方として機能してもよい。あるいは、地上ネットワークデータおよび空ネットワークデータの少なくとも一方が地図データと独立して用意されてもよい。
【0014】
[システムの構成]
図1は、飛行制御システム1の機能構成の一例を示す図である。図1に示すように、本実施形態では、飛行制御システム1はサーバ10、地上データベース20、および空データベース30を備える。サーバ10はユーザ端末40および経路探索システム50と通信接続することができる。ユーザ端末40は、飛行制御システム1のユーザにより所持または利用されるコンピュータである。経路探索システム50は、ユーザから指定された条件に基づいて地上の経路を探索するコンピュータシステムである。ユーザ端末40は、ユーザに対する地上の経路の案内を行う場合には、地上におけるユーザの現在位置を検出する機能を有していることが好ましい。
【0015】
サーバ10はユーザ端末40を介して飛行体60に指示データを送信することで該飛行体60を制御することができる。指示データは、コンピュータが読み取ることが可能な電子データであり、飛行体60を制御するために必要なデジタル情報を含む制御データである。飛行体60は指示データに基づいて飛行することができる。地上データベース20は地上ネットワークデータ21を記憶する装置であり、空データベース30は空ネットワークデータ31を記憶する装置である。サーバ10はこれらのデータベースを必要に応じて参照することで指示データを用意する。
【0016】
図1に示す各装置は有線または無線の通信ネットワークを介してデータを送受信することができる。例えば、サーバ10は通信ネットワークを介して、地上データベース20または空データベース30からデータを読み出したり、経路探索システム50とデータを送受信したり、ユーザ端末40に指示データを送信したりすることができる。通信ネットワークの具体的な構成は限定されず、例えば、通信ネットワークはインターネットおよびイントラネットの少なくとも一方を含んで構成されてもよい。
【0017】
飛行制御システム1の構成は図1の例に限定されない。例えば、地上データベース20は飛行制御システム1とは別のコンピュータシステムにより管理されてもよいし、サーバ10に備えられてもよい。地上データベース20と同様に、空データベース30の構成または管理も限定されない。地上データベース20および空データベース30は一つのデータベースに統合されてもよい。経路探索システム50は機能モジュールとしてサーバ10内に実装されてもよい。サーバ10はユーザ端末40を介することなく指示データを飛行体60に送信してもよい。
【0018】
本実施形態では、サーバ10はユーザ端末40からの要求に応答してユーザのために地上経路を設定し、該地上経路に対応する空経路を飛行体60のために設定する。さらに、サーバ10は、飛行体60の飛行中に必要に応じて飛行体60を制御する。地上経路とは、ユーザを或る地点から別の地点へと案内するために地上に設定される経路のことをいう。空経路とは、飛行体60を或る地点から別の地点へと案内するために空中に設定される経路のことをいう。本実施形態では、サーバ10は機能モジュールとして経路設定部11、指示生成部12、および通信部13を備える。経路設定部11は、ユーザのための地上経路と、飛行体60のための空経路とを探索し、探索された経路を示す経路データを用意する機能モジュールである。指示生成部12は飛行体60を制御するための指示データを用意する機能モジュールである。通信部13は、経路データまたは指示データを出力する機能モジュールである。
【0019】
図2は、サーバ10のハードウェア構成の一例を示す。例えば、サーバ10は制御回路100を有する。一例では、制御回路100は、一つまたは複数のプロセッサ101と、メモリ102と、ストレージ103と、通信ポート104と、入出力ポート105とを有する。プロセッサ101はオペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムを実行する。ストレージ103はハードディスク、不揮発性の半導体メモリ、または取り出し可能な媒体(例えば、磁気ディスク、光ディスクなど)の記憶媒体で構成され、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムを記憶する。メモリ102は、ストレージ103からロードされたプログラム、またはプロセッサ101による演算結果を一時的に記憶する。一例では、プロセッサ101は、メモリ102と協働してプログラムを実行することで、上記の各機能モジュールとして機能する。通信ポート104は、プロセッサ101からの指令に従って、通信ネットワークNWを介して他の装置との間でデータ通信を行う。入出力ポート105は、プロセッサ101からの指令に従って、キーボード、マウス、モニタなどの入出力装置(ユーザインタフェース)との間で電気信号の入出力を実行する。
【0020】
サーバ10は一つまたは複数のコンピュータにより構成され得る。複数のコンピュータが用いられる場合には、通信ネットワークを介してこれらのコンピュータが互いに接続されることで論理的に一つのサーバ10が構成される。
【0021】
サーバ10として機能するコンピュータは限定されない。例えば、サーバ10は業務用サーバなどの大型のコンピュータで構成されてもよいし、パーソナルコンピュータや携帯端末(例えばスマートフォン、タブレット端末など)などの小型のコンピュータで構成されてもよい。
【0022】
[データ構造]
飛行経路を示す空ネットワークは空ネットワークデータ31によって地上ネットワークと関連付けられ、その地上ネットワークは地上ネットワークデータ21によって地物と関連付けられる。このようなデータ構造により、空ネットワークは地上ネットワークを介して地物とも関連付けられる。したがって、飛行制御システム1は地物に基づいて飛行体60を制御することができる。
【0023】
飛行体60を制御するために用いられる地物の属性は限定されない。地物の属性とは、地物の性質、特徴、または状況を表す任意の種類の情報である。地物の属性の例として名称、位置、形状、寸法、構成、構造、動的に変化する状況が挙げられるが、これらに限定されない。「動的に変化する状況」とは、時間の経過に伴って変化する状況のことをいう。状況の変化に要する時間の長さは限定されず、例えば1秒、10秒、30秒、1分、10分、30分、1時間、2時間、3時間、12時間、1日などの任意の値であってよい。状況の種類は何ら限定されず、例えば自然現象でもよいし、人工物により引き起こされる状況でもよいし、人により定められた規則に基づく状況でもよい。例えば、動的に変換する状況は、気象(天気)、通行規制、道路の渋滞の度合い、障害物の位置、人の密集度などであり得る。
【0024】
地上ネットワークを介することなく空ネットワークと地物とを直接に関連付けると、空ネットワークデータ31の構造が複雑になるので、空ネットワークデータ31の管理(例えば、設計、生成、更新)が煩雑になる。地物は地上に存在するので、地物に関する情報は空ネットワークとではなく地上ネットワークと関連付けた方が、データ管理が容易になる。空ネットワークと地物とを地上ネットワークを介して関連付けることで、空ネットワークデータの管理(例えば、設計、設計、更新)が容易になり、地物に基づいて飛行体を適切に制御することができる。
【0025】
図3は地上ネットワークおよび空ネットワークの一例を示す図である。この例では、地物は道路70、歩道71、横断歩道72、および信号機73であり、地上ネットワーク80は歩道71または横断歩道72に沿って設定され、空ネットワーク90は地上ネットワーク80に対応して設定されている。
【0026】
空ネットワーク90および地上ネットワーク80はいずれも、ノード、リンクなどの地図要素により表現することができる。ノードとは、移動体の移動(空ネットワークであれば、飛行体の飛行)を制御するために設定される位置のことをいい、より具体的には、移動体の移動方法(例えば方向、速度など)を変えることができる位置のことをいう。リンクとは、移動体の移動経路(空ネットワークであれば、飛行体の飛行経路)を示すために設定される仮想的な線のことをいい、隣接するノード間を結ぶ。リンクの形状は直線でも曲線でもよく、あるいは、直線と曲線との組合せでもよい。本開示では、地上ネットワークを構成するノードおよびリンクをそれぞれ地上ノード、地上リンクといい、空ネットワークを構成するノードおよびリンクをそれぞれ空ノード、空リンクという。
【0027】
図3では、地上ネットワーク80は複数の地上ノード81および複数の地上リンク82を含んで構成され、空ネットワーク90は複数の空ノード91および複数の空リンク92を含んで構成される。なお、図3では明確な図示を目的として空ネットワーク90を地上ネットワーク80から離して表現しているが、空ネットワーク90の少なくとも一部が地上ネットワーク80と重なるように空ネットワーク90が定義されてもよい。
【0028】
図4は地上ネットワーク80と空ネットワーク90との関連付けの一例を示す図である。この例では、地上ネットワーク80はPNW001,PNW002,PNW003,PNW004という4個の地上リンクと、PN001,PN002,PN003,PN004,PN005という5個の地上ノードとを含む。一方、空ネットワーク90はSNW001,SNW002,SNW003,SNW004という4個の空リンクと、SN001,SN002,SN003,SN004,SN005という5個の空ノードとを含む。図4はさらに、地物の例として、二つの信号機OBJ001,OBJ002と、停止領域OBJ003と、二つの横断歩道OBJ004,OBJ005とを示す。
【0029】
空ネットワークの地図要素(例えば、空ノードおよび空リンク)は、地上ネットワークの地図要素(例えば、地上ノードおよび地上リンク)と直接にまたは間接的に関連付けられる。関連付けの方法は何ら限定されず、任意の方針で実現されてよい。例えば、空ノードおよび空リンクのいずれも、地上ノードおよび地上リンクの少なくとも一方と関連付けられてもよい。空ネットワークの地図要素と地上ネットワークの地図要素との対応関係は、1対1でも、1対多でも、多対1でもよい。本開示では、空ネットワークの地図要素を「空地図要素」ともいい、地上ネットワークの地図要素を「地上地図要素」ともいう。
【0030】
地上ネットワークと空ネットワークとは静的に関連付けられてもよいし、動的に関連付けられてもよい。「静的に関連付けられる」とは、地上ネットワークと空ネットワークとの関連付けが予め設定され、人手の介入がない限りはその関連付けが変更されないことをいう。一方、「動的に関連付けられる」とは、地上ネットワークと空ネットワークとの関連付けが任意の事象に応じて人手の介入無しに変更され得ることをいう。動的な関連付けは、関連付けを制御するプログラムが所定のコンピュータ上で実行されることで実現される。動的な関連付けは飛行制御システム1により実行されてもよいし、別のコンピュータシステムにより実行されてもよい。
【0031】
空ネットワークと地上ネットワークとが関連付けられる限り、空ネットワークデータ31のデータ構造は限定されない。言い換えると、或る一つの空地図要素と少なくとも一つの地上地図要素とが関連付けられるのであれば、空ネットワークデータ31のデータ構造は任意に設計されてよい。同様に、地上ネットワークと地物とが関連付けられる限り、地上ネットワークデータ21のデータ構造は限定されない。言い換えると、或る一つの地上地図要素と地物とが関連付けられるのであれば、地上ネットワークデータ21のデータ構造は任意に設計されてよい。いずれにしても、空ネットワークと地物とが地上ネットワークを介して関連付けられるので、飛行制御システム1は地物に基づいて飛行体を制御することができる。
【0032】
図5は、図4に示す地上ネットワーク80および空ネットワーク90に対応する地上ネットワークデータ21および空ネットワークデータ31の一例を示す図である。この例では、地上ネットワークデータ21は、地上リンクを示す地上リンクデータ211と、地物を示す地物情報212とを含む。空ネットワークデータ31は、空リンクを示す空リンクデータ311を含む。
【0033】
一つの地上リンクを示す地上リンクデータ211は、地上リンクを一意に特定する地上リンクIDと、該地上リンクの両端の地上ノードを一意に特定する開始ノードIDおよび終了ノードIDと、地上リンクの種別と、対応する少なくとも一つの地物とを含む。一つの地物を示す地物情報212は、地物を一意に特定する地物IDと、地物の種別と、地物の地理的位置を示す座標とを含む。地上リンクデータ211と地物情報212とは地物IDによって互いに関連付けられる。なお、地物と関連付けられない地上リンクが存在してもよい。
【0034】
一つの空リンクを示す空リンクデータ311は、空リンクを一意に特定する空リンクIDと、該空リンクの両端の空ノードを一意に特定する開始ノードIDおよび終了ノードIDと、対応する地上リンクIDと、飛行体60の制御に関する1以上の制御区間の情報とを含む。制御区間情報は、空リンク上での飛行体60の進行方向を示すネットワーク方向と、制御区間の開始点および終了点の地理的位置を示す座標とを含む。なお、制御区間を持たない空リンクが存在してもよい。
【0035】
地上ネットワークデータ21と空ネットワークデータ31とは、地上リンクデータ211の地上リンクIDと空リンクデータ311の地上リンクIDとによって互いに関連付けられる。飛行制御システム1は、地上ネットワークデータ21と、空ネットワークデータ31と、これら二つのデータの関連付けとを含んで構成されるデータ構造を参照することで、地物に基づいて飛行体60を制御することができる。
【0036】
図6は、図4に示す地上ネットワーク80および空ネットワーク90に対応する地上ネットワークデータ21および空ネットワークデータ31の別の例を示す図である。この例では、地上ネットワークデータ21は、地上リンクデータ211と地上ノードデータ213とを含む。地上ノードデータ213は、地上ノードIDと、地上ノードの地理的位置を示す座標と、地上ノードを介して接続する二つの地上リンク(地上ノードに至る進入リンクと、地上ノードから出る退出リンク)の組である1以上のリンク接続とを含む。地上リンクデータ211と地上ノードデータ213とは地上ノードIDによって互いに関連付けられる。
【0037】
図6の例でも、地上ネットワークデータ21と空ネットワークデータ31とは、地上リンクデータ211の地上リンクIDと空リンクデータ311の地上リンクIDとによって互いに関連付けられる。したがって、飛行制御システム1は地物に基づいて飛行体60を制御することができる。
【0038】
図7は地上ネットワークおよび空ネットワークの別の例を示す図である。この例では、地物は撮影スポット171および撮影禁止区域172であり、地上ネットワーク180は観光ルート170に沿って設定され、空ネットワーク190は地上ネットワーク180に対応して設定されている。地上ネットワーク180は複数の地上ノード181および複数の地上リンク182を含んで構成され、空ネットワーク190は複数の空ノード191および複数の空リンク192を含んで構成される。飛行体60は撮影スポット171で人を撮影するために、空ネットワーク190の途中地点195を基点とする撮影用経路196を通る可能性がある。なお、図7では明確な図示を目的として空ネットワーク190を地上ネットワーク180から離して表現しているが、空ネットワーク190の少なくとも一部が地上ネットワーク180と重なるように空ネットワーク190が定義されてもよい。
【0039】
図8は地上ネットワーク180と空ネットワーク190との関連付けの一例を示す図である。この例では、地上ネットワーク180はPNW101,PNW102,PNW103という3個の地上リンクと、PN101,PN102,PN103,PN104という4個の地上ノードとを含む。一方、空ネットワーク190はSNW101,SNW102,SNW103という3個の空リンクと、SN101,SN102,SN103,SN104という4個の空ノードとを含む。
【0040】
図9は、図8に示す地上ネットワーク180および空ネットワーク190に対応する地上ネットワークデータ21および空ネットワークデータ31の一例を示す図である。この例では、地上ネットワークデータ21は、地上リンクを示す地上リンクデータ221と、撮影スポットを示す撮影スポット情報222とを含む。空ネットワークデータ31は、空リンクを示す空リンクデータ321と、飛行体60の制御方法を示す制御情報322とを含む。
【0041】
一つの地上リンクを示す地上リンクデータ221は、地上リンクを一意に特定する地上リンクIDと、該地上リンクの両端の地上ノードを示す開始ノードIDおよび終了ノードIDと、対応する地物情報とを含む。図9の例では、地上リンクPNW101に対応する地物は撮影スポットであり、地上リンクPNW102に対応する地物は撮影禁止領域である。一つの撮影スポットを示す撮影スポット情報222は地物情報の一例であり、撮影スポットを一意に特定する撮影スポットIDと、撮影スポットの地理的範囲を示す集合領域と、収容人数と、時間帯毎の混雑度とを含む。地上リンクデータ221と撮影スポット情報222とは撮影スポットIDによって互いに関連付けられる。撮影禁止領域の情報は地上リンクデータ221に埋め込まれており、該領域の地理的範囲を表す複数の座標を含む。
【0042】
一つの空リンクを示す空リンクデータ321は、空リンクIDと、該空リンクの両端の空ノードを示す開始ノードIDおよび終了ノードIDと、対応する地上リンクIDと、撮影スポットへの経路の起点であるイベントポイントの情報とを示す。イベントポイントの情報は、イベントポイントの地理的位置を示す座標と、イベントポイントに関連する制御を一意に特定する制御IDとを含む。一つのイベントポイントに対応する制御情報322は、制御IDと、対応する撮影スポットIDと、人を誘導する位置を示す少なくとも一つの誘導ポイントの情報と、飛行体60の位置を示す少なくとも一つの撮影ポイントの情報とを含む。誘導ポイントの情報は、誘導ポイントを一意に特定する誘導ポイントIDと、誘導ポイントの地理的位置を示す座標とを含む。撮影ポイントの情報は、撮影ポイントを一意に特定する撮影ポイントIDと、撮影ポイントの地理的範囲を示す領域情報と、飛行体60の向きを示す方角と、飛行体60のカメラの角度とを含む。空リンクデータ321と制御情報322とは制御IDによって互いに関連付けられる。
【0043】
地上ネットワークデータ21と空ネットワークデータ31とは、地上リンクデータ221の地上リンクIDと空リンクデータ321の地上リンクIDとによって互いに関連付けられる。飛行制御システム1は、地上ネットワークデータ21と、空ネットワークデータ31と、これら二つのデータの関連付けとを含んで構成されるデータ構造を参照することで、地物に基づいて飛行体60を制御することができる。
【0044】
図5図6、および図9に示すデータ構造は一例である。空ネットワークと地物とが地上ネットワークを介して関連付けられるのであれば、地上ネットワークデータ21および空ネットワークデータ31のデータ構造は任意の方針で設計されてよい。例えば、図5図6、または図9に示すデータ項目の少なくとも一つが省略されてもよいし、他のデータ項目が付加されてもよい。いずれにしても、空ネットワークと地物とが地上ネットワークを介して関連付けられるので、地上ネットワークデータ21および空ネットワークデータ31の用意と、地物に基づく飛行体60の制御とを効率良く実行することが可能になる。
【0045】
[システムでの処理手順]
図10および図11を参照しながら、飛行制御システム1の動作を説明するとともに本実施形態に係る飛行体の制御方法を説明する。図10は、飛行制御システム1の動作の一例を示すシーケンス図である。図11は飛行体60の制御の詳細を例示するフローチャートである。
【0046】
まず、図10を参照しながら飛行制御システム1の動作の全体像を説明する。ステップS11では、ユーザ端末40がユーザ操作に基づいてサーバ10に経路探索を要求する。ユーザは経路探索に関する様々な条件を入力することができる。その条件は限定されず、例えば、目的地、現在地、人数、出発時刻、到着時刻、所要時間、および制限時間のうちの少なくとも一つを含んでよい。経路探索の条件の少なくとも一部は、ユーザにより入力されてもよいし、任意のコンピュータまたはコンピュータシステムによって自動的に設定されてもよい。ユーザ端末40はその条件に基づいて要求信号を生成し、その信号をサーバ10に送信することで、経路探索をサーバ10に要求する。
【0047】
ステップS12では、経路設定部11がその要求に基づいて地上経路を探索する。例えば、経路設定部11はユーザ端末40から受信した条件を経路探索システム50に送信することで経路探索を経路探索システム50に指示し、経路探索システム50から送られてきた少なくとも一つの候補経路を地上経路として受信してもよい。
【0048】
ステップS13では、経路設定部11が地上経路に対応する空経路を探索する。例えば、経路設定部11は空データベース30を検索することで地上経路に対応する空経路を生成してもよい。複数の地上経路を取得した場合には、経路設定部11はそれぞれの地上経路について空経路を生成してもよい。
【0049】
ステップS14では、通信部13が地上経路および空経路を示す経路データを探索結果としてユーザ端末40に送信する。ユーザ端末40はその探索結果をモニタ上に表示し、これによりユーザは地上経路を視認し、その地上経路に沿って進むことができる。探索結果が複数の地上経路を含む場合には、ユーザはユーザ端末40を操作して一つの地上経路を選択することができる。この場合には、飛行体60は、選択された地上経路に対応する空経路を飛行することになる。
【0050】
ステップS15では、ユーザ端末40が、ユーザが進もうとする地上経路に対応する空経路のデータを飛行体60に送信する。飛行体60はこの空経路データに従って飛行することができる。したがって、この空経路データも指示データであるといえる。
【0051】
ステップS16では、指示生成部12および通信部13が連携して、地上ネットワークデータ21および空ネットワークデータ31に基づいて、空ネットワークにおける飛行体60の飛行を制御する。
【0052】
例えば、指示生成部12は、空ネットワーク内の少なくとも一つの空地図要素を特定すると、空ネットワークデータ31を参照することで、該少なくとも一つの空地図要素に対応する少なくとも一つの地上地図要素を特定する。続いて、指示生成部12は、その少なくとも一つの地上地図要素に対応する地上ネットワークデータ21を参照することで、該少なくとも一つの地上地図要素に対応する地物を特定する。そして、指示生成部12は、その少なくとも一つの地物に基づいて、少なくとも一つの空地図要素を含む空ネットワークにおける飛行体60の飛行を制御する。
【0053】
別の例では、指示生成部12は、地上ネットワーク内の少なくとも一つの地上地図要素を特定すると、地上ネットワークデータ21を参照することで、該少なくとも一つの地上地図要素に対応する少なくとも一つの地物を特定する。続いて、指示生成部12は、空ネットワークデータ31を参照することで、該少なくとも一つの地上地図要素に対応する少なくとも一つの空地図要素を特定する。そして、指示生成部12は、少なくとも一つの地物に基づいて、少なくとも一つの空地図要素を含む空ネットワークにおける飛行体60の飛行を制御する。
【0054】
このように、飛行制御システム1は地上ネットワークデータ21を参照した後に空ネットワークデータ31を参照してもよいし、空ネットワークデータ31を参照した後に地上ネットワークデータ21を参照してもよい。すなわち、飛行制御システム1がデータ構造を参照する順番は限定されない。
【0055】
図11を参照しながら、ステップS16の例をより詳細に説明する。ステップS161で示すように、飛行制御システム1は、飛行体60が空ネットワーク上の処理ポイントの位置(座標)に到達した場合に以下の一連の処理を行ってもよい。処理ポイントとは、飛行体60を制御する処理を実行する地点のことをいう。処理ポイントは空ネットワークデータ31内で規定されてもよいし、地上ネットワークデータ21内で規定されてもよい。地上ネットワークデータ21内に規定された場合には、ユーザが地上ネットワーク上の処理ポイントの位置(座標)に到達した場合に以下の一連の処理を行ってもよい。処理ポイントは、図5および図6の例では空リンクデータ311,312の制御区間によって示され、図9の例では空リンクデータ321のイベントポイントによって示される。飛行体60が処理ポイントに位置した場合には、処理はステップS162に進む。
【0056】
ステップS162では、指示生成部12が空ネットワークデータ31を参照して、飛行体60の制御に必要な空地図要素を特定する。特定される空地図要素は限定されず、例えば、指示生成部12は飛行体60が現在位置する空リンクを特定してもよいし、飛行体60が現在の空リンクの次に位置することになる空リンクを特定してもよい。空地図要素を特定する方法は限定されない。例えば、指示生成部12は、飛行体の制御に必要な情報が存在する空リンクを特定できるまで、飛行経路に沿って空リンクを順に探索してもよい。
【0057】
ステップS163では、指示生成部12が空ネットワークデータ31を参照して、特定された空地図要素に対応する地上地図要素を特定する。空リンクデータ311、312、または321を参照する場合には、指示生成部12は空リンクに対応する地上リンクを特定する。例えば、指示生成部12は、空リンクSNW002が特定された場合には地上リンクPNW002を特定し、空リンクSNW101が特定された場合には地上リンクPNW101を特定する。
【0058】
ステップS164では、指示生成部12が地上ネットワークデータ21を参照して、特定された地上地図要素に対応する地物を特定する。例えば、指示生成部12は、地上リンクPNW002が特定された場合には信号機OBJ002を地物として特定し、地上リンクPNW101が特定された場合には撮影スポットSS001を地物として特定する。
【0059】
ステップS165では、指示生成部12が地上ネットワークデータ21を参照して、特定された地物の情報を取得する。例えば、指示生成部12は、地物情報212を参照して信号機OBJ002の情報を得ることができ、撮影スポット情報222を参照して撮影スポットSS001の情報を得ることができる。あるいは、指示生成部12は、特定された地物の情報を飛行体60から取得してもよく、例えば飛行体60に搭載されたセンサで得られた情報(例えば、飛行体60のカメラで撮影された静止画または動画)を地物情報として取得してもよい。あるいは、指示生成部12は、飛行制御システム1以外のコンピュータシステムから地物情報を取得してもよく、例えば、地上の交通を管理する交通管制システムから道路情報を地物情報として取得してもよい。
【0060】
ステップS166では、指示生成部12が取得された地物情報に基づいて指示データを用意する。指示生成部12は、メモリに予め記憶されている指示データを読み出すことで指示データを用意してもよいし、指示データを動的に生成してもよい。指示データの内容およびデータ構造は何ら限定されない。例えば、指示データは、飛行体60の速度または位置を変化させるための情報を含んでもよいし、飛行体60を空中で停止させるための情報を含んでもよい。あるいは、指示データは飛行体60に搭載されている機器(例えばカメラ、光源、スピーカなど)を制御するための情報を含んでもよい。
【0061】
ステップS167では、通信部13が飛行体60に向けて指示データを送信する。本実施形態では、通信部13はユーザ端末40に指示データを送信し、ユーザ端末40がその指示データを飛行体60に転送する。しかし、飛行体60への指示データの送信方法はこれに限定されない。例えば、通信部13は指示データを、飛行体60に直接に送信してもよいし、ユーザ端末40以外の装置(例えばリモートコントローラ)を経由して飛行体60に送信してもよい。指示データは飛行体60を制御するために用いられる。例えば、飛行体60の制御回路が指示データを受信および処理することで自機の構成要素(例えば動力、舵、カメラ、スピーカ、または光源)を制御してもよい。あるいは、飛行体60以外のコンピュータ(例えばユーザ端末40またはリモートコントローラ)が指示データに基づいて制御データを飛行体60に送信し、飛行体60の制御回路がその制御データに基づいて自機の構成要素を制御してもよい。いずれにしても、飛行体60は、サーバ10から提供される指示データに基づいて飛行することができる。
【0062】
以下に、図3図6の例に対応するステップS16の様々な具体例を説明する。ここでは、ユーザがPNW001,PNW003,PNW004の順にこれら三つの地上リンクに沿って歩行し、飛行体60がSNW001,SNW003,SNW004の順にこれら三つの空リンクに沿って飛行するものとする。
【0063】
例えば、飛行体60が空ネットワーク90の空リンクSNW001の処理ポイントに到達したとすると(ステップS161においてYES)、指示生成部12は飛行体60が次に位置することになる空リンクSNW003を特定する(ステップS162)。続いて、指示生成部12は空ネットワークデータ31を参照して、空リンクSNW003に対応する地上リンクPNW003を特定する(ステップS163)。続いて、指示生成部12は地上ネットワークデータ21を参照して、地上リンクPNW003に対応する地物を特定する(ステップS164)。ユーザは地上リンクPNW003を始点PN002から終点PN003に向かって進むので、指示生成部12は順方向に対応する信号機OBJ001を地物として特定する。
【0064】
続いて、指示生成部12はその信号機OBJ001の情報を取得し(ステップS165)、その情報に基づいて指示データを用意する(ステップS166)。例えば、指示生成部12は信号機の現在の状態(どの色が点灯しているか)を示す情報を取得し、その現在状態に基づいて、ユーザが停止領域OBJ003に到達する時点での信号機OBJ001の状態を予測する。そして、指示生成部12はその予測に基づいて飛行体60の飛行方法を決定し、その決定に基づいて指示データを用意する。例えば、指示生成部12は、ユーザが停止領域OBJ003で止まることなく横断歩道OBJ004を渡ることができるように飛行体60の速度および位置を調整する指示データを用意してもよい。この場合には、指示生成部12は横断歩道OBJ004を通る人の位置を取得して混雑度が低い領域を特定し、その領域をユーザが通るように飛行体60の位置を設定してもよい。あるいは、指示生成部12はユーザを停止領域OBJ003で止めるための指示データを用意してもよい。この場合には、指示生成部12は停止領域OBJ003内の人の位置を取得して混雑度が低い領域を特定し、その領域にユーザを誘導するように飛行体60の位置を設定してもよい。
【0065】
最後に、通信部13がその指示データを飛行体60に向けて送信する(ステップS167)。飛行体60はその指示データによって動作することで、ユーザを目的地に向けて適切に案内することができる。
【0066】
その後、飛行体60が空ネットワーク90の空リンクSNW003の処理ポイント(すなわち、制御区間)に到達したとすると(ステップS161においてYES)、指示生成部12は飛行体60が次に位置することになる空リンクSNW004を、空リンクSNW003に対応する終了ノードSN003から空リンクSNW004に対応する開始ノードSN003の順に辿ることで特定する(ステップS162)。続いて、指示生成部12は空ネットワークデータ31を参照して、空リンクSNW004に対応する地上リンクPNW004を特定する(ステップS163)。続いて、指示生成部12は地上ネットワークデータ21を参照して、地上リンクPNW004に対応する横断歩道OBJ005を地物として特定する(ステップS164)。
【0067】
続いて、指示生成部12はその横断歩道OBJ005の情報を取得し(ステップS165)、その情報に基づいて指示データを用意する(ステップS166)。例えば、指示生成部12はその横断歩道の現在の状態(例えば車両が通行しているか否か)を示す情報を取得し、その現在状態に基づいて、ユーザをいつ通過させるかを判定する。そして、指示生成部12はその判定に基づいて飛行体60の飛行方法を決定し、その決定に基づいて指示データを用意する。
【0068】
最後に、通信部13がその指示データを飛行体60に向けて送信する(ステップS167)。飛行体60はその指示データによって動作することで、ユーザを目的地に向けて適切に案内することができる。
【0069】
以下に、図7図9の例に対応するステップS16の様々な具体例を説明する。ここでは、ユーザがPNW101,PNW102,PNW103の順にこれら三つの地上リンクに沿って歩行し、飛行体60がSNW101,SNW102,SNW103の順にこれら三つの空リンクに沿って飛行するものとする。
【0070】
例えば、飛行体60が空ネットワーク190の空リンクSNW101の処理ポイント(すなわち、イベントポイント)に到達すると(ステップS161においてYES)、指示生成部12はその空リンクSNW101を特定する(ステップS162)。続いて、指示生成部12は空ネットワークデータ31を参照して、空リンクSNW101に対応する地上リンクPNW101を特定する(ステップS163)。続いて、指示生成部12は地上ネットワークデータ21を参照して、地上リンクPNW101に対応する撮影スポットSS001を地物として特定する(ステップS164)。
【0071】
続いて、指示生成部12は地上ネットワークデータ21を参照して撮影スポットSS001の情報を取得する(ステップS165)。また、指示生成部12は空ネットワークデータ31を参照して、イベントポイントに対応する制御情報322(撮影スポットSS001に対応する制御情報322)を取得する。そして、指示生成部12は取得したこれらの情報に基づいて指示データを用意する(ステップS166)。例えば、指示生成部12は、誘導ポイントL001にユーザを誘導し、撮影ポイントSP001からユーザを撮影し、さらに撮影ポイントSP002からもユーザを撮影し、最後にイベントポイントに戻るように飛行体60を制御するための指示データを用意する。指示生成部12は、制御情報322に基づいて、個々の撮影ポイントでの飛行体60の動作を決定することもできる。指示生成部12は撮影スポット情報222で示される混雑度に応じて撮影ポイントの個数を調整してもよい。
【0072】
最後に、通信部13がその指示データを飛行体60に向けて送信する(ステップS167)。飛行体60はその指示データによって動作することで、ユーザを撮影スポットに誘導して撮影することができる。
【0073】
別の例として、サーバ10がユーザ端末40から撮影の指示を受信したことに応答してステップS16の処理が実行されてもよい。この場合には、処理ポイントはユーザ端末40からの指示が受信された時の飛行体60の位置である。指示生成部12は飛行体60が現在位置する空リンクを特定する(ステップS162)。この例では、指示生成部12は空リンクSNW102が特定されたことを前提とする。続いて、指示生成部12は空ネットワークデータ31を参照して、空リンクSNW102に対応する地上リンクPNW102を特定する(ステップS163)。続いて、指示生成部12は地上ネットワークデータ21を参照して、地上リンクPNW102に対応する撮影禁止領域を地物として特定し(ステップS164)、その撮影禁止領域の情報(開始点および終了点)を取得する(ステップS165)。そして、指示生成部12はその情報に基づいて指示データを用意する(ステップS166)。例えば、指示生成部12は飛行体60の現在位置が撮影禁止領域内であるか否かを判定する。そして、指示生成部12は、飛行体60が撮影禁止領域の外に位置する場合には、ユーザを撮影するための指示データを用意し、飛行体60が撮影禁止領域内に位置する場合には、撮影不可であることをユーザに伝えるための指示データを用意する。
【0074】
最後に、通信部13がその指示データを飛行体60に向けて送信する(ステップS167)。飛行体60はその指示データによって動作することで、ユーザを撮影するか、または撮影不可のメッセージをユーザに伝える。
【0075】
[プログラム]
コンピュータをサーバ10として機能させるためのプログラムは、該コンピュータを指示生成部12および通信部13として機能させるためのプログラムコードを含む。このプログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、プログラムは、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。提供されたプログラムはストレージ103に記憶され、プロセッサ101がメモリ102と協働してそのプログラムを実行することで上記の各機能モジュールが実現する。
【0076】
[効果]
以上説明したように、本開示の一側面に係るコンピュータシステムは、少なくとも一つのプロセッサを備え、少なくとも一つのプロセッサが、地上ネットワークと地物とが関連付けられた地上ネットワークデータと、空ネットワークと地上ネットワークとが関連付けられた空ネットワークデータとに基づいて、空ネットワークにおける飛行体の飛行を制御する。
【0077】
このような側面においては、空ネットワークが地上ネットワークを介して地物と関連付けられる。空ネットワークと地物とが直接にではなく間接的に関連付けられるので、空ネットワークデータの管理が簡単になり、地物に基づいて飛行体を適切に制御することができる。
【0078】
他の側面に係るコンピュータシステムでは、地上ネットワークデータが、地上ネットワークを構成する地上地図要素と地物との関連付けを含み、空ネットワークデータが、空ネットワークを構成する空地図要素と地上地図要素との関連付けを含んでもよい。空ネットワークを構成する空地図要素と地物とが地上地図要素を介して関連付けられるので、地物に基づいて飛行体をより綿密に制御することができる。
【0079】
他の側面に係るコンピュータシステムでは、少なくとも一つのプロセッサが、空ネットワーク内の少なくとも一つの空地図要素を特定し、空ネットワークデータを参照することで、少なくとも一つの空地図要素に対応する少なくとも一つの地上地図要素を特定し、少なくとも一つの地上地図要素に対応する地上ネットワークデータを参照することで、該少なくとも一つの地上地図要素に対応する少なくとも一つの地物を特定し、少なくとも一つの地物に基づいて、少なくとも一つの空地図要素を含む空ネットワークにおける飛行体の飛行を制御してもよい。このような手順により飛行体の飛行を適切に制御することができる。
【0080】
他の側面に係るコンピュータシステムでは、少なくとも一つのプロセッサが、地上ネットワーク内の少なくとも一つの地上地図要素を特定し、地上ネットワークデータを参照することで、少なくとも一つの地上地図要素に対応する少なくとも一つの地物を特定し、空ネットワークデータを参照することで、少なくとも一つの地上地図要素に対応する少なくとも一つの空地図要素を特定し、少なくとも一つの地物に基づいて、少なくとも一つの空地図要素を含む空ネットワークにおける飛行体の飛行を制御してもよい。このような手順により飛行体の飛行を適切に制御することができる。
【0081】
本開示の一側面に係るデータ構造は、地上ネットワークを構成する地上地図要素と地物とが関連付けられた地上ネットワークデータと、空ネットワークを構成する空地図要素と地上地図要素とが関連付けられた空ネットワークデータとを含み、プロセッサに、空ネットワークデータを参照させることで、少なくとも一つの空地図要素に対応する少なくとも一つの地上地図要素を特定させ、少なくとも一つの地上地図要素に対応する地上ネットワークデータを参照させることで、該少なくとも一つの地上地図要素に対応する少なくとも一つの地物を特定させ、少なくとも一つの地物に基づいて、少なくとも一つの空地図要素を含む空ネットワークにおける飛行体の飛行を制御させる。
【0082】
本開示の一側面に係るデータ構造は、地上ネットワークを構成する地上地図要素と地物とが関連付けられた地上ネットワークデータと、空ネットワークを構成する空地図要素と地上地図要素とが関連付けられた空ネットワークデータとを含み、プロセッサに、地上ネットワークデータを参照させることで、少なくとも一つの地上地図要素に対応する少なくとも一つの地物を特定させ、空ネットワークデータを参照させることで、少なくとも一つの地上地図要素に対応する少なくとも一つの空地図要素を特定させ、少なくとも一つの地物に基づいて、少なくとも一つの空地図要素を含む空ネットワークにおける飛行体の飛行を制御させる。
【0083】
このような側面においては、空ネットワークが地上ネットワークを介して地物と関連付けられる。空ネットワークと地物とが直接にではなく間接的に関連付けられるので、空ネットワークデータの管理が簡単になり、動的に変化する状況に基づいて飛行体を適切に制御することができる。また、上記の手順でプロセッサを動作させることで、飛行体の飛行を適切に制御することができる。
【0084】
[変形例]
以上、本開示をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0085】
飛行体を制御するためのシステム構成は限定されない。例えば、サーバ10が地上データベース20および空データベース30のうちの少なくとも一つを備えてもよい。あるいは、飛行体60がサーバ10の機能を備えてもよく、この場合には、飛行体60は通信ネットワークを介して地上データベース20および空データベース30にアクセスすることで地上ネットワークデータ21および空ネットワークデータ31を読み出す。あるいは、飛行体60がサーバ10の機能と、地上データベース20および空データベース30のうちの少なくとも一つの機能とを備えてもよい。飛行体60がサーバ10、地上データベース20、および空データベース30の機能を備える場合には、飛行体60はあたかもスタンドアロンマシンのように、他の情報処理装置に頼ることなく飛行することができる。ユーザ端末40および経路探索システム50はいずれも必須の構成要素ではない。例えば、サーバ10がユーザ端末40および経路探索システム50のうちの少なくとも一方の機能をさらに備えてもよい。
【0086】
少なくとも一つのプロセッサにより実行される飛行体の制御の手順は上記実施形態での例に限定されない。例えば、上述したステップ(処理)の一部が省略されてもよいし、別の順序で各ステップが実行されてもよい。また、上述したステップのうちの任意の2以上のステップが組み合わされてもよいし、ステップの一部が修正または削除されてもよい。あるいは、上記の各ステップに加えて他のステップが実行されてもよい。
【0087】
以上の実施形態の全部または一部に記載された態様は、飛行体の適切な制御、処理速度の向上、処理精度の向上、使い勝手の向上、データを利用した機能の向上または適切な機能の提供その他の機能向上または適切な機能の提供、データおよび/またはプログラムの容量の削減、装置および/またはシステムの小型化等の適切なデータ、プログラム、記録媒体、装置および/またはシステムの提供、並びにデータ、プログラム、装置またはシステムの制作・製造コストの削減、制作・製造の容易化、制作・製造時間の短縮等のデータ、プログラム、記録媒体、装置および/またはシステムの制作・製造の適切化のいずれか一つの課題を解決する。
【符号の説明】
【0088】
1…飛行制御システム、10…サーバ、11…経路設定部、12…指示生成部、13…通信部、20…地上データベース、21…地上ネットワークデータ、30…空データベース、31…空ネットワークデータ、40…ユーザ端末、50…経路探索システム、60…飛行体、80,180…地上ネットワーク、81,181…地上ノード、82,182…地上リンク、90,190…空ネットワーク、91,191…空ノード、92,192…空リンク、211,221…地上リンクデータ、212…地物情報、213…地上ノードデータ、222…撮影スポット情報、311,312,321…空リンクデータ、322…制御情報。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11