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特許7364340黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/12 20060101AFI20231011BHJP
   C08L 25/06 20060101ALI20231011BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20231011BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20231011BHJP
   C08G 65/48 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C08L71/12
C08L25/06
C08L53/02
C08K3/04
C08G65/48
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019021294
(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公開番号】P2020128477
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-11-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】山口 徹
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-058982(JP,A)
【文献】特開2016-138200(JP,A)
【文献】特開平08-165422(JP,A)
【文献】特開2018-058994(JP,A)
【文献】特開2012-134385(JP,A)
【文献】特開2010-138354(JP,A)
【文献】国際公開第2012/035976(WO,A1)
【文献】特開2020-019900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08G 65/00- 65/48
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端基及び側鎖基の少なくとも一部がキャッピング化合物でキャッピングされたポリフェニレンエーテル(A)と、ポリスチレン(B)と、結合芳香族ビニル化合物量が62~75質量%の芳香族ビニル化合物と共重合後に水添された共役ジエン化合物とのブロック共重合体(C)と、カーボンブラック(D)とを含有する樹脂組成物であり、
前記キャッピング化合物は、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、ホスホン酸ジオクチル、無水マレイン酸、及びステアリルアクリレートからなる群から選ばれるいずれかであり、
前記(A)、(B)、及び(C)成分の合計質量を100質量%とした場合に、前記(A)成分が30~90質量%、前記(B)成分が4~45質量%、前記(C)成分が6~25質量%であり、前記樹脂組成物を100質量%としたときの前記(D)成分の含有量が0.06~0.40質量%であり、さらに前記樹脂組成物を100質量%とした場合に、前記(A)、(B)、(C)、及び(D)成分の合計含有量が95質量%以上であることを特徴とする、黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂組成物をISO3167の多目的試験片A型のダンベル成形片に成形して、ISO527に準拠し、引張速度5mm/minで測定した引張伸度が5%以上である、請求項1に記載の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が、ポリフェニレンエーテルを構成するモノマーユニット100個あたり、前記キャッピング化合物が反応した構造のユニットを0.05~10個含有する、請求項1又は2に記載の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)成分の平均一次粒子径が10~35nmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂組成物を100質量%としたときの前記(D)成分の含有量が、0.10~0.30質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物をISO3167の多目的試験片A型のダンベル成形片に成形して、ISO527に準拠し、引張速度5mm/minで測定した引張伸度が10~50%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂組成物をISO3167の多目的試験片A型のダンベル成形片に成形して、ISO527に準拠し、引張速度5mm/minで測定した引張強度が65MPa以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテル樹脂は、機械的物性、電気的特性、耐酸・耐アルカリ性、耐熱性に優れると共に、低比重で、吸水性が低く、且つ寸法安定性が良好である等の多様な特性を有しているため、家電製品、OA機器、事務機、情報機器や自動車等の材料として、幅広く利用されている。
近年、このような用途に使用される部品において、市場からより薄肉軽量で、かつ、無塗装で使用可能な高外観の黒色成形体を成形できる樹脂材料が要求される場合が少なくない。
【0003】
しかしながら、従来のポリフェニレンエーテル樹脂からなる成形品は成形流動性が必ずしも十分ではないため、薄肉で表面積の広い成形体を射出成形する場合には、320℃を超える高温で過酷な成形条件で成形されることも少なくなく、その場合、成形外観も低下する傾向が見られた。
更には、成形体を黒色に着色するためにカーボンブラックを配合するが、樹脂組成物中でカーボンブラックの分散性が必ずしも十分ではないため、成形外観の更なる低下や、物性(靱性等)の低下も見られた。
【0004】
特許文献1には、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に、予め樹脂成分と特定の条件でマスターバッチ化したカーボンブラックを配合することで、アルミ蒸着した成形品表面の外観が改良された黒色樹脂組成物に関する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ポリフェニレンエーテル系樹脂と9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイドのような有機リン化合物とを含有する樹脂組成物に関する技術が開示されている。この特許文献2に記載の発明によれば、押出加工時の熱による変色を抑えることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-138200号公報
【文献】特開平4-117452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、確かに従来の成形体であれば、カーボンブラックの樹脂組成物中の分散性が改良されて十分に成形品表面外観の改良された樹脂組成物が得られたが、成形品の薄肉化に伴い、流動末端部やウェルド部周辺に発生するブツ(表面の微細な凹凸)や色むらは、必ずしも十分には抑制されなかった。
一方、特許文献2に記載の技術は、押出加工時の樹脂の変色を抑制するための技術であり、本願のような黒色組成物における外観改良と靱性の付与に関する技術とは異なるものである。
【0008】
そこで、本発明は、成形流動性に優れ、漆黒性、靱性に優れた無塗装で高外観の薄肉成形体を成形することが可能な黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、ポリフェニレンエーテルに、ポリスチレンと、特定の結合芳香族ビニル化合物量を有する芳香族ビニル化合物と水添共役ジエン化合物との共重合体とを、特定量比で含有させたことで成形品外観や成形流動性が改善された樹脂組成物において、薄肉成形品の流動末端部やウェルド周辺部に発生する極めて微細なブツの発生原因が、黒着色剤であるカーボンブラックの添加に起因することを突き止めた。そして、末端基及び側鎖基の少なくとも一部がキャッピング化合物でキャッピングされたポリフェニレンエーテルを用いてカーボンブラックと共に溶融混練することで、樹脂中でカーボンブラックの混和性が著しく改善されて成形外観が改良されること、また、黒着色剤であるカーボンブラックの配合量を最適範囲内に調整することで、流動末端部やウェルド周辺部のブツ発生が十分に抑えられると共に、成形品ウェルド部に発生する樹脂本来の色むらも隠蔽されること、更には、十分な漆黒性を付与した上で靱性も改良されることを明らかにして、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明は、以下の通りである。
[1]
末端基及び側鎖基の少なくとも一部がキャッピング化合物でキャッピングされたポリフェニレンエーテル(A)と、ポリスチレン(B)と、結合芳香族ビニル化合物量が62~75質量%の芳香族ビニル化合物と共重合後に水添された共役ジエン化合物とのブロック共重合体(C)と、カーボンブラック(D)とを含有する樹脂組成物であり、
前記キャッピング化合物は、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、ホスホン酸ジオクチル、無水マレイン酸、及びステアリルアクリレートからなる群から選ばれるいずれかであり、
前記(A)、(B)、及び(C)成分の合計質量を100質量%とした場合に、前記(A)成分が30~90質量%、前記(B)成分が4~45質量%、前記(C)成分が6~25質量%であり、前記樹脂組成物を100質量%としたときの前記(D)成分の含有量が0.06~0.40質量%であり、さらに前記樹脂組成物を100質量%とした場合に、前記(A)、(B)、(C)、及び(D)成分の合計含有量が95質量%以上であることを特徴とする、黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
[2]
前記樹脂組成物をISO3167の多目的試験片A型のダンベル成形片に成形して、ISO527に準拠し、引張速度5mm/minで測定した引張伸度が5%以上である、[1]に記載の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
[3]
前記(A)成分が、ポリフェニレンエーテルを構成するモノマーユニット100個あたり、前記キャッピング化合物が反応した構造のユニットを0.05~10個含有する、[1]又は[2]に記載の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
[4]
前記(D)成分の平均一次粒子径が10~35nmである、[1]~[3]のいずれかに記載の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
[5]
樹脂組成物を100質量%としたときの前記(D)成分の含有量が、0.10~0.30質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
[6]
前記樹脂組成物をISO3167の多目的試験片A型のダンベル成形片に成形して、ISO527に準拠し、引張速度5mm/minで測定した引張伸度が10~50%である、[1]~[5]のいずれかに記載の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
[7]
前記樹脂組成物をISO3167の多目的試験片A型のダンベル成形片に成形して、ISO527に準拠し、引張速度5mm/minで測定した引張強度が65MPa以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、成形流動性に優れ、漆黒性、靱性に優れた無塗装で高外観の薄肉成形体を成形することが可能な黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
《黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物》
本実施の形態に係る黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、末端基及び側鎖基の少なくとも一部がキャッピング化合物でキャッピングされたポリフェニレンエーテル(A)と、ポリスチレン(B)と、結合芳香族ビニル化合物量が62~75質量%の芳香族ビニル化合物と水添共役ジエン化合物とのブロック共重合体(C)と、カーボンブラック(D)とを含有し、前記(A)、(B)、及び(C)成分の合計質量を100質量%とした場合に、前記(A)成分が30~90質量%、前記(B)成分が4~45質量%、前記(C)成分が6~25質量%であり、前記樹脂組成物を100質量%としたときの前記(D)成分の含有量が0.06~0.40質量%であることを特徴とする、黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物、である。
【0014】
本発明者らは、上記の樹脂組成物が、成形流動性に優れ、漆黒性、靱性に優れた無塗装で高外観の薄肉成形体を成形することが可能な黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物であることを見出し、プロジェクターや各種照明器具等の家電OA機器部品や、電機電子機器、自動車用途等に用いられる加飾成形部品用途に、十分に適用可能であることを見出した。
【0015】
以下、上記の樹脂組成物の各構成成分について詳細に説明する。
【0016】
<ポリフェニレンエーテル(A)>
本実施の形態に用いるポリフェニレンエーテル(A)(本明細書において、単に「(A)成分」と称する場合がある)は、ポリフェニレンエーテル鎖の末端基及び側鎖基の少なくとも一部がキャッピング化合物でキャッピングされたポリフェニレンエーテル、具体的には、ポリフェニレンエーテルの末端基及び側鎖基の少なくとも一部にキャッピング化合物が共有結合で付加されたポリフェニレンエーテル、より具体的には、ポリフェニレンエーテルのベンジル位の炭素原子や末端水酸基の酸素原子にキャッピング化合物が共有結合で付加されたポリフェニレンエーテルである。
本実施の形態に用いるポリフェニレンエーテル(A)は、下記式(I)及び/又は(II)で表わされる繰り返し単位(構造のユニット)を有する、単独重合体(ホモポリマー)或いは共重合体(コポリマー)であるポリフェニレンエーテルの末端基及び側鎖基の少なくとも一部をキャッピング化合物でキャッピングすることで得られる。
【化13】
【化14】
上記式(I)及び(II)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数6~12のアリール基又はハロゲン原子を表す。但し、かかる場合、R5、R6は同時に水素原子ではない。
【0017】
ポリフェニレンエーテルの単独重合体としては、以下に制限されないが、例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-n-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジ-n-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-n-ブチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-クロロエチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-ヒドロキシエチル-1,4-フェニレン)エーテル、及びポリ(2-メチル-6-クロロエチル-1,4-フェニレン)エーテル等が挙げられる。
【0018】
ポリフェニレンエーテルの共重合体としては、上記式(I)及び/又は上記式(II)で表される繰り返し単位を主たる繰り返し単位とする共重合体である。例えば、2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体、2,6-ジメチルフェノールとo-クレゾールとの共重合体、或いは2,3,6-トリメチルフェノールとo-クレゾールとの共重合体といった、ポリフェニレンエーテル構造を主体とするものが挙げられる。
【0019】
ポリフェニレンエーテルの中でも、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルを用いることが好ましい。
【0020】
なお、本実施形態では、ポリフェニレンエーテル鎖中には、化学式(I)においてR1、R2がそれぞれメチル基である構造(及び、後述のように、当該構造から導かれる構造)が少なくとも一部含まれている。
【0021】
上記の本実施形態において用いられるポリフェニレンエーテル(A)では、末端ユニットにある水酸基(以下、「末端水酸基」とも称する。)の濃度が、ポリフェニレンエーテルを構成するモノマーユニット100個あたり、0.1~2.5個であることが好ましく、0.3~2.0個であることが好ましく、0.5~1.5個であることが更に好ましい。
なお、ポリフェニレンエーテルの末端水酸基濃度は、NMR測定により算出することができ、例えば、実施例に記載の方法が挙げられる。
【0022】
ポリフェニレンエーテルの末端基及び/又は側鎖基のキャッピングに用いられるキャッピング化合物としては、特に制限されるものではないが、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸等のカルボン酸化合物や、無水マレイン酸、無水酢酸等の酸無水物化合物、ステアリルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル化合物、ホスホン酸ジメチル、ホスホン酸ジオクチル、ホスホン酸ジフェニル、ホスホン酸ジオレイル、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド等のホスホン酸化合物等が挙げられる。
【0023】
キャッピング化合物としては、特に、ポリフェニレンエーテル末端基及び/又は側鎖基との反応性や、樹脂組成物の十分な性能発現の観点から、ホスホン酸化合物が好ましく、中でも、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイドが特に好ましい。
【0024】
ここで、末端基及び側鎖基の少なくとも一部がキャッピング化合物でキャッピングされたポリフェニレンエーテルの作用・効果について説明する。
【0025】
従来のポリフェニレンエーテルでは、長時間高温にさらされた場合に、末端ユニットにあるメチル基(以下、「末端メチル基」とも称する。)、中間ユニットにあるメチル基(以下、「側鎖メチル基」とも称する。)、末端水酸基でラジカルが発生しやすく、発生したラジカルによって酸化架橋反応を起こすことがあった。本発明者らは、末端メチル基、側鎖メチル基、末端水酸基等における酸化架橋反応の進行によって成形体の表面外観が低下することに着目して、この酸化架橋反応を抑えることで、高温成形条件下で成形した薄肉成形品の表面外観の低下を抑制することや、更には黒色樹脂組成物中のカーボンブラックの分散性が改良できる可能性について検討した。
本実施の形態のポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテルの被酸化部位である末端メチル基、側鎖メチル基、末端水酸基を、所定の分子で置換された状態にした後にキャッピング化合物でキャッピングすること等で得られる。キャッピングにより末端メチル基、側鎖メチル基、末端水酸基の架橋反応が著しく抑制されることで、高温高せん断条件下での成形における熱架橋物(ゲル)による成形外観の低下が防止されると共に、カーボンブラックとの混和性も改善されることがわかり、従来の黒色樹脂組成物では得られなかった良好な成形外観の成形体が得られることが明らかとなった。ここで、被酸化部位のラジカル発生能は、側鎖メチル基に比べ、末端メチル基、末端水酸基の方が大きいため、キャッピング化合物によるキャッピングは、末端により多く行うことが好ましい。
【0026】
ここで、ポリフェニレンエーテル(A)鎖中において、ポリフェニレンエーテルを構成するモノマーユニット100個あたり、前記キャッピング化合物が反応した構造のユニットを0.05~10個の範囲で含有することが好ましい。前記キャッピング化合物が反応した構造のユニットを、100ユニットあたり0.05個以上にすることにより、カーボンブラックとポリフェニレンエーテル(A)のキャッピング化合物反応構造との相互作用を高めてカーボンブラックの分散性を良好にすることができ、10個以下にすることにより、機械物性を保持しやすくなる。100モノマーユニットあたりの、前記キャッピング化合物反応構造のユニット数は、より好ましくは0.1~10個の範囲であり、更に好ましくは0.1~3.0個の範囲であり、特に好ましくは0.1個~1.0個の範囲である。
【0027】
また、ポリフェニレンエーテル(A)は、下記化学式(i)、(ii)、(iii)、(v)、(vi)、(vii)、(viii)からなる群から選ばれる1つ以上の構造ユニットを含むことが好ましい。
【化15】
【化16】
【化17】
(式(i)、式(ii)、式(iii)中のZは、化学式(iv)に表される基から選ばれる基であり、式(iv)中のR1~R3は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、水酸基、アルコキシ基、カルボニル基、アミノ基、アミド基からなる群から選ばれる基であり、R1~R3は、それらに含まれる原子が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
(式(v)、式(vi)、式(vii)、式(viii)中、R4~R7は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、水酸基、アルコキシ基、カルボニル基、アミノ基、アミド基からなる群から選ばれる基である。式(vi)、式(vii)、式(viii)中のWは、化学式(ix)に表される構造から選ばれる基であり、式(ix)中のR8及びR9は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、水酸基、アルコキシ基、カルボニル基、アミノ基、アミド基からなる群から選ばれる基である。式(vii)中のR6又はR7と式(ix)中のR8又はR9とは、それらに含まれる原子が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)
【化23】
【0028】
式(iv)におけるR1~R3のアルキル基としては、炭素数1~50の、好適には炭素数1~30の;直鎖状、分岐状、又は環状の、好適には直鎖状又は環状の;置換又は非置換のものが挙げられる。
アリール基としては、炭素数6~20、好適には炭素数6~14の;芳香族炭化水素基又は複素芳香族基が挙げられ、具体的には、フェニル基、ナフチル基、ピレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基等の芳香族炭化水素基;イミダゾール基、ピラゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、ピラジン基、ピリジル基、キノリン基、イソキノリン基等の複素芳香族基が挙げられ、フェニル基、ピリジル基が好ましい。
アルコキシ基、エステル基、アミド基としては、炭素数1~50、好適には炭素数1~30の;直鎖状、分岐状、又は環状の、好適には直鎖状、又は環状の;置換又は非置換の炭化水素基を有するものが挙げられる。
式(iv)におけるR1~R3は、これらのうち複数(例えば、2つ、3つ)の基において、それらに含まれる原子が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0029】
本実施形態で好適に用いられるポリフェニレンエーテル(A)としては、式(i)及び/又は式(ii)において、Zが、-P(=O)(R1)(OR2)であり、ここで、R1が、フェニル基であり、R2が、フェニル基であり、R1及びR2が、それぞれのオルト位で単結合してビフェニル構造を形成しているもの、が挙げられる。
また、本実施形態で好適に用いられるポリフェニレンエーテル(A)としては、式(i)及び/又は式(ii)において、Zが、-P(=O)(OR1)(OR2)であり、ここで、R1が、オクチル基であり、R2が、オクチル基であるもの、が挙げられる。
更に、本実施形態で好適に用いられるポリフェニレンエーテル(A)としては、式(i)及び/又は式(ii)において、Zが、-S(=O)(=O)(R1)であり、ここで、R1が、メチル基であるもの、が挙げられる。
更に、本実施形態で好適に用いられるポリフェニレンエーテル(A)としては、式(iii)において、Zが、-C(=O)(R1)であり、ここで、R1が、ピリジル基であるもの、が挙げられる。
更に、本実施形態で好適に用いられるポリフェニレンエーテル(A)としては、式(iii)において、Zが、-S(=O)(=O)(R1)であり、ここで、R1が、フェニル基であるもの、が挙げられる。
【0030】
式(v)、式(vi)、式(vii)、式(viii)におけるR4~R7のアルキル基としては、炭素数1~50の、好適には炭素数1~30の;直鎖状、分岐状、又は環状の、好適には鎖状、又は環状の;置換又は非置換のものが挙げられる。
アリール基としては、炭素数6~20、好適には炭素数6~14の;芳香族炭化水素基又は複素芳香族基が挙げられ、具体的には、フェニル基、ナフチル基、ピレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基等の芳香族炭化水素基;イミダゾール基、ピラゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、ピラジン基、ピリジル基、キノリン基、イソキノリン基等の複素芳香族基が挙げられ、フェニル基、ピリジル基が好ましい。
アルコキシ基、エステル基、アミド基としては、炭素数1~50、好適には炭素数1~30の;直鎖状、分岐状、又は環状の、好適には鎖状又は環状の;置換又は非置換の炭化水素基を有するものが挙げられる。
式(vii)中のR6又はR7と式(ix)中のR8又はR9は、これらのうち複数(例えば、2つ、3つ、4つ)の基において、それらに含まれる原子が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0031】
本実施形態で好適に用いられるポリフェニレンエーテル(A)としては、式(vii)において、Wが、-C(R10)(R11)-であり、ここで、R4、R5、R6、R10、R11が、水素原子であり、R7が、-C(=O)(C1837)のエステル基であるもの、が挙げられる。
本実施形態で好適に用いられるポリフェニレンエーテル(A)としては、式(vii)において、Wが、-C(R10)(R11)-であり、ここで、R4、R5、R6、R7、R10が、水素原子であり、R11が、フェニル基であるもの、が挙げられる。
本実施形態で好適に用いられるポリフェニレンエーテル(A)としては、式(vii)において、Wが、-C(R10)(R11)-であり、ここで、R4、R5、R6、R11が、水素原子であり、R7が、カルボキシル基であり、R10が、カルボキシル基であり、R7とR10とが酸無水物を形成しているもの、が挙げられる。
【0032】
また、特に、ポリフェニレンエーテル(A)は、カーボンブラックとポリフェニレンエーテル(A)の前記キャッピング化合物反応構造との相互作用を高めてカーボンブラックの分散性を良好にする観点から、化学式(1)、(2)、及び(3)からなる群から選ばれる1つ以上の構造のユニットを含むことが好ましい。
【化24】
【化25】
【化26】
なお、化学式(1)及び(2)のR1、R2は、各々独立して水素以外の置換基であり、炭素数1以上の置換基であることが好ましく、炭素数1以上の鎖状又は環状アルキル基であることがより好ましい。化学式(3)のR3、R4は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、アミノアルキル基、アリールアミノ基からなる群から選ばれる基であり、R3及びR4は、それらに含まれる炭素原子が互いに結合して環状構造を形成してもよい。R3、R4は、炭素数1以上のアルキル基、アリール基、又は環状アルキル基であることが好ましい。但し、式(3)は、芳香環の不飽和二重結合以外に不飽和二重結合を実質的に有さない。
【0033】
また、化学式(2)に示す構造のユニットに対する化学式(1)に示す構造のユニットの割合が、0~30モル%であることが好ましく、0~28モル%であることがさらに好ましい。
【0034】
-ポリフェニレンエーテル(A)の合成方法-
ポリフェニレンエーテル(A)は、既に公知の重合方法によって合成された通常のポリフェニレンエーテルの重合粉体を広く用いることが可能である。
中でも、下記の化学式(4)、(5)で表される、末端基及び側鎖基を有する構造のユニットを有する前駆体ポリフェニレンエーテルを用いることが効率の面から好ましい。前駆体ポリフェニレンエーテルが下記の化学式(4)及び/又は(5)の構造のユニットを有することにより、十分に効率よく本実施の形態のポリフェニレンエーテル(A)を得ることができる(具体的には、ポリフェニレンエーテル(A)を製造するにあたって、前駆体ポリフェニレンエーテルを経由することにより、化学式(4)、(5)の構造中のCH2-Y部分が選択的に開裂してキャッピング化合物との置換反応が生じるので、本実施の形態のポリフェニレンエーテル(A)を十分に効率よく得ることができる)。
【0035】
更に、当該前駆体ポリフェニレンエーテルが、ポリフェニレンエーテル鎖中において、当該構造のユニットの合計を、ポリフェニレンエーテル鎖を構成するモノマーユニット100個当たり0.05~10個含有することが好ましく、0.1~10個含有することがより好ましく、0.1~3.0個含有することが更に好ましく、0.1個~1.0個含有することが特に好ましい。
【0036】
【化27】
【化28】
(化学式(4)及び(5)のYはN原子又はO原子を表し、Ziは、炭素数が1~20個の環状若しくは鎖状(直鎖状、分岐状)の飽和又は不飽和炭化水素基を表す。また、式中のi、nは1から2の整数であり、Z1とZ2は同じでも異なってもよく、それらが結合するYと共に互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
【0037】
化学式(4)及び(5)の構造のユニットを含有する、前駆体ポリフェニレンエーテルの製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリフェニレンエーテルの重合反応時に、アミン類、アルコール類及びモルフォリン等の(a1)化合物を、添加して反応させる方法や、重合した非置換ポリフェニレンエーテルを例えばトルエン等のポリフェニレンエーテル可溶性溶媒中、例えば20~60℃で、好ましくは40℃で撹拌し、上記の(a1)化合物を添加して反応させる方法が挙げられる。
【0038】
(a1)化合物としては、特に限定されるものではないが、具体的にはn-プロピルアミン、iso-プロピルアミン、n-ブチルアミン、iso-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ラウリルアミン、ベンジルアミン等の1級アミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-iso-ブチルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ピペリジン、2-ピペコリン等の2級アミン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、iso-ブタノール、sec-ブタノール等のアルコール、及びモルフォリン等が挙げられる。
【0039】
本実施の形態のポリフェニレンエーテル(A)を得る方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリフェニレンエーテルの重合の際に後述するキャッピング化合物を投入し、ポリフェニレンエーテルを重合する方法や、ポリフェニレンエーテルの重合の際に後述するキャッピング化合物が置換されたモノマーを少量添加してポリフェニレンエーテルを重合する方法や、非置換ポリフェニレンエーテルとキャッピング化合物を溶融混練して反応させる方法が挙げられる。具体的には、ポリフェニレンエーテルの重合時に上記の(a1)化合物を添加して反応させた後に、キャッピング化合物を反応させる方法や、ポリフェニレンエーテルの重合時に上記の(a1)化合物が置換された2,6-ジメチルフェノールを少量添加して反応させた後、キャッピング化合物と溶融混練して反応させる方法や、前駆体ポリフェニレンエーテルを得た後、当該前駆体ポリフェニレンエーテルとキャッピング化合物とを溶融混練して反応させる方法(すなわち、例えば、前駆体ポリフェニレンエーテルを用いて樹脂組成物を溶融混練して製造する際に、前駆体ポリフェニレンエーテルとキャッピング化合物とを溶融混練する)が挙げられる。
【0040】
ここで、ポリフェニレンエーテルの末端基及び/又は側鎖基のキャッピングに用いられるキャッピング化合物としては、前述したように、ポリフェニレンエーテルの末端基及び/又は側鎖基と反応性を有してキャッピングするものであれば特に制限されるものではないが、例えば、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸等のカルボン酸化合物や、無水マレイン酸、無水酢酸等の酸無水物化合物、ステアリルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル化合物、ホスホン酸ジメチル、ホスホン酸ジオクチル、ホスホン酸ジフェニル、ホスホン酸ジオレイル、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド等のホスホン酸化合物等が挙げられる。
【0041】
キャッピング化合物としては、特に、ポリフェニレンエーテル末端基及び/又は側鎖基との反応性や、樹脂組成物の十分な性能発現の観点から、ホスホン酸化合物が好ましく、中でも、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイドが特に好ましい。
【0042】
ポリフェニレンエーテル(A)は、一種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0043】
本実施の形態に用いるポリフェニレンエーテル(A)の還元粘度は、0.25~0.55dL/gの範囲が好ましい。より好ましくは0.30~0.50dL/g、更に好ましくは0.35~0.45dL/g、特に好ましくは0.36~0.40dL/gの範囲である。ポリフェニレンエーテルの還元粘度は、十分な機械物性、特に引張強度保持の観点から0.25dL/g以上が好ましく、成形加工性と成形体の成形外観との観点から0.55dL/g以下が好ましい。
なお、本実施の形態において、還元粘度は、クロロホルム溶媒を用いて30℃で0.5g/dL溶液で測定し得られた値である。
【0044】
本実施の形態に用いるポリフェニレンエーテル(A)の、押出等による加熱加工前(重合粉体性状の)重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn値)は、好ましくは1.2~3.0であり、より好ましくは1.5~2.5、更に好ましくは1.8~2.3である。該Mw/Mn値は、樹脂組成物の成形加工性の観点から1.2以上が好ましく、樹脂組成物の機械物性、特に引張強度保持の観点から3.0以下が好ましい。
ここで、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnとは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定による、ポリスチレン換算分子量から得られるものである。
【0045】
本実施の形態の樹脂組成物において、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計質量を100質量%とした場合に、(A)成分の含有量は、30~90質量%である。好ましくは45~85質量%であり、更に好ましくは60~75質量%である。十分な耐熱性付与の観点から30質量%以上の含有が望ましく、十分な成形加工性の保持と成形外観保持の観点から90質量%以下の含有が好ましい。
【0046】
<ポリスチレン(B)>
本実施の形態の樹脂組成物に用いられるポリスチレン(B)(本明細書において、単に「(B)成分」と称する場合がある)は、スチレンを、ゴム質重合体の存在下又は非存在下に重合して得られる重合体である。
ポリスチレン(B)としては、ゴム強化されていないポリスチレンが、成形品の表面外観の観点から好ましい。
【0047】
本実施の形態の樹脂組成物に用いられるポリスチレン(B)は、ISO1133に準拠し、温度200℃、荷重5kgで測定したメルトフローインデックスが、5~15g/10minであることが好ましく、より好ましくは6~14g/10minであり、更に好ましくは7~13g/10minである。樹脂組成物の十分な成形流動性の観点から、5g/10min以上が好ましく、成形体の成形性、靱性保持の観点から、15g/10min以下が好ましい。
【0048】
本実施の形態の樹脂組成物において、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計質量を100質量%とした場合に、(B)成分の含有量は、4~45質量%である。好ましくは10~35質量%であり、更に好ましくは15~25質量%である。十分な成形流動性付与の観点から4質量%以上の含有が望ましく、十分な耐熱性と成形品の靱性保持の観点から45質量%以下の含有が好ましい。
【0049】
<ブロック共重合体(C)>
本実施の形態に用いられる、結合芳香族ビニル化合物量が62~75質量%の芳香族ビニル化合物と水添共役ジエン化合物とのブロック共重合体(C)(本明細書において、単に「(C)成分」と称する場合がある)について説明する。
【0050】
前記(C)成分は、まず、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物を不活性な炭化水素溶媒中で有機リチウム化合物を開始剤としてアニオン重合することによって、重合体溶液状態で、水素添加前の共重合体を製造することができる。
【0051】
得られる共重合体中の共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との組成比は、好ましくは38:62~25:75であり、より好ましくは35:65~30:70である。
【0052】
ブロック共重合体の製造方法としては、例えば、特公昭36-19286号公報、特公昭43-17979号公報、特公昭48-2423号公報、特公昭49-36957号公報、特公昭57-49567号公報,特公昭58-11446号公報等に記載された方法が挙げられる。
【0053】
これらの方法により、ブロック共重合体は、下記の一般式:
A-(B-A)n、A-(B-A)n-B
B-(A-B)n+1、(A-B)n
(上式において、Aは、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックであり、Bは、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックである。ここで、AブロックとBブロックとの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。nは、1以上の整数であり、一般的には1~5である。)で表される線状ブロック共重合体、或いは、下記の一般式:
〔(A-B)k〕m+2-X、〔(A-B)k-A〕m+2-X
〔(B-A)k〕m+2-X、〔(B-A)k-B〕m+2-X
(上式において、A及びBは前記と同じであり、k及びmは、それぞれ1以上の整数であり、一般的には1~5である。Xは例えば四塩化ケイ素、四塩化スズ、エポキシ化大豆油等のポリエポキサイド、ポリハロゲン化炭化水素、カルボン酸エステル、多塩基酸エステル、多塩基酸無水物、多官能イソシアネート、多官能アルデヒド、多官能ケトン、ポリビニル芳香族化合物等のカップリング剤の残基、又は多官能有機リチウム化合物等の開始剤の残基を示す。)で表されるブロック共重合体として得られる。
【0054】
尚、上記一般式において、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックとは芳香族ビニル化合物を90質量%以上含有する芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合部との共重合体ブロック及び/又は芳香族ビニル化合物単独重合体ブロックを示し、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとは、共役ジエン化合物を50質量%を越える量で含有する、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体ブロック及び/又は共役ジエン化合物単独重合体ブロックを示す。
共重合体ブロック中の芳香族ビニル化合物は、均一に分布していても、又はテーパー状に分布していてもよい。又、該共重合体部分は芳香族ビニル化合物が均一に分布している部分、及び/又は、芳香族ビニル化合物がテーパー状に分布している部分が、それぞれ複数個共存していてもよい。
【0055】
この様にして得られたブロック共重合体は、結合芳香族ビニル化合物量が62~75質量%であり、好ましくは65~70質量%、より好ましくは65~68質量%である。
【0056】
本実施の形態の(C)成分の製造に用いられる芳香族ビニル化合物としてはスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1-ジフェニルエチレン等が挙げられ、特に好ましくはスチレンである。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
【0057】
本実施の形態(C)成分の製造に用いられる共役ジエン化合物としては、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられ、特に好ましくは1,3-ブタジエン、イソプレンである。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
【0058】
次に、上記で得られた芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体を水添反応(水素添加反応)により、共役ジエン化合物ブロックを部分的に、或は選択的に水添することができる。
本発明の水添反応の水添率(水素添加率)は、任意に選択することができるが、耐熱劣化性及び耐候性向上の観点から、共役ジエンに基づく脂肪族二重結合を、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上水添することである。
尚、水添率は核磁気共鳴装置等により測定できる。
【0059】
水添反応に使用される触媒としては、(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒と、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機塩又はアセチルアセトン塩と有機Al等の還元剤とを用いるいわゆるチーグラー型触媒、或いはRu、Rh等の有機金属化合物等のいわゆる有機錯触媒等の均一触媒が知られている。
具体的な方法としては特公昭42-8704号公報、特公昭43-6636号公報に記載された方法、好ましくは特公昭63-4841号公報及び特公昭63-5401号公報に記載された方法により、不活性触媒中で水素添加反応触媒の存在下で水素添加して水添重合体溶液を得る方法が挙げられる。
【0060】
この様にして得られた、芳香族ビニル化合物と水添共役ジエン化合物とのブロック共重合体(C)は、結合芳香族ビニル化合物量が62~75質量%の範囲内であり、好ましくは65~70質量%である。結合芳香族ビニル化合物量は、組成物の十分な成形外観保持(成形品流動末端部やウェルド周辺部に発生するブツの隠蔽性)の観点から62質量%以上であり、成形品の十分な靭性付与の観点から75質量%以下である。
【0061】
本実施の形態に用いられる、結合芳香族ビニル化合物量が62~75質量%の芳香族ビニル化合物と水添共役ジエン化合物とのブロック共重合体(C)を構成する繰り返し単位の配列の様式は、リニアタイプでもラジアルタイプでもよい。また、芳香族ビニル化合物ブロック及び水添共役ジエン化合物ブロックにより構成されるブロック構造は、二型、三型、及び四型のいずれであってもよい。中でも、本実施の形態に所望の効果を十分に発揮し得る観点から、特に好ましくは、ポリスチレン-ポリ(エチレン・ブチレン)-ポリスチレン構造で構成される三型のリニアタイプのブロック共重合体である。
【0062】
本実施の形態に用いられる、結合芳香族ビニル化合物量が62~75質量%の芳香族ビニル化合物と水添共役ジエン化合物とのブロック共重合体(C)は、ISO1133に準拠し、温度200℃、荷重5kgで測定したメルトフローインデックスが5~15g/10minの範囲内であることが好ましく、より好ましくは6~14g/10minであり、更に好ましくは7~13g/10minである。樹脂組成物の十分な成形流動性及び、成形体の表面外観の改良の観点から、5g/10min以上が好ましく、成形体の成形性、靱性保持の観点から、15g/10min以下が好ましい。
【0063】
本実施の形態の樹脂組成物において、(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計質量を100質量とした場合に、結合芳香族ビニル化合物量が62~75質量%の芳香族ビニル化合物と水添共役ジエン化合物とのブロック共重合体(C)の含有量は、6~25質量%であり、好ましくは7~24質量%であり、更に好ましくは9~20質量%である。十分な成形流動性及び靱性付与の観点から6質量%以上の含有が望ましく、十分な耐熱性と成形外観保持の観点から25質量%以下の含有が好ましい。
【0064】
<カーボンブラック(D)>
本実施の形態の樹脂組成物に用いられるカーボンブラック(D)(本明細書において、単に「(D)成分」と称する場合がある)は、本実施の形態の樹脂組成物に黒色の着色(漆黒性、遮光性)を付与すると共に、薄肉成形時に成形品ウェルド部に生じる樹脂本来の色むらの隠蔽、更には、成形品の靱性を改良するための成分として配合される。
【0065】
カーボンブラック(D)の平均一次粒子径は、5~45nmが好ましく、より好ましくは10~40nm、更に好ましくは10~35nmである。成形体への漆黒性付与の観点から45nm以下であることが望ましく、樹脂組成物中への分散性と成形体の色むら隠蔽の観点から5nm以上が好ましい。
尚、カーボンブラック(D)の平均一次粒子径は、ASTM D3849(カーボンブラックの標準試験法-電子顕微鏡法による形態的特徴付け)に記載の手順によりアグリゲート拡大画像を取得し、このアグリゲート画像から単位構成粒子として3000個の粒子径を測定して、算術平均して得られるである。
【0066】
カーボンブラック(D)は、1種を単独で用いてもよく、平均一次粒子径の異なる種類のものを2種以上併用してもよい。また、予めポリスチレンと予備混練した、所謂マスターバッチ化したものを用いてもよい。
【0067】
本実施の形態の樹脂組成物において、カーボンブラック(D)の含有量は、本願樹脂組成物を100質量%として、0.06~0.40質量%である。好ましくは0.08~0.30質量%であり、より好ましくは0.10~0.30質量%であり、更に好ましくは0.10~0.25質量%である。十分な漆黒性、遮光性、色むら隠蔽性付与等の観点から0.06質量%以上の含有が望ましく、成形品流動末端部及びウェルド部周辺の十分な凹凸抑制の観点から0.40質量%以下の含有が好ましい。
【0068】
本実施の形態の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物において、樹脂組成物を100質量%とした場合に、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の合計含有量を95質量%以上とすることが、本願の目的を達成する上で好ましい。当該合計含有量は、97質量%以上、98質量%以上、99質量%以上としてもよく、100質量%であってもよい。
【0069】
<その他の樹脂>
本実施の形態の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、更には、樹脂組成物の耐熱性、機械物性並びに成形品の表面外観等を著しく低下させない範囲において、その他の樹脂を含有してもよい。
その他の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂や、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルメタクリレート共重合体等のポリオレフィン系共重合体や、ポリアミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルサルホン等が挙げられる。
その他の樹脂の合計含有量は、十分な成形品外観及び物性保持の観点から、樹脂組成物100質量%に対して5質量%未満であることが好ましい。その他の樹脂成分の合計含有量の上限は、例えば、4質量%、3質量%、2質量%、1質量%のいずれであってもよく、下限は、0質量%、0.01質量%、0.05質量%、0.1質量%のいずれであってもよい。
【0070】
<その他の添加剤>
本実施の形態の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、更には、樹脂組成物の耐熱性及び機械物性、並びに成形品の表面外観等を著しく低下させない範囲において、上記その他の樹脂以外のその他の添加剤として、酸化防止剤、滑剤、離型剤等を含有してもよい。
その他の添加剤の、各々の含有量としては、樹脂組成物100質量%に対して、0.001~2質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01~1質量部%であり、更に好ましくは0.05~0.5質量%である。十分な添加効果発現の観点から、上記のその他の添加剤は、0.001質量%以上の含有が好ましく、十分な成形品外観及び物性保持の観点から2質量%以下の含有が好ましい。
【0071】
<樹脂組成物の物性>
本実施の形態の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、ISO1133に準拠して、温度280℃、荷重10kgで測定したメルトフローインデックス(MI)の値が、10~80g/10minであることが好ましい。十分な成形流動性の観点から10g/10min以上であることが好ましく、十分な靱性、耐衝撃性、機械物性保持の観点から、80g/10min以下であることが好ましい。
【0072】
本実施の形態の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、ISO527に準拠して、引張速度5mm/minで測定した引張伸度(引張呼び歪み)の、試験本数5本の平均値が5%以上であることが、十分な靭性保持の観点から好ましい。より好ましくは10~50%であり、更に好ましくは10~40%である。十分な靭性保持の観点から10%以上がより好ましく、機械物性とのバランス保持の観点から50%以下がより好ましい。
【0073】
本実施の形態の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、ISO527に準拠して、引張速度5mm/minで測定した引張強度、試験本数5本の平均値が65MPa以上であることが、成形品の離型性及び耐久性の観点から好ましい。より好ましくは70~80MPaであり、更に好ましくは75~80MPaである。
【0074】
[樹脂組成物の製造方法]
本実施の形態の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、前記(A)、(B)、(C)、(D)成分、及びその他の樹脂等の原材料を、溶融混練の条件を適宜調節して、溶融混練することにより製造することができる。
前記樹脂組成物を製造するための前記(A)、(B)、(C)、(D)成分、及びその他の樹脂等の溶融混練の条件については、樹脂組成物中において、特に制限されるものではないが、本実施の形態の所望の効果を十分に発揮し得る樹脂組成物を大量且つ安定的に得るという観点から、スクリュー径25~90mmの二軸押出機を用いることが好適である。
【0075】
押出機のバレル構成としては、特に限定されることなく、複数のバレルを含み、所望のバレルにおいて、固体搬送ゾーン、溶融体搬送ゾーン、混練ゾーン等を形成するものとしてよく、所望のバレルに、真空ベントや大気ベント等のベントを設けてよく、トップフィーダー、サイドフィーダー、液状添加装置等の原料投入口(原料供給口)を設けてよい。
【0076】
一例として、TEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53);ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)を用いた場合に、シリンダー温度270~330℃、スクリュー回転数150~700rpm、押出レート150~600kg/h、及びベント真空度11.0~1.0kPaの条件で溶融混練する方法が挙げられる。
【0077】
押出樹脂温度は、250~350℃とすることが好ましい。押出樹脂温度のより好ましい範囲は290~345℃であり、更に好ましい範囲は300~340℃である。押出樹脂温度は、本願用途で求められる効果の十分な発現と押出性の観点から250℃以上が好ましく、350℃以下が好ましい。
【0078】
本実施の形態に用いる黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を、大型(スクリュー径40~90mm)の二軸押出機を用いて製造する際に注意すべきは、押出樹脂ペレット中に押出時に生じた、前記(A)成分から生じるゲルや炭化物が混入することで、成形品の表面外観や輝度感を低下させる原因となる場合もある。そこで、前記(A)成分を最上流の第一原料供給口(例えば、トップフィード)から投入して、最上流の第一原料供給口におけるシューター内部の酸素濃度を8容量%以下に設定しておくことが好ましく、より好ましくは5容量%以下であり、更に好ましくは3容量%以下である。
【0079】
酸素濃度の調節は、原料貯蔵ホッパー内を十分に窒素置換して、原料貯蔵ホッパーから押出機の原料投入口までの、フィードライン中での空気の出入りがないように密閉した上で、窒素フィード量の調節、ガス抜き口の開度を調節することで可能である。
【0080】
本実施の形態の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の製造において、前記(D)成分の樹脂組成物中での十分な混和性の観点から、前記(D)成分を、前記(A)成分と共に押出機の最上流の第一原料供給口(例えば、トップフィード)から投入して、溶融混練することが好ましい。更には、樹脂組成物の十分な靱性発現の観点から、前記(C)成分もまた、前記(A)成分と押出機の最上流の第一原料供給口(例えば、トップフィード)から投入して、溶融混練することが好ましい。
【0081】
本実施の形態の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の製造において、前記(B)成分は、押出機バレル途中にある第二原料供給口(例えば、サイドフィード)から供給されることが好ましい。即ち、前記(A)成分が押出機の最上流の第一原料供給口(例えば、トップフィード)から供給されて溶融混練された後に、前記(B)成分が第二原料供給口(例えば、サイドフィード)から供給されて、前記(A)成分と前記(B)成分とが混合され、溶融混練されることが、樹脂成分の熱劣化抑制と本願用途で求められる効果の十分な発現の観点から好ましい。
ここで、前記(B)成分の供給位置は、押出機のバレル全長を100%として、最上流の原料投入口(第一原料供給口)から40~80%離れた位置であることが好ましく、45~75%の位置がより好ましく、50~70%の位置が更に好ましい。上記供給位置は、前記(B)成分の熱劣化抑制の観点から、40%以上が好ましく、前記(A)成分と前記(B)成分との十分な溶融混練の観点から、80%以下であることが好ましい。
【0082】
[成形品]
本実施の形態の、黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる成形品は、上述の樹脂組成物を成形することにより得ることができる。
【0083】
前記樹脂組成物の成形方法としては、以下に制限されないが、例えば、射出成形、押出成形、真空成形及び圧空成形が好適に挙げられ、特に成形外観及び輝度感の観点から、射出成形がより好適に用いられる。
【0084】
前記樹脂組成物の成形時の成形温度は、バレル設定最高温度250~340℃の範囲内で行なうことが好ましく、より好ましい範囲は270~330℃であり、更により好ましくは280~320℃である。十分な成形加工性の観点から、成形温度は、250℃以上が好ましく、樹脂の熱劣化抑制の観点から340℃以下が好ましい。
【0085】
前記樹脂組成物の成形時の金型温度は、40~170℃の範囲内で行なうことが好ましく、より好ましくは80~150℃であり、更により好ましくは80~130℃の範囲内である。十分な成形品外観保持の観点から、金型温度は、40℃以上が好ましく、成形安定性の観点から170℃以下であることが好ましい。
【0086】
本実施の形態における好適な成形品としては、高温高せん断条件下での薄肉成形によって生じる流動末端部やウェルド周辺部の微細なブツや色むらによる外観不良が著しく改良されて、成形流動性、漆黒性、靱性に優れた無塗装で高外観の薄肉黒色成形体として使用可能であることから、家電OA機器部品や、電機電子機器、自動車用途、各種工業用製品等に使用される加飾成形部品等が挙げられる。
【実施例
【0087】
以下、本実施の形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに制限されるものではない。
【0088】
実施例及び比較例に用いた物性の測定方法及び原材料を以下に示す。
【0089】
[外観評価用平板の作製]
後述の実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のペレットを、120℃の熱風乾燥機中で4時間乾燥した後、金型表面を#5000で磨き上げた寸法120mm×120mm×1mm厚みの両端フィルムゲート鏡面金型を備え付けた射出成形機(IS-100GN、東芝機械社製)により、シリンダー温度330℃、金型温度120℃、射出圧力(ゲージ圧)100MPa、射出速度(パネル設定値)90%で成形して外観評価用平板を得た。
【0090】
[物性の測定方法]
1.ウェルド部の色むらの評価(目視判定)
上記で得られた外観評価用平板を、蛍光灯照明下で、1.5メートル離れた距離から観察して、ウェルド部色むら評価を目視で判定した。ウェルド部の色むらが認められたものを×、認められなかったものを○と判定した。
評価基準としては、○であるものが、成形ウェルド部の色むらが隠蔽されて目立ちにくく外観が良好で、本願樹脂組成物として好適に使用可能と評価した。
【0091】
2.漆黒性(遮光性)評価(目視判定)
上記で得られた外観評価用平板を、光照射中のプロジェクター(機種:インテリジェントプロジェクタiP-750〔日本アビオニクス社製〕、最大輝度4500ルーメン)の照射光レンズ前面を覆うように設置して、光の透過の有無を目視で判定した。平板から透けて光が認められるものを×、光の透過が認められないものを○と判定した。
評価基準としては、○の判定のものが、漆黒性が良好で、本願樹脂組成物として好適に使用可能と評価した。
【0092】
3.ウェルド部のブツの評価(目視判定)
上記で得られた外観評価用平板のウェルド部周辺の微細なブツの有無を、水銀灯照明下で、目視で判定した。微細なブツが認められるものを×、認められないものを○と判定した。
評価基準としては、○の判定のものが、外観が良好で、本願樹脂組成物として好適に使用可能と評価した。
【0093】
4.引張伸度(靱性)の測定
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のペレットを、120℃の熱風乾燥機中で4時間乾燥した。乾燥後の樹脂組成物を、ISO物性試験片金型を備え付けた射出成形機(IS-80EPN、東芝機械社製)により、シリンダー温度320℃、金型温度120℃、射出圧力50MPa(ゲージ圧)、射出速度200mm/sec、射出時間/冷却時間=20sec/20secに設定し、ISO3167、多目的試験片A型のダンベル成形片を成形した。得られたダンベル成形片について、ISO527に準拠し、引張速度5mm/minの条件で、引張伸度(引張呼び歪み)(%)を23℃で測定した。ダンベル成形片5本について測定し、その平均値を求めた。
評価基準としては、引張伸度が高い値であるほど靱性に優れていると判定し、測定値が5%以上の場合に、本願樹脂組成物として好ましいと評価した。
【0094】
5.引張強度の測定
上記の4.と同様に成形して得られたダンベル成形片について、ISO527に準拠し、引張速度5mm/minの条件で、引張強度(MPa)を23℃で測定した。ダンベル成形片5本について測定し、その平均値を求めた。
評価基準としては、引張強度の測定値が65MPa以上の場合に、本願樹脂組成物として好ましいと評価した。
【0095】
[原材料]
<ポリフェニレンエーテル(A)>
(A-1)
還元粘度0.38dL/g(0.5g/dLクロロホルム溶液、30℃、ウベローデ粘度計で測定)、数平均分子量15300、100ユニットあたりの末端OH基:0.72個、100ユニットあたりのN,N-ジブチルアミノメチル基:0.43個のポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)粉体(PPE-1)を溶液重合により作製した。
上記の(PPE-1)を99.5質量部と、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(株式会社三光製)0.5質量部とをタンブラーミキサーで混合し、この粉体混合物をTEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53;ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流の第一原料供給口(トップフィード)から供給して、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数400rpm、押出レート400kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)の条件で溶融混練して、ペレット(A-1)を得た(以下、「A-1」ということもある)。
この(A-1)をクロロホルムに溶解した後、メタノールで再沈し、ポリフェニレンエーテル成分を抽出した。その後、60℃で4時間真空乾燥しポリフェニレンエーテル(A-1)のパウダーを得た。
得られたポリフェニレンエーテルパウダーは、31P-NMR(single plus法)及び1H-NMRにて同定することができ、キャッピング化合物のメチル基への付加量は、1H-NMRの2.8~3.6ppmに現れるピークの積分値を、ポリフェニレンエーテルの芳香環由来である6.0~7.0ppmのピークの積分値で割ることにより得られ、ポリフェニレンエーテル鎖中のモノマー100ユニットあたり、下記の化学式(6)、(7)の構造を合わせて0.13個含むことを確認した。
更に、末端水酸基への付加量は、13C-NMRにて、146.4ppm(OH基にキャッピング化合物が付加して形成されたエーテル結合の酸素原子に隣接した炭素)のピークの積分値[A]、145.4ppm(OH基に隣接した炭素)の積分値[B]を用いて、下記数式(2)で求めることができ、ポリフェニレンエーテルを構成するモノマーユニット100個あたり、下記化学式(8)の構造を0.03個含むことを確認した。また、1H-NMRにて、3.5~5.5ppmに新たなダブレットピークが生じないことを確認した。
ポリフェニレンエーテルを構成するモノマーユニット100個あたりのキャッピング化合物の付加数(個)=(前駆体ポリフェニレンエーテルを構成するモノマーユニット100個あたりの末端OHの数)×{[A]/([A]+[B])}・・・(2)
また、化学式(7)に対する化学式(6)の割合は、31P-NMRにて、化学式(7)由来の38~42ppmのピークの積分値に対する、化学式(6)由来の34~36ppmのピークの積分値の割合を計算することにより求められ、27モル%であることが分かった。
【化29】
【化30】
【化31】
【0096】
31P-NMR 測定条件
装置 :JEOL RESONANCE ECS400
観測核 :31
観測周波数 :161.8MHz
パルス幅 :45°
待ち時間 :5秒
積算回数 :10,000回
溶媒 :CDCl3
試料濃度 :20w/v%
化学シフト基準:85%リン酸水溶液(外部基準)0ppm
1H-NMR 測定条件
装置 :JEOL―ECA500
観測核 :1
観測周波数 :500.16MHz
測定法 :Single-Plus
パルス幅 :7μsec
待ち時間 :5秒
積算回数 :512回
溶媒 :CDCl3
試料濃度 :5w%
化学シフト基準:TMS 0.00ppm
【0097】
13C-NMR 測定条件
装置 :Bruker Biospin Avance 600
観測核 :13C
観測周波数 :150.9MHz
測定法 :逆ゲートデカップリング法
パルス幅 :30°
待ち時間 :10秒
積算回数 :2,000回
溶媒 :CDCl3
試料濃度 :20w/v%
化学シフト基準:TMS 0ppm
以下、ポリフェニレンエーテルの31P-NMR、1H-NMR、13C-NMRの測定は、上記の条件で行った。
【0098】
(A-2)
上記の(PPE-1)を99.0質量部と、ホスホン酸ジオクチル(城北化学製)1.0質量部とをタンブラーミキサーで混合し、この粉体混合物をTEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53;ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流の第一原料供給口(トップフィード)から供給して、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数400rpm、押出レート400kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)の条件で溶融混練して、ペレット(A-2)を得た(以下、「A-2」ということもある)。
この(A-2)をクロロホルムに溶解した後、メタノールで再沈し、ポリフェニレンエーテル成分を抽出した。その後、60℃で4時間真空乾燥しポリフェニレンエーテル(A-2)のパウダーを得た。
得られたポリフェニレンエーテルパウダーは、31P-NMR(single plus法)及びH-NMRで同定することができ、キャッピング化合物の付加量は、1H-NMRの2.8~3.6ppmに現れるピークの積分値を、ポリフェニレンエーテルの芳香環由来である6.0~7.0ppmのピークの積分値で割ることにより得られ、ポリフェニレンエーテルのモノマー100ユニットあたり、化学式(9)、(10)の構造を合わせて0.25個含むことを確認した。
得られたポリフェニレンエーテルパウダーは、13C-NMRにて同定することができ、キャッピング化合物の付加量は、13C-NMRにて、146.4ppm(OH基にキャッピング化合物が付加して形成されたエーテル結合の酸素原子に隣接した炭素)のピークの積分値[A]、145.4ppm(OH基に隣接した炭素)の積分値[B]を用いて、上記数式(2)で求めることができ、ポリフェニレンエーテルを構成するモノマーユニット100個あたり、化学式(11)の構造を0.25個含むことを確認した。また、H-NMRにて、3.5~5.5ppmに新たなダブレットピークが生じないことを確認した。
また、化学式(10)に対する化学式(9)の割合は、31P-NMRにて、化学式(10)由来の38~42ppmのピークの積分値に対する、化学式(9)由来の34~36ppmのピークの積分値の割合を計算することにより求められ、25モル%であることが分かった。
【化32】
【化33】
【化34】
【0099】
(A-3)
上記の(PPE-1)97質量部と、無水マレイン酸3質量部とを、タンブラーミキサーで混合し、この粉体混合物を二軸押出機(コペリオン社製、ZSK25押出機)の第一原料供給口(トップフィード)から供給して、バレル温度300℃、スクリュー回転数300rpm、ベント真空度7.998kPa(60Torr)の条件で溶融混練して、ペレット(A-3)を得た(以下、「A-3」ということもある)。
この(A-3)をクロロホルムに溶解した後、メタノールで再沈し、ポリフェニレンエーテル成分を抽出した。その後、60℃で4時間真空乾燥しポリフェニレンエーテル(A-3)のパウダーを得た。得られたポリフェニレンエーテルパウダーは、1H-NMRで同定することができ、1H-NMRの2.5~4.0ppmに現れるピークの積分値を、ポリフェニレンエーテルの芳香環由来である6.0~7.0ppmのピークの積分値で割ることにより、ポリフェニレンエーテルのモノマー100ユニット当たり、化学式(12)の構造を0.3個有することを確認した。
【化35】
【0100】
(A-4)
上記の(PPE-1)98.5質量部と、ステアリルアクリレート(東京化成社製)1.5質量部とを、タンブラーミキサーで混合し、この粉体混合物を二軸押出機(コペリオン社製ZSK25押出機)の第一原料供給口(トップフィード)から供給して、バレル温度300℃、スクリュー回転数300rpm、ベント真空度7.998kPa(60Torr)の条件で溶融混練して、ペレット(A-4)を得た(以下、「A-4」ということもある)。
この(A-4)をクロロホルムに溶解した後、精製水を添加し、分液操作で有機層と水層とに分離して、有機層を回収した。この有機層をメタノールで再沈して、ポリフェニレンエーテル成分を抽出した。その後、60℃で4時間真空乾燥しポリフェニレンエーテル(A-4)のパウダーを得た。得られたポリフェニレンエーテルパウダーは、1H-NMRで同定することができ、1H-NMRの2.5~4.0ppmに現れるピークの積分値を、ポリフェニレンエーテルの芳香環由来である6.0~7.0ppmのピークの積分値で割ることにより、ポリフェニレンエーテルのモノマー100ユニット当たり、化学式(13)の構造を0.4個有することを確認した。
【化36】
【0101】
<ポリスチレン(B)>
(B-1)
ISO1133に準拠し、温度200℃、荷重5kgで測定したメルトフローインデックスが7.0g/10minのゼネラルパーパスポリスチレン(以下、「B-1」ということもある)を用いた。
【0102】
<ブロック共重合体(C)>
(C-1)
結合スチレン量67質量%で、ポリブタジエンブロック部分の水素添加率が98%の、ポリスチレンブロック-水添ポリブタジエンブロック-ポリスチレンブロックの構造を有して、ISO1133に準拠し、温度200℃、荷重5kgで測定したメルトフローインデックスが8.3g/10minの、三型タイプの水添ブロック共重合体(C-1)(以下、「C-1」ということもある)を用いた。
(C-2)
結合スチレン量62質量%で、ポリブタジエンブロック部分の水素添加率が98%の、ポリスチレンブロック-水添ポリブタジエンブロック-ポリスチレンブロック-水添ポリブタジエンブロックの構造を有して、ISO1133に準拠し、温度200℃、荷重5kgで測定したメルトフローインデックスが4.2g/10minの、四型タイプの水添ブロック共重合体(C-2)(以下、「C-2」ということもある)を用いた。
(C-3)
結合スチレン量75質量%で、ポリブタジエンブロック部分の水素添加率が98%の、ポリスチレンブロック-水添ポリブタジエンブロック-ポリスチレンブロック-水添ポリブタジエンブロックの構造を有して、ISO1133に準拠し、温度200℃、荷重5kgで測定したメルトフローインデックスが10.5g/10minの、四型タイプの水添ブロック共重合体(C-3)(以下、「C-3」ということもある)を用いた。
【0103】
<カーボンブラック(D)>
(D-1)
平均一次粒子径16nmのカーボンブラック(以下、「D-1」ということもある)を用いた。
(D-2)
平均一次粒子径30nmのカーボンブラック(以下、「D-2」ということもある)を用いた。
【0104】
<その他の原材料>
(SEBS-1)
結合スチレン量60質量%で、ポリブタジエンブロック部分の水素添加率が98%の、ポリスチレンブロック-水添ポリブタジエンブロック-ポリスチレンブロックの構造を有して、ISO1133に準拠し、温度200℃、荷重5kgで測定したメルトフローインデックスが8.3g/10minの、三型タイプの水添ブロック共重合体(SEBS-1)(以下、「SEBS-1」ということもある)を用いた。
【0105】
[比較例1]
(PPE-1)68質量%と、(C-1)12質量%と、(D-1)0.3質量%とを、TEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53);ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流の第一原料供給口(トップフィード)から供給して、(B-1)19.7質量%を、バレル8に設置した第二原料供給口(サイドフィード)から供給して、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数450rpm、押出レート400kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)、トップフィード部集合ホッパー内部の酸素濃度3.8容量%、押出機ノズル出口で測定した押出樹脂温度330℃、の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を含有してなる成形品の評価結果を下記表1に示す。
【0106】
[実施例1]
前記(PPE-1)を(A-1)に置き換えた以外は、比較例1と同様の条件で樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を含有してなる成形品の評価結果を下記表1に示す。
【0107】
[実施例2]
前記(D-1)を(D-2)に置き換えて、トップフィード部集合ホッパー内部の酸素濃度が3.6容量%、押出機ノズル出口で測定した押出樹脂温度が328℃であった以外は、実施例1と同様の条件で樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を含有してなる成形品の評価結果を下記表1に示す。
【0108】
[実施例3]
前記(A-1)を(A-2)に置き換えて、トップフィード部集合ホッパー内部の酸素濃度が3.7容量%、押出機ノズル出口で測定した押出樹脂温度が328℃であった以外は、実施例1と同様の条件で樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を含有してなる成形品の評価結果を下記表1に示す。
【0109】
[実施例4]
前記(A-1)を(A-3)に置き換えて、トップフィード部集合ホッパー内部の酸素濃度が3.5容量%、押出機ノズル出口で測定した押出樹脂温度が332℃であった以外は、実施例1と同様の条件で樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を含有してなる成形品の評価結果を下記表1に示す。
【0110】
[実施例5]
前記(A-1)を(A-4)に置き換えて、トップフィード部集合ホッパー内部の酸素濃度が3.5容量%、押出機ノズル出口で測定した押出樹脂温度が332℃であった以外は、実施例1と同様の条件で樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を含有してなる成形品の評価結果を下記表1に示す。
【0111】
[比較例2]
(A-3)92質量%と、(B-1)2.7質量%と、(C-1)5質量%と、(D-1)0.3質量%とを、TEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53);ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流の第一原料供給口(トップフィード)から供給して、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数450rpm、押出レート400kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)、トップフィード部集合ホッパー内部の酸素濃度3.8容量%、押出機ノズル出口で測定した押出樹脂温度346℃、の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を含有してなる成形品の評価結果を下記表1に示す。
【0112】
[比較例3]
(A-3)25質量%と、(C-1)25質量%と、(D-1)0.3質量%とを、TEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53);ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流の第一原料供給口(トップフィード)から供給して、(B-1)49.7質量%を、バレル8に設置した第二原料供給口(サイドフィード)から供給して、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数450rpm、押出レート400kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)、トップフィード部集合ホッパー内部の酸素濃度2.7容量%、押出機ノズル出口で測定した押出樹脂温度284℃、の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を含有してなる成形品の評価結果を下記表1に示す。
【0113】
[実施例6]
(A-1)82質量%と、(C-1)7質量%と、(D-2)0.2質量%とを、TEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53);ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流の第一原料供給口(トップフィード)から供給して、(B-1)10.8質量%を、バレル8に設置した第二原料供給口(サイドフィード)から供給して、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数450rpm、押出レート400kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)、トップフィード部集合ホッパー内部の酸素濃度4.0容量%、押出機ノズル出口で測定した押出樹脂温度336℃、の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を含有してなる成形品の評価結果を下記表1に示す。
【0114】
[実施例7]
実施例6の、(B-1)10.8質量%を10.9質量%に増やし、(D-2)0.2質量%を0.1質量%に減らし、押出機ノズル出口で測定した押出樹脂温度が335℃であった以外は、実施例6と同様の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を含有してなる成形品の評価結果を下記表1に示す。
【0115】
[比較例4]
実施例6の、(B-1)10.8質量%を10.95質量%に増やし、(D-2)0.2質量%を0.05質量%に減らし、押出機ノズル出口で測定した押出樹脂温度が335℃であった以外は、実施例6と同様の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を含有してなる成形品の評価結果を下記表1に示す。
【0116】
[比較例5]
実施例6の、(B-1)10.8質量%を11質量%に増やし、(D-2)0.2質量%を抜き、トップフィード部集合ホッパー内部の酸素濃度が3.9容量%、押出機ノズル出口で測定した押出樹脂温度が332℃であった以外は、実施例6と同様の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を含有してなる成形品の評価結果を下記表1に示す。
【0117】
[比較例6]
実施例6の、(B-1)10.8質量%を10.5質量%に減らし、(D-2)0.2質量%を0.5質量%に増やし、トップフィード部集合ホッパー内部の酸素濃度が3.9容量%、押出機ノズル出口で測定した押出樹脂温度が332℃であった以外は、実施例6と同様の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を含有してなる成形品の評価結果を下記表1に示す。
【0118】
[実施例8]
(A-1)45質量%と、(C-1)22質量%と、(D-1)0.4質量%とを、TEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53);ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流の第一原料供給口(トップフィード)から供給して、(B-1)32.6質量%を、バレル8に設置した第二原料供給口(サイドフィード)から供給して、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数450rpm、押出レート400kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)、トップフィード部集合ホッパー内部の酸素濃度2.3容量%、押出機ノズル出口で測定した押出樹脂温度310℃、の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を含有してなる成形品の評価結果を下記表1に示す。
【0119】
[比較例7]
実施例8の、(B-1)32.6質量%を26.6質量%に減らし、(C-1)22質量%を28質量%に増やし、トップフィード部集合ホッパー内部の酸素濃度が2.2容量%であった以外は、実施例8と同様の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を含有してなる成形品の評価結果を下記表1に示す。
【0120】
[比較例8]
実施例8の、(B-1)32.6質量%を49.6質量%に増やし、(C-1)22質量%を5質量%に減らし、トップフィード部集合ホッパー内部の酸素濃度が2.2容量%、押出機ノズル出口で測定した押出樹脂温度が304℃であった以外は、実施例8と同様の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を含有してなる成形品の評価結果を下記表1に示す。
【0121】
[実施例9]
(A-1)68質量%と、(C-2)12質量%と、(D-2)0.3質量%とを、TEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53);ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流の第一原料供給口(トップフィード)から供給して、(B-1)19.7質量%を、バレル8に設置した第二原料供給口(サイドフィード)から供給して、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数450rpm、押出レート400kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)、トップフィード部集合ホッパー内部の酸素濃度3.7容量%、押出機ノズル出口で測定した押出樹脂温度328℃、の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を含有してなる成形品の評価結果を下記表1に示す。
【0122】
[実施例10]
(A-1)68質量%と、(C-3)12質量%と、(D-2)0.3質量%とを、TEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53);ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流の第一原料供給口(トップフィード)から供給して、(B-1)19.7質量%を、バレル8に設置した第二原料供給口(サイドフィード)から供給して、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数450rpm、押出レート400kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)、トップフィード部集合ホッパー内部の酸素濃度3.7容量%、押出機ノズル出口で測定した押出樹脂温度326℃、の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を含有してなる成形品の評価結果を下記表1に示す。
【0123】
[比較例9]
前記(C-3)を(SEBS-1)に置き換えて、押出機ノズル出口で測定した押出樹脂温度が330℃であった以外は、実施例10と同様の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を含有してなる成形品の評価結果を下記表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
表1に示すように、比較例1の樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテルが本願(A)成分とは異なるため、樹脂組成物中でのカーボンブラック(D)の分散が十分でなく、成形品ウェルド部の色むらの隠蔽やブツの抑制が十分ではなく、本願での使用は困難であると判定された。
実施例1~10の樹脂組成物は、いずれも(A)成分及び(B)成分の組成が本願の請求範囲内であるため、成形品ウェルド部周辺のブツが著しく抑制されて、色むら隠蔽性と遮光性も十分に付与されており、また靱性も良好な結果であることから本願において十分良好に使用可能である。
比較例2の樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の組成が本願の請求範囲外であり、特に、(A)成分の配合量が本願規定の上限を超えるため、押出時の樹脂温度が高めになったためか、成形品のウェルド部周辺のブツが認められ、本願での使用は困難であると判定された。
比較例3の樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分の組成が本願の請求範囲外であり、(A)成分の配合量が本願規定の下限を下回り、(B)成分の配合量が本願規定の上限を超えるため、結果として成形品ウェルド部周辺の色むらが十分に隠蔽されず、また靱性も十分ではなく、本願における使用は困難であると判定された。
比較例4の樹脂組成物は、(D)成分の含有量が本願の請求範囲の下限値を下回るため、成形品ウェルド部周辺の色むら隠蔽と漆黒性(遮光性)が十分ではなく、本願における使用は困難であると判定された。
比較例5の樹脂組成物は、(D)成分が配合されていないため、成形品ウェルド部周辺の色むら隠蔽と漆黒性(遮光性)が十分ではなく、更に靱性も十分で無いため、本願における使用は困難であると判定された。
比較例6の樹脂組成物は、(D)成分の含有量が本願の請求範囲の上限を上回っているため、結果として成形品ウェルド部周辺のブツが認められて、本願における使用は困難であると判定された。
比較例7の樹脂組成物は、(C)成分の配合量が本願の請求範囲の上限を上回っているため、結果として成形品ウェルド部周辺の色むら隠蔽が十分で無く、本願における使用は困難であると判定された。
比較例8の樹脂組成物は、(B)成分の配合量が本願の請求範囲の上限を上回り、(C)成分の配合量が本願の請求範囲の下限を下回っているため、結果として靱性が十分で無く、本願における使用は困難であると判定された。
比較例9の樹脂組成物は、ブロック共重合体成分の結合スチレン量が(C)成分の請求範囲の下限を下回る水添ブロック共重合体を使用したため、成形品ウェルド部周辺のブツが認められて、本願における使用は困難であると判定された。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の黒色ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、成形流動性に優れ、漆黒性、靱性に優れた無塗装で高外観の薄肉成形体を成形することが可能であることから、家電OA機器部品や、電機電子機器、自動車用途、各種工業製品等の加飾成形部品に良好に利用可能である。