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特許7364346急冷システム及び急冷システム用プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】急冷システム及び急冷システム用プロセス
(51)【国際特許分類】
   F28F 27/02 20060101AFI20231011BHJP
   F28F 9/26 20060101ALI20231011BHJP
   F28F 1/38 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
F28F27/02 C
F28F9/26
F28F1/38
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019043222
(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2019158332
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】10 2018 002 086.0
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599101944
【氏名又は名称】ボルジヒ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100106895
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 洋一
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアーン ドゥルス
(72)【発明者】
【氏名】カルステン ビルク
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0030254(US,A1)
【文献】特開2016-114349(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0169589(US,A1)
【文献】特開平04-257692(JP,A)
【文献】特開2013-204995(JP,A)
【文献】特開2008-145097(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0121383(US,A1)
【文献】特開2003-279215(JP,A)
【文献】特開2000-088478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 27/02
F28F 9/26
F28F 1/38
F28D 7/16
C07C 4/04
C07C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次熱交換器すなわちPQE(10) と、二次熱交換器すなわちSQE(11) と、三次熱交換器すなわちTQE(12)とを直列に接続して備えた、液状出発原料およびガス状出発原料を用いて分解炉を運転するためのプラント用急冷システムであって、
ガス供給モード及び液体供給モードについてのデュアルオペレーション用移送ライン交換器すなわちTLX-D(26)が三次熱交換器として配置され、構成されていること、
TLX-D (26)は、TLX-Dガス供給ライン(24)を介して二次熱交換器すなわちSQE(11)に直列に接続されていること、および
TLX-D (26)は、TLX-D供給水ドレインライン(34) とTLX-Dライザー (46) とTLX-D降水管 (38)とを介して、供給水ライン(49)に接続されている蒸気ドラム(59)と接続されており、SQE(11)は、SQE降水管(52)およびSQEライザー(57)を介して、供給水ライン(49)に接続されている蒸気ドラム(59)と接続されていること、
を特徴とする急冷システム。
【請求項2】
前記TLX-D (26)は中に配置してTLX-D供給水供給ラインバルブ (31)を有するTLX-D供給水供給ライン(30)を備えていること、および
TLX-D供給水ドレインラインバルブ (35)は前記TLX-D供給水ドレインライン(34)に配置され、TLX-D降水管バルブ(39)は前記TLX-D降水管(38)に配置され、TLX-Dライザーバルブは前記TLX-Dライザー(46)に配置されており、前記TLX-D降水管(38) および前記TLX-Dライザー (46)を介して自然循環による前記TLX-D (26)の冷却がなされること、
を特徴とする請求項1に記載の急冷システム。
【請求項3】
前記TLX-D (26)は中に設置して設けたTLX-D供給水供給ラインバルブ (31)を有するTLX-D供給水供給ライン(30)に接続されており、且つ中に設置したTLX-D供給水ドレインラインバルブ (35)を有する、前記配置されたTLX-D供給水ドレインライン(34)を介して前記蒸気ドラム(59)に接続されており、強制循環による前記TLX-D (26)の冷却は前記配置されたTLX-D供給水供給ライン(30)および前記TLX-D供給水ドレインライン(34)を介してなされること、
を特徴とする請求項1に記載の急冷システム。
【請求項4】
前記TLX-D (26)はバッフル(62)を互いにある距離を設けて配置して有していること、
前記バッフル(62)は前記水平に位置したTLX-D (26)のTLX-D 中心線 (67)に対して直角に、TLX-Dジャケット(28)により囲まれたTLX-D内部(29)に配置されていること、および
前記バッフル(62)の配置と位置は液体供給においてさらに蒸気を生じるように予め規定されていること、
を特徴とする請求項1に記載の急冷システム。
【請求項5】
第1バッフル(63)はTLX-D供給水入口パイプ(32)に対して予め規定した距離を設けて前記TLX-D(26)のTLX-D内部(29)に設置されていること、
前記第1バッフル(63)は前記ジャケット側で供給水流を180°偏向させるものであり、最大高さが予め規定したプロセス条件に応じてTLX-Dジャケット内径(68)の10%~40%、好ましくは15%~25%の範囲である、自由供給水流断面(60)を有すること、
第2バッフル (64)は前記第1バッフル(63)に対して予め規定した距離で前記TLX-D (26)の前記TLX-D内部(29)に配置され、供給水を180°偏向し且つ自由供給水流断面(60)を有するものであること、および
TLX-D供給水出口パイプ(33)に至るまでの前記TLX-D (26)の長さに応じて追加のバッフルアレイが設けられていること、
を特徴とする請求項4に記載の急冷システム。
【請求項6】
予め規定したプロセス条件での前記TLX-D (26)の対応する長さはガス側および水/蒸気側で予め規定されていること、および
配置されたバッフル(62)の数は予め規定したプロセス条件に応じて変えることができ、各バッフル間の距離は100mm~800 mmの範囲内にあるか、あるいは300mm~600mmに限定されていること、
を特徴とする請求項5に記載の急冷システム。
【請求項7】
前記水平に位置するTLX-D(26)を通って流れる供給水の場合のTLX-D中央線(67)に対して直角に前記TLX-D (26)に配置されている前記バッフル(62)は、上部において平坦な構成を有すること、および
自由体積または蒸気空間(61)は、TLX-Dライザーパイプ (43, 44, 45)の下に構成されていること、
を特徴とする請求項4に記載の急冷システム。
【請求項8】
前記バッフル(62)の平坦化は、一方では、供給水プレヒーターとしての前記TLX-D (26)の操作中のガス供給モードで望ましくないバイパスフローが生じない程度に小さく、且つ他方では、発生する量の蒸気はエバポレーターとしての操作中に液体供給で完全に排出される程度に大きいこと、および
最大平坦高さは約5mm~40mm、好ましくは10mm~15mmの範囲で構成されていること、
を特徴とする請求項7に記載の急冷システム。
【請求項9】
一次熱交換器すなわちPQE(10) と、二次熱交換器すなわちSQE(11) と、三次熱交換器すなわちTQE(12)とを直列に接続して備えた、液状出発原料およびガス状出発原料を用いて分解炉を運転するための急冷システム用プロセスであって、
ガス供給モード及び液体供給モードについてのデュアルオペレーション用移送ライン交換器すなわちTLX-D (26)はデュアルオペレーション用三次熱交換器として構成および接続されていること、および
TLX-D (26) はガス状出発原料の場合に供給水プレヒータ―としてガス供給モードで運転され、液状出発原料の場合にはエバポレーターとして液体供給モードで運転され、ガス供給モードでは、TLX-D供給水供給ラインバルブ(31) および供給水バルブ(35)は開かれ、TLX-D 降水管バルブ(39)およびTLX-Dライザーバルブ(47)は閉められること、
を特徴とする急冷システム用プロセス。
【請求項10】
供給水は向流原理でジャケット側においてガス状分解ガスの流れ方向と反対に導かれ、開かれた前記TLX-D供給水供給ラインバルブ(31)を介して前記TLX-D (26)において予め規定された温度まで冷却されること、
を特徴とする請求項9に記載の急冷システム用プロセス。
【請求項11】
前記導かれた供給水はTLX-D (26)において分解ガスから放出される熱により約150°C~約300°Cの温度に加熱されること、
を特徴とする請求項10に記載の急冷システム用プロセス。
【請求項12】
前記液体供給モードでは前記TLX-D(26)において前記TLX-D降水管バルブ(39)および前記TLX-Dライザーバルブ(47)は開かれること、および
供給水は設置された供給水供給ライン(49)を通って蒸気ドラム(59)に導かれること、
を特徴とする請求項9に記載の急冷システム用プロセス。
【請求項13】
前記TLX-D(26)は前記急冷システムの飽和蒸気システムまたは冷却システムに一体化され、水は前記蒸気ドラム(59)からTLX-D降水管(38)および前記開かれたTLX-D降水管バルブ(39)を通って導かれ、前記TLX-D(26)に設置された降水管(40, 41, 42) に分配されること、
を特徴とする請求項12に記載の急冷システム用プロセス。
【請求項14】
水はジャケット側で前記蒸気ドラム(59)から前記TLX-D (26)を通って、前記TLX-D 降水管(40, 41, 42)と反対側に配置されたTLX-Dライザー管(43, 44, 45)まで流れ、前記TLX-D(26)を通って流れる分解ガスは有意には冷却されず、前記分解ガス入口温度の15%以下、好ましくは10%以下にまで冷却されること、
を特徴とする請求項13に記載の急冷システム用プロセス。
【請求項15】
飽和蒸気温度の範囲よりも高い、50°Cに近い、好ましくは30°C未満の分解ガス入口温度が水の流れの特殊ガイドにより前記TLX-D (26)において到達すること、
10 t/h未満の蒸気、好ましくは5t/h未満の少量の蒸気が、TLX-Dジャケット(28)により水側またはジャケット側で発生すること、および
前記蒸気は前記TLX-Dライザー管(43, 44, 45)を通って、TLX-Dライザー(46)を通って、開かれたTLX-Dライザーバルブ(47)およびTLX-D蒸気ドラムライザー管(48)を通って前記蒸気ドラム (59)に搬送されること、
を特徴とする請求項14に記載の急冷システム用プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文の特徴を有する急冷システムに関し、より詳しくは、一次熱交換器と、二次熱交換器と、三次熱交換器とを直列に接続して備えた、液状出発原料およびガス状出発原料を用いて分解炉を運転するためのプラント用急冷システム及び急冷システム用プロセスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレン炉の運転用分解炉(「分解炉」とも称される)でさらに処理される種々の出発原料がある。とりわけ、このような出発原料は、高エチレン含量を有するナフサ(液状出発原料(液体供給物)とも称する)またはガス(ガス状出発原料(ガス供給物)とも称する)である。両方の出発原料は、分解炉で高温に加熱され、続いて直ぐに急冷システム(QSとも略称される)で冷却される。
【0003】
出発原料の物性が異なるので、出発原料に応じて特殊な構成の急冷システムすなわちQSが必要とされる。出発原料としてのガスは、ガスの凝縮は著しく低い温度で開始するので、例えば、約900°Cから350°Cに冷却される液状出発原料よりもさらに下方、例えば、約900°Cから150°Cに冷却されることがある。
【0004】
その結果、供給ガスについての急冷システムは、多くの場合、一次熱交換器(PQEと略称される)と二次熱交換器(SQEと略称される)と三次熱交換器(TQEと略称されることもある)からなる。
【0005】
液体供給モード用急冷システムは、PQEとSQEのみを直列に接続して構成されている。供給水プレヒータまたはボイラー供給水プレヒータ―として常に使用されるTQEは、このような配置で設置されず、PQEおよびSQEは各々エバポレーターとして接続され、それ自体で運転される。
【0006】
ガス供給モードのための急冷システムの運転モードについて可能な冷却器配置の一例を、以下で図面を参照して説明する。
【0007】
さらに、同様に、液体供給モードのための急冷システムの運転モードについて可能な冷却器配置の一例を、以下で図面を参照して説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】ドイツ特許公開公報第102014018261号
【0009】
ガス供給モードおよび液体供給モードについての急冷システムの運転モードでの分解炉のすでに使用されているプロセスの別の一例を以下に図面を参照して説明する。
【0010】
液状出発原料およびガス状出発原料の両方で急冷システムを運転できるためには、PQEとSQEとTQEとを設置しなければならない。ガス側でのTQEは、液体供給運転モードの場合、バイパスにより迂回されなければならない。
【0011】
以下で図面に準じて説明する技術水準によるガス供給および液体供給についての急冷システムの現在の運転モードは、このようなバイパス回路で実施される。TQEのガス入口パイプの前に設けられたガス入口バルブは開かれ、TQEのバイパスに配置されたバイパスバルブはガス供給運転の場合に閉じられる。液体供給運転の場合には、ガス入口バルブは閉められ、バイパスバルブは開かれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
信頼性、修理の容易性およびメンテナンスの容易性の観点で、技術的配置と運転モードはこのような急冷システムについて定められた要件を十分に満たすことができないこととは別に、技術水準に準じたガス供給モードおよび液体供給モードについての急冷システムの使用されている配置の欠点は、バイパス制御を有するこのような配置は極めて大きな空間を必要とし、したがって高コストを生じるようになっていることである。
【0013】
本発明の目的は、信頼性およびコストの観点で技術装置および運転モードについての高い必要要件を改善し、且つ必要な修理およびメンテナンス作業の面で確実に簡単にできる、液状およびガス状出発原料を用いた分解炉を運転するための急冷システムおよび急冷システム用プロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、一般的に、略して三次熱交換器として配置され、構成されているデュアルオペレーション用移送ライン交換器、すなわちTLX-Dによって、TLX-Dガス供給ラインを介して二次熱交換器、すなわちSQEに直列に接続されているTLX-Dによって、及び、TLX-D供給水ドレインラインとTLX-Dライザー とTLX-D降水管とを介して供給水ラインに接続された蒸気ドラムと接続されているTLX-D、及びSQE降水管とSQEライザーとを介して供給水ラインに接続された蒸気ドラムと接続されているSQE によって、達成される。

【0015】
また、TLX-Dは中に配置してTLX-D供給水供給ラインバルブを有するTLX-D供給水供給ラインを備えている。さらに、TLX-D供給水ドレインラインバルブはTLX-D供給水ドレインラインに配置され、TLX-DライザーバルブはTLX-Dライザーに配置され、TLX-D降水管バルブがTLX-D降水管に配置されており、そこでは自然循環によるTLX-Dの冷却が好ましくは前記TLX-D降水管 および前記TLX-Dライザーを介して供給される。
【0016】
TLX-Dが中に設置して設けたTLX-D供給水供給ラインバルブを有するTLX-D供給水供給ラインに接続されており、且つ中に設置した前記TLX-D供給水ドレインラインバルブを有する、前記配置されたTLX-D供給水ドレインラインを介して前記蒸気ドラムに接続されており、強制循環による前記TLX-Dの冷却は前記配置されたTLX-D供給水供給ラインおよび前記TLX-D供給水ドレインラインを介してなされることも有利な点である。
【0017】
前記TLX-Dはバッフルを互いにある距離を設けて配置して有し、前記バッフルは前記水平に位置したTLX-DのTLX-D 中心線に対して直角に、前記TLX-Dジャケットにより囲まれた前記TLX-D内部に配置され、および前記バッフルの配置と位置は液体供給においてさらに蒸気を生じるように予め規定されていて、前記TLX-Dがデュアルオペレーション用に有利に配置され、構成されている。
【0018】
別の利点は、第1バッフルは前記TLX-D供給水入口パイプに対して予め規定した距離を設けて前記TLX-DのTLX-D内部に設置されていること、前記第1バッフルは前記ジャケット側で供給水流を180°偏向させるものであり、最大高さが予め規定したプロセス条件に応じて前記TLX-Dジャケット内径の10%~40%、好ましくは15%~25%の範囲である、自由供給水流断面を有していることによるものである。さらに、第2バッフルは前記第1バッフルに対して予め規定した距離でTLX-Dの前記TLX-D内部に配置され、供給水を180°偏向し且つ自由供給水流断面を有している。さらに、前記TLX-D供給水出口パイプに至るまでの前記TLX-Dの長さに応じて追加のバッフルアレイが設けられている。
【0019】
別の特徴は、予め規定したプロセス条件でのTLX-Dの対応する長さは前記ガス側および前記水/蒸気側で予め規定されていること、および配置されたバッフルの数は予め規定したプロセス条件に応じて変えることができ、各バッフル間の距離は100mm~800mmの範囲内にあり、好ましくは300mm~600mmに限定されていることにある。
【0020】
別の利点は、TLX-D中心線に対して直角で、前記水平に位置するTLX-Dを通って流れる場合の供給水の場合にバッフルが、上部において平坦な構成を有すること、そして自由体積または蒸気空間は、TLX-Dライザーパイプの下に構成されていることにある。
【0021】
別の利点は、TLX-Dの場合には、バッフルの平坦化は、一方では、供給水プレヒーターとしてのTLX-Dの操作中のガス供給モードで望ましくないバイパスフローが生じない程度に小さく、且つ他方では、発生する量の蒸気はエバポレーターとしての操作中に液体供給で完全に排出される程度に大きいこと、および最大平坦高さは約5mm~40mm、好ましくは10mm~15mmの範囲で構成されていることにある。
【0022】
ガス状出発原料と同様に液状出発原料を用いて分解炉を運転するための急冷システム用プロセスにおいて、ガス供給モード及び液体供給モードについてのデュアルオペレーション用移送ライン交換器すなわちTLX-Dはデュアルオペレーション用三次熱交換器として構成および接続されていること、およびTLX-Dはガス状出発原料の場合に供給水プレヒータ―としてガス供給モードで運転され、液状出発原料の場合にはエバポレーターとして液体供給モードで運転され、ガス供給モードでは、前記TLX-D供給水供給ラインバルブおよび供給水バルブは開かれ、前記 TLX-D降水管バルブおよびTLX-Dライザーバルブは閉められることがとりわけ有利であることが判明した。
【0023】
プロセスにおける別の利点は、供給水は向流原理でジャケット側においてガス状分解ガスの流れ方向と反対に導かれ、開かれたTLX-D供給水供給ラインバルブを介して前記TLX-Dにおいて予め規定された温度まで冷却されることにある。
【0024】
別の利点は、前記導かれた供給水はTLX-Dにおいて分解ガスから放出される熱により約150°C~約300°Cの温度に加熱されることにより達成される。
【0025】
また、液体供給モードではTLX-D において前記TLX-D降水管バルブおよび前記TLX-Dライザーバルブは開かれること、および供給水は設置された供給水供給ラインを通って前記蒸気ドラムに導かれることが有利であることも判明した。
【0026】
別の利点は、前記TLX-Dは前記急冷システムの飽和蒸気システムまたは冷却システムに一体化され、水は前記蒸気ドラムから前記TLX-D降水管および前記開かれたTLX-D降水管バルブを通って導かれ、前記TLX-Dに設置された降水管に分配されることである。
【0027】
さらに、水はジャケット側で前記蒸気ドラムから前記TLX-Dを通って、前記TLX-D 降水管と反対側に配置されたTLX-Dライザー管まで流れ、前記TLX-Dを通って流れる分解ガスは有意には冷却されず、前記分解ガス入口温度の15%以下、好ましくは10%以下にまで冷却されることが有利である。
【0028】
特別な利点は、飽和蒸気温度の範囲よりも高い、50°Cに近い、好ましくは30°C未満の分解ガス入口温度が水の流れの特殊ガイドによりTLX-Dにおいて到達すること、10 t/h未満の蒸気、好ましくは5t/h未満の少量の蒸気が、TLX-Dジャケットにより前記水側またはジャケット側で発生すること、および前記蒸気は前記TLX-Dライザー管を通って、前記TLX-Dライザーを通って、開かれたTLX-Dライザーバルブおよび前記TLX-D蒸気ドラムライザー管を通って前記蒸気ドラムに搬送されることによるものである。
【0029】
TLX-Dがガス供給モードおよび液体供給モードにおける運転モードの両方に使用できるように、そしてTLX-Dがこのようなデユアルオペレーション用供給水プレヒータ―とエバポレーターの両方として設けられるように、TLX-Dはデユアルオペレーション用に有利に配置、構成される。
【0030】
TLX-Dの有利な配置の場合には、運転モードの制御は水/蒸気循環を介しておこない、PQEおよびSQEからのガス供給のガス側を介することなくおこなわれる。
【0031】
本発明のさらなる詳細および利点を、図面に示されている典型的な実施態様に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】技術水準によるガス供給用急冷システムの運転モードのためのクーラーシステムの概略配置図である。
図2】技術水準による液体供給用急冷システムの運転モードのためのクーラーシステムの概略配置図である。
図3】技術水準によるバイパスを用いたガス供給および液体供給用急冷システムの運転モードのためのクーラーシステムの概略配置図である。
図4】本発明によるガス供給および液体供給用急冷システムの運転モードのためのクーラーシステムの配置の好ましい典型的実施態様を示す図である。
図5】本発明によるガス供給および液体供給用急冷システムの運転モードのためのTQEの構成の好ましい典型的実施態様を示す図(側面図及び上面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、ガス供給モード用急冷システムの運転モードのためのクーラーシステムの従来技術の概略配置図である。一次熱交換器PQE10と、二次熱交換器SQE11と、三次熱交換器TQE12とが直列に接続されている。PQE10およびSQE11はエバポレーターとして接続されており、TQE12は水プレヒータ―として運転される。分解ガスは、示されている矢印13の方向に、分解炉(図示せず)からPQE10、SQE11およびTQE12に供給される。
【0034】
図2は、液体供給モード用急冷システムの運転モードのためのクーラーシステムの従来技術の概略配置図である。提案のPQE10およびSQE11は直列で接続され、エバポレーターとして接続運転される。水プレヒータ―またはボイラー供給水プレヒータ―(BFWとも略称される)として常に運転されるTQEは設置されない。分解炉(図示せず)からの分解ガスは、示されている矢印13の方向にPQE10およびSQE11に供給される。
【0035】
図3は、ガス供給モードおよび液体供給モード用急冷システムの運転モードのためのクーラーシステムの従来技術の概略配置図である。提案のPQE10およびSQE11および TQE12は直列に接続されている。PQE10およびSQE11はエバポレーターとして運転され、一方TQE12は水プレヒータ―として運転される。バイパスライン16は、水平に配置されたTQE12の矢印の方向に、TQEガス入口パイプ14とTQEガス出口パイプ15との間に並列に接続されている。バイパスライン16はTQE12のTQEガス入口パイプ14に配置されているTQE供給バルブ17の前で分岐している。TQEバイパスバルブ18は、バイパスライン16に配置されている。分解炉(図示せず)からの分解ガスは、示されている矢印13の方向にPQE10、SQE11およびTQE12に供給される。
【0036】
有利なガス供給モードおよび液体供給モード用急冷システムの配置の好ましい典型的な実施態様は、図4に概略示されている。PQE10は、より明瞭とする目的で概略を図示してある。矢印の方向に分解ガスを二次熱交換器すなわちSQE11(略称)のSQEガス入口パイプ21の方向に誘導する、PQE10からでる矢印により示されているライン20が示されている。
【0037】
水平に配置されたSQE11は、分解ガス側に直列に、デユアルオペレーション用の同様に水平に配置した移送ライン交換器26(さらにTLX-D26と略称される)と接続されている。冷却される分解ガスは、設けられたライン20を通ってSQEガス入口パイプ21に到達し、SQEガス出口パイプ23までSQE11を通って流れる。分解ガスは、配置されたTLX-Dガス供給ライン24を通ってTLX-D26のTLX-Dガス出口パイプ27までTLX-Dガス入口パイプ25を通って流れる。
【0038】
SQE11はSQE降水管52およびSQEライザー57を通って冷却側または水/蒸気側またはジャケット側で蒸気ドラム59に接続されている。SQE11の冷却は、SQE降水管52およびSQEライザー57を通って自然循環で生じる。
【0039】
TLX-D26は、中にTLX-D降水管バルブ39を配置して有する設置されたTLX-D降水管38 を介して、および中にTLX-Dライザーバルブ47を有する設置されたTLX-Dライザー46を介して蒸気ドラム59にさらに接続されている。TLX-D26の冷却は、TLX-D降水管38およびTLX-Dライザー46を介した自然循環で生じる。
【0040】
さらに、TLX-D26は、中にTLX-D給水供給ラインバルブ31を有する設けられたTLX-D給水供給ライン30に接続され、および中にTLX-D給水ドレインラインバルブ35を設置して有する設けたTLX-D給水ドレインライン34を介して蒸気ドラム59に接続されている。TLX-D26の冷却は、配置されたTLX-D給水供給ライン30およびTLX-D給水ドレインライン34を介した強制循環により生じる。
【0041】
TLX-D26の機能様式のより詳細な説明のためには、SQE11は以下ではさらには検討しない。
【0042】
TLX-D26は、好ましくは2つの異なる変更態様で運転してよい。処理される分解ガスに応じて、TLX-D26は、ガス状出発原料の場合に運転のガス供給モードにおいて供給水プレヒータ―として、および液状出発原料の場合に運転の液体供給モードにおいてエバポレーターとして運転される。このような異なる運転モードのより詳細な説明は、導入部ですでになされたのでさらにはおこなわない。
【0043】
次に供給水プレヒータ―として運転されるTLX-D26の運転のガス供給モードにおいて、TLX-D水供給ラインバルブ31およびTLX-D供給水ドレインラインバルブ35は開かれ、TLX-D降水管バルブ39およびTLX-Dライザーバルブ47は閉じられる。すなわち、TLX-D降水管38および TLX-Dライザー46はブロックされ、もはや動作状態にはない。
【0044】
供給水の供給またはボイラー供給水の供給は、ポンプ(図示せず)により、TLX-D26のTLX-D供給水入口パイプ32に開放TLX-D給水供給ラインバルブ31を介してTLX-D給水供給ライン30を通って実施される。これにより供給水は、向流原理においてジャケット側で、すなわち、分解ガスの流れ方向と反対に、TLX-D供給水出口パイプ33までTLX-D26を通って流れる。TLX-Dガス入口パイプ25からTLX-Dガス出口パイプ27までパイプ側でTLX-D26を通って流れる分解ガスは、向流原理においてTLX-D26を通って供給水のとりわけ効果的な流れの誘導で予め規定された温度まで効率的に冷却される。排出された熱は、誘導された供給水により吸収され、供給水は約150°C、最大で300°Cの温度まで加熱される。加熱された供給水は、設置されたTLX-D供給水出口パイプ33を介してTLX-D26を出て、配置されたTLX-D給水ドレインライン 34 を通り、開放TLX-D給水ドレインラインバルブ35を介して、蒸気ドラム59に設置されたTLX-D蒸気ドラム供給水パイプ36を通って蒸気ドラム59に導入される。
【0045】
次にエバポレーターとして運転されるTLX-D26の液体供給運転モードにおいて、TLX-D降水管バルブ39およびTLX-Dライザーバルブ47は開かれ、TLX-D給水供給ラインバルブ31およびTLX-D給水ドレインラインバルブ35は閉められる。すなわち、TLX-D供給水供給ライン30およびTLX-D供給水ドレインライン34はブロックされ、動作しない。蒸気ドラム59への供給水の供給は、設置された給水供給ライン49および蒸気ドラムに配置された供給水パイプ50を介して生じる。必要な供給水は、液体供給運転モードの場合に外部ソースから蒸気ドラム59に供給される。このように供給水を外部から供給することは、TLX-D26の運転モードに何の影響もなく、したがって、これ以上言及しない。
【0046】
TLX-D26は、急冷システムの飽和蒸気システムまたは冷却システムに一体化される。蒸気ドラム59からの水は、TLX-D降水管パイプ接続部37通って、TLX-D降水管38を介し、開放TLX-D降水管バルブ39を介して、その後TLX-D26に設置されたTLX-D降水菅40, 41, 42に分配される。水は、TLX-D降水管40, 41, 42からジャケット側でTLX-D26を通って反対のTLX-Dライザー管43, 44, 45まで流れる。TLX-D26を通って流れるとき、TLX-Dガス入口パイプ25からパイプ側でTLX-D26を通ってTLX-Dガス出口パイプ27まで流れる分解ガスは、分解ガス入口温度は水の飽和蒸気温度の範囲より高い、50°C付近、好ましくは30°C未満であるので、有意には冷却されず、分解ガス入口温度の15%以下の冷却、好ましくは10%未満の冷却である。したがって、TLX-Dライザー管43, 44, 45を通って、TLX-Dライザー46を通って、開かれたTLX-Dライザーバルブ47およびTLX-D蒸気ドラムライザー管48を通って蒸気ドラム59に搬送される10 t/h未満、好ましくは5t/h未満の少量の蒸気は、TLX-D26の水側またはジャケット側で発生する。TLX-D26は、好ましい構成により極めて低い出力で運転できる。このような運転モードであるので、従来のTQEとは異なりバイパスにより迂回することを必要とせずに、凝縮温度より低い温度に分解ガスが冷却されるのを回避される。
【0047】
好ましい典型的な実施態様の利点は、ガス側バイパス回路を設ける必要がなく、且つそれに関連するコストがかかる空間を設ける必要がないので、コストが有意に低下できることである。
【0048】
従来のTQE と比較したときのTLX-D26の技術的な有意な変化は、デユアルオペレーションの構成にある。
【0049】
典型的な実施態様において、ガス供給モードにおける供給水プレヒータ―として運転されるTLX-D用TLX-D供給水入口パイプ32およびTLX-D供給水出口パイプ33は、好ましくはTLX-D26に配置される。さらに、TLX-D 降水管40, 41, 42およびTLX-Dライザー 管43, 44, 45は、各々液体供給運転モードにおけるエバポレーターとして運転されるTLX-D 26について設置されるのが好ましい。
【0050】
水平に配置されたTLX-D26のTLX-D供給水入口パイプ32およびTLX-D供給水出口パイプ33は、TLX-Dジャケット28にそれぞれ底部側および上部側でそれぞれTLX-Dガス出口パイプ27の前およびTLX-Dガス入口パイプ25の後ろに各々設けられる。供給水はTLX-Dジャケット28の底側に設置されたTLX-D供給水入口パイプ 32を介して供給され、予熱された供給水はTLX-Dジャケット28の上側に配置されたTLX-D供給水出口パイプ33を介して排出される。
【0051】
TLX-D降水管40, 41, 42の数と水平位置およびTLX-Dライザー管43, 44, 45の数と位置は、必要とする蒸気の発生に基づいて予め規定される。すなわち、TLX-Dライザー管およびTLX-D降水管の数は変えることができる。この場合、水はTLX-Dジャケット28の底側に設置されたTLX-D降水管40, 41, 42を介して供給され、水/蒸気はTLX-Dジャケットの上側に配置された水平に位置するTLX-D 26のTLX-Dライザー管43, 44, 45を介して排出される。
【0052】
TLX-D26のTLX-Dジャケット28より包囲されているTLX-D内部29における配置と位置は、ガス供給モードにおける分解ガスの冷却を踏まえて予め規定される。バッフル62は、さらに以下で示し説明する特殊な構成を有している。このようなTLX-D26のバッフル62の配置および位置を図5に示す。
【0053】
波線により示されているガス供給モードでのジャケット側での供給水の流れ65を、図5の上面図(図中、下の図)に示す。供給水は、TLX-D供給水入口パイプ32を通ってTLX-D26に入り、供給水供給パイプに対して予め規定された距離を設けた状態で、TLX-DのTLX-D内部29に設置した第1バッフル63により180°偏向され、それにより自由供給水流動部60を通って流れ、その流動部60の断面はA-A部分から明らかであり、予め規定されたプロセス条件に応じて最大高さはTLX-Dジャケット28の直径の10%~40%、好ましくは15%~25%の範囲である。また、供給水は、第1バッフル63に対して予め規定された距離を設けた状態で、TLX-D26のTLX-D内部29に設置した第2バッフル64の場合に、180°偏向され、第2自由供給水流動部を通って通過する。
【0054】
このようなプロセスは、TLX-D供給水出口パイプ33までのTLX-D26の長さに応じて反復される。TLX-D26の対応する長さは、予め規定された正確なプロセス条件でガスおよび水/蒸気側で予め規定される。配置されたバッフル62の数は、予め規定されたプロセス条件に応じて変更できる。それぞれのバッフル間の距離は、約100mm~600mm、好ましくは300mm~500mmである。
【0055】
矢印で示された液体供給モードにおけるジャケット側の水/蒸気流れ66を、図5の側面図(図中、上の図)に示す。TLX-D降水管40, 41, 42を介してジャケット側の水平に位置するTLX-D26に入り、直角にTLX-Dを横断する。水は直角にTLX-D26を横断しながら、水の部分相転移が生じる。したがって、水の他に、蒸気分も存在する。したがって、得られる蒸気は、TLX-Dライザー管43, 44, 45を介して確実に排出される。したがって、バッフル62は、上部に平坦な構成を有している。その結果、得られた蒸気が流れ、TLX-Dライザーパイプ43, 44, 45を介して排出される自由体積または蒸気空間61がTLX-Dライザー管43, 44, 45の下に形成される。
【0056】
自由体積もしくは蒸気空間61またはバッフル62の平坦部の自由体積を構成するとき、バッフルの平坦部は、一方では、供給水プレヒータ―としてTLX-D26の運転中ガス供給モードでは望ましくないバイパスが生じない程度に小さく、他方では、得られる蒸気分はエバポレーターとしてのTLX-Dの運転中に液体供給モードで完全に排出できる程度に大きいことを考慮することができる。平坦部の断面の最大高さは約5 mm~40 mm、好ましくは10mm~15mmの範囲で構成するものとする。
【0057】
TLX-D降水管とTLX-Dライザー管の数および位置の変更ならびにバッフルの設定された設計は、デユアルオペレーションにおけるTLX-D26の運転の信頼できるモードには非常に重要である。したがって、TLX-D26を構成するときには、予め規定したプロセス条件は正確な方法で考慮されなければならない。
【符号の説明】
【0058】
10 一次熱交換器、PQE
11 二次熱交換器、SQE
12 三次熱交換器、TQE
13 矢印(分解ガスの流れ方向)
14 TQEガス入口パイプ
15 TQEガス出口パイプ
16 バイパスライン
17 TQE供給バルブ
18 TQEバイパスバルブ
20 ライン
21 SQEガス入口パイプ
23 SQEガス出口パイプ
24 TLX-Dガス供給ライン
25 TLX-Dガス入口パイプ
26 デュアルオペレーション用移送ライン交換器、TLX-D
27 TLX-Dガス出口パイプ
28 TLX-Dジャケット
29 TLX-D内部
30 TLX-D給水供給ライン
31 TLX-D給水供給ラインバルブ
32 TLX-D供給水入口パイプ
33 TLX-D供給水出口パイプ
34 TLX-D給水ドレインライン
35 TLX-D給水ドレインラインバルブ
36 TLX-D蒸気ドラム供給水パイプ
37 TLX-D降水管パイプ接続部
38 TLX-D降水管
39 TLX-D降水管バルブ
40、41、42 TLX-D降水菅
43、44、45 TLX-Dライザー管
46 TLX-Dライザー
47 TLX-Dライザーバルブ
48 TLX-D蒸気ドラムライザー管
49 供給水供給ライン
50 供給水パイプ
51 SQE降水管パイプ接続部
52 SQE降水管
57 SQEライザー
58 SQE 蒸気ドラムライザー管
59 蒸気ドラム
60 自由供給水流動部
61 蒸気空間
62 バッフル
63 第1バッフル
64 第2バッフル
65 ガス供給モードでのジャケット側での供給水の流れ
66 液体供給モードでのジャケット側の水/蒸気流れ
67 TLX-D中央線
68 TLX-Dジャケット内径
図1
図2
図3
図4
図5