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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】マッサージ手技評価装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 19/00 20060101AFI20231011BHJP
   G09B 23/34 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
G09B19/00 H
G09B23/34
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019073906
(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公開番号】P2020173298
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 敏男
(72)【発明者】
【氏名】三宮 公江
【審査官】池田 剛志
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109102748(CN,A)
【文献】特開2016-087206(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106340221(CN,A)
【文献】特開2014-215563(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108172092(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00- 9/56
G09B 17/00-19/26
G09B 23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の所定部位を模擬した被マッサージ部材と、
該被マッサージ部材に付加される荷重を測定可能なセンサを備えたセンサ部材とを備えたマッサージ手技評価装置であって、
前記被マッサージ部材は、センサ部材に対して着脱可能に取り付けられており、
前記被マッサージ部材及び前記センサ部材の少なくとも一方には、前記被マッサージ部材が前記センサ部材に対して、前記センサ部材に対向する前記被マッサージ部材の底面の平面方向に移動するのを防止する移動防止部材が形成されているマッサージ手技評価装置。
【請求項2】
前記センサ部材は、少なくとも3つ以上のセンサを備え、
該センサは、それぞれセンサ部材の前記平面方向の異なる位置に設けられている請求項1に記載のマッサージ手技評価装置。
【請求項3】
前記センサ部材によって測定された荷重を一の軸とし、時間を他の軸とするグラフを作成するデータ処理部と、
該グラフの荷重のピーク値が所定の閾値外になると、警報を発する警報発生部とをさらに備えた請求項1又は2に記載のマッサージ手技評価装置。
【請求項4】
前記センサ部材によって測定された荷重を一の軸とし、時間を他の軸とするグラフを作成するデータ処理部と、
該グラフをリアルタイムに表示する表示部とを備えた請求項1乃至3いずれか記載のマッサージ手技評価装置。
【請求項5】
前記データ処理部は、予め前記グラフに関する情報を記憶し、予め記憶されたグラフとリアルタイムのグラフを同時に前記表示部に表示させる請求項4記載のマッサージ手技評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施術者のマッサージの手技を評価可能なマッサージ手技評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
店頭において、マッサージクリームなどのスキンケア用品を販売する際に、その効果を需要者に知ってもらうため、販売員は、デモンストレーションを行う場合がある。デモンストレーションの手順や手の動き、スキンケア用品の使用方法などに関し、販売員は、マニュアルを読んだり、また動画を見ることによって、理解している。一方、スキンケア用品を塗る際の力加減に関しては、販売員が熟練者の施術を体験することによって習得している。この熟練者の力加減は、感覚的で曖昧なものであるため、その技術を販売員に分かり易く正確に伝えることは困難である。同様に、エステなど施術の現場においても、施術者が熟練者の施術を体得するのは、容易ではない。
【0003】
このため、例えば、人体の所定部位を模擬した被マッサージ部材内に圧力センサを設けて、その被マッサージ部材に加えられる圧力を測定することによって、施術者の手技を評価するマッサージ手技評価装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-83624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、人体の様々な部位に対しマッサージを行う場合、部位によって力加減が異なるため、人体の様々な部位を模擬した被マッサージ部材を用意する必要がある。この点に関し、特許文献1に記載されたマッサージ手技評価装置は、センサが人体の所定部位を模擬した被マッサージ部材に内蔵されているため、センサを内蔵された様々な部位を用意しなければならないが、センサは、比較的高価であるので、様々な人体の部位を用意することは、コストが嵩むという課題がある。また、センサが被マッサージ部材に設けられているので、他の部位の被マッサージ部材に交換する際、被マッサージ部材のセンサを装置に接続し直す等の手間がかかり非効率である。さらに、被マッサージ部材ごとにセンサのメンテナンスなどを行わなければならず、管理の負担が大きい。
【0006】
本発明は、被マッサージ部材の交換が容易であり、被マッサージ部材の交換コストを抑えることができるマッサージ手技評価装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、人体の所定部位を模擬した被マッサージ部材と、該被マッサージ部材の表面に付加される荷重を測定可能なセンサを有するセンサ部材とを備えたマッサージ手技評価装置であって、前記被マッサージ部材は、センサ部材に対して着脱可能に取り付けられるマッサージ手技評価装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のとおり、本発明に係るマッサージ手技評価装置によれば、被マッサージ部材の交換が容易であり、被マッサージ部材の交換コストを抑えることができるマッサージ手技評価装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るマッサージ手技評価装置の縦断面概略図である。
図2】本実施形態に係るマッサージ手技評価装置の斜視図である。
図3】本実施形態に係るマッサージ手技評価装置の構成を示すブロック図である。
図4】本実施形態に用いられるフォースプレートの概略構成を示す斜視図である。
図5】センサのリアルタイムの動きを示すグラフである。
図6図6(a)は、荷重の方向を示す図であり、図6(b)は、その荷重変化を示すグラフである。
図7図7(a)は、他の荷重の方向を示す図であり、図7(b)は、その荷重変化を示すグラフである。
図8図8(a)は、他の荷重の方向を示す図であり、図8(b)は、その荷重変化を示すグラフである。
図9図9(a)は、他の荷重の方向を示す図であり、図9(b)は、その荷重変化を示すグラフである。
図10】センサの上下の閾値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態に係るマッサージ手技評価装置1について、図面に基づいて説明する。本実施形態に係るマッサージ手技評価装置1は、図1乃至3に示すように、人体の所定部位を模擬した被マッサージ部材10、被マッサージ部材10の表面に付加される荷重を測定可能なセンサを有するセンサ部材20、センサ部材20からの荷重データを処理するデータ処理部30、警報を発生する警報発生部40、及び荷重データの時間変化を示すグラフの画像を表示する表示部50を備えている。本実施形態において、データ処理部30、警報発生部40及び表示部50は、パーソナルコンピュータ60に搭載されており、センサ部材20は、このパーソナルコンピュータ60に接続されている。
【0011】
被マッサージ部材10は、図1に示すように、人体の頭部の一部を模擬した被マッサージ部材本体12と、被マッサージ部材本体12の底面に設けられた固定板14とを備える。
【0012】
被マッサージ部材本体12は、人体の頭部の顔面側12aの約半分のみを模したものであり、顔面側の表面を構成するバイオスキン12aと、後頭部側に設けられ、バイオスキン12aを支持する支持板12bと、バイオスキン12aと支持板12bの間に充填された充填部材12cとを備えている。バイオスキン12aは、実際の肌と同様の感触を得られるようウレタンエラストマー等の合成樹脂から構成されている。支持板12bには、固定板14に装着するための複数のねじ穴12dが形成されており、充填部材12cは、人体の顔面と同様の弾性を得られるように発泡ウレタンなどから構成されている。
【0013】
固定板14は、硬質な樹脂又は金属など硬質な材料から構成されており、正方形状に形成されている。固定板14は、その表面側14aに被マッサージ部材本体12の支持板12bの全域が面接触するのに十分な面積を有する。固定板14には、被マッサージ部材本体12の支持板12bに形成された複数のねじ穴12dと整合するように、複数のねじ穴14cが形成されており、これらねじ穴を介してねじ15を螺合することによって、被マッサージ部材本体12を固定板14に装着することができる。また、固定板14の底面14b側には、固定板14の縁又はその内側近傍に沿った枠状のフランジ部材(移動防止部材)16がねじ18を介して設置されている。このフランジ部材16の内縁16aは、フランジ部材16が後述するセンサ部材20のセンサ板26を覆うように、センサ板26の外縁26aとほぼ同一形状、すなわちセンサ板26の外縁26aと同一又はそれよりも若干大きめに形成されている。本実施形態において、フランジ部材16を被マッサージ部材10に設けたが、センサ部材20に設けても良く、その場合、固定板14の外縁の大きさをフランジの内縁とほぼ同一形状に形成される。このような構成を備えることにより、センサ部材20に対して、被マッサージ部材10を容易に着脱でき、人体の他の部位の被マッサージ部材10への交換が簡易となる。
【0014】
センサ部材20は、図1、2及び4に示すように、いわゆるフォースプレート22と、フォースプレート22を支持する支持台24とを備えている。フォースプレート22は、正方形状なセンサ板26と、センサ板26の四隅近傍それぞれに設けられた第1乃至第4のセンサ28a乃至28dとを備えている。第1乃至第4のセンサ28a乃至28dそれぞれは、被マッサージ部材10の表面に付加された荷重を測定可能に構成されている。本実施例において、センサは、4つ設けたが、Z軸方向(高さ方向)の荷重のみを測定する場合は、一つでも良く、Z軸方向だけでなく、X軸方向及びY軸方向(平面方向)の荷重も測定する場合は、平面方向の異なる位置に少なくとも3つ設ければ良い。センサ28a乃至28dとしては、ひずみゲージ式ロードセルや磁歪式ロードセル、静電容量型ロードセルなどを用いることができる。
【0015】
本実施形態において、被マッサージ部材10は、フランジ部材16内にフォースプレート22をはめ込んでセンサ部材20上に載置することによって、センサ部材20に装着することができる。この際、フランジ部材16の内縁16aとフォースプレート22のセンサ板26の外縁26aがほぼ同一形状に形成されているので、施術者が被マッサージ部材10を押圧して平面方向に力が加わっても、被マッサージ部材10がセンサ部材20に対して移動することはないく、正確に平面方向の荷重を測ることができる。
【0016】
本実施形態において、被マッサージ部材10は、人の顔面を模したものを用いたが、これに限定されず、人のふくらはぎやデコルテなどを模したものでも良い。本実施形態において、被マッサージ部材10は、センサ部20と別体に構成されているので、被マッサージ部材10を安価に得ることができ、様々な部位への交換コストを抑えることができる。また、このようにセンサ部20を別体とすることによって、被マッサージ部材10を他の部位のものに交換する場合であっても、センサとその処理装置の接続を再度行う必要がなくなるので、様々な部位への交換が容易である。。
【0017】
パーソナルコンピュータ60が、第1乃至第4のセンサ28a乃至28dからの荷重データを受信すると、データ処理部30は、これら荷重データを時間と関連付けて記憶するとともに、図5に示すような時間を横軸、荷重を縦軸とするグラフを作成し、そのグラフを表示部50に表示する。
【0018】
データ処理部30によって作成されるグラフは、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向それぞれに加えられた荷重変化に基づくことができる。X軸方向やY軸方向の荷重変化は、4つのセンサ28a乃至28dそれぞれの位置及び差分から求めることができ、Z軸方向の荷重変化は、例えば4つの圧力センサ28a乃至28dの平均値などから求めることができる。
【0019】
具体的には、図6(a)に示すように、荷重の中心位置を示す荷重中心点29に、垂直下方向の力を加えた場合、図6(b)に示すようなZ軸方向の波形グラフが得られる。ここで、波形グラフは、時間を横軸、荷重を縦軸としている。また、図7(a)に示すように、荷重中心点29から下方及び右方向に力を加えた場合、図7(b)に示すようなZ軸方向とX軸方向の波形グラフが得られる。さらに、図8(a)に示すように、荷重中心点29から下方及び奥方向に力を加えた場合、図8(b)に示すようなZ軸方向とY軸方向の波形グラフが得られる。さらにまた、図9(a)に示すように、荷重中心点29から下方及び右斜め奥方向に力を加えた場合、図9(b)に示すようなZ軸方向、X軸方向及びY軸方向の波形グラフが得られる。
【0020】
本実施形態に係るマッサージ手技評価装置1を用いる場合、先ず、熟練者が一通り施術を行い、熟練者のデータを記憶する必要がある。次に、手技評価を受ける施術者の施術を開始すると、記憶された熟練者のデータが点線で表示可能な全時間に亘って表示部50に表示され、施術者のデータは、実線でリアルタイムに表示部50に表示させる。このように、予め記録されたデータとリアルタイムのデータを同時に表示できるため、施術者は、熟練者との力加減の違いを表示部50から認識できる。
【0021】
また、本実施形態に係るマッサージ手技評価装置1は、グラフにした際の荷重変化のピーク値が閾値を超えた場合に、警報発生部40から警報を発するよう構成されている。すなわち、図10に示すように、表示部50に荷重変化の上限72a及び下限72bが表示され、荷重変化のピークが上限72a又は下限72bを超えた場合に、警報を発する。警報としては、例えばスピーカを設けて警報音を発したり、LEDライトなどを設けて警報光を発することができる。警報が警報音の場合、施術者は、表示部50を見ていなくても、力の入れ過ぎを認識することができる。
【0022】
また、本実施形態に係るマッサージ手技評価装置1は、例えば、マッサージクリーム等の製剤を使用している場合と使用しない場合それぞれを評価し、加減の違いを比較することによって、製剤開発に役立てることができる。
【符号の説明】
【0023】
10 被マッサージ部材
16 フランジ部材(移動防止部材)
20 センサ部材
28a乃至28d センサ
30 データ処理部
40 警報発生部
50 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10