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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】空気噴射式織機用のサブノズル
(51)【国際特許分類】
   D03D 47/30 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
D03D47/30
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019090342
(22)【出願日】2019-05-13
(65)【公開番号】P2020186485
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-02-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】米島 芳之
(72)【発明者】
【氏名】小堀 裕一朗
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第94/011553(WO,A1)
【文献】特開2013-136846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D29/00-51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が円弧状を成すと共に閉塞された中空管状のサブノズルであって、先端部に噴射孔が形成された空気噴射式織機用のサブノズルにおいて、
前記噴射孔の中心線方向に見て、サブノズルの外周縁上における位置のうちの前記噴射孔の中心からの距離が最も近い位置をXとし、前記噴射孔の中心と前記位置Xとを結ぶ線が前記噴射孔の周縁と交わる位置をYと定めた上で、
前記噴射孔は、前記中心線方向に見て前記噴射孔の中心と前記位置Xとを通る線がサブノズルの軸線と角度を成すと共にサブノズルが織機上に設けられたときに前記噴射孔の中心がサブノズルの軸線よりも変形筬側となる位置に形成され且つ前記中心線方向に見て前記位置Xと前記位置Yとの距離が0.75mm以下となるように形成されている
ことを特徴とする空気噴射式織機用のサブノズル。
【請求項2】
前記噴射孔は、前記中心線が前記軸線と交わらないように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の空気噴射式織機用のサブノズル。
【請求項3】
前記噴射孔は、その内周面がサブノズルの内側面に向けて孔径を漸次拡径するように形成された部分であるテーパ部を有するように形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至2に記載の空気噴射式織機用のサブノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端が円弧状を成すと共に閉塞された中空管状のサブノズルであって、先端部に噴射孔が形成された空気噴射式織機用のサブノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、空気噴射式織機用のサブノズルは、前記のように先端が閉塞された中空管状に形成されており、その先端部に噴射孔を有している。また、そのサブノズルは、筬を支持するリードホルダ上において緯入れ方向に並べられるかたちで複数本設けられており、製織中の筬の揺動に伴い、経糸を掻き分けるかたちで経糸開口内に進入するようになっている。そこで、そのサブノズルは、そのように経糸開口内へ進入する際の経糸の捌きを良くするために、小さい直径のものとして形成されている。また、それに伴い、サブノズルの壁の肉厚は、非常に薄く、一般的には0.5mm以下となっている。
【0003】
なお、そのようなサブノズルにおいて、噴射孔は、肉厚の薄い壁に穿設されているため、その中心線方向の長さが短く、直径に対する前記中心線方向の長さの割合が非常に小さいものとなっている。そのため、そのようなサブノズルでは、噴射孔から噴射される空気流の拡散の度合いが高く、それに伴って緯糸案内溝内へ向かう空気流の指向性が低いため、供給される圧縮空気の圧力(以下、「供給圧力」と言う。)に対する緯糸の搬送力が小さいという問題がある。
【0004】
そこで、そのような問題を解決するための技術として、特許文献1に開示された技術(以下、「従来技術」と言う。)がある。より詳しくは、その従来技術では、前記の問題を解決すべく、サブノズルを、その噴射孔に対し圧縮空気を緯糸案内溝内に向かう方向に誘導するための円筒部材が設けられたものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭61-159386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記のようにサブノズルが小さい直径のものであることから、噴射孔は、当然ながらさらに小さい直径のものとなっている。したがって、そのような噴射孔に取り付けられる円筒部材は極めて小さい部材となる。そのため、そのような円筒部材の製作やその円筒部材を噴射孔に取り付ける作業は容易ではなく、その結果として、そのサブノズルの製造は、多くの手間や製造コストを要するものとなる。
【0007】
また、従来技術では、円筒部材がサブノズルの内部に突出するように設けられている。そのため、サブノズルに対し供給されてサブノズル内を流れる圧縮空気が円筒部材に衝突するかたちとなる。それにより、サブノズルの内部で圧縮空気の流れに乱れが生じ、それがサブノズルからの圧縮空気の噴射に悪影響を及ぼして搬送力の低下を招く場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、円筒部材のような圧縮空気を案内するための部材を設けること無く空気流の指向性を高めることによって供給圧力に対する緯糸の搬送力を高くすることのできる空気噴射式織機用のサブノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、先端が円弧状を成すと共に閉塞された中空管状のサブノズルであって、先端部に噴射孔が形成された空気噴射式織機用のサブノズルを前提とする。その上で、前記の目的を達成すべく、本発明は、その前提とする空気噴射式織機用のサブノズルにおいて、前記噴射孔の中心線方向に見て、サブノズルの外周縁上における位置のうちの前記噴射孔の中心からの距離が最も近い位置をXとし、前記噴射孔の中心と前記位置Xとを結ぶ線が前記噴射孔の周縁と交わる位置をYと定めた上で、前記噴射孔は、前記中心線方向に見て、前記噴射孔の中心と前記位置Xとを通る線がサブノズルの軸線と角度を成すと共にサブノズルが織機上に設けられたときに前記噴射孔の中心がサブノズルの軸線よりも変形筬側となる位置に形成され且つ前記中心線方向に見て前記位置Xと前記位置Yとの距離が0.75mm以下となるように形成されていることを特徴とする。
【0010】
なお、本発明で言う「噴射孔」は、単一の孔によって形成されたものに限らず、噴射孔が形成されるべき領域に複数の孔を形成し、その複数の孔の集合によって構成されたものを含む。そして、その場合、噴射孔が形成された位置は、その複数の孔が形成された前記領域であり、その前記領域の中心の位置が噴射孔の中心の位置となる。
【0011】
また、本発明の空気噴射式織機用のサブノズルにおいては、前記噴射孔は、前記中心線が前記軸線と交わらないように形成されているようにしても良い。
【0012】
また、本発明の空気噴射式織機用のサブノズルにおいては、前記噴射孔は、その内周面がサブノズルの内側面に向けて孔径を漸次拡径するように形成された部分であるテーパ部を有するように形成されているようにしても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明の空気噴射式織機用のサブノズルによれば、噴射孔を前記距離が0.75mm以下となる位置に形成することにより、従来技術における円筒部材のような圧縮空気を案内するための部材を噴射孔に設けることなく、圧縮空気の供給圧力に対する緯糸の搬送力を向上させることができる。詳しくは、以下の通りである。
【0014】
空気噴射式織機において一般的に用いられているサブノズルとしては、噴射孔が形成される前面が先端部にかけて平面状に形成されたものや、あるいは、そのような平面状の部分を有さずにその平面状の部分に相当する部分が円弧面に形成されて軸線方向と直交する方向の断面形状が楕円形(小判形)や円形に形成されたものがある。また、そのようなサブノズルにおいて、噴射孔はその周壁に穿設されるかたちで形成されているが、例えば中心線が特定の方向を向くように噴射孔が形成されるとした場合、その中心を正面に置いて中心線の方向(中心線方向)に見ると、周壁(先端を形成する壁も含む)の肉厚の方向(以下、単に「肉厚方向」と言う。)がその中心線方向に対し成す角度は、サブノズルの外周縁(輪郭を成す縁)に近い方が大きくなる。
【0015】
したがって、ある位置に形成した噴射孔と、それに対し中心線方向を変えずに位置をサブノズルの外周縁に近付けて形成した噴射孔とを比較すると、後者の噴射孔におけるサブノズルの外周縁に近い周縁部が位置する部分の肉厚方向が中心線方向に対し成す角度は、前者の噴射孔のその角度と比べて大きくなる。すなわち、後者の噴射孔の場合、前者の噴射孔と比べ、前記周縁部が肉厚方向に対しより大きい角度を成して形成されている。そして、前記周縁部の穿設方向の肉厚方向に対し成す角度が大きいほど、噴射孔の内周面は、その前記周縁部において中心線方向に長いものとなる。
【0016】
そのことから、中心線方向に見て、サブノズルの外周縁上における位置のうちの噴射孔の中心からの距離が最も近い位置をXとし、噴射孔の中心とその位置Xとを結ぶ線が噴射孔の周縁と交わる位置をYとしたときのその位置Xと位置Yとの距離がより短くなるように噴射孔を形成することで、その位置Y周辺の前記周縁部における噴射孔の内周面が中心線方向により長いものとなる。
【0017】
なお、噴射される空気流を案内する噴射孔の内周面が中心線方向に長いほど、噴射後の空気流の指向性は高まる。そして、空気流の指向性が高まることで、圧縮空気の所定の供給圧力に対する緯糸の搬送力が向上する。さらに、圧縮空気の所定の供給圧力に対する緯糸の搬送力が向上するということは、言い換えれば、所定の緯糸の搬送力を得る上で必要となる圧縮空気の供給圧力を低く抑えることができるということとなる。そして、緯入れ時にサブノズルに供給される圧縮空気の圧力を下げることで、製織に伴う空気消費量の削減を図ることができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0018】
その上で、本発明の発明者らによる鋭意研究の結果として、前記距離が0.75mm以下となるような位置に噴射孔を形成することで、そのサブノズルにより、所望の空気消費量の削減を図ることができるような搬送力を得ることができるということを見いだした。そこで、本発明では、空気噴射式織機用のサブノズルにおいて、前記距離が0.75mm以下となるように噴射孔を形成することを特徴とするものものであり、それにより、所望の空気消費量の削減を図ることができる緯糸の搬送力を得ることができる。
【0019】
また、本発明によれば、そのような搬送力が得られるように空気流の指向性を高める上で、前記した従来技術のような圧縮空気を案内するための円筒部材を噴射孔に設けることなくそれを実現しているため、従来技術と比べてサブノズルの製造コストを大幅に低減することができると共に、前記のような搬送力が安定して得られるものとなる。
【0020】
また、本発明による空気噴射式織機用のサブノズルにおいて、噴射孔をその中心線がサブノズルの軸線と交わらないように形成することにより、噴射孔が同じ位置に形成される場合であっても、中心線がサブノズルの軸線と交わるように噴射孔が形成されている場合と比べ、前記周縁部が肉厚方向に対しより大きい角度を成して形成されることとなり、その内周面の中心線方向の長さがより長いものとなる。したがって、前述した緯糸の搬送力を向上するという効果を得ることがより高い程度で実現され、より効果的に空気消費量を低減させることができる。
【0021】
さらに、噴射孔を、前記のようなテーパ部を有するように形成することにより、噴射孔の周縁へ向けて漸次縮径される前記テーパ部を空気流が通過するのに伴ってその空気流の流速が増速される。それにより、緯糸案内溝内を飛走する緯糸の位置における前記流速も増速されるので、噴射孔が前記のようなテーパ部を有さない構成と比べ、同じ供給圧力に対する緯糸の搬送力が向上し、空気消費量を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明が適用される空気噴射式織機の正面図である。
図2図1のA矢視図である。
図3】本発明の空気噴射式織機用のサブノズルの正面図である。
図4図3の側面図である。
図5】サブノズル先端の拡大図である。
図6図5のD-D断面図である。
図7図5のG-G断面図である。
図8図5のJ-J断面図である。
図9図5のH-H断面図である。
図10】本発明の空気噴射式織機用のサブノズルについて、サブノズルから噴射される圧縮空気の風速比率と距離Cとの関係を示すグラフである。
図11】本発明による空気噴射式織機用のサブノズルの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1及び図2に示すように、本発明のサブノズルが適用される空気噴射式織機は、緯入れ用のメインノズル1、及びメインノズル1から打ち出された緯糸の飛走を助勢すべく緯糸の飛走経路にそって複数配置されたサブノズル2を備えている。また、その空気噴射式織機は、緯入れされた緯糸を織布の織前に対し筬打ちする筬3を備えている。
【0024】
その筬3は、所謂変形筬であって、凹部を有する変形の筬羽4を多数枚列設させたかたちで構成されている。その変形筬3について、それ自体は周知の構成であるため厳密な説明は省略するが、各筬羽4は、長手方向における略中央部に凹部が形成されている。その上で、各筬羽4が多数枚列設されると共に上下のリードチャンネル5、6で一体化されることで、その変形筬3が構成されている。そして、変形筬3は、そのように多数枚の筬羽4が列設されることで、各筬羽4の凹部により形成された緯糸案内溝7を有している。
【0025】
そして、変形筬3は、織機上においては、下側のリードチャンネル6においてリードホルダ8に取り付けられ、リードチャンネル5、6の長手方向(変形筬3の幅方向)が織機の幅方向(織幅方向)と一致するように設けられている。また、空気噴射式織機においては、メインノズル1もそのリードホルダ8に取り付けられており、そのメインノズル1は、リードホルダ8上において、変形筬3の給糸側に配置されている。
【0026】
また、各サブノズル2は、ノズルホルダ9に取り付けられると共に、そのノズルホルダ9がリードホルダ8に取り付けられることで、変形筬3に対する前方でリードホルダ8に対し固定的に配置されるかたちで設けられていている。なお、織機上(リードホルダ8上)において複数設けられるサブノズル2は、織幅方向(変形筬3の幅方向)において等間隔に配置されている。また、各サブノズル2は、その噴射孔10が緯糸案内溝7を向くように配置されている。
【0027】
次に、本発明の空気噴射式織機におけるサブノズルの一実施例について、図3図10に基づいて説明する。
【0028】
サブノズル2は、図3、4に示すように、全体として中空状の棒体であって、先端が閉塞されると共に基端が開放されたかたちに形成されている。なお、図示の例では、そのサブノズル2における基端側の部分である基端部11は、サブノズル2の中心軸線(以下、単に「軸線」と言う。)14と直交する方向の断面である平断面の形状(平断面形状)が円形であるように形成されている。一方、その基端部11よりも先端側の部分であって前記のように閉塞された先端を含む部分である主体部12は、前記平断面形状が楕円形であるように形成されている。また、その主体部12は、前記平断面形状である楕円形の長軸42でその主体部12を分けたときの断面の形状、及び前記楕円形の短軸43でその主体部12を分けたときの断面の形状において、その先端が円弧状を成すように形成されている。
【0029】
また、主体部12は、噴射孔10が形成され得る部分である本発明で言う先端部13と、その先端部13と基端部11との間の部分である中間部40とから成っている。なお、その主体部12について、前記平断面形状である楕円形の長軸42でその主体部12を分けたときの一方を前壁部18、他方を後壁部17とすると、噴射孔10は、その先端部13における前壁部18に形成されている。
【0030】
その噴射孔10について、噴射孔10は、本実施例では、図5に示すように単一の孔によって形成されている。但し、図5は、先端部13における前壁部18を噴射孔10の中心線26の方向(以下、「中心線方向」とも言う。)に見たとき(以下、「正面視」と言う。)の図である。因みに、その噴射孔10におけるサブノズル2の外側面16に開口する部分(外側開口部31)の孔径は、本実施例では1.6mm程度である。また、噴射孔10は、その中心33の位置が軸線14上から外れた位置となるように形成されている。より具体的には、噴射孔10は、サブノズル2が織機上(リードホルダ8上)に設けられたときにその中心33が軸線14よりも変形筬3側となるような位置に形成されている。
【0031】
その上で、噴射孔10は、図示の位置Xと位置Yとの間の距離Cが0.75mm以下となるように形成されている。その噴射孔10について、詳しくは以下の通りである。
【0032】
先ず、位置Xは、図5に示すように、サブノズル2の外周縁上の位置のうち、噴射孔10の中心33からの距離が最も近い点の位置である。因みに、その位置Xは、例えば前記正面視において、噴射孔10の中心33を中心としてサブノズル2の外周縁と接するように描かれる円のうち、半径が最も小さい円が外周縁と接する位置であり、位置Xはそのようにして求めることも可能である。そして、本実施例において、その位置Xは、主体部12における前記のように形成された先端の外周縁上に位置している。なお、噴射孔10は、前記のように中心33の位置が軸線14上から外れた位置となるように形成されるものであるが、本実施例では、前記正面視において、その中心33と位置Xとを通る線(図示の仮想線32)が軸線14と直交する線(図示の仮想線41)に対し70°程度の角度を成すような位置に形成されている。
【0033】
但し、本実施例では、噴射孔10は、その中心線26がサブノズル2の内側面15側から外側面16側へ向けてサブノズル2の先端側へ傾斜するように形成されている。より具体的には、図6は、噴射孔10の中心33及び前記した位置Xを通る面に沿ってサブノズル2を切断した場合の断面図(図5におけるD-D断面図)であるが、噴射孔10は、その断面において軸線14と直交する方向に対し中心線26が10°程度の角度を成すように形成されている。したがって、位置Xは、前記のようにその中心線26に見たときのサブノズル2の外周縁上の位置であることから、本実施例では、前壁部18の外周縁上では無く、図6に示すように後壁部17の外周縁上の位置となっている。
【0034】
また、位置Yは、前記正面視において、噴射孔10の周縁上の位置のうち、前記の仮想線32がその周縁と交わる点の位置である。なお、図6は、前記したように噴射孔10の中心33及び位置Xを通る面に沿ってサブノズル2を切断した場合の断面図であることから、図6においては、その位置Yは、サブノズル2の外側開口部31の縁のうちの先端側の縁の位置となる。
【0035】
そして、中心線方向に見たときの位置Xと位置Yとの間の距離Cは、図6に示すように、位置Xを通る中心線26に平行な線(図示の仮想線44)と位置Yを通る中心線26に平行な線(図示の仮想線45)との間隔となる。その上で、噴射孔10は、前記したようにその距離Cが0.75mm以下となるように形成されるものであり、本実施例では、その距離C=0.5mmの位置に形成されている。
【0036】
なお、本実施例では、噴射孔10は、その中心線26が軸線14と交わらないように形成されている。より詳しくは、図7は、噴射孔10の中心33の位置での前記平断面図(図5におけるG-G断面図)であるが、その図7に示すように、噴射孔10は、その中心線26(より正確には、中心線26の延長線)が軸線14と交わらないように形成されている。すなわち、その噴射孔10は、サブノズル2に噴射孔10を穿設する上で、その穿設方向がサブノズル2の軸線から偏心した位置となるように形成されている。
【0037】
また、本実施例では、噴射孔10は、その内周面34がサブノズル2の内側面15に向けて孔径を漸次拡径するように形成された部分であるテーパ部を有するように形成されている。具体的には、噴射孔10は、図6に示すように、サブノズル2の外側面16側の部分であって内周面34がその中心線26と平行に形成された部分であるストレート部27と、そのストレート部27よりもサブノズル2の内側面15側の部分であってその内周面34が内側面15に向けて孔径を漸次拡径するように形成された部分であるテーパ部28とから成るように形成されている。したがって、その噴射孔10においては、外側開口部31の孔径と内側面15に開口する部分(内側開口部30)の孔径とは異なっており、内側開口部30の孔径の方が大きくなっている。
【0038】
以上で説明したように、本実施例のサブノズル2においては、噴射孔10は、位置Xから位置Yまでの距離Cが0.5mmとなるように形成されている。そして、そのように噴射孔10が形成されたサブノズル2によれば、位置Yの周辺において噴射孔10の内周面34が中心線方向において長いものとなり、且つ、その長さが所望の空気消費量の削減を図ることができるような搬送力を得ることができるものとなる。詳しくは、以下の通りである。
【0039】
先ず、位置Yについて、前述のように位置Yは、噴射孔10の中心33と位置Xとを結ぶ線が噴射孔10の周縁と交わる位置であり、また、その位置Xは、サブノズル2の外周縁上における位置のうちの噴射孔10の中心33からの距離が最も近い位置である。したがって、位置Yは、噴射孔10の周縁上における位置のうちのサブノズル2の外周縁に最も近い位置である。
【0040】
その上で、噴射孔10の位置について、前記正面視において、サブノズル2の軸線14と直交する方向(幅方向)とサブノズル2の軸線14の方向(軸線方向)とに分けて考えると、幅方向の位置については、前記平断面で確認される。なお、前述のように、本実施例のサブノズル2は、前記平断面形状が楕円形であるように形成されている。また、一般的なサブノズルは、その壁の肉厚は全体に亘って略一様である。それにより、前記平断面での肉厚の方向(肉厚方向)は、前記幅方向における中心の位置での肉厚方向に対し、サブノズル2の外周縁に近い位置ほど大きい角度を成したものとなる。
【0041】
したがって、中心線方向を特定の方向として噴射孔10を穿設する場合においては、前記平断面における噴射孔10の周縁の位置での前記肉厚方向は、その周縁の位置がサブノズル2の外周縁に近いほど大きくなる。言い換えれば、前記平断面において、噴射孔10の周縁の位置での前記肉厚方向が噴射孔10の中心線方向に対し成す角度は、その周縁の位置(噴射孔10の中心33の位置)がサブノズル2の外周縁に近いほど大きくなる。
【0042】
そして、噴射孔10の周縁上におけるサブノズル2の外周縁に最も近い位置である位置Yで見ると、その位置Yでの前記平断面を示す図8図5におけるJ-J断面図)で示すように、位置Yにおける前記肉厚方向は、中心線方向に対し角度θaを成すものとなっている。そして、この角度θaは、本実施例では前記した距離Cが0.5mmとなるように噴射孔10が形成されているが、その距離Cが小さいほど大きく(大きいほど小さく)なる。そして、その角度θaが大きいほど、その位置での噴射孔10の内周面34の長さが中心線方向において長いものとなる。
【0043】
同様に、噴射孔10の前記軸線方向における位置については、前記軸線方向と平行な方向での断面(前記楕円形の短軸43で分けたときの断面。以下、「縦断面」と言う。)で確認される。なお、前述のようにサブノズル2の主体部12は、その先端が前記縦断面において円弧状を成すように形成されている。そのことから、周縁におけるサブノズルの外周縁に近い部分のその外周縁からの距離が小さい(近い)位置に噴射孔10が形成される場合には、その周縁上の部分(一部)は、前記軸線方向における円弧面上に位置する。
【0044】
そして、そのように周縁上の一部が前記軸線方向における円弧面上に位置する場合であって、中心線方向を特定の方向として噴射孔10を穿設する場合においては、前記縦断面における噴射孔10の周縁の位置での前記肉厚方向は、その周縁の位置がサブノズル2の外周縁に近いほど中心線方向に対し成す角度が大きくなる。その上で、噴射孔10の周縁上におけるサブノズル2の外周縁に最も近い位置である位置Yで見ると、図9図5におけるH-H断面図)に示すように、位置Yにおける前記肉厚方向は、中心線方向に対し角度θbを成すものとなっている。そして、その角度θbは、本実施例では距離Cが0.5mmとなるように噴射孔10が形成されているが、その距離Cが小さいほど大きく(大きいほど小さく)なる。そして、その角度θbが大きいほど、その位置での噴射孔10の内周面34の長さが中心線方向において長いものとなる。
【0045】
このように、距離Cが小さい位置に噴射孔10が形成されることにより、その噴射孔10の周縁上の位置である位置Y及びその周辺では、前記幅方向及び前記軸線方向において、噴射孔10の内周面34の長さが中心線方向において長くなる。その結果として、噴射孔10から噴射される空気流の指向性が高まるため、圧縮空気の所定の供給圧力に対する緯糸の搬送力が向上する。
【0046】
図10は、そのようにして噴射孔が形成されたサブノズルについて、緯糸の搬送力に大きく関連するサブノズルから噴射される圧縮空気の風速と、距離Cとの関係を示すグラフである。なお、そのグラフは、サブノズル2に供給される圧縮空気の圧力(供給圧力)を異なる2種類(0.3MPa、0.4MPa)に設定した場合のそれぞれについて示している。
【0047】
さらに、そのグラフにおいて、横軸は距離Cであるが、縦軸は、前記した風速そのものでは無く、風速比率をパラメータとして採用している。なお、その風速比率とは、同じ供給圧力において、比較用のサブノズルの噴射孔から噴射された空気流の風速を100とした場合の比率である。また、その風速は、変形筬の緯糸案内溝内における空気流が作用する領域内の所定の位置において測定されたものである。そして、この場合の比較用サブノズルは、前壁部を正面に見て、噴射孔の中心の位置がサブノズルの軸線上に位置であって、距離Cが0.8mmの位置に噴射孔が形成された構成のサブノズルである。
【0048】
そして、図10のグラフから読み取れるように、距離Cが0.5mmとなるように噴射孔が形成された本実施例のサブノズルは、前記2種類のいずれの供給圧力の場合でも、その風速比率が105以上の値となる。すなわち、本実施例のサブノズル2は、距離Cが0.5mmとなるように噴射孔10が形成された構成により、その風速比率が5%以上大きくなる。したがって、本実施例のサブノズル2によれば、所望の空気消費量の削減を図ることができる緯糸の搬送力を得ることができる。
【0049】
また、本実施例では、噴射孔10は、その中心線26がサブノズル2の軸線14と交わらないように形成されているため、噴射孔10の中心線26が軸線14と交わる(前記平断面において中心線26がサブノズル2の中心に向かう)ように形成された場合と比べ、中心線26が前壁部18の肉厚方向に対し成す角度が大きくなる。それにより、噴射孔10の内周面34の中心線方向の長さがより長くなるため、緯糸の搬送力を向上するという効果を得ることがより高い程度で実現され、その結果として、より効果的に空気消費量を低減させることができる。
【0050】
さらに、本実施例では、噴射孔10がテーパ部28を有するように形成されているため、テーパ部を有していない噴射孔と比べ、噴射孔10における内周面34の中心線方向の長さがより長いものとなる。詳しくは、前記のように、噴射孔10は、その中心線方向が前壁部18の肉厚方向に対しては角度を成すものとなっている。それに加え、噴射孔10の内周面34が内側面15に向けて孔径を漸次拡径するように形成されることにより、噴射孔がそのように形成されていない(テーパ部を有していない)場合と比べ、その内側開口部30の中心線方向における位置が、より後壁部17側の位置となる。したがって、その噴射孔10における内周面34の中心線方向の長さは、噴射孔がそのようなテーパ部を有していない場合と比べ、より長いものとなる。そして、その結果として、緯糸の搬送力を高めるという効果がより高い程度で実現され、より効果的に空気消費量を低減させることができる。
【0051】
なお、本発明については、以上で説明した実施例(前記実施例)に限定されるものではなく、以下のような変形した実施形態でも実施が可能である。
【0052】
(1)前記実施例では、外側開口部31の孔径が1.6mmとなるように噴射孔10が形成されている。しかし、本発明による空気噴射式織機用のサブノズルは、外側開口部の孔径がそのように形成されたものに限らず、噴射孔をその中心線方向に見た場合の位置Xと位置Yとの距離(前記実施例における距離C)が0.75mm以下となるように噴射孔が形成されたものであれば、外側開口部の孔径が前記実施例と異なる孔径となるように噴射孔が形成されたものであっても良い。
【0053】
(2)前記実施例では、噴射孔は、その内周面が噴射孔の中心線と平行に形成されたストレート部と、そのストレート部よりも内側面側の部分であってその内周面が内側面に向けて孔径を漸次拡径するように形成されたテーパ部とを有するように形成されている。しかし、本発明によるサブノズルにおいては、噴射孔は、そのようなテーパ部を有するように形成されたものに限らず、その中心線方向に渡ってストレート状に形成されていても良い。そして、そのようなサブノズルでも、噴射孔の周縁の位置である位置Y及びその周辺において、噴射孔の内周面は、前述のように中心線方向に長いものとなる。
【0054】
また、噴射孔は、その中心線方向に亘ってその内周面が内側面に向けて孔径を漸次拡径されるように形成されたものであっても良い。そして、噴射孔がそのように形成されたサブノズルでは、前記実施例のようなストレート部を有するものと比べて、位置Y及びその周辺における噴射孔の内周面の中心線方向の長さがより長いものとなる。
【0055】
なお、前記のように噴射孔における内側面側の部分にテーパ部を有する構成の場合に、サブノズルの先端の部分の肉厚が一様のままになっていると、そのテーパ部の拡径の度合いによっては、テーパ部の内周面とサブノズルの先端の部分の内側面との間に段差が生じる場合がある。そこで、そのような段差が生じる場合には、図11に示すように、その段差が生じるサブノズルの先端の部分の内側の位置に、テーパ部の内周面とサブノズルの先端の内側面とに連続する曲面状の斜面35を形成するようにしても良い。
【0056】
(3)前記実施例では、距離Cが0.5mmとなるように噴射孔が形成されている。しかし、本発明によるサブノズルにおいては、噴射孔が形成される位置は、距離Cが0.5mmとなる位置に限らず、距離Cが0.75mm以下となるような位置であれば良い。詳しくは、以下の通りである。
【0057】
一般に、製織工場においては、エネルギー節約の一環として空気噴射式織機において空気消費量を削減することが求められている。また、その削減量に関しては、風速比率3%以上大きくすることが求められている。そして、図10のグラフから読み取れるように、距離Cが0.75mm以下であれば、前記2種類のいずれの供給圧力の場合でも、風速比率が103よりも大きい値となる。すなわち、距離Cが0.75mm以下となるようにサブノズルの噴射孔を形成することで、3%以上という空気消費量の削減が求められている割合で風速比率の向上を図ることが可能となり、前記のような空気消費量の削減が可能となる。
【0058】
なお、距離Cについて、その距離Cは、前記正面視における位置Yとサブノズルの外周縁との間の距離であり、その距離が小さくなるのに伴い、サブノズルにおける位置Y周辺の壁の肉厚が薄くなる。そして、壁の肉厚が薄くなると、その分だけサブノズルの破損を招きやすくなる。一方、図10のグラフを見ると、供給圧力が0.3MPa及び0.4MPaのいずれの場合でも、距離Cが0.15mm以下では風速比率に変化が無いことが分かる。そこで、距離Cについては、0.15mm以上であることが望ましい。
【0059】
(4)前記実施例では、噴射孔は、その中心線がサブノズルの軸線と交わらないように形成されている。しかし、本発明によるサブノズルにおいては、そのサブノズルの前記平断面形状が円形である場合を除いては、噴射孔は、その中心線がサブノズルの軸線と交わるように形成されていても良い。そして、そのようなサブノズルでも、噴射孔の周縁の位置である位置Y及びその周辺における前記肉厚方向において、噴射孔の内周面は、前述のように中心線方向に長いものとなる。
【0060】
(5)前記実施例では、噴射孔は、前記正面視において、その中心と位置Xとを通る線(仮想線32/以下、「第1の仮想線」と言う。)が、サブノズルの軸線及びサブノズルの軸線と直交する線(仮想線41/以下、「第2の仮想線」と言う。)に対し角度(具体的には、第2の仮想線に対し70°程度の角度)を成すような位置に形成されている。しかし、本発明におけるサブノズルにおいては、噴射孔は、必ずしもそのような位置に形成されていなくても良い。
【0061】
例えば、前記実施例と同様に前記正面視において第1の仮想線がサブノズルの軸線及び第2の仮想線に対し角度を成すような位置に形成される場合であっても、その角度が前記実施例よりも大きく、あるいは小さくなるような位置に噴射孔を形成しても良い。
【0062】
また、噴射孔は、前記正面視において、その中心がサブノズルの軸線から外れた位置に位置すると共に、第1の仮想線が第2の仮想線と平行を成すような位置に形成されていても良い。そして、この場合でも、前述した噴射孔の前記幅方向における位置についての位置Yと前記平断面の形状(楕円形)との関係に関する説明から明らかなように、距離Cを小さくすることに伴い、位置Y及びその周辺の噴射孔の内周面の長さが中心線方向において長いものとなる。
【0063】
(6)前記実施例では、本発明によるサブノズルについて、その噴射孔が単一の孔により形成された例としてその構成を説明した。しかし、本発明においてそのサブノズルは、単一の孔が噴射孔として機能するものに限らず、例えば、噴射孔が形成されるべき領域に複数の孔が形成され、その複数の孔の集合が噴射孔として機能するように構成されたものであっても良い。その場合、サブノズルの表面において、その複数の孔の開口した領域が噴射孔における外側開口部に相当する領域となり、その領域の中心の位置が、噴射孔の中心に相当する位置となる。また、そのようなサブノズルでは、各孔は、同じ方向に向けて穿設されることから、噴射孔の中心線方向は、その穿設方向となる。
【0064】
なお、本発明は、以上で説明した例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 メインノズル
2 サブノズル
3 変形筬
4 筬羽
7 緯糸案内溝
8 リードホルダ
9 ノズルホルダ
10 噴射孔
11 基端部
12 主体部
14 中心軸線(軸線)
15 内側面
16 外側面
17 後壁部
18 前壁部
26 中心線
27 ストレート部
28 テーパ部
30 内側開口部
31 外側開口部
33 中心
35 斜面
40 中間部
42 長軸
43 短軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11