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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】増幅回路基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
H05K1/02 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019112827
(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公開番号】P2020205372
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 健太郎
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-155682(JP,A)
【文献】特開2006-229213(JP,A)
【文献】特開昭60-261159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の直線上に間隔をおいてそれぞれ配置されて互いに絶縁され、増幅回路の入力端子及び出力端子がそれぞれ接続される入力端子パターン及び出力端子パターンと、前記入力端子パターン及び前記出力端子パターンの周辺にそれぞれ配置され、前記入力端子パターン及び前記出力端子パターンから絶縁されかつ互いに絶縁されて、前記増幅回路の入力側及び出力側の各接地端子がそれぞれ接続される入力側GND(グランド、以下同じ。) パターン及び出力側GNDパターンと、を有する第1面と、
前記第1面から絶縁層を挟んだ位置に配置されて全体にGND電位が与えられ、前記絶縁層を貫通するスルーホール又はビアにより前記入力側GNDパターン及び前記出力側GNDパターンと接続されたGNDプレーンパターンを有する第2面とを備え、
前記第1面は、前記入力端子パターン及び前記出力端子パターンの間に配置された絶縁用GNDパターンをさらに有しており、
前記絶縁用GNDパターンと前記入力端子パターンとの間に、前記入力端子パターンから延出する入力側分離パターンが配置されており、前記絶縁用GNDパターンと前記出力端子パターンとの間に、前記出力端子パターンから延出する出力側分離パターンが配置されている、
増幅回路基板。
【請求項2】
前記GNDプレーンパターンは、前記第2面の全面に亘る大きさを有している請求項1記載の増幅回路基板。
【請求項3】
前記スルーホール又は前記ビアは、前記入力側GNDパターン及び前記出力側GNDパターンにおける、前記入力端子パターン及び前記出力端子パターンの前記直線と直交する幅方向の縁部に沿った部分に、それぞれ配置されている請求項1又は2記載の増幅回路基板。
【請求項4】
記絶縁層を貫通するスルーホール又はビアにより前記絶縁用GNDパターンと前記GNDプレーンパターンとが接続されている請求項1、2又は3記載の増幅回路基板。
【請求項5】
前記絶縁用GNDパターンは、前記入力端子パターン及び前記出力端子パターンから絶縁されている請求項1、2、3又は4記載の増幅回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅回路の入出力端子を有する増幅回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
増幅回路の出力が同位相で入力にフィードバックされると、増幅回路において発振が起こる。増幅回路の出力から入力へのフィードバックは、増幅信号が高周波であるほど大きくなる。したがって、増幅信号に含まれる高周波成分が大きいほど、増幅回路で起こる発振が大きくなる。
【0003】
増幅回路の発振を抑制するには、増幅回路の入力と出力との結合を抑えることが有効である。そこで、増幅回路の基板上に、入力から出力までの信号経路を直線状にレイアウトすることが提案されている(例えば、特許文献1)。また、増幅回路の入力と出力との間に遮断壁を配置して、両者間のアイソレーション(絶縁度)を向上させることも提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-103364号公報
【文献】特開2008-78721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の提案では、増幅回路の入力から出力までの信号経路を直線状にレイアウトすることで、入力と出力との間に長いGND配線が必要となるので、GND配線上で寄生インダクタンスによる交流の電位差が生じる。この電位差は、増幅回路のエミッタ接地のトランジスタのベース-エミッタ間容量を介して、増幅回路の出力側となるエミッタから入力側となるベースにフィードバックされ、増幅回路が発振する原因となる。増幅回路の利得が大きい場合は、増幅回路の発振も大きくなる。特に、増幅回路が高密度実装の基板上に実装されている場合は、入出力間のGND配線長が長くなり増幅回路の発振が顕著となってしまう。
【0006】
また、特許文献2の提案では、入力側のGNDと出力側のGNDとがシールドカバーを介して接続されている。このため、出力から入力へのフィードバックは遮断壁で防止できても、GND電位の変動は入力側のGNDと出力側のGNDとで共有されてしまう。例えば、入力側のGND電位に変動が生じると、その変動が増幅されて出力側のGNDに現れ、さらに、増幅された出力側のGND電位の変動がシールドカバーを介して入力側のGND電位にも反映されてしまう。
【0007】
そもそも、入力側のGND電位が変動すると、増幅回路は入力がなくても入力があるときのように増幅信号を出力するが、入力側のGND電位の変動が増幅されると、増幅回路の増幅信号も同様に増幅される。このような状態はまさに増幅回路が発振した状態であり、増幅回路の利得が大きい場合は、増幅回路の発振も大きくなる。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、増幅回路の発振を抑制することができる増幅回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様による増幅回路基板は、
同一の直線上に間隔をおいてそれぞれ配置されて互いに絶縁され、増幅回路の入力端子及び出力端子がそれぞれ接続される入力端子パターン及び出力端子パターンと、前記入力端子パターン及び前記出力端子パターンの周辺にそれぞれ配置され、前記入力端子パターン及び前記出力端子パターンから絶縁されかつ互いに絶縁されて、前記増幅回路の入力側及び出力側の各接地端子がそれぞれ接続される入力側GND(グランド、以下同じ。)パターン及び出力側GNDパターンと、を有する第1面と、
前記第1面から絶縁層を挟んだ位置に配置されて全体にGND電位が与えられ、前記絶縁層を貫通するスルーホール又はビアにより前記入力側GNDパターン及び前記出力側GNDパターンと接続されたGNDプレーンパターンを有する第2面と、
を備える。
【0010】
本発明の第1の態様による増幅回路基板によれば、第1面には、増幅回路の入力端子及び出力端子がそれぞれ接続される入力端子パターンと出力端子パターンとが、同一の直線上に間隔をおいて互いに絶縁された状態で配置されている。したがって、入力端子パターン及び出力端子パターン間に高いアイソレーションが確保されて両端子パターン間の信号の結合が起こりにくくなる。よって、両端子パターンを介して増幅回路の出力が入力にフィードバックされることが抑制される。
【0011】
また、第1面の両端子パターンの周辺にそれぞれ配置した入力側GNDパターン及び出力側GNDパターンは、絶縁層を貫通するスルーホール又はビアによって、第2面のGNDプレーンパターンに短い距離で接続されている。
【0012】
したがって、入力側GNDパターン及び出力側GNDパターンのそれぞれに、GNDプレーンパターンのGND電位との寄生インダクタンスによる電位差が発生しにくくなる。しかも、両GNDパターンが第1面上で接続されておらず絶縁されていることから、入力側GNDパターン及び出力側GNDパターンの第1面上での間隔が大きくても、それに起因する寄生インダクタンスによって両GNDパターン間に電位差が生じることはない。
【0013】
よって、入力側GNDパターン及び出力側GNDパターン間に電位差が生じにくくなり、増幅回路に対する入力がないときに、入力があるときのような増幅信号が増幅回路から出力されることが抑制される。
【0014】
以上から、増幅回路に入力される信号が仮に高周波成分を含んでいても、あるいは、増幅回路の利得が大きい場合であっても、増幅回路の発振を抑制することができる。
【0015】
また、本発明の第2の態様による増幅回路基板は、本発明の第1の態様による増幅回路基板において、前記GNDプレーンパターンは、前記第2面の全面に亘る大きさを有している。
【0016】
本発明の第2の態様による増幅回路基板によれば、本発明の第1の態様による増幅回路基板において、入力側GNDパターン及び出力側GNDパターンとGNDプレーンパターンとをスルーホール又はビアで接続する場所が、GNDプレーンパターンの配置による制約を受けなくなる。このため、第1面における入力側GNDパターン及び出力側GNDパターンの配置の自由度、あるいは、各GNDパターンをGNDプレーンパターンに接続するスルーホール又はビアの位置の自由度を、高めることができる。
【0017】
さらに、本発明の第3の態様による増幅回路基板は、本発明の第1又は第2の態様による増幅回路基板において、前記スルーホール又は前記ビアは、前記入力側GNDパターン及び前記出力側GNDパターンにおける、前記入力端子パターン及び前記出力端子パターンの前記直線と直交する幅方向の縁部に沿った部分に、それぞれ配置されている。
【0018】
本発明の第3の態様による増幅回路基板によれば、本発明の第1又は第2の態様による増幅回路基板において、入力側GNDパターン及び出力側GNDパターンの電位は、スルーホール又はビアによってGNDプレーンパターンに接続された箇所に近いほど、GND電位に近くなる。即ち、入力側GNDパターン及び出力側GNDパターンにおける、入力端子パターン及び出力端子パターンと近接した部分の電位が、最もGND電位に近い電位となる。
【0019】
このため、入力端子パターン及び出力端子パターンとそれらの周辺の入力側GNDパターン及び出力側GNDパターンとの電磁結合が抑制される。したがって、入力端子パターン及び出力端子パターンから外部へのノイズの放射と、入力端子パターン及び出力端子パターンに対する外部からのノイズの放射とを、入力側GNDパターン及び出力側GNDパターンのスルーホール又はビアによって抑制することができる。
【0020】
また、本発明の第4の態様による増幅回路基板は、本発明の第1、第2又は第3の態様による増幅回路基板において、前記第1面は、前記入力端子パターン及び前記出力端子パターンの間に配置された絶縁用GNDパターンをさらに有しており、前記絶縁層を貫通するスルーホール又はビアにより前記絶縁用GNDパターンと前記GNDプレーンパターンとが接続されている。
【0021】
本発明の第4の態様による増幅回路基板によれば、本発明の第1、第2又は第3の態様による増幅回路基板において、GND電位とされるGNDプレーンパターンに接続された絶縁用GNDパターンが、入力端子パターン及び出力端子パターンの間に配置される。このため、入力端子パターン及び出力端子パターン間のアイソレーションがより一層高まる。
【0022】
よって、入力端子パターン及び出力端子パターン間のアイソレーションをより一層高め、両端子パターンを介した増幅回路の出力から入力へのフィードバックを、効率的に抑制することができる。
【0023】
さらに、本発明の第5の態様による増幅回路基板は、本発明の第4の態様による増幅回路基板において、前記絶縁用GNDパターンは、前記入力端子パターン及び前記出力端子パターンから絶縁されている。
【0024】
本発明の第5の態様による増幅回路基板によれば、本発明の第4の態様による増幅回路基板において、入力用GNDパターン及び出力用GNDパターンと絶縁用GNDパターンとが、第1面において接続されておらず絶縁されている。このため、入力側GNDパターン及び出力側GNDパターンと絶縁用GNDパターンとの間隔が大きくても、それに起因する寄生インダクタンスによって、入力側GNDパターン及び出力側GNDパターンと絶縁用GNDパターンとの間に電位差が生じることがない。
【0025】
したがって、入力側GNDパターン及び出力側GNDパターンの電位は、第1面上での絶縁用GNDパターンとの間隔の大小に関係なく、スルーホール又はビアによって接続されたGNDプレーンパターンのGND電位に近い電位となる。よって、入力端子パターン及び出力端子パターン間に配置してGNDプレーンパターンのGND電位に近い電位とされた絶縁用GNDパターンにより、両端子パターン間のアイソレーションを効率的に高めることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、増幅回路の発振を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る増幅回路基板を利用した増幅回路モジュールを示す平面図である。
図2図1の増幅回路基板の平面図である。
図3図2の増幅回路基板のI-I線断面図である。
図4図2の増幅回路基板のII-II線断面図である。
図5図2の増幅回路基板のIII-III線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る増幅回路基板の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、増幅回路を増幅用IC(集積回路)で構成した場合を例に取って説明する。
【0029】
なお、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を以下に示す実施形態のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲においてのみ特定され、かつ、種々の変更を加えることができる。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係る増幅回路基板を利用した増幅回路モジュールを示す平面図である。図1に示す本実施形態の増幅回路モジュールは、増幅用IC3を増幅回路基板5に実装して構成されている。
【0031】
増幅用IC3は、例えば、エミッタ接地のバイポーラトランジスタによる増幅回路等を集積化したチップである。増幅用IC3は、2列×3本の6本のピン7~17を有している。1列目の1番ピン7は増幅信号の入力端子、2列目の6番ピン17は増幅信号の出力端子である。残る1列目の2番ピン9及び3番ピン11(請求項中の増幅回路の入力側接地端子に相当)と、2列目の4番ピン13及び5番ピン15(請求項中の増幅回路の出力側接地端子に相当)とは、いずれも接地端子である。
【0032】
増幅回路基板5は、コア材19(図3図5参照、請求項中の絶縁層に相当)の表裏に導電パターンをそれぞれ形成した四角形の両面基板で構成されている。増幅回路基板5の表面は、増幅用IC3を実装する実装面21(請求項中の第1面に相当)とされている。増幅回路基板5の裏面については後述する。
【0033】
図2は、増幅回路基板5を実装面21側から見た平面図である。実装面21には、銅箔による入力端子パターン23、出力端子パターン25、入力側GNDパターン27、出力側GNDパターン29及び絶縁用GNDパターン31が配置されている。各パターン23~31は互いに絶縁されている。
【0034】
入力端子パターン23及び出力端子パターン25は、一定幅の帯状にそれぞれ形成されており、増幅回路基板5の一辺に沿った仮想の直線S上に配置されている。各端子パターン23,25は、直線Sの両端に位置する増幅回路基板5の対向する一対の辺から中央に向けてそれぞれ延出している。増幅回路基板5の中央側に位置する各端子パターン23,25の先端は、直線Sの方向に離間している。
【0035】
入力側GNDパターン27及び出力側GNDパターン29は、入力端子パターン23及び出力端子パターン25の幅方向Wにおける両側にそれぞれ配置されている。各GNDパターン27,29は、直線Sの両端に位置する増幅回路基板5の対向する一対の辺から中央に向けてそれぞれ延出している。増幅回路基板5の中央側に位置する各GNDパターン27,29の先端は、入力端子パターン23及び出力端子パターン25の先端と同じく、直線Sの方向に離間している。
【0036】
なお、入力側GNDパターン27は入力端子パターン23から離間して配置されており、両者間は絶縁されている。また、出力側GNDパターン29は出力端子パターン25から離間して配置されており、両者間は絶縁されている。
【0037】
絶縁用GNDパターン31は、増幅回路基板5の中央部において、入力端子パターン23及び出力端子パターン25の先端間から、入力側GNDパターン27及び出力側GNDパターン29の先端間に亘って配置されている。さらに、絶縁用GNDパターン31は、入力端子パターン23及び出力端子パターン25の幅方向Wの両端に位置する増幅回路基板5の対向する一対の辺まで延在している。
【0038】
なお、入力側GNDパターン27及び絶縁用GNDパターン31の間は、実装面21の両GNDパターン27,31間に配置された入力側分離パターン33によって絶縁されている。また、出力側GNDパターン29及び絶縁用GNDパターン31の間は、実装面21の両GNDパターン29,31間に配置された出力側分離パターン35によって絶縁されている。
【0039】
入力側分離パターン33及び出力側分離パターン35は、入力端子パターン23及び出力端子パターン25の幅方向Wの両端に位置する増幅回路基板5の対向する一対の辺から中央に向けてそれぞれ延出している。増幅回路基板5の中央側に位置する各分離パターン33,35の先端は、入力端子パターン23及び出力端子パターン25の先端にそれぞれ接続されている。
【0040】
図3図5は、図2のI-I線、II-II線、III-III線における増幅回路基板5の断面図である。図3図5に示すように、上述した各パターン23~35が配置された増幅回路基板5の実装面21は、例えばソルダーレジストによる絶縁性被膜37で覆われている。
【0041】
図1及び図2に示すように、絶縁性被膜37は、下層のパターンを露出させる6つの窓部を有している。各窓部は、増幅用IC3の1番ピン7~6番ピン17を増幅回路基板5の対応するパターンにそれぞれ半田付けするための端子を構成する。
【0042】
6つの窓部のうち1つは、入力端子パターン23を露出させる入力端子39を構成している。入力端子39には、増幅用IC3の入力端子である1番ピン7が半田付けされる。6つの窓部のうち他の1つは、出力端子パターン25を露出させる出力端子41を構成している。出力端子41には、増幅用IC3の出力端子である6番ピン17が半田付けされる。
【0043】
6つの窓部のうち他の2つは、入力側GNDパターン27を露出させる接地端子43,45を構成し、6つの窓部のうち残る2つは、出力側GNDパターン29を露出させる接地端子47,49を構成している。これらの接地端子43~49には、増幅用IC3の接地端子である2番ピン9、3番ピン11、4番ピン13及び5番ピン15が半田付けされる。
【0044】
図3図5に示すように、増幅回路基板5の裏面は、GNDプレーンパターン51を全面に配置したGNDベタ面53(請求項中の第2面に相当)とされている。GNDプレーンパターン51の電位は、不図示の接地回路によってGND電位に保持される。
【0045】
図3及び図5に示すように、GNDプレーンパターン51は、コア材19を貫通するスルーホール55~59によって、入力側GNDパターン27、出力側GNDパターン29及び絶縁用GNDパターン31とそれぞれ接続されている。
【0046】
入力側GNDパターン27及びGNDプレーンパターン51を接続するスルーホール55は、図1及び図2に示すように、入力側GNDパターン27における入力端子パターン23寄りの縁部に沿って複数配置されている。このうち、増幅回路基板5の最も中央寄りのスルーホール55は、入力側GNDパターン27の接地端子43の近傍に配置されている。スルーホール55は、入力側GNDパターン27の接地端子45の近傍にも配置されている。
【0047】
出力側GNDパターン29及びGNDプレーンパターン51を接続するスルーホール57は、出力側GNDパターン29における出力端子パターン25寄りの縁部に沿って配置されている。スルーホール57は、出力側GNDパターン29の接地端子47,49の近傍にも、入力端子パターン23及び出力端子パターン25の幅方向Wに沿って配置されている。
【0048】
入力端子パターン23及び出力端子パターン25には、スルーホールが設けられていない。したがって、GNDプレーンパターン51は、図4に示すように、入力端子パターン23及び出力端子パターン25とそれぞれ絶縁されている。入力端子パターン23及び出力端子パターン25にそれぞれ接続された図1及び図2の入力側分離パターン33及び出力側分離パターン35も、GNDプレーンパターン51と絶縁されている。
【0049】
以上に説明した本実施形態の増幅回路モジュール1では、増幅用IC3の1番ピン7(入力端子)及び6番ピン17(出力端子)が接続される入力端子パターン23及び出力端子パターン25を、増幅回路基板5の実装面21の直線S上に間隔をおいて配置した。このため、入力端子パターン23と出力端子パターン25とを遠ざけて、両端子パターン23,25間に高いアイソレーションを確保することができる。したがって、両端子パターン23,25間の信号の結合を起こりにくくして、6番ピン17(出力端子)から1番ピン7(入力端子)に増幅信号がフィードバックされるのを抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態の増幅回路モジュール1では、実装面21の入力端子パターン23及び出力端子パターン25の周辺に、入力側GNDパターン27及び出力側GNDパターン29を配置した。そして、増幅回路基板5の実装面21とは反対側のGNDベタ面53にGNDプレーンパターン51を配置した。さらに、増幅回路基板5のコア材19を貫通する複数のスルーホール55,57によって、実装面21の入力側GNDパターン27及び出力側GNDパターン29とGNDベタ面53のGNDプレーンパターン51とを最短距離で接続した。
【0051】
このため、入力側GNDパターン27及び出力側GNDパターン29のそれぞれに、寄生インダクタンスによるGNDプレーンパターン51のGND電位との電位差が発生しにくくなる。しかも、両GNDパターン27,29が増幅回路基板5の実装面21において接続されておらず絶縁されていることから、それに起因する寄生インダクタンスによって両GNDパターン27,29間に電位差が生じることはない。
【0052】
したがって、実装面21上での入力側GNDパターン27及び出力側GNDパターン29の間隔が大きくても、両GNDパターン27,29間に電位差が生じにくくなる。よって、増幅用IC3の1番ピン7に対する入力がないときに、入力があるときのような増幅信号が増幅用IC3の6番ピン17から出力されるのを抑制することができる。
【0053】
以上により、増幅用IC3の1番ピン7に入力される信号係に高周波成分を含んでいても、あるいは、増幅用IC3の増幅回路の利得が大きい場合であっても、増幅回路が発振するのを抑制することができる。
【0054】
なお、絶縁用GNDパターン31の入力端子パターン23及び出力端子パターン25間に位置する部分の直線Sの方向における寸法は、できるだけ大きくする方が、両端子パターン23,25間のアイソレーションを高める上で有利である。また、実装面21上の各パターン23~31の形状、寸法、各端子パターン23,25と周辺の各GNDパターン27,29,31との間隔等は、コア材19の板厚、増幅回路基板5の誘電率、増幅する信号の周波数帯等に応じて、適切な値に設定することができる。
【0055】
例えば、増幅回路モジュール1を、アンテナによる高周波の受信信号を増幅するのに用いる場合は、増幅回路モジュール1の特性インピーダンスが高周波アンテナの一般的な特性インピーダンスである50Ω(50ω)となるように、上記の値を設定すればよい。
【0056】
また、各GNDパターン27,29,31の面積は、広ければ広いほど、入力端子パターン23及び出力端子パターン25間のアイソレーションを高める上で有利である。
【0057】
さらに、増幅回路基板5のGNDプレーンパターン51は、コア材19の裏面の一部の領域を覆う大きさであってもよい。
【0058】
一方、本実施形態では、GNDベタ面53の全面に亘りGNDプレーンパターン51を配置したので、入力側GNDパターン27をスルーホール55でGNDプレーンパターン51に接続する場所が、GNDプレーンパターン51の配置による制約を受けなくなる。同様に、出力側GNDパターン29をスルーホール57でGNDプレーンパターン51に接続する場所も、GNDプレーンパターン51の配置による制約を受けなくなる。
【0059】
即ち、GNDベタ面53の全面に亘ってGNDプレーンパターン51を配置することで、実装面21における入力側GNDパターン27及び出力側GNDパターン29の配置の自由度を高めることができる。あるいは、各GNDパターン27,29をGNDプレーンパターン51に接続するスルーホール55,57の位置の自由度を、高めることができる。
【0060】
具体的には、例えば、本実施形態の増幅回路モジュール1のように、入力側GNDパターン27及び出力側GNDパターン29を、入力端子パターン23及び出力端子パターン25の幅方向Wにおける縁部に沿った部分に配置することができる。この配置により、入力側GNDパターン27における入力端子パターン23に近い部分の電位を、GNDプレーンパターン51のGND電位に最も近付けることができる。同様に、出力側GNDパターン29における出力端子パターン25に近い部分の電位を、GNDプレーンパターン51のGND電位に最も近付けることができる。
【0061】
したがって、入力端子パターン23及び入力側GNDパターン27間の電磁結合を抑制し、入力端子パターン23から外部へのノイズの放射と、入力端子パターン23に対する外部からのノイズの放射とを抑制する構成を、実現することができる。同様に、出力側GNDパターン29及び出力端子パターン25間の電磁結合を抑制し、出力端子パターン25から外部へのノイズの放射と、出力端子パターン25に対する外部からのノイズの放射とを抑制する構成を、実現することができる。
【0062】
但し、入力側GNDパターン27及び出力側GNDパターン29をGNDプレーンパターン51に接続するスルーホール55,57の数、位置は、増幅回路基板5に求められる特性、コスト等を考慮して、適宜に決定することができる。
【0063】
また、本実施形態において、増幅回路基板5の実装面21における入力端子パターン23及び出力端子パターン25間に配置した絶縁用GNDパターン31と、これをGNDプレーンパターン51に接続するスルーホール59とは、省略してもよい。
【0064】
一方、本実施形態では、直線Sの方向に間隔を空けた入力端子パターン23及び出力端子パターン25間のアイソレーションが、両者間に配置してGNDプレーンパターン51に接続した絶縁用GNDパターン31によって、より一層高まる。したがって、両端子パターン23,25を介した増幅用IC3の6番ピン17(出力端子)から1番ピン7(入力端子)への増幅信号のフィードバックを、効率的に抑制することができる。
【0065】
なお、絶縁用GNDパターン31を実装面21に配置する場合、絶縁用GNDパターン31は、入力側GNDパターン27及び出力側GNDパターン29のうち一方又は両方と、実装面21において接続されていてもよい。
【0066】
一方、本実施形態では、実装面21上での入力側GNDパターン27と絶縁用GNDパターン31との間隔が大きくても、実装面21において絶縁されている両GNDパターン27,31間には、寄生インダクタンスによる電位差が発生しない。同様に、実装面21上での出力側GNDパターン29と絶縁用GNDパターン31との間隔が大きくても、実装面21において絶縁されている両GNDパターン29,31間には、寄生インダクタンスによる電位差が発生しない。
【0067】
したがって、入力側GNDパターン27及び出力側GNDパターン29の電位は、実装面21上での絶縁用GNDパターン31との間隔の大小に関係なく、スルーホール55,57によって接続されたGNDプレーンパターン51のGND電位に近い電位となる。よって、入力端子パターン23及び出力端子パターン25間に配置してGNDプレーンパターン51のGND電位に近い電位とされた絶縁用GNDパターン31により、両端子パターン23,25間のアイソレーションを効率的に高めることができる。
【0068】
また、本実施形態では、増幅回路基板5を両面基板とした。そして、実装面21の入力側GNDパターン27、出力側GNDパターン29及び絶縁用GNDパターン31とGNDベタ面53のGNDプレーンパターン51とを、コア材19を貫通するスルーホール55,57,59によって接続した。しかし、増幅回路基板5を多層基板で構成して、GNDプレーンパターン51を中間層のプリプレグの片面に配置してもよく、また、各GNDパターン27,29,31とGNDプレーンパターン51とをビアによって接続する構成としてもよい。
【0069】
以上に説明した本実施形態の増幅回路モジュール1は、信号を増幅する際の発振を抑える目的で、広く利用することができる。例えば、全地球航法衛星システム(GNSS;Global Navigation Satellite System)等の測位衛星からの航法信号を地上で受信するアンテナの受信信号を増幅する際に利用すると、次の理由により有利である。
【0070】
即ち、測位衛星からの航法信号の送信出力が微弱であるため、航法信号を受信したアンテナから出力される受信信号の電力は、一般に、-150~-130dBm程度の低さと言われている。したがって、アンテナの受信信号は大きい利得(例えば、増幅回路の1段当たり30dB以上)で増幅する必要がある。また、測位衛星は地上約20000kmの準同期軌道上を周回しているので、測位衛星が出力する航法信号は高周波信号である。
【0071】
このように、高周波信号を大きい利得で増幅するアンテナ用の増幅回路では、出力側から入力側への信号のフィードバックによって増幅回路が発振しやすい傾向がある。
【0072】
これに対し、本実施形態では、出力端子パターン25から入力端子パターン23(増幅用IC3の6番ピン17(出力端子)から1番ピン7(入力端子))へのフィードバックが抑制される。このため、微弱で高周波成分を含むアンテナの受信信号の増幅に増幅回路モジュール1を用いると、高周波の受信信号を増幅用IC3により発振させずに大きい利得で増幅させることができ、有利である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、増幅回路の入出力端子を有する増幅回路基板に適用して極めて有用である。
【符号の説明】
【0074】
3 増幅用IC(増幅回路)
5 増幅回路基板
7 1番ピン(増幅回路の入力端子)
9 2番ピン(増幅回路の入力側接地端子)
11 3番ピン(増幅回路の入力側接地端子)
13 4番ピン(増幅回路の出力側接地端子)
15 5番ピン(増幅回路の出力側接地端子)
17 6番ピン(増幅回路の出力端子)
19 コア材
21 実装面(第1面)
23 入力端子パターン
25 出力端子パターン
27 入力側GNDパターン
29 出力側GNDパターン
31 絶縁用GNDパターン
33 入力側分離パターン
35 出力側分離パターン
37 絶縁性被膜
39 入力端子
41 出力端子
43~49 接地端子
51 GNDプレーンパターン
53 GNDベタ面(第2面)
55~59 スルーホール
S 直線
W 幅方向(入力端子パターン及び出力側GNDパターンの幅方向)
図1
図2
図3
図4
図5