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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】捕獲網展開飛翔装置
(51)【国際特許分類】
   F42B 12/68 20060101AFI20231011BHJP
   F41B 15/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
F42B12/68
F41B15/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019188726
(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公開番号】P2021063616
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390037224
【氏名又は名称】日本工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100097319
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100201673
【弁理士】
【氏名又は名称】河田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】松崎 伸一
(72)【発明者】
【氏名】向田 祐二
(72)【発明者】
【氏名】早川 芳仁
(72)【発明者】
【氏名】矢野 英治
(72)【発明者】
【氏名】川堀 正幸
(72)【発明者】
【氏名】野地 祐貴
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0283828(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0261292(US,A1)
【文献】特表2000-513089(JP,A)
【文献】特開2014-159941(JP,A)
【文献】特表平10-503140(JP,A)
【文献】実公昭49-003189(JP,Y1)
【文献】米国特許第08205537(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41B 15/00
F41H 13/00
F42B 10/32
F42B 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が閉口された筒形状のケースと、
捕獲網と、前記捕獲網の外周縁部に取り付けられた複数の錘と、前記ケースから射出させる射出用ガス及び前記射出用ガスの発生から所定時間遅延して前記複数の錘を放射方向に飛散させる飛散用ガスを放出する放出装置と、前記複数の錘と前記捕獲網とを、前記放出装置側から前記複数の錘、前記捕獲網の順で配置した状態で、前記複数の錘及び前記捕獲網の外周を包囲する包装体とを有し、前記放出装置が前記ケースの閉口された端部側に位置した状態で前記ケースに収納される飛翔体と、
前記捕獲網が配置される端部側で前記飛翔体に固定され、前記飛翔体が前記ケースから射出されたときに前記飛翔体の飛翔方向の後方に伸びて、前記ケースから射出された前記飛翔体の飛翔姿勢を安定させる飛翔安定部材と、
を含み、
前記放出装置は、
前記射出用ガスを発生する放出薬を収納する第1の筒部材と、
前記飛散用ガスを発生する展開薬を収納する第2の筒部材と、
前記放出薬の燃焼により引火して、前記所定時間経過後に前記第2の筒部材に収納された前記展開薬を点火する延時薬を収納する第3の筒部材と、
を含むことを特徴とする捕獲網展開飛翔装置。
【請求項2】
請求項1に記載の捕獲網展開飛翔装置において、
前記放出装置が配置される一端側とは反対側の端部に配置され、前記包装体に包装された前記捕獲網を保護するとともに、前記飛翔安定部材が固定される保護部材を含み、
前記包装体は、前記複数の錘及び前記捕獲網の他に、前記保護部材の外周を包囲することを特徴とする捕獲網展開飛翔装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の捕獲網展開飛翔装置において、
前記飛翔安定部材は、飛翔する前記飛翔体に作用する前記飛翔安定部材の抗力に基づくモーメントによって、飛翔する前記飛翔体に作用する転倒モーメントを相殺することを特徴とする捕獲網展開飛翔装置。
【請求項4】
請求項3に記載の捕獲網展開飛翔装置において、
前記飛翔安定部材の総面積は、前記飛翔体に作用する前記飛翔安定部材の抗力に基づくモーメントが、前記飛翔体の飛翔時に作用する転倒モーメント以上となるように設定されることを特徴とする捕獲網展開飛翔装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の捕獲網展開飛翔装置において、
前記飛翔安定部材は、リボンであり、
前記リボンの幅は、前記飛翔体の外周長を、前記飛翔体に固定する前記リボンの数で除算した値以下に設定されることを特徴とする捕獲網展開飛翔装置。
【請求項6】
請求項5に記載の捕獲網展開飛翔装置において、
前記リボンの幅は、5mm以上40mm以下であることを特徴とする捕獲網展開飛翔装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の捕獲網展開飛翔装置において、
前記リボンの本数は、3本以上24本以下で、所定角度間隔を空けて前記飛翔体に配置されることを特徴とする捕獲網展開飛翔装置。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の捕獲網展開飛翔装置において、
前記リボンの幅は、80mm以上500mm以下であることを特徴とする捕獲網展開飛翔装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の捕獲網展開飛翔装置において、
前記第2の筒部材は、前記第1の筒部材に収納された前記第3の筒部材に取り付けられることを特徴とする捕獲網展開飛翔装置。
【請求項10】
請求項9に記載の捕獲網展開飛翔装置において、
前記複数の錘は、前記第2の筒部材の外周に沿って配置された状態で、前記放出装置に固定されることを特徴とする捕獲網展開飛翔装置。
【請求項11】
請求項10に記載の捕獲網展開飛翔装置において、
前記複数の錘を前記第2の筒部材の外周に沿って配置することで形成される空間に設けられ、前記展開薬の燃焼による前記捕獲網の破損を防止する破損防止部材を有することを特徴とする捕獲網展開飛翔装置。
【請求項12】
請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の捕獲網展開飛翔装置において、
前記ケースは、閉口した端部に、前記放出薬を点火する火薬を収納した雷管を有することを特徴とする捕獲網展開飛翔装置。
【請求項13】
請求項12に記載の捕獲網展開飛翔装置において、
前記ケースは、
両端が開口され筒形状のケース本体と、
前記雷管を保持した状態で前記ケース本体の一端に固定されるホルダと、
を含むことを特徴とする捕獲網展開飛翔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上空を飛翔する無人航空機(マルチコプターなどの無人浮遊機を含む)の捕獲に用いられ、ガス筒発射器で射出可能な捕獲網展開飛翔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信を用いた遠隔操作や自動制御で飛行する無人航空機が一般に提供されている。無人航空機は、遊び目的や搭載されるデジタルカメラ(デジタルビデオカメラを含む)による空撮を行う目的のために使用される。また、無人航空機は、例えば人間が立ち入ることが困難となる場所の検査や、状況把握を行う目的で使用される。その一方で、重要施設などの飛行禁止区域における無人航空機の飛行や、公共の安全に被害を与える物質や爆破物を搭載した無人航空機による攻撃などが問題視され、また、これらの事件が発生している。
【0003】
このような危険性を有する無人航空機に対しては、公共の安全に被害を与える物質や爆破物の周囲への影響範囲外から対処することが求められる。したがって、例えば、無人航空機を飛翔させて、無人航空機の下部に取り付けた捕獲網を捕獲対象となる無人航空機に絡ませて該無人航空機を飛翔不能にして捕獲する、又は、無人航空機に設置した捕獲網を捕獲対象となる無人航空機に向けて射出し、射出した捕獲網を展開させて捕獲対象となる無人航空機に絡ませて飛翔不能にして捕獲するなどの方法が考案されている。また、地上にて犯人を捕獲する方法として、銃から錘及びネットパッケージからなる組み合わせ体を放出し、放出された組み合わせ体を飛翔させながらネットを展開させ、展開したネットにより犯人を捕捉する方法が提案される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2000-513089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される拘束ネットシステムでは、犯人の有効捕獲範囲を例えば1.5m以内としており、有効捕獲範囲が狭い。したがって、このような拘束ネットシステムを無人航空機の捕獲時に利用する場合には、上述した影響範囲外から組み合わせ体を飛翔させる必要があることから、その飛翔距離を長くする必要がある。例えば組み合わせ体の飛翔距離を長くするためには、放出弾薬の弾薬量を多くする必要がある。一般的に、物体の重心にはモーメント(以下、転倒モーメント)が作用している。転倒モーメントは、物体を飛翔させる際に物体の飛翔姿勢を不安定とするものであるので、単に、放出弾薬の弾薬量を多くするだけでは、組み合わせ体の飛翔姿勢が安定せず、組み合わせ体の飛翔距離を長くすることは困難である。
【0006】
本発明は斯かる課題に応えるために為されたもので、上空を飛翔する小型無人航空機を捕獲するため、ガス筒発射器で射出可能な有効射程の長い捕獲網展開飛翔装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために発明されたものであり、本発明の捕獲網展開飛翔装置は、一端が閉口された筒形状のケースと、捕獲網と、前記捕獲網の外周縁部に取り付けられた複数の錘と、前記ケースから射出させる射出用ガス及び前記射出用ガスの発生から所定時間遅延して前記複数の錘を放射方向に飛散させる飛散用ガスを放出する放出装置と、前記複数の錘と前記捕獲網とを、前記放出装置側から前記複数の錘、前記捕獲網の順で配置した状態で、前記複数の錘及び前記捕獲網の外周を包囲する包装体とを有し、前記放出装置が前記ケースの閉口された端部側に位置した状態で前記ケースに収納される飛翔体と、前記捕獲網が配置される端部側で前記飛翔体に固定され、前記飛翔体が前記ケースから射出されたときに前記飛翔体の飛翔方向の後方に伸びて、前記ケースから射出された前記飛翔体の飛翔姿勢を安定させる飛翔安定部材と、を含み、前記放出装置は、前記射出用ガスを発生する放出薬を収納する第1の筒部材と、前記飛散用ガスを発生する展開薬を収納する第2の筒部材と、前記放出薬の燃焼により引火して、前記所定時間経過後に前記第2の筒部材に収納された前記展開薬を点火する延時薬を収納する第3の筒部材と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、前記放出装置が配置される一端側とは反対側の端部に配置され、前記包装体に包装された前記捕獲網を保護するとともに、前記飛翔安定部材が固定される保護部材を含み、前記包装体は、前記複数の錘及び前記捕獲網の他に、前記保護部材の外周を包囲することを特徴とする。
【0009】
また、前記飛翔安定部材は、飛翔する前記飛翔体に作用する前記飛翔安定部材の抗力に基づくモーメントによって、飛翔する前記飛翔体に作用する転倒モーメントを相殺することを特徴とする。
【0010】
この場合、前記飛翔安定部材の総面積は、前記飛翔体に作用する前記飛翔安定部材の抗力に基づくモーメントが、前記飛翔体の飛翔時に作用する転倒モーメント以上となるように設定されることを特徴とする。
【0011】
また、前記飛翔安定部材は、リボンであり、前記リボンの幅は、前記飛翔体の外周長を、前記飛翔体に固定する前記リボンの数で除算した値以下に設定されることが好ましい。また、前記リボンの幅は、5mm以上40mm以下であることが好ましい。また、前記リボンの本数は、3本以上24本以下で、所定角度間隔を空けて前記飛翔体に配置されることが好ましい。さらに、前記リボンの幅は、80mm以上500mm以下であることが好ましい。
【0013】
ここで、前記第2の筒部材は、前記第1の筒部材に収納された前記第3の筒部材に取り付けられることが好ましい。
【0014】
さらに、前記複数の錘は、前記第2の筒部材の外周に沿って配置された状態で、前記放出装置に固定されることを特徴とする。
【0015】
この場合、前記複数の錘を前記第2の筒部材の外周に沿って配置することで形成される空間に設けられ、前記展開薬の燃焼による前記捕獲網の破損を防止する破損防止部材を有することが好ましい。
【0016】
なお、前記ケースは、閉口した端部に、前記放出薬を点火する火薬を収納した雷管を有することを特徴とする。
【0017】
また、前記ケースは、両端が開口され筒形状のケース本体と、前記雷管を保持した状態で前記ケース本体の一端に固定されるホルダと、を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上空を飛翔する小型無人航空機を捕獲するため、ガス筒発射器で射出可能な有効射程の長い捕獲網展開飛翔体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の捕獲網展開飛翔装置の一例を示す断面図である。
図2図1に示す捕獲網展開飛翔装置を分解して示す斜視図である。
図3】ケース本体の内部の構造を例示する断面図である。
図4】(a)は四角形状の捕獲網を展開したときの図、(b)は八角形状の捕獲網を展開したときの図である。
図5】放出装置の一例を示す断面図である。
図6】飛翔する飛翔体に作用するモーメントについて説明する図である。
図7】飛翔体が射出されてから、捕獲対象となる無人航空機を捕獲するまでの動きを示す図である。
図8】(a)雷管が撃鉄に叩かれてから放出薬に引火するまでの燃焼の流れ、(b)は放出薬が引火してから展開薬が引火するまでの燃焼の流れを示す図である。
図9】飛翔体の飛翔姿勢の検証試験の内容を説明する図である。
図10】飛翔体に用いるリボンの仕様を示す図である。
図11】飛翔姿勢(ピッチ角)の時間的遷移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の捕獲網展開飛翔装置について、図面を用いて説明する。
【0021】
図1は捕獲網展開飛翔装置の一例を示す断面図、図2は捕獲網展開飛翔装置を分解して示す斜視図、図3はケース本体の一構成を示す断面図である。捕獲網展開飛翔装置10は、ケース15、保護キャップ16及び飛翔体17を含む。ケース15は、ケース本体21、ケースホルダ22を有する。
【0022】
本実施形態では、ケース本体21とケースホルダ22とを別部材から構成したケース15を一例として説明するが、ケース本体とケースホルダとを一体に設けたケースとしてもよい。
【0023】
ケース本体21は、例えば両端が開口された円筒形状の部材である。ケース本体21の材質は、例えば鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなどの金属である。ケース本体21は、軸方向(図1中C1方向)における一端部にケースホルダ22を、他端部に保護キャップ16を各々保持する。ケース本体21は、飛翔体17を収納する飛翔体収納部21aと、ケースホルダ22を収納するホルダ収納部21bとを有する。なお、飛翔体収納部21aの内径D1は、ホルダ収納部21bの内径D2よりも大きい。したがって、飛翔体収納部21aとホルダ収納部21bとの間には、内径の差に基づいた段差面21cが形成される。この段差面21cには、後述する飛翔体17を構成する放出装置31が突き当てられる。
【0024】
また、ホルダ収納部21bにおいては、ケース本体21の端面21dから所定の範囲A1において、ホルダ収納部21bの内径D2よりも大きい内径D3となっている。ケース本体21の端面21dから所定の範囲A1において、ホルダ収納部21bの内径D2よりも大きい内径D3となっている空間21eには、ケースホルダ22に取り付けたパッキン25が入り込む。
【0025】
ケースホルダ22は、ケース本体21の端面21d側に取り付けられる部材である。ケースホルダ22の材質は、例えば鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなどの金属である。ケースホルダ22は、軸方向における一端部に、ケースホルダ22の外周面から突出するフランジ部22aを有する。また、ケースホルダ22は、フランジ部22aに近接する位置に、外周面の全周に亘る溝部22bを有している。溝部22bは、環状のパッキン25を収納保持する。
【0026】
ケースホルダ22は、軸方向において、フランジ部22aが形成される一端側とは反対側の端部に、後述する放出装置31の一端が挿入される収納空間22cを有する。また、ケースホルダ22は、フランジ部22aが形成される一端側には、雷管26を収納する雷管収納空間(図示省略)を有する。なお、図1中符号22dは、雷管収納空間と収納空間22cとの間に設けられ、雷管26の内部に設けた火薬が燃焼する際に発生する火花や燃焼ガスが通過する伝火孔(フラッシュホール)である。
【0027】
パッキン25は、円形の断面形状を有する環状の部材である。パッキン25の材質は、例えばニトリルゴム、ウレタンゴムなどのゴムや、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリウレタンなどの合成樹脂である。パッキン25は、ケースホルダ22の溝部22bに挿入保持される。パッキン25は、ケースホルダ22の溝部22bに挿入保持された状態では、ケースホルダ22の溝部22bから一部が露呈される。この状態で、ケースホルダ22をケース本体21に取り付けると、パッキン25は、ケース本体21の内周面21fと、ケースホルダ22の溝部22bの底面との間で圧接された状態となる。
【0028】
保護キャップ16は、ケース本体21のケースホルダ22が取り付けられる一端部とは反対側の他端部に取り付けられる。保護キャップ16は、ケース本体21に装着することで、捕獲網展開飛翔装置10の保管時に、ケース15の内部に収納される飛翔体17を保護する。なお、保護キャップ16は、後述するガス筒発射器70に捕獲網展開飛翔装置10を装填する際に取り外される。保護キャップ16の材質は、例えば鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなどの金属、又はABS樹脂、ポリエチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリウレタンなどの合成樹脂である。
【0029】
飛翔体17は、捕獲網28、錘29、放出装置31、保護板(請求項に記載の破損防止部材に相当)32、保護蓋(請求項に記載の保護部材に相当)33、包装体34等を有する。
【0030】
捕獲網28は、捕獲網28の外周縁部に紐部材を介して取り付けた錘29が放射状に飛散することにより展開される。捕獲網28の材質は、ケプラー、ベクトラン、ポリエステル、ナイロン、綿、絹などの糸である。また、図4(a)又は図4(b)に示すように、捕獲網28は、例えば外形形状が四角形状の捕獲網28’であってもよいし、外形形状が八角形状の捕獲網28”であってもよい。なお、捕獲網28の外形形状は、捕獲網28を展開させた後に、捕獲対象となる無人航空機に絡まることが可能であればよく、四角形状、八角形状以外の多角形状であってもよいし、他の外形形状としてもよい。なお、捕獲網28は、外周縁部に取り付けた複数の錘をまとめた状態で折り畳まれ、折り畳まれた状態で飛翔体17に組み込まれる。
【0031】
錘29は、捕獲網28の外周縁部に、図示を省略した紐部材を介して複数取り付けられる。錘29が取り付けられる捕獲網28の位置としては、捕獲網28の頂点及び隣り合う頂点を結ぶ線の中点等が挙げられる。なお、錘29の材質は、例えば鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなどの金属である。なお、図2においては、8個の錘29を用いた場合を示しているが、錘29の数は捕獲網28の外形形状に合わせて設定されるものである。
【0032】
ここで、飛翔体17を形成する状態では、錘29は、放出装置31の展開薬ケース43の外周に沿って配置される。放出装置31の展開薬ケース43の外周に沿って配置された状態では、錘29は、両面テープなどにより放出装置31の外筒41に固定される。
【0033】
放出装置31は、飛翔体17をケース15から射出させるとともに、飛翔体17が飛翔している状態で錘29を放射状に飛散させて捕獲網28を展開させる装置である。図5に示すように、放出装置31は、外筒(請求項に記載の第1の筒部材に相当)41、内筒(請求項に記載の第3の筒部材に相当)42及び展開薬ケース(請求項に記載の第2の筒部材に相当)43を有する。
【0034】
外筒41は、異なる外径の円筒を軸方向(図5中C2方向)に同軸となるように組み合わせた形状の部材である。外筒41の材質は、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリウレタンなどの合成樹脂である。なお、外筒の形状として、異なる外径の円筒を軸方向に同軸となるように組み合わせた形状を例に挙げているが、外筒の形状は、本実施形態に限定されるものではなく、適宜の形状を用いることが可能である。
【0035】
外筒41は、外径の小さい一端面41aから外径の大きい他端面41bに向けて、放出薬45が収納される放出薬収納部41c、内筒42が収納される内筒収納部41dを、放出薬収納部41c、内筒収納部41dの順で有する。ここで、放出薬収納部41cの内径は、内筒収納部41dの内径未満である。したがって、放出薬収納部41cと内筒収納部41dとの間には、内径の差による段差面41eが設けられる。この段差面41eには、内筒42が突き当てられる。また、外筒41は、外周面に全周に亘って溝部41fを有する。溝部41fには、パッキン46が収納保持される。
【0036】
パッキン46は、断面形状が矩形状や円形状である、環状の部材である。パッキン46の材質は、例えばニトリルゴム、ウレタンゴムなどのゴムや、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリウレタンなどの合成樹脂である。
【0037】
放出薬45は、燃焼時に発生する燃焼ガス(請求項に記載の射出用ガスに相当)により、ケース15の内部に収納される飛翔体17をケース15の内部から射出するために設けられる。放出薬45は、一例として黒色火薬、無煙火薬等である。放出薬45は、伝火孔22dから収納空間22cに伝播した雷管26内の火薬の燃焼に基づいた火種により引火する。なお、雷管26内の火薬の燃焼は、後述するガス筒発射器70が有する撃鉄による打叩により生じるものである。
【0038】
引火した放出薬45は、一端面41aから他端面41b側に向けて燃焼する。その際に、燃焼ガスが発生する。燃焼ガスは、収納空間22cの内周面と放出装置31との間の領域に充填されていく。なお、この領域に充填された燃焼ガスの圧力が所定値以上となることで、ケース15の内部に収納される飛翔体17をケースの外部に向けて押し出す。
【0039】
上述した放出薬収納部41cは、放出薬45を装填した状態で保持シール47を一端面41aに貼付することで密閉される。保持シール47は、一例としてアルミシールである。なお、保持シール47の材質としては、雷管26の内部の火薬が燃焼することによる火種や燃焼ガスにより容易に破壊される材質であればよい。
【0040】
パッキン46は、外筒41の溝部41fに収納保持される。パッキン46は、外筒41の溝部41fに挿入保持された状態では、外筒41の溝部41fから一部が露呈される。例えば飛翔体17をケース本体21に収納すると、パッキン46は、外筒41の溝部41fの底面と、ケース本体21の内周面21gとの間で圧接された状態となる。上述したように、パッキン25は、ケース本体21の内周面21fとケースホルダ22の溝部22bの底面との間で圧接される。したがって、飛翔体17をケース15の内部に収納した状態では、パッキン25及びパッキン46の間におけるケース15の内部空間(図示省略)が気密に保持される。
【0041】
内筒42は、外筒41の内筒収納部41dに収納される。内筒42の材質は、例えば鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなどの金属、又はABS樹脂、ポリエチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリウレタンなどの合成樹脂である。
【0042】
内筒42は、軸方向(図5中C2方向)における一端側に延時薬収納部42aを、軸方向における一端側とは反対側の端面42bに、該端面42bから突出する係止部42cを有する。なお、内筒42に設けられる係止部42cの中心には、延時薬収納部42aと連通する挿通孔42dが設けられる。この挿通孔42dは、延時薬筒48を延時薬収納部42aに収納する際に、該延時薬筒48から突出する速火線48aが挿通される。なお、延時薬筒48を内筒42に収納した状態では、速火線48aは、係止部42cから外部に突出した状態となる。
【0043】
延時薬筒48は、延時薬49を収納保持する。延時薬49は、放出薬45の引火(或いは放出薬45の燃焼)に対して、後述する展開薬51の引火(或いは展開薬51の燃焼)を遅延させるための薬剤である。延時薬49は、例えばボロン系延時薬、マンガン系延時薬などの火薬である。なお、放出薬45の引火から展開薬51の引火までの遅延時間は、放出薬45及び延時薬49の薬量によって調整することが可能である。
【0044】
速火線48aは、内部に、一例として黒色火薬を収納する。速火線48aは、延時薬49が燃焼してから所定時間経過したときに内部の火薬が引火して燃焼する。なお、速火線48aは、延時薬筒48の根元側から速火線48aの先端に向けて燃焼する。この燃焼の際に、後述する展開薬51が引火して、展開薬51の燃焼が開始される。
【0045】
展開薬ケース43は、一端が閉口された筒形状の部材である。展開薬ケース43の材質は、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリウレタンなどの合成樹脂の他、紙などである。つまり、展開薬ケース43は、展開薬51の燃焼、又は展開薬51の燃焼により発生する燃焼ガスによって容易に破砕される材質であればよい。
【0046】
展開薬ケース43は、内部に展開薬51を収納した状態で、内筒42の係止部42cに取り付けられる。なお、符号43aは、内筒42の係止部42cに係合される係合部である。展開薬ケース43の係合部43aが内筒42の係止部42cに係合される(展開薬ケース43が内筒42に取り付けられる)と、係止部42cの挿通孔42dに挿通された速火線48aは、展開薬ケース43に収納された展開薬51の内部に挿入された状態で保持される。
【0047】
展開薬ケース43の外周面には、溝部43bが全周に亘って設けられる。溝部43bは、展開薬51の燃焼時に発生する燃焼ガスにより展開薬ケース43を破壊し易くする。なお、図5においては、溝部43bは、該展開薬ケース43の軸方向に対して、展開薬ケース43の外周面の1箇所に設けた場合を例示しているが、溝部43bは、複数箇所に設けることが可能である。
【0048】
展開薬51は、速火線48aの燃焼により引火して燃焼を開始し、その燃焼時に燃焼ガス(請求項に記載の飛散用ガスに相当)を発生する。展開薬51は、例えば黒色火薬、無煙火薬等である。なお、展開薬51が燃焼することで発生する燃焼ガスにより展開薬ケース43が破壊されるとともに、展開薬ケース43の外周に配置される錘29を放射方向に飛散させる。
【0049】
図2に戻って、保護板32は、上述した放出装置31が有する展開薬51が燃焼し、展開薬ケース43が破壊されたときに、展開薬51の燃焼時に、捕獲網28が燃焼して、捕獲網28が破損することを防止する。保護板32は、展開薬ケース43の外周に沿って複数の錘29が配置されることで形成される空間に配置される。
【0050】
保護蓋33は、飛翔体17の射出時に、捕獲網28を保護する部材である。保護蓋33の材質は、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリウレタンなどの合成樹脂、又は厚紙(ボール紙)である。
【0051】
包装体34は、捕獲網28、錘29及び保護蓋33を、放出装置31側から、錘29、捕獲網28、保護蓋33の順で配置した状態で一体に保持する部材である。包装体34は、例えば1枚のフィルムを湾曲させた両端部を固着することで円筒形状とした部材である。包装体34の材質としては、錘29の放射方向への飛散、及び錘29の飛散による捕獲網28の展開時に、容易に破れる材質であればよい。
【0052】
上述した保護蓋33には、リボン(請求項に記載の飛翔安定部材に相当)55が取り付けられる。リボン55は、ケース15から射出された飛翔体17の飛翔を安定させる部材である。リボン55の材質としては、例えば、布やナイロンなどである。なお、リボン55は、飛翔体17がケース15に収納されているときには、折り畳まれて収納され、飛翔体17の飛翔時には折り畳まれた状態が解除され、飛翔体17の飛翔方向に対して後方に伸びた状態となる。したがって、リボン55の材質は、完全に伸びた状態において、折り畳まれたときの折り目が付きづらい材質であれば、特に限定されるものではない。なお、図2においては、2本のリボン55を、各リボンの中点で直交させた状態で保護蓋33に固定した場合を示している。なお、図2においては、2本のリボン55を保護蓋33に固定した場合を示しているが、3本以上のリボンを保護蓋に固定することも可能である。この場合、隣り合うリボンとのなす角度が同一角度となるように、各リボンを配置して保護蓋に固定すればよい。
【0053】
次に、飛翔体17に設けられるリボン55の仕様について説明する。飛翔体17が飛翔すると、飛翔体17はモーメント(以下、転倒モーメント)Mの作用を受ける。したがって、飛翔体17は、転倒モーメントMの作用により回転しながら飛翔する。その結果、飛翔体17の飛翔距離は短くなる。また、飛翔体17が回転しながら飛翔することで、捕獲網28は、飛翔体17の飛翔方向に対して所定の角度の範囲で交差する面上に展開されない場合があるなど、展開される捕獲網28の向きが安定しない。
【0054】
一方、図6に示すように、飛翔体17にリボン55を設けた場合、飛翔体17は、転倒モーメントMが作用する他に、該転倒モーメントMとは逆向きに、リボンの抗力によるモーメントMの作用を受ける。その結果、転倒モーメントMとリボンの抗力によるモーメントMとが相殺され、飛翔体17の飛翔姿勢が安定し、飛翔距離が長くなる。また、飛翔体の飛翔姿勢が安定することで、捕獲網28は、飛翔体17の飛翔方向に対して所定の角度の範囲で交差する面上に展開されるので、展開される捕獲網28の向きが安定する。
【0055】
例えば転倒モーメントMは、以下の式(1)で表すことができる。なお、式(1)中、記号ρは空気密度、記号Vは飛翔体17の飛翔速度、記号Aは飛翔体17の断面積、記号dは飛翔体17の直径、記号Cmαは飛翔体17の転倒モーメント係数、記号αは迎角である。
【0056】
【数1】
【0057】
また、リボン55の抗力によるモーメントMは以下の式(2)で表すことができる。なお、式(2)中、記号FDRはリボン55の抗力、記号LCGは飛翔体17の重心Gからリボン55までの距離(以下、リボン-重心間距離)、記号Cはリボン55の抗力係数記号Sはリボン55の総面積である。
【0058】
【数2】
【0059】
飛翔体17の飛翔距離を長くするためには、リボン55の抗力FDRによるモーメントMが飛翔体17の転倒モーメントMを相殺できればよい。したがって、以下の式(3)が成り立つ。
【0060】
≧M ・・・(3)
【0061】
上述した式(3)に、式(1)及び式(2)を代入すると、飛翔体17の転倒モーメントMがリボン55の抗力FDRによるモーメントMにより相殺されるリボン55の総面積Sが、以下の式(4)から得られる。
【0062】
【数3】
【0063】
ここで、飛翔体17の直径dを40mm、リボン-重心間距離を78mm、飛翔体17の転倒モーメント係数Cmαを0.85、リボン55の抗力係数Cを0.1とすると、飛翔体17の転倒モーメントMがリボン55の抗力によるモーメントMにより相殺されるリボン55の総面積Sは、S≧5500(mm)となる。
【0064】
したがって、飛翔体17の直径dが40mmである場合、リボンの総面積は5500mm以上となるときに、飛翔体17の飛翔姿勢が安定することになる。
【0065】
なお、リボン55の幅は、リボン55を折りたたんだ状態でケース15の内部に収納することを考慮すると、飛翔体17の外周長をリボン55の本数で割った値以下となるように設定することが好ましい。例えば、飛翔体17の直径dが40mmである場合、リボン55の幅は5mm以上40mm以下であることが好ましい。また、リボン55の本数は、例えば3本から24本とすることが好ましい。さらに、リボン55の長さは、80mm以上500mm以下とすることが好ましい。なお、リボン55の本数や長さは、飛翔体17の飛翔時にリボン55同士が絡まないようにすることを考慮した値に設定されるものである。
【0066】
次に、飛翔体を射出してから、捕獲対象となる無人航空機を捕獲するまでの飛翔体の動作及び放出装置の内部の燃焼の流れについて、図7及び図8を用いて説明する。なお、図7は捕獲対象となる無人航空機を捕獲するまでの飛翔体の動作を説明する図、図8(a)及び図8(b)は、放出装置の内部における燃焼の流れを説明する図である。
【0067】
捕獲網展開飛翔装置10は、ガス筒発射器70に装填される。このとき、保護キャップ16は、取り外される。捕獲網展開飛翔装置10をガス筒発射器70に装填した状態で、ガス筒発射器70の引き金(トリガー)が動作されると、ガス筒発射器70が有するハンマ(撃鉄)が移動して、ガス筒発射器70に装填された捕獲網展開飛翔装置10のケース15に取り付けられた雷管26を叩く。雷管26が撃鉄に叩かれることで、雷管26の内部に収納された火薬が点火し、該火薬が燃焼する。この燃焼による火炎や燃焼ガスは、伝火孔22dを介して放出装置31に貼付された保持シール47に到達する。伝火孔22dを介して伝達される火炎は、保持シール47を破壊する。そして、外筒41の放出薬収納部41cに収納された放出薬45が引火する。その結果、放出薬45が燃焼して、燃焼ガスが発生する。ここで、ケース本体21とケースホルダ22との間は、パッキン25により気密に保持される。同時に、飛翔体17の放出装置31とケース本体21との間は、パッキン46により気密に保持される。したがって、放出薬45の燃焼により発生する燃焼ガスは、ケースホルダ22の収納空間22cと飛翔体17の放出装置31との間の空間(図示省略)に充填されていき、該空間に充填される燃焼ガスの圧力が所定値以上となることを受けて、飛翔体17がケース15から射出される。ケース15から射出された飛翔体17は、ガス筒発射器70の銃身の内部を移動した後、銃身の先端から斜め上方に射出される(図7(a)参照)。
【0068】
ガス筒発射器70から射出された飛翔体17は斜め上方に射出されることで、飛翔体17は転倒モーメントの作用により、図7(b)E方向に回転する。飛翔体17の回転により、折り畳まれたリボン55が飛翔体17の飛翔方向に対して後方に徐々に伸びていく。リボン55が伸びていくことで、飛翔体17には、転倒モーメントだけでなく、リボン55の抗力によるモーメントが作用し始める。
【0069】
そして、放出装置31が前方に位置した状態まで飛翔体17が回転すると、リボン55が完全に伸びた状態となるので、リボン55の抗力によるモーメントが飛翔体17の空気抵抗による転倒モーメントよりも大きくなる。その結果、飛翔体17の回転が停止する。つまり、放出装置31が前方に位置し、リボン55が後方になびいた状態で、飛翔体17が飛翔する(図7(c)参照)。
【0070】
ここで、飛翔体17がケース15から射出されたときには、放出薬45が燃焼している。放出薬45の燃焼は、延時薬49の引火を引き起こす。延時薬49が引火して燃焼を開始する過程で、速火線48aに引火し、速火線48aが燃焼する。速火線48aの燃焼は、展開薬51の燃焼を引き起こす。展開薬51が燃焼されると、放出装置31の内筒42と、展開薬ケースとの間に燃焼ガスが充填される。そして、展開薬ケース43の内部に充填される燃焼ガスの圧力が展開薬ケース43の耐力を超えると、展開薬ケース43が破壊され、燃焼ガスが外部に放出される。外部に放出される燃焼ガスは、展開薬ケース43の外周に配置された錘29を放射方向へと押圧する。ここで、飛翔体17は外周面が包装体34に被覆されている。錘29が放射方向に押圧する力は、例えば放出装置31に錘29を固定する両面テープの粘着力よりも大きく、また、包装体34の耐力よりも大きい。したがって、外部に放出される燃焼ガスに押圧される錘29は、放出装置31から外れ、同時に包装体34を破り、飛翔体17の放射方向に飛散する。飛翔体17の放射方向へ錘29が飛散する。錘29は、捕獲網28に取り付けられているので、錘29の飛翔体の放射方向への飛散により、捕獲網28の外周縁が引っ張られ、捕獲網28が展開する(図7(d)参照)。
【0071】
また、錘29が飛翔体17の放射方向へ飛散することで捕獲網28が展開される一方で、リボン55が固定される保護蓋33や、錘29が外れた放出装置31は地上に落下する(図7(e)参照)。
【0072】
例えば、飛翔体17が安定して飛翔し、飛翔体17の飛翔方向に捕獲対象となる無人航空機が飛行(浮遊)している場合には、捕獲網28は、飛翔体17の飛翔方向に対して所定の角度の範囲で交差する面上に安定して展開されることになるので、展開された捕獲網28は、確実に無人航空機80に絡まる(図8(f))。その結果、捕獲対象となる無人航空機80の飛行(浮遊)が不能となり、捕獲網28が絡まった無人航空機80は落下する。
【0073】
このように、リボン55を飛翔体17に設けることで、飛翔体17の飛翔姿勢が安定して、飛翔体17の飛翔距離を稼ぐことができるとともに、飛翔体17の飛翔方向に対して所定の角度の範囲で交差する面上に安定して展開させることができる。
【0074】
以下、本実施形態における飛翔体の飛翔姿勢の検証試験を行った。
【0075】
<飛翔姿勢の検証試験>
飛翔体の飛翔姿勢の検証試験は、飛翔体に取り付けられるリボンの長さを変更して行った。ここで、飛翔体の飛翔姿勢としては、例えば水平面を基準としたときの飛翔体のピッチ角が挙げられる。
【0076】
図9に示すように、水平面に対して25°上方に向けて配置した発射筒から飛翔体を射出し、飛翔体の飛翔姿勢が安定する30mから50mの範囲を飛翔する飛翔体を複数のカメラにて撮影し、撮影された飛翔体の飛翔姿勢を検証することで行った。
【0077】
図10に示すように、リボンの本数を4本、リボンの幅を24mm、長さを50mmとした場合の飛翔体の実施例を実施例1とする。また、リボンの本数を4本、リボンの幅を24mm、長さを100mmとした場合の飛翔体の実施例を実施例2とする。さらに、リボンの本数を4本、リボンの幅を24mm、長さを150mmとした場合の飛翔体の実施例を実施例3とする。
【0078】
実施例1に示す飛翔体に用いられるリボンの総面積は4800mmである。実施例2に示す飛翔体に用いられるリボンの総面積は9600mmである。実施例3に示す飛翔体に用いられるリボンの総面積は14400mmである。なお、実施例1から実施例3に示す飛翔体において、放出薬は黒色火薬:1.2g、延時薬はB/KNO:0.33g、展開薬は黒色火薬:1.5gを使用している。
【0079】
図11に示すように、実施例1に示す飛翔体の場合、飛翔体のピッチ角は、120°~-180°の範囲で遷移する。一方、実施例2に示す飛翔体の場合、飛翔体のピッチ角は、60°~-30°の範囲で遷移する。また、実施例3に示す飛翔体の場合、実施例2に示す飛翔体と同様に、飛翔体のピッチ角は、60°~-30°の範囲で遷移する。ここで、飛翔体が飛翔して、捕獲網が正常に展開するときの飛翔体のピッチ角の範囲を+90°から-90°の範囲とすると、実施例1に示す飛翔体は、捕獲網が正常に展開させることができないと判断できる。その一方で、実施例2及び実施例3に示す飛翔体は、捕獲網が正常に展開させることができると判断できる。
【0080】
ここで、実施例1に示す飛翔体に用いられるリボンの総面積は、4800mmである。また、実施例2に示す飛翔体に用いられるリボンの総面積は9600mm、実施例3に示す飛翔体に用いられるリボンの総面積は14400mmである。つまり、飛翔姿勢の検証試験は、飛翔体の飛翔姿勢が安定するリボンの総面積の理論値S≧5500(mm)を満足するという結果を得ることができた。
【符号の説明】
【0081】
10…捕獲網展開飛翔装置、15…ケース、16…保護キャップ、17…飛翔体、21…ケース本体、22…ケースホルダ、26…雷管、28…捕獲網、29…錘、31…放出装置、32…保護板、33…保護蓋、34…包装体、41…外筒、42…内筒、43…展開薬ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11