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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】製紙用2層織物
(51)【国際特許分類】
   D21F 1/10 20060101AFI20231011BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20231011BHJP
   D03D 11/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
D21F1/10
D03D1/00 Z
D03D11/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019213462
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2021085108
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000229852
【氏名又は名称】日本フエルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 克彦
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-015592(JP,A)
【文献】特開2013-227701(JP,A)
【文献】特開2017-089022(JP,A)
【文献】特開2011-089247(JP,A)
【文献】特開2001-336078(JP,A)
【文献】特開2002-020989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D1/00-27/18
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上経糸及び前記上経糸に織り込まれた上緯糸を含む製紙面側層と、下経糸及び前記下経糸に織り込まれた下緯糸を含む走行面側層とを備えるとともに、前記上経糸及び前記下経糸に織り込まれた緯自接結糸を備える製紙用2層織物であって、
完全組織における前記上経糸と前記下経糸との本数は互いに同数であり、
前記上緯糸は、前記緯自接結糸と対をなす第1上緯糸を含み、
1対の前記第1上緯糸及び前記緯自接結糸は、互いに補完して前記製紙面側層の織物組織の1本の緯糸ラインを形成し、
前記第1上緯糸は、少なくとも5本の連続する前記上経糸の下を通る曲げ抵抗区間を有し、
前記第1上緯糸は、前記緯自接結糸よりも剛性が高く、
前記製紙面側層の前記織物組織は平織りであり、
前記緯自接結糸が前記上経糸を2~4回平織りで織り込む部分を有することによって、対をなす前記第1上緯糸に前記曲げ抵抗区間が形成され、
前記緯自接結糸は、1本の前記上経糸の上、1組の前記上経糸と前記下経糸との間、1本の前記上経糸の上、1組の前記上経糸と前記下経糸との間、1本の前記下経糸の下、1組の前記上経糸と前記下経糸との間、1本の前記上経糸の上、1組の前記上経糸と前記下経糸との間、1本の前記下経糸の下、1組の前記上経糸と前記下経糸との間を順に通ることを繰り返すように構成され、
前記上緯糸は、単独で前記上経糸に平織りで織り込まれた第2上緯糸を含み、
前記完全組織は、10本の前記上経糸と、10本の前記下経糸と、10本の前記第1上緯糸と、20本の前記第2上緯糸と、20本の前記下緯糸と、10本の前記緯自接結糸とから構成された製紙用2層織物。
【請求項2】
上経糸及び前記上経糸に織り込まれた上緯糸を含む製紙面側層と、下経糸及び前記下経糸に織り込まれた下緯糸を含む走行面側層とを備えるとともに、前記上経糸及び前記下経糸に織り込まれた緯自接結糸を備える製紙用2層織物であって、
完全組織における前記上経糸と前記下経糸との本数は互いに同数であり、
前記上緯糸は、前記緯自接結糸と対をなす第1上緯糸を含み、
1対の前記第1上緯糸及び前記緯自接結糸は、互いに補完して前記製紙面側層の織物組織の1本の緯糸ラインを形成し、
前記第1上緯糸は、少なくとも5本の連続する前記上経糸の下を通る曲げ抵抗区間を有し、
前記第1上緯糸は、前記緯自接結糸よりも剛性が高く、
前記製紙面側層の前記織物組織は平織りであり、
前記緯自接結糸が前記上経糸を2~4回平織りで織り込む部分を有することによって、対をなす前記第1上緯糸に前記曲げ抵抗区間が形成され、
前記緯自接結糸は、1本の前記上経糸の上、1組の前記上経糸と前記下経糸との間、1本の前記上経糸の上、1組の前記上経糸と前記下経糸との間、1本の前記上経糸の上、1組の前記上経糸と前記下経糸との間、1本の前記上経糸の上、1組の前記上経糸と前記下経糸との間、1本の前記下経糸の下、1組の前記上経糸と前記下経糸との間を順に通ることを繰り返すように構成され、
前記完全組織は、10本の前記上経糸と、10本の前記下経糸と、10本の前記第1上緯糸と、5本の前記下緯糸と、10本の前記緯自接結糸とから構成され、
前記緯自接結糸はポリアミド系樹脂を素材とする製紙用2層織物。
【請求項3】
上経糸及び前記上経糸に織り込まれた上緯糸を含む製紙面側層と、下経糸及び前記下経糸に織り込まれた下緯糸を含む走行面側層とを備えるとともに、前記上経糸及び前記下経糸に織り込まれた緯自接結糸を備える製紙用2層織物であって、
完全組織における前記上経糸と前記下経糸との本数は互いに同数であり、
前記上緯糸は、前記緯自接結糸と対をなす第1上緯糸を含み、
1対の前記第1上緯糸及び前記緯自接結糸は、互いに補完して前記製紙面側層の織物組織の1本の緯糸ラインを形成し、
前記第1上緯糸は、少なくとも5本の連続する前記上経糸の下を通る曲げ抵抗区間を有し、
前記第1上緯糸は、前記緯自接結糸よりも剛性が高く、
前記製紙面側層の前記織物組織は平織りであり、
前記緯自接結糸が前記上経糸を2~4回平織りで織り込む部分を有することによって、対をなす前記第1上緯糸に前記曲げ抵抗区間が形成され、
前記緯自接結糸は、1本の前記上経糸の上、1組の前記上経糸と前記下経糸との間、1本の前記上経糸の上、1組の前記上経糸と前記下経糸との間、1本の前記下経糸の下、1組の前記上経糸と前記下経糸との間を順に通ることを繰り返すように構成され、
前記上緯糸は、単独で前記上経糸に平織りで織り込まれた第2上緯糸を含み、
前記完全組織は、6本の前記上経糸と、6本の前記下経糸と、6本の前記第1上緯糸と、12本の前記第2上緯糸と、12本の前記下緯糸と、6本の前記緯自接結糸とから構成された製紙用2層織物。
【請求項4】
上経糸及び前記上経糸に織り込まれた上緯糸を含む製紙面側層と、下経糸及び前記下経糸に織り込まれた下緯糸を含む走行面側層とを備えるとともに、前記上経糸及び前記下経糸に織り込まれた緯自接結糸を備える製紙用2層織物であって、
完全組織における前記上経糸と前記下経糸との本数は互いに同数であり、
前記上緯糸は、前記緯自接結糸と対をなす第1上緯糸を含み、
1対の前記第1上緯糸及び前記緯自接結糸は、互いに補完して前記製紙面側層の織物組織の1本の緯糸ラインを形成し、
前記第1上緯糸は、少なくとも5本の連続する前記上経糸の下を通る曲げ抵抗区間を有し、
前記第1上緯糸は、前記緯自接結糸よりも剛性が高く、
前記製紙面側層の前記織物組織は平織りであり、
前記緯自接結糸が前記上経糸を2~4回平織りで織り込む部分を有することによって、対をなす前記第1上緯糸に前記曲げ抵抗区間が形成され、
前記緯自接結糸は、1本の前記上経糸の上、1組の前記上経糸と前記下経糸との間、1本の前記上経糸の上、1組の前記上経糸と前記下経糸との間、1本の前記下経糸の下、3組の連続する前記上経糸と前記下経糸との間、1本の前記下経糸の下、1組の前記上経糸と前記下経糸との間を順に通ることを繰り返すように構成され、
前記上緯糸は、単独で前記上経糸に平織りで織り込まれた第2上緯糸を含み、
前記完全組織は、10本の前記上経糸と、10本の前記下経糸と、10本の前記第1上緯糸と、20本の前記第2上緯糸と、20本の前記下緯糸と、10本の前記緯自接結糸とから構成された製紙用2層織物。
【請求項5】
上経糸及び前記上経糸に織り込まれた上緯糸を含む製紙面側層と、下経糸及び前記下経糸に織り込まれた下緯糸を含む走行面側層とを備えるとともに、前記上経糸及び前記下経糸に織り込まれた緯自接結糸を備える製紙用2層織物であって、
完全組織における前記上経糸と前記下経糸との本数は互いに同数であり、
前記上緯糸は、前記緯自接結糸と対をなす第1上緯糸を含み、
1対の前記第1上緯糸及び前記緯自接結糸は、互いに補完して前記製紙面側層の織物組織の1本の緯糸ラインを形成し、
前記第1上緯糸は、少なくとも5本の連続する前記上経糸の下を通る曲げ抵抗区間を有し、
前記第1上緯糸は、前記緯自接結糸よりも剛性が高く、
前記製紙面側層の前記織物組織は平織りであり、
前記緯自接結糸が前記上経糸を2~4回平織りで織り込む部分を有することによって、対をなす前記第1上緯糸に前記曲げ抵抗区間が形成され、
前記緯自接結糸は、1本の前記上経糸の上、1組の前記上経糸と前記下経糸との間、1本の前記上経糸の上、1組の前記上経糸と前記下経糸との間、1本の前記下経糸の下、1組の前記上経糸と前記下経糸との間を順に通ることを繰り返すように構成され、
前記上緯糸は、互いに対をなす第3上緯糸及び第4上緯糸を含み、
1対の前記第3上緯糸及び前記第4上緯糸は、互いに補完して前記製紙面側層の前記織物組織の1本の前記緯糸ラインを形成するべく、前記第3上緯糸が前記上経糸を1回織り込んだ後、前記第4上緯糸が前記上経糸を2回織り込むことを繰り返すように配置され、
前記完全組織は、6本の前記上経糸と、6本の前記下経糸と、6本の前記第1上緯糸と、12本の前記第3上緯糸と、12本の前記第4上緯糸と、12本の前記下緯糸と、6本の前記緯自接結糸とから構成された製紙用2層織物。
【請求項6】
上経糸及び前記上経糸に織り込まれた上緯糸を含む製紙面側層と、下経糸及び前記下経糸に織り込まれた下緯糸を含む走行面側層とを備えるとともに、前記上経糸及び前記下経糸に織り込まれた緯自接結糸を備える製紙用2層織物であって、
完全組織における前記上経糸と前記下経糸との本数は互いに同数であり、
前記上緯糸は、前記緯自接結糸と対をなす第1上緯糸を含み、
1対の前記第1上緯糸及び前記緯自接結糸は、互いに補完して前記製紙面側層の織物組織の1本の緯糸ラインを形成し、
前記第1上緯糸は、少なくとも5本の連続する前記上経糸の下を通る曲げ抵抗区間を有し、
前記第1上緯糸は、前記緯自接結糸よりも剛性が高く、
前記製紙面側層の前記織物組織は平織りであり、
前記緯自接結糸が前記上経糸を2~4回平織りで織り込む部分を有することによって、対をなす前記第1上緯糸に前記曲げ抵抗区間が形成され、
前記緯自接結糸は、1本の前記上経糸の上、1組の前記上経糸と前記下経糸との間、1本の前記上経糸の上、2組の連続する前記上経糸と前記下経糸との間、1本の前記下経糸の下、2組の連続する前記上経糸と前記下経糸との間、1本の前記下経糸の下、1組の前記上経糸と前記下経糸との間を順に通ることを繰り返すように構成され、
前記上緯糸は、単独で前記上経糸に平織りで織り込まれた第2上緯糸を含み、
前記完全組織は、10本の前記上経糸と、10本の前記下経糸と、5本の前記第1上緯糸と、5本の前記第2上緯糸と、5本の前記下緯糸と、5本の前記緯自接結糸とから構成された製紙用2層織物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抄紙機のワイヤーパート等でワイヤーとして使用され、緯自接結糸を備える製紙用2層織物に関する。
【背景技術】
【0002】
抄紙機のワイヤーパートにおいて使用される抄紙用ワイヤーは、製造される紙の品質向上や、製造速度の高速化による生産効率向上の要請に応えるため、皺なく蛇行せずに安定して走行する走行性、原料液から水をより多く除去する脱水性や通気性、表面の凹凸が転写して紙に残ることを抑制する表面性(紙面性)、目詰まりや粘着成分の付着を抑制する防汚性、摩耗に耐える耐摩耗性、製造される紙の厚さを均一にするため湿紙の厚さを乱さないこと等が求められている。
【0003】
2層織物のワイヤーは、製紙面側織物層を表面性を重視した構造とし、走行面側織物層を耐摩耗性を重視した構造とすることにより、両特性を併せ持つ。製紙面側織物層と走行面側織物層とは接結糸によって接合される。織物の組織を形成する糸と接結糸とを兼ねる糸を自接結糸といい、緯方向に配置された自接結糸を緯自接結糸という。
【0004】
緯自接結糸を備える製紙用2層織物では、1対の緯自接結糸が互いに補完して製紙面側織物層の組織の1本の緯糸ラインを形成するものが主流であるが、緯自接結糸と上緯糸とが対をなし、両糸が互いに補完して製紙面側織物層の組織の1本の緯糸ラインを形成するものもある。例えば、特許文献1には、緯自接結糸(接結糸)と上緯糸(上部層織物の緯糸)とが対をなして製紙面側織物層の平織り組織の1本の緯糸ラインを形成し、上緯糸が上経糸を3回織り込んだ後、緯自接結糸が上経糸を1回織り込むことを繰り返すように構成された製紙用2層織物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭62-162091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
抄紙用ワイヤーの幅方向(緯方向)の曲げ剛性は、製造される紙の幅方向の均一性にかかわる重要な項目である。幅方向の曲げ剛性が高いワイヤーは、皺の無い良好な走行姿勢を維持し、抄紙機に付随するロールや脱水機器等との接触を均一に保つ。そのため、脱水性が均一で、厚みや地合い(風合い、見栄え)の斑がないことが要求される紙の製造において、優位に作用する。しかしながら、従来の緯自接結糸を備える製紙用2層織物では、接結力の観点から伸縮性があり柔軟なポリアミド糸による緯自接結糸同士の対を成すのが主流である上に、緯糸及び緯自接結糸が上下の経糸に織り込まれて屈曲数が多いため、曲げ剛性が低くなるという問題があった。
【0007】
このような問題に鑑み、本発明は、緯自接結糸を備える製紙用2層織物において、幅方向の曲げ剛性が高く、製造される紙の幅方向の均一性を向上させる製紙用2層織物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある実施形態は、上経糸(4)及び前記上経糸(4)に織り込まれた上緯糸(5)を含む製紙面側層(2)と、下経糸(6)及び前記下経糸(6)に織り込まれた下緯糸(7)を含む走行面側層(3)とを備えるとともに、前記上経糸(4)及び前記下経糸(6)に織り込まれた緯自接結糸(8)を備える製紙用2層織物(1,21,31,41,51,61)であって、完全組織における前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との本数は互いに同数であり、前記上緯糸(5)は、前記緯自接結糸(8)と対をなす第1上緯糸(9)を含み、1対の前記第1上緯糸(9)及び前記緯自接結糸(8)は、互いに補完して前記製紙面側層(2)の織物組織の1本の緯糸ラインを形成し、前記第1上緯糸(9)は、少なくとも5本の連続する前記上経糸(4)の下を通る曲げ抵抗区間(11)を有することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、曲げ抵抗区間によって製紙用2層織物の幅方向の曲げ剛性が高まり、製造される紙の幅方向の均一性が向上する。
【0010】
本発明のある実施形態に係る製紙用2層織物(1,21,31,41,51,61)は、上記構成において、前記第1上緯糸(9)は、前記緯自接結糸(8)よりも剛性が高いことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、相対的に剛性の高い第1上緯糸の曲げ抵抗区間によって製紙用2層織物の幅方向の曲げ剛性が高まり、緯自接結糸に接結箇所を集中することによって製紙面側層2と走行面側層3との互いの接結力を維持できる。
【0012】
本発明のある実施形態に係る製紙用2層織物(1,21,31,41,51,61)は、上記構成の何れかにおいて、前記製紙面側層(2)の前記織物組織は平織りであり、前記緯自接結糸(8)が前記上経糸(4)を2~4回平織りで織り込む部分を有することによって、対をなす前記第1上緯糸(9)に前記曲げ抵抗区間(11)が形成されることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、緯自接結紙が上経糸を平織りで織り込む部分では、対をなす第1上緯糸は上経糸に織り込まれないため上経糸の下を通ることになり、第1上緯糸のこの部分によって曲げ抵抗区間を形成することができる。
【0014】
本発明のある実施形態に係る製紙用2層織物(1)は、上記構成において、前記緯自接結糸(8)は、1本の前記上経糸(4)の上、1組の前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間、1本の前記上経糸(4)の上、1組の前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間、1本の前記下経糸(6)の下、1組の前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間、1本の前記上経糸(4)の上、1組の前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間、1本の前記下経糸(6)の下、1組の前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間を順に通ることを繰り返すように構成され、前記上緯糸(5)は、単独で前記上経糸(4)に平織りで織り込まれた第2上緯糸(10)を含み、前記完全組織は、10本の前記上経糸(4)と、10本の前記下経糸(6)と、10本の前記第1上緯糸(9)と、20本の前記第2上緯糸(10)と、20本の前記下緯糸(7)と、10本の前記緯自接結糸(8)とから構成されたことを特徴とする。
【0015】
この構成は、上記の第3の構成の作用効果を実現する、より具体的な構成を示す。
【0016】
本発明のある実施形態に係る製紙用2層織物(21)は、上記の第3の構成において、前記緯自接結糸(8)は、1本の前記上経糸(4)の上、1組の前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間、1本の前記上経糸(4)の上、1組の前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間、1本の前記上経糸(4)の上、1組の前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間、1本の前記上経糸(4)の上、1組の前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間、1本の前記下経糸(6)の下、1組の前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間を順に通ることを繰り返すように構成され、前記完全組織は、10本の前記上経糸(4)と、10本の前記下経糸(6)と、10本の前記第1上緯糸(9)と、5本の前記下緯糸(7)と、10本の前記緯自接結糸(8)とから構成され、前記緯自接結糸(8)はポリアミド系樹脂を素材とすることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、親水性であるポリアミド系樹脂を素材とする緯自接結糸が製紙面側に多く露出するため、粘着物汚れ(ピッチ)付着防止効果が期待できる。
【0018】
本発明のある実施形態に係る製紙用2層織物(31)は、上記の第3の構成において、前記緯自接結糸(8)は、1本の前記上経糸(4)の上、1組の前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間、1本の前記上経糸(4)の上、1組の前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間、1本の前記下経糸(6)の下、1組の前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間を順に通ることを繰り返すように構成され、前記上緯糸(5)は、単独で前記上経糸(4)に平織りで織り込まれた第2上緯糸(10)を含み、前記完全組織は、6本の前記上経糸(4)と、6本の前記下経糸(6)と、6本の前記第1上緯糸(9)と、12本の前記第2上緯糸(10)と、12本の前記下緯糸(7)と、6本の前記緯自接結糸(8)とから構成されたことを特徴とする。
【0019】
この構成は、上記の第3の構成の作用効果を実現する、より具体的な構成を示す。
【0020】
本発明のある実施形態に係る製紙用2層織物(41)は、上記の第3の構成において、前記緯自接結糸(8)は、1本の前記上経糸(4)の上、1組の前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間、1本の前記上経糸(4)の上、1組の前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間、1本の前記下経糸(6)の下、3組の連続する前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間、1本の前記下経糸(6)の下、1組の前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間を順に通ることを繰り返すように構成され、前記上緯糸(5)は、単独で前記上経糸(4)に平織りで織り込まれた第2上緯糸(10)を含み、前記完全組織は、10本の前記上経糸(4)と、10本の前記下経糸(6)と、10本の前記第1上緯糸(9)と、20本の前記第2上緯糸(10)と、20本の前記下緯糸(7)と、10本の前記緯自接結糸(8)とから構成されたことを特徴とする。
【0021】
この構成は、上記の第3の構成の作用効果を実現する、より具体的な構成を示す。
【0022】
本発明のある実施形態に係る製紙用2層織物(51)は、上記の第3の構成において、前記緯自接結糸(8)は、1本の前記上経糸(4)の上、1組の前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間、1本の前記上経糸(4)の上、1組の前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間、1本の前記下経糸(6)の下、1組の前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間を順に通ることを繰り返すように構成され、前記上緯糸(5)は、互いに対をなす第3上緯糸(52)及び第4上緯糸(53)を含み、1対の前記第3上緯糸(52)及び前記第4上緯糸(53)は、互いに補完して前記製紙面側層(2)の前記織物組織の1本の前記緯糸ラインを形成するべく、前記第3上緯糸(52)が前記上経糸(4)を1回織り込んだ後、前記第4上緯糸(53)が前記上経糸(4)を2回織り込むことを繰り返すように配置され、前記完全組織は、6本の前記上経糸(4)と、6本の前記下経糸(6)と、6本の前記第1上緯糸(9)と、12本の前記第3上緯糸(52)と、12本の前記第4上緯糸(53)と、12本の前記下緯糸(7)と、6本の前記緯自接結糸(8)とから構成されたことを特徴とする。
【0023】
この構成は、上記の第3の構成の作用効果を実現する、より具体的な構成を示す。また、1対の第3上緯糸及び第4上緯糸において、一方が上経糸に平織りで織り込まれる部分では他方が3本又は5本の連続する上経糸の下を通っており、この他方が連続する上経糸の下を通っている区間が、第1緯糸の曲げ抵抗区間と同様に機能して、製紙用2層織物の幅方向の曲げ剛性が向上する。
【0024】
本発明のある実施形態に係る製紙用2層織物(61)は、上記の第3の構成において、前記緯自接結糸(8)は、1本の前記上経糸(4)の上、1組の前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間、1本の前記上経糸(4)の上、2組の連続する前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間、1本の前記下経糸(6)の下、2組の連続する前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間、1本の前記下経糸(6)の下、1組の前記上経糸(4)と前記下経糸(6)との間を順に通ることを繰り返すように構成され、前記上緯糸(5)は、単独で前記上経糸(4)に平織りで織り込まれた第2上緯糸(10)を含み、前記完全組織は、10本の前記上経糸(4)と、10本の前記下経糸(6)と、5本の前記第1上緯糸(9)と、5本の前記第2上緯糸(10)と、5本の前記下緯糸(7)と、5本の前記緯自接結糸(8)とから構成されたことを特徴とする。
【0025】
この構成は、上記の第3の構成の作用効果を実現する、より具体的な構成を示す。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、緯自接結糸を備える製紙用2層織物において、製造される紙の幅方向の均一性を向上させるべく幅方向の曲げ剛性が高い製紙用2層織物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態に係る製紙用2層織物の完全組織の組織図
図2】第1実施形態に係る製紙用2層織物の緯方向断面(経方向に直交する断面)の模式図
図3】第1実施形態に係る製紙用2層織物の経方向断面(緯方向に直交する断面)の模式図
図4】第2実施形態に係る製紙用2層織物の完全組織の組織図
図5】第2実施形態に係る製紙用2層織物の緯方向断面(経方向に直交する断面)の模式図
図6】第2実施形態に係る製紙用2層織物の経方向断面(緯方向に直交する断面)の模式図
図7】第3実施形態に係る製紙用2層織物の完全組織の組織図
図8】第3実施形態に係る製紙用2層織物の緯方向断面(経方向に直交する断面)の模式図
図9】第3実施形態に係る製紙用2層織物の経方向断面(緯方向に直交する断面)の模式図
図10】第4実施形態に係る製紙用2層織物の完全組織の組織図
図11】第4実施形態に係る製紙用2層織物の緯方向断面(経方向に直交する断面)の模式図
図12】第4実施形態に係る製紙用2層織物の経方向断面(緯方向に直交する断面)の模式図
図13】第5実施形態に係る製紙用2層織物の完全組織の組織図
図14】第5実施形態に係る製紙用2層織物の緯方向断面(経方向に直交する断面)の模式図
図15】第5実施形態に係る製紙用2層織物の経方向断面(緯方向に直交する断面)の模式図
図16】第6実施形態に係る製紙用2層織物の完全組織の組織図
図17】第6実施形態に係る製紙用2層織物の緯方向断面(経方向に直交する断面)の模式図
図18】第6実施形態に係る製紙用2層織物の経方向断面(緯方向に直交する断面)の模式図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1図3は、第1実施形態に係る製紙用2層織物1を示す。製紙用2層織物1は、抄紙機のワイヤーパート(ウェットパート)において、紙料(液)から湿紙を形成するためのワイヤーとして使用される。製紙用2層織物1は、抄紙機のロールに掛けられ、ロールの回転に応じて走行する。製紙用2層織物1の紙料及び湿紙と接触する面を製紙面、製紙面と相反する側の面を走行面という。以下の説明において、製紙面側(抄紙機に取り付けた状態における外周側)を上、走行面側(抄紙機に取り付けた状態における内周側)を下と記す。経糸が延在する方向である経方向は、機械方向(製紙用2層織物1の丈方向)であり、緯糸が延在する方向である緯方向は、機械直交方向(製紙用2層織物1の幅方向)である。
【0029】
製紙用2層織物1は、互いに重なるように配置された製紙面側層2と、走行面側層3とを備える。製紙面側層2は、上経糸4と、上経糸4に織り込まれた上緯糸5を含む。走行面側層3は、下経糸6と、下経糸6に織り込まれた下緯糸7とを含む。また、製紙用2層織物1は、上経糸4及び下経糸6に織り込まれた緯自接結糸8を含む。従って、緯自接結糸8には、製紙面側層2に含まれる部分と、走行面側層3に含まれる部分とがある。なお、上緯糸5は、緯自接結糸8と対をなす第1上緯糸9と、緯自接結糸8と対をなさない第2上緯糸10とを含む。第1上緯糸9、第2上緯糸10及び緯自接結糸8は、互いに等しい太さを有することが好ましい。
【0030】
製紙用2層織物1の組織は、完全組織を基礎としてその繰り返しによって構成されるが、その完全組織は、10本の上経糸4と、10本の下経糸6と、10本の第1上緯糸9と、20本の第2上緯糸10と、20本の下緯糸7と、10本の緯自接結糸8とから構成される。従って、完全組織における上経糸4と下経糸6との合計本数は20本であり(20枚綾)、上経糸4と下経糸6との本数の比は1:1であり、上緯糸5と下緯糸7との本数の比は3:2である。
【0031】
上経糸4と下経糸6とは、製紙用2層織物1の厚さ方向に互いに整合するように配置されているが、厚さ方向から見たとき互いに緯方向にずれていてもよい。経糸No.n´(nは1~10の整数)の各々の位置には、1本の上経糸4と1本の下経糸6とが配置されている。また、緯糸No.3m-2の位置の各々には、1本の第1上緯糸9と1本の緯自接結糸8とが配置され、緯糸No.3m-1及び3mの位置の各々には、1本の第2上緯糸10と1本の下緯糸7とが配置されている(mは、1~10の整数)。
【0032】
図1において、「▲」印は下経糸6が下緯糸7の下を通っていることを示し、「○」印は下経糸6が緯自接結糸8の上を通っていることを示し、「□」印は上経糸4が第2上緯糸10の下を通っていることを示し、「×」印は上経糸4が緯自接結糸8の下を通っていることを示し、「◎」印は上経糸4が第1上緯糸9の下を通っていることを示す(なお、これらの印は、図4図7図10、及び図16においても同様の意味を示す)。
【0033】
緯自接結糸8は、1本の上経糸4の上、1組の上経糸4と下経糸6との間、1本の上経糸4の上、1組の上経糸4と下経糸6との間、1本の下経糸6の下、1組の上経糸4と下経糸6との間、1本の上経糸4の上、1組の上経糸4と下経糸6との間、1本の下経糸6の下、1組の上経糸4と下経糸6との間を順に通る繰り返し単位で、上経糸4及び下経糸6に織り込まれる。換言すると、緯自接結糸8は、上経糸4を平織りで2回織り込み、1本の下経糸6を1回織り込み、1本の上経糸4を1回織り込み、1本の下経糸6を1回織り込むことを順に繰り返している。ここで、緯自接結糸8が上経糸4の上を通りその前後で上経糸4と下経糸6との間を通っている状態を、緯自接結糸8が上経糸4を織り込むと表現し、緯自接結糸8が下経糸6の下を通りその前後で上経糸4と下経糸6との間を通っている状態を、緯自接結糸8が下経糸6を織り込むと表現している。
【0034】
第1上緯糸9は、対をなす緯自接結糸8が下経糸6を織り込む位置で上経糸4を織り込むとともに、その他の部分で上経糸4の下を通ることによって、5本の連続する上経糸4の下を通る曲げ抵抗区間11と、3本の連続する上経糸4の下を通る区間12とを有する。このため、対をなす第1上緯糸9及び緯自接結糸8は、互いに補完して1本の緯糸のように上経糸4に平織りで織り込まれ、製紙面側層2の織物組織の1本の緯糸ラインを形成している。例えば、緯糸No.1の1対の第1上緯糸9及び緯自接結糸8は、第1上緯糸9が経糸No.1´及び7´の上経糸4を織り込み、緯自接結糸8が、経糸No.3´、5´及び9´の上経糸4を織り込むことによって、1本の緯糸のように上経糸4に平織りで織り込まれている。なお、第1上緯糸9が上経糸4の上を通りその前後で上経糸4の下を通っている状態を、第1上緯糸9が上経糸4を織り込むと表現している。
【0035】
第2上緯糸10の各々は、上経糸4に平織りで織り込まれ、単独で製紙面側層2の織物組織を形成している。なお、上緯糸5は、下経糸6に織り込まれないため、上緯糸5の何れの部分も、その部分が近接する下経糸6よりも上に配置されている。
【0036】
下緯糸7は、8本の連続する下経糸6の下を通った後、2本の連続する下経糸6の上を通ることを繰り返すように下経糸6に織り込まれている。下緯糸7が8本の連続する下経糸6の下を通る区間は、その下緯糸7に隣接する第1上緯糸9が5本の連続する上経糸4の下を通る曲げ抵抗区間11と重なっていることが好ましい。なお、下緯糸7は、上経糸4に織り込まれないため、下緯糸7の何れの部分も、その部分が近接する上経糸4よりも下に配置されている。
【0037】
上経糸4、上緯糸5、下経糸6、下緯糸7及び緯自接結糸8を構成する素材は特に限定されないが、ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂が好ましい。ポリアミド系樹脂は、脂肪族ポリアミド樹脂が好ましく、更には、ナイロンが好ましい。ナイロンとしては、66ナイロン、6ナイロン、12ナイロン、11ナイロン、610ナイロン、612ナイロン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸とグリコールとからなるポリエステルであれば特にその種類に限定されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等であってよい。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上経糸4、上緯糸5、下経糸6及び下緯糸7は、互いに同一素材から構成されても、異なる素材から構成されてもよい。また、各糸は、各々単一材質で構成されていてもよく、材質が異なる2種以上の材質で構成されていてもよい。更に、各糸には、無機フィラー及び/又は有機フィラーが含有されていてもよい。
【0038】
第1上緯糸9は、緯自接結糸8よりも剛性が高いことが好ましい。例えば、緯自接結糸8の素材をポリアミド系樹脂とし、第1上緯糸9の素材をポリアミド系樹脂よりも剛性の高いポリエステル系樹脂としてもよい。
【0039】
製紙用2層織物1の作用効果について説明する。第1上緯糸9は、対をなす緯自接結糸8が上経糸4を2回織り込む部分において5本の連続する上経糸4の下を通る曲げ抵抗区間11を形成している。曲げ抵抗区間11は、上経糸4とナックルを形成していないため、梁や軸のように作用して製紙用2層織物1の幅方向の曲げ剛性を高める。幅方向の曲げ剛性が高い製紙用2層織物1は、皺の無い良好な走行姿勢を維持し、抄紙機に付随するロールや脱水機器等との接触を均一に保つ。そのため、脱水性が均一で、厚みや地合い(風合い、見栄え)の斑がないことが要求される紙の製造において、優位に作用する。よって、製紙用2層織物1の幅方向の曲げ剛性が高いことにより、製造される紙の厚さが幅方向において均一になる。
【0040】
特に、第1上緯糸9の剛性が緯自接結糸8の剛性よりも高い場合は、この効果が高まる。接結機能を有する緯自接結糸8は、接結力の観点から、伸縮性、柔軟性が求められるため、緯自接結糸8の素材として、例えばポリアミド系樹脂、を用いることが好ましい。緯自接結糸8に例えばポリアミド系樹脂を用い、接結機能を有さずに緯自接結糸8と対をなして曲げ抵抗区間11を有する第1上緯糸9に、比較的剛性の高い素材、例えばポリエステル系樹脂、を用いることにより、接合力を弱めずに、製紙用2層織物1の幅方向の曲げ剛性を高めることができる。また、緯自接結糸8に接結箇所を集中することによって、製紙面側層2と走行面側層3との互いの接結力を維持できる。
【0041】
また、第1上緯糸9が3本の連続する上経糸4の下を通る区間12も、同様の理由により製紙用2層織物1の幅方向の曲げ剛性を高めている。
【0042】
次に、図4図6を参照して、第2実施形態に係る製紙用2層織物21について説明する。第2~第6実施形態の各層及び各糸については、第1実施形態と同一の符号を付し、特に説明しない事項は第1実施形態と共通である。
【0043】
第2実施形態に係る製紙用2層織物21の上緯糸5は、第1上緯糸9(緯自接結糸8と対をなすもの)のみからなり、第1実施形態における第2上緯糸10に相当する糸は存在しない。
【0044】
製紙用2層織物21の完全組織は、10本の上経糸4と、10本の下経糸6と、10本の第1上緯糸9と、5本の下緯糸7と、10本の緯自接結糸8とから構成される。従って、完全組織における上経糸4と下経糸6との合計本数は20本であり(20枚綾)、上経糸4と下経糸6との本数の比は1:1であり、上緯糸5と下緯糸7との本数の比は2:1である。
【0045】
経糸No.n´(nは1~10の整数)の各々の位置には、1本の上経糸4と1本の下経糸6とが配置されている。また、緯糸No.2m-1の位置の各々には、1本の第1上緯糸9と1本の緯自接結糸8とが配置され、緯糸No.2mの位置の各々には、1本の第1上緯糸9と1本の緯自接結糸8と1本の下緯糸7とが配置されている(mは、1~5の整数)。
【0046】
緯自接結糸8は、1本の上経糸4の上、1組の上経糸4と下経糸6との間、1本の上経糸4の上、1組の上経糸4と下経糸6との間、1本の上経糸4の上、1組の上経糸4と下経糸6との間、1本の上経糸4の上、1組の上経糸4と下経糸6との間、1本の下経糸6の下、1組の上経糸4と下経糸6との間を順に通る繰り返し単位で、上経糸4及び下経糸6に織り込まれる。換言すると、緯自接結糸8は、上経糸4を平織りで4回織り込んだ後、1本の下経糸6を1回織り込むことを繰り返している。
【0047】
第1上緯糸9は、対をなす緯自接結糸8が下経糸6を織り込む位置で上経糸4を織り込むとともに、その他の部分で上経糸4の下を通ることによって9本の連続する上経糸4の下を通る曲げ抵抗区間11を有する。このため、対をなす第1上緯糸9及び緯自接結糸8は、互いに補完して1本の緯糸のように上経糸4に平織りで織り込まれ、製紙面側層2の織物組織の1本の緯糸ラインを形成している。例えば、緯糸No.1の1対の第1上緯糸9及び緯自接結糸8は、第1上緯糸9が経糸No.8´の上経糸4を織り込み、緯自接結糸8が、経糸No.2´、4´、6´及び10´の上経糸4を織り込むことによって、1本の緯糸のように上経糸4に平織りで織り込まれている。
【0048】
下緯糸7は、8本の連続する下経糸6の下を通った後、2本の連続する下経糸6の上を通ることを繰り返すように下経糸6に織り込まれている。
【0049】
製紙用2層織物21は、第1実施形態と同様に、曲げ抵抗区間11によって、製紙用2層織物21の幅方向の曲げ剛性が高くなって製造される紙の幅方向の均一性が向上し、特に、第1上緯糸9の剛性が緯自接結糸8の剛性よりも高い場合は、この効果が高まる。更に、緯自接結糸8が、第1上緯糸9よりも多く製紙面側に露出するため、緯自接結糸8を例えばポリアミドのような吸湿性の高い糸にすれば粘着性の汚れ(ピッチ)付着防止効果を付加する仕様とすることが出来る。
【0050】
次に、図7図9を参照して、第3実施形態に係る製紙用2層織物31について説明する。
【0051】
製紙用2層織物31の完全組織は、6本の上経糸4と、6本の下経糸6と、6本の第1上緯糸9と、12本の第2上緯糸10と、12本の下緯糸7と、6本の緯自接結糸8とから構成される。従って、完全組織における上経糸4と下経糸6との合計本数は12本であり(12枚綾)、上経糸4と下経糸6との本数の比は1:1であり、上緯糸5と下緯糸7との本数の比は3:2である。
【0052】
経糸No.n´(nは1~6の整数)の各々の位置には、1本の上経糸4と1本の下経糸6とが配置されている。また、緯糸No.3m-2の位置の各々には、1本の第1上緯糸9と1本の緯自接結糸8とが配置され、緯糸No.3m-1及び3mの位置の各々には、1本の第2上緯糸10と1本の下緯糸7とが配置されている(mは、1~6の整数)。
【0053】
緯自接結糸8は、1本の上経糸4の上、1組の上経糸4と下経糸6との間、1本の上経糸4の上、1組の上経糸4と下経糸6との間、1本の下経糸6の下、1組の上経糸4と下経糸6との間を順に通る繰り返し単位で、上経糸4及び下経糸6に織り込まれる。換言すると、緯自接結糸8は、上経糸4を平織りで2回織り込んだ後、1本の下経糸6を1回織り込むことを繰り返している。
【0054】
第1上緯糸9は、対をなす緯自接結糸8が下経糸6を織り込む位置で上経糸4を織り込むとともに、その他の部分で上経糸4の下を通ることによって5本の連続する上経糸4の下を通る曲げ抵抗区間11を有する。このため、互いに対をなす第1上緯糸9及び緯自接結糸8は、互いに補完して1本の緯糸のように上経糸4に平織りで織り込まれ、製紙面側層2の織物組織の1本の緯糸ラインを形成している。例えば、緯糸No.1の1対の第1上緯糸9及び緯自接結糸8は、第1上緯糸9が経糸No.5´の上経糸4を織り込み、緯自接結糸8が、経糸No.1´及び3´の上経糸4を織り込むことによって、1本の緯糸のように上経糸4に平織りで織り込まれている。
【0055】
下緯糸7は、5本の連続する下経糸6の下を通った後、1本の下経糸6の上を通ることを繰り返すように下経糸6に織り込まれている。
【0056】
製紙用2層織物31は、第1実施形態と同様に、曲げ抵抗区間11によって、製紙用2層織物31の幅方向の曲げ剛性が高くなって製造される紙の幅方向の均一性が向上し、特に、第1上緯糸9の剛性が緯自接結糸8の剛性よりも高い場合は、この効果が高まる。
【0057】
次に、図10図12を参照して、第4実施形態に係る製紙用2層織物41について説明する。
【0058】
製紙用2層織物41の完全組織は、10本の上経糸4と、10本の下経糸6と、10本の第1上緯糸9と、20本の第2上緯糸10と、20本の下緯糸7と、10本の緯自接結糸8とから構成される。従って、完全組織における上経糸4と下経糸6との合計本数は20本であり(20枚綾)、上経糸4と下経糸6との本数の比は1:1であり、上緯糸5と下緯糸7との本数の比は3:2である。
【0059】
経糸No.n´(nは1~10の整数)の各々の位置には、1本の上経糸4と1本の下経糸6とが配置されている。また、緯糸No.3m-2の位置の各々には、1本の第1上緯糸9と1本の緯自接結糸8とが配置され、緯糸No.3m-1及び3mの位置の各々には、1本の第2上緯糸10と1本の下緯糸7とが配置されている(mは、1~10の整数)。
【0060】
緯自接結糸8は、1本の上経糸4の上、1組の上経糸4と下経糸6との間、1本の上経糸4の上、1組の上経糸4と下経糸6との間、1本の下経糸6の下、3組の上経糸4と下経糸6との間、1本の下経糸6の下、1組の上経糸4と下経糸6との間を順に通る繰り返し単位で、上経糸4及び下経糸6に織り込まれる。換言すると、緯自接結糸8は、上経糸4を平織りで2回織り込み、1本の下経糸6を1回織り込み、上経糸4と1本の下経糸6との間を通り、1本の下経糸6を1回織り込むことを順に繰り返している。
【0061】
第1上緯糸9は、対をなす緯自接結糸8が下経糸6を織り込む位置と、対をなす緯自接結糸8が3組の連続する上経糸4及び下経糸6の間を通る区間の中央の位置とで上経糸4を織り込むとともに、その他の部分で上経糸4の下を通ることによって5本の連続する上経糸4の下を通る曲げ抵抗区間11を有する。このため、互いに対をなす第1上緯糸9及び緯自接結糸8は、互いに補完して1本の緯糸のように上経糸4に平織りで織り込まれ、製紙面側層2の織物組織の1本の緯糸ラインを形成している。例えば、緯糸No.1の1対の第1上緯糸9及び緯自接結糸8は、第1上緯糸9が経糸No.1´、7´及び9´の上経糸4を織り込み、緯自接結糸8が、経糸No.3´及び5´の上経糸4を織り込むことによって、1本の緯糸のように上経糸4に平織りで織り込まれている。
【0062】
下緯糸7は、8本の連続する下経糸6の下を通った後、2本の連続する下経糸6の上を通ることを繰り返すように下経糸6に織り込まれている。
【0063】
製紙用2層織物41は、第1実施形態と同様に、曲げ抵抗区間11によって、製紙用2層織物41の幅方向の曲げ剛性が高くなって製造される紙の幅方向の均一性が向上し、特に、第1上緯糸9の剛性が緯自接結糸8の剛性よりも高い場合は、この効果が高まる。
【0064】
次に、図13図15を参照して、第5実施形態に係る製紙用2層織物51について説明する。図13では、「◎」印は上経糸4が第1上緯糸9又は第3上緯糸52の下を通っていることを示し、「□」印は上経糸4が第4上緯糸53の下を通っていることを示し、その他の印は図1と同様のことを示す。
【0065】
上緯糸5は、緯自接結糸8と対をなす第1上緯糸9と、互いに対をなす第3上緯糸52及び第4上緯糸53とを含む。従って、全ての上緯糸5は、他の上緯糸5又は緯自接結糸8と対をなす。
【0066】
製紙用2層織物51の完全組織は、6本の上経糸4と、6本の下経糸6と、6本の第1上緯糸9と、12本の第3上緯糸52と、12本の第4上緯糸53と、12本の下緯糸7と、6本の緯自接結糸8とから構成される。従って、完全組織における上経糸4と下経糸6との合計本数は12本であり(12枚綾)、上経糸4と下経糸6との本数の比は1:1であり、上緯糸5と下緯糸7との本数の比は3:2である。
【0067】
経糸No.n´(nは1~6の整数)の各々の位置には、1本の上経糸4と1本の下経糸6とが配置されている。また、緯糸No.3m-2の位置の各々には、1本の第1上緯糸9と1本の緯自接結糸8とが配置され、緯糸No.3m-1及び3mの位置の各々には、1本の第3上緯糸52と1本の第4上緯糸53と1本の下緯糸7とが配置されている(mは、1~6の整数)。
【0068】
緯自接結糸8は、1本の上経糸4の上、1組の上経糸4と下経糸6との間、1本の上経糸4の上、1組の上経糸4と下経糸6との間、1本の下経糸6の下、1組の上経糸4と下経糸6との間を順に通る繰り返し単位で、上経糸4及び下経糸6に織り込まれる。換言すると、緯自接結糸8は、上経糸4を平織りで2回織り込んだ後、1本の下経糸6を1回織り込むことを繰り返している。
【0069】
第1上緯糸9は、対をなす緯自接結糸8が下経糸6を織り込む位置で上経糸4を織り込むとともに、その他の部分で上経糸4の下を通ることによって5本の連続する上経糸4の下を通る曲げ抵抗区間11を有する。このため、互いに対をなす第1上緯糸9及び緯自接結糸8は、互いに補完して1本の緯糸のように上経糸4に平織りで織り込まれ、製紙面側層2の織物組織の1本の緯糸ラインを形成している。例えば、緯糸No.1の1対の第1上緯糸9及び緯自接結糸8は、第1上緯糸9が経糸No.5´の上経糸4を織り込み、緯自接結糸8が、経糸No.1´及び3´の上経糸4を織り込むことによって、1本の緯糸のように上経糸4に平織りで織り込まれている。
【0070】
第3上緯糸52は、1本の上経糸4の上、5本の連続する上経糸4の下を順に通る繰り返し単位で上経糸4に織り込まれる。第4上緯糸53は、1本の上経糸4の上、1本の上経糸4の下、1本の上経糸4の上、3本の連続する上経糸4の下を順に通る繰り返し単位で上経糸4に織り込まれる。互いに対をなす第3上緯糸52及び第4上緯糸53において、第3上緯糸52は、第4上緯糸53が3本の連続する上経糸4の下を通っている部分の中央の上経糸4の上を通っている。これにより、互いに対をなす第3上緯糸52及び第4上緯糸53は、互いに補完して1本の緯糸のように上経糸4に平織りで織り込まれている。第3上緯糸52は5本の連続する上経糸4の下を通る区間54を有し、第4上緯糸53は3本の連続する上経糸4の下を通る区間55を有する。
【0071】
下緯糸7は、5本の連続する下経糸6の下を通った後、1本の下経糸6の上を通ることを繰り返すように下経糸6に織り込まれている。
【0072】
製紙用2層織物51は、第1実施形態と同様に、曲げ抵抗区間11によって、製紙用2層織物51の幅方向の曲げ剛性が高くなって製造される紙の幅方向の均一性が向上し、特に、第1上緯糸9の剛性が緯自接結糸8の剛性よりも高い場合は、この効果が高まる。
【0073】
また、区間54,55も、曲げ抵抗区間11と同様の作用効果を奏する。この作用効果を高めるため、第3上緯糸52及び/又は第4上緯糸53には、緯自接結糸8よりも剛性が高い素材を用いることが好ましい。例えば、緯自接結糸8がポリアミド系樹脂であるならば、第3上緯糸52及び/又は第4上緯糸53にポリエステル系樹脂を用いてもよい。
【0074】
次に、図16図18を参照して、第6実施形態に係る製紙用2層織物61について説明する。
【0075】
製紙用2層織物61の完全組織は、10本の上経糸4と、10本の下経糸6と、5本の第1上緯糸9と、5本の第2上緯糸10と、5本の下緯糸7と、5本の緯自接結糸8とから構成される。従って、完全組織における上経糸4と下経糸6との合計本数は20本であり(20枚綾)、上経糸4と下経糸6との本数の比は1:1であり、上緯糸5と下緯糸7との本数の比は2:1である。
【0076】
経糸No.n´(nは1~10の整数)の各々の位置には、1本の上経糸4と1本の下経糸6とが配置されている。また、緯糸No.2m-1の位置の各々には、1本の第1上緯糸9と1本の緯自接結糸8とが配置され、緯糸No.2mの位置の各々には、1本の第2上緯糸10と1本の下緯糸7とが配置されている(mは、1~5の整数)。
【0077】
緯自接結糸8は、1本の上経糸4の上、1組の上経糸4と下経糸6との間、1本の上経糸4の上、2組の上経糸4と下経糸6との間、1本の下経糸6の下、2組の上経糸4と下経糸6との間、1本の下経糸6の下、1組の上経糸4と下経糸6との間を順に通る繰り返し単位で、上経糸4及び下経糸6に織り込まれる。換言すると、緯自接結糸8は、上経糸4を平織りで2回織り込む部分と、1本の下経糸6を1回織り込む2つの部分とを含み、これらの間に1組又は2組の上経糸4及び下経糸6を通る部分を挟む繰り返し単位で上経糸4及び下経糸6に織り込まれている。
【0078】
第1上緯糸9は、対をなす緯自接結糸8が上経糸4を織り込まない部分で上経糸4を織り込むとともに、その他の部分で上経糸4の下を通ることによって5本の連続する上経糸4の下を通る曲げ抵抗区間11を有する。このため、互いに対をなす第1上緯糸9及び緯自接結糸8は、互いに補完して1本の緯糸のように上経糸4に平織りで織り込まれ、製紙面側層2の織物組織の1本の緯糸ラインを形成している。例えば、緯糸No.9の1対の第1上緯糸9及び緯自接結糸8は、第1上緯糸9が経糸No.2´、8´及び10´の上経糸4を織り込み、緯自接結糸8が、経糸No.4´及び6´の上経糸4を織り込むことによって、1本の緯糸のように上経糸4に平織りで織り込まれている。
【0079】
下緯糸7は、8本の連続する下経糸6の下を通った後、2本の連続する下経糸6の上を通ることを繰り返すように下経糸6に織り込まれている。
【0080】
製紙用2層織物61は、第1実施形態と同様に、曲げ抵抗区間11によって、製紙用2層織物61の幅方向の曲げ剛性が高くなって製造される紙の幅方向の均一性が向上し、特に、第1上緯糸9の剛性が緯自接結糸8の剛性よりも高い場合は、この効果が高まる。
【0081】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。各実施形態において、製紙面側層の組織は平織り以外の組織(例えば、3/1崩織や2/2斜織)でもよく、走行面側層の組織の下緯糸を織り込む間隔を変更してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1,21,31,41,51,61:製紙用2層織物
2:製紙面側層
3:走行面側層
4:上経糸
5:上緯糸
6:下経糸
7:下緯糸
8:緯自接結糸
9:第1上緯糸
10:第2上緯糸
11:曲げ抵抗区間
52:第3上緯糸
53:第4上緯糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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