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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】アルカリ二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/103 20210101AFI20231011BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20231011BHJP
   H01M 10/30 20060101ALI20231011BHJP
   H01M 4/52 20100101ALI20231011BHJP
   H01M 4/42 20060101ALI20231011BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20231011BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20231011BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20231011BHJP
   H01M 10/6566 20140101ALI20231011BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20231011BHJP
   H01M 50/176 20210101ALI20231011BHJP
   H01M 50/143 20210101ALI20231011BHJP
   H01M 50/133 20210101ALI20231011BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20231011BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20231011BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20231011BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20231011BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20231011BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20231011BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20231011BHJP
【FI】
H01M50/103
H01M50/15
H01M10/30 Z
H01M4/52
H01M4/42
H01M50/204 401H
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/6566
H01M50/121
H01M50/176
H01M50/143
H01M50/133
H01M50/262 E
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/446
H01M50/342 101
H01M4/38 Z
H01M4/48
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019218582
(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公開番号】P2020095955
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2018230192
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(72)【発明者】
【氏名】松矢 淳宣
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 賢信
(72)【発明者】
【氏名】八木 毅
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 玄太
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-320775(JP,A)
【文献】特許第4359857(JP,B1)
【文献】特開2010-040328(JP,A)
【文献】特開2013-149459(JP,A)
【文献】特開2017-091949(JP,A)
【文献】特開2006-093144(JP,A)
【文献】特開2013-089369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10
H01M 50/20
H01M 50/30
H01M 50/40
H01M 10/30
H01M 4/52
H01M 4/42
H01M 10/613
H01M 10/647
H01M 10/6566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ二次電池の構成を有する複数の単電池要素が積層された積層電池と、
前記積層電池が縦向きに収容される箱型ケースと、
を備えた、アルカリ二次電池であって、
前記箱型ケースが、底部と、前記積層電池と平行な1対の長手側壁部と、前記積層電池と垂直な1対の短手側壁部と、蓋部とを有し、
前記1対の長手側壁部の外表面が、平坦面と、該平坦面から畝状に突出して設けられる複数のリブとを有し、前記複数のリブが互いに離間しかつ縦方向に平行に設けられており、
前記長手側壁部1つあたりの前記リブの本数が5~11本であり、
前記長手側壁部の左端に最も近いリブと前記左端に2番目に近いリブとの間隔、及び前記長手側壁部の右端に最も近いリブと前記右端に2番目に近いリブとの間隔が、前記長手側壁部の両端から離れたその他のリブ同士の間隔よりも狭い、アルカリ二次電池。
【請求項2】
前記箱型ケースが樹脂製である、請求項1に記載のアルカリ二次電池。
【請求項3】
前記リブは、前記リブの幅が前記底部から前記蓋部に向かう方向に徐々に又は段階的に太くなるように設けられる、請求項1又は2に記載のアルカリ二次電池。
【請求項4】
前記1対の長手側壁部は、前記1対の長手側壁部の内壁同士の離間距離が前記蓋部から前記底部に向かう方向に徐々に又は段階的に減少するテーパー状の断面形状を有する、請求項3に記載のアルカリ二次電池。
【請求項5】
前記リブが、台形状の断面形状を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のアルカリ二次電池。
【請求項6】
前記アルカリ二次電池が、正極端子及び負極端子をさらに備え、前記正極端子及び前記負極端子が前記蓋部から延出される、請求項1~5のいずれか一項に記載のアルカリ二次電池。
【請求項7】
前記短手側壁部が、前記短手側壁部の他の部分よりも厚さが局所的に低減された脆弱部を有する、及び/又は前記蓋部が、前記蓋部の他の部分よりも厚さが局所的に低減された脆弱部を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のアルカリ二次電池。
【請求項8】
前記リブが、前記平坦を基準として1.0~10mmの高さを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のアルカリ二次電池。
【請求項9】
前記アルカリ二次電池が亜鉛二次電池である、請求項1~のいずれか一項に記載のアルカリ二次電池。
【請求項10】
前記単電池要素が、
正極活物質層を含む正極板と、
亜鉛、酸化亜鉛、亜鉛合金及び亜鉛化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む負極活物質層を含む負極板と、
層状複水酸化物(LDH)を含むLDHセパレータと、
電解液と、
を含み、前記LDHセパレータを介して前記正極活物質層と前記負極活物質層が互いに隔離される、請求項に記載のアルカリ二次電池。
【請求項11】
前記LDHセパレータがLDHと多孔質基材とを含み、前記LDHセパレータが水酸化物イオン伝導性及びガス不透過性を呈するように前記LDHが前記多孔質基材の孔を塞いでいる、請求項10に記載のアルカリ二次電池。
【請求項12】
前記正極活物質層が水酸化ニッケル及び/又はオキシ水酸化ニッケルを含み、それにより前記亜鉛二次電池がニッケル亜鉛二次電池をなす、請求項11に記載のアルカリ二次電池。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のアルカリ二次電池を複数備えたアルカリ二次電池モジュールであって、
前記複数のアルカリ二次電池が、前記長手側壁部同士が向かい合い、かつ、前記リブ同士が当接するように配列され、それにより隣り合う前記箱型ケースの前記リブ同士が接触してスペーサをなし、それにより縦方向の通気孔を形成する、アルカリ二次電池モジュール。
【請求項14】
前記電池モジュールの外側に前記長手側壁部を厚さ方向に加圧する加圧手段が設けられ、それにより前記箱型ケースが前記加圧手段により加圧されて撓むことで前記単電池要素が加圧される、請求項13に記載のアルカリ二次電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高電圧や大電流を得るために、複数の単電池を組み合わせて作られた積層電池が広く採用されている。積層電池は、単電池を複数直列または並列に接続した積層体が一つの電池容器内に収納された構成を有する。例えば、特許文献1(国際公開第2017/086278号)には、電極及びセパレータ(特に後述するLDHセパレータ)を備えた複数個の電極カートリッジを密閉容器内に収容した亜鉛二次電池が開示されている。
【0003】
また、更なる大容量化及び高出力化のために、積層電池を内在した電池ユニットを複数個配列させて電池モジュール化することも一般的に行われている。例えば、特許文献2(国際公開第2018/173110号)には、直方体状の複数個の電池ユニットをフレーム構造体内に収容した電池モジュールが開示されており、電池ユニット内には複数個のアルカリ二次電池(例えばニッケル亜鉛二次電池及び亜鉛空気二次電池)の単電池が組電池ないし電池モジュールの形態で収容されているのが好ましいとされている。
【0004】
ところで、ニッケル亜鉛二次電池、空気亜鉛二次電池等の亜鉛二次電池では、充電時に負極から金属亜鉛がデンドライト状に析出し、不織布等のセパレータの空隙を貫通して正極に到達し、その結果、短絡を引き起こすことが知られている。このような亜鉛デンドライトに起因する短絡は繰り返し充放電寿命の短縮を招く。上記問題に対処すべく、水酸化物イオンを選択的に透過させながら、亜鉛デンドライトの貫通を阻止する、層状複水酸化物(LDH)セパレータを備えた電池が提案されている。例えば、特許文献3(国際公開第2013/118561号)には、ニッケル亜鉛二次電池においてLDHセパレータを正極及び負極間に設けることが開示されている。また、特許文献4(国際公開第2016/076047号)には、樹脂製外枠に嵌合又は接合されたLDHセパレータを備えたセパレータ構造体が開示されており、LDHセパレータがガス不透過性及び/又は水不透過性を有する程の高い緻密性を有することが開示されている。また、この文献にはLDHセパレータが多孔質基材と複合化されうることも開示されている。さらに、特許文献5(国際公開第2016/067884号)には多孔質基材の表面にLDH緻密膜を形成して複合材料(LDHセパレータ)を得るための様々な方法が開示されている。この方法は、多孔質基材にLDHの結晶成長の起点を与えうる起点物質を均一に付着させ、原料水溶液中で多孔質基材に水熱処理を施してLDH緻密膜を多孔質基材の表面に形成させる工程を含むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/086278号
【文献】国際公開第2018/173110号
【文献】国際公開第2013/118561号
【文献】国際公開第2016/076047号
【文献】国際公開第2016/067884号
【発明の概要】
【0006】
ところで、ニッケル亜鉛電池等の積層電池をケース内に備えた電池ユニットは、電池性能を最大限に引き出すためにケースの外から加圧することが望ましい。これは、負極とLDHセパレータとの間における亜鉛デンドライトの成長を許容する隙間を最小化し、それにより亜鉛デンドライト伸展のより効果的な防止が期待できるためである。そのためには、複数個の電池ユニットを配列してモジュール化した際に個々の電池ユニットに圧力がかかるように、ケースの側面形状はできるだけ平坦であることが望ましい。例えば、図10に示されるような直方体のケース128である。しかしながら、ケース128の側面部が平坦であると、図11に示されるようにモジュール130を構成する電池ユニット同士が密着することになるため、電池ユニットが発生する熱を上手く逃がすことができない、すなわち放熱性が悪くなるとの問題がある。
【0007】
本発明者らは、今般、箱型ケースの長手側壁部の平坦な外表面に複数のリブを設けることで、モジュール電池にした際に、圧力を付与するのに適した形状でありながらも、優れた放熱性を確保可能な、アルカリ二次電池を提供できるとの知見を得た。
【0008】
したがって、本発明の目的は、電池モジュールにした際に、圧力を付与するのに適した形状でありながらも、優れた放熱性を確保可能な、アルカリ二次電池を提供することにある。
【0009】
本発明の一態様によれば、
アルカリ二次電池の構成を有する複数の単電池要素が積層された積層電池と、
前記積層電池が縦向きに収容される箱型ケースと、
を備えた、アルカリ二次電池であって、
前記箱型ケースが、底部と、前記積層電池と平行な1対の長手側壁部と、前記積層電池と垂直な1対の短手側壁部と、蓋部とを有し、
前記1対の長手側壁部の外表面が、平坦面と、該平坦面から畝状に突出して設けられる複数のリブとを有し、前記複数のリブが互いに離間しかつ縦方向に平行に設けられている、アルカリ二次電池が提供される。
【0010】
本発明の別の一態様によれば、前記アルカリ二次電池を複数備えたアルカリ二次電池モジュールであって、
前記複数のアルカリ二次電池が、前記長手側壁部同士が向かい合い、かつ、前記リブ同士が当接するように配列され、それにより隣り合う前記箱型ケースの前記リブ同士が接触してスペーサをなし、それにより縦方向の通気孔を形成する、アルカリ二次電池モジュールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のアルカリ二次電池の一例を示す斜視図である。
図2図1に示されるアルカリ二次電池の箱型ケースのA-A線断面図である。
図3図1に示されるアルカリ二次電池の箱型ケースの蓋部を示す上面図である。
図4図1に示されるアルカリ二次電池を複数個配列した電池モジュールを示す斜視図である。
図5図1に示されるアルカリ二次電池の内部構造の一例を示す斜視図である。
図6図5に示されるアルカリ二次電池の層構成を概念的に示す模式断面図である。
図7図5に示されるアルカリ二次電池の外観及び内部構造を示す。
図8A】アルカリ二次電池で用いられる、負極活物質層がLDHセパレータで覆われた負極板の一例を示す斜視図である。
図8B図8Aに示される負極板の層構成を示す模式断面図である。
図9図8Aに示される負極板における、LDHセパレータで覆われる領域を説明するための模式図である。
図10】従来の直方体状電池ユニットを示す斜視図である。
図11】従来の直方体状電池ユニットを複数個配列した電池モジュールを示す斜視図である。
図12図1に示されるアルカリ二次電池の箱型ケースの断面の一形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
アルカリ二次電池
図1に本発明のアルカリ二次電池の一例を示す。図1に示されるアルカリ二次電池10は、積層電池と、積層電池が縦向きに収容される箱型ケース28とを備える。図5及び6に示されるように、積層電池は、アルカリ二次電池の構成を有する複数の単電池要素11が積層されたものであり、高電圧や大電流が得られる点で有利である。図1~3に示されるように、箱型ケース28は、底部28aと、積層電池と平行な1対の長手側壁部28bと、積層電池と垂直な1対の短手側壁部28cと、蓋部28dとを有する。そして、1対の長手側壁部28bの外表面が、平坦面Fと、この平坦面38fから畝状に突出して設けられる複数のリブRとを有し、複数のリブRが互いに離間しかつ縦方向に平行に設けられている。このように、箱型ケース28の長手側壁部28bの平坦な外表面に複数のリブRを設けることで、図4に示されるように電池モジュール30にした際に、圧力を付与するのに適した形状でありながらも、優れた放熱性を確保可能な、アルカリ二次電池を提供できる。
【0013】
前述したように、ニッケル亜鉛電池等の積層電池をケース内に備えた電池ユニットは、電池性能を最大限に引き出すためにケースの外から加圧することが望ましい。そのためには、複数個の電池ユニットを配列してモジュール化した際に個々の電池ユニットに圧力がかかるように、ケースの側面形状はできるだけ平坦であることが望ましい。例えば、図10に示されるような直方体のケース128である。しかしながら、ケースの側面部が平坦であると、図11に示されるようにモジュール130を構成する電池ユニット同士が密着することになるため、電池ユニットが発生する熱を上手く逃がすことができない。この点、本発明のアルカリ二次電池10は、長手側壁部28bの平坦な外表面に複数のリブRを設けることで、図4に示されるように電池モジュール30にした際に、長手側壁部28b同士が向かい合い、かつ、リブR同士が当接するように配列されることができる。その結果、隣り合う箱型ケース28のリブR同士が接触してスペーサをなし、それにより縦方向の通気孔を形成することができ、優れた放熱性を確保することができる。とりわけ、この優れた放熱性は、図4に示されるように電池モジュール30の下から矢印方向にリブR同士の隙間に風を通過させることでより望ましく実現することができる。このように優れた放熱性を確保しながらも、電池モジュール30の外側から長手側壁部28bを厚さ方向に加圧することで、箱型ケース28が撓んで単電池要素11に圧力を付与することができる。
【0014】
したがって、本発明の好ましい態様によれば、図4に示されるように、アルカリ二次電池10を複数備えたアルカリ二次電池モジュール30が提供される。この態様においては、複数のアルカリ二次電池が、長手側壁部28b同士が向かい合い、かつ、リブR同士が当接するように配列され、それにより隣り合う箱型ケース28のリブR同士が接触してスペーサをなし、それにより縦方向の通気孔を形成する。好ましくは、アルカリ二次電池モジュール30の外側には長手側壁部28bを厚さ方向に加圧する加圧手段(図示せず)が設けられ、それにより箱型ケース28が加圧手段により加圧されて撓むことで単電池要素11が加圧される。
【0015】
箱型ケース28は、図1~3に示されるように、底部28a、積層電池と平行な1対の長手側壁部28bと、積層電池と垂直な1対の短手側壁部28cと、蓋部28dとを有する。好ましくは、アルカリ二次電池10は、正極端子14c及び負極端子18cをさらに備え、正極端子14c及び負極端子18cが蓋部28dから延出される。積層電池は図1~3には示されていないが、図5及び6に示されるように複数の単電池要素11が積層されたもの、すなわち複数の単電池要素11の集合体である。箱型ケース28の典型的な基本形状は直方体であるが、完全な直方体である必要は無く、全体としての概形が箱型であるかぎり、部分的に曲面や凹凸を部分的に有する形状であってもよい。
【0016】
箱型ケース28は樹脂製であるのが好ましい。箱型ケース28を構成する樹脂は水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物に対する耐性を有する樹脂であるのが好ましく、より好ましくはポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、又は変性ポリフェニレンエーテルであり、さらに好ましくはABS樹脂又は変性ポリフェニレンエーテルである。また、2以上のケース28が配列されたケース群を外枠内に収容して、電池モジュールの構成としてもよい。
【0017】
1対の長手側壁部28bの外表面は、平坦面Fと、平坦面Fから畝状に突出して設けられる複数のリブRとを有する。複数のリブRが互いに離間しかつ縦方向に平行に設けられる。リブRは、平坦面Fを基準として1.0~10mmの高さを有するのが好ましく、より好ましくは1.0~4.0mm、さらに好ましくは1.2~3.5mm、特に好ましくは1.4~3.0mm、最も好ましくは1.5~2.5mmである。これらの範囲内であると電池モジュール30を構成した際の放熱性に優れるとともに、無駄な空間を最小化することで電池エネルギー密度を向上することができる。リブRの幅は、放熱性確保と圧力付与との両立の観点から、2.5~8.0mmが好ましく、より好ましくは3.0~7.5mm、さらに好ましくは3.5~7.0mm、特に好ましくは4.0~6.5mm、最も好ましくは4.5~6.0mmである。
【0018】
リブRは、リブRの幅が底部28aから蓋部28dに向かう方向に徐々に又は段階的に太くなるように設けられるのが、箱型ケース28の製造時に金型から離型しやすい点で好ましい。また、リブRの断面形状は、矩形状、曲面状、台形状等のいかなる形状であってもよいが、上記金型からの離型の観点から台形状であるのが好ましい。
【0019】
長手側壁部28bの1つあたりのリブRの本数は特に限定されないが、5~11本であるのが好ましく、より好ましくは7~10本、さらに好ましくは8~9本である。長手側壁部28bの1つあたりのリブRの本数が5本以上の場合、長手側壁部28bの左端(短手側壁部28cとの接続部)に最も近いリブRとこの左端に2番目に近いリブRとの間隔D、及び長手側壁部28bの右端(短手側壁部28cとの接続部)に最も近いリブRとこの右端に2番目に近いリブRとの間隔Dが、長手側壁部28bの両端(すなわち左端及び右端)から離れたその他のリブR同士の間隔Dよりも狭いのが好ましい。こうすることで、箱型ケース28の長手側壁部28bの両端近傍部分(すなわち短手側壁部28cの近傍部分)を局所的に補強することができ、過充電、過放電、短絡等の異常動作時に電池内で発生するガスによる箱型ケース28の膨張(特にケース28の厚さ方向の膨張)を抑えることができる。特に、長手側壁部28bの両端近傍部分には電極が到達しない余剰空間が形成されやすく、そこに異常時に発生したガスが溜まって箱型ケース28に過度の内圧が集中的に加わることが起こりうるが、かかる内圧に耐えうる強度を箱型ケース28に付与することができる。
【0020】
ところで、リブRの幅が底部28aから蓋部28dに向かう方向に徐々に又は段階的に太くなるように設けられる場合、図12に示されるように、1対の長手側壁部28bは、(単電池要素11を介して互いに向かい合う)1対の長手側壁部28bの内壁同士の離間距離が蓋部28dから底部28aに向かう方向に徐々に又は段階的に減少するテーパー状の断面形状を有するようにするのが好ましい。すなわち、前述のとおり、電池性能を最大限に引き出すために、電池モジュール30の外側から長手側壁部28bを厚さ方向に加圧することで、箱型ケース28が撓んで単電池要素11に圧力を付与するのが望ましい。しかし、本発明者らの知見によれば、リブRの幅が底部28aから蓋部28dに向かう方向に徐々に又は段階的に太くなるように設けられる場合、リブRの幅が太いほどその部分がより強く加圧される傾向がある。その結果、箱型ケース28が単電池要素11に付与する圧力が不均一となりうる。そこで、1対の長手側壁部28bの内壁同士の離間距離が蓋部28dから底部28aに向かう方向に減少するテーパー状の断面形状を長手側壁部28bに持たせることで、加圧が相対的に弱くなる下方部分を予め狭い内壁間距離とする一方、加圧が相対的に強くなる上方部分を予め広い内壁間距離とすることができる。こうすることで、実際に箱型ケース28を厚さ方向に(図12において矢印で示される方向に)加圧した際に、テーパー状断面により予め付与しておいた内壁間距離の分布が、加圧分布を好都合に相殺することができる。つまり、長手側壁部28b上方の広い内壁間距離が比較的強い加圧を緩和しながら単電池要素11に伝える一方、長手側壁部28b下方の狭い内壁間距離が比較的弱い加圧を単電池要素11に対してより直接的に伝えることになる。こうして、箱型ケース28(具体的には1対の長手側壁部28b)を介して単電池要素11に与える圧力を高さによらず均一にすることができる。したがって、かかる構成によれば、電池モジュール30を構成した際の放熱性に優れるというリブRによる効果に加え、電極加圧の均一化をも図ることができる。すなわち、放熱性(冷却性)と加圧性を兼ね備えた箱型ケース28を提供することができる。
【0021】
図1に示されるように、短手側壁部28cは、短手側壁部28cの他の部分よりも厚さが局所的に低減された脆弱部Wを有するのが好ましく、この場合、脆弱部Wは短手側壁部28cの上端付近に設けられるのがより好ましい。あるいは、図3に示されるように、蓋部28dが、蓋部28dの他の部分よりも厚さが局所的に低減された脆弱部Wを有するのも好ましく、この場合、正極端子14c及び負極端子18cの間に脆弱部Wが設けられるのがより好ましい。短手側壁部28c及び蓋部28dの両方が脆弱部Wを有していてもよい。脆弱部Wを有することで、過充電、過放電、短絡等の異常動作時に電池内で発生するガスによって内圧が過度に上昇した際に、脆弱部Wが内圧で選択的に破壊されることで、電解液漏れを防止又は最小限に抑え、アルカリ二次電池10ないし電池モジュール30を収容するモジュール筐体(図示せず)の補強部位を脆弱部W近傍の特定箇所又は面に限定することができる(すなわちモジュール筐体の全体を補強しなくて済む)。脆弱部Wは、長手側壁部28bに設けられてもよいが、短手側壁部28cや蓋部28dに脆弱部Wを設ける方が、長手側壁部28bに脆弱部Wを設ける場合よりも開放圧が安定する(開放圧のばらつきが小さくなる)ため好ましい。すなわち、長手側壁部28bに脆弱部Wを設けると、電池モジュール30を構成した場合に脆弱部Wを含む長手側壁部28bに圧力が加わるため、電池内圧以外の余分なストレスを受けてしまい、開放圧が安定しない。一方、短手側壁部28cや蓋部28dにおいては電池モジュール30を構成しても電池内圧以外の力が加わらないため、脆弱部Wの開放圧を安定させることができる。
【0022】
箱型ケース28(特に短手側壁部28c及び蓋部28d)の脆弱部W以外の部分の好ましい厚さは1.0~4.5mmであり、より好ましくは1.5~3.5mm、さらに好ましくは2.0~2.5mmである。脆弱部Wの好ましい厚さは、0.1~1.0mmであり、より好ましくは0.2~0.9mm、さらに好ましくは0.3~0.8mmである。また、脆弱部Wの厚さは短手側壁部28c又は蓋部28dの脆弱部W以外の部分の厚さの0.10~0.32倍であるのが好ましく、より好ましくは0.13~0.26倍、さらに好ましくは0.15~0.22倍である。
【0023】
アルカリ二次電池10は、アルカリ電解液(典型的にはアルカリ金属水酸化物水溶液)を用いた二次電池であれば特に限定されないが、亜鉛を負極として用いた亜鉛二次電池が好ましい。したがって、ニッケル亜鉛二次電池、酸化銀亜鉛二次電池、酸化マンガン亜鉛二次電池、その他各種のアルカリ亜鉛二次電池であることができる。例えば、正極が水酸化ニッケル及び/又はオキシ水酸化ニッケルを含み、それにより亜鉛二次電池がニッケル亜鉛二次電池をなすのが好ましい。
【0024】
アルカリ二次電池10が亜鉛二次電池である場合について、図5~7を参照しながら以下に説明する。図5~7に示されるアルカリ二次電池10(すなわち亜鉛二次電池)は、単電池要素11を備えており、単電池要素11は、正極板12、負極板16、層状複水酸化物(LDH)セパレータ22、及び電解液(図示せず)を含む。正極板12は、正極活物質層13及び所望により正極集電体14を含む。負極板16は、負極活物質層17及び所望により負極集電体18を含み、負極活物質層17は、亜鉛、酸化亜鉛、亜鉛合金及び亜鉛化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。正極活物質層13と負極活物質層17はLDHセパレータ22を介して互いに隔離されている。例えば、LDHセパレータ22は負極活物質層17の全体を覆う又は包み込んでいるのが好ましい。なお、本明細書において「LDHセパレータ」は、LDHを含むセパレータであって、専らLDHの水酸化物イオン伝導性を利用して水酸化物イオンを選択的に通すものとして定義される。典型的には、正極活物質層13、負極活物質層17、及びLDHセパレータ22はそれぞれ四辺形状(典型的には四角形状)である。好ましくは、正極集電体14が正極活物質層13の1辺から延出する正極集電タブ14aを有し、かつ、負極集電体18が負極活物質層17の正極集電タブ14aと反対側の1辺からLDHセパレータ22の端部を超えて延出する負極集電タブ18aを有する。その結果、単電池要素11が正極集電タブ14a及び負極集電タブ18aを介して互いに反対の側から集電可能とされているのが好ましい。その上、LDHセパレータ22の互いに隣接する少なくとも2辺Cの外縁(ただし負極集電タブと重なる1辺を除く)は閉じられているのが好ましい。このような構成とすることで、LDHセパレータ22と電池容器との煩雑な封止接合を不要として、亜鉛デンドライト伸展を防止可能な亜鉛二次電池(特にその積層電池)を、組み立てやすく且つ集電もしやすい簡素な構成で提供することができる。
【0025】
正極板12は、正極活物質層13を含む。正極活物質層13は、亜鉛二次電池の種類に応じて公知の正極材料を適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、ニッケル亜鉛二次電池の場合には、水酸化ニッケル及び/又はオキシ水酸化ニッケルを含む正極を用いればよい。正極板12は正極集電体(図示せず)をさらに含み、正極集電体は正極活物質層13の1辺から延出する正極集電タブ14aを有する。正極集電体の好ましい例としては、発泡ニッケル板等のニッケル製多孔質基板が挙げられる。この場合、例えば、ニッケル製多孔質基板上に水酸化ニッケル等の電極活物質を含むペーストを均一に塗布して乾燥させることにより正極/正極集電体からなる正極板を好ましく作製することができる。その際、乾燥後の正極板(すなわち正極/正極集電体)にプレス処理を施して、電極活物質の脱落防止や電極密度の向上を図ることも好ましい。なお、図6に示される正極板12は正極集電体(例えば発泡ニッケル)を含むものであるが図示されていない。これは、正極集電体が正極活物質層13と渾然一体化しているため、正極集電体を個別に描出できないためである。アルカリ二次電池10は、正極集電タブ14aの先端に接続する正極集電板14bをさらに備えるのが好ましく、より好ましくは複数枚の正極集電タブ14aが1つの正極集電板14bに接続される。こうすることで簡素な構成でスペース効率良く集電を行えるとともに、正極端子14cへの接続もしやすくなる。また、正極集電板14b自体を負極端子として用いてもよい。
【0026】
負極板16は負極活物質層17を含む。負極活物質層17は、亜鉛、酸化亜鉛、亜鉛合金及び亜鉛化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。すなわち、亜鉛は、負極に適した電気化学的活性を有するものであれば、亜鉛金属、亜鉛化合物及び亜鉛合金のいずれの形態で含まれていてもよい。負極材料の好ましい例としては、酸化亜鉛、亜鉛金属、亜鉛酸カルシウム等が挙げられるが、亜鉛金属及び酸化亜鉛の混合物がより好ましい。負極活物質層17はゲル状に構成してもよいし、電解液と混合して負極合材としてもよい。例えば、負極活物質に電解液及び増粘剤を添加することにより容易にゲル化した負極を得ることができる。増粘剤の例としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、CMC、アルギン酸等が挙げられるが、ポリアクリル酸が強アルカリに対する耐薬品性に優れているため好ましい。
【0027】
亜鉛合金として、無汞化亜鉛合金として知られている水銀及び鉛を含まない亜鉛合金を用いることができる。例えば、インジウムを0.01~0.1質量%、ビスマスを0.005~0.02質量%、アルミニウムを0.0035~0.015質量%を含む亜鉛合金が水素ガス発生の抑制効果があるので好ましい。とりわけ、インジウムやビスマスは放電性能を向上させる点で有利である。亜鉛合金の負極への使用は、アルカリ性電解液中での自己溶解速度を遅くすることで、水素ガス発生を抑制して安全性を向上できる。
【0028】
負極材料の形状は特に限定されないが、粉末状とすることが好ましく、それにより表面積が増大して大電流放電に対応可能となる。好ましい負極材料の平均粒径は、亜鉛合金の場合、短径で3~100μmの範囲であり、この範囲内であると表面積が大きいことから大電流放電への対応に適するとともに、電解液及びゲル化剤と均一に混合しやすく、電池組み立て時の取り扱い性も良い。
【0029】
負極板16は負極集電体18をさらに含むことができる。好ましくは、負極集電体18は負極活物質層17の正極集電タブ14aと反対側の1辺からLDHセパレータ22の端部を超えて延出する負極集電タブ18aを有する。その結果、単電池要素11が正極集電タブ14a及び負極集電タブ18aを介して互いに反対の側から集電可能とされている。アルカリ二次電池10は、負極集電タブ18aの先端に接続する負極集電板18bをさらに備えるのが好ましく、より好ましくは複数枚の負極集電タブ18aが1つの負極集電板18bに接続される。こうすることで簡素な構成でスペース効率良く集電を行えるとともに、負極端子18cへの接続もしやすくなる。また、負極集電板18b自体を負極端子として用いてもよい。典型的には、負極集電タブ18aの先端部分がLDHセパレータ22及び(存在する場合には)保液部材20で覆われない露出部分をなす。これにより露出部分を介して負極集電体18(特に負極集電タブ18a)を負極集電板18b及び/又は負極端子18cに望ましく接続することができる。この場合、図9に示されるように、LDHセパレータ22が負極活物質層17の負極集電タブ18a側の端部を十分に隠すように所定のマージンM(例えば1~5mmの間隔)を伴って覆う又は包み込むのが好ましい。こうすることで、負極活物質層17の負極集電タブ18a側の端部又はその近傍からの亜鉛デンドライトの伸展をより効果的に防止することができる。
【0030】
負極集電体18の好ましい例としては、銅箔、銅エキスパンドメタル、銅パンチングメタルが挙げられるが、より好ましくは銅エキスパンドメタルである。この場合、例えば、銅エキスパンドメタル上に、酸化亜鉛粉末及び/又は亜鉛粉末、並びに所望によりバインダー(例えばポリテトラフルオロエチレン粒子)を含んでなる混合物を塗布して負極/負極集電体からなる負極板を好ましく作製することができる。その際、乾燥後の負極板(すなわち負極/負極集電体)にプレス処理を施して、電極活物質の脱落防止や電極密度の向上を図ることも好ましい。
【0031】
亜鉛二次電池としてのアルカリ二次電池10は、負極活物質層17とLDHセパレータ22の間に介在し、かつ、負極活物質層17の全体を覆う又は包み込む保液部材20をさらに備えるのが好ましい。こうすることで、負極活物質層17とLDHセパレータ22との間に電解液を万遍なく存在させることができ、負極活物質層17とLDHセパレータ22との間における水酸化物イオンの授受を効率良く行うことができる。保液部材20は電解液を保持可能な部材であれば特に限定されないが、シート状の部材であるのが好ましい。保液部材の好ましい例としては不織布、吸水性樹脂、保液性樹脂、多孔シート、各種スペーサが挙げられるが、特に好ましくは、低コストで性能の良い負極構造体を作製できる点で不織布である。保液部材20は0.01~0.20mmの厚さを有するのが好ましく、より好ましくは0.02~0.20mmであり、さらに好ましくは0.02~0.15mmであり、特に好ましくは0.02~0.10mmであり、最も好ましくは0.02~0.06mmである。上記範囲内の厚さであると、負極構造体の全体サイズを無駄無くコンパクトに抑えながら、保液部材20内に十分な量の電解液を保持させることができる。
【0032】
負極活物質層17の全体はLDHセパレータ22で覆う又は包み込まれているのが好ましい。図8A及び8Bに負極活物質層17がLDHセパレータ22で覆われた又は包み込まれた負極板16の好ましい態様が示される。図8A及び8Bに示される負極構造体は、負極活物質層17、負極集電体18、及び所望により保液部材20を備えており、負極活物質層17の全体が(必要に応じて保液部材20を介して)LDHセパレータ22で覆う又は包み込まれている。このように、負極活物質層17の全体を(必要に応じて保液部材20を介して)LDHセパレータ22で覆う又は包み込むことにより、前述したように、LDHセパレータ22と電池容器との煩雑な封止接合を不要にして、亜鉛デンドライト伸展を防止可能な亜鉛二次電池(特にその積層電池)を極めて簡便にかつ高い生産性で作製することが可能となる。
【0033】
図8A及び8Bにおいて保液部材20はLDHセパレータ22よりも小さいサイズとして描かれているが、保液部材20はLDHセパレータ22(又は折り曲げられたLDHセパレータ22)と同じサイズであってもよく、保液部材20の外縁はLDHセパレータ22の外縁に到達しうる。すなわち、外周部分を構成するLDHセパレータ22の間に、保液部材20の外周部分が挟み込まれる構成としてもよい。こうすることで、後述するLDHセパレータ22の外縁封止を熱溶着又は超音波溶着により、効果的に行うことができる。すなわち、LDHセパレータ22同士を直接的に熱溶着又は超音波溶着するよりも、LDHセパレータ22同士をそれらの間に熱溶着性の保液部材20を介在させて間接的に熱溶着又は超音波溶着する方が、保液部材20自体の熱溶着性を利用できる結果、より効果的な封止を行うことができる。例えば、保液部材20の封止されるべき端部をあたかもホットメルト接着剤かのごとく利用することができる。この場合における保液部材20の好ましい例としては不織布、特に熱可塑性樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン)製の不織布が挙げられる。
【0034】
LDHセパレータ22は、LDHと多孔質基材とを含む。前述のとおり、LDHセパレータ22が水酸化物イオン伝導性及びガス不透過性を呈するように(それ故水酸化物イオン伝導性を呈するLDHセパレータとして機能するように)LDHが多孔質基材の孔を塞いでいる。多孔質基材は高分子材料製であるのが好ましく、LDHは高分子材料製多孔質基材の厚さ方向の全域にわたって組み込まれているのが特に好ましい。例えば、特許文献3~5に開示されるような公知のLDHセパレータが使用可能である。
【0035】
1つの負極活物質層17に対するLDHセパレータ22の枚数は、片面につき、典型的には1(両面では向かい合う2枚又は折り曲げられた1枚)であるが、2以上であってもよい。例えば、数枚重ねのLDHセパレータ22で負極活物質層17(保液部材20で覆う又は包み込まれていてよい)の全体を覆う又は包み込む構成としてもよい。
【0036】
前述のとおり、LDHセパレータ22は四辺形(典型的には四角形)の形状を有する。そして、LDHセパレータ22の互いに隣接する少なくとも2辺Cの外縁(ただし負極集電タブ18aと重なる1辺を除く)が閉じられている。こうすることで、負極活物質層17を正極板12から確実に隔離することができ、亜鉛デンドライトの伸展をより効果的に防止することができる。なお、閉じられるべき辺Cから負極集電タブ18aと重なる1辺が除かれているのは、負極集電タブ18aの延出を可能とするためである。
【0037】
本発明の好ましい態様によれば、正極板12、負極板16、及びLDHセパレータ22がそれぞれ縦向きとなり、かつ、LDHセパレータ22の閉じられた外縁の1辺Cが下端となるように、単電池要素11が配置されており、その結果、正極集電タブ14a及び負極集電タブ18aが単電池要素11の互いに反対の側端部から横に延出している。こうすることで、より一層集電しやすくなるとともに、LDHセパレータ22の外縁の上端1辺を開放させる場合(これについては後述する)に、上部開放部に障害物が無くなるため、正極板12と負極板16との間でのガスの流出入がより一層しやすくなる。
【0038】
ところで、LDHセパレータ22の外縁の1辺又は2辺は開放されていてもよい。例えば、LDHセパレータ22の外縁の上端1辺を開放させておいても、亜鉛二次電池作製時にその上端1辺に電解液が達しないように液を注入すれば、当該上端1辺には電解液が無いことになるため、液漏れや亜鉛デンドライト伸展の問題を回避することができる。これに関連して、単電池要素11は密閉容器でありうるケース28内に正極板12とともに収容され、蓋部28dで塞がれることにより、密閉型亜鉛二次電池の主要構成部品として機能しうる。このため、密閉性は最終的に収容されることになるケース28において確保すれば足りるので、単電池要素11自体は上部開放型の簡素な構成であることができる。また、LDHセパレータ22の外縁の1辺を開放させておくことで、そこから負極集電タブ18aを延出させることもできる。
【0039】
LDHセパレータ22の上端となる1辺の外縁は開放されているのが好ましい。この上部開放型の構成はニッケル亜鉛電池等における過充電時の問題への対処を可能とするものである。すなわち、ニッケル亜鉛電池等において過充電されると正極板12で酸素(O)が発生しうるが、LDHセパレータ22は水酸化物イオンしか実質的に通さないといった高度な緻密性を有するが故に、Oを通さない。この点、上部開放型の構成によれば、ケース28内において、Oを正極板12の上方に逃がして上部開放部を介して負極板16側へと送り込むことができ、それによってOで負極活物質層17のZnを酸化してZnOへと戻すことができる。このような酸素反応サイクルを経ることで、上部開放型の単電池要素11を密閉型亜鉛二次電池に用いることで過充電耐性を向上させることができる。なお、LDHセパレータ22の上端となる1辺の外縁が閉じられている場合であっても、閉じられた外縁の一部に通気孔を設けることで上記開放型の構成と同様の効果が期待できる。例えば、LDHセパレータ22の上端となる1辺の外縁を封止した後に通気孔を開けてもよいし、封止の際、通気孔が形成されるように上記外縁の一部を非封止としてもよい。
【0040】
いずれにしても、LDHセパレータ22の外縁の閉じられた辺Cが、LDHセパレータ22の折り曲げ及び/又はLDHセパレータ22同士の封止により実現されているのが好ましい。封止手法の好ましい例としては、接着剤、熱溶着、超音波溶着、接着テープ、封止テープ、及びそれらの組合せが挙げられる。特に、高分子材料製の多孔質基材を含むLDHセパレータ22はフレキシブル性を有するが故に折り曲げやすいとの利点を有するため、LDHセパレータ22を長尺状に形成してそれを折り曲げることで、外縁の1辺Cが閉じた状態を形成するのが好ましい。熱溶着及び超音波溶着は市販のヒートシーラー等を用いて行えばよいが、LDHセパレータ22同士の封止の場合、外周部分を構成するLDHセパレータ22の間に保液部材20の外周部分を挟み込むようにして熱溶着及び超音波溶着を行うのが、より効果的な封止を行える点で好ましい。一方、接着剤、接着テープ及び封止テープは市販品を用いればよいが、アルカリ電解液中での劣化を防ぐため、耐アルカリ性を有する樹脂を含むものが好ましい。かかる観点から、好ましい接着剤の例としては、エポキシ樹脂系接着剤、天然樹脂系接着剤、変性オレフィン樹脂系接着剤、及び変成シリコーン樹脂系接着剤が挙げられ、中でもエポキシ樹脂系接着剤が耐アルカリ性に特に優れる点でより好ましい。エポキシ樹脂系接着剤の製品例としては、エポキシ接着剤Hysol(登録商標)(Henkel製)が挙げられる。
【0041】
電解液はアルカリ金属水酸化物水溶液を含むのが好ましい。電解液は図示していないが、これは正極板12(特に正極活物質層13)及び負極板16(特に負極活物質層17)の全体に行き渡っているためである。アルカリ金属水酸化物の例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム等が挙げられるが、水酸化カリウムがより好ましい。亜鉛及び/又は酸化亜鉛の自己溶解を抑制するために、電解液中に酸化亜鉛、水酸化亜鉛等の亜鉛化合物を添加してもよい。前述のとおり、電解液は正極活物質及び/又は負極活物質と混合させて正極合材及び/又は負極合材の形態で存在させてもよい。また、電解液の漏洩を防止するために電解液をゲル化してもよい。ゲル化剤としては電解液の溶媒を吸収して膨潤するようなポリマーを用いるのが望ましく、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなどのポリマーやデンプンが用いられる。
【符号の説明】
【0042】
10 アルカリ二次電池
11 単電池要素
12 正極板
13 正極活物質層
14a 正極集電タブ
14b 正極集電板
14c 正極端子
16 負極板
17 負極活物質層
18 負極集電体
18a 負極集電タブ
18b 負極集電板
18c 負極端子
20 保液部材
22 LDHセパレータ
28 箱型ケース
28a 底部
28b 長手側壁部
28c 短手側壁部
28d 蓋部
R リブ
F 平坦部
W 脆弱部
C 閉じられた辺

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12