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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 3/04 20220101AFI20231011BHJP
   F24H 9/02 20060101ALI20231011BHJP
   F24H 9/1863 20220101ALI20231011BHJP
【FI】
F24H3/04 302
F24H9/02 302Z
F24H9/1863
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019230147
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2021042946
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2019162914
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009838
【氏名又は名称】藤橋 洋ロバート
(73)【特許権者】
【識別番号】514240703
【氏名又は名称】安井 重樹
(73)【特許権者】
【識別番号】520096046
【氏名又は名称】株式会社中野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100117260
【弁理士】
【氏名又は名称】福永 正也
(72)【発明者】
【氏名】藤橋 洋ロバート
(72)【発明者】
【氏名】安井 重樹
(72)【発明者】
【氏名】中野 雅人
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-112590(JP,U)
【文献】実公昭41-002955(JP,Y1)
【文献】実開昭50-042566(JP,U)
【文献】実開平01-034790(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 3/00-3/12
H05B 3/00-3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ータを用いて空気を加熱する加熱装置において、
前記ヒータは、コイル状に形成された電熱材を円筒状の通気管に挿入し、
筐体内に一又は複数の前記通気管を設置する加熱装置であって、
前記通気管の一端は前記筐体内の排気口側へ開放されており、他端は前記筐体内の給気口側へ開放されており、
前記給気口から空気が供給され、供給された空気が、前記通気管の他端から一端へと通過する間に前記電熱材の加熱により加熱され、排気口から外部へ排出されるよう構成されており、
前記通気管は、前記筐体内の空間を分割する隔壁を貫通して固着されており、
前記通気管を2本一組として、前記排気口が設けられている空間側である前記通気管の一端側で前記電熱材同士を接続し、前記給気口が設けられている空間側である前記通気管の他端側において電源と接続していることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記通気管は、高温に対する耐熱性を有する部材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記筐体の内面に熱交換部材を設け、前記給気口から供給された空気が前記通気管の他端へ誘導される間に前記ヒータの輻射熱で加熱されることを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記熱交換部材は、前記通気管の長手方向と同一方向に空気が通過可能なフィン状部材を備え、前記熱交換部材は前記筐体の内周面に沿って設けられていることを特徴とする請求項に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記ヒータを挿入することが可能な石英柱を備え、前記ヒータを前記石英柱に挿入した状態で前記筐体の内側に設置することを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記ヒータを貫通させることが可能な石英板を前後2枚装着し、前記ヒータを前記石英板に貫通させて固着させていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記筐体の外周部分を断熱材で覆うことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記筐体を二重に構成し、前記筐体間に冷気を流すことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易な構造で100℃~1000℃の熱風を生成する加熱装置に関し、特に消費電力を抑制しつつ急速に熱風を生成することが可能な加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等の生産設備で90℃前後の温水が必要となる場合、通常はボイラーにて130℃前後の蒸気を生成して、温度を調整する温調タンク等で蒸気を温水へと減温することにより90℃前後の温水を生成していた。ボイラーを使う場合、小型還流ボイラーであっても年間の燃料費は1000万円単位となる。
【0003】
そこで、近赤外線を用いて温水を生成することが試みられている。例えば特許文献1には、近赤外線ランプが金属加熱に有利である特性を活かして、所定方向に流れる空気などの流体を加熱するための流体加熱装置が開示されている。特許文献1では、流体として空気を加熱することができるので、加熱された空気を用いて液体を加熱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】登録実用新案第3174458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている流体加熱装置では、流れる空気をゆるやかに加熱するだけであり、一気に高温にまで加熱することはできない。しかも、近赤外線を直接流体にさらしているので、熱が散逸する割合が高く、輻射加熱を行う中赤外線の方が加熱効率が高くなる。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ボイラーなどの規模の大きな機器類を用いることなく、高い効率で短時間に空気を加熱することが可能な加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明に係る加熱装置は、ヒータを用いて空気を加熱する加熱装置において、前記ヒータは、コイル状に形成された電熱材を円筒状の通気管に挿入し、筐体内に一又は複数の前記通気管を設置する加熱装置であって、前記通気管の一端は前記筐体内の排気口側へ開放されており、他端は前記筐体内の給気口側へ開放されており、前記給気口から空気が供給され、供給された空気が、前記通気管の他端から一端へと通過する間に前記電熱材の加熱により加熱され、排気口から外部へ排出されるよう構成されており、前記通気管は、前記筐体内の空間を分割する隔壁を貫通して固着されており、前記通気管を2本一組として、前記排気口が設けられている空間側である前記通気管の一端側で前記電熱材同士を接続し、前記給気口が設けられている空間側である前記通気管の他端側において電源と接続していることを特徴とする。
【0008】
上記発明では、電熱材(例えば発熱量の比較的大きいカンタル部材)を内蔵した通気管内を、給気口から供給された空気が通過する間に高温にまで加熱される。これにより、ボイラー等の大型の設備を用いることなく、高効率に供給された空気(外気)を加熱することができ、ヒータの本数に応じて最大1000℃前後の熱風を排気することが可能となる。また、通気管は、筐体内の空間を分割する隔壁を貫通して固着されており、通気管を2本一組として、排気口が設けられている空間側である通気管の一端側で電熱材同士を接続し、給気口が設けられている空間側である通気管の他端側において電源と接続しているので、高温の排気により電熱材と電源とを接続しているリード線の損傷を未然に回避することができ、安定して継続的に熱風を供給することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る加熱装置は、前記通気管は、高温に対する耐熱性を有する部材で形成されていることが好ましい。
【0012】
上記発明では、通気管を高熱に対する耐熱性を有する部材、例えば石英ガラスやセラミック素材で形成することにより、安定して継続的に熱風を供給することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る加熱装置は、前記筐体の内面に熱交換部材を設け、前記給気口から供給された空気が前記通気管の他端へ誘導される間に前記ヒータの輻射熱で加熱されることが好ましい。
【0014】
上記発明では、筐体の内面に熱交換部材を設けており、給気口から供給された空気が通気管の他端へ誘導される間にヒータの輻射熱で加熱されるので、前記ヒータの熱量を低減することができ、消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る加熱装置は、前記熱交換部材が、前記通気管の長手方向と同一方向に空気が通過可能なフィン状部材を備え、前記熱交換部材は前記筐体の内周面に沿って設けられていることが好ましい。
【0016】
上記発明では、熱交換部材が、通気管の長手方向と同一方向に空気が通過可能なフィン状部材を備えており、熱交換部材は筐体の内周面に沿って設けられているので、給気口から供給された空気を、通気管の他端へ誘導される間に確実にヒータの輻射熱で加熱することが可能となる。
【0017】
また、本発明に係る加熱装置は、前記ヒータを挿入することが可能な石英柱を備え、前記ヒータを前記石英柱に挿入した状態で前記筐体の内側に設置することが好ましい。
【0018】
上記発明では、ヒータを挿入することが可能な石英柱を備えており、ヒータを石英柱に挿入した状態で筐体の内側に設置しているので、ヒータの熱量が拡散しにくくなるとともに、熱膨張しにくいので通気管を確実に固着することが可能となる。
【0019】
また、本発明に係る加熱装置は、前記ヒータを貫通させることが可能な石英板を前後2枚装着し、前記ヒータを前記石英板に貫通させて固着させていることが好ましい。
【0020】
上記発明では、ヒータを貫通させることが可能な石英板を前後2枚装着しており、ヒータを石英板に貫通させて固着させているので、石英板が熱膨張しにくく、通気管を確実に固着することが可能となる。
【0021】
また、本発明に係る加熱装置は、前記筐体の外周部分を断熱材で覆うことが好ましい。
【0022】
上記発明では、筐体の外周部分を断熱材で覆っているので、筐体自体の加熱によって生じるおそれが高い、加熱装置の周囲に熱による焼け等の熱損傷が発生するのを未然に回避することが可能となる。
【0023】
また、本発明に係る加熱装置は、前記筐体を二重に構成し、前記筐体間に冷気を流すことが好ましい。
【0024】
上記発明では、筐体を二重に構成し、筐体間に冷気を流すことで筐体を冷却することができるので、筐体自体の加熱によって生じるおそれが高い、加熱装置の周囲に熱による焼け等の熱損傷が発生するのを未然に回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
上記発明によれば、発熱量の比較的大きいカンタル部材を内蔵した通気管内を、給気口から供給された空気が通過する間に高温にまで加熱される。これにより、ボイラー等の大型の設備を用いることなく、高効率に供給された空気(外気)を加熱することができ、カンタルヒータの本数に応じて最大1000℃前後の熱風を排気することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態1に係る加熱装置の構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る加熱装置のカンタルヒータの図1のA-A断面図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る加熱装置の平面図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る加熱装置を用いた加熱システムの構成を示す模式図である。
図5】本発明の実施の形態1に係る加熱装置を用いた加熱システムの排気の温度上昇の測定値を示すグラフである。
図6】本発明の実施の形態1に係る加熱装置の図3のB-B断面の断面例示図である。
図7】本発明の実施の形態1に係る加熱装置の図3のB-B断面の他の断面例示図である。
図8】本発明の実施の形態2に係る加熱装置の構成を示す模式図である。
図9】本発明の実施の形態2に係る加熱装置の複数のカンタルヒータの固定部分のみを示す模式図である。
図10】本発明の実施の形態2に係る加熱装置の複数のカンタルヒータの固定部分のみを示す他の模式図である。
図11】本発明の実施の形態2に係る加熱装置の熱交換部材の二面図である。
図12】本発明の実施の形態2に係る加熱装置の熱交換部材の接合方法の一例を示す斜視図である。
図13】本発明の実施の形態2に係る加熱装置の熱交換部材を接合した状態の模式断面図である。
図14】本発明の実施の形態2に係る加熱装置の熱交換部材の構成を示す模式図である。
図15】本発明の実施の形態2に係る加熱装置の熱交換部材の配置方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態に係る加熱装置について、図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施の形態は、特許請求の範囲に記載された発明を限定するものではなく、実施の形態の中で説明されている特徴的事項の組み合わせの全てが解決手段の必須事項であるとは限らないことは言うまでもない。
【0028】
また、本発明は多くの異なる態様にて実施することが可能であり、実施の形態の記載内容に限定して解釈されるべきものではない。実施の形態を通じて同じ要素には同一の符号を付している。
【0029】
本発明の実施の形態によれば、発熱量の比較的大きいカンタル部材を内蔵した通気管内を、給気口から供給された空気が通過する間に高温にまで加熱されるので、ボイラー等の大型の設備を用いることなく、高効率に供給された空気(外気)を加熱することができ、400℃以上、最高でも1000℃前後の熱風を排気することが可能となる。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る加熱装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施の形態1に係る加熱装置1は、筐体10に隔壁20を設けて2つの空間に分割している。隔壁20に固定するようにカンタル(KANTHAL(登録商標))社製のカンタル部材31を用いたカンタルヒータ30を複数本備えている。
【0031】
カンタル部材31は、鉄Fe-クロムCr-アルミニウムAl-コバルトCo合金であり、Feを主成分とし、その他の含有率は、Cr20%、Al15%、Co2%である。電熱線としては、ニクロム線材が1000℃前後までの用途に使われているが、カンタル部材31は耐酸化性に優れており、1250℃前後まで使用することが可能である。
【0032】
カンタルヒータ30は、カンタル部材31をコイル状に形成し、耐熱性を有する通気管32の内周に沿って挿入されている。通気管32としては、耐熱性に富む石英管が好ましい。通気管32の一端は、筐体10に設けられている排気口50側へ開放されており、他端は筐体10内の給気口40側へ開放されている。
【0033】
なお、筐体10としては耐熱性に優れたステンレス等の金属性筐体を採用することが好ましい。しかし、特に金属製筐体に限定されるものではなく、筐体10自体が断熱性を有するよう、厚肉の石英ガラス等で形成されていても良い。
【0034】
図2は、本発明の実施の形態1に係る加熱装置1のカンタルヒータ30の図1のA-A断面図である。図2に示すように、本実施の形態1に係るカンタルヒータ30は、円筒状の通気管32の内周に沿って、コイル状に形成されたカンタル部材31が挿入されている。
【0035】
図1に戻って、給気口40から外気が供給される。筐体10には隔壁20があるので、供給された外気は、カンタルヒータ30の通気管32からしか排気することができない。
【0036】
外気は、通気管32を通過する途中で、カンタル部材31により加熱される。通気管32が隔壁20を貫通しているので、加熱された高温の排気は、筐体10の排気口50が設けられている空間へと誘導され、排気口50から外部へと排出される。
【0037】
隔壁20を通過した高温の排気が滞留する筐体10の空間内は、非常に高温となる。仮にカンタルヒータ30を単体で設置する場合には、電源と接続するリード線60を高温の排気が滞留する空間に設けなければならなくなる。この場合、高温の排気によるリード線60を通した熱伝導が原因となる電源自体の熱損傷のリスクが高まるので好ましくない。
【0038】
そこで、カンタルヒータ30を二本一組とすることで、電源と接続するリード線60は比較的低温である、供給された外気で充填されている筐体10の空間内に設けることができる。ただし、カンタルヒータ30間を接続するリード線70は、高温に耐え得る漏電防止ガラス等で養生することが好ましい。このようにすることで、高温の排気によるリード線60を通した熱伝導が原因となる電源自体の熱損傷を未然に回避することができる。
【0039】
実際には、二本一組のカンタルヒータ30を9組並列に並べて構成されている。図3は、本発明の実施の形態1に係る加熱装置1の平面図である。
【0040】
図3に示すように、隣接するカンタルヒータ30を養生したリード線70で接続し、比較的低温である筐体10の空間内においてリード線60にて電源(図示せず)と接続されている。なお、リード線60は、集約されて電線出入口35から電源へと誘導される。
【0041】
図4は、本発明の実施の形態1に係る加熱装置1を用いた加熱システムの構成を示す模式図である。本実施の形態1に係る加熱装置1の排気側に熱交換器2を設けている点に特徴を有する。
【0042】
図4の構成では、まず20℃前後の外気を熱交換器2に投入する。一方、カンタルヒータ30を用いた加熱装置1の排気口50からの300℃前後の排気も熱交換器2に投入する。このようにすることで、熱交換器2からは、150℃前後の排気と、加熱装置1の給気口40へ投入する170℃前後の排気を得る。これにより、加熱装置1内での加熱効果を高めることができるとともに、カンタルヒータ30の本数を減らすことで消費電力を減じることもできる。
【0043】
図5は、本発明の実施の形態1に係る加熱装置1を用いた加熱システムの排気の温度上昇の測定値を示すグラフである。図5に示すように、稼働開始から約250秒で450℃の排気を得ることできることがわかる。このように、他の電気設備と比較して、短時間で高音域に到達することが可能となる。
【0044】
図6は、本発明の実施の形態1に係る加熱装置1の図3のB-B断面の断面例示図である。図6に示すように、筐体10内に複数のカンタルヒータ30が並列に配置されている。そして、筐体10の外周部分が断熱材80で覆われている。断熱材80としては、耐熱性に優れている素材、例えばロックウール等が好ましい。これにより、筐体10自体の加熱によって生じるおそれが高い、加熱装置1の周囲に熱による焼け等の熱損傷が発生するのを未然に回避することが可能となる。
【0045】
もちろん、断熱材80で覆うことに限定されるものではなく、筐体10が発する熱が周囲に漏れ出ない構成であればよい。例えば筐体10を二重構造とし、二重構造とすることにより生じる空間に冷気を流す構成であっても良い。
【0046】
図7は、本発明の実施の形態1に係る加熱装置1の図3のB-B断面の他の断面例示図である。図7に示すように、筐体10の外側に筐体90を設けることにより二重構造としている。筐体10と筐体90との間の空間に冷気を流すよう、筐体90は、冷気投入口91及び冷気排出口92を備えている。
【0047】
冷気投入口91から投入された冷気は、筐体10と筐体90との間の空間を流れる途中で筐体10の熱を奪い、冷気排出口92から排出される。したがって、筐体10の発熱量を抑制することが可能となる。
【0048】
なお、筐体90としても、耐熱性に優れたステンレス等の金属性筐体を採用することが好ましい。しかし、特に金属製筐体に限定されるものではなく、筐体90自体が断熱性を有するよう、厚肉の石英ガラス等で形成されていても良いことは言うまでもない。
【0049】
以上のように本実施の形態1によれば、発熱量の比較的大きいカンタル部材31を内蔵した通気管32内を、給気口40から供給された空気(外気)が通過する間に高温にまで加熱される。これにより、ボイラー等の大型の設備を用いることなく、高効率に供給された空気(外気)を加熱することができ、カンタルヒータ30の本数に応じて最大1000℃前後の熱風を排気することが可能となる。
【0050】
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2に係る加熱装置1の構成を示す模式図である。図8に示すように、本実施の形態2に係る加熱装置1は、実施の形態1と同様、カンタル(KANTHAL(登録商標))社製のカンタル部材31を用いたカンタルヒータ30を複数本備えている。本実施の形態2では、上述した実施の形態1と同様、二本一組のカンタルヒータ30を9組並列に並べて構成されている。
【0051】
本実施の形態2では、9組18本のカンタルヒータ30を前後2枚の円盤状の固定板25に挿入して固定している。カンタルヒータ30の本数及び配置については、要求される仕様に応じて変動する。本実施の形態2では、図8(c)に示すように、カンタルヒータ30を4列に配置し、内側2列に5本、外側2列に4本のカンタルヒータ30を配置している。もちろん、斯かる配置に限定されるものではない。
【0052】
図9は、本発明の実施の形態2に係る加熱装置1の複数のカンタルヒータ30の固定部分のみを示す模式図である。図9に示すように、両端に円盤状の石英板25を固定部材として配置し、18本のカンタルヒータ30を両端で固定している。石英板25は、耐熱性を有するとともに熱伝導性の低いので、カンタルヒータ30の加熱により破損することがない。
【0053】
また、少しでも無駄に外部に熱を放射することがないように、カンタルヒータ30自体を内包するように固定しても良い。図10は、本発明の実施の形態2に係る加熱装置1の複数のカンタルヒータ30の固定部分のみを示す他の模式図である。
【0054】
図10に示すように、カンタルヒータ30を挿入することが可能な18本分の貫通穴を有する石英柱26を筐体10の内側に設置しておき、18本のカンタルヒータ30を貫通穴に挿入している。石英柱26とすることで、カンタルヒータ30の周囲すべてが、耐熱性を有するとともに熱伝導性の低い石英で覆われているので、カンタルヒータ30の熱量が通気管32を通過する外気に伝わりやすい。
【0055】
本実施の形態2では、カンタルヒータ30が設置されている筐体10の外面に沿って、熱交換部材100を設けている点で実施の形態1と相違する。熱交換部材100としては、給気口40から供給された空気が通過できるように、加熱装置1(カンタルヒータ30)の長手方向に外気が通過することが可能なフィン状の部材であることが好ましい。材質は、耐熱性に優れたステンレス等の金属を採用することが好ましい。
【0056】
図11は、本発明の実施の形態2に係る加熱装置1の熱交換部材100の二面図である。図11(a)は、本実施の形態2に係る加熱装置1の熱交換部材100の平面図であり、図11(b)は、本実施の形態2に係る加熱装置1の熱交換部材100の側面図である。
【0057】
図11(a)に示すように、本実施の形態に係る熱交換部材100は、フィン状部材101を接合部102に直交する方向、すなわち外気が通過することが可能な方向に設けている。そして、少なくともカンタルヒータ30の発熱部分の長さ以上である長さLを有する少なくとも4枚の熱交換部材100を組み合わせることにより断面形状が正方である筒状部材を組み立て、筐体10の内周面に沿って設置する。
【0058】
図12は、本発明の実施の形態2に係る加熱装置1の熱交換部材100の接合方法の一例を示す斜視図である。本実施の形態2では、最も簡略に熱交換部材100を接合するために、接合部102を互いに嵌め合わせることにより断面形状が正方である筒状体を形成する。
【0059】
具体的には、図12に示すように、例えば2枚の熱交換部材100のうち、一方を反転させて、突出している接合部102が互いに接合部102の間の溝部103に嵌め合わせる。このように4枚交互に嵌め合わせることにより、長さの揃った断面形状が方形である筒状体が完成する。
【0060】
図13は、本発明の実施の形態2に係る加熱装置1の熱交換部材100を接合した状態の模式断面図である。図13に示すように、互いに向きが逆になっている熱交換部材100a、100bを交互に配置して、図12のように互いに接合部102a、102bをそれぞれ交互に嵌め合わせる。こうすることで、接合部102aと接合部102bとが互いに密着して筒状体を形成することが可能となる。
【0061】
図8に戻って、本実施の形態2に係る加熱装置1の動作について説明する。まず給気口40から外気が供給される。筐体10に供給された外気は、カンタルヒータ30の通気管32からしか排気することができない。
【0062】
外気は、通気管32を通過する途中で、カンタル部材31により加熱される。通気管32内部で加熱された高温の排気は、筐体10の排気口50が設けられている空間へと誘導され、排気口50から外部へと排出される。
【0063】
一方、給気口40から供給された外気の一部は、熱交換部材100内を通過する。熱交換部材100は、カンタルヒータ30の発熱により外部へ放出された輻射熱によって加熱されており、熱交換部材100内を通過した外気及び熱交換部材100の近くを通過した外気は加熱される。したがって、熱交換部材100を設けていない実施の形態1と比べて、カンタルヒータ30の通気管32へ誘導される段階での外気の温度が高温になる。
【0064】
実施の形態1では、排気側に熱交換器2を備えているが、実施の形態2ではあえて設ける必要はない。なぜなら、給気口40から供給された空気が通気管32の他端へ誘導される間に、熱交換部材100を通過することによりカンタルヒータ30の輻射熱で加熱され、通過した外気の温度が高まるので、熱交換器2を設けた場合よりは低温になるものの、加熱装置1内での加熱効果を高めることができるからである。これにより、カンタルヒータ30の本数を減らす、あるいは通電時間を短くする等により、消費電力を減じることも可能となる。
【0065】
また、本実施の形態2においても、二本一組のカンタルヒータ30を9組並列に並べて構成されている。カンタルヒータ30一基の消費電力は約2kwであるので、一組のカンタルヒータ30で4kw、9組で36kwの消費電力を要する。36kwの消費電力で1000℃を超える排気を得ることができるので、高効率である。
【0066】
本実施の形態2についても、実施の形態1と同様に筐体10の外周部分を断熱材80で覆っても良い。断熱材80としては、耐熱性に優れている素材、例えばロックウール等が好ましい。これにより、筐体10自体の加熱によって生じるおそれが高い、加熱装置1の周囲に熱による焼け等の熱損傷が発生するのを未然に回避することが可能となる。
【0067】
もちろん、断熱材80で覆うことに限定されるものではなく、筐体10が発する熱が周囲に漏れ出ない構成であれば良い。例えば実施の形態1と同様に筐体10を二重構造とし、二重構造とすることにより生じる空間に冷気を流す構成であっても良い。構成自体は実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0068】
なお、筐体90としても、耐熱性に優れたステンレス等の金属性筐体を採用することが好ましい。しかし、特に金属製筐体に限定されるものではなく、筐体90自体が断熱性を有するよう、厚肉の石英ガラス等で形成されていても良いことは言うまでもない。
【0069】
以上のように本実施の形態2によれば、給気口40から供給された空気が通気管32の他端へ誘導される間に、熱交換部材100を通過することによりカンタルヒータ30の輻射熱で加熱され、通過した外気の温度が高まるので、加熱装置1内での加熱効果を高めることが可能となる。したがって、カンタルヒータ30の本数を減らす、あるいは通電時間を短くする等により、消費電力を減じることも可能となる。
【0070】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内であれば多種の変形、置換等が可能であることは言うまでもない。耐熱性の許す限りカンタルヒータ30の本数を増やしても良いし、カンタルヒータ30を一列に並べて配置しても良いし、複数列に並べて配置しても良い。
【0071】
また、熱交換部材100として、実施の形態2に示す熱交換部材100に特に限定されるものではない。例えば線状部材の周囲にフィン状の部材を連続的に取り付けておき、線状部材を折り曲げて筐体10の周囲に張り巡らせても同様の効果が期待できる。
【0072】
図14は、本発明の実施の形態2に係る加熱装置1の熱交換部材110の構成を示す模式図である。図14に示すように、熱交換部材110は、線状部材111の周囲にフィン状部材112を取り付けている。フィン状部材112は、線状部材111の周囲にらせん状に取り付けても良いし、円盤状の部材を一定間隔で取り付けても良い。耐熱性が要求されるので、線状部材111もフィン状部材112もステンレス等の耐熱性を有する部材で形成されることが好ましい。
【0073】
そして、筐体10の内周に沿って、線状部材を折り曲げながら筐体10の内周面に沿って設置する。図15は、本発明の実施の形態2に係る加熱装置1の熱交換部材110の配置方法を示す模式図である。
【0074】
図15(a)の例では、熱交換部材110が線状部材111で形成されているので、筐体10の内周面に沿って一本の熱交換部材110を順次折り曲げて、カンタルヒータ30による加熱領域全体に熱交換部材110が存在できるように筐体10の内周面に配置する。もちろん、これに限定されるものではなく、図15(b)に示すように、筐体10の内周面に沿って方形に熱交換部材110を折り曲げた部材を、カンタルヒータ30の加熱領域全体に熱交換部材110が存在できるように一定の間隔で筐体10の内面に配置しても良い。
【0075】
どちらの配置方法であっても、実施の形態2と同様に、給気口40から供給された空気が通気管32の他端へ誘導される間に、熱交換部材110を通過することによりカンタルヒータ30の輻射熱で加熱され、通過した外気の温度が高まるので、加熱装置1内での加熱効果を高めることが可能となる。したがって、カンタルヒータ30の本数を減らす、あるいは通電時間を短くする等により、消費電力を減じることも可能となる。
【符号の説明】
【0076】
1 加熱装置
2 熱交換器
10、90 筐体
20 隔壁
30 カンタルヒータ
31 カンタル部材
32 通気管
40 給気口
50 排気口
80 断熱材
100、110 熱交換部材
図1
図2
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