(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
H01L21/304 648K
H01L21/304 643A
H01L21/304 643C
(21)【出願番号】P 2019233844
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】安武 陽介
(72)【発明者】
【氏名】石井 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】酒井 渉
(72)【発明者】
【氏名】池上 裕
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-046522(JP,A)
【文献】特開2015-023048(JP,A)
【文献】特開2018-049909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304-21/308
H01L 21/02 -21/033
B08B 1/00 -13/00
B05B 13/00 -15/80
B05C 5/00 - 5/04
B05C 11/00 -11/115
G03F 7/16 - 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を用いて基板を処理するための基板処理装置であって、
前記基板を水平に保持する保持機構と、
前記基板を保持した前記保持機構を回転させる回転機構と、
前記基板へ前記処理液を供給するノズルと、
前記ノズルを保持するノズルアームと、
平面視において
前記ノズルが前記基板に重なる処理位置と、平面視において
前記ノズルが前記基板から外れる退避位置と、の間で前記ノズルアームを移動させるアーム作動機構と、
前記保持機構の周囲に配置され、前記基板からの前記処理液を受けるカップ部と、
上方位置と下方位置との間で前記カップ部を上下に移動させるカップ作動機構と、
前記カップ部と一体的に上下移動可能なように前記カップ部に固定され、前記退避位置における前記ノズルを収容可能な第1容器と、
前記ノズルが前記退避位置に位置するときに、前記カップ部が前記下方位置から前記上方位置へ移動するように前記カップ作動機構を制御する第1制御モードを有する制御部と、
を備え
、
前記上方位置は、前記第1制御モードにおいて前記カップ部が前記上方位置へ移動させられたときに前記第1容器の上面が前記ノズルの先端部の上方にあるように設定されている、
基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記第1容器は平面視において前記カップ部に重なっている、基板処理装置。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の基板処理装置であって、
前記制御部は、前記カップ部が前記上方位置に位置するときに、平面視において前記基板から外れ前記退避位置よりも内側の中間位置に前記ノズルを維持する第2制御モードを有している、基板処理装置。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の基板処理装置であって、
前記退避位置とは異なる位置における前記ノズルを収容可能な第2容器をさらに備える、基板処理装置。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載の基板処理装置であって、
前記アーム作動機構は、前記ノズルが直線に沿って水平移動するように前記ノズルアームを移動させる、基板処理装置。
【請求項6】
請求項1から
4のいずれか1項に記載の基板処理装置であって、
前記アーム作動機構は、前記ノズルが円弧に沿って水平移動するように前記ノズルアームを移動させる、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関し、特に、処理液を用いて基板を処理するための基板処理装置に関するものである。なお、基板には、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、磁気または光ディスク用のガラスまたはセラミック基板、有機EL用ガラス基板、太陽電池用ガラス基板またはシリコン基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
特開2018-107397号公報(特許文献1)によれば、待機位置から基板の上方に移動された処理液ノズルから処理液を基板に供給する基板処理装置が開示されている。基板処理装置には、基板の周囲に飛散した処理液を受け止めるガードが設けられている。ガードに対してガード昇降駆動機構が連結されており、制御部からの昇降指令に応じてガードを昇降可能となっている。基板処理装置にはさらに、待機位置に移動してきたノズルを待機させるための待機ポッドが設けられている。待機ポッドは、ノズルから基板に処理液を吐出しない間、ノズルを待機させるためのものである。そして、その待機中に処理液を予備的に吐出する、いわゆるプリディスペンス処理が実行される。その際に吐出された処理液は待機ポッドに捕集される。待機ポッドは容器を有している。この容器の上面には、待機ポッドに対してノズルの先端部を差し入れるための開口部が設けられており、ノズルが待機ポッドから離れた状態では開口部は開放状態となる。一方、ノズルの先端部の挿入によって開口部が塞がれるとともに、ノズルから吐出される処理液を容器の内部で受けることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公報に記載の技術によれば、待機ポッドの容器の開口部にノズルを差し入れる際に、ノズルの下降移動が必要となる。しかしながら、このような動作の実行が望まれない場合がある。特に、基板処理装置がノズルの上下移動のための作動機構を有しない場合、上記下降移動は不可能である。また、基板処理装置がノズルの上下移動のための作動機構を有する場合であっても、ノズルの下降移動に起因して基板処理装置の動作が煩雑化することがある。
【0005】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、容器へノズルを収容する際にノズルの下降動作を必要としない基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、処理液を用いて基板を処理するための基板処理装置であって、前記基板を水平に保持する保持機構と、前記基板を保持した前記保持機構を回転させる回転機構と、前記基板へ前記処理液を供給するノズルと、前記ノズルを保持するノズルアームと、平面視において前記基板に重なる処理位置と平面視において前記基板から外れる退避位置との間で前記ノズルアームを移動させるアーム作動機構と、前記保持機構の周囲に配置され前記基板からの前記処理液を受けるカップ部と、上方位置と下方位置との間で前記カップ部を上下に移動させるカップ作動機構と、前記カップ部と一体的に上下移動可能なように前記カップ部に固定され前記退避位置における前記ノズルを収容可能な第1容器と、を備える。
【0007】
第2の態様は、第1の態様の基板処理装置であって、前記第1容器は平面視において前記カップ部に重なっている。
【0008】
第3の態様は、第1または2の態様の基板処理装置であって、前記アーム作動機構および前記カップ作動機構を制御する制御部をさらに備え、前記制御部は、前記ノズルが前記退避位置に位置するときに、前記カップ部が前記下方位置から前記上方位置へ移動するように前記カップ作動機構を制御する第1制御モードを有している。
【0009】
第4の態様は、第3の態様の基板処理装置であって、前記制御部は、前記カップ部が前記上方位置に位置するときに、平面視において前記基板から外れ前記退避位置よりも内側の中間位置に前記ノズルを維持する第2制御モードを有している。
【0010】
第5の態様は、第1から4のいずれかの態様の基板処理装置であって、前記退避位置とは異なる位置における前記ノズルを収容可能な第2容器をさらに備える。
【0011】
第6の態様は、第1から5のいずれかの態様の基板処理装置であって、前記アーム作動機構は、前記ノズルが直線に沿って水平移動するように前記ノズルアームを移動させる。
【0012】
第7の態様は、第1から5のいずれかの態様の基板処理装置であって、前記アーム作動機構は、前記ノズルが円弧に沿って水平移動するように前記ノズルアームを移動させる。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様によれば、退避位置におけるノズルを収容可能な第1容器が、カップ部と一体的に上下移動可能なようにカップ部に固定されている、これにより、ノズルが退避位置へ退避した後に、カップ部を上昇させる動作と、第1容器へノズルを収容する動作とを同時に一括して行うことができる。
【0014】
第2の態様によれば、第1容器は平面視においてカップ部に重なっている。これにより、第1容器およびカップ部を配置するための面積を削減することができる。
【0015】
第3の態様によれば、制御部は、ノズルが退避位置に位置するときに、カップ部が下方位置から上方位置へ移動するようにカップ作動機構を制御する第1制御モードを有している。これにより、カップ部を上昇させる動作と第1容器へノズルを収容する動作とを同時に一括して行うための制御を行うことができる。
【0016】
第4の態様によれば、制御部は、カップ部が上方位置に位置するときに、平面視において基板から外れ退避位置よりも内側の中間位置にノズルを維持する第2制御モードを有している。これにより、退避位置へのノズルの移動が、上方位置に位置するカップ部によって阻害される場合であっても、ノズルを中間位置に維持することによって、ノズルからの基板への液垂れを避けることができる。
【0017】
第5の態様によれば、基板処理装置は、退避位置とは異なる位置におけるノズルを収容可能な第2容器を有している。これにより、第1容器の位置以外の位置においても、ノズルを収容することができる。
【0018】
第6の態様によれば、アーム作動機構は、ノズルが直線に沿って水平移動するようにノズルアームを移動させる。これにより、当該直線方向に沿っての位置制御を高い精度で行うことができる。
【0019】
第7の態様によれば、アーム作動機構は、ノズルが円弧に沿って水平移動するようにノズルアームを移動させる。これにより、ノズルを簡素なアーム作動機構で広範囲に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態1における基板処理システムの構成を概略的に示す平面図である。
【
図2】
図1の基板処理システムに含まれる制御部の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図3】
図1の基板処理システムに含まれる基板処理装置の構成を概略的に示す平面図である。
【
図4】
図3において、ノズルと、ノズルアームのノズル近傍部との図示を省略した平面図である。
【
図5】
図3の線V-Vに沿う概略的な断面図であり、ノズルから基板へ処理液を吐出する工程を概略的に示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態1における、ノズルを容器に収容する方法を概略的に示すフロー図である。
【
図7】
図6における、カップ部を上方位置から下方位置へ移動する工程後の様子を、概略的に示す断面図である。
【
図8】
図6における、ノズルを処理位置から退避位置へ移動する工程後の様子を、概略的に示す平面図である。
【
図9】
図8の線IX-IXに沿う概略的な断面図である。
【
図10】
図6における、カップ部を下方位置から上方位置へ移動する工程後の様子を、概略的に示す断面図である。
【
図11】本発明の実施の形態2における、ノズルを容器に収容する方法を概略的に示すフロー図である。
【
図12】
図11における、ノズルを処理位置から中間位置へ移動する工程後の様子を、概略的に示す平面図である。
【
図13】
図11における、カップ部を上方位置から下方位置へ移動する工程後の様子を、概略的に示す断面図である。
【
図14】本発明の実施の形態3における基板処理装置の構成を、ノズルが処理位置にある状態で概略的に示す平面図である。
【
図15】
図14の基板処理装置の構成を、ノズルが退避位置にある状態で概略的に示す平面図である。
【
図16】本発明の実施の形態4における基板処理装置の構成を概略的に示す平面図である。
【
図17】本発明の実施の形態5における基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0022】
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態1における基板処理システム100の構成を概略的に示す平面図である。基板処理システム100は、ロードポートLPと、インデクサロボットIRと、センターロボットCRと、制御部90(コントローラ)と、少なくとも1つの処理ユニットUT(
図1においては4つの処理ユニット)とを含む。複数の処理ユニットUTは、基板SB(ウエハ)を処理するためのものであり、そのうちの少なくとも1つが、詳しくは後述する基板処理装置101に対応する。基板処理装置101は、基板処理に用いることができる枚葉式の装置であり、例えば、基板SBに付着した有機物を除去する処理に用いることができる枚葉式の装置である。基板処理装置101は、チャンバ80を有していてよい。その場合、チャンバ80内の雰囲気を制御することによって、所望の雰囲気中での基板処理を行うことができる。
【0023】
制御部90は、基板処理システム100に備えられた各部の動作を制御することができる。キャリアCの各々は、基板SBを収容する収容器である。ロードポートLPは、複数のキャリアCを保持する収容器保持機構である。インデクサロボットIRは、ロードポートLPと基板載置部PSとの間で基板SBを搬送することができる。センターロボットCRは、基板載置部PSおよび少なくとも1つの処理ユニットUTのいずれかひとつから他のひとつへと基板SBを搬送することができる。以上の構成により、インデクサロボットIR、基板載置部PSおよびセンターロボットCRは、処理ユニットUTの各々とロードポートLPとの間で基板SBを搬送する搬送機構として機能する。
【0024】
未処理の基板SBはキャリアCからインデクサロボットIRによって取り出され、基板載置部PSを介してセンターロボットCRに受け渡される。センターロボットCRはこの未処理の基板SBを処理ユニットUTに搬入する。処理ユニットUTは基板SBに対して処理を行う。処理済みの基板SBはセンターロボットCRによって処理ユニットUTから取り出され、必要に応じて他の処理ユニットUTを経由した後、基板載置部PSを介してインデクサロボットIRに受け渡される。インデクサロボットIRは処理済みの基板SBをキャリアCに搬入する。以上により、基板SBに対する処理が行われる。
【0025】
図2は、
図1の基板処理システム100に含まれる制御部90の構成を概略的に示すブロック図である。制御部90は、電気回路を有する一般的なコンピュータによって構成されていてよい。具体的には、制御部90は、CPU(Central Processing Unit)91、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)93、記憶装置94、入力部96、表示部97および通信部98と、これらを相互接続するバスライン95とを有している。
【0026】
ROM92は基本プログラムを格納している。RAM93は、CPU91が所定の処理を行う際の作業領域として供される。記憶装置94は、フラッシュメモリまたはハードディスク装置等の不揮発性記憶装置によって構成されている。入力部96は、各種スイッチまたはタッチパネル等により構成されており、オペレータから処理レシピ等の入力設定指示を受ける。表示部97は、例えば液晶表示装置およびランプ等により構成されており、CPU91による制御の下、各種の情報を表示する。通信部98は、LAN(Local Area Network)等を介してのデータ通信機能を有している。記憶装置94には、基板処理システム(
図1)を構成する各装置の制御についての複数のモードが予め設定されている。CPU91が処理プログラム94Pを実行することによって、上記複数のモードのうちの1つのモードが選択され、該モードによって各装置が制御される。また、処理プログラム94Pは、記録媒体に記憶されていてもよい。この記録媒体を用いれば、制御部90に処理プログラム94Pをインストールすることができる。また制御部90が実行する機能の一部または全部は、必ずしもソフトウェアによって実現される必要は無く、専用の論理回路などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0027】
図3は、基板処理システム100(
図1)に含まれる基板処理装置101の構成を概略的に示す平面図であり、
図4は
図3においてノズル51とノズルアーム52のノズル51近傍部との図示を省略した平面図である。これら図において、説明の便宜上、基板処理装置101に加えて、それによって処理される基板SBも示されている。
図5は、
図3の線V-Vに沿う概略的な断面図であり、ノズル51から基板SBへ処理液の液流LFを吐出する工程を概略的に示す図である。基板処理装置101は、処理液を用いて基板SBを処理するためのものである。
【0028】
基板処理装置101は、スピンチャック20と、ノズル51と、ノズルアーム52と、アーム作動機構53と、カップ部3と、カップ作動機構40と、第1容器61と、収納部材24とを有する。スピンチャック20は保持機構21および回転機構22を有する。
【0029】
保持機構21は基板SBを水平に保持する。回転機構22は、基板SBを保持した保持機構21を、基板SBの中心を通って鉛直方向に延びる回転軸CX周りに回転させる(
図5における矢印AR参照)。回転軸CXは上下方向に沿っている。回転機構22は、回転軸CXに沿って延びるシャフト22Xと、回転軸CX周りにシャフト22Xを回転させるモータ22Mとを有している。回転機構22は、収納部材24によって覆われることによって保護されている。
【0030】
具体的には、保持機構21は、基板SBを、その処理される主面を上方に向けた状態で、略水平姿勢に保持しつつ回転可能な機構である。ここでいう水平姿勢とは、基板SBの厚み方向が鉛直方向に沿う状態をいう。回転機構22によって回転させられた保持機構21は、基板SBを、その主面の中心部を通る鉛直な(仮想的)回転軸CXのまわりに回転させる。回転軸CXは基板SBの中心を通ることが好ましい。保持機構21は例えば略円板形状を有している。保持機構21は、その上面が略水平となり、その中心軸が回転軸CXに略一致するように設けられている。
図3の例では、保持機構21の径は基板SBの径よりも小さい。保持機構21の下面には、略円筒状のシャフト22Xが連結されている。
【0031】
スピンチャック20には吸引機構MVが設けられている。吸引機構MVは、吸引孔25と、吸引配管26と、開閉弁(図示せず)と、ポンプ(図示せず)とを有している。具体的には、保持機構21の上面に吸引孔25が設けられている。吸引孔25は、シャフト22Xの内部空間を延びる吸引配管26および開閉弁(図示せず)を介してポンプ(図示せず)に接続されている。当該ポンプおよび当該開閉弁は、制御部90(
図1)に電気的に接続されている。制御部90は、当該ポンプおよび当該開閉弁の動作を制御する。当該ポンプは、制御部90の制御にしたがって、負圧と正圧とを選択的に供給可能である。基板SBが保持機構21の上面に略水平姿勢で置かれた状態でポンプが負圧を供給すると、保持機構21の吸引孔25は、基板SBを下方から吸着保持する。ポンプが正圧を供給すると、基板SBは、保持機構21の上面から取り外し可能となる。この構成において、基板SBを吸着保持した保持機構21が回転機構22によって回転させられる。
【0032】
なお、保持機構21は、吸引孔25の代わりに、その上面の周縁部付近に適当な間隔をおいて設けられた複数の機械的なチャックピンを有してもよい。当該複数のチャックピンが基板SBを保持する。この場合の基板保持機構は、例えば、基板SBより若干大きい円板状である。当該複数のチャックピンは、基板SBが基板保持機構21の上面より僅かに高い位置で略水平姿勢となるように基板SBを着脱自在に保持する。各チャックピンは、制御部90(
図1)と電気的に接続されたモータ等によって、基板SBの周縁に当接して基板SBを保持する状態と、基板SBの周縁から離れて基板SBを開放する状態とに選択的に切り替えられる。
【0033】
ノズル51は基板SBへ処理液を供給する。具体的には、ノズル51は基板SBの上方から基板SBへ向かって処理液の液流LFを吐出する。ノズルアーム52はノズル51を保持する。アーム作動機構53は、制御部90(
図1)によって制御されることで、平面視において基板SBに重なる処理位置(
図3参照)と、平面視において基板SBから外れる退避位置(
図8参照)との間でノズルアーム52を移動させる。具体的には、アーム作動機構53は、ノズル51が直線に沿って水平移動するようにノズルアーム52を移動させる(
図3および
図8参照)。当該直線の延在方向は、基板SBの径方向の成分を含んでおり、好ましくは径方向に沿っている。
【0034】
ノズル51には、バルブ56を介して処理液源55から処理液が供給される。バルブ56は制御部90(
図1)によって制御される。バルブ56が開状態とされると、ノズル51から処理液の液流LF(
図5)が吐出される。なお
図5以外の図においては、バルブ56および処理液源55の図示が省略されている。
【0035】
カップ部3は、保持機構21の周囲に配置されており、回転する基板SBから遠心力によって飛散される処理液を受ける。カップ作動機構40は、制御部90によって制御されることで、上方位置(
図5)と下方位置(
図7)との間でカップ部3を上下に移動させる。カップ差動機構40は、チャンバ底部BMに支持されており、よってチャンバ底部BMからのカップ部3の高さを変化させることができる。カップ部3が上方位置にあるとき、カップ部3の上部の内縁は、基板SBから飛散する処理液を十分に受けることができるように、保持機構21の上面(保持機構21が基板SBを支持する支持面)よりも十分に高く位置する。カップ部3が下方位置にあるとき、カップ部3の全体は、基板SBまたはノズル51の移動の妨げとならないよう、保持機構21の上面よりも低く位置する。
【0036】
具体的には、カップ部3は、底部31、内側ガード32、および外側ガード33を有していてよい。内側ガード32および外側ガード33の各々の上部は、基板SB上から飛散される処理液を効率的に受けるために、基板SBに近づくほど高くなる内面を有する。また内側ガード32および外側ガード33の各々の上部の内端には、
図5に示されているように、カップ部3がいったん受けた処理液が基板SBへ再度飛散することを防ぐための垂下部が設けられていてよい。カップ作動機構40は、底部31、内側ガード32、および外側ガード33のそれぞれを独立して移動させるために、底部作動機構41、内側ガード作動機構42、および外側ガード作動機構43を有していてよく、その各々は、例えばステッピングモータによって構成されている。内側ガード32および外側ガード33の各々は、筒形状の部材であり、保持機構21を取り囲むガードである。外側ガード33は内側ガード32を取り囲んでいる。また外側ガード33は内側ガード32の上面を覆っている。なおこれら2つのガードに代わって、単一のガードまたは3つ以上のガードが設けられてもよい。底部31は、内側ガード32の下方に配置されており、内側ガード32内を落下した処理液を受ける。底部31は、処理液を排出するための排出口(図示せず)を有していてよい。なお変形例として、内側ガード32と外側ガード33との間を落下した処理液を受ける底部がさらに設けられてもよい。
【0037】
第1容器61は、退避位置におけるノズル51を収容可能なものである。ノズル51は第1容器61内において、プリディスペンスを行ったり、あるいは、洗浄されたりすることができる。第1容器61は、
図5に示されているように、上方に向けて開口部を有している。第1容器61は、カップ部3と一体的に上下移動可能なようにカップ部3に固定されている。カップ部3が下方位置にあるとき(
図9参照)、第1容器61の開口部は、ノズル51の下端よりも低く位置する。またカップ部3が上方位置にあるとき(
図10参照)、第1容器61の開口部は、ノズル51の下端よりも高く位置する。
図5の例においては、
第1容器61は外側ガード33の上面上に取り付けられており、よって第1容器61は平面視(
図4)においてカップ部3に重なっている。
【0038】
図6は、本実施の形態1における、ノズル51を第1容器61に収容する方法を概略的に示すフロー図である。
【0039】
ステップS10(
図6)にて、カップ部3が上方位置から下方位置へ移動される。具体的には、ノズル51が処理位置にあり(
図3参照)かつカップ部3が上方位置にある(
図5参照)配置が、ノズル51が処理位置にあり(
図3参照)かつカップ部3が下方位置にある(
図7参照)配置へ移行する。
【0040】
ステップS20にて、ノズル51が処理位置(
図3および
図5参照)から退避位置(
図8および
図9参照)へ移動される。
【0041】
ステップS30にて、制御部90(
図1)が有する第1制御モードが実行される。具体的には、上記ステップ
S20の結果としてノズル51が退避位置に位置するとき(
図9参照)に、カップ部3が下方位置から上方位置へ移動するようにカップ作動機構40(
図5)が制御される。その結果、
図10に示されているように、第1容器61にノズル51が収容される。
【0042】
本実施の形態によれば、退避位置におけるノズル51を収容可能な第1容器61が、カップ部3と一体的に上下移動可能なようにカップ部3に固定されている、これにより、ノズル51が退避位置へ退避した後に、カップ部3を上昇させる動作と、第1容器61へノズル51を収容する動作とを同時に一括して行うことができる。
【0043】
第1容器61(
図4)は平面視においてカップ部3に重なっている。これにより、第1容器61およびカップ部3を配置するための面積を削減することができる。
【0044】
制御部90(
図1)は、ノズル51が退避位置に位置するとき(
図9参照)に、カップ部3が下方位置から上方位置へ移動するようにカップ作動機構40を制御する第1制御モードを有している(
図10参照)。これにより、カップ部3を上昇させる動作と第1容器61へノズル51を収容する動作とを同時に一括して行うための制御を行うことができる。
【0045】
アーム作動機構53は、ノズル51が直線に沿って水平移動するようにノズルアーム52を移動させる(
図3および
図8参照)。言い換えれば、アーム作動機構53は直動(linear)アクチュエータである。これにより、当該直線方向に沿っての位置制御を高い精度で行うことができる。特に、基板SBの周縁上のみの基板処理、すなわちベベル処理、が行われる場合、基板SBの径方向におけるノズル51の位置精度が厳密に求められるので、直動アクチュエータの適用が特に有効である。ベベル処理用のノズル51は、通常、上下方向から傾いた方向に沿って処理液の液流LF(
図5)を吐出するように配置された吐出口を有する。典型的には、図示されているように、液流LFは下方外側に向かって吐出される。この場合、基板SB上の被処理領域を径方向において精確に管理するためには、ノズル51の水平位置の精度だけでなく上下位置の精度も求められる。本実施の形態によれば、ノズル51を第1容器61に収容する際に、ノズル51を上下方向に移動させる必要がない。これにより、ノズル51の上下方向における位置が固定値として精確に管理され得る。よって、ノズル51の上下方向における位置の、意図しないずれを避けることができる。よってベベル処理の位置精度を高めることができる。
【0046】
<実施の形態2>
図11は、本実施の形態2における、ノズル51を容器に収容する方法を概略的に示すフロー図である。
【0047】
ステップS1(
図11)にて、制御部90(
図1)が有する第2制御モードが実行される。具体的には、カップ部3が上方位置に位置するときに(
図5参照)ノズル51が処理位置から中間位置(
図12参照)へ移動するように、制御部90がアーム作動機構53を制御する。この中間位置は、平面視において基板SBから外れ、かつ、退避位置(
図10参照)よりも内側の位置である。そして制御部90は、上方位置にカップ部3を維持し、かつ、中間位置にノズル51を維持する。
【0048】
ステップS2(
図11)にて、上記ステップS1による配置が維持されつつ、ノズル51を用いない何らかの基板処理が行われる。典型的には、基板SB上に付着した処理液を除去するために基板SBを回転させる処理、言い換えれば基板乾燥処理、が行われる。
【0049】
ステップS15(
図11)にて、カップ部3が上方位置(
図12参照)から下方位置(
図13参照)へ移動される。ステップS25(
図11)にて、ノズル51が中間位置(
図13参照)から退避位置(
図9参照)へ移動される。その後、前述した実施の形態1と同様にステップS30(
図11)が行われる(
図10参照)。
【0050】
なお制御部90が第2制御モードを有すること以外は、本実施の形態2は前述した実施の形態1と同様である。
【0051】
本実施の形態によれば、第2制御モードによって、カップ部3が上方位置に位置するときに中間位置にノズル51が維持される。これにより、退避位置へのノズル51の移動が、上方位置に位置するカップ部3によって阻害される場合であっても、ノズル51を中間位置に維持することによって、ノズル51からの基板SB上への液垂れを避けることができる。
【0052】
<実施の形態3>
図14および
図15のそれぞれは、本実施の形態3における基板処理装置102の構成を、ノズル51が処理位置にある状態および退避位置にある状態で概略的に示す平面図である。基板処理装置102は、アーム作動機構53(
図3:実施の形態1)に代わってアーム作動機構53Mを有する。アーム作動機構53Mは、ノズル51が円弧に沿って水平移動するようにノズルアーム52を移動させる。なおアーム差動機構53Mはノズル51を、上記のように水平移動させるだけでなく、垂直移動もさせてよい。
【0053】
上記以外は、本実施の形態3は前述した実施の形態1または2と同様である。
【0054】
本実施の形態によれば、アーム作動機構53Mは、上述したように、ノズル51が円弧に沿って水平移動するようにノズルアーム52を移動させる。これにより、ノズル51を簡素なアーム作動機構で広範囲に移動させることができる。
【0055】
<実施の形態4>
図16は、本実施の形態4における基板処理装置103の構成を概略的に示す平面図である。基板処理装置103は、基板処理装置102(
図14:実施の形態3)の構成に加えて、第2容器62を有する。第2容器62は、退避位置とは異なる位置におけるノズル51を収容可能なものである。これにより、第1容器61の位置以外の位置においても、ノズル51を収容することができる。図示された構成においては、第2容器62は、カップ部3から離れてカップ部3の外側に配置されている。第2容器62は、第1容器61と異なり、カップ部3と一体的に上下移動可能でなくてよい。変形例として、第2容器62は、カップ部3から離れてカップ部3の内側に配置されてもよい。
【0056】
なお上記以外については、本実施の形態4は前述した実施の形態3と同様である。また変形例として、第2容器62は、前述した実施の形態1または2に対して適用されてもよい。
【0057】
<実施の形態5>
図17は、本実施の形態5における基板処理装置104の構成を概略的に示す断面図である。基板処理装置104はベベル処理用のものである。基板処理装置104は、基板処理装置101(
図5:実施の形態1)の構成に加えて、ガスノズル81と、バルブ86と、ガス源85とを有する。ガスノズル81の外縁は円形形状を有している。ガスノズル81の円形形状の半径は、基板SBの半径よりも小さい。
【0058】
ガスノズル81には、バルブ86を介してガス源85からガスが供給される。ガス源85は、不活性ガス源であってよく、例えば窒素ガス源である。バルブ86は制御部90(
図1)によって制御される。ガスノズル81は、下方に向かう開口82と、外方に向かう開口83とを有する。バルブ86が開状態とされると、開口82および開口83のそれぞれからガス流F1およびF2が吐出される。ガス流F1によって、処理液が、意図せず基板SBの中央近傍に侵入してくることが防止される。ガス流F2によって、カップ部3から跳ね返った処理液が基板SBへ達することが抑制される。ガス流F2は、ノズル51の吐出口とその直下とから外れて流れることが好ましい。これにより、ガス流F2が処理液の液流LFの進行方向を乱すことが防止される。
【0059】
本実施の形態を含め各実施の形態において、内側ガード32および外側ガード33のそれぞれは、垂下部32Aおよび垂下部33Aを有していることが好ましい。垂下部32Aおよび垂下部33Aのそれぞれは、内側ガード32および外側ガード33の上部の内端から下方に延びている。垂下部32Aおよび垂下部33Aのそれぞれは、内側ガード32および外側ガード33が受けた処理液が基板SBの方へ逆戻りすることを防止する効果を有する。一方で、垂下部32Aおよび垂下部33Aは、基板SBからの処理液を基板SBへ反射しやすく、これは望ましくないことである。よって、内側ガード32および外側ガード33のそれぞれの上部の内端のうち、平面視(
図3参照)においてノズル51に最も近接する部分は、垂下部32Aおよび垂下部33Aを有してないことが好ましい。この場合、ノズル51の処理位置近傍において、内側ガード32および外側ガード33が受けた処理液が、基板SBの方へ逆戻りしやすくなる。この逆戻りを、上述したガス流F2によって抑制することができる。
【0060】
しかしながら、ガス流F2の作用のみでは、カップ部3からの処理液が基板SBへ戻ることを十分に防止できないことがある。そこで好ましくは、ガスノズル81の円形形状の半径は、基板SBの半径の2/3以上とされる。その場合、基板SBの中央からその周辺にかけての広い領域がガスノズル81によって覆われ、当該領域は、カップ部3から跳ね返った処理液から防御される。
【0061】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0062】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0063】
3 :カップ部
20 :スピンチャック
21 :保持機構
22 :回転機構
22M :モータ
22X :シャフト
24 :収納部材
25 :吸引孔
26 :吸引配管
31 :底部
32 :内側ガード
32A,33A:垂下部
33 :外側ガード
40 :カップ作動機構
41 :底部作動機構
42 :内側ガード作動機構
43 :外側ガード作動機構
51 :ノズル
52 :ノズルアーム
53,53M :アーム作動機構
55 :処理液源
56 :バルブ
61 :第1容器
62 :第2容器
81 :ガスノズル
82,83 :開口
85 :ガス源
86 :バルブ
90 :制御部
100 :基板処理システム
101~104:基板処理装置
SB :基板