(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】熱可塑性材料のための高いガラス転移温度を有する短ジアミン系半結晶性ポリアミド組成物、その製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
C08L 77/06 20060101AFI20231011BHJP
C08G 69/26 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C08L77/06
C08G69/26
(21)【出願番号】P 2019551336
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(86)【国際出願番号】 FR2018050711
(87)【国際公開番号】W WO2018172718
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-01-08
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2017-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カペロ, マチュー
(72)【発明者】
【氏名】オックステッテル, ジル
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-154739(JP,A)
【文献】特開2017-075303(JP,A)
【文献】特開昭49-055796(JP,A)
【文献】特開2010-285553(JP,A)
【文献】国際公開第1988/001283(WO,A1)
【文献】特開昭62-209166(JP,A)
【文献】特開平07-165911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/00
C08K 3/00
C08K 5/00
C08G 69/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 0から70重量%の補強用短繊維、
- 30から100重量%の、少なくとも一つの半結晶性ポリアミドポリマーに基づく熱可塑性マトリックス、
- 0から50重量%の添加剤及び/又は他のポリマー
を含む熱可塑性材料のための組成物であって、
前記組成物が、
a)前記半結晶性ポリアミドポリマーの少なくとも一つの反応性前駆体ポリアミドプレポリマーを含むか又はそれからなる反応性組成物であるか、
又はa)の代わりとして、
b)上に規定された熱可塑性マトリックスの組成物である、少なくとも一つのポリアミドポリマーの非反応性組成物
であり、
組成物a)の前記反応性ポリアミドプレポリマー及び組成物b)の前記ポリアミドポリマーが、少なくとも一つのBACT/XTコポリアミドを含むか、又はそれからなり、
- BACTが、15から90%の範囲のモル含有量で存在するアミドモチーフを有する単位であり、BACが、1,3-ビス(アミノメチル) シクロヘキサン(1,3 BAC)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキシル(1,4 BAC)及びそれらの混合物から選択され、Tがテレフタル酸であり、
- XTが、10から85%の範囲のモル含有量で存在するアミドモチーフを有する単位であり、Xが、C4からC8直鎖状脂肪族ジアミンであり、Tがテレフタル酸であり、
- BACT及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジカルボン酸の総量に対して最大30mol%のテレフタル酸を、6から36個の炭素原子を含む、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸及び二量体化脂肪酸又は脂環式酸から選択される他の脂肪族ジカルボン酸に置き換えることができ、
- BACT及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジアミンの総量に対して最大30mol%のBAC及び/又は該当する場合はXを、4から36個の炭素原子を含む他のジアミンに置き換えることができ、
- コポリアミドにおいて、モノマーの総量に対して30mol%以下を、ラクタム、又はα,ω-アミノノナン酸、α,ω-アミノウンデカン酸(AUA)、ラウリルラクタム(LL)及びα,ω-アミノドデカン酸(ADA)から選択されるアミノカルボン酸により形成することができ、
- ただし、テレフタル酸に代わるモノマー、BACに代わるモノマー、及びXに代わるモノマーの合計が、コポリアミドに使用されるモノマーの総量に対して30mol%の濃度を超えないことを条件とし、
- BACT及びXT単位が、前記ポリアミドポリマーになおも存在することを条件とし、
- XがC6直鎖状脂肪族ジアミンである場合、BACTが、60から90%の範囲のモル含有量で存在し、6Tが、10から
40%の範囲のモル含有量で存在することを条件とする、
組成物。
【請求項2】
前記半結晶性ポリアミドポリマーが、ISO規格11357-3(2013)に従って決定された、290℃から340℃を含む溶融温度Tmを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記半結晶性ポリアミドポリマーが、ISO規格11357-2:2013に従って決定された、>130℃のガラス転移温度Tgを有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記半結晶性ポリアミドポリマーが、ISO規格11357-3:2013に従って決定された、溶融温度と結晶化温度との間の差Tm-Tc<40℃を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ISO規格11357-3:2013に従って示差走査熱量測定(DSC)により測定された半結晶性ポリアミドポリマーの結晶化のエンタルピーが、40J/g超であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
BACが1,3 BACであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
BACが1,3 BACであり、XTが4T、5T又は6Tから選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
テレフタル酸に代わるモノマー、BACに代わるモノマー、及びXに代わるモノマーの合計が0に等しいことを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
b)による非反応性組成物である、請求項1から
8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
a)による反応性組成物である、請求項1から
8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも一つの添加剤をさらに含むことを特徴する、請求項1から
9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
添加剤が、酸化防止剤、熱安定剤、UV吸収剤、光安定剤、衝撃改質剤、潤滑剤、無機充填剤、難燃剤、造核剤及び冷却剤から選択されることを特徴とする、請求項
11に記載の組成物。
【請求項13】
成形組成物であることを特徴とする、請求項1から
12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1から
12のいずれか一項に記載の組成物を有する、熱可塑性材料の製造方法であって、少なくとも一つの反応性組成物a)を重合する少なくとも一つの工程、又は押出、射出又は成形により、少なくとも一つの非反応性組成物b)を成形又は実装する工程を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項15】
i)開放若しくは密閉鋳型中で、又は鋳型を使用せずに、任意選択的に繊維強化剤が存在しない、請求項1から
12のいずれか一項に記載の組成物を射出する工程、
ii)反応性ポリアミド組成物a)の場合、鎖延長を伴い工程i)からの前記組成物を加熱することにより、場合に応じて溶融時にバルクでの重縮合反応又は重付加反応により、任意選択的に重縮合の場合、真空下で抽出システムを使用した、密閉鋳型であるときは真空下での縮合生成物の除去を伴う、重合反応の工程、
iii)非反応性ポリアミド組成物b)の場合は、工程i)からの前記組成物を実装又は成形して、鋳型中に又は別の実装システムを用いて最終部品を形成する工程、反応性組成物a)の場合は、成形により又は別の実装システムにより、重合工程ii)と同時に、実装する工程
を含むことを特徴とする、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記熱可塑性材料を含有する機械部品又は構造部品、単層若しくは多層管、又はフィルムの製造のための、請求項1から
12のいずれか一項に記載の組成物、又は前記組成物b)による非反応性ポリマー若しくは前記組成物a)による反応性組成物から得ることができるポリマーの使用。
【請求項17】
前記材料の前記機械部品又は構造部品が、自動車、電気若しくは電子、鉄道、海洋、風力、光起電、太陽光発電(太陽光発電プラント用のソーラーパネル及び部品を含む)、スポーツ、航空宇宙、道路輸送(トラックに関連)、建設、土木、標識及びレジャーの領域における用途に関することを特徴とする、請求項
16に記載の使用。
【請求項18】
自動車の用途の前記機械部品が、流体の輸送のためのアンダーフード部品であることを特徴とする、請求項
16に記載の使用。
【請求項19】
電気又は電子の用途の前記機械部品又は構造部品が、カプセル化ソレノイド、ポンプ、電話機、コンピュータ、プリンタ、ファクス、モデム、モニタ、リモートコントロール、カメラ、回路遮断器、電気ケーブルの保護管、光ファイバー、スイッチ、マルチメディアシステムなどの電気及び電子機器のための物品であることを特徴とする、請求項
16に記載の使用。
【請求項20】
請求項1から
12のいずれか一項に記載の熱可塑性材料のための少なくとも一つの組成物の使用により生じることを特徴とする、熱可塑性材料。
【請求項21】
請求項1から
12のいずれか一項に記載の少なくとも一つの組成物の使用により生じるこ
と、請求項
20に記載の熱可塑性材料の使用により生じること、又は請求項
14若しくは
15に記載の方法により得られる熱可塑性材料の使用により生じることを特徴とする、熱可塑性材料の機械部品又は構造部品。
【請求項22】
流体の輸送のためのアンダーフード部品などの自動車の用途の機械部品であることを特徴とする、請求項
21に記載の部品。
【請求項23】
カプセル化ソレノイド、ポンプ、電話機、コンピュータ、プリンタ、ファクス、モデム、モニタ、リモートコントロール、カメラ、回路遮断器、電気ケーブルの保護管、光ファイバー、スイッチ、マルチメディアシステムなどの電気及び電子の用途の機械部品又は構造部品であることを特徴とする、請求項
21に記載の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性材料のための、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC)を含有する、高いガラス転移温度を有する新規の半結晶性(sc)ポリアミド組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、前記熱可塑性材料のための製造方法と、材料部品及び結果として生じる部品のため並びに自動車、鉄道、海洋、道路輸送、風、スポーツ、宇宙及び航空、建設、標識及びレジャー並びに電気及び電子の分野における用途のための前記材料を含有する機械部品又は構造化部品の製造のための前記組成物の使用とにも関する。
【0003】
材料の主な課題は、次の仕様:
- 広範な使用温度のTg;
- 温度での良好な保持のための高いTmであるが、特に射出による加工が可能なほど十分に低いTm、
- 迅速な離型のための非常に良好な結晶化能力、したがって、例えば自動車産業で使用されるような集中的な生産サイクルとの互換性、
- 最終的な材料で可能な限り最高の弾性率を得ることができるための、高温時を含む高い剛性
を満たすポリアミド樹脂を見つけることである。
【0004】
特許文献CN104211953は、60から95mol%の10T、5から40mol%の5’T(5’は2-メチル-1,5-ペンタメチレンジアミンに相当する)を含む30から99.9重量%のポリアミド樹脂、0から70重量%の強化充填材、及び0.1から50重量%の添加剤を含むポリアミド組成物を記載している。
【0005】
ポリアミド樹脂は、260℃超の溶融温度及び10Tの高モル比を有する。
【0006】
EP550314は、その実施例で、250℃超の溶融温度及び限定されたTgを追求することによってコポリアミド組成物(非反応性)を記載しているが、引用された実施例の大部分は低すぎるTg(<80℃)を有する。
【0007】
EP1988113は、
- 40から95%molの10T
- 5から40%の6T
を有する10T/6Tコポリアミドを含有する成形組成物を記載している。
【0008】
具体的な目的には、270℃超の溶融温度を有するポリアミドが含まれる。
【0009】
国際公開第2011/003973号は、9から12個の炭素原子を含む直鎖状脂肪族ジアミンとテレフタル酸を含有する50から95mol%のモチーフ、並びにテレフタル酸と2,2,4及び2,4,4トリメチルヘキサンジアミンの混合物とを組み合わせた5から50%のモチーフを含む組成物を記載している。
【0010】
国際公開第2014/064375は、特に、上記の多様な特性の間の優れた妥協点を有するPA MXDT/10Tを記載している。残念なことに、使用されるメタ-キシレンジアミン(MXD)モノマーは、二次反応を起こしやすく、特に枝の形成につながる。
【0011】
短い生産サイクル時間を有する、機械的性能と容易な実装(変形の容易さ)との間の良好な妥協点を欠いた技術の現状の欠点は、特に高温且つ容易な実装の場合に高い機械的性能(機械的保持)間で優れた妥協点を有する半結晶性PAの組成物を目的とする本発明の解決策によって克服される。それは実際に高剛性であり、>130℃のガラス転移温度、290℃から340℃のTm、及び優れた結晶化能力(Tm-Tc<40℃)を有し、このことにより、特に風、自動車又は航空及び電気又は電子機器用のための、押出、射出又は成形による実装のための選択のマトリックスとなる。
【0012】
本発明の熱可塑性材料のためのマトリックスとしての半結晶性ポリアミドポリマーの選択は、非晶質ポリアミドと比較して、特にクリープ強度や耐疲労性などの高温時の機械的性能を著しく改善することが重要である。加えて、200℃超の融点を有することにより、非晶質PA構造を可能にしない電気泳動処理と互換性がある自動車において利点を有する。使用温度範囲全体にわたって熱可塑性材料の良好な機械的特性を確保するために、130℃以上の目的のTgが求められる。機械的性能と最高の結晶化速度及び/又は結晶化温度を最適化して、前記半結晶性ポリアミドの組成を選択して成形部品を射出するまでの成形時間を短縮するために、前記ポリマーの結晶化度を可能な限り高くする必要がある。
【0013】
本発明の主題は、特に半結晶性ポリアミドを含有する熱可塑性材料の新規特定組成物の実装であり、特に高温で容易な実装の場合に、高い機械的性能(機械的保持)の間で良好な妥協を有する、新規特定組成物の実装である。より具体的には、本発明の解決策は、反応性組成物の場合、反応性半結晶性ポリアミドプレポリマーを使用することにより、例えば低い射出圧力の使用、又は高レベルのフィネスを有する部品の成形を可能にする、組成物の初期粘度が低いことによる加工性の改善だけでなく、達成され得る高分子量による機械的特性の改善も可能にする。より具体的には、規定された高いTg及びTmとともに、前記熱可塑性材料の容易な実装により、ポリアミドポリマーマトリックスは、最初に溶融温度と結晶化温度との、40℃を超えない、好ましくは30℃を超えない差Tm-Tcによって特徴付けられる高い結晶化速度も有する必要がある。したがって、本発明の主題は、既に上に規定された必要性:
- 広範な使用温度のTg;
- 特に射出による、加工処理を容易にするための290℃から340℃のTm;
- 迅速な離型のための非常に良好な結晶化能力、したがって、例えば自動車産業で使用されるような集中的な生産サイクルとの互換性、
- 最終材料で可能な限り最高の弾性率を得ることができるための、高温時を含む高い剛性
を満たすポリアミド組成物を開発することである。
【0014】
本発明は、
- 0から70重量%、好ましくは20から60重量%の補強用短繊維、
- 30から100重量%、好ましくは40から80重量%の、少なくとも一つの半結晶性ポリアミドポリマーに基づく熱可塑性マトリックス、
- 0から50重量%の添加剤及び/又は他のポリマー
を含む熱可塑性材料のための組成物であって、
前記半結晶性ポリアミドポリマーが、
a)前記半結晶性ポリアミドポリマーの少なくとも一つの反応性前駆体ポリアミドプレポリマーを含むか又はそれからなる反応性組成物であるか、
又はa)の代わりとして、
b)上に規定された熱可塑性マトリックスの組成物である、少なくとも一つのポリアミドポリマーの非反応性組成物
であり、
組成物a)の前記反応性ポリアミドプレポリマー及び組成物b)の前記ポリアミドポリマーが、少なくとも一つのBACT/XTコポリアミドを含むか、又はそれからなり、
- BACTが、15から90%、好ましくは20から85%、より好ましくは25から80%の範囲のモル含有量で存在するアミドモチーフを有する単位であり、BACが、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3 BAC)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキシル(1,4 BAC)又はそれらの混合物から選択され、Tがテレフタル酸であり、
- XTが、10から85%、好ましくは15から80%、より好ましくは20から75%の範囲のモル含有量で存在するアミドモチーフを有する単位であり、Xが、C4からC8直鎖状脂肪族ジアミン、好ましくはC4、C5又はC6であり、Tがテレフタル酸、好ましくはC6であり、
- BACT及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジカルボン酸の総量に対して最大30mol%、好ましくは20mol%、特に最大10mol%のテレフタル酸を、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸及び二量体化又は脂環式脂肪酸から選択され、6から36個の炭素原子、好ましくは6から14個の炭素原子を含む、他の二芳香族の二脂肪族ジカルボン酸に置き換えることができ、
- BACT及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジアミンの総量に対して最大30mol%、好ましくは20mol%、特に最大10mol%のBAC及び/又は該当する場合はXを、4から36個の炭素原子、特に6から12個の炭素原子を含む他のジアミンに置き換えることができ、
- コポリアミドにおいて、モノマーの総量に対して30mol%以下、好ましくは20%以下、好ましくは10mol%以下を、ラクタム、又はα,ω-アミノノナン酸、α,ω-アミノウンデカン酸(AUA)、ラウリルラクタム(LL)及びα,ω-アミノドデカン酸(ADA)から選択されるアミノカルボン酸により形成することができ、
- ただし、テレフタル酸に代わるモノマー、BACに代わるモノマー、及びXに代わるモノマーの合計が、コポリアミドに使用されるモノマーの総量に対して30mol%、好ましくは20mol%、好ましくは10mol%の濃度を超えないことを条件とし、
- BACT及びXT単位が、前記ポリアミドポリマーになおも存在することを条件とし、
- XがC6直鎖状脂肪族ジアミンである場合、BACTが、60から90%の範囲のモル含有量で存在し、6Tが、10から60%、好ましくは10から40%の範囲のモル含有量で存在することを条件とする、
組成物に関する。
【0015】
上で規定されたモノマーの部分的な置換が、上で規定されたBACT及びXTの範囲を満たすまで拡張されること、つまり、BACTが例えば20から70%の割合で存在する場合、BAC及び/又はTの部分的な置換が、すべての場合において、BACTの少なくとも20%の最終的な比率をもたらし、XTについても同じであることは、明らかである。
【0016】
したがって、前記半結晶性ポリアミドポリマーは、熱可塑性マトリックスの基礎を形成し、以下に対応する反応性組成物a)から得ることができる半結晶性ポリアミドポリマーである:
ジ-CO2H又はジ-NH2で終結して前記半結晶性ポリアミドポリマーをもたらす別のポリアミドプレポリマーとそれぞれ反応し得るジ-NH2又はジ-CO2Hで終結するポリアミドプレポリマー、又は
それ自体と反応し得るNH2及びCO2Hで終結して前記半結晶性ポリアミドポリマーをもたらすプレポリマー、又は
鎖延長剤と反応して前記半結晶性ポリアミドポリマーをもたらし得るプレポリマー、又は
非反応性組成物b)に既に存在する半結晶性ポリアミドポリマー。
【0017】
言い換えれば、本発明は、
- 0から70重量%、好ましくは20から60重量%の補強用短繊維、
- 30から100重量%、好ましくは40から80重量%の、少なくとも一つの半結晶性ポリアミドポリマーに基づく熱可塑性マトリックス、
- 0から50重量%の添加剤及び/又は他のポリマー
を含む熱可塑性材料のための組成物であって、
前記組成物が、
a)前記半結晶性ポリアミドポリマーの少なくとも一つの反応性前駆体ポリアミドプレポリマーを含むか又はそれからなる反応性組成物であるか、
又はa)の代わりとして、
b)上に規定された熱可塑性マトリックスの組成物である、少なくとも一つのポリアミドポリマーの非反応性組成物
であり、
組成物a)の前記反応性ポリアミドプレポリマー及び組成物b)の前記ポリアミドポリマーが、少なくとも一つのBACT/XTコポリアミドを含むか、又はそれからなり、
- BACTが、15から90%、好ましくは20から85%、より好ましくは25から80%の範囲のモル含有量で存在するアミドモチーフを有する単位であり、BACが、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3 BAC)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキシル(1,4 BAC)又はそれらの混合物から選択され、Tがテレフタル酸であり、
- XTが、10から85%、好ましくは15から80%、より好ましくは20から75%、特に45から65%の範囲のモル含有量で存在するアミドモチーフを有する単位であり、Xが、C4からC8直鎖状脂肪族ジアミン、好ましくはC4、C5又はC6であり、Tがテレフタル酸、好ましくはC6であり、
- BACT及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジカルボン酸の総量に対して最大30mol%、好ましくは20mol%、特に最大10mol%のテレフタル酸を、6から36個の炭素原子、特に6から14個の炭素原子を含む、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸及び二量体化又は脂環式脂肪酸から選択される他の二芳香族の二脂肪族ジカルボン酸に置き換えることができ、
- BACT及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジアミンの総量に対して最大30mol%、好ましくは20mol%、特に最大10mol%のBAC及び/又は該当する場合はXを、4から36個の炭素原子、特に6から12個の炭素原子を含む他のジアミンに置き換えることができ、
- コポリアミドにおいて、モノマーの総量に対して30mol%以下、好ましくは20%以下、好ましくは10mol%以下を、ラクタム、又はα,ω-アミノノナン酸、α,ω-アミノウンデカン酸(AUA)、ラウリルラクタム(LL)及びα,ω-アミノドデカン酸(ADA)から選択されるアミノカルボン酸により形成することができ、
- ただし、テレフタル酸に代わるモノマー、BACに代わるモノマー、及びXに代わるモノマーの合計が、コポリアミドに使用されるモノマーの総量に対して30mol%、好ましくは20mol%、好ましくは10mol%の濃度を超えないことを条件とし、
- BACT及びXT単位が、前記ポリアミドポリマーになおも存在することを条件とし、
- XがC6直鎖状脂肪族ジアミンである場合、BACTが、60から90%の範囲のモル含有量で存在し、6Tが、10から60%、好ましくは10から40%の範囲のモル含有量で存在することを条件とする、
組成物に関する。
【0018】
少なくとも一つのBACT/XTコポリアミドを含むか又はそれからなる、組成物a)の前記反応性ポリアミドプレポリマー及び組成物b)の前記ポリアミドポリマーという表現は、組成物a)の反応性ポリアミドプレポリマー又は組成物b)の前記ポリアミドポリマーが、上に規定するそれぞれの割合でBACT及びXTアミドモチーフを有する単位から排他的になること、すなわち、組成物a)の反応性ポリアミドプレポリマー又は組成物b)の前記ポリアミドポリマーは、上に規定するそれぞれの割合でBACT及びXTアミドモチーフを含むことを意味する。
【0019】
有利には、組成物a)の反応性ポリアミドプレポリマー又は組成物b)の前記ポリアミドポリマー中のBACT及びXTアミドモチーフ単位の割合は、50%超、特に60%超、具体的には70%超、好ましくは80%超、特に90%超である。
【0020】
したがって、本発明は、
- 0から70重量%、好ましくは20から60重量%の補強用短繊維、
- 30から100重量%、好ましくは40から80重量%の、少なくとも一つの半結晶性ポリアミドポリマーに基づく熱可塑性マトリックス、
- 0から50重量%の添加剤及び/又は他のポリマー
を含む熱可塑性材料のための組成物であって、
前記半結晶性ポリアミドが、少なくとも一つのBACT/XTコポリアミドを含むか又はそれからなり、
- BACTが、15から90%、好ましくは20から85%、より好ましくは25から80%の範囲のモル含有量で存在するアミドモチーフを有する単位であり、BACが、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3 BAC)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキシル(1,4 BAC)又はそれらの混合物から選択され、Tがテレフタル酸であり、
- XTが、10から85%、好ましくは15から80%、より好ましくは20から75%、特に45から65%の範囲のモル含有量で存在するアミドモチーフを有する単位であり、Xが、C4からC8直鎖状脂肪族ジアミン、好ましくはC4、C5又はC6であり、Tがテレフタル酸、好ましくはC6であり、
- BACT及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジカルボン酸の総量に対して最大30mol%、好ましくは20mol%、特に最大10mol%のテレフタル酸を、6から36個の炭素原子、特に6から14個の炭素原子を含む、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸及び二量体化又は脂環式脂肪酸から選択される他の二芳香族の二脂肪族ジカルボン酸に置き換えることができ、
- BACT及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジアミンの総量に対して最大30mol%、好ましくは20mol%、特に最大10mol%のBAC及び/又は該当する場合はXを、4から36個の炭素原子、特に6から12個の炭素原子を含む他のジアミンに置き換えることができ、
- コポリアミドにおいて、モノマーの総量に対して30mol%以下、好ましくは20%以下、好ましくは10mol%以下を、ラクタム、又はα,ω-アミノノナン酸、α,ω-アミノウンデカン酸(AUA)、ラウリルラクタム(LL)及びα,ω-アミノドデカン酸(ADA)から選択されるアミノカルボン酸により形成することができ、
- ただし、テレフタル酸に代わるモノマー、BACに代わるモノマー、及びXに代わるモノマーの合計が、コポリアミドに使用されるモノマーの総量に対して30mol%、好ましくは20mol%、好ましくは10mol%の濃度を超えないことを条件とし、
- BACT及びXT単位が、前記ポリアミドポリマーになおも存在することを条件とし、
- XがC6直鎖状脂肪族ジアミンである場合、BACTが、60から90%の範囲のモル含有量で存在し、6Tが、10から60%、好ましくは10から40%の範囲のモル含有量で存在することを条件とする、
組成物に関する。
【0021】
本発明による組成物は、補強用短繊維又は強化短繊維を含み得る。
【0022】
好ましくは、「短」繊維は、200から400μmの長さである。
【0023】
これらの補強用短繊維は、以下から選択され得る:
- 天然繊維
- 本発明の前記半結晶性ポリアミドの溶融温度Tmよりも高く、重合及び/又は実装温度よりも高い溶融温度Tm’を有する無機繊維
- 重合温度よりも高いか、又は熱可塑性材料の前記マトリックスを構成する前記半結晶性ポリアミドの溶融温度Tmよりも高いか、又は実装温度よりも高い溶融温度Tm’、又はTm’でない場合はガラス転移温度Tg’を有するポリマー繊維
- 上記の繊維の混合物。
【0024】
本発明に適した無機繊維の例は、ナノチューブ若しくはカーボンナノチューブ(CNT)の繊維、カーボンナノファイバー又はグラフェンを含む炭素繊維;例えば特にE、R若しくはS2型のガラス繊維等のシリカ繊維;ホウ素繊維;セラミック繊維、特に炭化ケイ素繊維、炭化ホウ素繊維、炭窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、窒化ホウ素繊維、バサルト繊維;金属及び/若しくはそれらの合金を含有する繊維又はフィラメント;金属酸化物繊維、特にアルミナ(Al2O3)のもの;金属化繊維、例えば金属化ガラス繊維及び金属化炭素繊維、又はこれらの繊維の混合物である。
【0025】
より具体的には、これらの繊維は以下のように選択され得る:
-無機繊維は、炭素繊維、カーボンナノチューブ繊維、ガラス繊維、特にE、R若しくはS2型、ホウ素繊維、セラミック繊維、特に炭化ケイ素繊維、炭化ホウ素繊維、炭窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、窒化ホウ素繊維、バサルト繊維、金属及び/若しくはそれらの合金を含有する繊維又はフィラメント、金属酸化物、例えばAl2O3を含有する繊維、金属化ガラス繊維及び金属化炭素繊維等の金属化繊維、又はこれらの繊維の混合物から選択することができ、
- 上記の条件下でポリマー繊維は以下:より選択され、
- 熱硬化性ポリマー繊維、より具体的には不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリウレタン、シアノアクリレート及びポリイミド、例えばビス-マレイミド樹脂、メラミンなどのアミンとグリオキサール若しくはホルムアルデヒドなどのアルデヒドとの反応により得られるアミノプラストから特に選択されるもの、
- 熱可塑性ポリマー繊維、
- ポリアミド繊維、特にポリフタルアミド繊維、
- アラミド繊維(例えばKevlar(登録商標))及び芳香族ポリアミド、例えば以下の式の一つを有するもの:PPD.T、MPD.I、PAA及びPPA(PPD及びMPDはそれぞれ、p-及びm-フェニレンジアミンであり、PAAはポリアリールアミドであり、PPAはポリフタルアミドである)、
- ポリアミドブロックコポリマー、例えばポリアミド/ポリエーテルの繊維、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)の繊維。
【0026】
好ましい補強用短繊維は、炭素繊維(金属化繊維、ガラス繊維(E、R、S2のような金属化ガラス繊維を含む))、アラミド繊維(Kevlar(登録商標)のようなもの)又は芳香族ポリアミドを含む)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)繊維、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)繊維、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)繊維又はそれらの混合物から選択される短繊維である。
【0027】
より具体的には、天然繊維は、アマ、ヒマ、木材、サイザル、ケナフ、ココナッツ、麻及びジュート繊維から選択される。
【0028】
好ましくは、本発明による組成物中の補強用繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、アマ繊維及びそれらの混合物から、より好ましくはガラス繊維及び炭素繊維から、さらにより好ましくはガラス繊維から選択される。
【0029】
有利には、本発明の組成物は、少なくとも一つの添加剤も含む。
【0030】
添加剤について、これらに限定されることなく、本発明の好ましい変形例による組成物は、より具体的には、熱安定剤のような特定の添加剤を含み、特に、これらの安定剤は、熱可塑性マトリックス中のポリマーの熱酸化及び/又は光酸化に対する酸化防止剤であり、有機又は無機安定剤である。
【0031】
「有機安定剤」又はより一般的には「有機安定剤の組み合わせ」という用語は、フェノール型の一次酸化防止剤、ホスファイト型の二次酸化防止剤、及び任意選択的にはHALSのような他の安定剤(ヒンダードアミン光安定剤(例えばCibaのTinuvin(登録商標)770)、抗UV(例えばCibaのTinuvin(登録商標)312)、フェノール安定剤又はリンを含有する安定剤を含む)を表す。CromptonのNaugard(登録商標)445等のアミン酸化防止剤又はClariantのNylostab(登録商標)S-EED等のポリ官能性安定剤も使用され得る。
【0032】
存在する有機安定剤は、制限的ではない以下のリストから選択され得る:
- フェノール酸化防止剤、例えばCibaのIrganox 245、Irganox 1010、Irganox 1098、CibaのIrganox MD1024、Great LakesのLowinox 44B25、Adeka PalmaroleのADK Stab AO-80、
- ホスファイト等のリンを含有する安定剤、例えばCibaのIrgafos(登録商標)168、
- UV吸収剤、例えばCibaのTinuvin 312、
- 上記のようなHALS、
- アミン型安定剤、例えばCromptonのNaugard 445、或いはヒンダードアミン型、例えばCibaのTinuvin 770、
- ポリ官能性安定剤、例えばClariantのNylostab S-EED。
【0033】
これらの有機安定剤の二つ以上の混合物が明らかに想定され得る。
【0034】
「鉱物安定剤」という表現は、米国特許公開第2008/0146717号に記載されるような銅又は金属酸化物を含有する安定剤を表す。無機安定剤の例には、ハロゲン化銅及び酢酸銅又は鉄酸化物、例えばFeO、Fe2O3、Fe3O4、又はそれらの混合物が含まれる。二次的に、銀などの他の金属も任意選択的に考慮され得るが、それらは効果が小さいことが知られている。銅を含有するこれらの化合物は、典型的には、アルカリ金属ハロゲン化物、特にカリウムと関連する。
【0035】
これらの鉱物安定剤は、ポリマー鎖の破損を防ぐ傾向があるため、特に100~120℃以上の温度で、構造体が熱風での長期的な耐熱性を改善する必要がある場合に特に使用される。
【0036】
より具体的には、銅を含有する安定剤は、特にイオン化可能なイオン形態、例えば錯体の形態の少なくとも一つの銅原子を含む化合物を意味すると理解される。
【0037】
銅を含有する安定剤は、塩化銅、塩化第一銅、臭化銅、臭化第一銅、ヨウ化銅、ヨウ化第一銅、酢酸銅及び酢酸第一銅から選択され得る。銅を含む安定剤と組み合わせた銀などの他の金属の酢酸塩、ハロゲン化物が挙げられる。銅を含有するこれらの化合物は、典型的にはアルカリ金属のハロゲン化物と関連する。よく知られた例は、CuIとKIの混合物であり、比CuI:KIは典型的には、1:5から1:15の間に包含される。そのような安定剤の例は、CibaのPolyadd P201である。
【0038】
銅を含有する安定剤のさらなる詳細は、米国特許第2,705,227号に見られる。より最近では、BruggemannのBruggolen H3336、H3337、H3373などの銅錯体のような銅を含有する安定剤が登場してきた。
【0039】
有利には、銅を含有する安定剤は、ハロゲン化銅、酢酸銅、少なくとも一つのアルカリ金属ハロゲン化物との混合物中のハロゲン化銅若しくは酢酸銅、及びそれらの混合物から、好ましくはヨウ化銅及びヨウ化カリウムの混合物(CuI/KI)から選択される。
【0040】
添加剤は、有利には、ISO規格178に従って測定される100MPa未満の曲げ弾性率及び0℃未満のTg(規格11357-2:2013に従って、DSCサーモグラムの変曲点で測定)を有するポリマーから、特に<200MPaの曲げ弾性率を有するPeba(ポリエーテルブロックアミド)と結合しているか又は結合していないポリオレフィンからなる衝撃改質剤であってもよい。
【0041】
耐衝撃性改良剤のポリオレフィンは、官能化されていてもいなくてもよく、あるいは少なくとも一つの官能化ポリオレフィン及び/又は少なくとも一つの非官能化ポリオレフィンの混合物であってもよい。
【0042】
添加剤は、特に熱可塑性材料の分野の当業者に知られる任意の充填剤であり得る充填剤であってもよい。これは、金属粉末、粉末カーボンブラック、カーボンフィブリル、カーボンナノチューブ(CNT)、炭化ケイ素、炭窒化ホウ素、ホウ素又は窒化ケイ素などの熱伝導性及び/又は電気伝導性充填剤であり得る。この主題に関して、出願人による出願である国際公開第2010/130930号を参照することができる。
【0043】
長短又は連続にかかわらず、補強用繊維は、添加剤から除外され、特に、用語「無機充填剤」は、補強用長繊維、短繊維又は連続繊維を除外する。
【0044】
添加剤は、ハロゲン非含有難燃剤、例えば米国特許公開第2008/0274355号に記載されるようなもの、特に、ホスフィン酸の金属塩、ジホスフィン酸の金属塩、ホスフィン酸の金属塩の少なくとも一つを含有するポリマー、ジホスフィンの金属塩の少なくとも一つを含有するポリマー又は赤リンから選択される金属塩、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム又は金属ホウ酸塩、例えばホウ酸亜鉛、又はメラミンピロホスフェート及びメラミンシアヌレートであってもよい。それらは、臭素化又はポリ臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート又は臭素化フェノール等のハロゲン化難燃剤であってもよい。
【0045】
有利には、添加剤は、酸化防止剤、熱安定剤、UV吸収剤、光安定剤、衝撃改質剤、潤滑剤、無機充填剤、難燃剤、造核剤、特にタルクのような無機充填剤、及び冷却剤から選択される。
【0046】
「他のポリマー」という表現は、任意の熱可塑性ポリマー、特にポリアミドポリマー、特に脂肪族の脂環式又は芳香族ポリアミドを表し、それは微結晶質又は非晶質であり得る。
【0047】
「非反応性組成物」という表現は、その組成物が、分子量がもはや大幅に変化する可能性が低いポリアミドポリマーを含有すること、すなわち、使用時に数平均分子量(Mn)が50%未満変化することを意味し、したがって、熱可塑性マトリックスの最終的なポリアミドポリマーに相当する。
【0048】
特に<120meq/kgのレベルを有する存在する低レベルの(残留)反応性官能基により、又は鎖末端に同型の末端官能基が存在するため一緒に反応できないことにより、又は例えば一酸又はモノイソシアネートとの改質反応によるアミン官能基のための、及びモノアミンとの反応によるカルボキシル官能基のための単官能反応成分によって前記反応性官能基を改質及びブロックすることにより、組成物b)によるこれらのポリアミドは、非反応性である。
【0049】
有利には、前記材料の熱可塑性マトリックスの前記最終的なポリアミドポリマーの数平均分子量(Mn)は、溶液中の電位差滴定により決定された末端官能基のレベル及び前記プレポリマーの官能性からの計算により又はNMRにより決定される、好ましくは6000から40000g/mol、好ましくは10000から30000g/molの範囲である。これらのMn値は、ISO規格307:2007規格に従うが、溶媒を変更することにより(硫酸の代わりにm-クレゾールを使用し、温度は20℃)決定される、0.7以上の固有粘度に相当し得る。
【0050】
反対に、「反応性組成物」という表現は、反応性プレポリマーの、縮合による、又は重付加による連鎖延長剤との反応により、揮発性副生成物の除去なしで、前記反応性組成物の分子量がその実装中に変化し、熱可塑性マトリックスの最終的なポリアミドポリマーをもたらすことを意味する。
【0051】
1,3-BAC(又は1,3 ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、CAS番号2579-20-6)は、特にメタ-キシレンジアミン(MXDA)の水素化により得られる脂環式ジアミンモノマーである。1,3-BACは、二つの異性体、シス及びトランスの形態で存在し、CAS番号2579-20-6は異性体の混合物に相当する。
【0052】
1,4-BAC(又は1,4 ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、CAS番号2549-07-9)は、特にパラ-キシレンジアミン(PXDA)の水素化により得られる脂環式ジアミンモノマーである。1,4-BACは、二つの異性体、シス及びトランスの形態で存在し、CAS番号2549-07-9は異性体の混合物に相当する。
【0053】
有利には、BACT単位に使用される1,3 BAC又は1,4 BACは、シス及びトランス異性体の混合物であり、それぞれの割合は、0/100から100/0、特に75/25から25/75である。
【0054】
有利には、1,3 BAC中のシス異性体の割合は、60%超、好ましくは70%超、具体的には80%超、特に90%超である。
【0055】
有利には、1,4 BAC中のトランス異性体の割合は、60%超、好ましくは70%超、具体的には80%超、特に90%超である。
【0056】
BAC及び/又はXは、互いに独立して、上記の他のジアミンで、特に、直鎖状又は分岐状脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン又はアリール芳香族ジアミン、例えば、メタ-キシレンジアミン(MXDA)で最大30mol%置き換えられ得る。
【0057】
例として、直鎖状又は分岐状脂肪族ジアミンは、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン(MPMD)、1,6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン(OMDA)、1,9-ノナンジアミン(NMDA)、2-メチル-1,8-オクタン-ジアミン(MODA)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン(TMHMD)、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン(TMHMD)、5-メチル-1,9-ノナンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,13-トリデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジアミン及び1,18-オクタデカンジアミンから選択される。
【0058】
脂環式ジアミンは、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、2,2-(4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシル)プロパン(PACP)及び3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエタン(MACM)から選択され得る。
【0059】
Tは、上で規定された他のカルボン二酸、特に他の芳香族、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸で最大30mol%置き換えられ得る。
【0060】
芳香族カルボン二酸は、ナフタレンジカルボン酸(NDA)及びイソフタル酸(IPA)から選択され得る。
【0061】
脂肪族カルボン二酸は、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸及び二量化脂肪酸から選択され得る。
【0062】
脂環式カルボン二酸は、シス-及び/若しくはトランス-シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸並びに/又はシス-及び/若しくはトランス-シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸(CHDA)から選択され得る。
【0063】
BAC及び/又はX及び/又はTは、互いに独立して、ラクタム又はアミノカルボン酸で最大30mol%置き換えられ得る。
【0064】
ラクタム及びアミノカルボン酸は、α,ω-アミノノナン酸、α,ω-アミノウンデカン酸(AUA)、ラウリルラクタム(LL)及びα,ω-アミノドデカン酸(ADA)から選択され得る。
【0065】
BAC、X及びTモノマーの合計に対して、別のジアミン、別の二酸、ラクタム又はアミノカルボン酸又はそれらの任意の混合物による置き換えが、最大30mol%可能である。
【0066】
有利には、BAC、X及びTモノマーの合計に対して、別のジアミン、別の二酸、ラクタム又はアミノカルボン酸又はそれらの任意の混合物による置き換えが、最大20mol%可能である。
【0067】
有利には、BAC、X及びTモノマーの合計に対して、別のジアミン、別の二酸、ラクタム又はアミノカルボン酸又はそれらの任意の混合物による置き換えが、最大10mol%可能である。
【0068】
有利な実施態様では、本発明は、以下で規定される熱可塑性材料1から12のための組成物の一つに関し、前記組成物は、半結晶性ポリアミドポリマー、任意選択的に補強用短繊維を含み、前記半結晶性ポリアミドポリマーは、以下の表Iに規定される割合でBACT/XTコポリアミドを含む。
【0069】
組成物1から12は、C4-C5からC7-C8からのXTに関する。
【0070】
XがC6脂肪族ジアミンであるとき、本発明は、下記の熱可塑性材料1’、2’、4’、5’、7’、8’、10’、11’のための組成物の一つに関する。
【0071】
有利には、組成物1から12又は組成物1’、2’、4’、5’、7’、8’、10’、11’は、0から50重量%の添加剤及び/又は他のポリマーを含む。
【0072】
有利には、前記組成物は、半結晶性ポリアミドポリマー、任意選択的に補強用短繊維、並びに0から50重量%の添加剤及び/又は他のポリマーを含み、前記半結晶性ポリアミドポリマーは、表1に規定される割合でBACT/XTコポリアミドを含む。
【0073】
有利には、前記組成物は、半結晶性ポリアミドポリマー、任意選択的に補強用短繊維、並びに0から50重量%の添加剤及び/又は他のポリマーを含み、前記半結晶性ポリアミドポリマーは、表1に規定される割合でBACT/XTコポリアミドからなる。
【0074】
有利には、上記の組成物中の添加剤及び/又は他のポリマーの割合は、0重量%超から50重量%である。
【0075】
有利には、上記の組成物中、Xは、C4、C5又はC6ジアミン、特にC6である。
【0076】
したがって、発明者は、本発明の組成物が、先行技術の組成物よりも良好な結晶化能力、高Tg/低Tmの妥協点、及び特に高いエンタルピー(したがって熱時の高い弾性率)を有することを予想外の方法で発見した。
【0077】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドポリマーが、ISO規格11357-3(2013)に従って決定された、290℃から340℃、好ましくは300から340℃、より好ましくは310から340℃を含む溶融温度Tmを有する、上記の構造体に関する。
【0078】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドポリマーが、ISO規格11357-2:2013に従って決定された、>130℃、好ましくは>140℃、より好ましくは>150℃のガラス転移温度Tgを有する、上記の組成物に関する。
【0079】
有利には、Tgは130から180℃で構成される。
【0080】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドポリマーが、ISO規格11357-3:2013に従って決定された、溶融温度と結晶化温度との間の差Tm-Tc<40℃、好ましくは<30℃を有する、上記の構造体に関する。
【0081】
有利な実施態様では、本発明は、ISO規格11357-3:2013に従って示差走査熱量測定(DSC)により測定された半結晶性ポリアミドポリマーの結晶化のエンタルピーが、40J/g超、好ましくは45J/g、さらにより好ましくは50J/gであることを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0082】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドが、290℃から340℃の溶融温度:Tm及び>130℃のTgを有することを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0083】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドが、290℃から340℃の溶融温度:Tm及び>140℃のTgを有することを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0084】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドが、290℃から340℃の溶融温度:Tm及び>150℃のTgを有することを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0085】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドが、300℃から340℃の溶融温度:Tm及び>130℃のTgを有することを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0086】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドが、300℃から340℃の溶融温度:Tm及び>140℃のTgを有することを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0087】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドが、300℃から340℃の溶融温度:Tm及び>150℃のTgを有することを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0088】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドが、310℃から340℃の溶融温度:Tm及び>130℃のTgを有することを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0089】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドが、310℃から340℃の溶融温度:Tm及び>140℃のTgを有することを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0090】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドが、310℃から340℃の溶融温度:Tm及び>150℃のTgを有することを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0091】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドが、以下の特徴を有することを特徴とする、上記の構造体に関する(表II)。
【0092】
有利な実施態様では、本発明は、BACが1,3 BACであることを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0093】
有利には、1,3 BACは、シス及びトランス異性体は、それぞれの割合が0/100から100/0、特に75/25から25/75の混合物である。
【0094】
有利には、1,3 BAC中のシス異性体の割合は、60%超、好ましくは70%超、具体的には80%超、特に90%超である。
【0095】
有利な実施態様では、本発明は、BACが1,3 BACであり、XTが4T、5T及び6T、より好ましくは6Tから選択される、上記の組成物に関する。
【0096】
有利には、XTは10Tであり、10は1,10デカンジアミンに相当する。
【0097】
有利な実施態様では、本発明は、テレフタル酸、BAC及びXに置き換えるモノマーの合計が0に等しい、上記の組成物に関する。したがって、この後者の実施態様では、上記の組成物1から93におけるモノマーの可能な置き換えはこれ以上存在しない。
【0098】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドが、b)による非反応性組成物であることを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0099】
これは、前記組成物が、この組成物中に反応は存在しないため、前記熱可塑性材料のマトリックスのポリマー(ポリアミド)と同一であることを意味し、この組成物は、本発明の熱可塑性材料の実装のために加熱された場合、分子量に関して安定で変化しないままである。既に上記のTm、Tg、Tm-Tc及びDelta Hcについてのこの組成物中のポリアミドポリマーの特徴は、最終的なポリマーのものと同一である。
【0100】
b)によるポリアミドは、ジアミン、二酸、及び任意選択的にアミノ酸又はラクタムである、特にモノマーの置換の範囲内のモノマー成分からの典型的な重縮合反応により得られる。
【0101】
有利な実施態様では、本発明は、前記ポリアミド組成物がa)による反応性プレポリマー組成物及び熱可塑性材料の前記マトリックスの前記ポリアミドポリマーの前駆体であることを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0102】
反応性組成物a)によれば、以下に詳述される三つの可能性が区別され得る。
【0103】
有利には、前記組成物a)は、同じ鎖上に、それぞれ縮合により一緒に反応する二つの末端官能基X’及びY’を保持する少なくとも一つの反応性プレポリマーを含むか、又はそれからなり、X’及びY’は、それぞれ、アミンとカルボキシル、又はカルボキシルとアミンである。
【0104】
プレポリマーは、同じ鎖上(つまり、同じプレポリマー上)に、縮合によりそれぞれ反応する二つの末端官能基X’及びY’官能基を保持する反応性ポリアミドである。
【0105】
この縮合(又は重縮合)反応は、副生成物の除去を引き起こし得る。これらは、好ましくは開放鋳型技術を使用するプロセスに従って作業することにより、除去され得る。密閉鋳型を用いたプロセスの場合では、反応により除去された副生成物を好ましくは減圧下で脱気する工程が存在し、最終的な熱可塑性材料中の副生成物のマイクロバブルの形成を防ぎ、これ(マイクロバブル)は、ここで除去されない場合、前記材料の機械的性能に影響を及ぼす可能性がある。
【0106】
したがって、用語「反応性」とは、プレポリマーのMnが、それ自体の反応後に、又は別のプレポリマーと共に、又は鎖延長により、50%超変化することを意味する。
【0107】
縮合後、Tm、Tg、Tm-Tc及びDelta Hcについてのこの組成物中で得られる最終的なポリアミドポリマーの特徴は、既に上記のものと同一である。
【0108】
有利には、前記反応性組成物a)は、一緒に反応し、それぞれがそれぞれ二つの同一の末端官能基X’又はY’を保持する少なくとも二つのポリアミドプレポリマーを含み、ここでプレポリマーの前記官能基X’は、特に縮合により、より具体的にはX’及びY’がそれぞれ、アミンとカルボキシル、又はカルボキシルとアミンである、他のプレポリマーの官能基Y’とのみ反応することができる。
【0109】
同様に、この縮合(又は重縮合)反応は、上記のように除去され得る副生成物の除去を引き起こし得る。
【0110】
縮合後、Tm、Tg、Tm-Tc及びDelta Hcについてのこの組成物中で得られる最終的なポリアミドポリマーの特徴は、既に上記のものと同一である。
【0111】
有利には、前記組成物a)又は前駆体組成物は、
a1)以下:より選択される、n個の反応性末端官能基X’を有する、前記熱可塑性ポリアミドポリマーの少なくとも一つのプレポリマー:-nが1から3、好ましくは1から2、より好ましくは1又は2、より具体的には2である、NH2、-CO2H及び-OH、好ましくはNH2及び-CO2H
a2)少なくとも一つの鎖延長剤Y-A’-Yであって、A’が炭化水素二置換基であり、非ポリマー構造を有し、2つの同一の末端反応性官能基Yを有し、前記プレポリマーa1)の少なくとも一つの官能基X’との重付加により反応性であり、好ましくは500未満、より好ましくは400未満の分子量を有するもの
を含むか又はそれらからなる。
【0112】
前記半結晶性ポリアミドプレポリマーa1)により保持されるX’官能基の機能としての適切な延長剤a2)の例には以下が含まれる:
- X’がNH2又はOH、好ましくはNH2であるとき:
〇鎖延長剤Y-A’-Yは以下のいずれかに対応するか、
■ マレイミド、任意選択的にブロックイソシアネート、オキサジノン、オキサゾリノン及びエポキシの群から選択されるY、
及び
■ A’は、任意選択的に一又は複数のヘテロ原子を含む炭化水素スペーサーであり、Y官能基に結合し、特にA’は、
・Yがオキサジノン及びオキサゾリノンである場合、二つの官能基Y間の共有結合、又は
・脂肪族炭化水素鎖又は芳香族及び/若しくは脂環式炭化水素鎖(後者二つは、置換されていてもよい5又は6個の炭素原子を有する少なくとも一の環を含み、前記脂肪族炭化水素鎖は好ましくは14から400g.mol-1の分子量を有する。)
から選択される、官能基又は反応基Yを有する炭化水素スペーサー又は炭素置換基であり、
○又は、鎖延長剤Y-A’-Yは、カプロラクタム基であるYに相当し、A’は、カルボニルビスカプロラクタムなどのカルボニル置換基であることができ、又はA’は、テレフタロイル又はイソフタロイルであることができ、
・又は、前記鎖延長剤Y-A’-Yは、環状無水物基Yを保持し、好ましくは、この鎖延長剤は、カルボン酸脂環式及び/又は芳香族二無水物から選択され、より好ましくはエチレンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリト酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ヘキサフルオロイソプロピリデンビスフタル酸二無水物、9,9-ビス(トリフルオロメチル)キサンテンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物又はそれらの混合物から選択され、
及び
- X’がCOOHであるとき:
〇前記鎖延長剤Y-A’-Yは、
■ 1,1’-イソ-又はテレ-フタロイル-ビス(2-メチル アジリジン)のような、エポキシ、オキサゾリン、オキサジン、イミダゾリン又はアジリジンの群から選択されるY
■ A’は、上記のような炭素スペーサー(置換基)である、
に相当する。
【0113】
より具体的には、前記延長剤Y-A’-Yにおいて前記官能基Yがオキサジノン、オキサゾリン、オキサジン、オキサゾリン又はイミダゾリンから選択される場合、Y-A’-Yで表される鎖延長剤において、A’はアルキレン、例えば-(CH2)m-(mは1から14、好ましくは2から10の範囲)を表すことができ、又はA’はシクロアルキレン及び/又は置換(アルキル)若しくは非置換のアリーレン、例えばベンゼンアリーレン、例えばo-、m-若しくはp-フェニレン、又はナフタレンアリーレンを表すこともでき、好ましくはA’はアリーレン及び/又はシクロアルキレンである。
【0114】
鎖延長剤Y-A’-Yとしてのカルボニル-又はテレフタロイル-又はイソフタロイル-ビスカプロラクタムの場合、好ましい条件は、溶融時の前記重合及び実装中のカプロラクタムのような副生成物の除去を回避する。
【0115】
Yがブロック化イソシアネート官能基を表す上記の最終的な場合、このブロック化は、イソシアネート官能基のためのブロック化剤、例えばエプシロン-カプロラクタム、メチルエチルケトキシム、ジメチルピラゾール又はマロン酸ジエチルによって得ることができる。
【0116】
同様に、延長剤がプレポリマーP(X’)n(X’=NH2)と反応する二無水物である場合、好ましい条件は、溶融時の重合及び実装中のイミド環形成を回避する。
【0117】
本発明の実装に適した反応性官能基Y=エポキシを有する鎖延長剤の例には、脂肪族、脂環式又は芳香族の置換されていてもよいジエポキシドが含まれる。脂肪族ジエポキシドの例には、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)などのビスフェノールAの芳香族ジエポキシドジグリシジルエーテル及び脂環式ジエポキシドのような脂肪族ジオールのジグリシジルエーテルが含まれる。より一般的には、本発明によるジエポキシドの適切な例には、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)及びその水素化誘導体(脂環式)、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル又はヒドロキノンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、Mn<500のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、Mn<500のポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、Mn<500のポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、Mn<500のビスフェノールAポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、Mn<500のビスフェノールAポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テレフタル酸若しくはエポキシ化ジオレフィン(ジエン)のグリシジルエステルなどのジカルボン酸ジグリシジルエステル又は二重エポキシ化エチレン性不飽和を有する脂肪酸、ジグリシジル1,2シクロヘキサンジカルボキシレート及び列挙されたジエポキシドの混合物が含まれる。
【0118】
本発明の実装に適したオキサゾリン又はオキサジン反応性官能基Yを保持する鎖延長剤の例には、EP0581642の第7ページの「A」、「B」、「C」及び「D」と参照されるもの、それらの調製方法、及びそこに記載される反応の様式を参照できるものが含まれる。この文献での「A」はビスオキサゾリンであり、「B」はビスオキサジンであり、「C」は1,3 フェニレン ビスオキサゾリンであり、「D」は1,4-フェニレン ビスオキサゾリンである。
【0119】
本発明の実測に適したイミダゾリン反応性官能基Yを有する鎖延長剤の例には、EP0739924の第7から8ページ及び第10ぺージの表1で「A」から「F」として記載されるもの、それらの調製方法、及びそこに記載される反応の様式を参照できるものが含まれる。
【0120】
本発明の実装に適した反応性官能基Y=オキサジノン又はオキサゾリノンを有する鎖延長剤の例には、EP0581641の第7から8ページで「A」から「D」として記載されるもの、それらの調製方法、及びそこに記載される反応の様式を参照できるものが含まれる。
【0121】
適切なオキサジノン(6員環)及びオキサゾリノン(5員環)Y基の例には、ベンゾオキサジノン オキサジノン又はオキサゾリノンのY基誘導体が含まれ、スペーサーとして、A’は、ビス-(ベンゾオキサジノン)、ビスオキサジノン及びビスオキサゾリノンである対応するそれぞれの延長剤を有する単一共有結合であり得る。A’はまた、C1からC14、好ましくはC2からC10のアルキレンであり得るが、A’は好ましくはアリーレン、より具体的には(1,2若しくは1,3若しくは1,4位でYで置換された)フェニレン又は(Yで二置換された)ナフタレン基であり得るか、又はA’はシクロアルキレンであり得る。
【0122】
オキサジン(6員環)、オキサゾリン(5員環)及びイミダゾリン(5員環)のようなY官能基に関して、基A’は、A’が単一共有結合であることができ、ビスオキジン、ビスオキサゾリン及びビスイミダゾリンであるそれぞれ対応する延長剤を有して、上記の通りである。A’はまた、C1からC14、好ましくはC2からC10のアルキレンであり得る。置換基A’は、好ましくは、アリーレンであり、より具体的には、(1,2若しくは1,3若しくは1,4位でYで置換された)フェニレン又は(Yで二置換された)ナフタレン置換基又はフタロイル(イソ-又はテレフタロイル)であり得るか、又はA’はシクロアルキレンであり得る。
【0123】
Y=アジリジン(エーテル-O-を-NH-で置き換える酸化エチレンと同等の3個の原子を有する窒素複素環)である場合、置換基A’は、この種類の延長剤の例として1,1’ イソフタロイル-ビス(2-メチルアジリジン)を有するフタロイル(1,1’イソ-又はテレ-フタロイル)であり得る。
【0124】
列挙される二つの共反応物の総重量に対する、0.001から2%、好ましくは0.01から0.5%の範囲のレベルまでの、前記プレポリマーP(X’)nと前記延長剤Y-A’-Yとの間の反応のための触媒の存在は、(重)付加反応を促進させ、それにより生産サイクルを短縮し得る。
【0125】
前記延長剤の選択のより具体的な場合に応じて、A’は、-(CH2)m-(mは1から14、好ましくは2から10の範囲)のようなアルキレンを表し、又はベンゼンアリーレン(o-、m-、-p フェニレン等)又はナフタレン(アリーレンを有して:ナフタレニレン)のようなアルキルで置換された又は置換されていないアリーレンを表す。好ましくは、A’は、ベンゼン又はナフタレンで置換されていても置換されていなくてもよいアリーレンを表す。
【0126】
既に述べたように、前記鎖延長剤(a2)は、非ポリマー構造を有し、好ましくは500以下、より好ましくは400以下の分子量を有する。
【0127】
上記の三つのオプションによれば、前記反応性組成物a)の前記反応性プレポリマーは、500から10000、好ましくは1000から6000の範囲の数平均分子量Mnを有する。すべての質量Mnは電位差測定又はNMRによって決定される(Postma et al. (Polymer, 47, 1899-1911 (2006))。
【0128】
定義a)による本発明の反応性組成物の場合、前記反応性プレポリマーは、対応するジアミンと二酸成分との間の、及び任意選択的に(置換による)アミノ酸又はラクタムの典型的な重縮合反応により調製される。同じ鎖上にX’及びY’アミン及びカルボキシル反応基を保持するプレポリマーは、例えば、合計で同量のアミン及びカルボキシルモチーフを有するが、変換を完了させるための反応は行わないモノマーの組み合わせ(アミノ酸、ジアミン、二酸)を添加することにより、得ることができる。一つの官能基X’及び一つのY’を保持するこれらのプレポリマーを得る別の方法は、出発アミン官能基X’のものに等しい酸官能基のグローバルなモルレベルで、例えば、2つの同一の官能基X’=アミンを担持するプレポリマーと、Y’:カルボキシルを担持する二酸プレポリマーを組み合わせることである。
【0129】
同じ鎖上で同一の官能基(アミン又はカルボキシル)で官能化されたプレポリマーを得るために、過剰のジアミン(又は包括的にアミン官能基)を有するには、末端アミン官能基又は末端カルボキシル官能基を有するために過剰の二酸(又は包括的に、カルボキシル官能基)を有することが十分である。
【0130】
同一のX’官能基であるプレポリマーP(X’)nの場合、官能基1は、単官能基ブロック成分(X’=アミン又はカルボキシルの性質により一酸又はモノアミン)の存在下で得ることができる。
【0131】
官能基n=2は、二官能性成分:ジアミン及び二酸により得ることができ、過剰の一方がその過剰分に応じてX’に結合する。
【0132】
例えばn=3に関して、プレポリマーP(X’)nには、三官能性成分の存在、例えば、二酸との反応におけるジアミンと共に、トリアミン(プレポリマーの鎖当たり1モル)の存在が必要である。P(X’)nの好ましい官能基は、n=2である。
【0133】
有利な実施態様では、本発明は、上記の組成物に関し、前記組成物a)又は前駆体組成物は
a1)n個の反応性末端官能基X’を有する、前記熱可塑性ポリアミドポリマーの少なくとも一つのプレポリマー、及び
a2)少なくとも一つの鎖延長剤Y-A’-Y、
を含むか又はそれからなり、
X’がNH2又はOHであり、特に、NH2及びYが無水物、特にテトラカルボン酸二無水物3,3’,4,4’-ベンゾフェノン、オキサジノン、オキサゾリノン及びエポキシから選択される。
【0134】
有利な実施態様では、本発明は、上記の組成物に関し、前記組成物a)又は前駆体組成物は、
a1)n個の反応性末端官能基X’を有する、前記熱可塑性ポリアミドポリマーの少なくとも一つのプレポリマー、及び
a2)少なくとも一つの鎖延長剤Y-A’-Y、
を含むか又はそれからなり、
X’がCO2Hであり、Yがエポキシ及びオキサゾリンから選択される。
【0135】
有利には、X’はCO2Hであり、Y-A’-Yは、フェニレン ビス オキサゾリン、好ましくは1,3-フェニレン-ビス(2-オキサゾリン)又は1,4-フェニレン-ビス(2-オキサゾリン) (PBO)から選択される。
【0136】
有利な実施態様では、本発明は、上記の組成物であって、該組成物が、
a1)マトリックスの前記熱可塑性ポリマーの少なくとも一つのアミンプレポリマー(-NH2を保持)であって、特に少なくとも50%、より具体的には100%の前記プレポリマーa1)の末端基が第一級アミン官能基-NH2である、少なくとも一つのアミンプレポリマー及び
a2)環状カルボキシル酸無水物基を保持し、好ましくは芳香族環により保持され、置換基として、エチレン又はアセチレン不飽和基、好ましくはアセチレンを含む基を有する少なくとも一つの非ポリマー鎖延長剤であって、前記カルボキシル無水物基が、酸、エステル、アミド又はイミドの形態であり得、前記延長剤a2)が、0.36未満、好ましくは0.1から0.35の範囲、より好ましくは0.15から0.35の範囲、さらにより好ましくは0.15から0.31の範囲のモル比a2)/(-NH2)に相当するレベルで存在する、少なくとも一つの非ポリマー鎖延長剤を含むことと、マトリックスの前記熱可塑性ポリマーが、前記延長剤a2)により前記プレポリマーa1)を延長することによる重合反応の生成物であることとを特徴とする、組成物に関する。
【0137】
成分a1)及びa2)の選択とそれらの特定のモル比による前記反応は、架橋されていない最終的な熱可塑性ポリマーをもたらす。
【0138】
前記プレポリマーa1)は、-NH2で表される第一級アミン基を保持している。より具体的には、プレポリマーa1)の分子当たりの第一級アミン基の平均数、言い換えれば、第一級アミン基の平均官能基は、1から3、好ましくは1から2まで変化し得ることに留意しなければならない。特に、前記プレポリマーa1)の少なくとも50%の末端基の前記プレポリマーa1)の官能基は、第一級アミン官能基-NH2であり、これは、一部が反応基のないカルボキシル基またはブロック化鎖末端基である可能性があり、この場合、平均NH2官能基はそれに応じて1から3、好ましくは1から2まで変化し得る。
【0139】
本発明の場合の用語「熱可塑性」とは、プレポリマーa1)と延長剤a2)の反応から得られるポリマーが、本質的に熱可塑性であることを意味し、これは、該ポリマーが、その重量の15%未満、好ましくはその重量の10%未満、より好ましくはその重量の5%未満、さらにより好ましくはその重量の0%(0.5%以内又は1%以内)の、不溶融性又は不溶性である架橋ポリマーを含有することを意味する。
【0140】
前記延長剤a2)は以下から選択され得る:
- エチニル o-フタル酸、メチルエチニル o-フタル酸、フェニルエチニル o-フタル酸、ナフチルエチニル o-フタル酸、4-(o-フタロイルエチニル) o-フタル酸又は4-(フェニルエチニルケトン) o-フタル酸(最後のものは4-(フェニルエチニル) トリメリットとも呼ばれる)の酸、エステル、アミド又はイミドの形態の無水物及び無水物誘導体、
- エチニルイソフタル酸、メチルエチニルイソフタル酸、フェニルエチニルイソフタル酸、ナフチルエチニルイソフタル酸、4-(o-フタロイルエチニル)イソフタル酸、4-(フェニルエチニルケトン)イソフタル酸、エチニルテレフタル酸、メチルエチニルテレフタル酸、フェニルエチニルテレフタル酸、ナフチルエチニルテレフタル酸、4-(o-フタロイルエチニル)テレフタル酸、エチニル安息香酸、メチルエチニル安息香酸、フェニルエチニル安息香酸、ナフチルエチニル安息香酸、4-(o-フタロイルエチニル)安息香酸の酸又はエステル又はアミド。
【0141】
有利には、前記延長剤a2)は、芳香族無水物化合物、好ましくは、芳香族環の4位でR-C=C-(R’)x-基で定義されている置換基により置換されているo-フタル酸化合物(Rは、C1-C2アルキル又はH又はアリール、特にフェニルであるか、又はRは、芳香族カルボキシル酸無水物の残留物、好ましくは、芳香族環の4位で炭素によりアセチレン三重結合に結合したo-フタル酸であり、xが0又は1に等しく、xが1に等しい場合R’がカルボニル基である)から選択される。
【0142】
有利には、前記延長剤a2)は、メチルエチニル、フェニルエチニル、4-(o-フタロイル)エチニル、フェニルエチニルケトン(フェニルエチニルトリメリット無水物とも呼ばれる)から選択される置換基を4位で保持する、好ましくは、メチルエチニル及びフェニルエチニルケトンから選択される置換基を4位で保持する芳香族o-フタル酸無水物化合物から選択される。
【0143】
有利には、上記のような及びその構造にかかわらず、前記延長剤a2)は、500以下、好ましくは400以下の分子量を有する。
【0144】
有利には、前記延長剤a2)のレベルは、上記のような及びその構造にかかわらず、前記ポリアミドポリマー中で1から20%、好ましくは5から20%変化する。
【0145】
有利な実施態様では、本発明は、成形組成物であることを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0146】
別の特徴によれば、本発明は、上記の組成物を有する、熱可塑性材料、特に前記材料を含有する機械部品又は構造部品、の製造方法であって、本発明により上記の少なくとも一つの反応性組成物a)を重合する少なくとも一つの工程、又は押出、射出又は成形により、上記で定義されるような少なくとも一つの非反応性組成物b)を成形又は実装する工程を含むことを特徴とする、製造方法に関する。
【0147】
有利な実施態様では、本発明は、上記の熱可塑性材料のための製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする、製造方法に関する。
i)開放若しくは密閉鋳型中で、又は鋳型を使用せずに、任意選択的に繊維補強が存在しない、上記の組成物を射出する工程、
ii)上記の反応性ポリアミド組成物a)の場合、鎖延長を伴い工程i)からの前記組成物を加熱することにより、場合に応じて溶融時にバルクでの重縮合反応又は重付加反応により、任意選択的に重縮合の場合、真空下で抽出システムを使用した、密閉鋳型であるときは真空下での縮合生成物の除去を伴い、そうでない場合、好ましくは重縮合を開放鋳型中又は鋳型なしで実施する、重合反応、
iii)非反応性ポリアミド組成物b)の場合は、工程i)からの前記組成物を実装又は成形して、鋳型中に又は別の実装システムを用いて最終部品を形成する工程、反応性組成物a)の場合は、成形により又は別の実装システムにより、重合工程ii)と同時に、実装する工程。
【0148】
別の特徴によれば、本発明は、上記の前記熱可塑性材料の熱可塑性マトリックスのポリマーに相当する(又はポリマーである)、半結晶性ポリアミドポリマーであって、前記ポリマーが、前記組成物b)による上記の非反応性ポリマー又は前記組成物a)による上記の反応性組成物から得ることができるポリマーであることを特徴とする、半結晶性ポリアミドポリマーに関する。
【0149】
この熱可塑性ポリマーは、定義により、本発明の熱可塑性材料の組成物の必須成分の一つであり、したがって、同じ技術的問題の解決に直面する同じ共通の発明概念を有する本発明に結合した製品として本発明の一部である。したがって、本発明は、上記の繊維補強を含有する熱可塑性材料のための熱可塑性マトリックスとしての本発明による前記熱可塑性ポリマーの使用も対象とする。
【0150】
さらに別の特徴によれば、本発明は、前記熱可塑性材料を含有する機械部品又は構造部品、単層若しくは多層管又はフィルムの製造のための、上記の組成物又は前記組成物b)による上記の非反応性ポリマー又は上記の組成物a)による反応性組成物から得ることができるポリマーの使用に関する。
【0151】
有利な実施態様では、本発明は、前記熱可塑性材料の前記機械部品又は構造部品が、自動車、鉄道、海洋(海上)、風力、光起電、太陽光発電(太陽光発電プラント用のソーラーパネル及び部品を含む)、スポーツ、航空宇宙、道路輸送(トラックに関連)、建設、土木、標識及びレジャーの領域における用途に関することを特徴とする、上記の使用に関する。
【0152】
別の特徴によれば、本発明は、上記の少なくとも一つの組成物の使用によって生じる熱可塑性材料に関する。
【0153】
別の有利な実施態様では、本発明は、自動車の用途の前記機械部品が、燃料又は流体、特に油、水等の輸送又は移送のための、特に吸気、冷却(例えば空気又は冷却液体等による)のための装置における流体の輸送のためのアンダーフード部品であることを特徴とする、上記の使用に関する。
【0154】
さらに別の有利な実施態様では、本発明は、電気又は電子の用途の前記機械部品又は構造部品が、カプセル化ソレノイド、ポンプ、電話機、コンピュータ、プリンタ、ファクス、モデム、モニタ、リモートコントロール、カメラ、回路遮断器、電気ケーブルの保護管、光ファイバー、スイッチ、マルチメディアシステムなどの電気及び電子機器のための物品であることを特徴とする、上記の使用に関する。
【0155】
列挙した特徴の決定方法
- 固有の粘度はm-クレゾール中で測定される。本方法は、当業者によく知られている。ISO規格307:2007に従うが、溶媒を変更する(硫酸の代わりにm-クレゾールを使用し、温度は20℃である)。
- ガラス転移温度Tgは、ISO規格11357-2:2013に従って、第2の加熱パスの後で、示差走査熱量測定器(DSC)を使用して測定される。加熱及び冷却速度は、20℃/分である。
- 溶融温度Tm及び結晶化温度Tcは、ISO規格11357-3:2013に従って、DSCにより測定される。加熱及び冷却速度は、20℃/分である。
- 前記ポリマーマトリックスの結晶化エンタルピーは、ISO規格11357-3:2013に従って、示差走査熱量測定(DSC)を使用して測定される。
【実施例】
【0156】
A-直接的な方法による(鎖延長を使用しない)ポリアミドポリマーの調製
以下の手順は調製方法の一例であり、限定的なものではない。本発明による全組成物の代表例である:
【0157】
14リットルのオートクレーブ反応器に、5kgの以下の原料を添加する:
- 500gの水、
- ジアミン、
- アミノ酸(任意)、
- テレフタル酸、任意選択的に一又は複数の他の二酸、
- 単官能鎖調節剤:目標のMnに適した量且つ50から100gで変化する安息香酸、
- 溶液中35gの次亜リン酸ナトリウム、
- 0.1gのWACKER AK1000消泡剤(Wacker Siliconesより)。
【0158】
ポリアミドの分子モチーフと構造の性質及びモル比(試験ごとに参照)を以下の表IIIに示す。
【0159】
密閉された反応器の残留酸素をパージし、その後、添加された材料に対して230℃の温度に加熱する。これらの条件で30分間撹拌した後、反応器中圧力下で形成された蒸気を60分にわたって次第に緩和させる一方、材料の温度を次第に上昇させて、大気圧下でTm+10℃となるようにした。
【0160】
その後、特性の表に示されている目標質量Mnが得られるまで、20L/hの窒素パージ下で重合を続ける。
【0161】
その後、ポリマーを底弁を通じて空にし、その後水浴中で冷却し、その後顆粒に成形する。
【0162】
結果を以下の表III-IVに示す。これらは、75/25mol%のシス/トランス比を有する1,3 BACから得た。
【0163】
表IIIの結果は、BACTのモル分率が15から90mol%の場合、溶融温度が290℃から340℃(好ましくは300℃から340℃)であることを示している。
同じ期間では、Tgは>130℃の高さである。
表IV
【0164】
表IVの結果は、BAC又は6Tモチーフの全置換が、Tm、Tg、Tm-Tc及びデルタHcの必要な値の少なくとも一つを有しない組成物をもたらすことを示している。