(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】指向性制御装置および指向性制御システム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/08 20060101AFI20231011BHJP
H01Q 3/26 20060101ALI20231011BHJP
H01Q 1/32 20060101ALI20231011BHJP
H04B 7/06 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H04B7/08 600
H01Q3/26 Z
H01Q1/32 Z
H04B7/08 810
H04B7/06 960
(21)【出願番号】P 2020005776
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】金森 勝美
(72)【発明者】
【氏名】木村 恒人
(72)【発明者】
【氏名】松下 健治
(72)【発明者】
【氏名】古橋 杏子
(72)【発明者】
【氏名】國方 翔太
(72)【発明者】
【氏名】國立 忠秀
(72)【発明者】
【氏名】小林 健太郎
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-088509(JP,A)
【文献】特開2019-170036(JP,A)
【文献】特開2006-311150(JP,A)
【文献】特開2015-130578(JP,A)
【文献】特開2007-060045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/08
H01Q 3/26
H01Q 1/32
H04B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されたアレーアンテナの指向性を制御する装置であって、
前記アレーアンテナと無線通信する対象アンテナに対する、前記アレーアンテナの指向性を制御する周期を決定する制御部
と、
前記移動体に対する前記対象アンテナの相対位置を検出する相対位置検出部と、を備え、
前記周期は、前記移動体の移動状態に対応して変化
し、
前記制御部は、前記相対位置検出部によって検出された前記移動体に対する前記対象アンテナの相対位置、および、前記移動体の移動方向から、前記アレーアンテナと前記対象アンテナとの角速度を演算し、前記角速度が大きくなるほど、前記周期を短く設定する指向性制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記アレーアンテナに含まれるアンテナの指向特性を角度によって示す特性値を単位時間当たりの変化量とした値を、前記角速度の閾値に設定し、前記角速度が前記閾値を超える場合の前記周期を、前記角速度が前記閾値以下の場合の前記周期よりも前記周期の長さが短いように設定する請求項
1に記載の指向性制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記角速度が前記閾値を超える場合にさらに少なくとも1つ以上の他の閾値を設定し、前記角速度が前記閾値以下の場合にもさらに少なくとも1つ以上の別の閾値を設定し、前記閾値と前記他の閾値との間の間隔は、前記閾値と前記別の閾値との間の間隔よりも短いように設定する請求項
2に記載の指向性制御装置。
【請求項4】
前記閾値を超える前記少なくとも1つ以上の他の閾値の個数は、前記閾値以下の前記少なくとも1つ以上の別の閾値の個数よりも多い請求項
3に記載の指向性制御装置。
【請求項5】
移動体に搭載されたアレーアンテナの指向性を制御する装置であって、
前記アレーアンテナと無線通信する対象アンテナに対する、前記アレーアンテナの指向性を制御する周期を決定する制御部と、
前記移動体の操舵角度を検出する操舵角センサ部
と、を備え、
前記周期は、前記移動体の移動状態に対応して変化し、
前記制御部は、前記操舵角センサ部によって検出された前記移動体の操舵角度を演算し、前記操舵角度の大きさに基づいて、前記周期を変化させる指向性制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記操舵角度が大きいほど、前記周期を短く設定する請求項
5に記載の指向性制御装置。
【請求項7】
前記移動体の移動速度を検出する車速センサ部を含み、
前記制御部は、前記車速センサ部によって検出された前記移動体の速度を演算し、前記速度の大きさに基づいて、前記操舵角度によって設定された前記周期をさらに変化させる請求項
5または
6に記載の指向性制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記速度が大きいほど、前記操舵角度によって設定された前記周期をさらに短く設定する請求項
7に記載の指向性制御装置。
【請求項9】
請求項1から請求項
8のいずれか一項に記載の指向性制御装置は車両に搭載され、前記無線通信する通信データは前記車両に備えられる電子機器のデータであり、前記通信データを送受信する前記対象アンテナを備える無線装置を含む指向性制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指向性制御装置および指向性制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のように移動しながら無線データを送受信する場合には、絶えず送受信状態が変化するため、複数のアンテナを設け、その時点において最も受信状態の良好なアンテナを適宜選択して切り換えていくアンテナシステム及びその制御装置が従来から提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、送信位置PTとナビゲーションシステムから得られる自車位置Pnとに基づいて、自車位置からの送信所位置ベクトルrを算出するとともに、順次入力される自車位置Pnに基づいて、自車走行ベクトルvを算出する。次いで、送信所位置ベクトルrに基づいて自車位置からの送信所角度θ2を算出するとともに、自車走行ベクトルvに基づいて自車走行角度θ1を算出する。算出された送信所角度θ2と自車走行角度θ1とに基づいて、自車走行方向から見た送信所方向θを算出する。算出された送信所方向θに最も近いビームを有する指向性アンテナを選択して後段の受信回路に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、車両の走行状態に応じて最適な周期でアンテナ制御を行う構成ではないために、通信品質が劣化する場合があり、また、アンテナ制御処理が過剰に行われることによる消費電力の増大を防止することができない場合もある。
【0006】
例えば、特許文献1の構成によれば、車両の走行状態に対応せずに一定周期でアンテナ制御が行われるため、アンテナ制御タイミングが遅れて通信品質が低下したり、アンテナ制御処理が過剰に行われ、装置の消費電力が増大したりする恐れがあるという課題がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、車両の走行状態に応じて最適な周期でアンテナ制御を行うことで通信品質の劣化を防止するとともに、アンテナ制御処理が過剰に行われることによる装置の消費電力の増大を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様に係る指向性制御装置は、移動体に搭載されたアレーアンテナの指向性を制御する装置であって、前記アレーアンテナと無線通信する対象アンテナに対する、前記アレーアンテナの指向性を制御する周期を決定する制御部を備え、前記周期は、前記移動体の移動状態に対応して変化することが好ましい。
【0009】
前記移動体に対する前記対象アンテナの相対位置を検出する相対位置検出部をさらに備え、前記制御部は、前記相対位置検出部によって検出された前記移動体に対する前記対象アンテナの相対位置、および、前記移動体の移動方向から、前記アレーアンテナと前記対象アンテナとの角速度を演算し、前記角速度が大きくなるほど、前記周期を短く設定することが好ましい。
【0010】
前記制御部は、前記アレーアンテナに含まれるアンテナの指向特性を角度によって示す特性値を単位時間当たりの変化量とした値を、前記角速度の閾値に設定し、前記角速度が前記閾値を超える場合の前記周期を、前記角速度が前記閾値以下の場合の前記周期よりも前記周期の長さが短いように設定することが好ましい。
【0011】
前記制御部は、前記角速度が前記閾値を超える場合にさらに少なくとも1つ以上の他の閾値を設定し、前記角速度が前記閾値以下の場合にもさらに少なくとも1つ以上の別の閾値を設定し、前記閾値と前記他の閾値との間の間隔は、前記閾値と前記別の閾値との間の間隔よりも短いように設定することが好ましい。
【0012】
前記閾値を超える前記少なくとも1つ以上の他の閾値の個数は、前記閾値以下の前記少なくとも1つ以上の別の閾値の個数よりも多いことが好ましい。
【0013】
前記移動体の操舵角度を検出する操舵角センサ部を含み、前記制御部は、前記操舵角センサ部によって検出された前記移動体の操舵角度を演算し、前記操舵角度の大きさに基づいて、前記周期を変化させることが好ましい。
【0014】
前記制御部は、前記操舵角度が大きいほど、前記周期を短く設定することが好ましい。
【0015】
前記移動体の移動速度を検出する車速センサ部を含み、前記制御部は、前記車速センサ部によって検出された前記移動体の速度を演算し、前記速度の大きさに基づいて、前記操舵角度によって設定された前記周期をさらに変化させることが好ましい。
【0016】
前記制御部は、前記速度が大きいほど、前記操舵角度によって設定された前記周期をさらに短く設定することが好ましい。
【0017】
本発明の他の態様に係る指向性制御システムにおいて、指向性制御装置は車両に搭載され、前記無線通信する通信データは前記車両に備えられる電子機器のデータであり、前記通信データを送受信する前記対象アンテナを備える無線装置を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両の走行状態に応じて最適な周期でアンテナ制御を行うことで通信品質の劣化を防止するとともに、アンテナ制御処理が過剰に行われることによる装置の消費電力の増大を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る指向性制御装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る指向性制御装置が搭載された車両と通信相手装置との相対角度ARの一例を示す模式図である。
【
図3】
図1に係る指向性制御装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図4】(a)本実施形態に係る指向性制御装置が搭載された車両の走行状態と通信相手装置としての基地局のアンテナとの位置関係の一例を示す模式図である。(b)本実施形態に係る指向性制御装置が搭載された車両と基地局のアンテナとの相対角度を示す模式図である。
【
図5】本実施形態に係る指向性制御装置の制御周期の閾値を設定する一例を示す模式図である。
【
図6】本実施形態に係る指向性制御装置の制御周期の閾値を設定する他の一例を示す模式図である。
【
図7】本実施形態に係る指向性制御装置の制御周期の閾値を設定するその他の一例を示す模式図である。
【
図8】本実施形態に係る指向性制御装置の他の一例を示すブロック図である。
【
図9】本実施形態に係る指向性制御装置が搭載された車両の走行状態と通信相手装置としての基地局のアンテナとの位置関係の他の一例を示す模式図である。
【
図10】
図8に係る指向性制御装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図11】本実施形態に係る指向性制御装置が搭載された車両のステアリングの舵角と回転半径の関係の一例を示す図である。
【
図12】本実施形態に係る指向性制御装置の舵角閾値を設定する一例を示す模式図である。
【
図13】本実施形態に係る指向性制御装置の舵角閾値を設定する他の一例を示す模式図である。
【
図14】
図3のフローチャートのステップS304の詳細の一例を示すフローチャートである。
【
図15】
図10のフローチャートのステップS1003およびステップS1004の詳細の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本実施形態に係る指向性制御装置について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なることがある。
【0021】
(指向性制御装置の動作例)
【0022】
本実施形態に係わる指向性制御装置は車両等の移動体に搭載されることができる。この場合には、送信端末が送信する通信データは、移動体の状況を検知するセンサの情報、移動体を制御する情報、移動体に搭載された電子機器の情報等の情報である場合がある。指向性制御装置はアレーアンテナの指向性を移動体の移動状態に対応した周期で調整することを特徴とする。
【0023】
図1~
図7を参照して本実施形態に係る指向性制御装置の動作例について説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る指向性制御装置の一例のブロック図である。
【0025】
本実施形態に係る指向性制御装置は、アレーアンテナ110、RF部120、ベースバンド部130、制御部140、相対位置検出部150および記憶部160を含んで構成される。
【0026】
アレーアンテナ110は複数のアンテナエレメントを配列したものである。アレーアンテナ110は、各アンテナエレメントの励振信号の位相や振幅を制御することによって所望の指向性を得ることが可能である。
【0027】
RF部120はアレーアンテナ110から受信した受信信号から必要な周波数帯域の信号を抽出し、ベースバンド信号への変換を実行する。また、RF部120はベースバンド部130において生成された送信ベースバンド信号を無線通信で使用する高周波数帯域へ変換するとともに、送信ベースバンド信号の振幅を増幅する。
【0028】
ベースバンド部130は、通信データの変復調処理、誤り制御、および、メディアアクセス制御等を実行する。また、ベースバンド部130は、制御部140から入力される制御パラメータに基づきアレーアンテナの指向性制御を実行する。
【0029】
制御部140は、相対位置検出部150が検出した通信相手となる装置の自車両に対する相対位置に基づいて、アンテナ指向性の制御パラメータと制御タイミングを決定する。制御タイミングの詳細については後述する。
【0030】
相対位置検出部150は、自車両に対して通信相手となる装置の相対位置を検出する。相対位置検出部150の一例には、GPSやジャイロ及び地図データに基づき通信相手との相対位置を検出可能な車両用ナビゲーション装置等の装置が挙げられる。
【0031】
図2に自車両と無線通信を実行している通信相手となる装置との相対角度の模式図を示す。自車両に搭載された相対位置検出部150は、通信相手となる装置の位置情報を通信相手となる装置から受信し、自車両の位置情報および進行方向情報をGPSやジャイロ及び地図データに基づき演算する。次に、相対位置検出部150は、通信相手となる装置の位置情報、並びに、自車両の位置情報および進行方向情報から通信相手となる装置との相対角度ARを演算する。
【0032】
(指向性制御装置の動作例のフローチャート)
以上の構成を有する指向性制御装置100の動作例のフローチャートについて
図3を用いて説明する。
【0033】
本実施形態に係るフローチャートでは、車両に搭載された装置(車載器)と車外に設置された装置(基地局)間の無線通信を想定する。車両に搭載された車載器は
図1に示す構成を含み、アレーアンテナ110の指向性は任意に制御可能な構成となっている。アレーアンテナ110の指向性は、例えば、通信相手との相対位置検出部より得られる
図2に示す通信相手との位置情報によって演算される単位時間当たりの相対角度ARの変化に基づき決定される。すなわち、アレーアンテナの指向性を制御するタイミングを通信相手との相対位置検出部150によって取得される通信相手との相対角度ARの変化速度である角速度ωに基づき適応的に変化させることを特徴とする。
【0034】
次に、本実施形態に係るフローチャートの詳細を説明する。
【0035】
ステップS301において、制御部140は
図3に示すように、まず、通信相手との相対位置検出部150より得られる通信相手との相対角度ARn(nは1以上の自然数)を周期的に取得する。ここで、周期は、車載器と基地局との間の通信データの最小データ伝送時間である場合がある。また、周期は、通信データの最小データ伝送時間を正の整数で除算した時間である場合がある。周期を上述のような時間に設定することによって、アレーアンテナの指向性を適切なタイミングで制御し、通信データが未通信となる確率を低減することが可能になる。次に、指向性制御装置100はステップS302に進む。
【0036】
ステップS302において、制御部140は周期的に取得した相対角度ARnを記憶部160に記憶する。次に、指向性制御装置100はステップS303に進む。
【0037】
ステップS303において、制御部140は、最小データ伝送時間を単位とした時間間隔毎、または、最小データ伝送時間を正の整数で除算した時間間隔毎に相対角度ARnとARn-1の差分から、相対角度の変化速度である角速度ωを演算する。次に、指向性制御装置100はステップS304に進む。
【0038】
ステップS304において、制御部140は、角速度ωとあらかじめ定められた閾値との大きさを比較する。角速度ωがあらかじめ定められた閾値のどの範囲に含まれるかによって、指向性制御周期を決定する(この処理をBSP決定処理と称する場合がある)。次に、指向性制御装置100はステップS301に戻る。
【0039】
(指向性制御周期を決定するための閾値の設定例)
次にBSP決定処理における、指向性制御周期を決定するための閾値の設定について事例を挙げて説明する。
【0040】
例えば、
図4に示すような高速道路上の路車間通信システムへの適用を想定する。ここで、閾値を設定するために、車載アレーアンテナは車両の車幅方向の中央に配置され、路側アンテナは車線中央から5mの路肩に設置されている場合を一例として想定する。車両は高速道路の法定時速100km/h(定速)で走行し、最小データ伝送時間間隔を100msとして路車間通信が行われると想定する。
【0041】
図5に車載アレーアンテナの半値角を40度と想定した場合の走行位置に対する相対方位角の変化速度(角速度:deg/100ms)と閾値の設定例を示す。
図5において横軸は、走行している車両と路側アンテナとの相対的な位置関係を示し、走行位置が0mの位置において、車両の真横に路側アンテナが位置する状態を示す。走行位置が0mにおいて、角速度は約53(deg/100ms)となり、走行位置が±4mの位置において、角速度は約20(deg/100ms)となる。
【0042】
図5の実施例では、車載アレーアンテナ半値角の1/2の相対方位角の変化速度である20(deg/100ms)を閾値と設定し、閾値を超える場合を高速制御周期、閾値以下の場合を低速制御周期とする例を示している。すなわち、ステップS303において演算した角速度が20(deg/100ms)を超える場合には、アレーアンテナ110の制御周期を高速に設定し、角速度が20(deg/100ms)以下の場合には、アレーアンテナ110の制御周期を低速に設定する。
【0043】
ここで、高速および低速との用語は特定の数値または数値範囲を示す用語ではない。すなわち、角速度が20(deg/100ms)を超える場合には、アレーアンテナ110の制御周期は、角速度が20(deg/100ms)以下の場合に比べて短いことを高速と称する。また、角速度が20(deg/100ms)以下の場合には、アレーアンテナ110の制御周期は、角速度が20(deg/100ms)を超える場合に比べて長いことを低速と称する。このように、車載アレーアンテナ半値角の1/2をアレーアンテナの制御周期の閾値とすることによって、角速度が速い場合には制御周期を高速、つまり、制御周期を短くすることによって通信品質を良好に維持することが可能になる。また、角速度が遅い場合には制御周期を低速、つまり、制御周期を長くすることによってアレーアンテナを制御するための消費電力を低減することが可能になる。
【0044】
特に、角速度が20(deg/100ms)を超えると、走行距離に対する角速度の変化が大きくなるので、さらに、制御周期を細かく区分する必要がある場合がある。このような場合には、
図6および
図7に説明するように、特に、高速制御周期を細分化することによって、制御周期を適切に設定することが可能になる。
【0045】
図6の実施例は、
図5の実施例と同様に、
図4に示すような高速道路上の路車間通信システムへの適用を想定している。ここで、閾値を設定するために、車載アレーアンテナは車両の車幅方向の中央に配置され、路側アンテナは車線中央から5mの路肩に設置されている場合を一例として想定している。車両は高速道路の法定時速100km/h(定速)で走行し、最小データ伝送時間間隔を100msとして路車間通信が行われると想定する。
【0046】
そして、
図6の実施例では、
図5の実施例に比較して、車載アンテナ半値角の1/2の相対方位角の変化速度の上下の領域をさらに等角速度間隔で分割することによって、より細かなアンテナ制御を行う場合の閾値設定例を示す。例えば、角速度間隔を10(deg/100ms)とすると、閾値は20(deg/100ms)を基準にして10(deg/100ms)間隔で設定される。すなわち、閾値は
図6に示されるように、50(deg/100ms)、40(deg/100ms)、30(deg/100ms)、20(deg/100ms)、10(deg/100ms)に設定される。角速度が20(deg/100ms)から0(deg/100ms)までの間にある場合には、アレーアンテナ110の制御周期を低速に設定する。また、角速度が20(deg/100ms)から最高角速度である53(deg/100ms)までの間にある場合には、アレーアンテナ110の制御周期を高速に設定する。
【0047】
角速度が車載アレーアンテナ半値角の1/2よりも大きくなると、通信品質の劣化の程度が大きくなるので、速やかに、車載アンテナの指向性を変更する必要がある。したがって、角速度が車載アンテナ半値角の1/2よりも大きくなる場合には、アレーアンテナの制御周期を短くする必要がある。また、角速度が、車載アンテナ半値角の1/2よりも小さくなるほど、通信品質の劣化の程度が小さくなるので、アレーアンテナの制御周期をより長くして、アレーアンテナを制御するための消費電力を低減することが可能になる。
【0048】
例えば、
図6に示されるように、角速度が20(deg/100ms)を超える場合には、アレーアンテナの制御周期を高速に設定する。そして、角速度が30(deg/100ms)から40(deg/100ms)までの間にある場合の制御周期は、角速度が20(deg/100ms)から30(deg/100ms)までの間にある場合の制御周期よりも短く設定する。また、角速度が40(deg/100ms)から50(deg/100ms)までの間にある場合の制御周期は、角速度が30(deg/100ms)から40(deg/100ms)までの間にある場合の制御周期よりも短く設定する。さらに、角速度が50(deg/100ms)を超える場合の制御周期は、角速度が40(deg/100ms)から50(deg/100ms)までの間にある場合の制御周期よりも短く設定する。このように角速度が、車載アンテナ半値角の1/2よりも大きくなるほど、アレーアンテナの制御周期をより短く、つまり、アレーアンテナの制御周期をより高速にすることによって、通信を維持、および、通信品質の劣化を低減することが可能になる。
【0049】
また、角速度が車載アンテナ半値角の1/2よりも小さい場合には、通信品質が維持される可能性が高いので、消費電力を低減するために、アレーアンテナの制御周期を低速にする。例えば、
図6のように、角速度が10(deg/100ms)から0(deg/100ms)までの間にある場合の制御周期は、角速度が20(deg/100ms)から10(deg/100ms)までの間にある場合の制御周期よりも遅く、低速に設定する。
【0050】
さらに、
図7の実施例も、
図5および
図6の実施例と同様に、
図4に示すような高速道路上の路車間通信システムへの適用を想定している。ここで、閾値を設定するために、車載アンテナは車両の車幅方向の中央に配置され、路側アンテナは車線中央から5mの路肩に設置されている場合を一例として想定している。車両は高速道路の法定時速100km/h(定速)で走行し、最小データ伝送時間間隔を100msとして路車間通信が行われると想定する。
【0051】
そして、
図7の実施例では、
図6の実施例に比較して、車載アンテナ半値角の1/2の相対方位角の変化速度を超える場合の閾値間隔を、半値角の1/2の相対方位角の変化速度以下の閾値間隔に対して小さくする場合の閾値設定例を示す。
【0052】
例えば、閾値は50、45、40、35、30、25、20、10(deg/100ms)に設定される。このように、車載アンテナ半値角の1/2の相対方位角の変化速度を超える場合の閾値間隔を細かく設定することによって、車両が高速で走行している場合にも、路車間通信を維持し、通信品質の劣化を抑制することが可能になる。
【0053】
具体的には、
図7に示されるように、角速度が20(deg/100ms)を超える場合には、アレーアンテナ110の制御周期を高速に設定する。そして、角速度が25(deg/100ms)から30(deg/100ms)までの間にある場合の制御周期は、角速度が20(deg/100ms)から25(deg/100ms)までの間にある場合の制御周期よりも短く設定する。さらに、角速度が30(deg/100ms)から35(deg/100ms)までの間にある場合の制御周期は、角速度が25(deg/100ms)から30(deg/100ms)までの間にある場合の制御周期よりも短く設定する。さらに、角速度が35(deg/100ms)から40(deg/100ms)までの間にある場合の制御周期は、角速度が30(deg/100ms)から35(deg/100ms)までの間にある場合の制御周期よりも短く設定する。さらに、角速度が40(deg/100ms)から45(deg/100ms)までの間にある場合の制御周期は、角速度が35(deg/100ms)から40(deg/100ms)までの間にある場合の制御周期よりも短く設定する。さらに、角速度が50(deg/100ms)を超える場合の制御周期は、角速度が45(deg/100ms)から50(deg/100ms)までの間にある場合の制御周期よりも短く設定する。
【0054】
また、
図6の実施例と同様に、
図7の実施例においても、角速度が車載アンテナ半値角の1/2よりも小さい場合には、通信品質が維持される可能性が高いので、消費電力を低減するために、アレーアンテナ110の制御周期を低速にする。例えば、
図7のように、角速度が10(deg/100ms)から0(deg/100ms)までの間にある場合の制御周期は、角速度が20(deg/100ms)から10(deg/100ms)までの間にある場合の制御周期よりも遅く、低速に設定する。
【0055】
このように、角速度が車載アンテナ半値角の1/2よりも小さい場合に比べて、角速度が車載アンテナ半値角の1/2よりも大きい場合に、アレーアンテナ110の制御周期を細分化することで、路車間通信を維持し、通信品質の劣化を抑制することが可能になる。また、角速度が車載アンテナ半値角の1/2よりも大きい場合に比べて、角速度が車載アンテナ半値角の1/2よりも小さい場合に、閾値間隔を大きくすることで、アレーアンテナ110の制御頻度を低減し、消費電力を低減することが可能になる。
【0056】
次に、ステップS304の指向性制御周期BSPを決定する処理の一例について、
図14に基づいて説明する。
図14のステップS304において判断されている閾値は
図6の角速度に基づいている。
【0057】
ステップS304aにおいて、角速度が
図6の角速度の閾値th1よりも大きいか否かが判定される。角速度が
図6の角速度の閾値th1よりも大きい場合(ステップS304a:YES)には、ステップS304bに進む。角速度が
図6の角速度の閾値th1以下の場合(ステップS304a:NO)には、ステップS304cに進む。
【0058】
ステップS304bにおいて、指向性制御周期BSPを最小周期である周期1に決定する。最小周期とはステップS304の中の指向性制御周期BSPの中でもっとも周期が短いことを示す。次に、指向性制御装置100はステップS301に進む。
【0059】
ステップS304cにおいて、角速度が
図6の角速度の閾値th2よりも大きいか否かが判定される。角速度が
図6の角速度の閾値th2よりも大きい場合(ステップS304c:YES)には、ステップS304dに進む。角速度が
図6の角速度の閾値th2以下の場合(ステップS304b:NO)には、ステップS304eに進む。なお、角速度が
図6の角速度の閾値th3および閾値th4の場合の処理フローについては省略する。
【0060】
ステップS304dにおいて、指向性制御周期BSPを最小周期である周期1の次に短い周期2に決定する。次に、指向性制御装置100はステップS301に進む。
【0061】
ステップS304eにおいて、角速度が
図6の角速度の閾値th5よりも大きいか否かが判定される。角速度が
図6の角速度の閾値th5よりも大きい場合(ステップS304c:YES)には、ステップS304fに進む。角速度が
図6の角速度の閾値th5以下の場合(ステップS304e:NO)には、ステップS304gに進む。
【0062】
ステップS304fにおいて、指向性制御周期BSPを最大周期である周期nの次に長い周期n-1に決定する。最大周期とはステップS304の中の指向性制御周期BSPの中でもっとも周期が長いことを示す。次に、指向性制御装置100はステップS301に進む。
【0063】
ステップS304gにおいて、指向性制御周期BSPを最大周期である周期nに決定する。次に、指向性制御装置100はステップS301に進む。
【0064】
(変形例)
次に、変形例の構成について
図8~
図13を参照して説明する。
【0065】
図8に示すように、指向性制御装置200は、アレーアンテナ110、RF部120、ベースバンド部130、制御部140、相対位置検出部150、車速センサ部170および操舵角センサ部180を含んで構成される。
【0066】
アレーアンテナ110は複数のアンテナエレメントを配列したものである。アレーアンテナは、各アンテナエレメントの励振信号の位相や振幅を制御することによって所望の指向性を得ることが可能である。
【0067】
RF部120はアレーアンテナから受信した受信信号から必要な周波数帯域の信号を抽出し、ベースバンド信号への変換を実行する。また、RF部はベースバンド部において生成された送信ベースバンド信号を無線通信で使用する高周波数帯域へ変換するとともに、送信ベースバンド信号の振幅を増幅する。
【0068】
ベースバンド部130は、通信データの変復調処理、誤り制御、および、メディアアクセス制御等を実行する。また、ベースバンド部130は、制御部140から入力される制御パラメータに基づきアレーアンテナの指向性制御を実行する。
【0069】
制御部140は、相対位置検出部150が検出した通信相手との相対位置、走行速度、ステアリング操舵角度に基づきアンテナ指向性の制御パラメータと制御タイミングを決定する。制御タイミングの詳細については後述する。
【0070】
相対位置検出部150は、自車両に対して通信相手となる装置の相対位置を検出する。相対位置検出部150の一例には、GPSやジャイロ及び地図データに基づき通信相手との相対位置を検出可能な車両用ナビゲーション装置が挙げられる。
【0071】
車速センサ部170は自車両の走行速度を検出する。
【0072】
操舵角センサ部180は自車両のステアリングの操舵角度(切り込み角:舵角)を検出する。
【0073】
(指向性制御装置の動作例のフローチャート)
以上の構成を有する指向性制御装置200の動作例のフローチャートについて
図10を用いて説明する。
【0074】
本実施形態に係るフローチャートでは、車両に搭載された装置(車載器)と車外に設置された装置(基地局)間の無線通信を想定する。車両に搭載された車載器は
図8に示すような構成であり、アレーアンテナ110の指向性は任意に制御可能な構成となっている。アレーアンテナ110の指向性は例えば、通信相手との相対位置検出部150より得られる
図3に示す通信相手との位置情報(相対角度AR)等に基づき決定される。本実施例では、アレーアンテナ110の指向性を制御するタイミングを車速センサ部170から得られる自車両の車速V、操舵角センサ部180から得られる舵角Aに基づき適応的に変化させることを特徴とする。具体的には、制御部140は、まず、車速センサ部170より得られる自車両の走行速度、操舵角センサ部180より得られるステアリングの操舵角度(切り込み角:舵角)を周期的に収集する。次に収集した自車両の速度DSとステアリングの操舵角度(切り込み角:舵角)SAを記憶部160に記録する。その後、記録したステアリングの操舵角度(切り込み角:舵角)SAの大きさから基本指向性制御周期BBSP(Basic BSP)を決定する。さらに、自車両の速度DSに対応する係数を基本指向性制御周期BBSPに乗算して指向性制御周期BSPを決定する。
【0075】
次に、本実施形態に係るフローチャートの詳細を説明する。
【0076】
ステップS1001において、制御部140は
図8に示すように、車速センサ部170より得られる自車両の速度DS、操舵角センサ部180より得られるステアリングの操舵角度(切り込み角:舵角)SAを周期的に取得する。ここで、周期は、車載器と基地局との間の通信データの最小データ伝送時間である場合がある。また、周期は、通信データの最小データ伝送時間を正の整数で除算した時間である場合がある。周期を上述のような時間に設定することによって、アレーアンテナ110の指向性を適切なタイミングで制御し、通信データが未通信となる確率を低減することが可能になる。次に、指向性制御装置200はステップS1002に進む。
【0077】
ステップS1002において、制御部140は周期的に取得した自車両の速度DS、ステアリングの操舵角度(切り込み角:舵角)SAを記憶部160に記憶する。次に、指向性制御装置200はステップS1003に進む。
【0078】
ステップS1003において、制御部140は、ステアリングの操舵角度(切り込み角:舵角)SAの大きさから基本指向性制御周期BBSPを決定する(この処理をBBSP決定処理と称する場合がある)。ステアリングの操舵角度(切り込み角:舵角)SAが大きいほど、基本指向性制御周期BBSPは小さくなる。操舵角度(切り込み角:舵角)SAが大きいと、車両の回転半径が小さくなるため、直進走行中に車載器と基地局との間の相対角度ARの変化が大きくなる可能性があるので、アレーアンテナ制御周期を高速にする必要がある場合がある。次に、指向性制御装置200はステップS1004に進む。
【0079】
ステップS1004において、制御部140は、自車両の速度DSに対応する係数を基本指向性制御周期BBSPに乗算して指向性制御周期BSPを決定する。自車両の速度DSが大きいほど、係数の値は小さくなる。すなわち、自車両の速度DSが大きいほど角速度ωも大きくなる可能性があるので、アレーアンテナ制御周期を高速にする必要がある場合がある。次に、指向性制御装置200はステップS1001に戻る。
【0080】
次にBBSP決定処理における、指向性制御周期を決定するための閾値の設定について事例を挙げて説明する。
【0081】
例えば、
図9に示すようなオープンスペースにおける路車間通信システムへの適用を想定する。このようなシステムでは、路側アンテナに対して車両の進行方向が大きく変化するケースが頻繁に発生する事が予想される。ここで、操舵角閾値を設定するために
図11に示すような等ステアリング操舵角度(切り込み角:舵角)による等速走行を想定する。この場合には、ステアリング操舵角度が一定になるために、車両はステアリング操舵角度に対応した角度で円周上を回転する方向に走行する。
【0082】
図12は、車両の最小回転半径によって正規化した正規化回転半径に基づくステアリングの操舵角度(切り込み角:舵角)の舵角閾値の設定例を示す。なお、ステアリングの操舵角度と正規化回転半径の関係は車両の種類によって異なる場合がある。この例では、正規化回転半径を等間隔に分割し、対応するステアリングの操舵角度(切り込み角:舵角)を舵角閾値に設定している。
【0083】
例えば、
図12では、正規化回転半径の値が200、150、100、50に対応する舵角を閾値に設定している。例えば、舵角が舵角閾値SAth3と舵角閾値SAth4の間にある場合には、舵角が舵角閾値SAth4よりも小さい場合に比べて、基本指向性制御周期BBSPは小さくなる。また、舵角が舵角閾値SAth2と舵角閾値SAth3の間にある場合には、舵角が舵角閾値SAth3と舵角閾値SAth4の間にある場合に比べて、基本指向性制御周期BBSPは小さくなる。さらに、舵角が舵角閾値SAth1よりも大きい場合には、舵角が舵角閾値SAth1と舵角閾値SAth2の間にある場合に比べて、基本指向性制御周期BBSPは小さくなる。すなわち、舵角が大きくなるほど、基本指向性制御周期BBSPは小さくなる。
【0084】
図13は、車両の最小回転半径によって正規化した正規化回転半径に基づくステアリングの操舵角度(切り込み角:舵角)の舵角閾値の設定例の他の一例を示す。この例では、正規化回転半径が小さくなるほど間隔を狭めて対応するステアリングの操舵角度(切り込み角:舵角)を舵角閾値に設定している。
【0085】
例えば、
図13では、正規化回転半径の値が200、100、50、30、15、5に対応する舵角を閾値に設定している。例えば、舵角が舵角閾値SAth9と舵角閾値SAth10の間にある場合には、舵角が舵角閾値SAth10よりも小さい場合に比べて、基本指向性制御周期BBSPは小さくなる。また、舵角が舵角閾値SAth8と舵角閾値SAth9の間にある場合には、舵角が舵角閾値SAth9と舵角閾値SAth10の間にある場合に比べて、基本指向性制御周期BBSPは小さくなる。さらに、舵角が舵角閾値SAth7と舵角閾値SAth8の間にある場合には、舵角が舵角閾値SAth8と舵角閾値SAth9の間にある場合に比べて、基本指向性制御周期BBSPは小さくなる。さらに、舵角が舵角閾値SAth6と舵角閾値SAth7の間にある場合には、舵角が舵角閾値SAth7と舵角閾値SAth8の間にある場合に比べて、基本指向性制御周期BBSPは小さくなる。さらに、舵角が舵角閾値SAth5よりも大きい場合には、舵角が舵角閾値SAth6と舵角閾値SAth5の間にある場合に比べて、基本指向性制御周期BBSPは小さくなる。すなわち、舵角が大きくなるほど、基本指向性制御周期BBSPは小さくなる。上述したように、
図13の場合には、正規化回転半径が小さい領域、すなわち、舵角の大きい領域でアレーアンテナの制御周期を細かく設定する例を示している。
【0086】
一方、ステップS1004における速度閾値については、等速度間隔での設定や、高速度ほど間隔を狭めて閾値を設定することが想定される。ただし、速度が速くなるほど、係数の絶対値は小さくなり、アレーアンテナの制御周期が短くなるように設定される。
【0087】
次に、ステップS1003の基本指向性制御周期BBSPを決定する処理の一例について、
図15に基づいて説明する。
図15のステップS1003において判断されている舵角閾値は
図12の舵角閾値に基づいている。
【0088】
ステップS1003aにおいて、舵角の絶対値が
図12の舵角閾値SAth1よりも大きいか否かが判定される。舵角の絶対値が
図12の舵角閾値SAth1よりも大きい場合(ステップS1003a:YES)には、ステップS1003bに進む。舵角の絶対値が
図12の舵角閾値SAth1以下の場合(ステップS1003a:NO)には、ステップS1003cに進む。
【0089】
ステップS1003bにおいて、基本指向性制御周期BBSPを最小周期である周期1に決定する。最小周期とはステップS1003の中の基本指向性制御周期BBSPの中でもっとも周期が短いことを示す。次に、指向性制御装置200はステップS1004に進む。
【0090】
ステップS1003cにおいて、舵角の絶対値が
図12の舵角閾値SAth2よりも大きいか否かが判定される。舵角の絶対値が
図12の舵角閾値SAth2よりも大きい場合(ステップS1003c:YES)には、ステップS1003dに進む。舵角の絶対値が
図12の舵角閾値SAth2以下の場合(ステップS1003c:NO)には、ステップS1003eに進む。なお、
図15においては、舵角閾値SAth3の場合を省略して示している。
【0091】
ステップS1003dにおいて、基本指向性制御周期BBSPを最小周期である周期1よりも長い周期2に決定する。周期2はステップS1003の中の基本指向性制御周期BBSPの中で2番目に周期が短いことを示す。次に、指向性制御装置200はステップS1004に進む。
【0092】
ステップS1003eにおいて、舵角の絶対値が
図12の舵角閾値SAth4よりも大きいか否かが判定される。舵角の絶対値が
図12の舵角閾値SAth4よりも大きい場合(ステップS1003e:YES)には、ステップS1003fに進む。舵角の絶対値が
図12の舵角閾値SAth4以下の場合(ステップS1003e:NO)には、ステップS1003gに進む。
【0093】
ステップS1003fにおいて、基本指向性制御周期BBSPを最大周期である周期n(n:自然数)の次に長い周期n-1に決定する。周期n-1はステップS1003の中の基本指向性制御周期BBSPの中で2番目に周期が長いことを示す。次に、指向性制御装置200はステップS1004に進む。
【0094】
ステップS1003gにおいて、基本指向性制御周期BBSPを最大周期である周期nに決定する。最大周期とはステップS1003の中の基本指向性制御周期BBSPの中でもっとも周期が長いことを示す。次に、指向性制御装置200はステップS1004に進む。
【0095】
次に、ステップS1004の基本指向性制御周期BBSPに対する係数を決定する処理の一例について、
図15に基づいて説明する。なお、車両の速度DSに対する速度閾値SPth1、速度閾値SPth2、速度閾値SPthn-1は次の関係を有する。すなわち、速度閾値SPth1<速度閾値SPth2<速度閾値SPthn-1であって、速度閾値SPthn-1が最も速い速度を示す。また、速度閾値については等速度間隔での設定や、高速度ほど間隔を狭めて閾値を設定するようにしてもよく、ここでは速度閾値の設定については限定しない。
【0096】
ステップS1004aにおいて、車両の速度DSが速度閾値SPth1よりも小さいか否かが判定される。車両の速度DSが速度閾値SPth1よりも小さい場合(ステップS1004a:YES)には、ステップS1004bに進む。車両の速度DSが速度閾値SPth1以上の場合(ステップS1003a:NO)には、ステップS1004cに進む。
【0097】
ステップS1004bにおいて、基本指向性制御周期BBSPに乗算する係数を最も大きい値である係数1に決定する。係数1はステップS1004の係数の中でもっとも大きい値であることを示す。次に、指向性制御装置200はステップS1001に戻る。
【0098】
ステップS1004cにおいて、車両の速度DSが速度閾値SPth2よりも小さいか否かが判定される。車両の速度DSが速度閾値SPth2よりも小さい場合(ステップS1004c:YES)には、ステップS1004dに進む。車両の速度DSが速度閾値SPth2以上の場合(ステップS1003c:NO)には、ステップS1004dに進む。
【0099】
ステップS1004dにおいて、基本指向性制御周期BBSPに乗算する係数をステップS1004の中で係数1の次に大きい値である係数2に決定する。次に、指向性制御装置はステップS1001に戻る。
【0100】
ステップS1004eにおいて、車両の速度DSが速度閾値SPthn-1よりも小さいか否かが判定される。車両の速度DSが速度閾値SPthn-1よりも小さい場合(ステップS1004e:YES)には、ステップS1004fに進む。車両の速度DSが速度閾値SPthn-1以上の場合(ステップS1003e:NO)には、ステップS1004gに進む。
【0101】
ステップS1004fにおいて、基本指向性制御周期BBSPに乗算する係数をステップS1004の中で係数nの次に小さい値である係数n-1に決定する。係数nは、ステップS1004の中で最も小さい値である。次に、指向性制御装置200はステップS1001に戻る。
【0102】
実施形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明したが、以上の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、上記に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0103】
100、200 指向性制御装置
110 アレーアンテナ
120 RF部
130 ベースバンド部
140 制御部
150 相対位置検出部
160 記憶部
170 車速センサ部
180 操舵角センサ部