(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20231011BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20231011BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20231011BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20231011BHJP
B60L 50/75 20190101ALN20231011BHJP
B60L 58/12 20190101ALN20231011BHJP
B60L 58/18 20190101ALN20231011BHJP
B60L 58/40 20190101ALN20231011BHJP
【FI】
H02J7/00 303E
H01M8/00 A
H01M8/04858
H02J7/00 P
H02J7/00 302B
H01M8/10 101
B60L50/75
B60L58/12
B60L58/18
B60L58/40
(21)【出願番号】P 2020010276
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】垣見 洋輔
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-16098(JP,A)
【文献】特開2012-80683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
H01M8/00-8/2495
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池で発電された電力の電圧を第1電圧に変換するとともに内部の入力側に第1コンデンサを有する第1DC/DCコンバータと、
前記燃料電池に対して前記第1DC/DCコンバータと並列に接続され、前記燃料電池で発電された電力の電圧を第2電圧に変換するとともに内部の入力側に第2コンデンサを有する第2DC/DCコンバータと、を備える燃料電池システムであって、
前記燃料電池に接続される第1配線と、
前記第1DC/DCコンバータの入力側に接続されつつ前記第1コンデンサと電気的に接続される第2配線と、
前記第1配線及び前記第2配線に電気的に接続され、前記第1コンデンサの電荷を前記第1配線に向けて逆流させない第1逆流抑止部と、
前記第1配線に接続される第3配線と、
前記第2DC/DCコンバータの入力側に接続されつつ前記第2コンデンサと電気的に接続される第4配線と、
前記第3配線及び前記第4配線に電気的に接続され、前記第2コンデンサの電荷を前記第3配線に向けて逆流させない第2逆流抑止部と、を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記第1逆流抑止部は、前記第1配線から前記第2配線に向けての通電のみを許容するダイオードであり、
前記第2逆流抑止部は、前記第3配線から前記第4配線に向けての通電のみを許容するダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記第1DC/DCコンバータ及び前記第2DC/DCコンバータは、スイッチングレギュレータであり、
前記第1DC/DCコンバータの出力側に接続される第1蓄電装置と、
前記第2DC/DCコンバータの出力側に接続される第2蓄電装置と、
前記第1蓄電装置及び前記第2蓄電装置それぞれの充電率を検出する充電率検出部と、
前記充電率に基づき前記第1DC/DCコンバータ及び前記第2DC/DCコンバータを制御する制御装置と、
前記制御装置から出力される指令に基づき前記第1DC/DCコンバータ及び前記第2DC/DCコンバータそれぞれが有するスイッチング素子の導通状態を制御する制御部と、を備え、
前記制御装置は、
前記燃料電池の電圧が所定電圧以上とならないように実施される高電位回避制御を実行し、
前記高電位回避制御では、
前記第1蓄電装置の前記充電率に応じて前記第1DC/DCコンバータの前記制御部に出力する前記指令を変更する第1充電制御と、
前記第2蓄電装置の前記充電率に応じて前記第2DC/DCコンバータの前記制御部に出力する前記指令を変更する第2充電制御と、を実施することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃料電池車両には、燃料電池車両を駆動させるための電力を発電する燃料電池を備えた燃料電池システムが搭載されているが、電力供給先の要求電圧の違いに応じて複数の電源系統を用意する場合がある。その実現のために、燃料電池に対して複数のDC/DCコンバータを並列に接続することが考えられる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載される燃料電池システムとしての電力供給システムは、燃料電池と、複数のDC/DCコンバータと、を有している。上記の電力供給システムにおいて、燃料電池には、2つのDC/DCコンバータが接続されている。例えば、2つのDC/DCコンバータの一方は、燃料電池車両を駆動させる負荷としてのモータに電気的に接続され、2つのDC/DCコンバータの他方は、補機系統に電気的に接続される。2つのDC/DCコンバータの他方は、燃料電池に対して2つのDC/DCコンバータの一方と並列に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、DC/DCコンバータは、DC/DCコンバータの内部の入力側にコンデンサを有していることがある。2つのDC/DCコンバータの内部の入力側にコンデンサが設けられている場合、2つのDC/DCコンバータは、当該コンデンサに蓄えられた電力の電圧を、例えば負荷や補機系統等の電力供給先の要求電圧に変換する。
【0006】
2つのDC/DCコンバータが燃料電池に並列に接続されているため、2つのDC/DCコンバータの内部の入力側のコンデンサ同士が電気的に接続される状態になる。そのため、2つのDC/DCコンバータの一方の入力側のコンデンサの電荷が2つのDC/DCコンバータの他方に向けて引かれたり、2つのDC/DCコンバータの他方の入力側のコンデンサの電荷が2つのDC/DCコンバータの一方に向けて引かれたりする虞がある。すなわち、電荷が引かれた方のDC/DCコンバータの内部の入力側のコンデンサに蓄えられた電力が不足するため、電荷が引かれた方のDC/DCコンバータは、燃料電池で発電された電力の電圧を変換できなくなり、燃料電池システムの駆動状態を安定させ難くなる虞がある。
【0007】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、駆動状態を安定させることができる燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する燃料電池システムは、燃料電池と、前記燃料電池で発電された電力の電圧を第1電圧に変換するとともに内部の入力側に第1コンデンサを有する第1DC/DCコンバータと、前記燃料電池に対して前記第1DC/DCコンバータと並列に接続され、前記燃料電池で発電された電力の電圧を第2電圧に変換するとともに内部の入力側に第2コンデンサを有する第2DC/DCコンバータと、を備える燃料電池システムであって、前記燃料電池に接続される第1配線と、前記第1DC/DCコンバータの入力側に接続されつつ前記第1コンデンサと電気的に接続される第2配線と、前記第1配線及び前記第2配線に電気的に接続され、前記第1コンデンサの電荷を前記第1配線に向けて逆流させない第1逆流抑止部と、前記第1配線に接続される第3配線と、前記第2DC/DCコンバータの入力側に接続されつつ前記第2コンデンサと電気的に接続される第4配線と、前記第3配線及び前記第4配線に電気的に接続され、前記第2コンデンサの電荷を前記第3配線に向けて逆流させない第2逆流抑止部と、を備える。
【0009】
これによれば、第1DC/DCコンバータの内部の入力側に設けられる第1コンデンサと、第2DC/DCコンバータの内部の入力側に設けられる第2コンデンサとの間の電荷の移動が第1逆流抑止部及び第2逆流抑止部により抑止される。そのため、第1コンデンサ及び第2コンデンサに蓄えられた電力が不足することが抑止され、燃料電池で発電された電力の電圧を変換できなくなることがない。したがって、燃料電池システムの駆動状態を安定させることができる。
【0010】
上記の燃料電池システムにおいて、前記第1逆流抑止部は、前記第1配線から前記第2配線に向けての通電のみを許容するダイオードであり、前記第2逆流抑止部は、前記第3配線から前記第4配線に向けての通電のみを許容するダイオードであるとよい。
【0011】
これによれば、第1配線から第2配線への電流を許容しながら、第1コンデンサから第1配線への電流を抑止でき、第3配線から第4配線への電流を許容しながら、第2コンデンサから第3配線への電流を抑止できる。したがって、単一のダイオードにより好適に燃料電池システムの駆動状態を安定させることができる。
【0012】
上記の燃料電池システムにおいて、前記第1DC/DCコンバータ及び前記第2DC/DCコンバータは、スイッチングレギュレータであり、前記第1DC/DCコンバータの出力側に接続される第1蓄電装置と、前記第2DC/DCコンバータの出力側に接続される第2蓄電装置と、前記第1蓄電装置及び前記第2蓄電装置それぞれの充電率を検出する充電率検出部と、前記充電率に基づき前記第1DC/DCコンバータ及び前記第2DC/DCコンバータを制御する制御装置と、前記制御装置から出力される指令に基づき前記第1DC/DCコンバータ及び前記第2DC/DCコンバータそれぞれが有するスイッチング素子の導通状態を制御する制御部を更に有し、前記制御装置は、前記燃料電池の電圧が所定電圧以上とならないように実施される高電位回避制御を実行し、前記高電位回避制御では、前記第1蓄電装置の前記充電率に応じて前記第1DC/DCコンバータの前記制御部に出力する前記指令を変更する第1充電制御と、前記第2蓄電装置の前記充電率に応じて前記第2DC/DCコンバータの前記制御部に出力する前記指令を変更する第2充電制御と、を実施するとよい。
【0013】
燃料電池は複数のセルが積層されることにより形成されている。燃料電池は、発電量が多くなると燃料電池を形成するセル1枚当たりに印加される電圧が低くなり、発電量が少なくなると燃料電池を形成するセル1枚当たりに印加される電圧が高くなる傾向がある。燃料電池は、出力要求がない場合、駆動を停止させることが一般的であるが、燃料電池の駆動を停止させたとき、燃料電池を形成するセルの電圧が高くなってしまい、燃料電池が劣化する虞がある。
【0014】
その点、これによれば、制御装置は、高電位回避制御を実施している。高電位回避制御では、第1蓄電装置の充電率に応じて制御装置が制御部に出力する指令を変更する第1充電制御と、第2蓄電装置の充電率に応じて制御装置が制御部に出力する指令を変更する第2充電制御とを実施する。すなわち、制御装置は、燃料電池の駆動が停止しても第1DC/DCコンバータ及び第2DC/DCコンバータそれぞれの駆動を第1蓄電装置及び第2蓄電装置それぞれの充電率に応じて変化させ、燃料電池で発電されている電力を第1蓄電装置及び第2蓄電装置に充電することにより燃料電池の電圧が所定電圧以上にならないようにしている。よって、燃料電池の劣化を抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、駆動状態を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】第1DC/DCコンバータ及び第2DC/DCコンバータの構成を示す概略図。
【
図3】燃料電池システムの第1充電制御の制御フローを示した概略図。
【
図4】燃料電池システムの第2充電制御の制御フローを示した概略図。
【
図5】第1DC/DCコンバータ及び第2DC/DCコンバータの変更例を示した概略図。
【
図6】第1逆流抑止部及び第2逆流抑止部の変更例を示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、燃料電池システムを具体化した実施形態を
図1~
図4にしたがって説明する。
図1に示すように、この実施形態の燃料電池システム1は、フォークリフトやトーイングトラクターといった産業車両に適用されるものである。燃料電池システム1は、燃料電池50を備えている。燃料電池50は、複数のセルを積層することによりスタック化したものである。セルとは、例えば固体高分子形燃料電池である。燃料電池50は、燃料ガスと、酸化剤ガスとの化学反応により発電を行う。本実施形態では、水素ガスを燃料ガス、空気中の酸素を酸化剤ガスとして発電が行われる。なお、燃料電池50で発電される電力の電圧値は、例えば140Vである。
【0018】
燃料電池システム1は、3つの電源系統を備えている。当該3つの電源系統は、要求電圧がそれぞれ異なっている。当該3つの電源系統それぞれを、第1系統10、第2系統20、及び第3系統30とする。
【0019】
第1系統10は、負荷11と、第1蓄電装置12と、第1DC/DCコンバータ13と、第1ダイオード41と、第1系統用第1正極配線Lp11と、第1系統用第2正極配線Lp12と、第1系統用第3正極配線Lp13と、第1系統用第1負極配線Ln11と、第1系統用第2負極配線Ln12と、を有している。
【0020】
負荷11は、トーイングトラクターが走行するための駆動力を発生させる走行用モータ11aと、走行用モータ11aを駆動させるインバータ11bとを有している。走行用モータ11aとインバータ11bとは電気的に接続されている。負荷11は、例えば80Vで駆動する。
【0021】
第1蓄電装置12は、二次電池であり、例えば、リチウムイオンキャパシタが採用されている。第1蓄電装置12は、走行用モータ11aを駆動させるための電力を蓄電する機能を有している。第1蓄電装置12は、例えば電圧値が80Vの電力を充電できる。
【0022】
第1系統用第1正極配線Lp11は、燃料電池50の正極に接続されている。第1系統用第2正極配線Lp12は、第1DC/DCコンバータ13の正極の入力端13aに接続されている。第1系統用第1負極配線Ln11は、一端が燃料電池50の負極に接続され、他端が第1DC/DCコンバータ13の負極の入力端13bに接続されている。第1ダイオード41は、第1系統用第1正極配線Lp11と第1系統用第2正極配線Lp12との間に設けられている。第1ダイオード41は、第1系統用第1正極配線Lp11及び第1系統用第2正極配線Lp12に電気的に接続されている。第1ダイオード41は、第1系統用第1正極配線Lp11から第1系統用第2正極配線Lp12に向けての通電のみを許容するダイオードである。
【0023】
第1系統用第3正極配線Lp13は、第1DC/DCコンバータ13の正極の出力端13cと、第1蓄電装置12の正極の入力端12aとを接続している。第1系統用第3正極配線Lp13は、第1DC/DCコンバータ13の正極の出力端13cと、負荷11の正極の入力端11cとを接続している。第1蓄電装置12の正極の入力端12aと、負荷11の正極の入力端11cとは、第1系統用第3正極配線Lp13により電気的に接続されている。なお、第1系統用第3正極配線Lp13は、複数の配線により構成されていてもよいし、1本の配線により構成されていてもよい。
【0024】
第1系統用第2負極配線Ln12は、第1DC/DCコンバータ13の負極の出力端13dと、第1蓄電装置12の負極の入力端12bとを接続している。第1系統用第2負極配線Ln12は、第1DC/DCコンバータ13の負極の出力端13dと、負荷11の負極の入力端11dとを接続している。第1蓄電装置12の負極の入力端12bと、負荷11の負極の入力端11dとは第1系統用第2負極配線Ln12により電気的に接続されている。第1蓄電装置12は、第1系統用第3正極配線Lp13及び第1系統用第2負極配線Ln12により第1DC/DCコンバータ13の出力側に接続されている。なお、第1系統用第2負極配線Ln12は、複数の配線により構成されていてもよいし、1本の配線により構成されていてもよい。
【0025】
第2系統20は、第1補機21と、第2蓄電装置22と、第2DC/DCコンバータ23と、第2ダイオード42と、第2系統用第1正極配線Lp21と、第2系統用第2正極配線Lp22と、第2系統用第3正極配線Lp23と、第2系統用第1負極配線Ln21と、第2系統用第2負極配線Ln22と、を有している。
【0026】
第1補機21は、例えば燃料電池50の駆動を補助する電磁弁及び電動圧縮機等を示している。電磁弁は、図示しない水素タンクと燃料電池50とを接続する水素供給配管に設けられ、当該水素供給配管を開閉する機能を有している。電動圧縮機は、燃料電池50に酸素を含んだ空気を圧縮させた状態で供給する機能を有している。第1補機21は、例えば48Vで駆動する。
【0027】
第2蓄電装置22は、二次電池であり、例えば、リチウムイオンキャパシタが採用されている。第2蓄電装置22は、第1補機21を駆動させるための電力を蓄電する機能を有している。第2蓄電装置22は、例えば電圧値が48Vの電力を充電できる。
【0028】
第2系統用第1正極配線Lp21は、第1系統用第1正極配線Lp11に接続されている。第2系統用第2正極配線Lp22は、第2DC/DCコンバータ23の正極の入力端23aに接続されている。第2系統用第1負極配線Ln21は、一端が第1系統用第1負極配線Ln11に接続され、他端が第2DC/DCコンバータ23の負極の入力端23bに接続されている。第2ダイオード42は、第2系統用第1正極配線Lp21と第2系統用第2正極配線Lp22との間に設けられている。第2ダイオード42は、第2系統用第1正極配線Lp21及び第2系統用第2正極配線Lp22に電気的に接続されている。第2ダイオード42は、第2系統用第1正極配線Lp21から第2系統用第2正極配線Lp22に向けての通電のみを許容するダイオードである。
【0029】
第2系統用第3正極配線Lp23は、第2DC/DCコンバータ23の正極の出力端23cと、第2蓄電装置22の正極の入力端22aとを接続している。第2系統用第3正極配線Lp23は、第2DC/DCコンバータ23の正極の出力端23cと、第1補機21の正極の入力端21aとを接続している。第2蓄電装置22の正極の入力端22aと、第1補機21の正極の入力端21aとは第2系統用第3正極配線Lp23により電気的に接続されている。なお、第2系統用第3正極配線Lp23は、複数の配線により構成されていてもよいし、1本の配線により構成されていてもよい。
【0030】
第2系統用第2負極配線Ln22は、第2DC/DCコンバータ23の負極の出力端23dと、第2蓄電装置22の負極の入力端22bとを接続している。第2系統用第2負極配線Ln22は、第2DC/DCコンバータ23の負極の出力端23dと、第1補機21の負極の入力端21bとを接続している。第2蓄電装置22の負極の入力端22bと、第1補機21の負極の入力端21bとは第2系統用第2負極配線Ln22により電気的に接続されている。第2蓄電装置22は、第2系統用第3正極配線Lp23及び第2系統用第2負極配線Ln22により第2DC/DCコンバータ23の出力側に接続されている。なお、第2系統用第2負極配線Ln22は、複数の配線により構成されていてもよいし、1本の配線により構成されていてもよい。
【0031】
第3系統30は、第2補機31と、第3蓄電装置32と、第3DC/DCコンバータ33と、第3系統用第1正極配線Lp31と、第3系統用第2正極配線Lp32と、第3系統用第1負極配線Ln31と、第3系統用第2負極配線Ln32とを有している。
【0032】
第2補機31は、例えばエアコン、カーナビゲーションシステム、及びライトや、当該エアコン、カーナビゲーション、ライト、及び第1補機21を制御する制御装置としてのFCECU34を含んでいる。第2補機31は、例えば12Vで駆動する。
【0033】
第3蓄電装置32は、二次電池であり、例えば、リチウムイオンキャパシタが採用されている。第3蓄電装置32は、第2補機31を駆動させるための電力を蓄電する機能を有している。第3蓄電装置32は、例えば電圧値が12Vの電力を充電できる。
【0034】
第3系統用第1正極配線Lp31は、一端が第2系統用第3正極配線Lp23に接続され、他端が第3DC/DCコンバータ33の正極の入力端33aに接続されている。第3系統用第2正極配線Lp32は、第3DC/DCコンバータ33の正極の出力端33cと、第3蓄電装置32の正極の入力端32aとを接続している。第3系統用第2正極配線Lp32は、第3DC/DCコンバータ33の正極の出力端33cと、第2補機31の正極の入力端31aとを接続している。第3蓄電装置32の正極の入力端32aと、第2補機31の正極の入力端31aとは第3系統用第2正極配線Lp32により電気的に接続されている。なお、第3系統用第2正極配線Lp32は、複数の配線により構成されていてもよいし、1本の配線により構成されていてもよい。
【0035】
第3系統用第1負極配線Ln31は、一端が第2系統用第2負極配線Ln22に接続され、他端が第3DC/DCコンバータ33の負極の入力端33bに接続されている。第3系統用第2負極配線Ln32は、第3DC/DCコンバータ33の負極の出力端33dと、第3蓄電装置32の負極の入力端32bとを接続している。第3系統用第2負極配線Ln32は、第3DC/DCコンバータ33の負極の出力端33dと、第2補機31の負極の入力端31bとを接続している。第3蓄電装置32の負極の入力端32bと、第2補機31の負極の入力端31bとは第3系統用第1負極配線Ln31により電気的に接続されている。なお、第3系統用第2負極配線Ln32は、複数の配線により構成されていてもよいし、1本の配線により構成されていてもよい。
【0036】
燃料電池システム1は、第1蓄電装置12の充電率SOC1を検出する充電率検出部としての第1充電率検出部61と、第2蓄電装置22の充電率SOC2を検出する充電率検出部としての第2充電率検出部62とを備えている。第1充電率検出部61により検出される充電率SOC1及び第2充電率検出部62により検出される充電率SOC2は、FCECU34に入力される。FCECU34は、入力された充電率SOC1に基づき第1DC/DCコンバータ13を制御するための第1指令S1、第2指令S2、又は第3指令S3を第1DC/DCコンバータ13に出力する。FCECU34は、入力された充電率SOC2に基づき第2DC/DCコンバータ23を制御するための第1指令S1、第2指令S2、又は第3指令S3を第2DC/DCコンバータ23に出力する。
【0037】
次に、第1DC/DCコンバータ13及び第2DC/DCコンバータ23の構成について詳細に説明する。
図2に示すように、第1DC/DCコンバータ13の内部において、第1DC/DCコンバータ13は、正極母線14と、負極母線15と、を有している。正極母線14は、第1DC/DCコンバータ13の内部において、第1DC/DCコンバータ13の正極の入力端13aと正極の出力端13cとを接続している。負極母線15は、第1DC/DCコンバータ13の内部において、第1DC/DCコンバータ13の負極の入力端13bと負極の出力端13dとを接続している。正極母線14は、第1DC/DCコンバータ13の正極の入力端13aを介して第1系統用第2正極配線Lp12と電気的に接続され、第1DC/DCコンバータ13の正極の出力端13cを介して第1系統用第3正極配線Lp13に電気的に接続されている。負極母線15は、第1DC/DCコンバータ13の負極の入力端13bを介して第1系統用第1負極配線Ln11と電気的に接続され、第1DC/DCコンバータ13の負極の出力端13dを介して第1系統用第2負極配線Ln12に電気的に接続されている。
【0038】
第1DC/DCコンバータ13は、正極母線14と負極母線15とを接続する第1中継配線16と、第2中継配線17と、第3中継配線18とを有している。第1中継配線16、第2中継配線17、及び第3中継配線18は、第1DC/DCコンバータ13の内部において、第1DC/DCコンバータ13の入力端13a,13b側から第1DC/DCコンバータ13の出力端13c,13d側に向けてこの順に配置されている。第1中継配線16は、第1DC/DCコンバータ13の内部において、第1DC/DCコンバータ13の入力端13a,13b寄りに設けられている。第3中継配線18は、第1DC/DCコンバータ13の内部において、第1DC/DCコンバータ13の出力端13c,13d寄りに設けられている。第2中継配線17は、第1DC/DCコンバータ13の内部において、第1中継配線16と第3中継配線18との間に設けられている。
【0039】
第1DC/DCコンバータ13は、2つのコンデンサCdと、1つのスイッチング素子Swと、1つのコイルCoと、1つのダイオードDiと、1つの電圧センサVと、1つの制御部19とを有している。2つのコンデンサCdそれぞれは、第1中継配線16及び第3中継配線18上に配置されている。スイッチング素子Swは、正極母線14における第1中継配線16と第2中継配線17とに挟まれた部分に配置されている。コイルCoは、正極母線14における第2中継配線17と第3中継配線18とに挟まれた部分に配置されている。コイルCoと、第3中継配線18上に設けられたコンデンサCdにより第1DC/DCコンバータ13の平滑回路が形成されている。ダイオードDiは、第2中継配線17上に配置されている。ダイオードDiは、第2中継配線17の負極母線15側から正極母線14側に向けての電流のみを許容するように配置されている。
【0040】
第1DC/DCコンバータ13の内部において、第2中継配線17を基準として第1中継配線16側を第1DC/DCコンバータ13の入力側とし、第2中継配線17を基準として第3中継配線18側を第1DC/DCコンバータ13の出力側とする。第1DC/DCコンバータ13の内部において、第1中継配線16上に設けられているコンデンサCdを第1コンデンサCd1とすると、第1コンデンサCd1は、第1DC/DCコンバータ13の内部において、第1DC/DCコンバータ13の入力端13a,13b寄りに配置されている。第1コンデンサCd1は、第1DC/DCコンバータ13の内部の入力側に設けられている。
【0041】
電圧センサVは、第1コンデンサCd1に蓄電された電力の電圧を検知するセンサである。第1中継配線16、正極母線14、及び第1系統用第2正極配線Lp12が電気的に接続されているため、第1コンデンサCd1と第1系統用第2正極配線Lp12は、電気的に接続されている。
【0042】
制御部19は、図示しないメモリと、メモリに記憶されたプログラムを実行する図示しないマイコンと、を有している。制御部19のメモリには、スイッチング素子Swのオンオフのデューティ比を演算するプログラムが記憶されている。そして、制御部19のマイコンは、当該デューティ比に基づきスイッチング素子Swを制御する。このように構成された第1DC/DCコンバータ13は、燃料電池50で発電された電力を降圧する機能を有するスイッチングレギュレータである。上記のデューティ比は、燃料電池50で発電された電力の電圧を第1系統用第3正極配線Lp13及び第1系統用第2負極配線Ln12に接続された負荷11を駆動させる電圧である80Vまで降圧する観点で設定される。第1DC/DCコンバータ13は、燃料電池50で発電された電力の電圧を80Vに変換するとともに内部の入力側に第1コンデンサCd1を有している。なお、負荷11を駆動させる電圧である80Vは、第1電圧の一例である。
【0043】
第2DC/DCコンバータ23は、第1DC/DCコンバータ13と同様の構成を有している。そのため、第1DC/DCコンバータ13と異なる構成のみを以下記載する。
第2DC/DCコンバータ23は、燃料電池50に対して第1DC/DCコンバータ13と並列に接続されている。
【0044】
第2DC/DCコンバータ23の正極母線14は、第2DC/DCコンバータ23の正極の入力端23aを介して第2系統用第2正極配線Lp22と電気的に接続され、第2DC/DCコンバータ23の正極の出力端23cを介して第2系統用第3正極配線Lp23に電気的に接続されている。負極母線15は、第2DC/DCコンバータ23の負極の入力端23bを介して第2系統用第1負極配線Ln21と電気的に接続され、第2DC/DCコンバータ23の負極の出力端23dを介して第2系統用第2負極配線Ln22に電気的に接続されている。
【0045】
第2DC/DCコンバータ23の内部において、第2中継配線17を基準として第1中継配線16側を第2DC/DCコンバータ23の入力側とし、第2中継配線17を基準として第3中継配線18側を第2DC/DCコンバータ23の出力側とする。第2DC/DCコンバータ23の内部において、第1中継配線16上に設けられているコンデンサCdを第2コンデンサCd2とすると、第2コンデンサCd2は、第2DC/DCコンバータ23の内部において、第2DC/DCコンバータ23の入力端23a,23b寄りに配置されている。第2コンデンサCd2は、第2DC/DCコンバータ23の内部の入力側に設けられている。
【0046】
電圧センサVは、第2コンデンサCd2に蓄電された電力の電圧を検知するセンサである。第1中継配線16、正極母線14、及び第2系統用第2正極配線Lp22が電気的に接続されているため、第2コンデンサCd2と第2系統用第2正極配線Lp22は、電気的に接続されている。
【0047】
第2DC/DCコンバータ23の制御部19により演算されるデューティ比は、燃料電池50で発電された電力の電圧を第2系統用第3正極配線Lp23及び第2系統用第2負極配線Ln22に接続された第1補機21を駆動させる電圧である48Vまで降圧する観点で設定される。第2DC/DCコンバータ23は、燃料電池50で発電された電力の電圧を48Vに変換するとともに内部の入力側に第2コンデンサCd2を有している。なお、第1補機21を駆動させる電圧である48Vは、第2電圧の一例である。
【0048】
上記した燃料電池システム1の構成において、第1系統用第1正極配線Lp11が第1配線の一例であり、第1系統用第2正極配線Lp12が第2配線の一例であり、第2系統用第1正極配線Lp21が第3配線の一例であり、第2系統用第2正極配線Lp22が第4配線の一例である。よって、第1ダイオード41は、第1コンデンサCd1の電荷を第1系統用第1正極配線Lp11に向けて逆流させない第1逆流抑止部として機能する。また、第2ダイオード42は、第2コンデンサCd2の電荷を第2系統用第1正極配線Lp21に向けて逆流させない第2逆流抑止部として機能する。なお、第3DC/DCコンバータ33の構成は、第1DC/DCコンバータ13及び第2DC/DCコンバータ23と同様の構成を有している。第3DC/DCコンバータ33は、第2DC/DCコンバータ23の出力側に接続されている。第3DC/DCコンバータ33は、第2DC/DCコンバータ23に対して第1補機21と並列に接続されている。また、第3DC/DCコンバータ33は、第2DC/DCコンバータ23に対して第2蓄電装置22と並列に接続されている。第3DC/DCコンバータ33は、第1補機21が駆動する電圧である48Vを第2補機31が駆動する電圧である12Vに変換する機能を有している。第2補機31が駆動する電圧である12Vは、第3電圧の一例である。
【0049】
FCECU34が出力した第1指令S1、第2指令S2、又は第3指令S3は、第1DC/DCコンバータ13及び第2DC/DCコンバータ23それぞれの制御部19に入力される。第1DC/DCコンバータ13の制御部19は、入力された指令S1,S2,S3と、電圧センサVにより検出される第1コンデンサCd1の電圧V1と、に基づき第1DC/DCコンバータ13のスイッチング素子Swのオンオフのデューティ比を演算し、当該デューティ比に基づきスイッチング素子Swを制御する。同様に、第2DC/DCコンバータ23の制御部19は、入力された指令S1,S2,S3と、電圧センサVにより検出される第2コンデンサCd2の電圧V2と、に基づき第2DC/DCコンバータ23のスイッチング素子Swのオンオフのデューティ比を演算し、当該デューティ比に基づきスイッチング素子Swを制御する。すなわち、FCECU34は、充電率SOC1,SOC2に基づき第1DC/DCコンバータ13及び第2DC/DCコンバータ23を制御する。そして、第1DC/DCコンバータ13及び第2DC/DCコンバータ23は、FCECU34から出力される指令S1,S2,S3に基づき第1DC/DCコンバータ13及び第2DC/DCコンバータ23それぞれの有するスイッチング素子Swを制御する制御部19を有している。
【0050】
燃料電池50は、発電量が多くなると燃料電池を形成するセル1枚当たりに印加される電圧が低くなり、発電量が少なくなると燃料電池50を形成するセル1枚当たりに印加される電圧が高くなる傾向がある。燃料電池50は、出力要求がない場合、駆動を停止させることが一般的であるが、燃料電池50の駆動を停止させてしまうと、燃料電池50を形成するセルの電圧が高くなってしまい、燃料電池50が劣化する虞がある。本実施形態では、燃料電池50の劣化を抑制するための制御が実施される。
【0051】
図3及び
図4に示すように、燃料電池システム1は、充電率SOC1,SOC2に基づき、通常発電制御と、高電位回避制御と、第1充電制御と、第2充電制御とを実施する。通常発電制御及び高電位回避制御は、第1系統10及び第2系統20に対して共通して実施するが、第1充電制御は、第1系統10に対して実施される制御であり、第2充電制御は、第2系統20に対して実施される制御である。燃料電池システム1の通常発電制御及び高電位回避制御は、
図3及び
図4にしたがって説明する。燃料電池システム1における第1充電制御の制御フローは、
図3にしたがって説明し、燃料電池システム1における第2充電制御の制御フローは、
図4にしたがって説明する。
【0052】
図3及び
図4に示すように、FCECU34は、例えば、トーイングトラクターがキーオンしている状態でアクセルが踏まれていない等の燃料電池50の出力要求がない場合、充電率SOC1,SOC2を検出する(ステップS101)。FCECU34は、充電率SOC1が第1基本値Thb1以上であり、且つ充電率SOC2が第2基本値Thb2以上であるか否かを判定する(ステップS102)。FCECU34は、充電率SOC1が第1基本値Thb1以上ではなく、且つ充電率SOC2が第2基本値Thb2以上ではない場合(ステップS102でNO)、すなわち、充電率SOC1が第1基本値Thb1以上であるか否かの判定と、充電率SOC2が第2基本値Thb2以上であるか否かの判定とのうち少なくとも1つの判定が否である場合、通常発電制御を実施する(ステップS103)。第1基本値Thb1は、燃料電池システム1の起動時に燃料電池50の発電量が足りない場合に第1蓄電装置12から負荷11に電力を十分に供給できる第1蓄電装置12の充電率SOC1に設定されている。また、第1基本値Thb1は、燃料電池システム1の起動時に燃料電池50の発電量が足りない場合に第2蓄電装置22から第1補機21に電力を十分に供給できる第2蓄電装置22の充電率SOC2に設定されている。すなわち、通常発電制御とは、燃料電池システム1の起動時に負荷11及び第1補機21の電力を補うことができる電力を第1蓄電装置12及び第2蓄電装置22に蓄電する制御である。通常発電制御を実施した後、トーイングトラクターがキーオフされていない限り、再度ステップS101及びステップS102を実施する。
【0053】
FCECU34は、充電率SOC1が第1基本値Thb1以上であり、且つ充電率SOC2が第2基本値Thb2以上である場合(ステップS102でYES)、高電位回避制御を実施する(ステップS104)。高電位回避制御とは、燃料電池50を劣化させないように予め出力電圧の閾値である高電位回避基準電圧を設け、この高電位回避基準電圧を超えないようにする制御である。なお、高電位回避基準電圧とは、請求項における所定電圧を示している。また、高電位回避基準電圧は、燃料電池50を劣化させてしまう電圧値を実験的に確認したうえで、燃料電池50の劣化が生じない電圧値に設定されている。
【0054】
高電位回避制御では、第1充電制御と第2充電制御とを実施する。以下、第1充電制御及び第2充電制御それぞれについて詳細に説明する。
図3に示すように、第1充電制御において、FCECU34は、充電率SOC1が第1閾値Th1以上か否かを判定する(ステップS105)。FCECU34は、充電率SOC1が第1閾値Th1以上でない場合(ステップS105でNO)、第1指令S1を第1DC/DCコンバータ13の制御部19に出力する(ステップS106)。FCECU34は、充電率SOC1が第1閾値Th1以上である場合(ステップS105でYES)、充電率SOC1が第2閾値Th2以上であるか否かを判定する(ステップS107)。FCECU34は、充電率SOC1が第2閾値Th2以上でない場合(ステップS107でNO)、第2指令S2を第1DC/DCコンバータ13の制御部19に出力する(ステップS108)。FCECU34は、充電率SOC1が第2閾値Th2以上である場合(ステップS107でYES)、第3指令S3を第1DC/DCコンバータ13の制御部19に出力する(ステップS109)。すなわち、FCECU34は、第1蓄電装置12の充電率SOC1に応じて第1DC/DCコンバータ13の制御部19に出力する指令を変更している。なお、第1閾値Th1は、第1基本値Thb1よりも大きな値である。第2閾値Th2は、第1閾値Th1よりも大きな値である。第1閾値Th1及び第2閾値Th2は、第1蓄電装置12が満充電になる前の状態を段階的に示す値である。
【0055】
図4に示すように、第2充電制御において、FCECU34は、充電率SOC2が第3閾値Th3以上か否かを判定する(ステップS111)。FCECU34は、充電率SOC2が第3閾値Th3以上でない場合(ステップS111でNO)、第1指令S1を第2DC/DCコンバータ23の制御部19に出力する(ステップS112)。FCECU34は、充電率SOC2が第3閾値Th3以上である場合(ステップS111でYES)、充電率SOC2が第4閾値Th4以上であるか否かを判定する(ステップS113)。FCECU34は、充電率SOC2が第4閾値Th4以上でない場合(ステップS113でNO)、第2指令S2を第2DC/DCコンバータ23の制御部19に出力する(ステップS114)。FCECU34は、充電率SOC2が第4閾値Th4以上である場合(ステップS113でYES)、第3指令S3を第2DC/DCコンバータ23の制御部19に出力する(ステップS115)。すなわち、FCECU34は、第2蓄電装置22の充電率SOC2に応じて第2DC/DCコンバータ23の制御部19に出力する指令を変更している。なお、第3閾値Th3は、第2基本値Thb2よりも大きな値である。第4閾値Th4は、第3閾値Th3よりも大きな値である。第3閾値Th3及び第4閾値Th4は、第2蓄電装置22が満充電になる前の状態を段階的に示す値である。
【0056】
ここで、第1指令S1は、第1コンデンサCd1及び第2コンデンサCd2の電圧が、燃料電池50を形成するセルに印加される電圧である第1規定値Tc1にセルの積層枚数を乗じた値になるように制御部19にデューティ比を演算させる指令である。第1規定値Tc1は、通常発電制御におけるセルの電圧よりも高い。第1規定値Tc1は、例えば0.85Vである。
【0057】
第2指令S2は、第1コンデンサCd1及び第2コンデンサCd2の電圧が、燃料電池50を形成するセルに印加される電圧である第2規定値Tc2にセルの積層枚数を乗じた値となるように制御部19にデューティ比を演算させる指令である。第2規定値Tc2は、第1規定値Tc1よりも大きな値である。第2規定値Tc2は、例えば0.9Vである。
【0058】
第3指令S3は、第1コンデンサCd1及び第2コンデンサCd2の電圧が、燃料電池50を形成するセルに印加される電圧である第3規定値Tc3にセルの積層枚数を乗じた値となるように制御部19にデューティ比を演算させる指令である。第3規定値Tc3は、第2規定値Tc2よりも大きな値である。第3規定値Tc3は、例えば0.95Vである。
【0059】
図3に示すように、第1充電制御において、第1指令S1、第2指令S2、又は第3指令S3が第1DC/DCコンバータ13の制御部19に出力されたら、第1DC/DCコンバータ13の制御部19は、第1DC/DCコンバータ13のスイッチング素子Swを制御するためのデューティ比を演算する(ステップS110)。
【0060】
図2及び
図3に示すように、ステップS110において、第1指令S1が第1DC/DCコンバータ13の制御部19に入力されたとき、第1DC/DCコンバータ13の制御部19は、第1コンデンサCd1の電圧V1と、第1規定値Tc1にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧とを比較する。第1コンデンサCd1の電圧V1が、第1規定値Tc1にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧に達していない場合、制御部19は、デューティ比を「0」にする。すなわち、制御部19は、第1DC/DCコンバータ13のスイッチング素子Swを常に開状態に維持する。これにより、制御部19は、第1蓄電装置12を充電させず、且つ燃料電池50で発電された電力を第1コンデンサCd1に蓄えることにより第1コンデンサCd1の電圧を第1規定値Tc1にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧にする。第1コンデンサCd1の電圧V1が、第1規定値Tc1にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧に達した場合、制御部19は、第1規定値Tc1にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧を、負荷11の駆動する電圧である80Vに変換するデューティ比を演算し、第1DC/DCコンバータ13のスイッチング素子Swの導通状態を制御、すなわちスイッチング素子Swの開閉状態を変更することで第1蓄電装置12を充電する。
【0061】
ステップS110において、第2指令S2が第1DC/DCコンバータ13の制御部19に入力されたとき、第1DC/DCコンバータ13の制御部19は、第1コンデンサCd1の電圧V1と、第2規定値Tc2にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧とを比較する。第1コンデンサCd1の電圧V1が、第2規定値Tc2にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧に達していない場合、制御部19は、デューティ比を「0」にする。すなわち、制御部19は、第1DC/DCコンバータ13のスイッチング素子Swを常に開状態に維持する。これにより、制御部19は、第1蓄電装置12を充電させず、且つ燃料電池50で発電された電力を第1コンデンサCd1に蓄えることにより第1コンデンサCd1の電圧を第2規定値Tc2にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧にする。第1コンデンサCd1の電圧V1が、第2規定値Tc2にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧に達した場合、制御部19は、第2規定値Tc2にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧を、負荷11の駆動する電圧である80Vに変換するデューティ比を演算し、第1DC/DCコンバータ13のスイッチング素子Swの導通状態を制御、すなわちスイッチング素子Swの開閉状態を変更することで第1蓄電装置12を充電する。
【0062】
ステップS110において、第3指令S3が第1DC/DCコンバータ13の制御部19に入力されたとき、第1DC/DCコンバータ13の制御部19は、第1コンデンサCd1の電圧V1と、第3規定値Tc3にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧とを比較する。第1コンデンサCd1の電圧V1が、第3規定値Tc3にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧に達していない場合、制御部19は、デューティ比を「0」にする。すなわち、制御部19は、第1DC/DCコンバータ13のスイッチング素子Swを常に開状態に維持する。これにより、制御部19は、第1蓄電装置12を充電させず、且つ燃料電池50で発電された電力を第1コンデンサCd1に蓄えることにより第1コンデンサCd1の電圧を第3規定値Tc3にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧にする。第1コンデンサCd1の電圧V1が、第3規定値Tc3にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧に達した場合、制御部19は、第3規定値Tc3にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧を、負荷11の駆動する電圧である80Vに変換するデューティ比を演算し、第1DC/DCコンバータ13のスイッチング素子Swの導通状態を制御、すなわちスイッチング素子Swの開閉状態を変更することで第1蓄電装置12を充電する。
【0063】
第1充電制御において、ステップS110が完了した後、トーイングトラクターがキーオフされない限り、ステップS101から上記制御を繰り返す。
図4に示すように、第2充電制御において、第1指令S1、第2指令S2、又は第3指令S3が第2DC/DCコンバータ23の制御部19に出力されたら、第2DC/DCコンバータ23の制御部19は、第2DC/DCコンバータ23のスイッチング素子Swを制御するためのデューティ比を演算する(ステップS116)。
【0064】
図2及び
図4に示すように、ステップS116において、第1指令S1が第2DC/DCコンバータ23の制御部19に入力されたとき、第2DC/DCコンバータ23の制御部19は、第2コンデンサCd2の電圧V2と、第1規定値Tc1にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧とを比較する。第2コンデンサCd2の電圧V2が、第1規定値Tc1にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧に達していない場合、制御部19は、デューティ比を「0」にする。すなわち、制御部19は、第2DC/DCコンバータ23のスイッチング素子Swを常に開状態に維持する。これにより、制御部19は、第2蓄電装置22を充電させず、且つ燃料電池50で発電された電力を第2コンデンサCd2に蓄えることにより第2コンデンサCd2の電圧を第1規定値Tc1にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧にする。第2コンデンサCd2の電圧V2が、第1規定値Tc1にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧に達した場合、制御部19は、第1規定値Tc1にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧を、第1補機21の駆動する電圧である48Vに変換するデューティ比を演算し、第2DC/DCコンバータ23のスイッチング素子Swの導通状態を制御、すなわちスイッチング素子Swの開閉状態を変更することで第2蓄電装置22を充電する。
【0065】
ステップS116において、第2指令S2が第2DC/DCコンバータ23の制御部19に入力されたとき、第2DC/DCコンバータ23の制御部19は、第2コンデンサCd2の電圧V2と、第2規定値Tc2にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧とを比較する。第2コンデンサCd2の電圧V2が、第2規定値Tc2にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧に達していない場合、制御部19は、デューティ比を「0」にする。すなわち、制御部19は、第2DC/DCコンバータ23のスイッチング素子Swを常に開状態に維持する。これにより、制御部19は、第2蓄電装置22を充電させず、且つ燃料電池50で発電された電力を第2コンデンサCd2に蓄えることにより第2コンデンサCd2の電圧を第2規定値Tc2にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧にする。第2コンデンサCd2の電圧V2が、第2規定値Tc2にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧に達した場合、制御部19は、第2規定値Tc2にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧を、第1補機21の駆動する電圧である48Vに変換するデューティ比を演算し、第2DC/DCコンバータ23のスイッチング素子Swの導通状態を制御、すなわちスイッチング素子Swの開閉状態を変更することで第2蓄電装置22を充電する。
【0066】
ステップS116において、第3指令S3が第2DC/DCコンバータ23の制御部19に入力されたとき、第2DC/DCコンバータ23の制御部19は、第2コンデンサCd2の電圧V2と、第3規定値Tc3にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧とを比較する。第2コンデンサCd2の電圧V2が、第3規定値Tc3にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧に達していない場合、制御部19は、デューティ比を「0」にする。すなわち、制御部19は、第2DC/DCコンバータ23のスイッチング素子Swを常に開状態に維持する。これにより、制御部19は、第2蓄電装置22を充電させず、且つ燃料電池50で発電された電力を第2コンデンサCd2に蓄えることにより第2コンデンサCd2の電圧を第3規定値Tc3にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧にする。第2コンデンサCd2の電圧V2が、第3規定値Tc3にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧に達した場合、制御部19は、第3規定値Tc3にセルの積層枚数を乗じて演算される燃料電池50の電圧を、第1補機21の駆動する電圧である48Vに変換するデューティ比を演算し、第2DC/DCコンバータ23のスイッチング素子Swの導通状態を制御、すなわちスイッチング素子Swの開閉状態を変更することで第2蓄電装置22を充電する。
【0067】
第2充電制御において、ステップS116が完了した後、トーイングトラクターがキーオフされない限り、ステップS101から上記制御を繰り返す。
第1充電制御及び第2充電制御において、燃料電池50の発電量と燃料電池50を形成するセルに印加される電圧との関係性を考慮すると、第1充電制御及び第2充電制御に用いられる第1指令S1、第2指令S2、及び第3指令S3は、第1蓄電装置12の充電率SOC1及び第2蓄電装置22の充電率SOC2が多いほど、燃料電池50の発電量が少ない状態でないと第1蓄電装置12及び第2蓄電装置22に充電させないように設定されている。なお、
図3及び
図4に図示しないが、燃料電池50の出力要求がない状態で第1蓄電装置12及び第2蓄電装置22が満充電になり、且つトーイングトラクターがキーオフされていない場合、一時的に燃料電池50の駆動を停止させる。
【0068】
本実施形態の作用を説明する。
燃料電池50で発電された電力は、第1系統10及び第2系統20に供給される。第1系統10に供給された電力の電圧は、第1DC/DCコンバータ13により80Vに降圧されて負荷11に供給されるとともに第1蓄電装置12に充電される。第2系統20に供給された電力の電圧は、第2DC/DCコンバータ23により48Vに降圧されて第1補機21に供給されるとともに第2蓄電装置22に充電される。第2系統20に供給された電力は、第3系統30にも供給される。第3系統30に供給された電力は、第3DC/DCコンバータ33により12Vまで降圧されて第2補機31に供給されるとともに第3蓄電装置32に充電される。
【0069】
燃料電池50で発電された電力は、第1DC/DCコンバータ13の第1コンデンサCd1に蓄えられ、第1コンデンサCd1に蓄えられた電力の電圧が負荷11の要求電圧である80Vに変換される。燃料電池50で発電された電力は、第2DC/DCコンバータ23の第2コンデンサCd2に蓄えられ、第2コンデンサCd2に蓄えられた電力の電圧が第1補機21の要求電圧である48Vに変換される。第1コンデンサCd1の電荷は、第1ダイオード41により第2コンデンサCd2に引かれることが抑止され、第2コンデンサCd2の電荷は、第2ダイオード42により第1コンデンサCd1に引かれることが抑止されている。
【0070】
また、第1充電制御において、FCECU34は、第1蓄電装置12の充電率SOC1に応じて第1DC/DCコンバータ13の制御部19に出力する指令S1,S2,S3を変更している。制御部19は、入力される指令S1,S2,S3に応じて、第1DC/DCコンバータ13のスイッチング素子Swを制御するデューティ比を変化させている。そのため、FCECU34から制御部19に出力される指令S1,S2,S3によって第1蓄電装置12の充電方法が変化している。よって、FCECU34が、第1充電制御において、高電位回避制御時に第1蓄電装置12の充電率SOC1に応じて第1DC/DCコンバータ13の制御部19に出力する指令S1,S2,S3を変更することにより第1蓄電装置12の充電方法を変化させている。
【0071】
さらに、第2充電制御において、FCECU34は、第2蓄電装置22の充電率SOC2に応じて第2DC/DCコンバータ23の制御部19に出力する指令S1,S2,S3を変更している。制御部19は、入力される指令S1,S2,S3に応じて、第2DC/DCコンバータ23のスイッチング素子Swを制御するデューティ比を変化させている。そのため、FCECU34から制御部19に出力される指令S1,S2,S3によって第2蓄電装置22の充電方法が変化している。よって、FCECU34は、第2充電制御において、高電回避制御時に第2蓄電装置22の充電率SOC2に応じて第2DC/DCコンバータ23の制御部19に出力する指令S1,S2,S3を変更することにより第2蓄電装置22の充電方法を変化させている。
【0072】
本実施形態の効果を説明する。
(1)第1DC/DCコンバータ13の内部の入力側に設けられる第1コンデンサCd1と、第2DC/DCコンバータ23の内部の入力側に設けられる第2コンデンサCd2との間の電荷の移動が第1ダイオード41及び第2ダイオード42により抑止される。そのため、第1コンデンサCd1及び第2コンデンサCd2に蓄えられた電力が不足することが抑止され、燃料電池50で発電された電力の電圧を変換できなくなることがない。したがって、燃料電池システム1の駆動状態を安定させることができる。
【0073】
(2)第1ダイオード41は、第1系統用第1正極配線Lp11から第1系統用第2正極配線Lp12への電流を許容しながら、第1コンデンサCd1から第1系統用第1正極配線Lp11への電流を抑止できる。第2ダイオード42は、第2系統用第1正極配線Lp21から第2系統用第2正極配線Lp22への電流を許容しながら、第2コンデンサCd2から第2系統用第1正極配線Lp21への電流を抑止できる。したがって、単一のダイオードにより好適に燃料電池システム1の駆動状態を安定させることができる。
【0074】
(3)FCECU34は、高電位回避制御を実施している。高電位回避制御では、第1蓄電装置12の充電率SOC1に応じてFCECU34が第1DC/DCコンバータ13の制御部19に出力する指令を変更する第1充電制御と、第2蓄電装置22の充電率SOC2に応じてFCECU34が第2DC/DCコンバータ23の制御部19に出力する指令を変更する第2充電制御とを実施する。すなわち、FCECU34は、燃料電池50の駆動が停止しても第1DC/DCコンバータ13及び第2DC/DCコンバータ23それぞれの駆動を第1蓄電装置12及び第2蓄電装置22それぞれの充電率SOC1,SOC2に応じて変化させ、燃料電池50で発電されている電力を第1蓄電装置12及び第2蓄電装置22に充電することにより燃料電池50の電圧が高電位回避基準電圧以上にならないようにしている。よって、燃料電池50の劣化を抑制できる。
【0075】
(4)第1充電制御では、第1蓄電装置12の充電率SOC1に応じて第1DC/DCコンバータ13を制御し、第2充電制御では、第2蓄電装置22の充電率SOC2に応じて第2DC/DCコンバータ23を制御する。すなわち、第1充電制御及び第2充電制御は、互いに平行して行われ、且つ一方の電源系統の充電制御の指令が他方の電源系統の指令に影響しないため、燃料電池システム1の充電制御をシンプルにすることができる。
【0076】
(5)第3系統用第1正極配線Lp31を第1系統用第1正極配線Lp11に接続し、第3系統用第1負極配線Ln31を第1系統用第1負極配線Ln11に接続することにより、燃料電池50で発電される電力の電圧である140Vを第3DC/DCコンバータ33が12Vまで降圧することもできるが、燃料電池50で発電される電力の電圧である140Vと、第2補機31が駆動する電圧である12Vとでは差分が大きい。そのため、第3DC/DCコンバータ33に対して耐電圧性能が求められる。一般的に、耐電圧性能が高いコンバータはコスト高となるため、燃料電池システム1の製造費用が高くなる。
【0077】
その点、第3系統30は、第2DC/DCコンバータ23の出力側に電気的に接続されている。第3DC/DCコンバータ33は、第2系統20の第1補機21を駆動させる電圧である48Vを、第2補機31が駆動する電圧である12Vに変換すればよいため、第3DC/DCコンバータ33の耐電圧性能を必要以上に高くする必要がない。したがって、燃料電池システム1の製造費用を抑えることができる。
【0078】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施できる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
○ 第1DC/DCコンバータ13及び第2DC/DCコンバータ23それぞれは、制御部19を備えていたが、例えば、これらの制御部19を第1DC/DCコンバータ13及び第2DC/DCコンバータ23の外部に設けるように変更してもよい。また、これらの制御部19を統合して、新たに1つの制御部を構成してもよい。
【0079】
○ 第1DC/DCコンバータ13及び第2DC/DCコンバータ23それぞれは、制御部19を有しており、制御部19は、デューティ比を演算することによりスイッチング素子Swを制御していたが、これに限らない。例えば、第1DC/DCコンバータ13及び第2DC/DCコンバータ23それぞれから制御部19を割愛し、FCECU34が、デューティ比を演算する機能を有していてもよい。このように変更する場合、FCECU34に第1コンデンサCd1の電圧V1及び第2コンデンサCd2の電圧V2を入力するように変更する。また、FCECU34から第1指令S1、第2指令S2、又は第3指令S3を出力しなくてもよい。すなわち、第1充電制御及び第2充電制御をFCECU34のみで実施できるように変更すればよい。
【0080】
○ 高電位回避制御では、第1充電制御と第2充電制御とを実施しなくてもよい。例えば、燃料電池システム1に放電抵抗を新たに設け、燃料電池50の出力要求がない場合、燃料電池50で発電されている電力を放電抵抗に逃がし、放電抵抗により電力を熱に変換して放熱させてもよい。この場合、放電抵抗により放熱された熱は、例えばトーイングトラクターの空調に利用することが好ましい。なお、本変更例では、第1充電率検出部61及び第2充電率検出部62を割愛してもよい。
【0081】
○ 第3系統用第1正極配線Lp31を第1系統用第1正極配線Lp11に接続し、第3系統用第1負極配線Ln31を第1系統用第1負極配線Ln11に接続することにより、第3DC/DCコンバータ33を燃料電池50に対して第1DC/DCコンバータ13と並列に接続してもよい。この場合、第3系統用第1正極配線Lp31を、第1系統用第1正極配線Lp11と接続される第1分岐配線と、第3DC/DCコンバータ33の入力側の正極と接続される第2分岐配線とにより構成し、第1分岐配線と第2分岐配線との間に第3ダイオードを設けることが好ましい。第3ダイオードは、第1分岐配線から第2分岐配線に向けての通電のみを許容するように配置されることが好ましい。ここで、第3DC/DCコンバータ33は、第2DC/DCコンバータの一例である。第1分岐配線は第3配線の一例であり、第2分岐配線は、第4配線の一例である。第3ダイオードは、第3DC/DCコンバータ33の内部の入力側の第2コンデンサとしてのコンデンサCdの電荷を第1分岐配線に向けて逆流させない第2逆流抑止部の一例である。
【0082】
○ 第1DC/DCコンバータ13及び第2DC/DCコンバータ23を、燃料電池50で発電された電力の電圧を昇圧するスイッチングレギュレータとしてもよい。なお、このように変更する場合、負荷11が駆動する電圧が燃料電池50で発電される電圧よりも高く、第1補機21を駆動する電圧が燃料電池50で発電される電圧よりも高いことが前提である。例えば、以下のように第1DC/DCコンバータ13及び第2DC/DCコンバータ23を変更してもよい。なお、第1DC/DCコンバータ13及び第2DC/DCコンバータ23は、同じ構成を有しているため、第1DC/DCコンバータ13の構成の変更点についてのみ説明し、第2DC/DCコンバータ23の詳細な構成の説明は割愛する。
【0083】
図5に示すように、第1DC/DCコンバータ13のコイルCoを、正極母線14における第1中継配線16と第2中継配線17とに挟まれた部分に配置される。スイッチング素子Swは、第2中継配線17上に配置されている。ダイオードDiは、正極母線14における第2中継配線17と第3中継配線18とに挟まれた部分に配置される。ダイオードDiは、正極母線14における第2中継配線17と第3中継配線18とに挟まれた部分を第2中継配線17側から第3中継配線18側にのみ通電が許容されるように配置される。
【0084】
○ 第1DC/DCコンバータ13及び第2DC/DCコンバータ23を、昇圧コンバータとして採用する場合、スイッチングレギュレータに限らず、リニアレギュレータとしてもよい。ただし、第1DC/DCコンバータ13の内部の入力側に第1コンデンサCd1が設けられ、且つ第2DC/DCコンバータ23の内部の入力側に第2コンデンサCd2が設けられるようにする。
【0085】
○ 第1逆流抑止部及び第2逆流抑止部は、以下のように変更してもよい。
図6に示すように、第1系統用第1正極配線Lp11と第1系統用第2正極配線Lp12との間には、第1系統用第1正極配線Lp11と第1系統用第2正極配線Lp12とを電気的に接続する結合状態と、電気的に遮断された遮断状態とを切り換える第1スイッチ部材81が設けられている。第1系統用第2正極配線Lp12上には、電流センサ70が設けられている。
【0086】
第2系統用第1正極配線Lp21と第2系統用第2正極配線Lp22との間には、第2系統用第1正極配線Lp21と第2系統用第2正極配線Lp22とを電気的に接続する結合状態と、第2系統用第1正極配線Lp21と第2系統用第2正極配線Lp22とを電気的に遮断する遮断状態とを切り換える第2スイッチ部材82が設けられている。第2系統用第2正極配線Lp22上には、電流センサ70が設けられている。
【0087】
各電流センサ70で検出される信号は、FCECU34に入力される。FCECU34は、入力された各電流センサ70で検出される信号に基づき第1系統用第2正極配線Lp12に第1コンデンサCd1の電荷が逆流しているか否かを判定し、且つ第2系統用第2正極配線Lp22に第2コンデンサCd2の電荷が逆流しているか否かを判定している。
【0088】
FCECU34は、第1系統用第2正極配線Lp12に第1コンデンサCd1の電荷が逆流していると判定したとき、第1スイッチ部材81を開状態にすることにより上記遮断状態にする。第1スイッチ部材81は、第1コンデンサCd1の電荷を第1系統用第1正極配線Lp11に向けて逆流させない第1逆流抑止部として機能する。
【0089】
FCECU34は、第2系統用第2正極配線Lp22に第2コンデンサCd2の電荷が逆流していると判定したとき、第2スイッチ部材82を開状態にすることにより上記遮断状態にする。第2スイッチ部材82は、第2コンデンサCd2の電荷を第2系統用第1正極配線Lp21に向けて逆流させない第2逆流抑止部として機能する。
【0090】
○ 第1系統10は、負荷11に電力を供給する系統であり、第2系統20は、第1補機21に電力を供給する系統であったが、これに限らない。第1系統10及び第2系統20は、互いに要求電圧が異なり、燃料電池50で発電された電力により駆動するものであればどのように変更してもよい。なお、第3系統30も同様に変更してもよい。
【0091】
○ 燃料電池50で発電される電力の電圧が140V、負荷11が駆動する電圧が80V、第1補機21が駆動する電圧が48V、第2補機31が駆動する電圧が12Vであったが、要求電圧は適宜変更してもよい。これに伴い、第1DC/DCコンバータ13、第2DC/DCコンバータ23、及び第3DC/DCコンバータ33を降圧コンバータとして採用するか、昇圧コンバータとして採用するかを適宜変更してもよい。
【0092】
○ 第1DC/DCコンバータ13の内部において、正極母線14は、第1中継配線16との接続点から第3中継配線18との接続点までの間に設けられる配線としてもよい。同様に、負極母線15は、第1中継配線16との接続点から第3中継配線18との接続点までの間に設けられる配線としてもよい。この場合、第1系統用第2正極配線Lp12を、第1DC/DCコンバータ13の内部の正極母線14と第1中継配線16との接続点まで延ばしてもよい。第1系統用第1負極配線Ln11を、第1DC/DCコンバータ13の内部の負極母線15と第1中継配線16との接続点まで延ばしてもよい。第1系統用第3正極配線Lp13を、第1DC/DCコンバータ13の内部の正極母線14と第3中継配線18との接続点まで延ばしてもよい。第1系統用第2負極配線Ln12を、第1DC/DCコンバータ13の内部の負極母線15と第3中継配線18との接続点まで延ばしてもよい。このように変更する場合、第1DC/DCコンバータ13の入力端13a,13b及び出力端13c,13dを設けず、第1DC/DCコンバータ13の内部まで直接的に各配線Lp12,Ln11,Lp13,Ln12を延ばしてもよい。
【0093】
同様に、第2DC/DCコンバータ23の内部において、正極母線14は、第1中継配線16との接続点から第3中継配線18との接続点までの間に設けられる配線としてもよい。同様に、負極母線15は、第1中継配線16との接続点から第3中継配線18との接続点までの間に設けられる配線としてもよい。この場合、第2系統用第2正極配線Lp22を、第2DC/DCコンバータ13の内部の正極母線14と第1中継配線16との接続点まで延ばしてもよい。第2系統用第1負極配線Ln21を、第2DC/DCコンバータ23の内部の負極母線15と第1中継配線16との接続点まで延ばしてもよい。第2系統用第3正極配線Lp23を、第2DC/DCコンバータ23の内部の正極母線14と第3中継配線18との接続点まで延ばしてもよい。第2系統用第2負極配線Ln22を、第2DC/DCコンバータ23の内部の負極母線15と第3中継配線18との接続点まで延ばしてもよい。このように変更する場合、第2DC/DCコンバータ23の入力端23a,23b及び出力端23c,23dを設けず、第2DC/DCコンバータ23の内部まで直接的に各配線Lp22,Ln21,Lp23,Ln22を延ばしてもよい。
【0094】
○ 燃料電池システム1はフォークリフトやトーイングトラクター等の産業車両に適用されていたが、これに限らない。例えば、燃料電池システム1は、燃料電池車両に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1…燃料電池システム、10…第1系統、11…負荷、12…第1蓄電装置、13…第1DC/DCコンバータ、19…制御部、20…第2系統、21…第1補機、22…第2蓄電装置、23…第2DC/DCコンバータ、30…第3系統、31…第2補機、32…第3蓄電装置、33…第3DC/DCコンバータ、41…第1ダイオード、42…第2ダイオード、50…燃料電池、61…第1充電率検出部、62…第2充電率検出部、81…第1スイッチ部材、82…第2スイッチ部材、Lp11…第1系統用第1正極配線、Lp12…第1系統用第2正極配線、Lp21…第2系統用第1正極配線、Lp22…第2系統用第2正極配線、Cd1…第1コンデンサ、Cd2…第2コンデンサ、Sw…スイッチング素子、S1…第1指令、S2…第2指令、S3…第3指令、SOC1,SOC2…充電率。