(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】防振ゴム組成物および防振ゴム部材
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20231011BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20231011BHJP
C08K 5/25 20060101ALI20231011BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/06
C08K5/25
C08K5/09
(21)【出願番号】P 2020013806
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】岡久 正志
(72)【発明者】
【氏名】笠井 誠司
(72)【発明者】
【氏名】内木 博章
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/182349(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/016545(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分からなるポリマーとともに、下記の(B)~(E)成分を含有
し、下記(C)成分と下記(D)成分との重量比(C:D)が、100:1~10:100である、ことを特徴とする防振ゴム組成物。
(A)ジエン系ゴム。
(B)充填材。
(C)ジヒドラジド化合物。
(D
)(メタ)アクリル酸亜
鉛。
(E)硫黄系加硫剤。
【請求項2】
上記ジヒドラジド化合物(C)が、下記の一般式(1)に示すジヒドラジド化合物である、請求項1記載の防振ゴム組成物。
【化1】
【請求項3】
上記ジヒドラジド化合物(C)の含有割合が、上記ジエン系ゴム(A)100重量部に対して0.01~5.0重量部の範囲である、請求項1または2記載の防振ゴム組成物。
【請求項4】
上記ジヒドラジド化合物(C)が、アジピン酸ジヒドラジドおよびイソフタル酸ジヒドラジドから選ばれた少なくとも一方である、請求項1~3のいずれか一項に記載の防振ゴム組成物。
【請求項5】
上記充填材(B)の含有割合が、上記ジエン系ゴム(A)100重量部に対して5~100重量部の範囲である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の防振ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の防振ゴム組成物の加硫体からなることを特徴とする防振ゴム部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車,電車等の車両等における防振用途に用いられる防振ゴム組成物および防振ゴム部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防振ゴムの技術分野においては、高耐久性や、静粛性を高めるために低動倍率化(動倍率〔動的ばね定数(Kd)/静的ばね定数(Ks)〕の値を小さくすること)等が要求される。
また、防振ゴムには、熱過酷地での使用等を考慮し、耐熱性も要求される。従来、防振ゴムのポリマーには、天然ゴム等のジエン系ゴムが使用されており、その加硫剤としては、一般的に硫黄系の加硫剤が用いられるが、このような防振ゴムは耐熱性に問題があった。そこで、上記問題に対処するために、防振ゴムの材料中にアクリル酸モノマーを含有させることが知られている(特許文献1等参照)。
しかしながら、上記のようにアクリル酸モノマーを含有させると、加硫ガスが発生しやすくなることから、防振ゴム内に発泡痕が生じやすくなる。このような発泡痕が生じると、防振ゴムの耐久使用時に発泡痕を起点として亀裂が進行しやすくなるといった問題が生じる。そのため、高耐久性、低動倍率化を維持したまま、耐熱性を高めるのは難しい。
そこで、本出願人は、防振ゴムの材料中に、アクリル酸モノマーを含有させるとともに、ハイドロタルサイト等の吸着フィラーを含有させることで、加硫ガスによる上記の問題を解消するといった手法を、既に開発している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2011/016545号公報
【文献】特許第5568493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年の市場の要請に対し、特許文献1に開示の防振ゴムは、低動倍率化において充分な性能を示しているとは言えなかったことから、本出願人は、高耐久性、低動倍率化、耐熱性といった、防振ゴムに要求される特性をより高めるため、更なる研究を行った。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、耐久性を損なうことなく、耐熱性と低動倍率化とを高度に両立することができる防振ゴム組成物および防振ゴム部材の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、吸着フィラーにより加硫ガスの発生を抑制するといった従来の手法ではなく、ポリマーの架橋密度を密にすることによりゴム組成物内から加硫ガスを追い出す効果を高めるといった手法を行うことを検討した。すなわち、ポリマーの架橋密度を密にし、加硫時に発生したガスを強制的に追い出す効果を高めることにより、上記の発泡痕が生じないようにすることを検討した。そして、このような、ポリマーの架橋密度を密にすることによる加硫ガスの追い出し効果の高い添加剤として、各種実験を重ねた結果、ジヒドラジド化合物が効果的であり、亀裂の起点となる発泡痕自体をなくすことができることを突き止めた。なお、モノヒドラジド化合物を使用した場合であっても、亀裂の進行を抑える効果は得られるが、ジヒドラジド化合物のほうが高反応性であり、ポリマーの架橋密度がより密になることから、加硫ガスを追い出す効果が大きい。しかも、ジヒドラジド化合物を使用することで、充填材の分散性が向上し、低動倍率化が促進されるようになる。そして、この手法により、吸着フィラーを添加することなく加硫ガスの発生を抑制することができる。
さらに、本発明では(メタ)アクリル酸亜鉛を使用することにより、耐熱性をより高めることができる。(メタ)アクリル酸亜鉛は、他のアクリル酸モノマーを含有させた場合よりも加硫ガスを発生させやすいが、上記手法により防振ゴムの発泡痕の問題を解消することができる。また、(メタ)アクリル酸亜鉛以外の(メタ)アクリル酸モノマーと酸化亜鉛とを含有させた場合も、ゴム練りにより、実質的に(メタ)アクリル酸亜鉛を加えたのと同様の効果が得られるため、耐熱性をより高めることができる。
【0007】
しかるに、本発明は、以下の[1]~[7]を、その要旨とする。
[1]下記の(A)成分からなるポリマーとともに、下記の(B)~(E)成分を含有することを特徴とする防振ゴム組成物。
(A)ジエン系ゴム。
(B)充填材。
(C)ジヒドラジド化合物。
(D)(メタ)アクリル酸モノマーおよび酸化亜鉛と、(メタ)アクリル酸亜鉛のいずれか一方。
(E)硫黄系加硫剤。
[2]上記ジヒドラジド化合物(C)が、下記の一般式(1)に示すジヒドラジド化合物である、[1]に記載の防振ゴム組成物。
【化1】
[3]上記ジヒドラジド化合物(C)の含有割合が、上記ジエン系ゴム(A)100重量部に対して0.01~5.0重量部の範囲である、[1]または[2]に記載の防振ゴム組成物。
[4]上記ジヒドラジド化合物(C)が、アジピン酸ジヒドラジドおよびイソフタル酸ジヒドラジドから選ばれた少なくとも一方である、[1]~[3]のいずれかに記載の防振ゴム組成物。
[5]上記(D)成分が(メタ)アクリル酸亜鉛であり、かつ、上記ジヒドラジド化合物(C)と(メタ)アクリル酸亜鉛(D)との重量比(C:D)が、100:1~10:100である、[1]~[4]のいずれかに記載の防振ゴム組成物。
[6]上記充填材(B)の含有割合が、上記ジエン系ゴム(A)100重量部に対して5~100重量部の範囲である、[1]~[5]のいずれかに記載の防振ゴム組成物。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の防振ゴム組成物の加硫体からなることを特徴とする防振ゴム部材。
【発明の効果】
【0008】
以上のことから、本発明の防振ゴム組成物は、耐久性を損なうことなく、耐熱性と低動倍率化とを高度に両立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0010】
本発明の防振ゴム組成物は、先に述べたように、下記の(A)成分からなるポリマーとともに、下記の(B)~(E)成分を含有する。
(A)ジエン系ゴム。
(B)充填材。
(C)ジヒドラジド化合物。
(D)(メタ)アクリル酸モノマーおよび酸化亜鉛と、(メタ)アクリル酸亜鉛のいずれか一方。
(E)硫黄系加硫剤。
【0011】
〔ジエン系ゴム(A)〕
上記のように、本発明の防振ゴム組成物は、ジエン系ゴム(A)からなるポリマーを用いている。なお、本発明において、ジエン系ゴム(A)以外のポリマーは、使用しないことが望ましい。上記ジエン系ゴム(A)としては、好ましくは、天然ゴム(NR)を主成分とするジエン系ゴムが用いられる。ここで、「主成分」とは、上記ジエン系ゴム(A)の50重量%以上が天然ゴムであるものを示し、上記ジエン系ゴム(A)が天然ゴムのみからなるものも含める趣旨である。このように、天然ゴムを主成分とすることにより、強度や低動倍率化の点で優れるようになる。
また、天然ゴム以外のジエン系ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なお、これらのジエン系ゴムは、天然ゴムと併用することが望ましい。なかでも、天然ゴムとイソプレンゴムを組合せて用いたものが、より好ましい。
【0012】
〔充填材(B)〕
上記充填材(B)としては、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム等が、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、振動特性の観点から、カーボンブラックが好ましい。そして、上記充填材(B)の50重量%以上がカーボンブラックであることが望ましく、上記充填材(B)の90重量%以上がカーボンブラックであることがより望ましい。
【0013】
上記カーボンブラックとしては、例えば、SAF級,ISAF級,HAF級,MAF級,FEF級,GPF級,SRF級,FT級,MT級等の種々のグレードのカーボンブラックが用いられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、振動特性・耐疲労性の観点から、FEF級カーボンブラックが好ましく用いられる。
【0014】
そして、耐久性と低動倍率化の観点から、上記カーボンブラックは、ヨウ素吸着量が10~110mg/gであり、また、DBP吸油量(ジブチルフタレート吸油量)が20~180ml/100gであることが好ましい。
なお、上記カーボンブラックのヨウ素吸着量は、JIS K 6217-1(A法)に準拠して測定された値である。また、上記カーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K 6217-4に準拠して測定された値である。
【0015】
上記シリカとしては、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカ等が用いられる。そして、これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0016】
そして、より一層、高耐久性、低動倍率化等を達成する観点から、上記シリカのBET比表面積は、50~320m2/gであることが好ましく、70~230m2/gであることがより好ましい。
なお、上記シリカのBET比表面積は、例えば、試料を200℃で15分間脱気した後、吸着気体として混合ガス(N2:70%、He:30%)を用いて、BET比表面積測定装置(マイクロデータ社製、4232-II)により測定することができる。
【0017】
そして、上記充填材(B)全体の含有量は、耐疲労性の観点から、前記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、5~100重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは10~80重量部の範囲、更に好ましくは15~75重量部の範囲である。
【0018】
〔ジヒドラジド化合物(C)〕
上記ジヒドラジド化合物(C)としては、動倍率の上昇を効果的に抑えることができることから、先に述べたように、下記の一般式(1)に示すジヒドラジド化合物が用いられる。
【0019】
【0020】
上記一般式(1)において、Rは、好ましくは、炭素数4~12のアルキレン基、フェニレン基である。
【0021】
そして、上記ジヒドラジド化合物(C)の具体例としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、低動倍率化の観点から、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドが好ましい。
【0022】
上記ジヒドラジド化合物(C)の含有量は、低動倍率化等の観点から、前記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、0.01~5.0重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~5.0重量部、更に好ましくは0.3~3.0重量部の範囲である。
【0023】
〔(メタ)アクリル酸モノマーおよび酸化亜鉛と、(メタ)アクリル酸亜鉛のいずれか一方(D)〕
本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸あるいはメタクリル酸を意味する。
上記(D)成分として、(メタ)アクリル酸モノマーおよび酸化亜鉛を併用したものを用いる場合、その(メタ)アクリル酸モノマーとしては、金属化合物を除くものが好ましく、例えば、アクリル酸2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ステアリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、イソボニルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレート、エトキシ化(2)ヒドロキシエチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
また、上記(D)成分として、(メタ)アクリル酸亜鉛を用いる場合、例えば、モノアクリル酸亜鉛、ジメタクリル酸亜鉛、ジアクリル酸亜鉛等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0024】
上記(D)成分として、(メタ)アクリル酸モノマーおよび酸化亜鉛を併用させる場合、(メタ)アクリル酸モノマーの含有量は、耐熱性等の観点から、前記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、0.5~10.0重量部であることが好ましく、より好ましくは1.0~8.0重量部の範囲であり、酸化亜鉛の含有量は、架橋反応等の観点から、前記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、1.0~20重量部であることが好ましく、より好ましくは3.0~10重量部の範囲である。
また、上記(D)成分として(メタ)アクリル酸亜鉛を単独で使用する場合、その含有量は、耐熱性等の観点から、前記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、0.3~10.0重量部であることが好ましく、より好ましくは0.3~5.0重量部、更に好ましくは1.0~5.0重量部の範囲である。
さらに、上記(D)成分が(メタ)アクリル酸亜鉛であるとき、動倍率の観点から、上記ジヒドラジド化合物(C)と(メタ)アクリル酸亜鉛(D)との重量比(C:D)は、100:1~10:100であることが好ましく、20:1~10:100であることがより好ましく、10:10~10:100であることが特に好ましい。
【0025】
〔硫黄系加硫剤(E)〕
上記硫黄系加硫剤(E)としては、例えば、硫黄(粉末硫黄,沈降硫黄,不溶性硫黄)、アルキルフェノールジスルフィド等の硫黄含有化合物等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0026】
また、上記硫黄系加硫剤(E)の含有量は、前記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、0.1~10重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.3~5重量部の範囲である。すなわち、上記硫黄系加硫剤(E)の含有量が少なすぎると、加硫反応性が悪くなる傾向がみられ、逆に上記硫黄系加硫剤(E)の含有量が多すぎると、ゴム物性(破断強度,破断点伸び)が低下する傾向がみられるからである。
【0027】
なお、本発明の防振ゴム組成物においては、その必須成分である前記(A)~(E)成分とともに、シランカップリング剤、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、プロセスオイル等を、必要に応じて適宜に含有させることも可能である。
【0028】
上記シランカップリング剤としては、例えば、メルカプト系シランカップリング剤、スルフィド系シランカップリング剤、アミン系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、ビニル系シランカップリング剤等が、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、上記シランカップリング剤が、メルカプト系シランカップリング剤やスルフィド系シランカップリング剤であると、加硫密度が上がり、低動倍率、耐久性に特に効果があるため、好ましい。
【0029】
上記メルカプト系シランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0030】
上記スルフィド系シランカップリング剤としては、例えば、ビス-(3-(トリエトキシシリル)-プロピル)-ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス-(3-(トリエトキシシリル)-プロピル)-テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリメトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0031】
上記アミン系シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0032】
上記エポキシ系シランカップリング剤としては、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0033】
上記ビニル系シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル・トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニル・トリス(2-メトキシエトキシ)シラン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0034】
これらのシランカップリング剤の含有量は、低動倍率、耐久性等に優れることから、前記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、0.5~20重量部であることが好ましく、より好ましくは1.0~10重量部である。
【0035】
上記加硫促進剤としては、例えば、チアゾール系,スルフェンアミド系,チウラム系,アルデヒドアンモニア系,アルデヒドアミン系,グアニジン系,チオウレア系等の加硫促進剤があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、架橋反応性に優れる点で、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
【0036】
また、上記加硫促進剤の含有量は、前記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、0.1~10重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.3~5重量部の範囲である。
【0037】
上記チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2-メルカプトベンゾチアゾールナトリウム塩(NaMBT)、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩(ZnMBT)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0038】
上記スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NOBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾイルスルフェンアミド(BBS)、N,N’-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾイルスルフェンアミド等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0039】
上記チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0040】
上記加硫助剤としては、例えば、ステアリン酸、酸化マグネシウム等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0041】
また、上記加硫助剤の含有量は、前記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、0.1~10重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.3~7重量部の範囲である。
【0042】
上記老化防止剤としては、例えば、カルバメート系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、ジフェニルアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、ワックス類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0043】
また、上記老化防止剤の含有量は、前記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、0.5~15重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは1~10重量部の範囲である。
【0044】
上記プロセスオイルとしては、例えば、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、アロマ系オイル等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0045】
また、上記プロセスオイルの含有量は、前記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し、1~35重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは3~30重量部の範囲である。
【0046】
〔防振ゴム組成物の調製方法〕
ここで、本発明の防振ゴム組成物は、その必須成分である(A)~(E)成分、および必要に応じて上記列記したその他の材料を用いて、これらをニーダー,バンバリーミキサー,オープンロール,二軸スクリュー式撹拌機等の混練機を用いて混練することにより、調製することができる。特に、加硫剤および加硫促進剤を除く全ての材料を同時に混練した後、加硫剤および加硫促進剤を加えることが好ましい。
【0047】
このようにして得られた本発明の防振ゴム組成物を、射出成形等により、高温(150~170℃)で5~30分間金型成形して、目的とする防振ゴム部材(加硫体)を製造することができる。
【0048】
そして、本発明の防振ゴム組成物の加硫体からなる防振ゴム部材は、自動車の車両等に用いられるエンジンマウント、スタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ、モーターマウント、サブフレームマウント等の構成部材として好ましく用いられる。なかでも、低動倍率であるとともに耐熱性や耐久性にも優れることから、電動モーターを動力源とする電気自動車(電気自動車(EV)の他、燃料電池自動車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、ハイブリッド車(HV)等も含む)用の、モーターマウント、サスペンションブッシュ、サブフレームマウント等の構成部材(電気自動車用防振ゴム部材)の用途に、有利に用いることができる。
また、上記用途以外にも、コンピューターのハードディスクの制振ダンパー、洗濯機等の一般家電製品の制振ダンパー、建築・住宅分野における建築用制震壁,制震(制振)ダンパー等の制震(制振)装置および免震装置の用途にも用いることができる。
【実施例】
【0049】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0050】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0051】
[NR]
天然ゴム
【0052】
[IR]
ニポールIR2200、日本ゼオン社製
【0053】
[BR]
ニポール1220、日本ゼオン社製
【0054】
[酸化亜鉛]
酸化亜鉛二種、堺化学工業社製
【0055】
[ステアリン酸]
ビーズステアリン酸さくら、日本油脂社製
【0056】
[老化防止剤]
アンチゲン6C、住友化学社製
【0057】
[カーボンブラック(i) ]
FEF級カーボンブラック(シーストSO、東海カーボン社製、ヨウ素吸着量:44mg/g、DBP吸油量:115ml/100g)
【0058】
[カーボンブラック(ii) ]
FT級カーボンブラック(シーストTA、東海カーボン社製、BET比表面積19m2/g)
【0059】
[シリカ(i) ]
ニプシールVN3、東ソー・シリカ社製、BET比表面積200m2/g
【0060】
[シリカ(ii) ]
ニプシールER、東ソー・シリカ社製、BET比表面積100m2/g
【0061】
[プロセスオイル]
サンセン410、日本サン石油社製
【0062】
[(メタ)アクリル酸モノマー(i)]
(メタ)アクリル酸亜鉛(SR709、サートマー社製)
【0063】
[(メタ)アクリル酸モノマー(ii)]
アクリル酸2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル(スミカライザーGM、住友化学社製)
【0064】
[(メタ)アクリル酸モノマー(iii)]
ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート(アロニックスM111、東亞合成化学社製)
【0065】
[ヒドラジド化合物(i) ]
イソフタル酸ジヒドラジド(IDH)、大塚化学社製
【0066】
[ヒドラジド化合物(ii) ]
アジピン酸ジヒドラジド(ADH)、大塚化学社製
【0067】
[ヒドラジド化合物(iii)]
3-ヒドロキシ-2-ナフエト酸ヒドラジド(HNH)、大塚化学社製
【0068】
[シランカップリング剤]
NXT Z45、MOMENTIVE社製
【0069】
[加硫促進剤]
サンセラーCZ-G、三新化学社製
【0070】
[硫黄]
硫黄、軽井沢製錬所社製
【0071】
[実施例1~14、比較例1~3]
上記各材料を、後記の表1および表2に示す割合で配合して混練することにより、防振ゴム組成物を調製した。なお、上記混練は、まず、加硫剤(硫黄)と加硫促進剤以外の材料を、バンバリーミキサーを用いて140℃で5分間混練し、ついで、加硫剤と加硫促進剤を配合し、オープンロールを用いて60℃で5分間混練することにより行った。
【0072】
このようにして得られた実施例および比較例の防振ゴム組成物を用い、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。その結果を、後記の表1および表2に併せて示した。
【0073】
≪動倍率≫
各防振ゴム組成物を、160℃×20分の条件でプレス成形(加硫)し、テストピースを作製した。そして、上記テストピースの静ばね定数(Ks)を、JIS K 6394に準じて測定した。また、JIS K 6385に準じて、上記テストピースの、周波数100Hzでの貯蔵ばね定数(Kd100)を求めた。そして、貯蔵ばね定数(Kd100)を静ばね定数(Ks)で割った値を動倍率(Kd100/Ks)とした。
下記の表1および表2には、比較例1における動倍率(Kd100/Ks)の測定値を100としたときの、各実施例および比較例における動倍率の測定値を指数換算したものを表記した。そして、その値が、比較例1における動倍率の、95%未満であるものを「○」と評価し、95%以上であるものを「×」と評価した。
【0074】
≪耐熱性≫
各防振ゴム組成物を、160℃×20分の条件でプレス成形(加硫)し、テストピースを作製した。そして、JIS K 6251に準じて、23℃の雰囲気下で初期の破断点伸び(Eb)を測定した。つぎに、上記作製のテストピースを、100℃の高温雰囲気下で70時間放置した(熱老化試験)後、上記と同様にして、破断点伸び(Eb)を測定した。そして、初期の破断点伸びに対する、熱老化試験後の破断点伸びの低下率(ΔEb)を算出した。
そして、耐熱性評価において、上記低下率(ΔEb)の値が、15%未満であるものを「○」と評価し、15%以上であるものを「×」と評価した。
【0075】
≪発砲解消性≫
各防振ゴム組成物の未加硫ゴムシート(厚み12.5mm)を、直径28mmの円筒状に打抜き、サンプルを作製し、そのサンプルを、150℃のオーブン内で20分間加熱(プレスをかけないで加硫)した。
そして、上記サンプルの外観や、上記サンプルを切断した際の断面の発泡状態を目視評価し、上記サンプルに発泡痕が顕著に確認されたものを「×」と評価し、若干の発泡痕は確認されたが、実使用に支障のない程度であったものを「△」と評価し、発泡痕が確認されなかったものを「○」と評価した。
【0076】
【0077】
【0078】
上記表1および表2の結果から、実施例の防振ゴム組成物は、発泡解消性評価において発砲痕が確認されなかったことから、耐久性を損なうものではなく、さらに、耐熱性と低動倍率化においても、基準を満たす結果となった。
これに対し、比較例1の防振ゴム組成物は、ジヒドラジド化合物を含まず、(メタ)アクリル酸亜鉛に起因する発泡痕を解消することができなかった。比較例2の防振ゴム組成物は、(メタ)アクリル酸亜鉛をはじめとする(メタ)アクリル酸モノマーを一切含まず、耐熱性に劣る結果となった。比較例3の防振ゴム組成物は、モノヒドラジド化合物(3-ヒドロキシ-2-ナフエト酸ヒドラジド)を含むが、ジヒドラジド化合物を含まず、実施例よりも動倍率が高く、発泡解消性評価にも劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の防振ゴム組成物は、自動車の車両等に用いられるエンジンマウント、スタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ、モーターマウント、サブフレームマウント等の構成部材(防振ゴム部材)の材料として好ましく用いられるが、それ以外にも、コンピューターのハードディスクの制振ダンパー、洗濯機等の一般家電製品の制振ダンパー、建築・住宅分野における建築用制震壁,制震(制振)ダンパー等の制震(制振)装置および免震装置の構成部材(防振ゴム部材)の材料にも用いることができる。