(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20231011BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H02M7/12 Q
H02M3/155 P
(21)【出願番号】P 2020017422
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大河内 裕太
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/239453(WO,A1)
【文献】特開2019-165245(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199299(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上のスイッチング素子を含むDC電圧生成装置と、
前記DC電圧生成装置の出力を検出し、検出電圧を生成する出力電圧検出部と、
前記DC電圧生成装置に流れる電流と前記検出電圧から前記一つ以上のスイッチング素子を制御する制御装置と、
を備え、前記一つ以上のスイッチング素子の少なくとも一つはSiよりもワイドバンドギャップな半導体を用いたデバイスであ
り、
前記DC電圧生成装置は交流電源から直流電源を生成し、
前記DC電圧生成装置はPFC[power factor correction]回路であり、少なくとも一つのインダクタを含み、
前記制御装置は、
前記DC電圧生成装置に流れる電流に応じた値と前記DC電圧生成装置の出力電圧に応じた値を乗算する乗算器と、
前記DC電圧生成装置を制御する信号の最大オンデューティ値を設定する最大オンデューティ設定部と、
前記最大オンデューティ設定部の出力から前記乗算器の出力を減加算する減加算器と、
前記減加算器の出力に応じたパルスを出力するPWM生成回路と、
を備える、電力変換装置。
【請求項2】
前記一つ以上のスイッチング素子はSiCデバイス、及びGaNデバイスの少なくとも一方を含む
、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記PFC回路は
全波整流型ダイオードブリッジと、
前記一つ以上のスイッチング素子と、
を備え、前記全波整流型ダイオードブリッジと前記一つ以上のスイッチング素子との間に前記少なくとも一つのインダクタが接続されている昇圧チョッパ型PFC回路である
、請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記一つ以上のスイッチング素子は、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とを含み、
前記第1スイッチング素子の第1端子は、第1出力ノードに接続され、前記第1スイッチング素子の第2端子、及び前記第2スイッチング素子の第1端子は前記少なくとも一つのインダクタに接続され、前記第2スイッチング素子の第2端子は第2出力ノードに接続され、
前記第1スイッチング素子はショットキーバリアダイオード、またはジャンクションバリアダイオードであり、前記第2スイッチング素子はトランジスタである
、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1スイッチング素子は、10
-2A/cm
2以下のリーク電流特性である
、請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
一つ以上のスイッチング素子を含むDC電圧生成装置と、
前記DC電圧生成装置の出力を検出し、検出電圧を生成する出力電圧検出部と、
前記DC電圧生成装置に流れる電流と前記検出電圧から前記一つ以上のスイッチング素子を制御する制御装置と、
を備え、前記一つ以上のスイッチング素子の少なくとも一つはSiよりもワイドバンドギャップな半導体を用いたデバイスであ
り、
前記DC電圧生成装置は交流電源から直流電源を生成し、
前記DC電圧生成装置はPFC[power factor correction]回路であり、少なくとも一つのインダクタを含み、
前記PFC回路は全波整流型ダイオードブリッジを持たないPFC回路であって、
前記一つ以上のスイッチング素子は、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子と第3スイッチング素子と第4スイッチング素子とを含み、
前記第1スイッチング素子の第1端子は第1出力ノードに接続され、前記第1スイッチング素子の第2端子は第1スイッチングノードに接続され、
前記第2スイッチング素子の第1端子は前記第1スイッチングノードに接続され、前記第2スイッチング素子の第2端子は第2出力ノードに接続され、
前記第3スイッチング素子の第1端子は前記第1出力ノードに接続され、前記第3スイッチング素子の第2端子は第2スイッチングノードに接続され、
前記第4スイッチング素子の第1端子は前記第2スイッチングノードに接続され、前記第4スイッチング素子の第2端子は前記第2出力ノードに接続されており、
前記少なくとも一つのインダクタは前記交流電源の第1端子である第1入力ノードと前記第1スイッチングノードとの間、及び前記交流電源の第2端子である第2入力ノードと前記第2スイッチングノードとの間のうち、少なくとも一方に接続され、
前記制御装置は、
前記DC電圧生成装置に流れる電流に応じた値と前記DC電圧生成装置の出力電圧に応じた値を乗算する乗算器と、
前記DC電圧生成装置を制御する信号の最大オンデューティ値を設定する最大オンデューティ設定部と
前記最大オンデューティ設定部の出力から前記乗算器の出力を減加算する減加算器と、
前記減加算器の出力に応じたパルスを出力するPWM生成回路と、
前記交流電源の極性により前記PWM生成回路の出力先を切り替える切換器と、
を備える、電力変換装置。
【請求項7】
前記第1スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子はダイオードであり、
前記第2スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子はトランジスタである
、請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記ダイオードはショットキーバリアダイオード、またはジャンクションバリアダイオードである
、請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記ダイオードは、10
-2A/cm
2以下のリーク電流特性である
、請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子はトランジスタであり、
前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子はダイオードである
、請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記トランジスタはSiCトランジスタ又はGaNトランジスタである
、請求項10に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子にはさらにそれぞれ個別にショットキーバリアダイオード、又はジャンクションバリアダイオードのいずれか一方が並列接続する
、請求項11に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記ショットキーバリアダイオード、又はジャンクションバリアダイオードは10
-2A/cm
2以下のリーク電流特性である
、請求項12に記載の電力変換装置。
【請求項14】
前記制御装置は、
前記交流電源の正極時に、前記DC電圧生成装置に流れる電流と前記検出電圧から定まるオンディーティで前記第2スイッチング素子をスイッチング動作させると共に前記第4スイッチング素子をオン状態にさせ、
前記交流電源の負極時に、前記オンディーティで前記第4スイッチング素子をスイッチング動作させると共に前記第2スイッチング素子をオン状態にさせる
、請求項7~9のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項15】
前記制御装置は、
前記交流電源の正極時に、前記DC電圧生成装置に流れる電流と前記検出電圧から定まるオンディーティで前記第1スイッチング素子をスイッチングさせると共に前記第2スイッチング素子を前記第1スイッチング素子とは相補的にスイッチングさせ、
前記交流電源の負極時に、前記オンディーティで前記第2スイッチング素子をスイッチングさせると共に前記第1スイッチング素子を前記第2スイッチング素子とは相補的にスイッチングさせる
、請求項10~13のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項16】
前記PFC回路は全波整流型ダイオードブリッジを持たないPFC回路であって、
前記一つ以上のスイッチング素子は、第1トランジスタと第2トランジスタと第3トランジスタと第4トランジスタとを含み、
前記第1トランジスタの第1端子は第1出力ノードに接続され、前記第1トランジスタの第2端子は第1スイッチングノードに接続され、
前記第2トランジスタの第1端子は前記第1スイッチングノードに接続され、前記第2トランジスタの第2端子
は第2出力ノードに接続され、
前記第3トランジスタの第1端子は前記第1出力ノードに接続され、前記第3トランジスタの第2端子は第2スイッチングノードに接続され、
前記第4トランジスタの第1端子は前記第2スイッチングノードに接続され、前記第4トランジスタの第2端子は前記第2出力ノードに接続されており、
前記少なくとも一つのインダクタは前記交流電源の第1端子である第1入力ノードと前記第1スイッチングノードとの間、及び前記交流電源の第2端子である第2入力ノードと前記第2スイッチングノードとの間のうち、少なくとも一方に接続される
、請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項17】
前記制御装置は、
前記交流電源の正極時に、前記DC電圧生成装置に流れる電流と前記検出電圧から定まるオンディーティで前記第2トランジスタをスイッチング動作させると共に前記第4トランジスタをオン状態、前記第1トランジスタ及び前記第3トランジスタをオフ状態にさせ、
前記交流電源の負極時に、前記オンディーティで前記第4トランジスタをスイッチング動作させると共に前記第2トランジスタをオン状態、前記第1トランジスタ及び前記第3トランジスタをオフ状態にさせる
、請求項16に記載の電力変換装置。
【請求項18】
前記制御装置は、
前記交流電源の正極時に、前記DC電圧生成装置に流れる電流と前記検出電圧から定まるオンディーティで前記第1トランジスタをスイッチングさせると共に前記第2トランジスタを前記第1トランジスタとは相補的にスイッチングさせ、前記第3トランジスタ及び前記第4トランジスタをオフ状態とし、
前記交流電源の負極時に、前記オンディーティで前記第2トランジスタをスイッチングさせると共に前記第1トランジスタを前記第2トランジスタとは相補的にスイッチングさせ、前記第3トランジスタ及び前記第4トランジスタをオフ状態とさせる
、請求項16に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は電力変換装置及びこれに用いられる制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
力率改善を行いながら交流電力を直流電力に変換するPFC[power factor correction]回路が存在する。PFC回路の制御主体としては、出力電圧、出力電流、及び、交流電源、それぞれに応じて負帰還を掛けるPI[proportional-integral]制御方式のアナログ制御装置が一般的である。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、PI制御方式のアナログ制御装置は電圧制御用と電流制御用の2つの補償器(アンプ)が必要となり、回路規模が大きかった。さらに、ダイオードブリッジレスのPFC回路では、交流電源に応じた制御信号を単純な抵抗分圧から生成することが困難になる。そのため、交流電源の印加端とアナログ制御装置との間に、商用周波数用のトランスを設けるなどの追加部品が必要になるので、小型化や低コスト化に不向きであった。なお、アナログ制御装置を単純にデジタル制御装置に置き換えても、上記課題は解消されない。
【0006】
また、さらには、電流連続モードにおけるPFC制御の場合、還流ダイオードに発生するリカバリ電流が流れることにより、電力を損失する課題がある。上記還流ダイオードはスイッチング素子の寄生ダイオードの場合でも同様である。
【0007】
上記、小型化や低コスト化の課題を解決するための従来技術として、交流電源の代わりに入力電流を検出して負帰還を掛けるアナログ制御装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。確かに、本従来技術によれば、電流制御用の補償器を省略することができる上、交流電源に応じた制御信号も不要となるので、帰還ループの調整や回路規模の点で有利である。
【0008】
しかしながら、特許文献1のアナログ制御装置は、電流連続モードにおけるリカバリ電流による電力損失に対する最適化は実施されてはおらず、電力損失において求められる要求においては、これをそのまま適用することはできなかった。
【0009】
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者により見出された上記の問題点に鑑み、直流電圧を生成する最適なスイッチ回路の構成とそれを制御するデジタル制御装置によりリカバリ電流による電力損失を低減することのできる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書中に開示されている電力変換装置は一つ以上のスイッチング素子を含むDC電圧生成装置と、前記DC電圧生成装置の出力を検出し、検出電圧を生成する出力電圧検出部と、前記DC電圧生成装置に流れる電流と前記検出電圧から前記一つ以上のスイッチング素子を制御する制御装置と、を備え、前記一つ以上のスイッチング素子の少なくとも一つはSiよりもワイドバンドギャップな半導体を用いたデバイスを使用した構成(第1の構成)にしてもよい。
【0011】
また、第1の構成からなる電力変換装置において、前記一つ以上のスイッチング素子はSiCデバイス、及びGaNデバイスの少なくとも一方を含む構成(第2の構成)にしてもよい。
【0012】
また、第1又は第2の構成からなる電力変換装置において、前記DC電圧生成装置は交流電源から直流電源を生成する構成(第3の構成)にしてもよい。
【0013】
また、第3の構成からなる電力変換装置において、前記DC電圧生成装置はPFC[power factor correction]回路であり、少なくとも一つのインダクタを含む構成(第4の構成)にしてもよい。
【0014】
また、第4の構成からなる電力変換装置において、前記PFC回路は、全波整流型ダイオードブリッジと、前記一つ以上のスイッチング素子とを備え、前記全波整流型ダイオードブリッジと前記一つ以上のスイッチング素子との間に前記少なくとも一つのインダクタが接続されている昇圧チョッパ型PFC回路の構成(第5の構成)にしてもよい。
【0015】
また、第5の構成からなる電力変換装置において、前記一つ以上のスイッチング素子は、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とを含み、前記第1スイッチング素子の第1端子は、第1出力ノードに接続され、前記第1スイッチング素子の第2端子、及び前記第2スイッチング素子の第1端子は前記少なくとも一つのインダクタに接続され、前記第2スイッチング素子の第2端子は第2出力ノードに接続され、前記第1スイッチング素子はショットキーバリアダイオード、またはジャンクションバリアダイオードであり、前記第2スイッチング素子はトランジスタである構成(第6の構成)にしてもよい。
【0016】
また、第6の構成からなる電力変換装置において、前記第1スイッチング素子は、10-2A/cm2以下のリーク電流特性である構成(第7の構成)にしてもよい。
【0017】
また、第4の構成からなる電力変換装置において、前記PFC回路は全波整流型ダイオードブリッジを持たないPFC回路であって、前記一つ以上のスイッチング素子は、第1スイッチング素子S11と第2スイッチング素子S12と第3スイッチング素子S13と第4スイッチング素子S14とを含み、前記第1スイッチング素子S11の第1端子はノードDC1に接続され、前記第1スイッチング素子S11の第2端子はノードN11に接続され、前記第2スイッチング素子S12の第1端子は前記ノードN11に接続され、前記第2スイッチング素子S12の第2端子はノードDC2に接続され、前記第3スイッチング素子S13の第1端子は前記ノードDC1に接続され、前記第3スイッチング素子S13の第2端子はノードN12に接続され、前記第4スイッチング素子S14の第1端子は前記ノードN12に接続され、前記第4スイッチング素子S14の第2端子は前記ノードDC2に接続され、前記少なくとも一つのインダクタは前記交流電源の第1端子であるノードAC1と前記ノードN11との間、及び前記交流電源の第2端子であるノードAC2と前記ノードN12との間のうち、少なくとも一方に接続される構成(第8の構成)にしてもよい。
【0018】
また、第8の構成からなる電力変換装置において、前記第1スイッチング素子S11及び前記第3スイッチング素子S13はダイオードであり、前記第2スイッチング素子S
12及び前記第4スイッチング素子S14はトランジスタであるブリッジレス型PFC回路の構成(第9の構成)にしてもよい。
【0019】
また、第9の構成からなる電力変換装置において、前記ダイオードはショットキーバリアダイオード、またはジャンクションバリアダイオード(第10の構成)にしてもよい。
【0020】
また、第10の構成からなる電力変換装置において、前記ダイオードは、10-2A/cm2以下のリーク電流特性である構成(第11の構成)にしてもよい。
【0021】
また、第8の構成からなる電力変換装置において、前記第1スイッチング素子S11及び前記第2スイッチング素子S12はトランジスタであり、前記第3スイッチング素子S13及び前記第4スイッチング素子S14はダイオードであるトーテムポール型PFC回路の構成(第12の構成)にしてもよい。
【0022】
また、第12の構成からなる電力変換装置において、前記トランジスタはSiCトランジスタ又はGaNトランジスタの構成(第13の構成)にしてもよい。
【0023】
また、第13の構成からなる電力変換装置において、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子にはさらにそれぞれ個別にショットキーバリアダイオード、又はジャンクションバリアダイオードのいずれか一方が並列接続する構成(第14の構成)にしてもよい。
【0024】
また、第14の構成からなる電力変換装置において、前記ショットキーバリアダイオード、及び前記ジャンクションバリアダイオードは10-2A/cm2以下のリーク電流特性である構成(第15の構成)にしてもよい。
【0025】
また、第4~7のいずれか一項の構成からなる電力変換装置において、前記PFC回路又は前記昇圧チョッパ型PFC回路における制御装置は、前記DC電圧生成装置に流れる電流に応じた値と前記DC電圧生成装置の出力電圧に応じた値を乗算する乗算器と、前記DC電圧生成装置を制御する信号の最大オンデューティ値を設定する最大オンデューティ設定部と、前記最大オンデューティ設定部の出力から前記乗算器の出力を減加算する減加算器と、前記減加算器の出力に応じたパルスを出力するPWM生成回路と、を備えた構成(第16の構成)にしてもよい。
【0026】
また、第8~第15のいずれか一項の構成からなる電力変換装置において、前記全波整流型ダイオードブリッジを持たないPFC回路における制御装置は、前記DC電圧生成装置に流れる電流に応じた値と前記DC電圧生成装置の出力電圧に応じた値を乗算する乗算器と、前記DC電圧生成装置を制御する信号の最大オンデューティ値を設定する最大オンデューティ設定部と、前記最大オンデューティ設定部の出力から前記乗算器の出力を減加算する減加算器と、前記減加算器の出力に応じたパルスを出力するPWM生成回路と、前記交流電源の極性により前記PWM生成回路の出力先を切り替える切換器と、を備えた構成(第17の構成)にしてもよい。
【0027】
また、第9~第11のいずれか一項の構成からなる電力変換装置において、前記ブリッジレス型PFC回路の制御装置は、前記交流電源の正極時に、前記DC電圧生成装置に流れる電流と前記検出電圧から定まるオンディーティで前記第2スイッチング素子S12をスイッチング動作させると共に前記第4スイッチング素子S14をオン状態にさせ、前記交流電源の負極時に、前記オンディーティで前記第4スイッチング素子S14をスイッチング動作させると共に前記第2スイッチング素子S12をオン状態にさせる構成(第18の構成)にしてもよい。
【0028】
また、第12~第15のいずれか一項の構成からなる電力変換装置において、前記トーテムポール型PFC回路の制御装置は、前記交流電源の正極時に、前記DC電圧生成装置に流れる電流と前記検出電圧から定まるオンディーティで前記第1スイッチング素子S11をスイッチングさせると共に前記第2スイッチング素子S12を前記第1スイッチング素子とは相補的にスイッチングさせ、前記交流電源の負極時に、前記オンディーティで前記第2スイッチング素子S12をスイッチングさせると共に前記第1スイッチング素子S11を前記第2スイッチング素子S12とは相補的にスイッチングさせる構成(第19の構成)にしてもよい。
【0029】
また、第4の構成からなる電力変換装置において、前記PFC回路は全波整流型ダイオードブリッジを持たないPFC回路であって、前記一つ以上のスイッチング素子は、第1トランジスタT1と第2トランジスタT2と第3トランジスタT3と第4トランジスタT4とを含み、前記第1トランジスタT1の第1端子はノードDC1に接続され、前記第1トランジスタT1の第2端子は第1スイッチングノードN11に接続され、前記第2トランジスタT2の第1端子は前記第1スイッチングノードN11に接続され、前記第2トランジスタT2の第2端子はノードDC2に接続され、前記第3トランジスタT3の第1端子はノードDC1に接続され、前記第3トランジスタT3の第2端子は第2スイッチングノードN12に接続され、前記第4トランジスタT4の第1端子は前記第2スイッチングノードN12に接続され、前記第4トランジスタの第2端子はノードDC2に接続されており、前記少なくとも一つのインダクタは前記交流電源の第1端子であるノードAC1と前記ノードN11との間、及び前記交流電源の第2端子であるノードAC2と前記ノードN12との間のうち、少なくとも一方に接続される構成(第20の構成)にしてもよい。
【0030】
また、第20の構成からなる電力変換装置において、前記制御装置は、前記交流電源の正極時に、前記DC電圧生成装置に流れる電流と前記検出電圧から定まるオンディーティで前記第2トランジスタT2をスイッチング動作させると共に前記第4トランジスタT4をオン状態、前記第1トランジスタT1及び前記第3トランジスタT3をオフ状態とし、前記交流電源の負極時に、前記オンディーティで前記第4トランジスタT4をスイッチング動作させると共に前記第2トランジスタT2をオン状態、前記第1トランジスタT1及び前記第3トランジスタT3をオフ状態にさせる構成(第21の構成)にしてもよい。
【0031】
また、第20の構成からなる電力変換装置において、前記制御装置は、前記交流電源の正極時に、前記DC電圧生成装置に流れる電流と前記検出電圧から定まるオンディーティで前記第1トランジスタT1をスイッチングさせると共に前記第2トランジスタT2を前記第1トランジスタT1とは相補的にスイッチングさせ、前記第3トランジスタT3及び前記第4トランジスタT4をオフ状態とし、前記交流電源の負極時に、前記オンディーティで前記第2トランジスタT2をスイッチングさせると共に前記第1トランジスタT1を前記第2トランジスタT2とは相補的にスイッチングさせ、前記第3トランジスタT3及び前記第4トランジスタT4をオフ状態にさせる構成(第22の構成)にしてもよい。
【発明の効果】
【0032】
本明細書中に開示されている発明によれば、電力変換装置における電力の損失を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図7】第2実施形態に係わる電力変換装置の第1構成例を示す図
【
図8】第2実施形態に係わる電力変換装置の第1構成例における入出力波形
【
図9】第2実施形態に係わる電力変換装置の第2構成例を示す図
【
図10】第2実施形態に係わる電力変換装置の第2構成例における入出力波形
【
図11】第2実施形態に係わる電力変換装置の第3構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0034】
<電力変換装置(概略形態)>
図1は電力変換装置の概略構成例を示す図である。本構成例の電力変換装置1は、DC電圧生成装置100と制御装置200と出力電圧検出部300とを有する。
【0035】
DC電圧生成装置100は、AC電源10からのAC電源入力VACを受け、DC電圧生成装置100内の一つ以上のスイッチング素子の制御により直流電圧VDCに変換して出力する。
【0036】
出力電圧検出部300はDC電圧生成装置100の直流電圧VDCから検出電圧VFBを出力する。
【0037】
制御装置200は、検出電圧VFBとDC電圧生成装置100に流れる電流を基にDC電圧生成装置100内の一つ以上のスイッチング素子を制御する信号を生成する。
【0038】
一つ以上のスイッチング素子は、少なくとも一つはSiよりもワイドバンドギャップな半導体を用いたデバイスを使用する。また、ワイドバンドギャップな半導体としては、SiC、及びGaNの少なくとも一方を含む。
【0039】
SiCデバイスとしては、SiCで構成されるショットキーバリアダイオード、ジャンクションバリアダイオード、PNダイオード、及びSiCトランジスタを使用してもよい。
【0040】
GaNデバイスとしては、GaNで構成されるショットキーバリアダイオード、ジャンクションバリアダイオード、及びGaNトランジスタを使用してもよい。
【0041】
<電力変換装置(第1実施形態)>
図2は電力変換装置の第1実施形態の一例を示す図である。第1実施形態の電力変換装置1は、DC電圧生成装置100と制御装置200と出力電圧検出部300を有する。
【0042】
DC電圧生成装置100は、PFC回路であり、ダイオードD1~D4と、インダクタL1と、コンデンサC1と、一つ以上のスイッチング素子(
図2ではスイッチング素子S1はダイオード、S2はN型トランジスタ)を含む昇圧チョッパ型PFCである。
【0043】
ダイオードD1及びD2のそれぞれのアノードはノードDC2に接続されている。ダイオードD3及びD4のカソードはインダクタL1の第1端子に接続されている。ダイオードD1のカソード及びダイオードD3のアノードはAC電源10のノードAC1に接続されている。ダイオードD2のカソード及びダイオードD4のアノードはAC電源10のノードAC2に接続されている。スイッチング素子S1のカソードはノードDC1に接続されている。スイッチング素子S1のアノードはスイッチング素子S2のドレイン及びインダクタL1の第2端子であるノードN1に接続されている。スイッチング素子S2のソースはノードDC2に接続されている。コンデンサC1の第1端子はノードDC1に接続されている。コンデンサC1の第2端子はノードDC2に接続されている。スイッチング素子S2のゲートには、制御装置200から出力される信号G1が接続されている。
【0044】
なお、
図2では記載はないが、ノイズ耐性強化にあたっては、必要に応じてAC電源10とダイオードD1~D4で構成されるダイオードブリッジ101の間にフィルタ(EMIフィルタなど)を挿入してもよいし、インダクタL1の第1端子とノードDC2の間にコンデンサを挿入してもよい。
【0045】
スイッチング素子S2は信号G1がハイレベルであるときオンし、信号G1がローレベルであるときオフする。スイッチング素子S1及びS2は、少なくとも一つはSiよりもワイドバンドギャップな半導体を用いたデバイスを使用する。ワイドバンドギャップな半導体としては、SiC、及びGaNの少なくとも一方を含む。
【0046】
SiCデバイスとしては、SiCで構成されるショットキーバリアダイオード、ジャンクションバリアダイオード、及びSiCトランジスタを使用してもよい。
【0047】
GaNデバイスとしては、GaNで構成されるショットキーバリアダイオード、ジャンクションバリアダイオード、及びGaNトランジスタを使用してもよい。
【0048】
なお、SiC及び、GaNで構成されるショットキーバリアダイオード、及びジャンクションバリアダイオードのリーク電流特性としては、10-2A/cm2以下としてもよい。
【0049】
出力電圧検出部300は、直流電源VDCから検出電圧VFBを生成する。なお、検出電圧VFBは抵抗R1と抵抗R2を基に生成される。
【0050】
抵抗R1の第1端子はDC電圧生成装置100の出力が接続されている。抵抗R1の第2端子及び抵抗R2の第1端子は出力電圧検出部300の出力が接続されている。抵抗R2の第2端子はノードDC2に接続されている。
【0051】
抵抗R1の第2端子と抵抗R2の第1端子の接続ノードN3と、出力電圧検出部300の出力との間には、必要に応じてバッファアンプを搭載してもよい。
【0052】
制御装置200は、DC電圧生成装置100(延いては電力変換装置1全体)の制御主体であり、その各種機能部として、電流値変換回路201と、直流電圧設定部202と、減加算器203と、乗算器204と、最大オンデューティ設定部205と、減加算器206と、PWM生成回路207と、補償器210と、を含む。なお、上記機能ブロックはアナログ回路及びデジタル回路を混載した制御回路により実装されている。
【0053】
電流値変換回路201は、DC電圧生成装置100に流れる電流値をデジタル出力する。なお、電流から電圧への変換は、I/V変換装置電圧を制御装置200内で設けてもよいし、DC電圧生成装置100でI/V変換された電圧値を入力として受けてもよい。
【0054】
直流電圧設定部202は、直流電源VDCを設定し、減加算器に203に出力する。
【0055】
減加算器203は、検出電圧VFBから直流電圧設定部202の出力値を減加算し、補償器210へ出力する。
【0056】
補償器210は、入力信号の位相及び利得の補償を行い、乗算器204へ出力する。
【0057】
乗算器204は、電流値変換回路201の出力と減加算器203の出力値を乗算し減加算器206へ出力する。
【0058】
最大オンデューティ設定部205は、DC電圧生成装置100のスイッチング素子S1のゲートを制御するにあたってPWM[pulse width modulation]信号の最大オンデューティ値を設定する。
【0059】
減加算器206は、最大オンデューティ設定部205の出力から乗算器204の出力を減加算し、PWM生成回路207へ出力する。
【0060】
PWM生成回路207は、減加算器206の出力に応じたPWM信号を生成し、DC電圧生成装置100内のスイッチング素子S1のゲートを制御する信号G1として出力する。生成されるPWM信号は、おおよそ10KHz~100KHzの周波数をもち、AC電源10の周期50Hz又は60Hzに対し、100倍以上高速な周期のパルスを生成する。
【0061】
このように、制御装置200は、DC電圧生成装置100に流れる電流に応じた絶対値とDC電圧生成装置100の出力電圧に応じた値を乗算し、設定された最大オンデューティ値との差からDC電圧生成装置100のスイッチング素子S1をPWM制御することでAC電源10から直流電源VDCが生成される様にDC電圧生成装置100を制御する。
【0062】
なお、これまで説明してきた
図2は、電力変換装置1におけるPFC動作(AC→DC)の一例を示す図でもある。本図では、ノードAC1とノードAC2との間に、交流電力(交流電源VAC、入力電流Iin)を供給するAC電源10が接続されている。また、ノードDC1とノードDC2との間には、直流電力(出力電圧VDC、出力電流Iout)の供給を受ける直流負荷Z1が接続されている。このとき、DC電圧生成装置100は、交流電力を直流電力に変換するPFC回路(昇圧コンバータ)として機能する。
【0063】
本図で示すように、PFC動作時には制御装置200に直流電源VDCから生成される検出電圧VFBが入力されると共に、制御対象電流として|Iin|(=入力電流Iinの絶対値)が入力される。また、直流電圧設定部202には、一定値が設定されるが、ここでの一定値は生成したい直流電源VDC目標値に応じて可変制御すればよい。
【0064】
また、DC電圧生成装置100では、スイッチング素子S2をPWM動作させ、交流電源VACから直流電源VDCを生成することができる。その際、ダイオードD1~D4にて構成される全波整流ダイオードと整流ダイオードS1により、直流電源VDC生成にあたって電流の逆流を防止することができる。
【0065】
次に、PFC動作の原理について説明する。交流電源VACとし、直流電源VDCとし、スイッチング周期をTとし、トランジスタのオン時間及びオフ時間をそれぞれTon及びToff(ただし、オン時間はスイッチング素子S2に対して定義)とすると、次の(1)式~(3)式が成り立つ。
【0066】
|VAC|×Ton=(VDC-|VAC|)×Toff … (1)
|VAC|×(T-Toff)=(VDC-|VAC|)×Toff … (2)
|VAC|×T=VDC×Toff … (3)
【0067】
上記(3)式から、スイッチング周期Tと出力電圧VDCが一定であれば、交流電源VACはオフ時間Toffに比例することが分かる。ここで、入力電流Iinが交流電源VACと同一波形であるならば、入力電流Iinもオフ時間Toffに比例するはずである。従って、入力電流Iinをオフ時間Toffに比例するように制御すれば、交流電源VACと同一波形の入力電流Iinを得ることができる。その上で、直流電源VDCが所定の値となるように直流電圧設定部を設定すれば、PFC動作を実現することが可能となる。
【0068】
図3はPFC動作時の入出力波形を示す図であり、交流電源VACから直流電源VDCを生成した際の波形を示す。本図では上から順にVAC、Iin、及びVDCが描写されている。
【0069】
次に、PFC動作時における逆回復電流について説明する。
図4はPFC動作の電流連続モードにおける各部を流れる電流を示し、
図5は入力電流IinとインダクタL1を流れるIL、スイッチング素子S1を流れる電流IS1、スイッチング素子S2を流れる電流IS2を示した図である。
図4においてスイッチング素子S2がオンの時にはインダクタL1とスイッチング素子S2に電流が流れ、インダクタ電流ILは増加する(
図5と併せて参照)。一方、スイッチング素子S2がオフになるとインダクタL1とスイッチング素子S1に電流が流れ、インダクタ電流ILは減少する。スイッチング素子S2のオンとオフを繰り返し行うことで直流電源VDCが生成される。しかし、電流連続モード(インダクタ電流ILがゼロになる期間がなく、連続的に動作するモード)においては、スイッチング素子S1に電流IS1が流れている状態でスイッチング素子S2がオンするため、スイッチング素子S1は強制的にオフされる。このとき、逆回復電流(スイッチング素子S1が完全にオフするまでに逆電圧がかかることで逆方向に流れる電流)が発生し、電力の損失が発生する。
【0070】
逆回復電流を削減するためには、逆回復特性のよい回復時間の短いスイッチング素子を選定するとよい。回復特性の短いスイッチング素子としてはSiよりもワイドバンドギャップなSiCデバイスやGaNデバイスを使用するとよい。
【0071】
逆回復特性については、具体的には、GaNデバイスはSiデバイスより約100倍程度回復時間が短いため、逆回復電流による電流、延いては電力の損失を大幅に削減することができる。
【0072】
<電力変換装置(第2実施形態)>
図6は、電力変換装置1の第2実施形態を示す図である。第1の実施形態と同様にDC電圧生成装置100と制御装置200と出力電圧検出部300から構成される。
【0073】
第2実施形態のDC電圧生成装置100は、インダクタL1、コンデンサC1、及び一つ以上のスイッチング素子(
図6ではスイッチング素子S11とスイッチング素子S12とスイッチング素子S13とスイッチング素子S14)とから構成される全波整流型ダイオードブリッジを持たないPFC回路である。
【0074】
スイッチング素子S11の第1端子はノードDC1に接続され、スイッチング素子S11の第2端子はノードN11に接続され、スイッチング素子S12の第1端子はノードN11に接続され、スイッチング素子S12の第2端子はノードDC2に接続され、スイッチング素子S13の第1端子はノードDC1に接続され、スイッチング素子S13の第2端子はノードN12に接続され、スイッチング素子S14の第1端子はノードN12に接続され、スイッチング素子S14の第2端子はノードDC2に接続されており、少なくとも一つのインダクタは交流電源の第1端子であるノードAC1とノードN11との間、及び交流電源の第2端子であるノードAC2とノードN12との間のうち、少なくとも一方に接続されている。(
図6では一例としてノードAC1とノードN11との間にインダクタL1が接続された構成を示す。)
【0075】
スイッチング素子S11、S12、S13、及びS14は少なくとも一つはSiよりもワイドバンドギャップなデバイスを使用する。ワイドバンドギャップなデバイスとしてはSiCデバイス、及びGaNデバイスの少なくとも一方を含む。
【0076】
SiCデバイスとしては、SiCで構成されるショットキーバリアダイオード、ジャンクションバリアダイオード及びSiCトランジスタを使用してもよい。
【0077】
GaNデバイスとしては、GaNで構成されるショットキーバリアダイオード、ジャンクションバリアダイオード及びGaNトランジスタを使用してもよい。
【0078】
なおスイッチング素子S11~S14の制御方法については、後ほど具体例を挙げて詳述する。
【0079】
出力電圧検出部300は直流電源VDCから検出電圧VFBを生成する。なお、出力電圧検出部300の構成は第1実施形態と同じであるため省略する。
【0080】
制御回路200は第1の実施形態の制御装置200から極性判定部208、及び切換器209を追加した構成となっており、DC電圧生成装置100の一つ以上のスイッチング素子を制御するための信号G1及び信号G2を出力する。
【0081】
極性判定部208はAC電源10からのAC電源入力VACを受け、切換器209へ極性判定結果を出力する。
【0082】
極性の判定方法は、電源入力VACの中間レベル(通常はゼロボルト)を基準とし、AC電源10から入力されるVACが中間レベルより高い値の場合にハイレベルを出力し、低い値の場合にローレベルを出力する。
【0083】
切換器209は極性判定部208からの出力とPWM生成回路207からの出力に応じて、DC電圧生成装置100の一つ以上のスイッチング素子を制御するための信号G1及び信号G2を出力する。
【0084】
なお、第2実施形態における制御装置200内の電流値変換回路201と、直流電圧設定部202と、減加算器203と、乗算器204と、最大オンデューティ設定部205と、減加算器206と、PWM生成回路207と、補償器210の各部の機能は、第1実施形態と同様のため省略する。
【0085】
<電力変換装置(第2実施形態における第1の構成例)>
図7は、第2実施形態における第1の構成例である。DC電圧生成装置100のスイッチング素子S11、及びS13はダイオードであり、スイッチング素子S12及びS14はトランジスタから構成される。
【0086】
ダイオードは、SiよりもワイドバンドギャップなSiC及びGaNで構成されるショットキーバリアダイオード、ジャンクションバリアダイオードを使用してもよい。なお、SiC及び、GaNで構成されるショットキーバリアダイオード、及びジャンクションバリアダイオードのリーク電流特性としては、10-2A/cm2以下としてもよい。
【0087】
制御装置200から出力される信号G1及び信号G2は切換器209により制御される。切換器209は極性判定部208の出力がハイレベルである場合は、PWM生成回路207の出力を信号G1として出力し、ハイレベルを信号G2として出力する。また、極性判定部208の出力がローレベルである場合は、PWM生成回路207の出力を信号G2として出力し、ハイレベルを信号G1として出力する。
【0088】
以下、極性判定部208がハイレベルを出力する場合において詳細に説明する。信号G1には切換器209を経由してPWM生成回路207で生成されたPWM信号が出力され、DC電圧生成装置100内のスイッチング素子S12が制御される。スイッチング素子S12、スイッチング素子S11、及びトランスL1からなる昇圧チョッパ形式の回路は第1実施形態のPFC動作の原理で説明した様に入力電流Iinをオフ時間Toffに比例するように制御することにより、交流電源VACと同一波形の入力電流Iinを得ることができ、PFC動作を実現することができる。また、信号G2には切換器209によりハイレベルが入力されるため、スイッチング素子S14(ここではトランジスタ)はオン状態となり、ボディーダイオードを経由することなくAC電源10のノードAC2へ電流を出力するため、オフ状態と比較するとPFC動作としての電力効率が改善される。なお、極性判定部208がローレベルを出力する場合においては、スイッチング素子S12とS14の制御が入れ替わり、同様の制御が実施される。
【0089】
図8は切換器209の信号G1、信号G2及びAC電源10の交流電源VACとの関係を示した波形である。上から順に信号G1、信号G2、交流電源VACを示す。先にも述べた様に、VAC>0の場合は、信号G1は、PWM生成回路からの出力を受けスイッチング動作をし、信号G2はハイレベルとなる。また、VAC<0の場合は、信号G1は、ハイレベルとなり、信号G2はPWM生成回路からの出力を受けスイッチング動作している様子を示す。
【0090】
第2実施形態における第1の構成例では、スイッチング素子S11、及びS13をワイドバンドギャップなスイッチング素子とするため、第1実施形態と同様に逆回復電流を削減できる。
【0091】
なお、ワイドバンドギャップなスイッチング素子としては、前記の様にSiCデバイスやGaNデバイスを使用したショットキーバリアダイオード、ジャンクションバリアダイオードであってもよい。また、第1実施形態と同様にPWM生成回路207の出力はおおよそ10KHz~100KHzの周波数を有し、AC電源10の周波数(50Hz又は60Hz)より高速なパルスである。
【0092】
また、
図7のノードAC1とノードDC2の間、及びノードAC2とノードDC2の間にそれぞれダイオードを追加で接続したセミブリッジレス型の構成としてもよい。追加する各ダイオードのアノードはノードDC2と接続し、カソードはそれぞれノードAC1及びノードAC2に接続される。この場合、PFC動作時において、追加したダイオードによりスイッチング素子S12及びスイッチング素子S14のボディーダイオードからさらに、ノードAC1及びノードAC2へのリターン・パスが構成されるため、電力変換効率が改善する。また、AC電源10はフローティングではなく、ノードDC2基準となるため、入力ラインと出力ライン間におけるコモン・ノイズ耐性が向上する利点がある。
【0093】
<電力変換装置(第2実施形態における第2の構成例)>
図9は、第2実施形態における第2の構成例である。DC電圧生成装置100のスイッチング素子S13、及びS14はダイオードであり、スイッチング素子S11及びS12はトランジスタから構成される。
【0094】
トランジスタは、SiよりもワイドバンドギャップなSiC及びGaNで構成されるSiCトランジスタ、及びGaNトランジスタを使用してもよい。
【0095】
制御装置200から出力される信号G1及び信号G2は切換器209により制御される。切換器209は極性判定部208の出力とPWM生成回路207の出力から生成され、極性判定部208がハイレベルである場合は、PWM生成回路207の出力を信号G2として出力し、PWM生成回路207の出力の反転信号を信号G1として出力する。また、極性判定部208の出力がローレベルである場合は、PWM生成回路207の出力を信号G1として出力し、PWM生成回路207の出力の反転信号を信号G2として出力する。
【0096】
以下、極性判定部208がハイレベルを出力する場合において詳細に説明する。信号G2には切換器209を経由してPWM生成装置207で生成されたPWM信号が出力され、DC電圧生成装置100内のスイッチング素子S12が制御される。一方、信号G1には切換器209から信号G2とは極性が反転したPWM信号が出力され、DC電圧生成装置100内のスイッチング素子S11が制御される。ここで、スイッチング素子S12のオフ時間、また別の表現を用いれば、スイッチング素子S11のオン時間を入力電流Iinに比例する様に制御すれば、先に記載した第1実施形態のPFC動作の原理と同様に、交流電源VACと同一波形の入力電流Iinを得ることができ、PFC動作を実現することができる。なお、信号G1及び信号G2はパルス制御されているが、信号G1がハイレベルで、信号G2がローレベルであるタイミングにおいては、ノードAC1からインダクタL1、スイッチング素子S11、コンデンサC1、スイッチング素子S14、ノードAC2の順に交流電流が流れる。また、信号G1がローレベルで信号G2がハイレベルであるタイミングにおいては、ノードAC1からインダクタL1、スイッチング素子S12、スイッチング素子S14、ノードAC2の順に交流電流が流れる。そして上記動作を交互に繰り返すことにより直流電源VDCが生成される。
【0097】
極性判定部208がローレベルを出力する場合においても以下に説明する。信号G1、信号G2とスイッチング素子S11、S12との接続は、極性判定部208がハイレベルを出力する場合と同一である。スイッチング素子S11のオフ時間、また別の表現を用いれば、スイッチング素子S12のオン時間を入力電流Iinに比例する様に制御すれば、上記、極性判定部208がハイレベルを出力する場合と同様に交流電源VACと同一波形の入力電流Iinを得ることができ、PFC動作を実現することができる。なお、信号G1及び信号G2はパルス制御されているが、信号G2がハイレベルで、信号G1がローレベルであるタイミングにおいては、ノードAC2からスイッチング素子S13、コンデンサC1、スイッチング素子S12、インダクタL1、ノードAC1の順に交流電流が流れる。また、信号G2がローレベルで信号G1がハイレベルであるタイミングにおいては、ノードAC2からスイッチング素子S13、スイッチング素子S11、インダクタL1、ノードAC1の順に交流電流が流れる。そして上記動作を交互に繰り返すことにより直流電源VDCが生成される。
【0098】
なお、トランジスタであるスイッチング素子S11及びS12にはさらにそれぞれ個別にSiC及び、GaNで構成されるショットキーバリアダイオード、又はジャンクションバリアダイオードを並列接続させてもよい。例えば、スイッチング素子S11に並列接続されるショットキーバリアダイオード、又はジャンクションバリアダイオードは、アノードがノードN11に接続され、カソードがノードDC1に接続されるとよい。また、スイッチング素子S12に並列接続されるショットキーバリアダイオード、又はジャンクションバリアダイオードは、アノードがノードDC2に接続され、カソードがノードN11に接続されるとよい。なお、SiC及び、GaNで構成されるショットキーバリアダイオード、及びジャンクションバリアダイオードのリーク電流特性としては、10-2A/cm2以下としてもよい。
【0099】
図10は切換器209の信号G1、信号G2及びAC電源10の交流電源VACとの関係を示した波形である。上から順に信号G1、信号G2、交流電源VACを示す。先にも述べた様に、VAC>0の場合は、信号G2は、PWM生成回路の出力信号を出力し、信号G1は信号G2と反転した信号を出力する。また、VAC<0の場合には、信号G1は、PWM生成回路の出力信号を出力し、信号G2は信号G1と反転した信号を出力する。
【0100】
第2実施形態における第2の構成例では、スイッチング素子S11、及びS12をワイドバンドギャップなスイッチング素子とするため、第1実施形態と同様に逆回復電流を削減できる。
【0101】
なお、ワイドバンドギャップなスイッチング素子としては、前記の様にSiCデバイスやGaNデバイスを使用したSiCトランジスタ、及びGaNトランジスタであってもよい。また、第1実施形態と同様にPWM生成回路207の出力はおおよそ10KHz~100KHzの周波数を有し、AC電源10の周波数(50Hz又は60Hz)より高速なパルスである。
【0102】
<電力変換装置(第2実施形態における第3の構成例)>
図11は、第2実施形態における第3の構成例である。DC電圧生成装置100のスイッチング素子S11~S14は全てトランジスタから構成される。
【0103】
トランジスタは、SiよりもワイドバンドギャップなSiC及びGaNで構成されるSiCトランジスタ、及びGaNトランジスタを使用してもよい。
【0104】
制御装置200から出力される信号G1~信号G4において、信号G1及び信号G2は切換器209により制御される。信号G1及び信号G2の制御は、第2実施形態における第2の構成例で示した通り、入力電流Iinをオフ時間Toffに比例するように制御することにより、交流電源VACと同一波形の入力電流Iinを得ることが可能なPFC動作を実現するPWM制御信号である。また、信号G3及び信号G4は極性判定部208により制御され、例えば、電源入力VACが中間レベル(通常はゼロボルト)より高い値の場合に信号G3へはローレベルを出力し、信号G4へはハイレベルを出力する。逆に電源入力VACが中間レベルより低い値の場合には信号G3へはハイレベルを出力し、信号G4へはローレベル出力する。
【0105】
以下、第3の構成例について簡単に説明する。信号G1及びG2には第2の構成例と同様な信号が供給される。極性判定部の信号G3はスイッチング素子S13へ、信号G4はスイッチング素子S14へ接続され、信号G3がローレベルで信号G4がハイレベル、つまり交流電源VACが正極である場合は、スイッチング素子S13はオフし、スイッチング素子S14はオンの状態となる。その際に流れる交流電流は第2の構成例での記載と同様に流れるが、スイッチング素子S14がダイオードではなく、オンした状態のトランジスタであるため、スイッチング素子S14のボディーダイオードを経由することなくAC電源10のノードAC2へ電流を出力するため、スイッチング素子S14のボディーダイオードを経由する場合と比較するとPFC動作としての電力効率が改善される。なお、信号G3がハイレベルで信号G4がローレベル、つまり交流電源VACが負極である場合の動作については、スイッチング素子S13がダイオードではなく、オンした状態のトランジスタとして作用し、同様の効果を得られる。詳細については省略する。
【0106】
第2実施形態における第3の構成例では、スイッチング素子S11~S14をワイドバンドギャップなスイッチング素子とするため、第1実施形態と同様に逆回復電流を削減できる。
【0107】
なお、ワイドバンドギャップなスイッチング素子としては、前記の様にSiC及びGaNで構成されるSiCトランジスタ、及びGaNトランジスタを使用してもよい。
【0108】
なお、上記では、第3の構成例を、第2の構成例を制御する様にスイッチング素子S11~S14の制御について記載したが、制御装置200の制御方法によっては第1の構成例に置き換えた形式で制御可能であることは言うまでもなく、説明については省略する。
【0109】
本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、各種信号の論理レベル反転は任意である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0110】
1 電力変換装置
10 AC電源
100 DC電圧生成装置
101 ダイオードブリッジ
200 制御装置
300 出力電圧検出部
201 電流値変換回路
202 直流電圧設定部
203、206減加算器
204 乗算器
205 最大オンデューティ設定部
207 PWM生成回路
208 極性判定部
209 切換器
L1 インダクタ
D1~D4 ダイオード
C1 コンデンサ
R1、R2 抵抗
Z1 直流負荷
AC1、AC2ノード(ACノード)
DC1、DC2ノード(DCノード)
N1、N3、N11、N12 ノード
S1、S2、S11~S14 スイッチング素子