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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/739 20060101AFI20231011BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20231011BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20231011BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20231011BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H01L29/78 655A
H01L29/78 653C
H01L29/78 652J
H01L29/78 657D
H01L29/78 655B
H01L29/78 652E
H01L29/78 656A
H01L29/78 301V
H01L29/78 301W
H01L27/088 A
H01L27/088 B
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020017859
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021125554
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】下條 亮平
(72)【発明者】
【氏名】坂野 竜則
(72)【発明者】
【氏名】井口 智明
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-046255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/739
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 21/8234
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極に対向した第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた半導体部と、
前記第1電極と前記半導体部との間において、前記半導体部に設けられた第1トレンチの内部に配置され、前記半導体部から第1絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第1電極から第2絶縁膜により電気的に絶縁された第1制御電極と、
前記第2電極と前記半導体部との間において、前記半導体部に設けられた複数の第2トレンチの内部にそれぞれ配置され、前記半導体部から第3絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第2電極から第4絶縁膜により電気的に絶縁された第2制御電極と、
を備え、
前記半導体部は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1導電形の第3半導体層と、前記第2導電形の第4半導体層と、前記第1導電形の第5半導体層と、前記第1導電形の第6半導体層と、を含み、
前記第1半導体層は、前記第1電極と前記第2電極との間に延在し、前記第1トレンチおよび前記第2トレンチは、前記第1半導体層中に延在し、
前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第1電極との間において、前記第1制御電極に前記第1絶縁膜を介して向き合うように設けられ、前記第1電極に電気的に接続され、
前記第3半導体層は、前記第2半導体層と前記第1電極との間に選択的に設けられ、前記第1絶縁膜に接し、前記第1電極に電気的に接続され、
前記第4半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間において、前記第2制御電極に前記第3絶縁膜を介して向き合うように設けられ、前記第2電極に電気的に接続され、
前記第5半導体層は、前記第4半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、前記第3絶縁膜に接し、前記第2電極に電気的に接続され、
前記第6半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、隣合う2つの前記第2制御電極の間に位置し、前記第3絶縁膜を介して前記第2制御電極のそれぞれに向き合うように設けられ、
前記第2電極は、前記第6半導体層を含む第1導電形領域を介して前記第1半導体層につながった半導体装置。
【請求項2】
前記半導体部は、前記第1半導体層と前記第4半導体との間に設けられた第1導電形の第7半導体層をさらに含み、
前記第7半導体層は、前記第1半導体層の第1導電形不純物よりも高濃度の第1導電形不純物を含む請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体部は、前記第1半導体層と前記第6半導体層との間に設けられた別の第7半導体層をさらに含み、
前記第1導電形領域は、前記第6半導体層と前記別の第7半導体層とを含む請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第6半導体層は、前記第7半導体層の前記第1導電形不純物よりも高濃度の第1導電形不純物を含み、前記第2電極に電気的に接続された請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第5半導体層は、前記第7半導体層の前記第1導電形不純物よりも高濃度の第1導電形不純物を含む請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第4半導体層は、前記隣合う2つの前記第2制御電極とは別の隣合う2つの前記第2制御電極の間に設けられ、
前記別の隣合う2つの前記第2制御電極の間隔は、前記隣合う2つの前記第2制御電極の間隔とは異なる請求項1~5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
第1電極と、
前記第1電極に対向した第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた半導体部と、
前記第1電極と前記半導体部との間において、前記半導体部に設けられた第1トレンチの内部に配置され、前記半導体部から第1絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第1電極から第2絶縁膜により電気的に絶縁された第1制御電極と、
前記第2電極と前記半導体部との間において、前記半導体部に設けられた複数の第2トレンチの内部にそれぞれ配置され、前記半導体部から第3絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第2電極から第4絶縁膜により電気的に絶縁された第2制御電極と、
を備え、
前記半導体部は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1導電形の第3半導体層と、前記第2導電形の第4半導体層と、前記第1導電形の第5半導体層と、前記第1導電形の第6半導体層と、前記第1導電形の第8半導体層を含み、
前記第1半導体層は、前記第1電極と前記第2電極との間に延在し、前記第1トレンチおよび前記第2トレンチは、前記第1半導体層中に延在し、
前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第1電極との間において、前記第1制御電極に前記第1絶縁膜を介して向き合うように設けられ、前記第1電極に電気的に接続され、
前記第3半導体層は、前記第2半導体層と前記第1電極との間に選択的に設けられ、前記第1絶縁膜に接し、前記第1電極に電気的に接続され、
前記第4半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間において、前記第2制御電極に前記第3絶縁膜を介して向き合うように設けられ、前記第2電極に電気的に接続され、
前記第5半導体層は、前記第4半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、前記第3絶縁膜に接し、前記第2電極に電気的に接続され、
前記第6半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、別の第2制御電極に、別の第3絶縁膜を介して向き合い、
前記第8半導体層は、前記第6半導体層と前記第2電極との間に設けられ、前記第6半導体層の第1導電形不純物よりも高濃度の第1導電形不純物を含み、前記別の第3絶縁膜に接し、前記第2電極に電気的に接続され
前記第2電極は、前記第6半導体層および前記第8半導体層を含む第1導電形領域を介して前記第1半導体層につながる半導体装置。
【請求項8】
前記半導体部は、前記第1半導体層と前記第4半導体との間に設けられた第1導電形の第7半導体層をさらに含み、
前記第7半導体層は、前記第1半導体層の第1導電形不純物よりも高濃度の第1導電形不純物を含む請求項記載の半導体装置。
【請求項9】
前記半導体部は、前記第1半導体層と前記第6半導体層との間に設けられた別の第7半導体層をさらに含み、
前記第1導電形領域は、前記第6半導体層と前記別の第7半導体層とを含む請求項記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第6半導体層は、前記第4半導体層と前記別の第2制御電極との間に設けられる請求項7~9のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第6半導体層は、前記別の第2制御電極に印加される電圧により、その全体が第2導電形に反転する請求項10記載の半導体装置。
【請求項12】
第1電極と、
前記第1電極に対向した第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた半導体部と、
前記第1電極と前記半導体部との間において、前記半導体部に設けられた第1トレンチの内部に配置され、前記半導体部から第1絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第1電極から第2絶縁膜により電気的に絶縁された第1制御電極と、
前記第2電極と前記半導体部との間において、前記半導体部に設けられた複数の第2トレンチの内部にそれぞれ配置され、前記半導体部から第3絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第2電極から第4絶縁膜により電気的に絶縁された複数の第2制御電極と、
を備え、
前記半導体部は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1導電形の第3半導体層と、前記第2導電形の第4半導体層と、前記第1導電形の第5半導体層と、前記第2導電形の第9半導体層と、を含み、
前記第1半導体層は、前記第1電極と前記第2電極との間に延在し、前記第1トレンチおよび前記第2トレンチは、前記第1半導体中に延在し、
前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第1電極との間において、前記第1制御電極に前記第1絶縁膜を介して向き合うように設けられ、前記第1電極に電気的に接続され、
前記第3半導体層は、前記第2半導体層と前記第1電極との間に選択的に設けられ、前記第1絶縁膜に接し、前記第1電極に電気的に接続され、
前記第4半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間において、前記複数の第2制御電極のうちの1つに前記第3絶縁膜を介して向き合うように設けられ、前記第2電
極に電気的に接続され、
前記第5半導体層は、前記第4半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、前記第3絶縁膜に接し、前記第2電極に電気的に接続され、
前記第9半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間において、前記複数の第2制御電極のうちの別の第2制御電極に別の第3絶縁膜を介して向き合うように設けられ、前記第4半導体層の第2導電形不純物よりも低濃度の第2導電形不純物を含む半導体装置。
【請求項13】
前記半導体部は、前記第9半導体層と前記第2電極との間に設けられ、前記別の第3絶縁膜に接し、前記第2電極に電気的に接続された別の第5半導体層をさらに含む請求項12記載の半導体装置。
【請求項14】
前記半導体部は、前記第1半導体層と前記第4半導体との間および前記第1半導体層と前記第9半導体層との間に設けられた第1導電形の第7半導体層をさらに含み、
前記第7半導体層は、前記第1半導体層の第1導電形不純物よりも高濃度の第1導電形不純物を含み、
前記第5半導体層は、前記第7半導体層の前記第1導電形不純物よりも高濃度の第1導電形不純物を含む請求項13記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第9半導体層は、前記第4半導体層と前記別の第2制御電極との間に位置する請求項12~14のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項16】
前記第9半導体層は、前記別の第2制御電極と隣合う他の第2制御電極との間に位置し、
前記他の第2制御電極と他の第3絶縁膜を介して向き合うように設けられる請求項12~14のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項17】
前記第1制御電極は、複数設けられ、
前記複数の第1制御電極のうちの隣合う2つの第1制御電極の間隔は、前記複数の第2制御電極のうちの隣合う2つの第2制御電極の間隔とは異なる請求項12~16のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項18】
前記1つの第2制御電極の閾値電圧は、前記別の第2制御電極の閾値電圧よりも高い請求項12~17のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項19】
前記第3半導体層は、前記第1半導体層の第1導電形不純物よりも高濃度の第1導電形不純物を含む請求項1~18のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項20】
前記半導体は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられ、前記第1半導体層の第1不純物よりも高濃度の第1導電形不純物を含む前記第1導電形の第10半導体層をさらに含み、
前記第10半導体層は、前記第3半導体層の前記第1導電形不純物よりも低濃度の前記第1導電形不純物を含む請求項18記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力制御用半導体装置には、スイッチング損失を低減することが求められる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】S. Harada et al., "Optimal double sided gate control of IGBT for lower turn-off Loss and surge voltage suppression", ISBN 978-3-8007-4171-7, CIPS 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、ダイオード動作におけるリカバリ損失を低減できる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、第1電極と、前記第1電極に対向した第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた半導体部と、第1制御電極と、第2制御電極と、を備える。前記第1制御電極は、前記第1電極と前記半導体部との間において、前記半導体部に設けられた第1トレンチの内部に配置され、前記半導体部から第1絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第1電極から第2絶縁膜により電気的に絶縁される。前記第2制御電極は、前記第2電極と前記半導体部との間において、前記半導体部に設けられた複数の第2トレンチの内部にそれぞれ配置され、前記半導体部から第3絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第2電極から第4絶縁膜により電気的に絶縁される。前記半導体部は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1導電形の第3半導体層と、前記第2導電形の第4半導体層と、前記第1導電形の第5半導体層と、前記第1導電形の第6半導体層と、を含む。前記第1半導体層は、前記第1電極と前記第2電極との間に延在し、前記第1トレンチおよび前記第2トレンチは、前記第1半導体層中に延在する。前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第1電極との間において、前記第1制御電極に前記第1絶縁膜を介して向き合うように設けられ、前記第1電極に電気的に接続される。前記第3半導体層は、前記第2半導体層と前記第1電極との間に選択的に設けられ、前記第1絶縁膜に接し、前記第1電極に電気的に接続される。前記第4半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間において、前記第2制御電極に前記第3絶縁膜を介して向き合うように設けられ、前記第2電極に電気的に接続される。前記第5半導体層は、前記第4半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、前記第3絶縁膜に接し、前記第2電極に電気的に接続される。前記第6半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、隣合う2つの前記第2制御電極の間に位置し、前記第3絶縁膜を介して前記第2制御電極のそれぞれに向き合うように設けられる。前記第2電極は、前記第6半導体層を含む第1導電形領域を介して前記第1半導体層につながる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る半導体装置を示す模式断面である。
図2】第1実施形態に係る半導体装置の制御方法を示すタイムチャートである。
図3】第1実施形態に係る半導体装置の制御方法を示す模式断面図である。
図4】第1実施形態の変形例に係る半導体装置を示す模式断面である。
図5】第1実施形態の別の変形例に係る半導体装置を示す模式図である。
図6】第1実施形態の別の変形例に係る半導体装置の制御方法を示す模式図である。
図7】第1実施形態の別の変形例に係る半導体装置の別の制御方法を示す模式図である。
図8】第2実施形態に係る半導体装置を示す模式図である。
図9】第2実施形態に係る半導体装置の制御方法を示す模式図である。
図10】第2実施形態の変形例に係る半導体装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には、同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0008】
さらに、各図中に示すX軸、Y軸およびZ軸を用いて各部分の配置および構成を説明する。X軸、Y軸、Z軸は、相互に直交し、それぞれX方向、Y方向、Z方向を表す。また、Z方向を上方、その反対方向を下方として説明する場合がある。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置1を示す模式断面である。半導体装置1は、所謂、逆導通型IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。
【0010】
半導体装置1は、半導体部10と、第1電極20と、第2電極30と、第1制御電極40と、第2制御電極50と、を含む。
【0011】
第1電極20および第2電極30は互いに対向し、半導体部10は、第1電極20と第2電極30との間に設けられる。第1電極20は、例えば、エミッタ電極であり、第2電極30は、例えば、コレクタ電極である。
【0012】
半導体部10は、例えば、シリコンである。第1電極20および第2電極30は、例えば、アルミニウム(Al)を含む金属層である。
【0013】
第1制御電極40は、半導体部10と第1電極20との間に設けられる。第1制御電極40は、半導体部10に設けられた第1トレンチGT1の内部に配置される。第1制御電極40は、半導体部10から第1絶縁膜43により電気的に絶縁される。また、第1制御電極40は、第1電極20から第2絶縁膜45により電気的に絶縁される。
【0014】
第2制御電極50は、半導体部10と第2電極30との間に設けられる。第2制御電極50は、半導体部10に設けられた第2トレンチGT2の内部に配置される。第2制御電極50は、半導体部10から第3絶縁膜53により電気的に絶縁される。また、第2制御電極50は、第2電極30から第4絶縁膜55により電気的に絶縁される。
【0015】
第1制御電極40は、例えば、エミッタ側のゲート電極であり、第2制御電極50は、コレクタ側のゲート電極である。第1制御電極40および第2制御電極は、例えば、導電性を有するポリシリコンである。
【0016】
半導体部10は、第1導電形の第1半導体層11と、第2導電形の第2半導体層13と、第1導電形の第3半導体層15と、第2導電形の第4半導体層21と、第1導電形の第5半導体層23と、第1導電形の第6半導体層25と、第1導電形の第7半導体層27と、を含む。以下、第1導電形をn形、第2導電形をp形として説明する。
【0017】
第1半導体層11は、第1電極20と第2電極30との間に延在し、第1トレンチGT1および第2トレンチGT2は、第1半導体層11中に延在する。第1半導体層11は、例えば、n形ベース層である。
【0018】
第2半導体層13は、第1半導体層11と第1電極20との間において、第1制御電極40に第1絶縁膜43を介して向き合うように設けられる。第2半導体層13は、第1電極20に電気的に接続される。第2半導体層13は、例えば、p形ベース層である。
【0019】
第3半導体層15は、第2半導体層13と第1電極20との間に選択的に設けられる。第3半導体層15は、第1絶縁膜43に接し、第1電極20に電気的に接続される。第3半導体層13は、例えば、n形エミッタ層である。
【0020】
第4半導体層21は、第1半導体層11と第2電極30との間において、第2制御電極50に第3絶縁膜53を介して向き合うように設けられる。第4半導体層21は、第2電極に電気的に接続される。第4半導体層21は、例えば、p形コレクタ層である。
【0021】
第5半導体層23は、第4半導体層21と第2電極30との間に選択的に設けられる。第5半導体層23は、第3絶縁膜53に接し、第2電極30に電気的に接続される。第5半導体層23は、例えば、n形コレクタ層である。
【0022】
第6半導体層25は、第1半導体層11と第2電極30との間に選択的に設けられる。第2電極30は、第6半導体層25を含む第1導電形領域NRを介して第1半導体層11につながる。第6半導体層25は、例えば、n形カソード層である。
【0023】
第7半導体層27は、第1半導体層11と第4半導体層21との間に設けられる。第7半導体層27は、第1半導体層11の第1導電形不純物よりも高濃度の第1導電形不純物を含む。第7半導体層は、例えば、n形バッファ層である。また、第5半導体層23は、第7半導体層27の第1導電形不純物よりも高濃度の第1導電形不純物を含む。
【0024】
第7半導体層は、第1半導体層11と第6半導体層25との間にも設けられる。第6半導体層21は、第7半導体層の第1導電形不純物よりも高濃度の第1導電形不純物を含み、第2電極30に電気的に接続される。この例では、第1導電形領域NRは、第6半導体層25および第7半導体層27を含む。
【0025】
図1に示すように、第1制御電極40は、半導体部10と第1電極20との間に複数設けられる。また、第2制御電極50は、半導体部10と第2電極30との間に複数設けられる。
【0026】
第6半導体層25は、複数の第2制御電極50のうちの隣合う2つの第2制御電極50の間に設けられる。第6半導体層25は、隣合う2つの第2制御電極50のそれぞれに第3絶縁膜53を介して向き合うように設けられる。
【0027】
例えば、隣合う第1制御電極40間の距離WG1は、隣合う第2制御電極50間の距離WG2と同じであっても良いし、異なっていも良い。また、第6半導体層25が設けられた第2制御電極50間の距離WG3は、他の隣合う第2制御電極50間の距離WG2と異なっても良い。
【0028】
図2は、第1実施形態に係る半導体装置1の制御方法を示すタイムチャートである。例えば、インバータなどの電力変換器(図示しない)は、複数の半導体装置1を用いて構成される。図2には、そのような電力変換器において、半導体装置1をダイオードモードで動作させる場合の制御電圧VGEおよびVBGCの制御方法を示している。
【0029】
ダイオードモードの動作時には、第1電極20の電位は、第2電極30の電位よりも高くなるように制御される。さらに、半導体装置1をダイオードモードからIGBTモードへ移行させる時間tOFFにおいて、第1電極20と第2電極30の電位を逆転させる。
【0030】
制御電圧VGEは、第1電極20と第1制御電極40との間に印加される。例えば、第1制御電極40の電位が第1電極20の電位よりも高い場合、制御電圧VGEは、プラス電圧である。
【0031】
制御電圧VBGCは、第2電極30と第2制御電極50との間に印加される。例えば、第2制御電極50の電位が第2電極30の電位よりも高い場合、制御電圧VBGCは、プラス電圧である。
【0032】
図2に示すように、制御電圧VGEは、ダイオードモードの開始時点(図示しない)から時間tまで、マイナス15Vに保持される。時間tにおいて、制御電圧VGEをプラス15Vに上昇させ、時間tまでプラス15Vに保持した後、時間tにおいて、マイナス15Vまで下降させる。なお、時間tからtOFFの間は、電力変換回路の短絡を回避するために設定される、所謂デッドタイムである。
【0033】
一方、制御電圧VBGCは、ダイオードモードの開始時点(図示しない)から時間tまで、プラス15Vに保持される。さらに、時間tにおいてマイナス15Vに下降させ、時間tまでマイナス15Vに保持した後、時間tにおいてプラス15Vまで上昇させる。
【0034】
図3(a)および(b)は、第1実施形態に係る半導体装置1の制御方法を示す模式断面図である。図3(a)および(b)は、図2に示す制御電圧VGEおよびVBGCの制御過程に対応した、半導体装置1内の電荷の流れを示している。
【0035】
図3(a)は、ダイオードモードの開始から時間tまでの期間における電荷の流れを示している。第1半導体層11と第2半導体層13との間のpn接合は順バイアスされ、第2半導体層13から第1半導体層11へ正孔が注入される。一方、第4半導体層21と第7半導体層27との間のpn接合は逆バイアスされるため、電極30から第1半導体層11への電子の注入は、第1導電形領域NR、すなわち、第6半導体層25および第7半導体層27を介して実施される。
【0036】
さらに、第2制御電極50に印加された制御電圧VBGC、例えば、プラス15Vにより、第4半導体層21と第3絶縁膜53との界面に第1導電形反転層NIV1が誘起される。このため、電極30から第5半導体層23、第1導電形反転層NIV1および第7半導体層27を介して、第1半導体層11へ電子が注入される。これにより、ダイオードモードの開始時点から時間tまでの期間において、第1半導体層11中の電子および正孔の密度を上昇させ、オン抵抗を低減することができる。
【0037】
図3(b)は、時間tからtまでの期間における電荷の流れを示している。時間tからtの期間には、制御電圧VBGC、例えば、マイナス15Vが第2制御電極50に印加され、第4半導体層21中の第1導電形反転層NIV1が消える。このため、反転層NIVを介した第1半導体層11への電子注入が停止され、第2電極30から第1半導体層11への電子注入は、第6半導体層25および第7半導体層27を介した経路だけになる。この結果、第2電極30から第1半導体層11への電子注入は減少し、第2半導体層13から第1半導体層11への正孔注入も減少する。
【0038】
さらに、第1制御電極40には、制御電圧VGE、例えば、プラス15Vが印加され、第2半導体層13と第1絶縁膜43との界面に、第1導電形反転層NIV2が誘起される。第1半導体層11中の電子は、第1導電形反転層NIV2および第3半導体層15を介して、第1電極20に排出される。
【0039】
第4半導体層21は、例えば、第2半導体層13の第2導電形不純物と略同一の濃度を有する第2導電形不純物を含む。第1制御電極40の閾値電圧は、第2制御電極50の閾値電圧と略同一であり、プラス15Vの制御電圧VGEおよびVBGCにより、第1導電形反転層NIV2およびNIV1をそれぞれ誘起する。
【0040】
半導体装置1では、第1制御電極40および第2制御電極50において、このような制御を行うことにより、ダイオードモードからIGBTモードへの移行の直前の期間t~tに、第1半導体層11中の電子および正孔の密度を低減することができる。これにより、ダイオードモードからのリカバリ期間における第1半導体層11中の電子および正孔の排出時間、すなわち、第1半導体層11の空乏化に要する時間を短縮し、リカバリ損失を低減できる。
【0041】
図4は、第1実施形態の変形例に係る半導体装置2を示す模式断面である。
半導体装置2では、第7半導体層27が第1半導体層11と第6半導体層25との間に設けられない。
【0042】
第7半導体層27は、第1半導体層11中に誘起される空乏領域が第2導電形の第4半導体層21に達することを避けるために設けられる。このため、第1導電形の第6半導体層25が設けられる第1導電形領域NRには、第7半導体層27を配置しなくても良い。
【0043】
半導体装置2でも、図2に示す制御電圧VGEおよびVBGCにより、ダイオード動作におけるリカバリ損失を低減することが可能である。
【0044】
図5(a)および(b)は、第1実施形態の別の変形例に係る半導体装置3を示す模式図である。図5(a)は、半導体装置3の断面図である。図5(b)は、半導体装置3の制御方法を示すタイムチャートである。
【0045】
図5(a)に示すように、半導体装置3の半導体部10では、第4半導体層21は、第3絶縁膜53を介して、第2制御電極50aに向き合うように設けられる。また、第6半導体層25は、別の第3絶縁膜53を介して、第2制御電極50bに向き合うように設けられる。
【0046】
第4半導体層21および第6半導体層25は、隣合う第2制御電極50aおよび50bとの間に設けられる。第6半導体層25は、第4半導体層21と第2制御電極50bとの間に位置する。
【0047】
半導体部10は、第6半導体層25と第2電極30との間に設けられた第1導電形の第8半導体層29をさらに含む。第8半導体層29は、別の第3絶縁膜53に接し、第2電極30に電気的に接続される。第8半導体層29は、第6半導体層25の第1導電形不純物よりも高濃度の第1導電形不純物を含む。第1導電形領域NRは、第6半導体層25と第7半導体層27と第8半導体層29とを含む。
【0048】
図5(b)に示すように、制御電圧VGEは、ダイオードモードの開始時点(図示しない)から時間tまで、マイナス15Vに保持される。時間tにおいて、制御電圧VGEをプラス15Vに上昇させ、時間tまでプラス15Vに保持した後、時間tにおいてマイナス15Vまで下降させる。
【0049】
一方、制御電圧VBGCは、ダイオードモードの開始時点(図示しない)から時間tまで、プラス15Vに保持される。時間tにおいて、制御電圧VBGCを、例えば、0Vに下降させ、時間tまで0Vに保持した後、時間tにおいてプラス15Vまで上昇させる。
【0050】
図6(a)および(b)は、第1実施形態の別の変形例に係る半導体装置3の制御方法を示す模式図である。図6(a)および(b)は、図5(b)に示す制御電圧VGEおよびVBGCによる制御過程に対応した、半導体装置3内の電荷の流れを示している。
【0051】
図6(a)は、ダイオードモードの開始から時間tまでの期間における電荷の流れを示している。第1半導体層11と第2半導体層13との間のpn接合が順バイアスされ、第2半導体層13から第1半導体層11へ正孔が注入される。さらに、第2制御電極50に印加された制御電圧VBGC、例えば、プラス15Vにより、第4半導体層21と第3絶縁膜53との界面に第1導電形反転層NIV1が誘起される。また、第6半導体層25と第3絶縁膜53との界面には、第1導電形電荷蓄積層NACが誘起される。このため、電極30から、第5半導体層23、第1導電形反転層NIV1および第7半導体層27を介した経路、および、第8半導体層29、第1導電形電荷蓄積層NACおよび第7半導体層27を介した経路を経て、第1半導体層11へ電子が注入される。この結果、ダイオードモードの開始から時間tまでの期間において、第1半導体層11中の電子および正孔の密度を上昇させ、オン抵抗を低減することができる。
【0052】
図6(b)には、時間tからtまでの期間における電荷の流れを示している。時間tからtの期間において、第2制御電極50と電極30との間に印加される制御電圧VBGCは、例えば、0Vである。このため、第4半導体層21と第3絶縁膜53との間に誘起された第1導電形反転層NIV1が消える。この結果、第2電極30から第1半導体層11への電子注入は、第8半導体層29、第6半導体層25および第7半導体層27を介した経路だけになり、第2電極30から第1半導体層11への電子注入が減少する。これに対応して、第2半導体層13から第1半導体層11への正孔注入も減少する。
【0053】
一方、第1制御電極40には、制御電圧VGE、例えば、プラス15Vが印加され、第2半導体層13と第1絶縁膜43との界面に、第1導電形反転層NIV2が誘起される。第1半導体層11中の電子は、第1導電形反転層NIV2および第3半導体層15を介して、第1電極20に排出される。
【0054】
半導体装置3では、図5(b)に示す制御電圧VGEおよびVBGCにより、ダイオードモードからIGBTモードへの移行の直前の期間t~tにおける第1半導体層11中の電子および正孔の密度を低減することができる。これにより、ダイオードモードからのリカバリ期間において、第1半導体層11の電子および正孔の排出時間を短縮し、リカバリ損失を低減できる。
【0055】
図7は、第1実施形態の別の変形例に係る半導体装置3の別の制御方法を示す模式断面図である。図7は、半導体装置3をIGBTモードで動作させる場合の電荷の流れを示している。
【0056】
IGBTモードでは、第2電極30の電位は、第1電極20の電位よりも高く保持される。また、第2電極30と第2制御電極50との間には、例えば、マイナス15Vの制御電圧VBGCが印加される。このため、第6半導体層25と第2制御電極50との間には、第2導電形電荷蓄積層PIVが誘起される。
【0057】
第1電極20と第1制御電極40との間には、例えば、プラス15Vもしくはマイナス15Vの制御電圧VGEが印加され、第2電極30から第1電極20へ流れるコレクタ電流をオンオフ制御する。
【0058】
図7に示すように、第1半導体層13と第1制御電極40との間には、第1導電形反転層NIV2が誘起されている。このため、第1電極20から第3半導体層13および第1導電形反転層NIV2を介して、第1半導体層11に電子が注入される。
【0059】
これに対応して、第4半導体層21から第7半導体層27を介して第1半導体層11中に正孔が注入される。さらに、第6半導体層25と第2制御電極50との間に誘起された第2導電形電荷蓄積層PIVにより、第1半導体層11から第2電極30への電子の排出が抑制される。これにより、第1半導体層11中の電子および正孔の密度が高くなり、オン抵抗が低減される。なお、第2電極30と第2制御電極50の間にマイナスの制御電圧VBGCが印加された時、この効果がより顕著になるように、第6半導体層25の全体が第2導電形に反転することが好ましい。
【0060】
(第2実施形態)
図8(a)および(b)は、第2実施形態に係る半導体装置4を示す模式図である。図8(a)は、半導体装置4の断面図である。図8(b)は、半導体装置4の制御方法を示すタイムチャートである。
【0061】
図8(a)に示すように、半導体装置4の半導体部10は、第1半導体層11と第2電極30との間に選択的に設けられた第2導電形の第9半導体層33を含む。すなわち、半導体装置4は、隣合う第2制御電極50の間に第4半導体層21が設けられた部分と、隣合う第2制御電極50の間に第9半導体層33が設けられた別の部分と、を有する。半導体部10は、第9半導体層33と第2電極30との間に設けられた第5半導体層23をさらに含む。
【0062】
第9半導体層33は、隣合う第2制御電極50の少なくともいずれか一方に第3絶縁膜53を介して向き合うように設けられる。この例では、第9半導体層33は、隣合う第2制御電極50の両方に第3絶縁膜53を介して向き合うように設けられる。第9半導体層33は、第4半導体層21の第2導電形不純物よりも低濃度の第2導電形不純物を含む。
【0063】
図8(b)に示すように、制御電圧VGEは、ダイオードモードの開始時点(図示しない)から時間tまで、マイナス15Vに保持される。時間tにおいて、制御電圧VGEをプラス15Vに上昇させ、時間tまでプラス15Vに保持した後、時間tにおいてマイナス15Vまで下降させる。
【0064】
一方、制御電圧VBGCは、ダイオードモードの開始時点(図示しない)から時間tまで、プラス15Vに保持される。時間tにおいて、制御電圧VBGCを、例えば、プラス5Vに下降させ、時間tまでプラス5Vに保持した後、時間tにおいてプラス15Vまで上昇させる。
【0065】
図9(a)および(b)は、第1実施形態の別の変形例に係る半導体装置4の制御方法を示す模式図である。図9(a)および(b)は、図8(b)に示す制御電圧VGEおよびVBGCによる制御過程に対応した、半導体装置4内の電荷の流れを示している。
【0066】
図9(a)は、ダイオードモードの開始から時間tまでの期間における電荷の流れを示している。第1半導体層11と第2半導体層13との間のpn接合が順バイアスされ、第2半導体層13から第1半導体層11へ正孔が注入される。さらに、第2制御電極50に印加されたプラス15Vの制御電圧VBGCにより、第4半導体層21と第3絶縁膜53との界面に第1導電形反転層NIV1が誘起される。また、第9半導体層33と第3絶縁膜53との界面には、第1導電形反転層NIV3が誘起される。
【0067】
第1半導体層11には、電極30から、第5半導体層23、第1導電形反転層NIV1および第7半導体層27を介した経路、および、第5半導体層23、第1導電形反転層NIV3および第7半導体層27を介した経路を経て、電子が注入される。この結果、ダイオードモードの開始から時間tまでの期間において、第1半導体層11中の電子および正孔の密度を高くし、オン抵抗を低減することができる。
【0068】
図9(b)には、時間tからtまでの期間における電荷の流れを示している。時間tからtの期間において、第2制御電極50と電極30との間に印加される制御電圧VBGCは、プラス5Vである。この例では、第1導電形反転層NIV2を第4半導体層21と第3絶縁膜53との界面に誘起するための閾値電圧は、プラス5Vよりも高い。一方、第1導電形反転層NIV3を第9半導体層33と別の第3絶縁膜53との界面に誘起するための閾値電圧は、プラス5Vよりも低い。
【0069】
このため、第2電極30と第2制御電極50との間の制御電圧VBGCをプラス5Vに下げると、第1導電形反転層NIV1は消え、第1導電形反転層NIV3は保持される。この結果、第2電極30から第1半導体層11への電子注入は、第1導電形反転層NIV3を介した経路だけになり、第2電極30から第1半導体層11への電子注入が減少する。これに対応して、第2半導体層13から第1半導体層11へ注入される正孔も減少する。
【0070】
さらに、第1制御電極40には、プラス15Vの制御電圧VGEが印加され、第2半導体層13と第1絶縁膜43との界面に、第1導電形反転層NIV2が誘起される。このため、第1半導体層11中の電子は、第1導電形反転層NIV2および第3半導体層15を介して、第1電極20に排出される。
【0071】
半導体装置4では、図8(b)に示す制御電圧VGEおよびVBGCよるキャリアの制御により、ダイオードモードからIGBTモードへの移行の直前の期間t~tにおいて、第1半導体層11中の電子および正孔の密度を低減することができる。これにより、ダイオードモードからのリカバリ期間において、第1半導体層11の電子および正孔の排出時間を短縮し、リカバリ損失を低減できる。
【0072】
図10(a)および(b)は、第2実施形態の変形例に係る半導体装置5および6を示す模式断面図である。
【0073】
図10(a)に示す半導体装置5の半導体部10では、第4半導体層21は、第3絶縁膜53を介して、第2制御電極50aに向き合うように設けられる。また、第9半導体層33は、別の第3絶縁膜53を介して、第2制御電極50bに向き合うように設けられる。
【0074】
第4半導体層21および第9半導体層33は、隣合う第2制御電極50aおよび50bとの間に設けられる。第9半導体層33は、第4半導体層21と第2制御電極50bとの間に位置する。
【0075】
この例でも、図8(b)に示す制御電圧VGEおよびVBGCによるキャリア制御を行うことにより、ダイオードモードからIGBTモードへの移行の直前の期間t~tにおいて、第1半導体層11中の電子および正孔の密度を低減し、ダイオードモードからのリカバリ期間におけるリカバリ損失を低減できる。
【0076】
図10(b)に示す半導体装置6では、半導体部10は、第1半導体層11と第2半導体層13との間に設けられた第1導電形の第10半導体層35をさらに含む。第10半導体層35は、第1半導体層11の第1不純物よりも高濃度の第1導電形不純物を含む。また、第10半導体層35は、第3半導体層15の第1導電形不純物よりも低濃度の前記第1導電形不純物を含む。第10半導体層35は、例えば、n形バリア層である。
【0077】
この例では、第10半導体層35を設けることにより、第1半導体層11から第2半導体層13へ移動する正孔に対するポテンシャルバリアを高くすることができる。これにより、第1半導体層11から第2半導体層13への正孔の移動を抑制し、第1半導体層11における電子および正孔の密度を高くすることが可能となる。すなわち、第10半導体層35は、ダイオードモードおよびIGBTモードの両方において、第1半導体層11中の電子および正孔の密度を上昇させ、オン抵抗を低減するために有効である。また、第10半導体層35は、この例に限定されず、例えば、半導体装置1~5にも適用することができる。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1、2、3、4、5、6…半導体装置、 10…半導体部、 11…第1半導体層、 13…第2半導体層、 15…第3半導体層、 20…第1電極、 21…第4半導体層、 23…第5半導体層、 25…第6半導体層、 27…第7半導体層、 29…第8半導体層、 30…第2電極、 33…第9半導体層、 35…第10半導体層、 40…第1制御電極、 43…第1絶縁膜、 45…第2絶縁膜、 50、50a、50b…第2制御電極、 53…第3絶縁膜、 55…第4絶縁膜、 GT1…第1トレンチ、 GT2…第2トレンチ、 NAC…第1導電形電荷蓄積層、 NIV1、NIV2、NIV3…第1導電形反転層、 NR…第1導電形領域、 PIV…第2導電形電荷蓄積層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10