(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】コア本体
(51)【国際特許分類】
H01F 27/26 20060101AFI20231011BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20231011BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H01F27/26 130Q
H01F27/24 H
H01F27/24 K
H01F27/26 130K
H01F37/00 A
H01F37/00 T
H01F37/00 M
(21)【出願番号】P 2020021634
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】塚田 健一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 友和
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-69304(JP,A)
【文献】特開2018-195783(JP,A)
【文献】特開平7-106156(JP,A)
【文献】特開2010-171312(JP,A)
【文献】特開平10-223445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 3/00- 3/14
H01F 7/06- 7/17
H01F 27/24-27/26
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 41/00-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア本体において、
周方向に分割された複数の外周部鉄心部分から構成された外周部鉄心と、
前記複数の外周部鉄心部分の内面にそれぞれ結合された少なくとも三つの鉄心と、を具備し、
前記少なくとも三つの鉄心のそれぞれの半径方向内側端部は前記外周部鉄心の中心に向かって収斂しており、
前記少なくとも三つの鉄心のうちの一つの鉄心と該一つの鉄心に隣接する他の鉄心との間には磁気的に連結可能なギャップが形成されており、前記少なくとも三つの鉄心の前記半径方向内側端部は、磁気的に連結可能なギャップを介して互いに離間しており、
さらに、
前記外周部鉄心を前記コア本体の軸線方向に締付ける締付部と、
前記締付部の締付作用に応じて、前記外周部鉄心部分を前記コア本体の半径方向内側に向かって互いに押付ける押付部材と、を具備するコア本体。
【請求項2】
さらに、前記コア本体の一方の端面に取付けられる端板と、
前記コア本体の他方の端面に取付けられる台座とを具備し、
前記押付部材は、前記端板および前記台座に対して傾斜して配置された傾斜部材である、請求項1に記載のコア本体。
【請求項3】
前記傾斜部材は前記複数の外周部鉄心部分の外周面において前記鉄心のそれぞれに対応した位置に配置される請求項2に記載のコア本体。
【請求項4】
前記傾斜部材は、互いに隣接する外周部鉄心部分の間の係合面に対応した位置に配置される請求項2または3に記載のコア本体。
【請求項5】
二つの前記押付部材を含んでおり、
該二つの押付部材の少なくとも一方は、前記外周部鉄心の端面の中心から半径方向外側に延びる少なくとも三つの脚部と、該少なくとも三つの脚部の先端から前記外周部鉄心の軸線方向に対して平行に延びる少なくとも三つの延長部と、該少なくとも三つの延長部から前記外周部鉄心の半径方向外側に延びる少なくとも三つの支持部とを含む、請求項1に記載のコア本体。
【請求項6】
前記外周部鉄心部分の外周面には、前記外周部鉄心の軸線方向に対して平行に延びる溝部が形成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のコア本体。
【請求項7】
前記少なくとも三つの鉄心の数は3の倍数である、請求項1から6のいずれか一項に記載のコア本体。
【請求項8】
前記少なくとも三つの鉄心の数は4以上の偶数である、請求項1から6のいずれか一項に記載のコア本体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア本体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、外周部鉄心と該外周部鉄心の内部に配置された複数の鉄心とを含むコア本体を備えたリアクトルが開発されている。外周部鉄心は周方向に分割された複数の外周部鉄心部分から構成される場合がある(例えば引用文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、外周部鉄心部分を互いに組付けてコア本体を作成するときに、互いに隣接する外周部鉄心部分の間に隙間が生じる可能性がある。そして、そのような隙間を含むコア本体を備えたリアクトルにおいては、インダクタンスが低下するという問題があった。
【0005】
このような問題に対処するために、コア本体の外周面に金属製の帯部材を巻いてコア本体を締付けることが考えられる。しかしながら、帯部材を巻く工程が増えるので、製造時間が増す。さらに、作業者に応じて締付精度が異なるので、熟練度の低い作業者では、隣接する外周部鉄心部分の間の隙間を排除できない事態も生じうる。従って、コア本体を適切に締付けるために作業者に熟練度が必要とされる。
【0006】
それゆえ、作業者の熟練度を必要とすることなしに、互いに隣接する外周部鉄心部分の間の隙間を容易且つ短時間で排除することのできるコア本体が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1番目の態様によれば、コア本体において、周方向に分割された複数の外周部鉄心部分から構成された外周部鉄心と、前記複数の外周部鉄心部分の内面にそれぞれ結合された少なくとも三つの鉄心と、を具備し、前記少なくとも三つの鉄心のそれぞれの半径方向内側端部は前記外周部鉄心の中心に向かって収斂しており、前記少なくとも三つの鉄心のうちの一つの鉄心と該一つの鉄心に隣接する他の鉄心との間には磁気的に連結可能なギャップが形成されており、前記少なくとも三つの鉄心の前記半径方向内側端部は、磁気的に連結可能なギャップを介して互いに離間しており、さらに、前記外周部鉄心を前記コア本体の軸線方向に締付ける締付部と、前記締付部の締付作用に応じて、前記外周部鉄心部分を前記コア本体の半径方向内側に向かって互いに押付ける押付部材と、を具備するコア本体が提供される。
【発明の効果】
【0008】
1番目の態様においては、締付部の締付作用に応じて、外周部鉄心部分がコア本体の半径方向内側に向かって互いに自動的に押付けられる。このため、作業者の熟練度を必要とすることなしに、互いに隣接する外周部鉄心部分の間の隙間を容易且つ短時間で排除することができる。
【0009】
本発明の目的、特徴及び利点は、添付図面に関連した以下の実施形態の説明により一層明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】第一の実施形態に基づくリアクトルの分解斜視図である。
【
図2】第一の実施形態に基づくリアクトルに含まれるコア本体の断面図である。
【
図4A】他の実施形態に基づくリアクトルの頂面図である。
【
図4B】さらに他の実施形態に基づくリアクトルの頂面図である。
【
図6】第一の実施形態の別の変形例を示す
図1Aと同様な図である。
【
図7A】第二の実施形態に基づくリアクトルの分解斜視図である。
【
図8】第二の実施形態の変形例を示す
図7Aと同様な図である。
【
図9】他の実施形態に基づくリアクトルの端面図である。
【
図10】さらに他の実施形態に基づくリアクトルの部分端面図である。
【
図11】従来技術におけるリアクトルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
【0012】
以下の記載では、三相リアクトルを例として主に説明するが、本開示の適用は、三相リアクトルに限定されず、各相で一定のインダクタンスが求められる多相リアクトルに対して幅広く適用可能である。また、本開示に係るリアクトルは、産業用ロボットや工作機械におけるインバータの一次側および二次側に設けるものに限定されず、様々な機器に対して適用することができる。
【0013】
図1Aは第一の実施形態に基づくリアクトルの分解斜視図であり、
図1Bは
図1Aに示されるリアクトルの斜視図である。
図1Aおよび
図1Bに示されるリアクトル6は、コア本体5と、コア本体5を軸方向に挟んで締結する環状の端板81および台座60とを主に含んでいる。端板81および台座60はコア本体5の後述する外周部鉄心20の端面の縁部全体にわたって外周部鉄心20に接触している。
【0014】
端板81および台座60は非磁性材料、例えばアルミニウム、SUS、樹脂などから形成されるのが好ましい。台座60には、コア本体5の端面を載置するのに適した外形を有する開口部68が形成されている。端板81は、外周部鉄心20の端面に部分的に対応した外形を有しており、また、端板81に形成された開口部88は、外周部鉄心20の内周面に概ね相当する形状である。台座60に形成された開口部68および端板81に形成された開口部88は、コア本体5の端面からコイル51~53(後述する)が突出するのに十分に大きいものとする。また、台座60の高さは、コア本体5の端部から突出するコイル51~53の突出高さよりもわずかながら長いものとする。
【0015】
図2は第一の実施形態に基づくリアクトルに含まれるコア本体の断面図である。
図2に示されるように、コア本体5は、外周部鉄心20と、外周部鉄心20に磁気的に互いに連結する三つの鉄心コイル31~33とを含んでいる。
図2においては、断面が略六角形の外周部鉄心20の内側に鉄心コイル31~33が配置されている。これら鉄心コイル31~33はコア本体5の周方向に等間隔で配置されている。なお、外周部鉄心20は円形または他の略正偶数角形であってもよい。また、鉄心コイルの数は3の倍数であるのが好ましく、それにより、リアクトル6を三相リアクトルとして使用できる。
【0016】
図面から分かるように、それぞれの鉄心コイル31~33は、外周部鉄心20の半径方向にのみ延びる鉄心41~43と、該鉄心に巻回されたコイル51~53とを含んでいる。鉄心41~43のそれぞれの半径方向外側端部は、外周部鉄心20に接するか、もしくは外周部鉄心20と一体的に形成されている。なお、一部の図面においては、簡潔にする目的で、コイル51~53の図示を省略している。
【0017】
なお、
図2においては、外周部鉄心20は周方向に等間隔に分割された複数、例えば三つの外周部鉄心部分24~26より構成されている。外周部鉄心部分24~26は、それぞれ鉄心41~43に一体的に構成されている。外周部鉄心20、外周部鉄心部分24~26は複数の磁性板、例えば鉄板、炭素鋼板、電磁鋼板を積層するか、または圧粉鉄心から作成される。このように外周部鉄心20が複数の外周部鉄心部分24~26から構成される場合には、外周部鉄心20が大型である場合であっても、そのような外周部鉄心20を容易に製造できる。また、外周部鉄心部分24~26には、貫通孔29a~29cが形成されている。
【0018】
さらに、鉄心41~43のそれぞれの半径方向内側端部は外周部鉄心20の中心近傍に位置している。図面においては鉄心41~43のそれぞれの半径方向内側端部は外周部鉄心20の中心に向かって収斂しており、その先端角度は約120度である。そして、鉄心41~43の半径方向内側端部は、磁気的に連結可能なギャップ101~103を介して互いに離間している。
【0019】
言い換えれば、鉄心41の半径方向内側端部は、隣接する二つの鉄心42、43のそれぞれの半径方向内側端部とギャップ101、102を介して互いに離間している。他の鉄心42、43についても同様である。なお、ギャップ101~103の寸法は互いに等しいものとする。
【0020】
このように、本発明では、コア本体5の中心部に位置する中心部鉄心が不要であるので、コア本体5を軽量かつ簡易に構成することができる。さらに、三つの鉄心コイル31~33が外周部鉄心20により囲まれているので、コイル51~53から発生した磁場が外周部鉄心20の外部に漏洩することもない。また、ギャップ101~103を任意の厚さで低コストで設けることができるので、従来構造のリアクトルと比べて設計上有利である。
【0021】
さらに、本発明のコア本体5においては、従来構造のリアクトルに比較して、相間の磁路長の差が少なくなる。このため、本発明においては、磁路長の差に起因するインダクタンスのアンバランスを軽減することもできる。
【0022】
図3は
図2の線A-Aに沿ってみた断面図である。
図3に示されるように、端板81の裏面には、端板81に対して傾斜して配置された複数の傾斜部材70が設けられている。傾斜部材70は端板81の裏面からリアクトル6の半径方向外側に向かって下方に延びている。また、端板81の裏面と傾斜部材70とのなす角度は鋭角であるのが好ましい。
【0023】
同様に、台座60の頂面には、台座60の頂面に対して傾斜して配置された複数の傾斜部材70が設けられている。傾斜部材70は台座60の頂面からリアクトル6の半径方向外側に向かって上方に延びている。同様に、台座60の頂面と傾斜部材70とのなす角度は鋭角であるのが好ましい。
【0024】
図1A等から分かるように、傾斜部材70は、外周部鉄心部分24~26の外周面に対応した位置において、端板81および台座60に設けられている。より詳細には、傾斜部材70は、鉄心41~43に対応した外周部鉄心部分24~26の外周面中心位置に対応した位置において、端板81および台座60に設けられている。端板81および台座60の傾斜部材70は、端板81および台座60を構成する板材を曲げ加工して形成されるのが好ましい。これにより、傾斜部材70を容易に形成できる。
【0025】
コイル51~53を鉄心41~43に巻回した後で、外周部鉄心部分24~26を互いに組み付けて、コア本体5を作成する。そして、
図1Aを参照して分かるように、コア本体5の一端を台座60に載置し、端板81をコア本体5の他端に配置する。そして、複数のボルト99を端板81の貫通孔89に挿入すると、複数のボルト99のシャフト部分のそれぞれは外周部鉄心20の貫通孔29a~29cを貫通し、複数のボルト99の先端は台座60の貫通孔69に螺合する。これにより、外周部鉄心20をコア本体5の軸線方向に締付けると共に、端板81と台座60との間に堅固に固定することができる。この目的のために、貫通孔69および/または貫通孔89の内周面にネジ山が形成されていてもよく、また、ボルト99の代わりにネジ、ナット等(図示しない)を使用してもよい。
【0026】
貫通孔29a~29cは外周部鉄心部分24~27に形成されているので、ボルト99によって、外周部鉄心20はコア本体5の軸線方向に締付けられる。つまり、ボルト99等は外周部鉄心20を締付ける締付部としての役目を果たす。外周部鉄心部分24~26は押付部材70に係合しているので、このような締付作用により、外周部鉄心部分24~27は半径方向内側に向かって自動的に押付けられる。つまり、傾斜部材70および後述する傾斜部材70’、70A、70Bは、ボルト99の締付作用に応じて、外周部鉄心部分24~26をコア本体5の半径方向内側に向かって互いに押付ける押付部材としての役目を果たす。
【0027】
従って、作業者の熟練度を必要とすることなしに、互いに隣接する外周部鉄心部分24~27の間の隙間を容易且つ短時間で排除することができる。なお、傾斜部材70等は台座60または端板81と同じ材料から形成されるのが好ましい。さらに、端板81および台座60に傾斜部材70等を設けているので、簡易な構成で前述した効果を得ることができる。また、傾斜部材70が外周部鉄心部分24~26の外周面の中心に対応した位置に配置されているので、傾斜部材70は外周部鉄心をリアクトルの中心軸線に向かって均等な力で押圧でき、その結果、前述した隙間を容易に排除できる。
【0028】
図11は従来技術におけるリアクトルの斜視図である。
図11に示されるように従来技術では帯部材Bを外周部鉄心20の外周面に巻回する必要があった。このため、従来技術では、製造時間が増すと共に、帯部材Bを巻き付けけるために作業者の熟練度も必要であった。
【0029】
図4Aは他の実施形態に基づくリアクトルの頂面図である。明確にする目的で、
図4Aにおいては、端板81の図示を省略している。
図4Aにおいては、一対の傾斜部材70が、外周部鉄心部分24~26に対応した位置のそれぞれにおいて台座60に設けられている。一対の傾斜部材のそれぞれは、鉄心41~43の側面に対応した位置に配置されている。外周部鉄心部分24~26のそれぞれに対して一対の傾斜部材70が使用されるので、外周部鉄心部分24~26をコア本体5の半径方向内側に向かって更に正確に押付けることができる。それゆえ、前述した効果を高められることが分かるであろう。
【0030】
さらに、
図4Aにおいては、追加の傾斜部材70’が台座60にさらに配置されている。より詳細には、一対の傾斜部材70’が、互いに隣接する外周部鉄心部分24~26の間の係合面に対応した位置にさらに配置されている。例えば、一対の傾斜部材70’のうちの一方の傾斜部材が外周部鉄心部分24に配置されており、他方の傾斜部材が隣接する外周部鉄心部分25に配置されている。このため、外周部鉄心部分24、25の間の係合面は一対の傾斜部材70’の間に位置することとなる。このような場合には、隣接する外周部鉄心部分24~26が互いに位置ズレすることなしに、外周部鉄心部分24~26をコア本体5の半径方向内側に向かって互いに押付けることができる。
【0031】
図4Bは、さらに他の実施形態に基づくリアクトルの頂面図である。
図4Bにおいては一つの傾斜部材70Aが互いに隣接する二つの外周部鉄心部分24~26の間の係合面を跨ぐように配置されている。この場合には、傾斜部材70が排除されていたとしても、傾斜部材70Aのみで、隣接する外周部鉄心部分24~26が互いに位置ズレすることなしに、外周部鉄心部分24~26をコア本体5の半径方向内側に向かって互いに押しつけけることができる。また、傾斜部材70が排除されていない場合には、外周部鉄心部分24~26をコア本体5の半径方向内側に向かってさらに堅固に押付けることができる。
【0032】
図5は第一の実施形態の変形例を示す図である。
図5においては隣接する二つの外周部鉄心部分24、25の係合面が示されている。
図5に示される端板81および台座60は
図1Aに示される場合よりも大きい。そして、端板81の貫通孔89および台座60の貫通孔69は
図1Aに示される場合よりも半径方向外側に配置されている。その結果、貫通孔89、貫通孔69に挿入されるボルト99は傾斜部材70よりも半径方向外側に位置することとなる。
【0033】
図5においては、ボルト99は傾斜部材70よりも半径方向外側に位置するので、ボルト99を締付けるときに、外周部鉄心部分24~26をコア本体5の半径方向内側に向かって互いに押付ける力が作用しやすい。このため、隣接する外周部鉄心部分24~26の間の隙間を確実に排除することが可能となる。
【0034】
図6は第一の実施形態の別の変形例を示す
図1Aと同様な図である。
図6における傾斜部材70Bは端板81および台座60とは別部材である。傾斜部材70Bは、端板81および台座60に予め所定角度をなすよう傾斜して形成された穴に挿入された棒材である。このため、曲げ加工する場合(
図1A)と比較して、傾斜部材70の傾斜角度を正確に管理することができる。それゆえ、
図6に示される場合には、隣接する外周部鉄心部分24~26の間の隙間を排除するのがさらに容易になる。
【0035】
図7Aは第二の実施形態に基づくリアクトルの分解斜視図であり、
図7Bは
図7Aに示されるリアクトルの斜視図である。これら図面においては、傾斜部材70の代わりに、一対の別の押付部材70Cが示されている。それぞれの押付部材70Cは複数の鉄心41~43の数と同様の脚部71a~71cを備えている。脚部71a~71cの幅は鉄心41~43の幅以下であるのが好ましい。これら脚部71a~71cは、外周部鉄心20の一端の中心から半径方向外側に延びている。脚部71a~71cの長さは外周部鉄心20の半径以上であるのが好ましい。
【0036】
脚部71a~71cのそれぞれの先端からは、延長部72a~72cが外周部鉄心20の他端に向かってコア本体5の軸線方向に延びている。延長部72a~72cの長さは軸線方向におけるコア本体5の高さの約半分であるのが好ましい。さらに、延長部72a~72cの先端からは、板状の支持部73a~73cが半径方向外側に延びている。従って、脚部71a~71cおよび延長部72a~72cは互いに概ね垂直であり、延長部72a~72cおよび支持部73a~73cは互いに概ね垂直である。それゆえ、脚部71a~71cと支持部73a~73cとは互いに概ね平行である。
【0037】
さらに、支持部73a~73cには貫通孔が形成されている。押付部材70Cは単一の板材を曲げ加工して作成するのが好ましく、それにより、押付部材70Cの製造費用が増すのを避けられる。
【0038】
図7Aに示されるように、一対の押付部材70Cは、それらの間に外周部鉄心20が収容されるように位置決めされる。これにより、一方の押付部材70Cの脚部71a~71cの内面が鉄心41~43の一端に接触すると共に、他方の押付部材70Cの脚部71a~71cの内面が鉄心41~43の他端に接触するようになる。
【0039】
そして、
図7Bに示されるように、一対の押付部材70Cのそれぞれの延長部72a~72cが外周部鉄心20の外周面に配置される。さらに、一方の押付部材70Cの支持部73a~73cが他方の押付部材70Cの支持部73a~73cにそれぞれ対面するか、または互いに接触するようになる。
【0040】
次いで、短尺のボルト99(
図7Bには示さない)を対面した二つの支持部73a~73cの貫通孔に通して締付ける。支持部73a~73cの貫通孔にネジ山が形成されているのが好ましい。締付作用を高めるために、ボルト99に加えてナット(図示しない)を使用してもよい。
【0041】
延長部72a~72cおよび支持部73a~73cは互いに概ね垂直であるので、対面した二つの支持部73a~73cをボルト99で締付けると、締付力が延長部72a~72cに伝達される。延長部72a~72cは脚部71a~71cを介して互いに連結されているので、ボルト99の締付作用によって、外周部鉄心部分24~26がコア本体5の半径方向内側に向かって互いに押付けられるようになる。それゆえ、前述したのと同様な効果が得られるのが分かるであろう。さらに、この場合には、端板81および台座60を必要としないので、簡易な構成で足りる。なお、一対の押付部材70Cとの間でそれぞれの延長部72a~72cの長さが互いに異なっていてもよい。
【0042】
図8は第二の実施形態の変形例を示す
図7Aと同様な図である。
図8においては、一対の押付部材70Cの代わりに、二つの押付部材70C’、70C’’が使用される。一方の押付部材70C’においては、前述した押付部材70Cの延長部72a~72cが排除されていて、脚部71a~71cと支持部73a~73cとが互いに連結されている。つまり、押付部材70C’は平坦部材である。他方の押付部材70C’’は、前述した押付部材70Cの延長部72a~72cの約2倍の長さを有することを除けば、前述した押付部材70Cと同様の形状である。
【0043】
図7Bと同様な位置関係になるように、押付部材70C’’の延長部72a~72c内に外周部鉄心20を挿入し、押付部材70C’を外周部鉄心20の頂面に配置する。そして、押付部材70C’の支持部73a~73cと、押付部材70C’’の支持部73a~73cとを前述したようにボルト99で締付ける。このように、押付部材70C’、70C’’を使用した場合であっても、前述したのと同様な効果が得られる。
【0044】
図9は他の実施形態に基づくリアクトルの端面図である。
図9に示されるコア本体5は、略八角形状の外周部鉄心20と、外周部鉄心20の内方に配置された、前述したのと同様な四つの鉄心コイル31~34とを含んでいる。これら鉄心コイル31~34はコア本体5の周方向に等間隔で配置されている。また、鉄心の数は4以上の偶数であるのが好ましく、それにより、コア本体5を備えたリアクトルを単相リアクトルとして使用できる。
【0045】
図面から分かるように、外周部鉄心20は周方向に分割された四つの外周部鉄心部分24~27より構成されている。それぞれの鉄心コイル31~34は、半径方向に延びる鉄心41~44と該鉄心に装着されたコイル51~54とを含んでいる。そして、鉄心41~44のそれぞれの半径方向外側端部は、外周部鉄心部分21~24のそれぞれと一体的に形成されている。なお、鉄心41~44の数と、外周部鉄心部分24~27の数とが必ずしも一致していなくてもよい。
【0046】
さらに、鉄心41~44のそれぞれの半径方向内側端部は外周部鉄心20の中心近傍に位置している。
図9においては鉄心41~44のそれぞれの半径方向内側端部は外周部鉄心20の中心に向かって収斂しており、その先端角度は約90度である。そして、鉄心41~44の半径方向内側端部は、磁気的に連結可能なギャップ101~104を介して互いに離間している。
【0047】
図9に示されるリアクトルに対応した形状を有していて前述したのと同様な傾斜部材70を備えた台座60および端板81を適用できるのは、当業者であれば明らかである。さらに、
図9に示されるリアクトルに対し、対応した形状を有する押付部材70C、70C’、70C’’等を適用できるのは、当業者であれば明らかである。
【0048】
図10はさらに他の実施形態に基づくリアクトルの部分端面図である。
図10において、外周部鉄心部分25の外周面には、軸方向に延びる溝部25Aが鉄心42に対応した位置に形成されている。同様な溝部24A、26Aが外周部鉄心部分24、26の同様な位置に形成されていてもよい。台座60の傾斜部材70はこれら溝部に係合し、外周部鉄心部分24~26を適切に位置決めする役目を果たす。このため、傾斜部材70等による締付作用を容易に行うことができ、その結果、隣接する外周部鉄心部分24~26の間の隙間を更に容易に排除できるようになる。
【0049】
本開示の態様
1番目の態様によれば、コア本体(5)において、周方向に分割された複数の外周部鉄心部分(24~27)から構成された外周部鉄心(20)と、前記複数の外周部鉄心部分の内面にそれぞれ結合された少なくとも三つの鉄心(41~44)と、を具備し、前記少なくとも三つの鉄心のそれぞれの半径方向内側端部は前記外周部鉄心の中心に向かって収斂しており、前記少なくとも三つの鉄心のうちの一つの鉄心と該一つの鉄心に隣接する他の鉄心との間には磁気的に連結可能なギャップ(101~104)が形成されており、前記少なくとも三つの鉄心の前記半径方向内側端部は、磁気的に連結可能なギャップを介して互いに離間しており、さらに、前記外周部鉄心を前記コア本体の軸線方向に締付ける締付部(99)と、前記締付部の締付作用に応じて、前記外周部鉄心部分を前記コア本体の半径方向内側に向かって互いに押付ける押付部材(70、70’、70A、70B、70C)と、を具備するコア本体が提供される。
2番目の態様によれば、1番目の態様において、さらに、前記コア本体の一方の端面に取付けられる端板(81)と、前記コア本体の他方の端面に取付けられる台座(60)とを具備し、前記押付部材は、前記端板および前記台座に対して傾斜して配置された傾斜部材(70、70’、70A、70B)である。
3番目の態様によれば、2番目の態様において、前記傾斜部材は前記複数の外周部鉄心部分の外周面において前記鉄心のそれぞれに対応した位置に配置される。
4番目の態様によれば、2番目または3番目の態様において、前記傾斜部材は、互いに隣接する外周部鉄心部分の間の係合面に対応した位置に配置される。
5番目の態様によれば、1番目の態様において、二つの前記押付部材(70C)を含んでおり、該二つの押付部材の少なくとも一方は、前記外周部鉄心の端面の中心から半径方向外側に延びる少なくとも三つの脚部(71a~71c)と、該少なくとも三つの脚部の先端から前記外周部鉄心の軸線方向に対して平行に延びる少なくとも三つの延長部(72a~72c)と、該少なくとも三つの延長部から前記外周部鉄心の半径方向外側に延びる少なくとも三つの支持部(73a~73c)とを含む。
6番目の態様によれば、1番目から5番目のいずれかの態様において、前記外周部鉄心部分の外周面には、前記外周部鉄心の軸線方向に対して平行に延びる溝部(24A~26A)が形成されている。
7番目の態様によれば、1番目から6番目のいずれかの態様において、前記少なくとも三つの鉄心の数は3の倍数である。
8番目の態様によれば、1番目から6番目のいずれかの態様において、前記少なくとも三つの鉄心の数は4以上の偶数である。
【0050】
態様の効果
1番目の態様においては、締付部の締付作用に応じて、外周部鉄心部分がコア本体の半径方向内側に向かって互いに自動的に押付けられる。このため、作業者の熟練度を必要とすることなしに、互いに隣接する外周部鉄心部分の間の隙間を容易且つ短時間で排除することができる。
2番目の態様においては、端板および台座に押付部材を設けているので、簡易な構成で済む。
3番目の態様においては、傾斜部材が外周部鉄心をリアクトルの中心軸線に向かって均等な力で押圧できる。
4番目の態様においては、外周部鉄心部分をコア本体の半径方向内側に向かってさらに堅固に押付けることができる。
5番目の態様においては、端板および台座を必要としないので簡易な構成で済む。
6番目の態様においては、リアクトルを三相リアクトルとして使用できる。
7番目の態様においては、リアクトルを単相リアクトルとして使用できる。
【0051】
以上、本発明の実施形態を説明したが、後述する請求の範囲の開示範囲から逸脱することなく様々な修正及び変更を為し得ることは、当業者に理解されよう。
【符号の説明】
【0052】
5 コア本体
6 リアクトル
20 外周部鉄心
24~27 外周部鉄心部分
24A~26A 溝部
29a~29c 貫通孔
31~34 鉄心コイル
41~44 鉄心
51~54 コイル
60 台座
69 貫通孔
70、70’、70A、70B 傾斜部材(押付部材)
70C 押付部材
71a~71c 脚部
72a~72c 延長部
73a~73c 支持部
81 端板
89 貫通孔
99 ボルト(締付部)
101~104 ギャップ